説明

通信システム

通信システム(1)が、基地局(2)と、この基地局(2)に対し相対移動可能とされる移動局(3)と、これら基地局(2)と移動局(3)との電波による互いの通信を中継可能とする中継局(4)とを備える。中継局(4)が基地局(2)と移動局(3)とに対しそれぞれ相対移動可能となるようにする。上記基地局(2)と移動局(3)とが互いに電波による通信をするとき、これを中継する上で上記中継局(4)を都合のよい位置に移動させることができる。よって、基地局(2)と移動局(3)とにおいて、受信の電波の強さが低下することは、上記中継局(4)が、ある位置に固定されていた従来の技術に比べて、より確実に防止される。このため、上記基地局(2)に対し移動局(3)が相対移動しても、これら両局同士(2,3)の電波による良好な通信がより確実に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、基地局と移動局との間で行われる電波による通信が、中継局を介してなされるようにした相対移動する局同士の間の通信システムに関する。
【背景技術】
通信システムには、従来、日本国公開特許公報平6‐342057号で示されるものがある。
上記公報のものによれば、基地局である制御局と、この基地局に対し相対移動可能とされる移動局である複数の船舶との間で電波による通信が行われるようになっている。これにより、各船舶の位置が知覚されて、海上での互いの衝突が防止されるようになっている。
ところで、上記従来公報において、基地局に対し移動局が相対移動することにより、これら両局同士が互いに遠く離れることとなったり、これら両局の間に電波を遮る島や山が存在することになった場合には、受信の電波の強さが低下して、所望の通信ができなくなるおそれを生じる。
そこで、従来、上記基地局と移動局とが中継局を介し電波による通信を可能としたものが提案されている。
しかし、従来の技術では、上記中継局は所定位置に固定されており、このため、基地局に対し移動局が相対移動することにより、この移動局と中継局との間に電波を遮る島や山が存在することとなる場合には、やはり、受信の電波の強さが低下する。よって、上記したように中継局を設けたとしても、基地局と移動局との間で所望の通信ができなくなるおそれがある。
【発明の開示】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、基地局に対し移動局が相対移動しても、これら両局同士の間の電波による良好な通信がより確実に維持されるようにする目的とする。
本発明は、基地局と、この基地局に対し相対移動可能とされる移動局と、これら基地局と移動局との電波による互いの通信を中継可能とする中継局とを備えた通信システムにおいて、
上記中継局が上記基地局と移動局とに対しそれぞれ相対移動可能となるようにしたものである。
上記発明によれば、上記基地局と移動局とが互いに電波による通信をするとき、これを中継する上で上記中継局を都合のよい位置に移動させることができる。よって、基地局と移動局とにおいて、受信の電波の強さが低下することは、上記中継局が、ある位置に固定されていた従来の技術に比べて、より確実に防止される。このため、上記基地局に対し移動局が相対移動しても、これら両局同士の電波による良好な通信がより確実に維持される。
なお、上記発明において、上記基地局と移動局とに対するそれぞれ所定の相対位置に上記中継局を自動的に移動させるようにしてもよい。
このようにすれば、上記移動局が最終の目的位置への移動途中であっても、上記基地局と移動局との間の通信は、上記のように自動的に移動させられる中継局の中継によって良好に維持され、つまり、上記基地局と移動局との間の良好な通信は更に確実に維持される。
また、上記移動局と中継局のうち、一方の局の移動に他方の局が連動させられるようにしてもよい。
このようにすれば、上記一方の局に他方の局が連動する分、これら両局の互いの相対位置をある距離内に維持させることができ、よって、両局同士の良好な通信はより確実に維持される。
また、上記一方の局に他方の局が連動させられる分、この他方の局の移動用推進装置の構成は簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、第1実施形態で、通信システムの全体図である。
図2は、第1実施形態で、移動局(中継局)の船体の展開斜視図である。
図3は、第1実施形態で、移動局(中継局)の側面図である。
