説明

通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法とシステム

【課題】通信システムにおいて、ユーザの真の識別情報が望まぬ相手に明らかになるのを防ぐ方法とシステムを実現する。
【解決手段】本発明のシステムは、第1のユーザ装置100を利用して仮想識別子を要求し、第1のユーザ装置100のためにその仮想識別子を確立し、第1のユーザ装置100のその仮想識別子を、第1のユーザ装置100の第1の固有識別子とリンクさせ、第1のユーザ装置100と第2のユーザ装置102の間の通信のために、第1のユーザ装置100のその仮想識別子を利用するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の通信システムでは、それぞれのユーザは唯一の識別子を与えられている。その識別子により、ユーザの真の識別情報が特定される。この固有識別子は、例えばユーザの電話番号とリンクしている。電話番号はさらに、電話通信サービスの提供者、例えば移動体ネットワーク・オペレータが保持する加入者プロファイルと関係づけられている。通信網では、電話番号を利用してユーザを特定し、例えば料金を課したり、呼び出しを行なったり、メッセージを送ったりする。電話番号は、他のサービスにも使われる。例えば、電話をかけてきた相手の表示、メッセージの送り手の特定、電話をかけてきた相手に特有の呼び出し音などに使用される。通信システムで利用されるeメール・アドレスとIP(インターネット・プロトコル)アドレスは、そのシステムのユーザの識別情報を突き止めるのに役立つ情報を含んでいる。IPアドレスは、インターネットに接続されたデータ・プロセッサまたはデータ転送装置を識別する数字の識別情報を含んでいる。
【0003】
携帯電話のユーザが例えば通信システムの別のユーザを呼び出すとき、電話をかけた人の電話番号が呼び出された人に通知される。呼び出された人は、その電話番号の情報を記憶させておき、それを利用して望まない呼び出しに対処することができる。呼び出す人は、例えば電話番号が通知されないようにできる場合がある。すると当事者間でさらに通信をすることはできない。呼び出された人は、ネットワークから電話番号が提供されなかったり呼び出した人が電話番号を通知しなかったりした場合には、最初に呼び出した人に例えば電話を掛け直すことができない。
【0004】
また、公知の電子メール・システムでは、ユーザがeメール・メッセージを送ると、受信者が返信する場合に利用すべき返信アドレスが発生する。この返信アドレスは、典型的にはユーザのアカウント名に基づいている。したがってユーザのeメール・アドレスは、そのユーザのアカウント名を変えない限り、変えることができない。さらに、アカウント名とそれに対応するeメール・アドレスは、ある程度ユーザの識別情報を明らかにする可能性がある。eメール・アドレスは、たとえそのeメール・アドレスを持っている人自身が自分のeメール・アドレスを教えなくとも人から人へと転送される可能性がある。eメール・アドレスとIPアドレスは容易に見つけることができ、そのアドレスの裏にある真の識別情報をほとんど困難なく突き止めることができる。eメール・アドレスまたはIPアドレスを望まない相手に明らかにすると、嫌がらせeメールやアドレスの不正使用といった形の非常に不都合な事態が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−268741号公報
【特許文献2】特開平11−355440号公報
【特許文献3】特開2001−268230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の通信システムでは、ユーザの真の識別情報が望まぬ相手に明らかになるのを防ぐことがますます重要になっている。また、通信システムは、当事者間で相互通信ができるよう、ユーザの識別情報を確信をもってかつ一意的に認識できるようになっている必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の問題点を解決した方法とシステムを提供することである。それは、第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置と、第1のユーザ装置と第2のユーザ装置にサービスを提供するサービス網とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法を利用して実現される。本発明の方法は、第1のユーザ装置を利用して仮想識別子を要求するステップと、第1のユーザ装置のためにその仮想識別子を確立するステップと、第1のユーザ装置のその仮想識別子を、第1のユーザ装置の第1の固有識別子とリンクさせるステップと、第1のユーザ装置と第2のユーザ装置の間の通信のために第1のユーザ装置のその仮想識別子を利用するステップと、を有している。
