説明

遅延復調デバイスおよび遅延復調デバイスの位相調整方法

【課題】 偏波乖離量の低減を図った遅延復調デバイスおよび遅延復調デバイスの位相調整方法を提供する。
【解決手段】遅延復調デバイス1は、長さの異なる2つのアーム導波路をそれぞれ有し、DQPSK信号が分岐されて入力される第1,第2のマッハツェンダー干渉計4,5と、各マッハツェンダー干渉計の2つのアーム導波路に配置される1/2波長板47と、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9上に、1/2波長板47を挟んで形成された第1のヒータA,Bおよび第2のヒータC,Dと、第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13上に、1/2波長板47を挟んで形成された第1のヒータE,Fおよび第2のヒータG,Hと、を備える。第1のヒータおよび第2のヒータを偏波乖離量調整用ヒータおよび位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信に用いる遅延復調デバイス、特に、高密度波長分割多重(DWDM: Dense Wavelength Division Multiplexing)伝送方式の光ファイバ通信においてDQPSK信号を復調させるPLC型のマッハツェンダー干渉計(MZI)を備えた平面光波回路型の遅延復調デバイスおよびその位相調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロードバンドの急速な普及を背景に、光伝送システムの高速化(伝送速度40Gbpsへ)の検討が盛んに行われている。しかしながら、伝送速度を上げると、光信号1bitあたりの時間幅が減少し、光ファイバの特性の影響により、信号波形が劣化し、通信回線の品質の劣化を引き起こしてしまうという問題がある。40Gbps級の長距離伝送を行う際には、伝送経路の途中で、光信号を電気に信号に変換して、再び、光信号に変換しなおすといった中継器が必要であるため、既存のファイバ網を使用し、ネットワークを構築することを困難にさせている。このため、現在では光信号の時間幅を拡大させることによって信号波形劣化を低減できる多値変調の差動直交位相変調(DQPSK:Differential QuadraturePhase Shift Keying)等の研究開発が行われている。
【0003】
DQPSKは4つの情報を異なる4つの光位相差に対応させて伝送する、つまり、2ビットのデータから構成される各シンボルの値(0,1,2,3)の4つの情報を、隣接する2つのシンボルの値の変化に応じて搬送波の位相(θ,θ+π/2,θ+π,θ+3π/2)を変化させてデータを伝送する変調方式である。このDQPSK方式を用いた40GbpsDQPSK通信方式では、従来の2値変調方式を用いた40Gbps伝送よりも4倍の距離を伝送できることになる。このDQPSKにより、既存のファイバ網を利用した大都市間のネットワークの構築が可能になると考えられる。従来、このようなDQPSK信号或いはDPSK信号を受信装置において復調するための遅延復調デバイスとして、例えば、特許文献1に記載された光受信回路や特許文献2に記載された復調器が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された光受信回路は、1組の光パスの一方に1シンボル遅延素子を備えその1組の光パスを介して入力RZ−DPSK信号、つまり、RZ(Return to zero)変調されたDPSK信号を伝搬する干渉計(マッハツェンダー干渉計)を備える。また、特許文献2には、差動位相変調(DPSK)された光信号或いは差動四値位相変調(DQPSK)された光信号を、マイケルソン干渉計を用いて復調する復調器が開示されている。
【特許文献1】特開2007−60442号公報
【特許文献2】特開2007−151026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、伝送速度が40GbpsのDQPSK方式を用いた40GbpsDQPSK通信方式における遅延検波の際に、2つのマッハツェンダー干渉計(Mach-Zehnder Interferometer:MZI)回路を有し、DQPSK信号を復調するPLC型の遅延回路(遅延復調デバイス)が使用されている。40GbpsDQPSK通信方式において、その遅延回路における偏波乖離量(Polarization Dependent frequency:PDf)の許容量は0.2GHz以下であると言われている。PDfを解消する手段として、マッハツェンダー干渉計(MZI)部に1/2波長板を挿入することも考えられるが、ただ挿入するだけでは、偏波乖離量(PDf)を0.2GHz以下に抑えるのは難しく歩留りが発生してしまう。そのため、偏波乖離量が小さい(<0.2GHz)復調用の遅延回路を安定して作製することは非常に困難であった。
【0006】
偏波乖離量を小さくする方法の一つに、2つのマッハツェンダー干渉計の各アーム導波路に形成されているヒータに大電圧を負荷する方法があるが、各マッハツェンダー干渉計の相対的な位相を調整する(π/2シフトさせる)際に、偏波乖離量が変化してしまい、偏波乖離量(PDf)を0.2GHz以下に抑えるのは難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、偏波乖離量の低減を図った遅延復調デバイスおよび遅延復調デバイスの位相調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはこのような従来技術の背景に鑑み鋭意研究を行った結果、次のことが分かった。すなわち、長さの異なる2つのアーム導波路上に第1のヒータおよび第2のヒータをそれぞれ有する第1および第2のマッハツェンダー干渉計を有し、DQPSK信号を復調させる平面光波回路型の遅延復調デバイスにおいて、ヒータにある電力(例えば.0W/mm)を一定時間負荷すると、ヒータ幅の大きいヒータ(例えばヒータ幅が60μmのヒータ)では、時間と共にTE成分とTM成分の乖離量である偏波乖離量(PDf)が変化する(図7および図9参照)。そして、ヒータ幅の小さいヒータ(例えばヒータ幅が50μmのヒータ)では、長い間ある電力(例えば1.0W/mm)を供給しても、偏波乖離量は変化せず、中心波長のみがシフトする(図8および図9参照)。さらに、ヒータ幅の小さいヒータ(例えばヒータ幅が60μmより小さいヒータ)でも、電力を大きくすると、時間と共に偏波乖離量が変化する(図7および図9参照)。これらのことを踏まえて、上記課題の解決手段として、第1のヒータおよび第2のヒータのいずれか一方は偏波乖離量を調整する偏波乖離量調整用ヒータとして用い、その他方は位相トリミング用ヒータとして用いることで、偏波乖離量が小さく、かつ、両マッハツェンダー干渉計の相対的な位相を調整することが可能となることを見出した。
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る遅延復調デバイスは、DQPSK信号を復調させる平面光波回路型の遅延復調デバイスであって、長さの異なる2つのアーム導波路をそれぞれ有し、DQPSK信号が分岐されて入力される第1および第2のマッハツェンダー干渉計と、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路に配置される1/2波長板と、前記第1のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路上に、前記1/2波長板を挟んでそれぞれ形成された第1のヒータ(A,B)および第2のヒータ(C,D)と、前記第2のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路上に、前記1/2波長板を挟んでそれぞれ形成された第1のヒータ(E,F)および第2のヒータ(G,H)と、を備え、前記第1のヒータと前記第2のヒータのいずれか一方を偏波乖離量調整用ヒータとして、その他方を位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、偏波乖離量(PDf)を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。ここで、「偏波乖離量調整」とは、TE成分とTM成分の乖離量である偏波乖離量(PDf)を調整することを意味し、「位相トリミング」とは、第1および第2のマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相調整を行うことを意味する。