図4は、第1実施形態で、移動局(中継局)の線図である。
図5は、第1実施形態で、制御装置のフローチャートを示す図である。
図6は、第1実施形態で、制御装置の他のフローチャートを示す図である。
図7は、第1実施形態で、制御装置の更に他のフローチャートを示す図である。
図8は、第1実施形態で、制御装置の更に他のフローチャートを示す図である。
図9は、第1実施形態で、船の衝突防止の作用説明図である。
図10は、第2実施形態で、図1に相当する図である。
図11は、第3実施形態で、図1に相当する図である。
図12は、第4実施形態で、図1に相当する図である。
図13は、第5実施形態で、移動局と中継局の側面図である。
図14は、第6実施形態で、移動局と中継局の側面図である。
図15は、第6実施形態で、図13で示したものの正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明をより詳細に説述するために、その実施形態を添付の図面に従がってこれを説明する。
[第1実施形態]
図1〜9は、最良の形態である第1実施形態を示している。
図1において、符号1は通信システムで、この通信システム1は、陸側に固定されるよう設定された基地局2と、海などの水面に浮かべられた船として例示され、上記基地局2に対し相対移動可能とされる移動局3と、上記と同様に船として例示され、上記基地局2と移動局3との電波による通信を中継可能とする中継局4とを備えている。上記中継局4は上記基地局2と移動局3とに対しそれぞれ相対移動可能とされている。
上記基地局2はGPS(Global Positioning System)衛星からの発信を受信可能とするGPSアンテナ6と、移動局3および中継局4と互いの送、受信を可能とするアンテナ7と、これら各アンテナを通し信号を入、出力して上記移動局3および中継局4を制御する制御装置8およびリモートコントロール装置9とを備えている。
図2において、上記移動局3と中継局4は互いにほぼ同構成の船11によって構成されており、これら船11が備える船体12は、下記する第1〜第4船体12(A)〜12(D)のいずれかで構成され、上記第1〜第4船体12(A)〜12(D)の船体本体13は互いに同形同大であって、部品の共通化が図られており、この船体本体13のデッキには上方に向って開く開口14が成形されている。
上記第1船体12(A)は無人専用型であって、上記開口14を開閉自在に閉じるハッチ16を備えている。上記第2船体12(B)は有人専用型であって、上記開口14を通し船体本体13内に嵌入されこの船体本体13に支持されるシート17と、このシート17をその上方から覆うと共に上記開口14を開閉自在に閉じてキャビン18を成形する船体上部19とを備えている。上記第3船体12(C)は無人、有人両用型であって、上記シート17と、上記船体12に昇降自在に支持され、この昇降により上記開口14を開閉自在とする天蓋20とを備えている。この天蓋20の上昇によりキャビン18が成形されて有人型とされ、上記天蓋20の下降により開口14が閉じられて無人型とされる。上記第4船体12(D)は無人、有人両用型であって、上記シート17と、上記船体12に上下回動自在に枢支され、この上下回動により上記開口14を開閉自在とする透明のシールド21とを備えている。このシールド21の上方回動によりキャビン18が成形されて有人型とされ、上記シールド21の下方回動により開口14が閉じられて無人型とされる。
図1,3,4において、上記船11は水面に浮かべられる上記第4船体12(D)を備えている。上記船11は、その船体12を推進させる推進装置23を備えている。この推進装置23は、上記船体12の後部に対し後下がりの軸心24a回りに回転自在に支承されるプロペラで例示される左右一対の推進機24,24と、これら各推進機24を個別に駆動させて船体12を推進可能とさせる駆動装置である左右一対の電動機25,25と、これら各電動機25に電力を供給可能とするバッテリ26と、エンジン27により駆動させられ自動電圧調整器28を介して上記各バッテリ26に充電電圧を供給する発電機29と、リレー30を介し上記バッテリ26に接続されて上記エンジン27を始動可能とするスタータモータ31と、船体12に支持される左右一対のアクセル操作レバー32,32と、これら各操作レバー32の操作量を検出する左右一対の角度センサー33,33とを備えている。
