説明

遊技機

【課題】役に内部当選し、当該役に対応する図柄配列で停止させようとする遊技者の停止操作ミスでとりこぼしがあった場合、滑り制御機能を用いて特定の図柄を揃えてとりこぼしがあったことを報知すると共に、この特定図柄配列を契機として特典を付与することで、遊技者の遊技意欲の減退を回避し、遊技趣向性を高める。
【解決手段】予め特定の小役を設定しておき、この特定の小役に内部当選したが、当該特定の小役に対応する図柄を揃えられず、特定の小役の権利行使(配当)ができなかった場合、このとりこぼしを特定の図柄を揃えることで報知し、かつとりこぼしの救済として、複数回のRTゲームを実行可能とした。これにより、遊技者は、とりこぼしを認識することで、遊技技術のレベルアップのきっかけとなり、かつ救済措置を受けることで遊技意欲の減退を回避することができるため、遊技趣向性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メダル、コイン、遊技球等を遊技媒体として使用するスロットマシン等の遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、遊技機、特にパチスロ機では、所定枚数のメダルを投入し、始動レバーを操作することで、抽選を実行し、周面に複数の図柄が表示された複数列(通常3列)の図柄変動リール(表示装置)を回転させるようにしている。
【0003】
始動レバーによって回転を開始した図柄変動リールは、それぞれに対応して設けられた停止ボタンを操作することで、ほぼ遊技者の意図する時期に停止させることができる。
【0004】
ここで、前記始動レバーの操作時に、内部抽選が実行され当たり/外れが決められており、遊技者が停止ボタンにより各図柄変動リールの停止操作を行い、当該内部抽選に当選している場合に、当該当選に対応する図柄が揃った時点で権利行使がなされる。
【0005】
当たりには小役と大役とがあり、小役当選の権利行使は、予め設定された遊技媒体の配当が実行される。また、小役には再遊技(リプレイ)を含んでおり、リプレイの際には、当該遊技のために投入した遊技媒体と同等の配当がなされたものとみなして、新たに遊技媒体を投入することなく、再遊技の権利が与えられる。
【0006】
一方、大役当選の権利行使は、当該役に対して予め設定された遊技媒体の配当が実行された後、上記通常遊技状態から所謂ボーナスゲーム(レギュラーボーナスとビッグボーナスとがある)と称される、所定回数の特別遊技状態に移行する。このボーナスゲームのうち、第1の大役であるレギュラーボーナスでは、所定の回数小役(リプレイ図柄を含む)の当選確率が飛躍的に高まる遊技状態となり、遊技者は、短期間で多くの遊技媒体を獲得することができる。
【0007】
また、第2の大役であるビッグボーナスでは、複数回(通常は最大30回)の小役獲得遊技中に、前記レギュラーボーナスが複数回(通常は最大3回)組み合わされて構成される特別遊技により、遊技者はレギュラーボーナスよりも多量の遊技媒体を獲得することができる(特許文献1参照)。
【0008】
さらに、近年では、前述のボーナスゲーム(特に、ビッグボーナスゲーム)の終了後、内部抽選によってリプレイタイムゲーム(RTゲーム)に突入させることがなされている。このRTゲームの期間中は、再遊技の確率が高いため、遊技者は多くのメダルを消費することなく、次のボーナスゲームの当選、権利行使を期待することができる。
【0009】
ところが、このRTゲームは、ビッグボーナスゲームが権利行使された後でないと、獲得できない特典であり、ビッグボーナスに当選しない遊技者と当選した遊技者との間の配当の格差を大きくすることになる。また、RTゲームの抽選が内部で実行されるため、遊技者に不信感を与えている。
【0010】
ところで、一般遊技中では小役の当選が発生し得る。この小役は、遊技者が始動開始操作をして内部当選すると、その遊技の間だけ有効であるため、遊技者の停止操作で、当該小役に対応する図柄配列を揃えられないと、内部当選した小役は無効となる(小役のとりこぼし)。
【0011】