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る遅延復調デバイスは、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計各々における前記第1のヒータと前記第2のヒータのいずれか一方が、偏波乖離量が小さくなるように偏波乖離量を調整する偏波乖離量調整用ヒータとして用いられ、かつ、前記第1マッハツェンダー干渉計における前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方と、前記第2マッハツェンダー干渉計における前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方との少なくとも一方が、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相トリミングを行う位相トリミング用ヒータとして用いられることを特徴とする。この構成によれば、第1のヒータおよび第2のヒータのいずれか一方は偏波乖離量調整用ヒータとして用い、その他方は位相トリミング用ヒータとして用いることで、偏波乖離量(PDf)を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る遅延復調デバイスは、前記第1のヒータと前記第2のヒータのうち、前記偏波乖離量調整用ヒータとして用いる一方のヒータのヒータ幅と、該一方のヒータに供給される電力とは、該一方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化する所定の値にそれぞれ設定されており、かつ、前記第1のヒータと前記第2のヒータのうち、前記位相トリミング用ヒータとして用いる他方のヒータのヒータ幅と、該他方のヒータに供給される電力とは、該他方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化せずに中心波長のみシフトする所定の値にそれぞれ設定されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明に係る遅延復調デバイスは、前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より大きく、かつ、前記一方のヒータに供給される電力と前記他方のヒータに供給される電力とは同じであることを特徴とする。
【0013】
上記一方のヒータのヒータ幅を上記他方のヒータのヒータ幅より大きくして、一方のヒータに供給される電力と他方のヒータに供給される電力とを同じにした場合、ヒータ幅の大きい一方のヒータでは、時間と共にTE成分と偏波乖離量(PDf)が変化する(図7および図9参照)。一方、ヒータ幅の小さい他方のヒータでは、長い間電力を供給してもPDfは変化せず、中心波長のみがシフトする(図8および図9参照)。このため、ヒータ幅の大きい一方のヒータおよびヒータ幅の小さい他方のヒータを、同じ電力で別々に駆動することにより、偏波乖離量を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る遅延復調デバイスは、前記一方のヒータのヒータ幅と前記他方のヒータのヒータ幅は同じであり、かつ、前記一方のヒータに供給される電力は前記他方のヒータに供給される電力より大きいことを特徴とする。
【0015】
一方のヒータのヒータ幅と他方のヒータのヒータ幅とを同じにして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくした場合、供給される電力の大きい一方のヒータでは、時間と共に偏波乖離量(PDf)が変化する(図7および図9参照)。一方、供給される電力の小さい他方のヒータでは、長い間電力を供給しても、PDfは変化せず、中心波長のみがシフトする(図8および図9参照)。このため、第1および第2のヒータのヒータ幅を同じにして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくすることにより、偏波乖離量 を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明に係る遅延復調デバイスは、前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より大きく、かつ、前記一方のヒータに供給される電力は前記他方のヒータに供給される電力より大きいことを特徴とする。
一方のヒータのヒータ幅を他方のヒータのヒータ幅より大きくして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくした場合、一方のヒータでは、時間と共に偏波乖離量(PDf)が変化する(図7および図9参照)。他方のヒータでは、長い間電力を供給しても、PDfは変化せず、中心波長のみがシフトする(図8および図9参照)。このため、一方のヒータのヒータ幅を他方のヒータのヒータ幅より大きくして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくすることにより、偏波乖離量を更に小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0017】
請求項7に記載の発明に係る遅延復調デバイスは、前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より小さく、かつ、前記一方のヒータに供給される電力は前記他方のヒータに供給される電力より大きいことを特徴とする。
【0018】
一方のヒータのヒータ幅を他方のヒータのヒータ幅より小さくして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくした場合、一方のヒータでは、時間と共に偏波乖離量(PDf)が変化する(図7および図9参照)。他方のヒータでは、長い間電力を供給しても、PDfは変化せず、中心波長のみがシフトする(図8および図9参照)。このため、一方のヒータのヒータ幅を他方のヒータのヒータ幅より小さくして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくすることにより、偏波乖離量を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0019】
請求項8に記載の発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法は、DQPSK信号を復調させる平面光波回路型の遅延復調デバイスの位相調整方法であって、長さの異なる2つのアーム導波路をそれぞれ有し、DQPSK信号が分岐されて入力される第1および第2のマッハツェンダー干渉計と、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路に配置される1/2波長板と、前記第1のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路上に、前記1/2波長板を挟んでそれぞれ形成された第1のヒータ(A,B)および第2のヒータ(C,D)と、前記第2のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路上に、前記1/2波長板を挟んでそれぞれ形成された第1のヒータ(E,F)および第2のヒータ(G,H)と、を備え、前記第1のヒータと前記第2のヒータのいずれか一方に給電して偏波乖離量を調整する第1の段階と、前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方に給電して、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相トリミングを行う第2の段階と、を備えることを特徴とする。この構成によれば、偏波乖離量を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0020】
請求項9に記載の発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法は、前記第1の段階では、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計各々における前記第1のヒータと前記第2のヒータのいずれか一方を、偏波乖離量が小さくなるように偏波乖離量を調整する偏波乖離量調整用ヒータとしてそれぞれ駆動し、かつ、前記第2の段階では、前記第1マッハツェンダー干渉計における前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方と、前記第2マッハツェンダー干渉計における前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方との少なくとも一方を、前記位相トリミングを行う位相トリミング用ヒータとして駆動することを特徴とする。この構成によれば、第1のヒータおよび第2のヒータのいずれか一方は偏波乖離量調整用ヒータとして用い、その他方は位相トリミング用ヒータとして用いることで、偏波乖離量を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0021】