【0008】
本発明は、第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置と、第1のユーザ装置と第2のユーザ装置を接続するサービス網と、を備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠すシステムにも関する。本発明のシステムは、第1のユーザ装置を利用して仮想識別子を要求し、第1のユーザ装置のためにその仮想識別子を確立し、第1のユーザ装置のその仮想識別子を、第1のユーザ装置の第1の固有識別子とリンクさせ、第1のユーザ装置と第2のユーザ装置の間の通信のために、第1のユーザ装置のその仮想識別子を利用するように構成されている。
【0009】
本発明の好ましい実施例は、従属項に記載されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法とシステムには利点がいくつかある。プライバシーをより尊重し、個人識別子をシステムが強制的に制御することが可能になる。ユーザの真の識別情報が不正使用されたり許可なく使用されたりすることから保護される一方で、ユーザ同士の相互通信が可能になっている。
【0011】
以下に、好ましい実施例と添付の図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による通信システムの一例を示す図である。
【図2】本発明による通信システムの別の例を示す図である。
【図3】本発明による通信システムの一例を示す図である。
【図4】本発明の典型的な実施例による方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照し、本発明の好ましい実施例を適用できる通信システムの一例を調べることにする。図1は、通信に関して本発明を理解する上で必要な部分だけを簡単化して示したブロック図である。ネットワーク構成要素の構成と機能は一般に知られているため、詳細には説明しない。通信システムは、例えば、2.5世代のGSM(移動体通信のためのグローバル・システム)/GPRS(一般パケット無線サービス)無線システム、第2世代のGSM無線システム、WCDMA(広帯域符号分割多元アクセス)技術を利用した第3世代のUMTS(ユニバーサル移動体通信システム)無線システム、あるいはこれらの組み合わせである。
【0014】
一般に、通信システムは、たとえば、加入者端末や携帯電話としても知られるユーザ装置と、通信システムの固定されたインフラストラクチャ、すなわちコア・ネットワークと、無線ネットワークと、基地局システムと、を備えるネットワーク部で構成されると規定することができる。インテリジェント通信システムもよく知られている。このようなシステムは、通信システム内のユーザに多彩なサービスを提供するのに利用される。図1に示したネットワーク構成要素は、1つ以上の物理ネットワーク装置、例えば1つ以上の計算システムによって実現できる。システムの機能を具体化するのに用いる物理装置は、一体化してもよいし、分離してもよい。通信システム内の接続は、知られている任意のセッション制御プロトコル、例えばセッション開始プロトコル(SIP)を利用したブロードバンド・パケット・ネットワークを通じて実現することができる。セッション開始プロトコル(SIP)は、公衆交換電話網(PSTN)(図示せず)を通じた接続を実現させることもできる。
【0015】
例えば既存の移動体通信網では、基地局(BTS)、ホーム・ロケーション・レジスタ(HLR)、移動交換局(MSC)を利用して呼を処理する。インテリジェント・ネットワークでは、INシステム(INS(登録商標)、インテリジェント・ネットワーク・システム)を利用してサービスを提供する。INシステムのアーキテクチャによってすべての交換機能と伝送機能が分散コンピュータ・システムの制御下に置かれるため、高度に洗練されたサービスを、ネットワークの特定の一部ではなく全体を通じて提供することが可能になる。INシステムにより、例えば固定網のサービスと移動体網のサービスを統合することができる。
【0016】
図1では、通信システムは、サービス網112に双方向接続108、110された第1のユーザ装置100と、第2のユーザ装置102を備えている。サービス網112は、第1の基地局(BTS)114と、第1の移動交換局(MSC)118と、ホーム・ロケーション・レジスタ(HLR)122と、インテリジェント・ネットワーク・システム(INS(登録商標))124と、第2の移動交換局(MSC)120と、第2の基地局(BTS)116を備えている。
【0017】