また、上記推進装置23は、上記船体12を操舵可能とさせる操舵装置35を備えている。この操舵装置35は、上記船体12に昇降自在に支承されこの昇降動作により、使用、不使用状態のいずれか一方が選択可能とされるラダー36と、このラダー36を昇降駆動させるシリンダ式のアクチュエータ37と、上記ラダー36を連動手段により連動連結させ上記船体12に操舵操作可能に支承される操舵ハンドル38と、この操舵ハンドル38の操作量を検出する角度センサー39と、GPSアンテナ41と、上記各局2〜4同士の送、受信を可能とするアンテナ43,44と、レーダアンテナ45と、船体12の推進方向を検出する方位センサー46と、船体12のローリング時における揺れ角度を検出する揺れセンサー47とを備えている。
図3中一点鎖線で示すように、上記移動局3と中継局4との通常運転時には、上記ラダー36は水面上に上昇させられて不使用状態とされている。図3中実線で示すように、上記ラダー36を水面下にまで下降させれば、このラダー36は使用状態となる。上記操舵ハンドル38に対しラダー36を連動連結させる上記連動手段は、リンク機構、ケーブル、ギヤーなどのいずれか1つ、もしくは、これらの組み合せによって構成される。
上記移動局3と中継局4の各船11は、そのそれぞれ各構成部品を電子的に制御する制御装置51を備えている。この制御装置51の中央処理装置(C.P.U.)52には、上記各電動機25、アクチュエータ37、GPSアンテナ41、アンテナ43,44、およびレーダアンテナ45がそれぞれモータコントローラ53、ラダーコントローラ54、GPS制御装置55、無線モデム56、データ無線モデム57、およびレーダユニット58を介して接続されている。また、上記中央処理装置52には、上記各電動機25がタコジェネ59とモータ監視ユニット60とを介して接続され、更に、上記中央処理装置52には上記バッテリ26、エンジン27、自動電圧調整器28、リレー30、角度センサー33,39、方位センサー46、および揺れセンサー47が接続されている。
また、上記制御装置51の中央処理装置52には、各種観察ユニットの一部を構成し、水面下の地形を探査するソナー61と、上記移動局3と中継局4を手動運転にするか、自動運転にするかを選択可能とする手動、自動切換スイッチ62と、上記制御装置51の中央処理装置52による制御条件を追加、変更可能とするパソコンである端末機63とが接続されている。
上記移動局3と中継局4とを運転して移動させるときには、それぞれエンジン27により発電機29を駆動させ、この発電機29により上記バッテリ26に充電する。このバッテリ26から供給される電力により上記各電動機25が駆動させられ、これに連動する各推進機24が上記移動局3と中継局4を推進させる。
上記移動局3と中継局4を手動運転により移動させるときには、上記切換スイッチ62を手動に切り換える。すると、上記各操作レバー32への操作の操作量により、上記各電動機25の駆動力がそれぞれ個別に可変とされ、移動局3と中継局4の移動速度が定められる。また、上記操舵ハンドル38への操作の操作量により、上記左右電動機25,25の各駆動力がそれぞれ定められ、これに伴い上記左右推進機24,24が出力するそれぞれの推進力により、上記移動局3と中継局4が推進させられると共に、上記各推進力の値が相違させられることによりその船体12が所望方向に操舵される。
上記移動局3と中継局4の各船11を自動運転により移動させるときには、上記切換スイッチ62を自動に切り換える。すると、上記移動局3と中継局4とは、上記制御装置8,51により、次のように自動制御されて、それぞれ基地局2の相対的な所定位置に移動させられる。
図5〜8は、上記制御装置8,51のフローチャートを示し、符号Sはそのプログラムの各ステップを示している。
図5において、まず、S1で、上記各GPSアンテナ6,41と制御装置8,51とにより、移動局3と中継局4のそれぞれ自身の位置が検出され、これに基づき基地局2に対する移動局3と中継局4のそれぞれの相対位置が検出される。
S2において、上記基地局2に対し移動局3が向おうとする所定の相対位置である目的位置までの方位と距離とが演算される。また、上記基地局2と移動局3に対しそれぞれ中継局4がとるべき所定の相対位置である目的位置までの方位と距離とが演算される。
上記した移動局3に対する中継局4の相対位置は、移動局3の現位置、移動局3の目的位置、およびこの目的位置に向う途中の移動局3のいずれかの位置に対する中継局4の各相対位置を含んでいる。