請求項10に記載の発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法は、前記第1のヒータと前記第2のヒータのうち、前記偏波乖離量調整用ヒータとして用いる一方のヒータのヒータ幅と、該一方のヒータに供給される電力とを、該一方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化する所定の値にそれぞれ設定し、かつ、前記第1のヒータと前記第2のヒータのうち、前記位相トリミング用ヒータとして用いる他方のヒータのヒータ幅と、該他方のヒータに供給される電力とを、該他方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化せずに中心波長のみシフトする所定の値にそれぞれ設定することを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法は、前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より大きく、かつ、前記第1の段階で前記一方のヒータに供給する電力と前記第2の段階で前記他方のヒータに供給する電力とを同じにすることを特徴とする。この構成によれば、ヒータ幅の大きい一方のヒータおよびヒータ幅の小さい他方のヒータを、同じ電力で別々に駆動することにより、偏波乖離量を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0023】
請求項12に記載の発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法は、前記一方のヒータのヒータ幅と前記他方のヒータのヒータ幅とは同じであり、かつ、前記第1の段階で前記一方のヒータに供給する電力を前記第2の段階で前記他方のヒータに供給する電力より大きくすることを特徴とする。この構成によれば、第1および第2のヒータのヒータ幅を同じにして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくすることにより、偏波乖離量 を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0024】
請求項13に記載の発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法は、前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より大きく、かつ、前記第1の段階で前記一方のヒータに供給する電力を前記第2の段階で前記他方のヒータに供給する電力より大きくすることを特徴とする。この構成によれば、第一方のヒータのヒータ幅を他方のヒータのヒータ幅より大きくして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくすることにより、偏波乖離量を更に小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0025】
請求項14に記載の発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法は、前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より小さく、かつ、前記第1の段階で前記一方のヒータに供給する電力を前記第2の段階で前記他方のヒータに供給する電力より大きくすることを特徴とする。この構成によれば、一方のヒータのヒータ幅を他方のヒータのヒータ幅より小さくして、一方のヒータに供給される電力を他方のヒータに供給される電力より大きくすることにより、偏波乖離量を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0026】
請求項15に記載の発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法は、前記第1の段階を実施する前に、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計各々の前記2つのアーム導波路の中央部に前記1/2波長板を挿入することを特徴とする。この構成によれば、偏波乖離量を調整する第1の段階を実施する前に、1/2波長板を各マッハツェンダー干渉計のアーム導波路に挿入することにより、1/2波長板の製造上のばらつきを吸収することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る遅延復調デバイスによれば、偏波乖離を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
本発明に係る遅延復調デバイスの位相調整方法によれば、偏波乖離量を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように位相を調整することが可能な遅延復調デバイスを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を具体化した一実施形態に係る遅延復調デバイスを、図1乃至図10に基づいて説明する。
【0029】
図1は一実施形態に係る遅延復調デバイスの概略構成を示す平面図、図2はDQPSK方式を用いた光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。図3は図1のX−X線に沿った断面図、図4は図1のY−Y線に沿った断面図である。図5は図1に示す遅延復調デバイスの第1のマッハツェンダー干渉計部分を簡略化して示した説明図であり、図6は遅延復調デバイスの第2のマッハツェンダー干渉計部分を簡略化して示した説明図である。図7は、偏波乖離量調整用ヒータを駆動した際における、TE成分とTM成分のトリミング時間と中心波長シフト量との関係を示すグラフである。図8は、位相トリミング用ヒータを駆動した際における、TE成分とTM成分のトリミング時間と中心波長シフト量との関係を示すグラフである。
【0030】
図1に示す遅延復調デバイス1は、DQPSK信号を復調させる平面光波回路型(PLC型)の遅延復調デバイス(復調用遅延回路)である。この遅延復調デバイス1は、例えば、伝送速度が40GbpsのDQPSK方式を用いた図2に示す光伝送システムに使用される40GbpsDQPSK用遅延復調デバイスである。
【0031】
この光伝送システムでは、光送信器40から光ファイバ伝送路54に、2ビットのデータから構成される各シンボルの値(0,1,2,3)の4つの情報を、隣接する2つのシンボルの値の変化に応じて搬送波の位相(θ,θ+π/2,θ+π,θ+3π/2)の位相情報に変調されたDQPSK信号が伝送される。光ファイバ伝送路54から光受信器50に送られてきたDQPSK信号は遅延復調デバイス1により4つの光強度信号に変換され、さらには、その光強度信号がバランスドレシーバ51,52により電気信号に変換される。受信電気回路53では、復号化処理などがなされる。
【0032】
図1に示す遅延復調デバイス1は、DQPSK信号が入力される光入力導波路2と、光入力導波路2を分岐するY分岐導波路3と、第1のマッハツェンダー干渉計4と、第2のマッハツェンダー干渉計5と、を備えている。
【0033】
第1のマッハツェンダー干渉計4は、図1および図5に示すように、Y分岐導波路3で分岐された2つの導波路14,15の一方(導波路14)に接続された入力側カプラ6と、2つの光出力導波路21,22に2つの出力端がそれぞれ接続された出力側カプラ7と、両カプラ6,7間に接続された長さの異なる2つのアーム導波路8,9とを有する。同様に、第2のマッハツェンダー干渉計5は、図1および図6に示すように、Y分岐導波路3で分岐された2つの導波路の他方(導波路15)に接続された入力側カプラ10と、2つの光出力導波路23,24に2つの出力端が接続された出力側カプラ11と、両カプラ10,11間に接続された長さの異なる2つのアーム導波路12,13とを有する。
【0034】
入力側カプラ6,10および出力側カプラ7,11は、それぞれ2入力×2出力型3dBカプラ(50%方向性結合器)である。第1のマッハツェンダー干渉計4の入力側カプラ6の2つの入力端の一方が、Y分岐導波路3で分岐された2つの導波路14,15の一方の導波路14に接続されている。第2のマッハツェンダー干渉計5の入力側カプラ10の2つの入力端の一方が、Y分岐導波路3で分岐された2つの導波路14,15の他方の導波路15に接続されている。
【0035】
また、第1のマッハツェンダー干渉計4の出力側カプラ7の2つの出力端(スルーポートとクロスポート)は、第1光出力導波路21,第2光出力導波路22にそれぞれ接続されている。同様に、第2のマッハツェンダー干渉計5の出力側カプラ11の2つの出力端(スルーポートとクロスポート)は、第3光出力導波路23,第4光出力導波路24にそれぞれ接続されている。
【0036】