基地局114、116は、基地局システムの送受信機能を提供する。それぞれの基地局114、116は、1つ以上の送受信機を備えている。基地局114、116の動作としては、タイミング・アドバンス(TA)の計算、アップリンクの測定、チャネル符号化、暗号化、復号化、周波数ホッピングなどが挙げられる。
【0018】
移動交換局118、120は、サービス網112における回線交換側の中心点である。同じ移動交換局118、120を利用して無線アクセス網(図示せず)と基地局114、116を接続することができる。移動交換局118、120の動作としては、交換、ページング、ユーザ装置の位置の登録、ハンドオーバの管理、加入者への請求情報の収集、暗号化パラメータの管理、周波数割り当ての管理、エコー消去などが挙げられる。移動交換局118、120の数は変ってもよい。小さなネットワーク・オペレータでは移動交換局118、120が1つだけでよいが、大きなサービス網112では移動交換局118、120が数局になる可能性がある。
【0019】
ホーム・ロケーション・レジスタ(HLR)122は、恒久的加入者レジスタを備えている。すなわち、国際移動体加入者識別情報(IMSI)、移動体加入者ISDN番号(MSISDN)、認証キーなどの情報が記憶され、無線システムがGPRSをサポートしている場合には、パケット・データ・プロトコル(PDP)アドレスの情報も記憶されている。
【0020】
INシステム124の特徴は、そのINシステム124の構成要素のタイプまたは数を変えることによって変化させることができる。INシステム124は、サービス制御点(SCP)、サービス管理点(SMP)、サービス創出環境(SCE)、サービス管理インターフェイス(SMI)などの構成要素を含んでいる。サービス制御点は、所定のサービスを提供するため、データと論理にアクセスして呼の処理を制御する。サービス管理点は、サービス管理機能とサービスを実現し、加入情報をその中に記録して管理する。サービス管理インターフェイスは、サービス管理点(SMP)に含まれているINシステムの加入者データベースのためのアプリケーション・プログラム(API)である。
【0021】
ユーザ装置100、102は、基地局114、116への無線接続を確立するための少なくとも1つの送受信機を備えている。ユーザ装置100、102は、異なる少なくとも2つの加入者識別情報モジュールを備えることができる。ユーザ装置100、102はさらに、アンテナ104、106、ユーザ・インターフェイス、バッテリを備えている。現在のところ、いろいろなタイプのユーザ装置100、102が存在している。例えば自動車に設置する装置や携帯装置がある。パーソナル・コンピュータまたは携帯式コンピュータでよく知られている特性は、ユーザ装置100、102においても実現されている。
【0022】
第1のユーザ装置100は第1の固有識別子を備え、第2のユーザ装置102は第2の固有識別子を備えているため、その固有識別子によってサービス網112がユーザ装置を特定し、それぞれの固有識別子に関係するサービスを提供することができる。ユーザの真の識別情報は、固有識別子、例えば電話番号がわかると容易に見つけることができる。図1に示したシステムの目的は、通信システムにおいて例えばさまざまなユーザ装置の間で通信接続が確立されたときにユーザの真の識別情報を隠すことである。
【0023】
本発明の一実施例では、第1のユーザ装置が、1つまたは複数の仮想識別子をサービス網112、例えば移動体オペレータなどから要求する。仮想識別子の要求を受け取ると、仮想識別子がサービス網112内に確立される。仮想識別子は、例えば仮想識別子のデータベースを備えるINシステム124内に確立される。INシステム124では、次に、第1のユーザ装置100の仮想識別子が第1のユーザ装置100の第1の固有識別子とリンクされる。次に、例えば第1のユーザ装置100と第2のユーザ装置102の間に接続を確立するときに第1のユーザ装置のユーザの真の識別情報を隠すことを要求される場合、第1のユーザ装置100の仮想識別子を利用する。
【0024】
第1のユーザ装置100がサービス網112から第2のユーザ装置102との通信接続を要求した場合、ホーム・ロケーション・レジスタ122から第2のユーザ装置102が探索され、第2の移動交換局120と第2の基地局116を通じて第2のユーザ装置102との通信接続が形成される。しかし接続を確立するとき、第1のユーザ装置100の第1の固有識別子が利用される代わりに、第1のユーザ装置100の第1の固有識別子にリンクした仮想識別子が利用される。したがって第2のユーザ装置102は、第1のユーザ装置100の第1の固有識別子ではなく仮想識別子に関する情報だけを受信する。
【0025】
