説明

透明性の高いフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびそれを含む組成物

【課題】本発明は、透明性の高い芳香族ポリアミド樹脂およびこれを使用した透明性の高いフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】下記式(1)
【化1】


(式中、m、nは平均値で、0.005≦n/(m+n)≦1を示し、また、m+nは2〜200の正数である。Arは2価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基、Arは二価の芳香族基を示す。)で表される構造を有し、40〜1000μmの膜厚のフィルムにしたときに、400〜780nmのいずれかの波長の光線透過率が70%以上であることを特徴とするフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明性の高い芳香族ポリアミド樹脂及びそれを用いたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレー用基板や太陽電池用基板にはガラスが用いられてきたが、近年、軽量化やフレキシブル化といった要望からプラスチック基板が注目されている。プラスチック基板には高い透明性、耐熱性、機械的特性が必要とされている。芳香族ポリアミド樹脂は耐熱性が高く、機械的特性が高い特徴を持つ。また、フェノール性水酸基を有した芳香族ポリアミド樹脂はエポキシ樹脂を配合し架橋させることで耐熱性や機械特性を向上させることが出来る。しかし、芳香族ポリアミド樹脂は一般的には黄色く着色しており、透明性が低い。芳香族ポリアミド樹脂の合成法はジアミンとジカルボン酸クロライドを反応させる方法とジアミンとジカルボン酸を亜リン酸トリフェニル等で縮合させる方法がある。酸クロライドを用いる方法で透明性の高い芳香族ポリアミドの合成法があるが、酸クロライドは反応性が高く水酸基等と反応するため、酸クロライドを用いた合成では水酸基等の反応性基を有するポリアミドは合成できない。また、フェノール性水酸基を有したポリアミドを合成する方法として亜リン酸トリフェニルを用いる方法があるが、原料であるジアミンは着色し易く、ポリアミド樹脂の合成途中に着色してしまう問題があり、透明性の高い芳香族ポリアミドを工業的に合成することは困難であった。
【特許文献1】特開2004−250569号公報
【特許文献2】特開2000−313787号公報
【特許文献3】特開2007−289728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、透明性の高い芳香族ポリアミド樹脂およびこれを使用した透明性の高いフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は上記の課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、着色の原因であるジアミンを亜リン酸トリフェニルを含む有機溶剤中で反応させることにより、ジアミンの着色が低減されることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち本発明は
(1)
下記式(1)
【化1】

(式中、m、nは平均値で、0.005≦n/(m+n)≦1を示し、また、m+nは2〜200の正数である。Arは2価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基、Arは二価の芳香族基を示す。)で表される構造を有し、40〜1000μmの膜厚のフィルムにしたときに、400〜780nmの全ての波長の光線透過率が70%以上であることを特徴とするフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂
(2)
フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂が下記式(2)
【化2】

(式(2)中Arは式(1)におけるのと同じ意味を表す。xは平均置換基数であって1〜4の正数を表す。)で表されるセグメントを持つ、上記(1)に記載されたポリアミド樹脂
(3)
Arが下記式(3)
【化3】