また、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9には、その一方(アーム導波路8)を伝搬するDQPSK信号の位相をその他方(アーム導波路9)を伝搬するDQPSK信号の位相に対してπだけ遅延させる光路長差ΔLを持たせてある。同様に、第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13には、その一方(アーム導波路12)を伝搬するDQPSK信号の位相をその他方(アーム導波路13)を伝搬するDQPSK信号の位相に対してπだけ遅延させる光路長差ΔLを持たせてある。
【0037】
第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9と、第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13とが、平面光波回路(PLC)1A内において、同じ領域内で重なるように形成されている。
【0038】
本実施形態では、その重なり方の一例として、アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とがそれぞれ4回ずつ交差するように、アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とが平面光波回路(PLC)1Aの同じ領域内に形成されている。つまり、図1に示すように、第1のマッハツェンダー干渉計4のアーム導波路8は、交差点61で第2のマッハツェンダー干渉計5のアーム導波路12と、交差点62で第2のマッハツェンダー干渉計5のアーム導波路13と、交差点63でアーム導波路13と、そして、交差点64でアーム導波路12とそれぞれ交差する。
【0039】
第1のマッハツェンダー干渉計4のアーム導波路9は、交差点65で第2のマッハツェンダー干渉計5のアーム導波路12と、交差点66で第2のマッハツェンダー干渉計5のアーム導波路13と、交差点67でアーム導波路13と、そして、交差点68でアーム導波路12とそれぞれ交差する。
【0040】
一方、第2のマッハツェンダー干渉計5のアーム導波路12は、交差点65で第1のマッハツェンダー干渉計4のアーム導波路9と、交差点61で第1のマッハツェンダー干渉計4のアーム導波路8と、交差点64でアーム導波路8と、そして、交差点68でアーム導波路9とそれぞれ交差する。
【0041】
そして、第2のマッハツェンダー干渉計5のアーム導波路13は、交差点66で第1のマッハツェンダー干渉計4のアーム導波路9と、交差点62で第1のマッハツェンダー干渉計4のアーム導波路8と、交差点63でアーム導波路8と、そして、交差点67でアーム導波路9とそれぞれ交差する。
【0042】
なお、上記各交差点61〜68では、2つのアーム導波路が交差し、2つのアーム導波路をそれぞれ伝搬する光(光信号)はその交差部分を通ってそのまま同じアーム導波路を伝播する。例えば、交差点61では、2つのアーム導波路8,12が交差し、2つのアーム導波路8,12をそれぞれ伝搬する光(光信号)はその交差部分を通ってそのまま同じアーム導波路8,12を伝播する。
【0043】
図1に示す平面光波回路1Aは、石英系ガラスでそれぞれ構成された光入力導波路2、Y分岐導波路3、第1,第2のマッハツェンダー干渉計4,5、および4つの光出力導波路21〜24などの導波路を含む回路である。この平面光波回路1Aを有する遅延復調デバイス1は、具体的には、次のようにして作製される。
【0044】
火炎堆積法(FHD: Flame Hydrolysis Deposition)により、図3に示すシリコン基板などのPLC基板30上に、下部クラッド層およびコア層となるシリカ材料(SiO2系のガラス粒子)を堆積し、加熱してガラス膜を溶融透明化する。この後、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチングで所望の導波路を形成し、再びFHD法により上部クラッドを形成する。図3では、PLC基板30上に、下部クラッド層および上部クラッド層からなるクラッド層31が形成され、このクラッド層31内にコア層としてアーム導波路8,12が形成されている。PLC基板30は、図1に示すように、略正方形の平面形状を有している。
【0045】
本実施形態に係る遅延復調デバイス1では、第1のマッハツェンダー干渉計4と第2のマッハツェンダー干渉計5は、平面光波回路基板であるPLC基板30上に、左右対称に形成されている。
【0046】
また、この遅延復調デバイス1では、図1、図5および図6に示すように、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9の中央部と、第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部とに、偏波乖離量(PDf)を低減させるために、1/2波長板47が挿入されている。図4に示すように、1/2波長板47を挿入するための溝49がクラッド層31に形成されている。この溝49は、1/2波長板47での反射による損失が起こらないように、1/2波長板47が図4に示すように8°程度に傾けられて溝49内に配置されるように、8°程度傾斜した溝になっている。
【0047】
また、この遅延復調デバイス1では、図1に示すように、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9の中央部は、互いに平行に延びかつ近接しており、かつ第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部は、互いに平行に延びかつ近接している。つまり、この遅延復調デバイス1では、1/2波長板47のリタデーションの抑制のために、第1のマッハツェンダー干渉計4のアーム導波路8,9の間隔および第2のマッハツェンダー干渉計5のアーム導波路12,13の間隔を極力小さくしてある。
【0048】
また、この遅延復調デバイス1では、図1に示すように、光入力導波路2の端部、2つの光出力導波路21,22の端部、および、2つの光出力導波路23,24の端部は、略正方形の平面形状を有するPLCチップ(平面光波回路チップ)1Bの同じ端面1aに開口している。つまり、光入力導波路2の端部、4つの光出力導波路21〜24の端部は、PLCチップ1Bの4辺の一つである同じ端面1aにおいて、互いに近接した位置に開口している。さらに、第1のマッハツェンダー干渉計4の光出力導波路21,22と第2のマッハツェンダー干渉計5の光出力導波路23,24が、同じ長さになるように形成されている。
【0049】
また、この遅延復調デバイス1では、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9上、および第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13上に、ヒータがそれぞれ形成されている。
【0050】
本実施形態では、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9上に、1/2波長板47を挟んで第1のヒータA,Bおよび第2のヒータC,Dがそれぞれ形成されている。また、第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13上に、1/2波長板47を挟んで第1のヒータE,Fおよび第2のヒータG,Hがそれぞれ形成されている。
【0051】
各ヒータA〜Hは、対応するアーム導波路の上方にあって、上部クラッド(図3のクラッド層31)上にスパッタにより形成されたTa系の薄膜ヒータである。図3には、アーム導波路8,12の上方にあって、クラッド層31上に形成されたヒータA,Eを示してある。
【0052】
図5に示すように、第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータA,Bのヒータ幅は、第2のヒータC,Dのヒータ幅より大きい。同様に、図6に示すように、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータE,Fのヒータ幅は、第2のヒータG,Hのヒータ幅より大きい。本実施形態では、第1のヒータA,Bのヒータ幅および第1のヒータE,Fのヒータ幅をそれぞれ60umとし、第2のヒータC,Dのヒータ幅および第2のヒータG,Hのヒータ幅をそれぞれ50umとしている。
【0053】
この遅延復調デバイス1では、第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータA,Bおよび第2のヒータC,Dに供給する電力(電圧)を同じにして、第1のヒータA,Bを偏波乖離量が小さくなるように偏波乖離量を調整する偏波乖離量調整用ヒータとして、第2のヒータC,Dを第1,第2のマッハツェンダー干渉計4,5の位相差がπ/2になるように位相トリミングを行う位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。同様に、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータE,Fおよび第2のヒータG,Hに供給する電力を同じにして、第1のヒータE,Fを偏波乖離量調整用ヒータとして、第2のヒータG,Hを位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。