仮想識別子の利用に関してさまざまな制限をあらかじめ決めておくことができる。例えば所定の有効期間をあらかじめ決めておき、その期間だけ仮想識別子が有効であるようにすることができる。仮想識別子を利用する権利を持つ通信網内のすべてのユーザ装置をあらかじめ決めておくこともできる。仮想識別子を1日の所定の時間にだけ利用できるよう制限することも可能である。さらに、例えば仮想識別子を国内通信だけで利用できるようあらかじめ決めておくこともできる。
【0026】
INシステム124は、仮想識別子、例えば所定の形式になった電話番号のリストを含むデータベースを備えている。仮想電話番号の最初の数字は、例えばすべての仮想識別子について常に特定の同じ数字にすることができる。第2のユーザ装置102のユーザは、そのように形式の決められた仮想識別子を受け取ると、呼び出しが仮想識別子を利用してなされたことがわかる。第2のユーザ装置102は、第1のユーザ装置100の第1の固有識別子、例えば真の電話番号を解読することはできない。しかし第1のユーザ装置100から受信した仮想識別子を利用してその仮想識別子がまだ有効であるかどうかによって、第2のユーザ装置102は、第1のユーザ装置100からの呼び出しに返信することができる。
【0027】
第2のユーザ装置102が第1のユーザ装置100の仮想識別子を利用してサービス網112から第1のユーザ装置100への通信接続を要求する場合には、その仮想識別子がINシステム124内のデータベースに突き合わされる。このデータベースには仮想識別子にリンクした固有識別子に関する情報が含まれており、正しい固有識別子を見付けた後、第1のユーザ装置100への接続が確立される。第1のユーザ装置100は、第1の固有識別子にリンクした仮想識別子に関する情報を受信するように構成されている。第1のユーザ装置100には、第1の固有識別子にリンクした仮想識別子の利用に関する情報をサービス網112から受信して利用する手段が存在している。接続を確立するよう要求されたとき、第1のユーザ装置100への通信接続が確立し、呼び出した人が第1のユーザ装置100の仮想識別子を利用している場合には、仮想識別子の利用に関する情報が例えば第1のユーザ装置100のディスプレイに表示される。
【0028】
図2には、本発明による通信システムの別の実施例が示してある。図2の通信システムは、図1に示した構成要素に加え、仮想電話番号サーバ126と、ショート・メッセージ・サービス・センタ(SMSC)128を備えている。ショート・メッセージ・サービス・センタ128は、サービス網112の内部または外部に位置しているが、移動交換局120とは接続されていて信号伝達がなされる。ショート・メッセージ・サービス・センタ128は1つのネットワーク構成要素であり、これを通じて短いメッセージが送信される。そのメッセージが受信機に届かない場合には、このショート・メッセージ・サービス・センタ128に記憶しておいてあとで送信することができる。仮想電話番号サーバ126はサービス網112の一部であり、ショート・メッセージ・サービス・センタ128とINシステム124の両方に接続されている。あるいは仮想電話番号サーバ126は、INシステム124の一部、またはショート・メッセージ・サービス・センタ128の一部である。仮想電話番号サーバ126は、例えば、仮想識別子の確立と、仮想識別子から固有識別子へのリンクを管理する。仮想電話番号サーバ126は、例えば利用可能なすべての仮想識別子のデータベースを備えることができる。第1のユーザ装置100は、SMS(短いメッセージ・サービス)メッセージを送ることによって仮想識別子を要求することができる。すると仮想電話番号サーバ126は、仮想識別子を確立し、例えばその仮想識別子を第1のユーザ装置100の第1の固有識別子にリンクさせる。ここで第1のユーザ装置100から要求された仮想識別子を、例えばショート・メッセージ・サービス・センタ128を通じて第1のユーザ装置100に送ることができる。
【0029】
図2に示した実施例では、ホーム・ロケーション・レジスタ122は、固有識別子、例えば電話番号のデータベースを備えている。同様に、一組の仮想識別子、例えば仮想電話番号を含むデータベースも存在している。仮想電話番号のデータベースは、例えばINシステム124と仮想電話番号サーバ126の中に配置されている。仮想識別子のデータベースは、例えば、仮想識別子の利用可能性に関する情報と、仮想識別子がリンクしている固有識別子に関する情報と、仮想識別子を利用する際の制約に関する情報を含んでいる。
【0030】
ここで、第1のユーザ装置100が、使用できる状態にある1つ以上の仮想識別子をすでに備えていると考えることにする。第2のユーザ装置102のユーザが第1のユーザ装置100を呼び出したいとする。第1のユーザ装置100のユーザは、第2のユーザ装置102のユーザに第1のユーザ装置100の仮想識別子を以前に提供している。第2のユーザ装置102は、第1のユーザ装置100の仮想識別子を、ユーザ装置100と102の間の例えば短いメッセージ・サービスまたは短距離の接続、例えばブルートゥース接続を通じてすでに受け取っているはずである。