上記中継局4の目的位置は、例えば、基地局2と移動局3との互いの通信電波を遮る島や山などの物体を避けながら基地局2と移動局3とを最短で結んだときのこれら基地局2と移動局3間の中央位置などである。要するに、基地局2と移動局3とが電波による通信をするとき、これを中継する上で都合のよい位置が上記中継局4の目的位置とされる。
また、S3において、上記移動局3と中継局4のそれぞれの船首の向き(現在の推進方向)が上記方位センサー46により検出される。
S4において、上記S2の演算結果とS3の検出結果とに基づき、上記移動局3と中継局4の各制御装置51により左右電動機25,25の駆動力がそれぞれ定められる。そして、上記左右推進機24,24が出力するそれぞれの推進力により、上記移動局3と中継局4とが所定の船速度で、かつ、その目的位置に各船首が向くよう操舵される。
S5において、上記S1と同様に、各GPSアンテナ6,41と制御装置8,51とにより、それぞれ自身の位置が検出され、上記移動局3と中継局4とがそれぞれ目的位置に到着したか否かが判断される。目的位置に到着したと判断されれば、S6において、上記基地局2から移動局3と中継局4に対し次の目的位置の指令があるか否かが判断される。このS6において、次の目的位置があった場合には、S7において、上記各制御装置51により従前の目的位置が次の目的位置に変更される。以下、上記S1〜S4が繰り返され、S8において、移動局3と中継局4が上記した次の目的位置に到着したか否かが判断される。
上記の場合、目的位置を最終の目的位置に到着するまでの途中の目的位置とし、次の目的位置を上記最終の目的位置としてもよい。また、上記各GPSアンテナ6,41はGPS補正データ受信アンテナを備えていて、位置補正が精度よくできる。このため、各局2,3,4の自身の位置が精度よく検出され、また、これに伴い移動局3と中継局4をその各目的位置に位置精度よく到着させることができる。
そして、上記移動局3と中継局4とが共に最終の目的位置に到着したときには、上記移動局3は、その目的位置において気象や地形などの各種観察を行い、これを移動局3の制御装置51でデータ化して、この移動局3のアンテナ44により中継局4のアンテナ44と制御装置51とを介し基地局2へ送信する。
ここで、上記したように、中継局4は上記基地局2と移動局3とに対してそれぞれ相対移動可能であるため、上記基地局2と移動局3とが電波による通信をするとき、これを中継する上で上記中継局4を都合のよい位置に移動させることができる。よって、基地局2と移動局3とにおいて、受信の電波の強さが低下することは、上記中継局4が、ある位置に固定されていた従来の技術に比べて、より確実に防止され、このため、上記基地局2に対し移動局3が相対移動しても、これら両局2,3同士の電波による良好な通信がより確実に維持される。
しかも、上記中継局4の移動は、上記移動局3の移動に伴い、上記基地局2と移動局3に対する中継局4の所定の相対位置である目的位置を次々と変化させながら自動的になされるため、移動局3が最終の目的位置への移動途中であっても、上記基地局2と移動局3との間の通信は上記のように移動させられる中継局4の中継によって良好に維持される。
ここで、上記移動局3を陸地側に対しより接近させようとする場合、この移動局3を無人にすれば、ある程度の危険が許容されることから、上記接近をより十分にさせることができる。このため、上記移動局3のソナー61により、陸地側の水面下の地形などが、より精度よく探査できる。
図6において、上記移動局3と中継局4のそれぞれ自動運転による移動中、S9において、電動機25が所定の駆動力を出力するよう制御装置51が指令値を出力しているとき、上記電動機25の回転数は上記タコジェネ59とモータ監視ユニット60とにより検出され、上記指令値と電動機25の回転数とが比較される。この場合、船11の通常の運転中では、電動機25の回転数は、実質的に推進機24の回転数である。
S10において、上記モータ監視ユニット60により検出された電動機25の回転数が上記指令値に応じた所定値の範囲に入っているか否かが判断される。上記回転数が上記所定値の範囲に入っていない場合には、上記推進装置23に異常が発生したとして、S11が実行される。