【0054】
図9に、ヒータ1mmあたり1.0Wの電力(1.0W/mm負荷)をヒータに供給した場合におけるトリミング時間とPDλ(偏波乖離量PDf)の関係を示す。図9のグラフから、ヒータ幅を60umとした時、トリミング時間とともにPDfが変化するが、ヒータ幅を50umにすれば、長い間電圧をかけても、偏波乖離量が変化しない(このとき中心波長のみがシフトする)ことが分かる。このことを踏まえて、ヒータ幅60umのヒータA,BおよびヒータE,Fを偏波乖離量調整用ヒータとして、また、ヒータ幅50umのヒータC,DおよびヒータG,Hを位相トリミング用ヒータとして用いることにより、PDfが小さく、かつ、各マッハツェンダー干渉計4,5の相対的な位相を調整することが可能となる。
【0055】
また、この遅延復調デバイス1では、図1に示すように、各光出力導波路21,22の出力端が、互いに位相がπだけずれた出力1,2(図10参照)の光信号をそれぞれ出力する出力ポート(第1、第2出力ポート)になっている。一方、各光出力導波路23,24の出力端が、互いに位相がπだけずれた出力3,4(図10参照)の光信号をそれぞれ出力する出力ポート(第3、第4出力ポート)になっている。
【0056】
上記構成を有する遅延復調デバイス1では、第1のマッハツェンダー干渉計4にあっては、光ファイバ伝送路54から光受信器50に送られるDQPSK信号(光信号)がY分岐導波路3で分岐され、その分岐されたDQPSK信号が長さの異なる2つのアーム導波路8,9を伝搬する。マッハツェンダー干渉計4は、一方のアーム導波路8を伝搬するDQPSK信号の位相を他方のアーム導波路9を伝搬する光信号の位相に対して1シンボル分(π)だけ遅延させるようになっている。同様に、第2のマッハツェンダー干渉計5は、一方のアーム導波路12を伝搬するDQPSK信号の位相を他方のアーム導波路13を伝搬する光信号の位相に対して1シンボル分(π)だけ遅延させるようになっている。
【0057】
このように、本実施形態に係る遅延復調デバイス1の特徴は、以下の構成を有する点にある。
【0058】
(1)第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9上に、1/2波長板47を挟んで第1のヒータA,Bおよび第2のヒータC,Dがそれぞれ形成されている。
【0059】
(2)第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13上に、1/2波長板47を挟んで第1のヒータE,Fおよび第2のヒータG,Hがそれぞれ形成されている。
【0060】
(3)第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータA,Bのヒータ幅は、第2のヒータC,Dのヒータ幅より大きい。同様に、図6に示すように、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータE,Fのヒータ幅は、第2のヒータG,Hのヒータ幅より大きい。
【0061】
(4)第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とを偏波乖離量調整用ヒータとして、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つを位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。このとき、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とに供給する電力(電圧)を、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つに供給する電力と同じにする。
【0062】
遅延復調デバイス1の位相調整方法は、次のようにして行う。
(1)第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9の中央部および第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部に一つの1/2波長板47を挿入する。
【0063】
(2) 第1のマッハツェンダー干渉計4に形成された2つの第1のヒータA,Bの少なくとも一方および第2のマッハツェンダー干渉計5に形成された2つの第1のヒータE,Fの少なくとも一方に給電して偏波乖離量を調整する(第1の段階)。
【0064】
(3) 第2のヒータC,Dおよび第2のヒータG,Hの少なくとも一つに給電して、第1のマッハツェンダー干渉計4と第2のマッハツェンダー干渉計5の位相差がπ/2になるように、位相調整(位相トリミング)を行う(第2の段階)。
この第2の段階では、次のいずれかの方法により位相調整を行う。
【0065】
・第2のヒータC,Dの一方或いは両方に給電して、第1のマッハツェンダー干渉計4と第2のマッハツェンダー干渉計5の位相差がπ/2になるように、位相調整を行う。
【0066】
・第2のヒータG,Hの一方或いは両方に給電して、第1のマッハツェンダー干渉計4と第2のマッハツェンダー干渉計5の位相差がπ/2になるように、位相調整を行う。
【0067】
・第2のヒータC,Dの少なくとも一方と、第2のヒータG,Hの少なくとも一方とに給電して、第1のマッハツェンダー干渉計4と第2のマッハツェンダー干渉計5の位相差がπ/2になるように、位相調整を行う。
【0068】
このように、上述した遅延復調デバイス1の位相調整方法では、上述した偏波乖離量を調整する第1の段階を実施する前に、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9の中央部および第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部に一つの1/2波長板47を挿入するようにしている。
[実施例]
【0069】
図3に示すシリコン基板30上に、石英系ガラスで構成される光入力導波路2、Y分岐導波路3、マッハツェンダー干渉計4,5、光出力導波路21〜24を含む平面光波回路(PLC)1Aを、火炎堆積法(FHD法)、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチングにより形成した40GbpsDQPSK用平面光波回路型の遅延復調デバイス(PLC型MZI遅延回路)1を作製した。
【0070】
作製した遅延復調デバイス1では、クラッド層の屈折率とコア層の屈折率との差(比屈折率差Δ)を1.5%として、回路サイズ(PLCチップ1Bのサイズ)が19mm×16mmと小型化を実現している。FSRは20GHzとした。
【0071】
遅延復調デバイス1の位相調整方法は、次のようにして行った。
まず、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9の中央部および第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部に一つの1/2波長板47を挿入した。
【0072】
この後、第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータAおよび第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータEに、ヒータ1mmあたり1.0Wの電力(1.0W/mm負荷)をある一定時間負荷して偏波乖離量の調整を行い、偏波乖離量(PDf)を0.1GHz以下にした。
ここで、第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータBおよび第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータFに電力(1.0W/mm負荷)をある一定時間負荷して偏波乖離量の調整を行ってもよい。或いは、第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータA,Bの両方および第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータE,Fの両方に電力(1.0W/mm負荷)をある一定時間負荷して偏波乖離量の調整を行ってもよい。
【0073】