【0031】
まず最初に、第2のユーザ装置102が、第1のユーザ装置100と第2のユーザ装置102の間の通信接続を確立する要求をサービス網112に送信する。この要求は、第1のユーザ装置100の仮想識別子を含んでいる。第2の移動交換局120は、通信接続を確立するために第1のユーザ装置100の仮想識別子を含む要求を第2のユーザ装置102から受信すると、ホーム・ロケーション・レジスタ122に仮想識別子を送る。ホーム・ロケーション・レジスタ122は、受信した仮想識別子にリンクされた所定の固有識別子に関する情報を含んでいる。次に、ホーム・ロケーション・レジスタ122は、INシステム124に、仮想識別子にリンクした固有識別子に関する問い合わせを送る。INシステム124では、ホーム・ロケーション・レジスタ122から受信した仮想識別子とそれに対応する固有識別子が仮想識別子のデータベースから見つけ出される。次に、受信した仮想識別子にリンクした固有識別子に関する情報がホーム・ロケーション・レジスタ122に戻され、第1のユーザ装置100への通信接続が確立される。
【0032】
図3は、本発明の好ましい一実施例に従って実現できる通信システムを示している。図3に示した本発明によるサービス網は、第1のユーザ装置(UE)100と、第2のユーザ装置(UE)102と、コンピュータ・ネットワーク134と、CSCF(呼び出しサーバ制御機能)130と、SIP(セッション開始プロトコル)サーバ132と、HSS(ホーム加入者サーバ)138と、1つ以上のアプリケーション・サーバ(AS)136とを備えている。
【0033】
コンピュータ・ネットワーク134は一般にはインターネットを表わしている。コンピュータ・ネットワーク134としては、ユーザ装置100、102、例えばパーソナル・コンピュータが民間のインターネット・アクセス・プロバイダまたはオンライン・サービス・プロバイダを通じてアクセスできるサーバの大きなネットワークがある。当業者であれば、コンピュータ・ネットワーク134を、無線遠隔装置例えばWAP(無線アプリケーション・プロトコル)通信装置によってアクセスする無線ネットワークを伴った形で実現可能であることも理解できよう。
【0034】
CSCF(呼び出しサーバ制御機能)130は、IPマルチメディア・コア・ネットワーク・サブシステムの中の主要な呼制御構成要素である。CSCF130は、例えば呼処理サーバ(CPS)の一部である。CSCF130は、2つの構成要素で構成されている。すなわち、サービングCSCF(S-CSCF)と問い合わせCSCF(I-CSCF)である。S-CSCFは、呼制御機能(CCF)と、サービング・プロファイル・データベース(SPD)と、アドレス処理(AH)機能を提供する。S-CSCFは、発呼している当事者のプロファイルをサービング・プロファイル・データベース(SPD)に要求し、その呼を問い合わせCSCF、メディア・ゲートウェイ制御機能(MGCF)あるいはサービスの相互作用が必要な場合には、サービス・ノードにルーティングする。I-CSCFは、HSS(ホーム加入者サーバ)に、呼をサービングCSCFに向けることを可能にする情報を要求する。I-CSCFは、着信呼ゲートウェイ(ICGW)機能と、アドレス処理(AH)機能を提供する。
【0035】
インターネット通信は、例えば、接続に基づくというよりはむしろセッションに基づいている。一般に、インターネット・プロトコル、例えばセッション開始プロトコル(SIP)は、セッションを確立し、そのセッションの機能を取り決めるのに利用される。サービス網がIPセッションの開始要求を受信した場合や、呼び出す相手のアドレスまたは番号への呼を受信した場合には、IPプロキシ・サーバは、その要求を呼び出す相手のアドレスまたは番号にルーティングするのにインテリジェント・サービス網が必要かどうかを判断する。SIP(セッション開始プロトコル)サーバ132は、1つ以上のユーザ装置100、102とのセッションを発生させ、変更し、終了させるためのアプリケーション層制御プロトコルを備えている。
【0036】
HSS(ホーム加入者サーバ)138は、所定のユーザのための基本データベースであり、一人のユーザに関する特徴とサービスのリストを保持し、そのユーザの位置とそのユーザへのアクセス手段を追跡するのに使用される。HSS138は、ホーム・ロケーション・レジスタ(HLR)の機能を提供する。HSSがHLRと異なるのは、HSSがIPをベースとしたインターフェイスを通じた通信も行なうことである。HSS138はさらに、ユーザ・モビリティ・サーバ(UMS)の機能を提供する。