(式(3)中Rは水素原子又はO、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の置換基、Rは直接結合又は−O−、−S−、−SO−、−N=N−又はO、N、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6で構成される結合を表す。a、b、cは平均置換基数であってa、bはそれぞれ0〜4、cは0〜6の正数を表す。)で表される芳香族残基のうち一種以上である、上記(2)記載のポリアミド樹脂
(4)
(a)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載された芳香族ポリアミド樹脂
(b)エポキシ樹脂または無機フィラーより選ばれる1種以上
及び
(c)溶剤
を含有する組成物
(5)
上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載にされた樹脂または上記(5に記載された組成物をシート状に加工したフィルム
(6)
上記(5)に記載されたフィルムの硬化物
【発明の効果】
【0005】
本発明の芳香族ポリアミド樹脂は、その製法が容易で、しかもフェノール性水酸基、アミノ基、カルボン酸基などの官能基を有するため溶剤への溶解性が高く、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒、シアネート樹脂などと相溶し、これらを組み合わせることにより、硬化性樹脂組成物として使用することが出来る。本発明の芳香族ポリアミド樹脂を含む組成物を使用したフィルムは透明性が高く、また、これを加熱硬化させるときに高い接着性を発現するため、銅箔やITO(酸化インジウムスズ)等との接着に有利である。具体的な用途例としては、透明フレキシブル基板材料、透明ボンディングシート、フレキシブルディスプレー用基板、太陽電池用基板、半導体用封止材、ソルダーレジスト、塗料、接着剤などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の芳香族ポリアミド樹脂の具体的な製造方法について詳細に説明する。
本発明の芳香族ポリアミド樹脂は、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸を窒素やアルゴン等の不活性雰囲気下で反応させる。
具体的には、芳香族亜リン酸エステル、ピリジン誘導体及び必要により無機塩類を含む溶媒中に芳香族ジアミンを溶解させ攪拌する。この際の温度は通常60〜150℃、好ましくは70〜120℃である。攪拌時間は通常1〜10時間、好ましくは3〜5時間である。攪拌後、反応混合物に芳香族ジカルボン酸を加え、攪拌しながら反応させる。反応温度は通常60〜150℃、好ましくは70〜120℃で、反応時間は通常1〜15時間、好ましくは2〜10時間である。反応終了後、反応混合物を水、メタノール、あるいはヘキサンなどの貧溶媒と混合して生成重合体を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類などを除去することにより、本発明の芳香族ポリアミド樹脂を得ることが出来る。
【0007】
前記芳香族ジアミンの具体例としてはジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノフェノール、ジアミノメシチレン、ジアミノジエチルトルエン、ジアミノクロロベンゼン、ジアミノニトロベンゼンまたはジアミノアゾベンゼン等のジアミノベンゼン類;ジアミノナフタレン等のジアミノナフタレン類;ジアミノビフェニルまたはジアミノジメトキシビフェニル等のジアミノビフェニル類;ジアミノジフェニルエーテルまたはジアミノジメチルジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエール類、メチレンジアニリン、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(メチルアニリン)、メチレンビス(ジメチルアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、メチレンビス(ジブロモアニリン)、イソプロピリデンジアニリンまたはヘキサフルオロイソプロピリデンジアニリン等のアニリン類、ジアミノベンゾフェノン等のジアミノジメチルベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン類;ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホキシドやジアミノフルオレンなどが挙げられ、これらを2種類以上併用することもできる。中でもジアミノジフェニルエーテル類またはジアミノジフェニルスルホキシド類が好ましい。芳香族ジアミンの使用量は、下記する芳香族ジカルボン酸1モルに対して、通常0.67〜1.5モルである。
【0008】
前記芳香族ジカルボン酸の具体例としてはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のフタル酸類、ベンゼン二酢酸、ベンゼンジプロピオン酸、ビフェニルジカルボン酸、オキシジ安息香酸、チオジ安息香酸、ジチオジ安息香酸、ジチオビス(ニトロ安息香酸)、カルボニルジ安息香酸、スルホニルジ安息香酸、メチレンジ安息香酸、イソプロピリデンジ安息香酸、ヘキサフルオロイソプロピリデン安息香酸等の安息香酸類、ナフタレンジカルボン酸、、ピリジンジカルボン酸等の水酸基を有しない芳香族ジカルボン酸、または、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシイソフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸等のヒドロキシフタル酸類等の水酸基を有するジカルボン酸が挙げられる。本発明においては、これら芳香族ジカルボン酸のうち、水酸基を有しない芳香族ジカルボン酸と水酸基を有する芳香族ジカルボン酸を併用することが好ましい。併用する場合、芳香族ジカルボン酸の基本構造は、同一であっても異なっていてもよいが、同一であるほうが好ましく、両者ともイソフタル酸骨格を有する組み合わせが特に好ましい。水酸基を有しない芳香族ジカルボン酸と水酸基を有する芳香族ジカルボン酸は、ジカルボン酸成分中に水酸基が含まれる割合が通常0.5モル%以上、好ましくは1モル%以上、特に好ましくは、5モル%以上となる割合で両者を使用する。なお、本発明の芳香族ポリアミド樹脂を溶剤に溶解して、ワニスとして使用する場合、該溶剤の蒸発除去に関しては、水酸基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量が少ない方が好ましいが、一方で、接着剤としての接着力の面では、前記において水酸基の含有割合が30〜60モル%となる混合割合が好ましい。
【0009】