最後に、第1のマッハツェンダー干渉計4の第2のヒータCに、第1のヒータAと同じ電力(1.0W/mm負荷)を負荷して、2つのマッハツェンダー干渉計4.5の位相差がπ/2になるように、位相調整を行った。なお、第2のヒータCに電圧を印加してこのヒータCを駆動するのは、中心波長を長波長側へシフトさせて両マッハツェンダー干渉計4.5の位相差をπ/2にする場合である。中心波長を短波長側へシフトさせて両マッハツェンダー干渉計4.5の位相差をπ/2にする場合には、第2のヒータDに電圧を印加してこのヒータDを駆動させる。また、マッハツェンダー干渉計4.5の位相差がπ/2になるように、位相調整を行う際に、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータG或いは第2のヒータHを駆動させてもよい。
【0074】
その後、出力1〜出力4の光信号がそれぞれ出力される光出力導波路21,22,23,24の各端部(出力ポート)のあるPLCチップ1Bの端面1aに4つの光ファイバが整列したファイバアレイを接続し、パッケージングを行った。また、温調機構には、ペルチェ素子とサーミスタを用いた。このようにして遅延復調デバイス1を含む遅延復調モジュール(モジュール)を作製した。
【0075】
図10に、作製した40GbpsDQPSK用遅延復調デバイス1の光学特性の結果を示す。挿入損失は6dB以下、PDfは0.1GHz以下の極めて低いPDfを実現している。
【0076】
以上の構成を有する一実施形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
○第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータA,Bのヒータ幅を、第2のヒータC,Dのヒータ幅より大きくしてある。同様に、図6に示すように、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータE,Fのヒータ幅を、第2のヒータG,Hのヒータ幅より大きくしてある。そして、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第2のヒータC,Dの少なくとも一方とを偏波乖離量調整用ヒータとして、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つを位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。このとき、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第2のヒータC,Dの少なくとも一方とに供給する電力(電圧)を、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つに供給する電力と同じにする。これにより、偏波乖離量(PDf)を0.1GHz以下に小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計4.5の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0077】
○偏波乖離量を調整する第1の段階を実施する前に、一つの1/2波長板47を各マッハツェンダー干渉計4,5のアーム導波路8,9,12,13の中央部に挿入することにより、1/2波長板47の製造上のばらつきを吸収することができる。
【0078】
○遅延復調デバイス1では、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9と、第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13とが、平面光波回路(PLC)1A内において、同じ領域内で重なるように形成されている。具体的には、アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とがそれぞれ4回ずつ交差するように、アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とが平面光波回路(PLC)1Aの同じ領域内に形成されている。このような構成により、平面光波回路1A全体がコンパクトになる。特に、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9と第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13を含む部分の面積が小さくなり、PLCチップ(チップ)1Bの小型化を実現できる。
【0079】
○PLCチップ1Bの小型化を実現しているので、平面光波回路(PLC)1A面内の温度分布の均一性が良くなり、環境温度変動による中心波長のシフトを極めて小さくすることができる。
【0080】
○PLCチップ1Bの小型化を実現しているので、複屈折の原因となるPLCチップ1B面内の応力分布が低減され、環境温度変動による中心波長のシフトを極めて小さくすることができる。これにより、環境温度変動に対する波長シフトがほとんど無く、初期の偏波乖離量(PDf)を小さくした遅延復調デバイスが得られる。
【0081】
○PLCチップ1Bが小型化されることで、遅延復調デバイス1を用いた遅延復調モジュール(モジュール)の小型化や低消費電力化も期待できる。
【0082】
○アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とがそれぞれ4回ずつ交差するように、アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とが平面光波回路(PLC)1A内の同じ領域内に形成されているので、PLCチップ1Bの小型化とPDfの低減とを実現できる。
【0083】
○第1のマッハツェンダー干渉計4と第2のマッハツェンダー干渉計5は、PLC基板30上に、左右対称に形成されているので、PLCチップ1Bの更なる小型化とPDfの更なる低減とを図れる。
【0084】
○第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9の中央部と、第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部とに1/2波長板47が挿入されているので、PDfを低減することができる。
【0085】
○第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9の中央部は、互いに平行に延びかつ近接している。また、第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部は、互いに平行に延びかつ近接している。この構成により、1/2波長板47のリタデーション(位相差)を抑制することができる。
【0086】
○光入力導波路2の端部および4つの光出力導波路21〜24の端部が、PLCチップ1Bの同じ端面1aに開口しているので、平面光波回路1A全体が更にコンパクトになり、PLCチップ1Bの更なる小型化を図れる。
【0087】
○第1,第2のマッハツェンダー干渉計4,5各々の2つのアーム導波路上に、ヒータA〜Hが形成されているので、2つのマッハツェンダー干渉計4,5のいずれかのヒータを駆動させて偏波乖離量(PDf)を調整することができる。また、この調整後、2つのマッハツェンダー干渉計4,5のいずれかのヒータを駆動させて、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相調整(位相トリミング)を行うことができる。
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
【0088】
・上記一実施形態では、偏波乖離調整用ヒータである第1のヒータA,Bおよび第1のヒータE,Fの各ヒータ幅を60umとし、位相トリミング用ヒータである第2のヒータC,Dおよび第2のヒータG,Hの各ヒータ幅を50umとしたが、これに限ることなく、そのヒータ幅は作製プロセスにより適時決定される。
【0089】
・上記一実施形態では、第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータ(一方のヒータ)A,Bのヒータ幅が第2のヒータ(他方のヒータ)C,Dのヒータ幅より大きく、かつ、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータ(一方のヒータ)E,Fのヒータ幅が第2のヒータ(他方のヒータ)G,Hのヒータ幅より大きい。そして、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とを偏波乖離量調整用ヒータとして、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つを位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。このとき、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とに供給する電力(電圧)を、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つに供給する電力と同じにしている。本発明は、このような構成に限定されず、下記の構成(1)〜(4)をそれぞれ有する遅延復調デバイスにも適用可能である。(1)〜(4)のいずれの構成を有する遅延復調デバイスによっても、上記一実施形態と同様に、偏波乖離量を小さくすることができ、かつ、2つのマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相を調整することが可能となる。