【0037】
INシステムの機能は、アプリケーション・サーバ(AS)136によって提供される。アプリケーション・サーバ136は、1つ以上の構成要素、例えばサービス制御点(SCP)として提供することができる。あるいはアプリケーション・サーバ136は、ブロードバンド・パケット網の中に配置されるサーバとして提供することもできる。図3に示した実施例では、INシステムの機能を実行する3つのアプリケーション・サーバ136が示してある。本発明をより簡単に記述するため、簡単化した通信システムを提示してある。しかし本発明がこの簡単化した実施例に限定されることはない。
【0038】
特に、ユーザの固有識別子は、ユーザのeメール・アドレス、ユーザのURL(ユニバーサアル・リソース・ロケータ)識別子、Gopherアドレス、広域情報サーバ(WAIS)アドレス、ファイル転送プロトコル(FTP)アドレスのうちの1つ以上に関する情報を含むことができる。それぞれのユーザには、従来技術でよく知られているように、例えば唯一のeメール・アドレスが割り当てられる。eメール・アドレスはドメイン名を含んでおり、数値によるTCP/IPアドレスが得られるように、そのドメイン名がインターネット上のDNS(ドメイン名サーバ)サーバによって利用される。DNSサーバは、対応するインターネット・アドレスの1つまたは複数のIPアドレスを決定する。
【0039】
図3に示した典型的な一実施例による方法では、第1のユーザ装置がサービス網112から仮想識別子を要求する。仮想識別子は、例えばアプリケーション・サーバ136の中で確立される。また、仮想識別子から固有識別子へのリンクは、例えばアプリケーション・サーバ136において管理される。また、第1のユーザ装置100の中で仮想識別子を確立して第1のユーザ装置100の固有識別子にリンクさせることも可能である。第1のユーザ装置100は、例えばサービス網112内のルーターに対応する手段を備えている。したがって第1のユーザ装置100は、サービス網112のユーザ装置であることを直接見られないようにすることができる。したがってサービス網112でさえ、そのサービス網112内での通信に使用される仮想識別子にリンクした固有識別子に関して知ることができないようにすることが可能である。
【0040】
第1のユーザ装置100が例えば電子メール・メッセージを第2のユーザ装置102に送りたい場合、第1のユーザ装置100は、その電子メール・メッセージを送る際に第1のユーザ装置100の固有識別子にリンクした仮想識別子を添付する。第1のユーザ装置100の仮想識別子を含む電子メール・メッセージは、サービス網を通じて第2のユーザ装置102に配信される。第2のユーザ装置102はその電子メール・メッセージを受信し、それに添付されている仮想識別子を用いてその電子メール・メッセージに返信することができる。
【0041】
本発明の典型的な一実施例による方法を図4に示してある。UE_1と表示した第1の縦線は、第1のユーザ装置によって実行される機能を表わしている。サービス網と表示した第2の縦線は、サービス網によって実行される機能を表わしている。サービス網は、そのサービス網に関係する活動を可能にする主要な部分を含んでいる。UE_2と表示した第3の縦線は、第2のユーザ装置によって実行される機能を表わしている。矢印の付いた線は、この方法のさまざまな段階を表わしている。
【0042】
図4に示した方法を、第1のユーザ装置UE_1の所有者の観点から見てみることにする。第1のユーザ装置UE_1の所有者が例えば自動車を売りたいと考えているとする。第1のユーザ装置の所有者は、自動車を売る意思のあることを知らせるため、例えば新聞またはインターネットに販売広告を載せる。しかし第1のユーザ装置UE_1の所有者は、一般の人に自分の真の識別情報を明かしたくない。したがってその人は、自分の固有識別子、例えば実際の電話番号やeメール・アドレスを販売広告に載せることができない。第1のユーザ装置UE_1の所有者は、その代わりに図4の段階200において、仮想識別子を用いて真の識別情報を隠すためにサービス網にその仮想識別子を要求する。あるいは第1のユーザ装置UE_1の所有者は、第1のユーザ装置UE_1の中から選択した一組の仮想識別子をすでに備えていて、所定の仮想識別子を段階200で動作させる。
【0043】