前記芳香族亜リン酸エステルとしては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリ−o−トリル、亜リン酸ジ−o−トリル、亜リン酸トリ−m−トリル、亜リン酸ジ−m−トリル、亜リン酸トリ−p−トリル、亜リン酸ジ−p−トリル、亜リン酸トリ−p−クロロフェニルなどが挙げられる。芳香族亜リン酸エステルの使用量は、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸の合計1モルに対して、通常0.6〜1.5モル、好ましくは0.7〜1.2モルである。
【0010】
前記ピリジン誘導体としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジンなどが挙げられる。ピリジン誘導体の使用量は、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸の合計1モルに対して、通常1.0〜5.0モル、好ましくは2.0〜4.0モルである。
【0011】
また、より大きい分子量の芳香族ポリアミド樹脂を得るために、塩化リチウム等の無機塩類を添加し反応を行うこともできる。無機塩類の使用量は、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸の合計1モルに対して、通常0.01〜0.5モル、好ましくは0.05〜0.3モルである。
【0012】
溶媒としては、芳香族ポリアミド樹脂と溶媒和を起こす溶媒であれば特に制限は無いが、具体例としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等やこれらの混合溶媒が挙げられるが、特にN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。また溶媒の使用量は、生成する芳香族ポリアミド樹脂の濃度が2〜50重量%となる量が好ましいが、生産効率と操作性の良い溶液粘度とを考慮すると5〜30重量%となる量が特に好ましい。
【0013】
こうして得られる式(1)の芳香族ポリアミド樹脂のmとnの値は芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸の仕込み比によって決定され、通常平均値で2〜200であり、好ましくは5〜150である。
この好ましい平均重合度を有する芳香族ポリアミド樹脂の固有粘度値(30℃における0.5g/dlのN,N−ジメチルアセトアミド溶液で測定)は0.1〜4.0dl/gの範囲にある。一般に好ましい平均重合度を有するか否かは、固有粘度を参照することにより判断する。固有粘度が0.1dl/gより小さいと、成膜性や芳香族ポリアミド樹脂としての性質出現が不十分であるため、好ましくない。逆に固有粘度が4.0dl/gより大きいと、重合度が高すぎ溶剤溶解性が悪くなり、かつ成形加工性が悪くなるといった問題が発生する恐れがある。
【0014】
以下に本発明の芳香族ポリアミド樹脂を含む本発明の組成物につき説明する。
本発明の組成物は、本発明の(a)芳香族ポリアミド樹脂の他に(b)エポキシ樹脂または無機フィラーより選ばれる1種以上及び(c)溶剤を含有する。
【0015】
前記エポキシ樹脂は、芳香族ポリアミド樹脂と反応して硬化する。使用できるエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
本発明の組成物が、エポキシ樹脂を含有する場合、本発明の芳香族ポリアミド樹脂以外の他のフェノール性硬化剤を併用することができる。使用できるフェノール性硬化剤としては、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フラン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂、ビスフェノール型のポリフェノール化合物、水素化ビスフェノール型化合物、ビフェノール類、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類およびこれらの変性物、フルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物等が挙げられる。フェノール性硬化剤と芳香族ポリアミド樹脂の使用割合はポリアミド樹脂100重量部に対して、フェノール性硬化剤100重量部以下である。
本発明の組成物において、芳香族ポリアミド樹脂及びフェノール性硬化剤(以下両者を合わせて硬化剤という)の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して硬化剤の活性水素が0.2〜5.0モルの範囲である。
【0017】
本発明の組成物が、エポキシ樹脂を含有する場合、硬化促進剤を含有させることもできる。硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられ、その使用量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部である。
【0018】
本発明の組成物には無機フィラーを含有させることもできる。無機フィラーとしては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミナ、窒化ホウ素、タルク、ガラス短繊維等が挙げられる。無機フィラーの使用量は、本発明の組成物中において0〜80重量%である。
【0019】
本発明の組成物は溶剤を含有する。溶剤としてはγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等を挙げることができる。溶剤の使用量は、本発明の組成物中において50〜95重量%である。
【0020】
本発明の組成物は上記各成分を所定の割合で均一に混合して得ることができる。本発明の組成物は、プラネタリー、ニーダー、ロール、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ディゾルバー等の混合機、混練機、分散機等により、一般公知の方法で混合することができる。均一に混合した組成物は目的とするフィルム厚以下の網目をもつフィルターで濾過することで粒子径の大きい無機フィラーやゲル物を除去でき、欠点の少ないフィルムが得られる。また、本発明のフィルムを得るには、本発明の組成物をグラビアコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷、メタルマスク法、スピンコート法などの各種塗工方法により平面状支持体上に乾燥後の厚さが所定の厚さ、例えば40〜1000μmになるように塗布後乾燥して得られるが、どの塗工法を用いるかは基材の種類、形状、大きさ、塗膜の膜厚により適宜選択される。乾燥温度及び乾燥時間は溶剤や硬化促進剤によって異なるが、乾燥温度は50〜250℃、乾燥時間は1分〜3時間である。基材としては、例えばポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種高分子および/またはその共重合体から作られるフィルム、或いは銅箔等の金属箔であり、その用途に応じて適宜選択される。また本発明の組成物を乾燥し、溶剤を除去した本発明のフィルムは、その用途や要求特性に応じて、単体もしくは基材と共に、さらに延伸等の2次加工を行うこともできる。また、エポキシ樹脂を含有する本発明の組成物は、更に加熱することにより本発明の硬化物とすることが出来る。加熱工程は、80〜320℃で15分〜10時間、乾燥機や熱プレス、延伸機、加熱炉等により行う。また、硬化の工程で延伸等の2次加工を行うこともできる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の具体的態様を実施例によりさらに詳細に説明するが、これは例示のためであり、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