【0090】
(1)第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータ(一方のヒータ)A,Bのヒータ幅と第2のヒータ(他方のヒータ)C,Dのヒータ幅とが同じであり、かつ、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータ(一方のヒータ)E,Fのヒータ幅と第2のヒータ(他方のヒータ)G,Hのヒータ幅とが同じである。そして、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とを偏波乖離量調整用ヒータとして、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つを位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。このとき、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とに供給する電力(電圧)を、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つに供給する電力より大きくする。
【0091】
(2)第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータ(一方のヒータ)A,Bのヒータ幅は第2のヒータ(他方のヒータ)C,Dのヒータ幅より大きく、かつ、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータ(一方のヒータ)E,Fのヒータ幅は第2のヒータ(他方のヒータ)G,Hのヒータ幅より大きい。そして、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とを偏波乖離量調整用ヒータとして、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つを位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。このとき、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とに供給する電力(電圧)を、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つに供給する電力より大きくする。
【0092】
(3)第1のマッハツェンダー干渉計4の第1のヒータ(一方のヒータ)A,Bのヒータ幅は第2のヒータ(他方のヒータ)C,Dのヒータ幅より小さく、かつ、第2のマッハツェンダー干渉計5の第1のヒータ(一方のヒータ)E,Fのヒータ幅は第2のヒータ(他方のヒータ)G,Hのヒータ幅より小さい。そして、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とを偏波乖離量調整用ヒータとして、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つを位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。このとき、第1のヒータA,Bの少なくとも一方と第1のヒータE,Fの少なくとも一方とに供給する電力(電圧)を、第2のヒータC,D,G,Hの少なくとも一つに供給する電力より大きくする。
【0093】
(4)第1のマッハツェンダー干渉計4の第2のヒータ(一方のヒータ)C,Dのヒータ幅が第1のヒータ(他方のヒータ)A,Bのヒータ幅より大きく、かつ、第2のマッハツェンダー干渉計5の第2のヒータ(一方のヒータ)G,Hが第1のヒータ(他方のヒータ)E,Fのヒータ幅より大きい。そして、第2のヒータC,Dの少なくとも一方と第2のヒータG,Hの少なくとも一方とを偏波乖離量調整用ヒータとして、第1のヒータA,B,E,Fの少なくとも一つを位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させる。このとき、第2のヒータC,Dの少なくとも一方と第2のヒータG,Hの少なくとも一方とに供給する電力(電圧)を、第1のヒータA,B,E,Fの少なくとも一つに供給する電力と同じにする。
【0094】
このように、本発明は、次のような構成を有する遅延復調デバイスに広く適用可能である。すなわち、第1,第2のマッハツェンダー干渉計4,5各々における第1のヒータと第2のヒータのいずれか一方が、偏波乖離量が小さくなるように偏波乖離量を調整する偏波乖離量調整用ヒータとして用いられる。また、第1マッハツェンダー干渉計4における第1のヒータと第2のヒータの他方と、第2マッハツェンダー干渉計5における第1のヒータと第2のヒータの他方との少なくとも一方が、両マッハツェンダー干渉計4,5の位相差がπ/2になるように、位相トリミングを行う位相トリミング用ヒータとして用いられる。
【0095】
また、偏波乖離量調整用ヒータとして用いる一方のヒータのヒータ幅と、該一方のヒータに供給される電力とは、該一方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化する所定の値にそれぞれ設定され、位相トリミング用ヒータとして用いる他方のヒータのヒータ幅と、該他方のヒータに供給される電力とは、該他方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化せずに中心波長のみシフトする所定の値にそれぞれ設定される。
【0096】
・上記一実施形態では、アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とがそれぞれ4回ずつ交差しているので、交差点61〜68のある各交差部分で損失が発生するが、トータルで0.1〜0.2dB程度であり、決して大きい値ではない。
【0097】
・上記一実施形態では、アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とがそれぞれ4回ずつ交差するようにしているが、アーム導波路8,9とアーム導波路12,13とがそれぞれ2回ずつ交差するように構成した遅延復調デバイスにも本発明は適用可能である。
【0098】
・上記一実施形態では、最良の例として、第1のマッハツェンダー干渉計4の2つのアーム導波路8,9の中央部および第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部をそれぞれ近接させている。しかし、本発明はこのような構成に限らず、2つのアーム導波路8,9の中央部および第2のマッハツェンダー干渉計5の2つのアーム導波路12,13の中央部が、互いに離れた位置で略平行に延びるようにした構成を有する遅延復調デバイスにも適用可能である。
【0099】
・上記一実施形態では、入力側カプラ6,10および出力側カプラ7,11として3dBカプラをそれぞれ用いたが、それに限ることなく、MMI(Multimode Interference)カプラでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】一実施形態に係る遅延復調デバイスの概略構成を示す平面図。
【図2】DQPSK方式を用いた光伝送システムの概略構成を示すブロック図。
【図3】図1のX−X線に沿った断面図。
【図4】図1のY−Y線に沿った断面図。
【図5】図1に示す遅延復調デバイスの第1のマッハツェンダー干渉計部分を簡略化して示した説明図。
【図6】遅延復調デバイスの第2のマッハツェンダー干渉計部分を簡略化して示した説明図。
【図7】偏波乖離量調整用ヒータを駆動した際における、TE成分とTM成分のトリミング時間と中心波長シフト量との関係を示すグラフ。
【図8】位相トリミング用ヒータを駆動した際における、TE成分とTM成分のトリミング時間と中心波長シフト量との関係を示すグラフ。
【図9】電力をヒータに供給した場合におけるトリミング時間とPDλ(偏波乖離量PDf)の関係を示すグラフ。
【図10】遅延復調デバイスのスペクトルを示すグラフ。
【符号の説明】
【0101】
1…遅延復調デバイス
1A…平面光波回路
2…光入力導波路
3…Y分岐導波路
4…第1のマッハツェンダー干渉計
5…第2のマッハツェンダー干渉計
6,10…入力側カプラ
7,11…出力側カプラ
8,9,12,13…アーム導波路
14,15…Y分岐導波路で分岐された導波路
21,22,23,24…光出力導波路
47…1/2波長板
A,B,E,F…第1のヒータ