このため、小役をとりこぼした場合は、小役をとりこぼしたことを示す特定図柄の配列で停止させることがなされている(滑り制御機能の利用)。これにより、小役をとりこぼしたことを遊技者に報知することができ、停止操作タイミングの矯正等に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−290502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記小役のとりこぼしの報知では、特定図柄が揃っても、何ら遊技者に有利になることはなく、かえって遊技意欲を減退させる場合もあり得る。
【0014】
本発明は上記事実を考慮し、例えば、小役に内部当選し、当該小役に対応する図柄配列で停止させようとする遊技者の停止操作ミスでとりこぼしがあった場合、滑り制御機能を用いて特定の図柄を揃えてとりこぼしがあったことを報知すると共に、この特定図柄配列を契機として特典を付与することで、遊技者の遊技意欲の減退を回避し、遊技趣向性を高めることができる遊技機を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、図柄を表示可能な複数列の表示手段を有し、遊技媒体の投入を受けて遊技可能となり、遊技者の始動開始操作に基づいて、役遊技を行う権利を与える抽選を行うと共に前記図柄の変動を開始し、前記複数列の表示手段の各列を前記遊技者の停止操作に基づいて停止する図柄配列により前記抽選の結果を報知し、前記抽選が前記役に内部当選し、かつ当該役に対応する図柄配列で前記複数列の表示手段による表示が停止した場合に、当該内部当選した役に対応する遊技を可能とする遊技機であって、
前記遊技者の停止操作に対して、予め定めた範囲内で図柄変動停止を遅延させ、遊技者の停止操作を補助する滑り制御機能を備えた図柄停止補助手段を有し、
特定の役が内部当選したにも拘わらず、前記複数列の表示手段の特定列について、前記遊技者の停止操作では、当該特定の役に対応する図柄配列で前記複数列の表示手段による表示を停止させることはできないが、前記図柄停止補助手段による滑り制御機能の制御可能範囲に前記特定の役に対応する図柄とは異なる別の特別の図柄が存在する場合に、当該特別の図柄で停止させて特別の図柄配列で前記複数列の表示手段の表示を停止させ、当該特別の図柄配列に対応する特典遊技を付与する契機とすることを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、役に内部当選すると、図柄停止補助手段の滑り制御機能が働き、遊技者の停止操作タイミングのずれが所定の範囲であれば、当該内部当選した役に対応する図柄配列で停止させ、権利行使が可能である。しかし、前記停止操作タイミングが所定の範囲を超えた場合は、当該役に対応した図柄配列とならず、権利行使が無効(或いは、持ち越し)となる(とりこぼし)。
【0017】
そこで、このような場合、特定の役に限り、前記図柄停止補助手段による滑り制御機能の制御可能範囲に前記特定の役の内部当選と同時に抽選され前記特定の役に対応する図柄とは異なる別の特定の図柄が存在することを前提として、当該特定の図柄で停止させる。
【0018】
この図柄で停止した場合は、遊技者に対して特典を与えるようにしたため、とりこぼしを報知させるのみならず、遊技者に有利な状態となるため、遊技者の遊技意欲を減退させることがなく、趣向性を高めることができる。
【0019】
前記特定の役に対応する図柄配列となり得る停止操作期間中であり、かつ前記予め設定した図柄(例えば、特定の役の内部当選と同時に抽選され前記特定の役に対応する図柄とは異なる別の特定の図柄)が前記滑り制御機能の範囲内である場合には、前記特定の図柄を優先して、前記滑り制御機能が動作することを特徴としている。
【0020】
特定の役に対応する図柄配列となり得る停止操作期間中に、特定の図柄も滑り制御機能の範囲内である場合がある。このような場合は、特定の役に対応する図柄配列を優先して、前記滑り制御機能を動作させる。
【0021】
図柄を表示可能な表示手段を有し、遊技媒体の投入を受けて遊技可能となり、遊技者の始動開始操作に基づいて、役遊技を行う権利を与える抽選を行うと共に前記図柄の変動を開始し、前記遊技者の停止操作に基づいて停止する図柄配列により前記抽選の結果を報知し、前記抽選が前記役に内部当選し、かつ当該役に対応する図柄配列で前記表示手段による表示が停止した場合に、当該内部当選した役に対応する遊技を可能とする遊技機であって、前記遊技者の停止操作に対して、予め定めた範囲内で図柄変動停止を遅延させ、遊技者の停止操作を補助する滑り制御機能を備えた図柄停止補助手段を有し、遊技者の停止操作位置にかかわらず、前記図柄停止補助手段による滑り制御機能の制御可能範囲内で停止可能な配列を有する図柄を予め設定しておき、特定の役が内部当選したにも拘わらず、当該特定の役に対応する図柄配列で前記表示手段による表示が停止せず、当該特定の役に対応する遊技の権利行使を逸した場合に、前記図柄停止補助手段による滑り制御機能によって、前記予め設定した図柄で停止させ、特典遊技を付与する契機とすることを特徴としている。