上記S11において、上記両電動機25,25のうち、一方の電動機25の回転数が上記指令値に応じた所定値以上と判断されるという状態は、例えば、この一方の電動機25に対応する推進機24が切損して上記電動機25が軽負荷で空転しているような場合に相当している。また、上記一方の電動機25の回転数が上記指令値に応じた所定値以下と判断されるという状態は、例えば、この一方の電動機25に対応する推進機24にロープが絡まっているような場合に相当している。そして、上記各場合には、異常信号が出力され、これに基づき異常警報が発せられ、および/もしくは異常灯が点灯させられる。
また、S12において、左右両電動機25,25のうち、異常が発生したと判断された側の電動機25と、その推進機24とは停止させられ、他の電動機25とその推進機24とは駆動が続行される。これに基づき、S13において、左右両推進機24,24による自動運転に基づく操舵が中止されて、上記アクチュエータ37によりラダー36が水面下に下降させられて使用状態とされ、その操舵機能が発揮させられる。つまり、他の推進機24による移動局3と中継局4の推進と、ラダー36による移動局3と中継局4の操舵とが同時に行われる。
ここで、上記操舵装置35のラダー36は、リンク機構などの連動手段によって、上記操舵ハンドル38に連動連結されている。このため、この操舵ハンドル38を操作してラダー36による操舵を繰り返すと、上記連動手段は上記各推進機24に比べて早期に摩耗し易いものである。このため、上記操舵装置35に寿命上の問題点が生じるおそれがある。
そこで、上記したように移動局3と中継局4の各船11の通常の運転時には、ラダー36を不使用状態として、これら移動局3と中継局4の各船11の操舵を上記両推進機24,24によって行うようにしてある。よって、これら各推進機24は単なる回転体であることから、これら各推進機24に寿命上の問題点が生じることは抑制される。
そして、上記したように両推進機24,24のうち一方の推進機24に異常が発生したときに、始めてラダー36を使用状態にすることとしている。このため、このラダー36の使用頻度を少なく抑制した分、上記操舵装置35の寿命をより向上させることができる。
図7において、上記移動局3と中継局4のそれぞれ自動運転による移動中、S14において、各エンジン27の運転状態が良好であるか否かがそれぞれ判断される。この判断は、エンジン27の回転数、油温、油圧、および冷却水温等が正常であるか否かに基づいて行われる。上記S14で、エンジン27の運転状態が良好でないと、判断されれば、S15で、エンジン27が停止させられる。
上記S14において、エンジン27の運転状態が良好であると判断されれば、S16において、上記揺れセンサー47により船11の船体12の揺れ角度が検出される。S17において、上記揺れ角度が所定値以上であって、かつ、所定時間以上続いたか否かが判断される。この判断が肯定されるときには、上記推進装置23によって左右のうち、いずれか一方向に徐々に操舵され、この操舵と共に上記揺れセンサー47により揺れ角度が検出される。この場合、順次検出される揺れ角度が漸増するときには、操舵方向が逆にされて、この揺れ角度がより小さくなるところまで操舵が行われる。
しかし、上記操舵にかかわらず、上記S17での判断が肯定されるときには、波が荒いと判断され、S18において、上記エンジン27が停止させられる。これにより、波が荒くて揺れ角度の大きいことに基づくエンジン27の破損が防止される。
S19において、上記S18のエンジン27の停止から所定時間以上経過したか否かが判断される。この停止期間が所定時間以上であれば、S20が実行される。このS20において、上記揺れセンサー47により船体12の揺れ角度が検出される。S21において、この揺れ角度が所定値未満であると判断されれば、波が静まったと判断される。すると、S22において、上記スタータモータ31がオンされて、エンジン27が始動、かつ、駆動させられ、移動局3と中継局4が通常の自動運転状態とされる。
図8,9において、上記移動局3(もしくは中継局4、この図8,9の説明において以下同じ)の自動運転による移動中(S23)に、S24において、上記レーダアンテナ45とレーダユニット58により他船67,68の位置が監視される。S25において、上記移動局3を中心とする第1監視半径R1以内に上記他船67,68があると判断され、かつ、S26において、上記他船67が移動局3に接近するものである場合には、各電動機25の停止により各推進機24が停止させられて、移動局3が停船状態とされる。