段階202では、サービス網内で第1のユーザ装置UE_1のための仮想識別子が確立される。サービス網はまた、仮想識別子を第1のユーザ装置UE_1の第1の固有識別子にリンクさせる。第1のユーザ装置UE_1は、段階204において、仮想識別子、例えば仮想電話番号または仮想eメール・アドレスを受信する。段階206では、受信した仮想識別子が第1のユーザ装置UE_1に記憶される。次に、第1のユーザ装置UE_1の所有者は、仮想識別子を含む販売広告を例えば新聞またはインターネットに載せる。仮想識別子を含むこの販売広告は、例えば、サービス網を通じて所定のインターネット・サイトに送られる。すると潜在的な購入者は、その販売広告を読んでも販売者の真の識別情報を知ることができない。仮想識別子の使用に関して第1のユーザ装置UE_1の所有者に所定の制限を課することもできる。そのような制限としては、例えば所定の有効期間を決め、その期間だけ仮想識別子が有効であるようにするという制限がある。その所定の有効期間が例えば2週間であるとすると、2週間後には誰もその仮想識別子を使用できなくなる。
【0044】
潜在的購入者は、仮想識別子の付いた販売広告に気づくと、その仮想識別子を利用して販売者に連絡をとる。段階210では、第2のユーザ装置UE_2が、接続を確立するため第1のユーザ装置UE_1の仮想識別子を含む要求をサービス網に送信する。段階212では、サービス網において、第2のユーザ装置UE_2から受信した仮想識別子がリンクしている固有識別子が見いだされる。この時点で、仮想識別子が、第1のユーザ装置UE_1の第1の固有識別子にリンクされる。するとサービス網は、段階214において第2のユーザ装置と第1のユーザ装置の接続を確立する。サービス網は、第2のユーザ装置と第1のユーザ装置の接続を確立するために、第1のユーザ装置UE_1の第1の固有識別子を利用する。第1のユーザ装置UE_1の仮想識別子の使用に関する情報も、第1のユーザ装置UE_1に送信される。第1のユーザ装置UE_1の所有者は、その仮想識別子のための、第1のユーザ装置UE_1のアドレス・ブックに対して特定の名称、例えば“自動車ビジネス”をあらかじめ決めておき、それを販売広告で使用する。次に第2のユーザ装置UE_2が第1のユーザ装置UE_1の仮想識別子を使用したとき、その仮想識別子の使用に関する情報を第1のユーザ装置UE_1が受信する。段階216では、第1のユーザ装置UE_1が、第1のユーザ装置UE_1の第1の固有識別子にリンクした仮想識別子を用いて着呼が生じていることを、例えば第1のユーザ装置UE_1のディスプレイに表示する。第1のユーザ装置UE_1の所有者は、その第1のユーザ装置UE_1のディスプレイ上で例えば“自動車ビジネス”を示す通知を見る。このようにして、第1のユーザ装置UE_1の所有者は、着信接続がなされた理由をただちに知ってそれに応答することが可能になる。
【0045】
添付の図面による実施例を参照して本発明を上に説明したが、本発明がそれに限定されることはなく、添付の請求項の範囲内でいろいろな変更が可能なことは明らかである。
【符号の説明】
【0046】
100 第1のユーザ装置
102 第2のユーザ装置
104、106 アンテナ
108,110 双方向接続
112 サービス網
114 第1の基地局
116 第2の基地局
118 第1の交換局
120 第2の交換局
122 ホーム・ロケーション・レジスタ
124 インテリジェント・ネットワーク・システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置にサービスを提供するサービス網とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法であって、
前記第1のユーザ装置を利用して仮想識別子を要求するステップ(200)と、
前記第1のユーザ装置のために前記仮想識別子を確立するステップ(202)と、
前記第1のユーザ装置の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置の前記第1の固有識別子とリンクさせるステップ(202)と、
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信のために、該第1のユーザ装置の前記仮想識別子を利用するステップと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記仮想識別子を前記サービス網から要求することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の仮想識別子を前記サービス網から要求することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記仮想識別子を前記サービス網内で確立することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サービス網が一組の仮想識別子を備えており、そのうちの1つ以上を前記第1のユーザ装置の前記第1の固有識別子とリンクさせることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信で利用する前記仮想識別子