【0022】
実施例1
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けた200mlフラスコに窒素ガスパージを施し、N−メチルピロリドン(NMP)32.5g、亜リン酸トリフェニル15.1g、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル6.0g、塩化リチウム0.3g、ピリジン6.9gを加え撹拌溶解させた後、90℃で4時間攪拌した。その後、5−ヒドロキシイソフタル酸0.1g、イソフタル酸4.8g、を加えて90℃で8時間反応させ、無色透明のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂の反応液を得た。
この反応液を室温に冷却した後、メタノール500gに滴下し、析出した樹脂を濾別した。濾別した樹脂をNMP100gに溶解させた後、再度メタノール500g滴下し、析出した樹脂を濾別した。更に樹脂をメタノール200g中で還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を乾燥させて本発明のポリアミド樹脂樹脂の粉末を得た。得量は9.4gであった。この樹脂粉末0.100gをN,N−ジメチルアセトアミド20.0mlに溶解させ、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した対数粘度は、0.50dl/gであった。エポキシ基に対する活性水素当量は計算値で5000g/eqである。このポリアミド樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、ガラス基板上に塗工し150℃で30分間乾燥させ無色透明なポリイミドフィルムを得た。フィルム厚は40μmであった。島津製紫外可視近赤外分光光度計UV−3600を用いて380〜780nmの可視光線透過率を測定した結果、400nmでの光線透過率は77%であり、光線透過率が80%以上となる波長は410nm以上であった。
【0023】
実施例2
実施例1で得られた樹脂粉末5gに対しエポキシ樹脂としてNC−3000を0.28g(日本化薬株式会社製、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、エポキシ当量265〜285g/eq)、フェノール性硬化剤としてKAYAHARD GPH−65を0.08g(日本化薬株式会社製、水酸基当量203g/eq)、硬化促進剤として2PHZ−PW(四国化成製)を0.02g加え、溶剤としてDMF8gを加えることにより本発明の組成物を得た。得られた組成物を、ガラス基板上に塗工し、150℃で30分間乾燥させることにより本発明のフィルムを得た。フィルム厚は40μmであった。380〜780nmの可視光線透過率を測定した結果、400nmでの光線透過率は72%であり、光線透過率が80%以上となる波長は430nm以上であった。
【0024】
比較例1
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けた200mlフラスコに窒素ガスパージを施し、N−メチルピロリドン(NMP)32.5g、亜リン酸トリフェニル15.1g、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル6.0g、塩化リチウム0.3g、ピリジン6.9g、5−ヒドロキシイソフタル酸0.1g、イソフタル酸4.8gを同時に加え撹拌溶解させた後、90℃で8時間反応させた。反応液は紫色に着色していた。この反応液から実施例1と同様の手順でポリアミド樹脂を取り出しフィルム化した。フィルム厚は40μmで紫色に着色していた。380〜780nmの可視光線透過率を測定した結果、400nmでの光線透過率は59%であり、光線透過率が80%以上となる波長は630nm以上であった。
【0025】
以上ように本発明のポリアミド樹脂は、原料の仕込み順や攪拌操作を特定にすることにより透明性を高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、m、nは平均値で、0.005≦n/(m+n)≦1を示し、また、m+nは2〜200の正数である。Arは2価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基、Arは二価の芳香族基を示す。)で表される構造を有し、40〜1000μmの膜厚のフィルムにしたときに、400〜780nmの全ての波長の光線透過率が70%以上であることを特徴とするフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂。
【請求項2】
フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂が下記式(2)
【化2】


(式(2)中Arは式(1)におけるのと同じ意味を表す。xは平均置換基数であって1〜4の正数を表す。)で表されるセグメントを持つ、請求項1に記載された記載のポリアミド樹脂。
【請求項3】
Arが下記式(3)
【化3】

(式(3)中Rは水素原子又はO、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の置換基、Rは直接結合又は−O−、−S−、−SO−、−N=N−又はO、N、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6で構成される結合を表す。a、b、cは平均置換基数であってa、bはそれぞれ0〜4、cは0〜6の正数を表す。)で表される芳香族残基のうち一種以上である、請求項2記載のポリアミド樹脂。
【請求項4】
(a)請求項1〜3のいずれか一項に記載された芳香族ポリアミド樹脂
(b)エポキシ樹脂または無機フィラーより選ばれる1種以上
及び
(c)溶剤
を含有する組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載にされた樹脂または請求項4に記載された組成物をシート状に加工したフィルム。
【請求項6】
請求項5に記載されたフィルムの硬化物。

【公開番号】特開2010−100695(P2010−100695A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271820(P2008−271820)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】