S27において、上記レーダアンテナ45とレーダユニット58により他船67,68の推進方位が監視される。S28において、上記移動局3から上記他船67をみた場合でのある角度範囲θ内に、所定時間以上にわたり、上記接近する他船67が存在し続けた場合、この他船67は移動局3に衝突する危険があると判断される。
S29において、上記のように危険があると判断された他船67が上記第1監視半径R1よりも小さい値の第2監視半径R2に入ったか否かが判断される。上記他船67が上記第2監視半径R2に入ったと判断された場合には、S30において、上記各電動機25の駆動により各推進機24が駆動させられて、移動局3が推進移動させられる。また、この際、推進装置23により、上記移動局3は、この移動局3への他船67の接近方向に対し90°の方向に向けて操舵させられる。
S31において、上記他船67が第1監視半径R1の外側になったか否かが判断される。上記他船67が外側になった場合には、S32において、上記各電動機25の停止により各推進機24が停止させられて、移動局3が停船状態とされる。S33において、上記他船67が第1監視半径R1の外側になったか否かが判断され、上記他船67が外側になった場合には、S23に戻る。
上記構成によれば、移動局3に対する他船67,68の衝突がより確実に回避されて、移動局3の移動や、この移動局3による作業が円滑に達成される。
なお、以上は図示の例によるが、基地局2は船や車両などの移動体であってもよい。また、上記移動局3と中継局4はそれぞれ複数であってもよい。また、上記推進装置23の推進機24はプロペラにより水流を後方に向って噴射させるものであってもよい。また、上記各推進機24は電動機25を介することなくそれぞれエンジン27により直接駆動させてもよい。また、推進装置23と操舵装置35とは船外機で構成してもよい。また、上記推進装置23による操舵中、上記ラダー36は、移動局3と中継局4とをそれぞれ直進させる状態に解除可能に固定して不使用状態にさせ、この状態で水面下に位置させておいてもよい。
以下の図10〜14は、他実施形態を示している。これら各実施例は、前記第1実施形態と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら各実施例における各部分の構成を、本発明の課題、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態を示している。
図10において、上記移動局3は、下記の第1−第6の目的のうち、少なくともいずれか一つの目的を備えた船11である。
第1は、レーザガンの標的用の無人船11であり、この船11は船体12から上方に向かって突設される帆のような標的用の標的板82を備えている。
第2は、危険な作業である機雷探査用の無人船11であり、船体12にはワイヤー83により磁気探査センサー84が連結されている。船11の推進により、上記船体12から遠く離れて上記磁気探査センサー84が曳航され、この磁気探査センサー84により機雷が探査可能とされる。
第3は、水中探査用の船11であり、遠隔操作可能な潜水艇であるROV(リモートオペレーションビークル)85を搭載し、また、このROV85に遠隔操作可能な水中カメラ86が取り付けられている。これらROV85と水中カメラ86とを水中に位置させることにより、不審船の船底における不審物の有無等の探査が可能とされる。
第4は、水底の地形等測量用の船11であり、船体12の船底にNMB(ナローマルチビーム)を発信するソナー88が取り付けられている。このソナー88が、水底に向かって扇型に超音波ビーム89を発信することにより、上記地形の測量が可能とされる。
第5は、所定海域に対する不審者の侵入探査等、水中探査用の船11であり、船体12の船底の前端部にソナー90が取り付けられている。このソナー90が、船11の前下方に向かって扇型に超音波ビーム91を発信することにより、上記不審者の侵入の警戒が可能とされる。
第6は、機雷の視認観察による探査や所定海域に対する不審者の侵入探査等、水中探査用の船11である。この船11は、船体12の前端部に支持され下方に向かって伸縮自在とされるテレスコープ形状の支持体92と、この支持体92の下部に取り付けられる水中カメラ93とを備えている。上記支持体92を伸長させれば、上記水中カメラ93が水中に位置してこの水中カメラ93による探査が可能となる。一方、上記支持体92を収縮させれば、この支持体92と水中カメラ93とが共に水面上に位置して、上記支持体92と水中カメラ93とに影響されることなく、船11の高速推進が可能となる。