を前記サービス網の中で選択することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記仮想識別子を前記第1のユーザ装置の中で確立することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信接続を確立するための、該第1のユーザ装置の前記仮想識別子を含む要求を前記サービス網に送信することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信接続を確立するための前記要求を、ショート・メッセージ・サービスを用いて送信することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信接続を確立するための前記要求を、電子メール・サーバ・サービスを用いて送信することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信接続を確立するための前記要求を、該第2のユーザ装置から送信することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のユーザ装置の前記仮想識別子の使用に関する情報を該第1のユーザ装置が受信することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
所定の有効期間をあらかじめ決めておき、その期間だけ前記仮想識別子が有効であるようにすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記仮想識別子を使用する権利のある1つ以上のユーザ装置をあらかじめ決めておくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置(100)と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置にサービスを提供するサービス網(112)とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠すシステムにおいて、
前記第1のユーザ装置(100)を利用して仮想識別子を要求し、
前記第1のユーザ装置(100)のためにその仮想識別子を確立し、
前記第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクさせ、
前記第1のユーザ装置(100)と前記第2のユーザ装置(102)の間の通信のために該第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を利用するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
前記仮想識別子をサービス網(112)から要求するように構成にされていることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記仮想識別子を前記サービス網(112)で確立するように構成にされていることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
複数の仮想識別子を前記サービス網(112)で確立するように構成にされていることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記サービス網(112)が一組の仮想識別子を備えており、そのうちの1つ以上を前記第1のユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクするように構成にされていることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1のユーザ装置(100)と前記第2のユーザ装置(102)の間の通信接続を確立するための、該第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を含む要求を前記サービス網(112)に送信するように構成されていることを特徴とする請求項15に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−44660(P2012−44660A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176872(P2011−176872)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2008−2585(P2008−2585)の分割
【原出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】