C,D,G,H…第2のヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DQPSK信号を復調させる平面光波回路型の遅延復調デバイスであって、
長さの異なる2つのアーム導波路をそれぞれ有し、DQPSK信号が分岐されて入力される第1および第2のマッハツェンダー干渉計と、
前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路に配置される1/2波長板と、
前記第1のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路上に、前記1/2波長板を挟んでそれぞれ形成された第1のヒータ(A,B)および第2のヒータ(C,D)と、
前記第2のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路上に、前記1/2波長板を挟んでそれぞれ形成された第1のヒータ(E,F)および第2のヒータ(G,H)と、を備え、
前記第1のヒータと前記第2のヒータのいずれか一方を偏波乖離量調整用ヒータとして、その他方を位相トリミング用ヒータとして別々に駆動させることを特徴とする遅延復調デバイス。
【請求項2】
前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計各々における前記第1のヒータと前記第2のヒータのいずれか一方が、偏波乖離量が小さくなるように偏波乖離量を調整する偏波乖離量調整用ヒータとして用いられ、かつ、
前記第1マッハツェンダー干渉計における前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方と、前記第2マッハツェンダー干渉計における前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方との少なくとも一方が、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相トリミングを行う位相トリミング用ヒータとして用いられることを特徴とする請求項1に記載の遅延復調デバイス。
【請求項3】
前記第1のヒータと前記第2のヒータのうち、前記偏波乖離量調整用ヒータとして用いる一方のヒータのヒータ幅と、該一方のヒータに供給される電力とは、該一方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化する所定の値にそれぞれ設定されており、かつ、前記第1のヒータと前記第2のヒータのうち、前記位相トリミング用ヒータとして用いる他方のヒータのヒータ幅と、該他方のヒータに供給される電力とは、該他方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化せずに中心波長のみシフトする所定の値にそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項2に記載の遅延復調デバイス。
【請求項4】
前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より大きく、かつ、前記一方のヒータに供給される電力と前記他方のヒータに供給される電力とは同じであることを特徴とする請求項3に記載の遅延復調デバイス。
【請求項5】
前記一方のヒータのヒータ幅と前記他方のヒータのヒータ幅は同じであり、かつ、前記一方のヒータに供給される電力は前記他方のヒータに供給される電力より大きいことを特徴とする請求項3に記載の遅延復調デバイス。
【請求項6】
前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より大きく、かつ、前記一方のヒータに供給される電力は前記他方のヒータに供給される電力より大きいことを特徴とする請求項3に記載の遅延復調デバイス。
【請求項7】
前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より小さく、かつ、前記一方のヒータに供給される電力は前記他方のヒータに供給される電力より大きいことを特徴とする請求項3に記載の遅延復調デバイス。
【請求項8】
DQPSK信号を復調させる平面光波回路型の遅延復調デバイスの位相調整方法であって、
長さの異なる2つのアーム導波路をそれぞれ有し、DQPSK信号が分岐されて入力される第1および第2のマッハツェンダー干渉計と、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路に配置される1/2波長板と、前記第1のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路上に、前記1/2波長板を挟んでそれぞれ形成された第1のヒータ(A,B)および第2のヒータ(C,D)と、前記第2のマッハツェンダー干渉計の前記2つのアーム導波路上に、前記1/2波長板を挟んでそれぞれ形成された第1のヒータ(E,F)および第2のヒータ(G,H)と、を備え、
前記第1のヒータと前記第2のヒータのいずれか一方に給電して偏波乖離量を調整する第1の段階と、
前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方に給電して、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計の位相差がπ/2になるように、位相トリミングを行う第2の段階と、を備えることを特徴とする遅延復調デバイスの位相調整方法。
【請求項9】
前記第1の段階では、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計各々における前記第1のヒータと前記第2のヒータのいずれか一方を、偏波乖離量が小さくなるように偏波乖離量を調整する偏波乖離量調整用ヒータとしてそれぞれ駆動し、かつ、前記第2の段階では、前記第1マッハツェンダー干渉計における前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方と、前記第2マッハツェンダー干渉計における前記第1のヒータと前記第2のヒータの他方との少なくとも一方を、前記位相トリミングを行う位相トリミング用ヒータとして駆動することを特徴とする請求項8に記載の遅延復調デバイスの位相調整方法。
【請求項10】
前記第1のヒータと前記第2のヒータのうち、前記偏波乖離量調整用ヒータとして用いる一方のヒータのヒータ幅と、該一方のヒータに供給される電力とを、該一方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化する所定の値にそれぞれ設定し、かつ、前記第1のヒータと前記第2のヒータのうち、前記位相トリミング用ヒータとして用いる他方のヒータのヒータ幅と、該他方のヒータに供給される電力とを、該他方のヒータへの給電時間とともに偏波乖離量が変化せずに中心波長のみシフトする所定の値にそれぞれ設定することを特徴とする請求項9に記載の遅延復調デバイスの位相調整方法。
【請求項11】
前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より大きく、かつ、前記第1の段階で前記一方のヒータに供給する電力と前記第2の段階で前記他方のヒータに供給する電力とを同じにすることを特徴とする請求項10に記載の遅延復調デバイスの位相調整方法。
【請求項12】
前記一方のヒータのヒータ幅と前記他方のヒータのヒータ幅とは同じであり、かつ、前記第1の段階で前記一方のヒータに供給する電力を前記第2の段階で前記他方のヒータに供給する電力より大きくすることを特徴とする請求項10に記載の遅延復調デバイスの位相調整方法。
【請求項13】
前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より大きく、かつ、前記第1の段階で前記一方のヒータに供給する電力を前記第2の段階で前記他方のヒータに供給する電力より大きくすることを特徴とする請求項10に記載の遅延復調デバイスの位相調整方法。
【請求項14】
前記一方のヒータのヒータ幅は前記他方のヒータのヒータ幅より小さく、かつ、前記第1の段階で前記一方のヒータに供給する電力を前記第2の段階で前記他方のヒータに供給する電力より大きくすることを特徴とする請求項10に記載の遅延復調デバイスの位相調整方法。
【請求項15】
前記第1の段階を実施する前に、前記第1および第2のマッハツェンダー干渉計各々の前記2つのアーム導波路の中央部に前記1/2波長板を挿入することを特徴とする請求項8乃至14のいずれか一つに記載の遅延復調デバイスの位相調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−85906(P2010−85906A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257292(P2008−257292)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】