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態を示している。
図11において、上記移動局3はヘリコプターで例示される飛行体とされている。また、中継局4は水面に浮かべられた浮体とされ、この浮体は水底に係留具70により係留されている。
上記中継局4は、昼夜の水流の変化や風向きの変化などを利用して、基地局2と移動局3とに対するそれぞれ所定の相対位置に自動的に移動させられるようになっている。なお、上記中継局4に推進装置23を設けてもよい。
[第4実施形態]
図12は、第4実施形態を示している。
図12において、上記移動局3は自動車で例示される車両とされている。また、中継局4は、GPSアンテナ41とアンテナ43,44とを支持して空中に浮遊させられる気球72と、この気球72を陸側に係留させる係留具70とを備え、制御装置51は陸側に固定されている。
上記中継局4は、昼夜の風向きの変化などを利用して、基地局2と移動局3に対する所定の相対位置に自動的に移動させられるようになっている。なお、上記中継局4に推進装置23を設けてもよい。
[第5実施形態]
図13は、第5実施形態を示している。
図13において、上記中継局4は空気中に浮く浮体とされ、この中継局4は係留具70とウィンチ73とにより移動局3に係留されて、この移動局3の移動に中継局4が連動させられる。また、上記ウィンチ73の作用により、上記中継局4は移動局3のブラケット74上に離脱可能に搭載される(図12中一点鎖線)。なお、上記移動局3は車両であってもよい。また、上記移動局3と中継局4を逆にした構成であってもよい。
[第6実施形態]
図14,15は、第6実施形態を示している。
図14,15において、上記中継局4はヘリコプターで例示される飛行体とされ、この中継局4は移動局3上に発着可能に搭載され、この搭載状態で、移動局3の移動に中継局4が連動させられる。
移動局3は、船体12の上面に支持されて展開可能な格納室76と、上記船体12および格納室76に取り付けられる複数の距離センサー77とを備え、これら距離センサー77は制御装置51に接続されている。
図14中一点鎖線で示すように、上記格納室76を展開させると、上記各距離センサー77が船体12に対する中継局4の発着位置の周りに配置されるようになっている。上記移動局3への中継局4の発着時に、移動局3に対する中継局4の相対位置が上記各距離センサー77により検出され、その検出信号が上記中継局4に入力されることにより、この中継局4の発着が円滑になされる。なお、上記移動局3と中継局4を逆にした構成としてもよい。
上記船体12の上面には、この船体12の上面上に搭載された中継局4に接合されて、この中継局4の燃料タンクに移動局3から燃料を供給可能とするコーン形状の燃料供給具78が設けられている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局(2)と、この基地局(2)に対し相対移動可能とされる移動局(3)と、これら基地局(2)と移動局(3)との電波による互いの通信を中継可能とする中継局(4)とを備えた通信システムにおいて、
上記中継局(4)が上記基地局(2)と移動局(3)とに対しそれぞれ相対移動可能となるようにしたことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
上記基地局(2)と移動局(3)とに対するそれぞれ所定の相対位置に上記中継局(4)を自動的に移動させるようにしたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の通信システム。
【請求項3】
上記移動局(3)と中継局(4)のうち、一方の局の移動に他方の局を連動させるようにしたことを特徴とする請求の範囲第1項、もしくは第2項に記載の通信システム。

【国際公開番号】WO2004/047335
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553224(P2004−553224)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014856
【国際出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】