【0022】
役に内部当選すると、図柄停止補助手段の滑り制御機能が働き、遊技者の停止操作タイミングのずれが所定の範囲であれば、当該内部当選した役に対応する図柄配列で停止させ、権利行使が可能である。しかし、前記停止操作タイミングが所定の範囲を超えた場合は、当該役に対応した図柄配列とならず、権利行使が無効(或いは、持ち越し)となる(とりこぼし)。
【0023】
そこで、このような場合、特定の役に限り、遊技者の停止操作位置にかかわらず、予め滑り制御機能の制御可能範囲で停止可能な配列を有する図柄を設定しておき、前記役をとりこぼした場合、この予め設定した図柄を停止させる。
【0024】
この図柄で停止した場合は、遊技者に対して特典を与えるようにしたため、とりこぼしを報知させるのみならず、遊技者に有利な状態となるため、遊技者の遊技意欲を減退させることがなく、趣向性を高めることができる。
【0025】
前記特典遊技が、先の遊技で投入した遊技媒体と同量の遊技媒体を再投入することなく次の遊技を可能とする再遊技の当選確率が他の遊技状態よりも高い遊技状態を含むことを特徴としている。
【0026】
例えばスロットマシンにおける役取りこぼしの際に行われる特典遊技において、遊技者は先の遊技で獲得した遊技媒体をいたずらに消費することなく、引き続き遊技を行い、その間の大役への当選を狙うことができ、遊技趣向性をさらに高めることができる遊技機を提供することができる。
【0027】
前記特定の役が、一般遊技中に抽選され、内部当選かつ権利行使の場合に、予め設定した数の遊技媒体の配当を受け取ることができる小役であることを特徴としている。
【0028】
特定の役を、一般遊技中に抽選され、内部当選かつ権利行使の場合に、予め設定した数の遊技媒体の配当を受け取ることができる小役とすることで、一般遊技中での特典付与が可能となり、従来にない遊技仕様を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した如く本発明では、役に内部当選し、当該役に対応する図柄配列で停止させようとする遊技者の停止操作ミスでとりこぼしがあった場合、滑り制御機能を用いて特定の図柄を揃えてとりこぼしがあったことを報知すると共に、この特定図柄配列を契機として特典を付与することで、遊技者の遊技意欲の減退を回避し、遊技趣向性を高めることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態に係るパチスロ機の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るパチスロ機の動作制御ブロック図である。
【図3】主制御部における通常遊技を主体とした制御系を機能的に示したブロック図である。
【図4】遊技状態制御部における特典付与制御部による、特典付与制御を機能的に示すブロック図である。
【図5】特典付与を主とした通常遊技の流れを示す制御フローチャートである。
【図6】本実施の形態に係るパチスロ機の遊技状態毎の当選エリアの区分(第1例)を示すテーブル図である。
【図7】本実施の形態に係るパチスロ機の遊技状態毎の当選エリアの区分の第1の変形例(第2例)を示すテーブル図である。
【図8】本実施の形態に係るパチスロ機の遊技状態毎の当選エリアの区分の第2の変形例(第3例)を示すテーブル図である。
【図9】左中右の各リールに巻き付けられているリールテープを展開した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(パチスロ機の概略構成)
図1に示される如く、パチスロ機300は、本体302と、本体302の正面に設けられた開閉カバーとしての操作兼装飾部303とを備えて構成されている。
【0032】
操作兼装飾部303は、上から装飾部304、操作部306、払出部310とに分類することができる。
【0033】
装飾部304は、内部でバックライト部(図示省略)が点灯することで、印刷された絵や文字が透過照明される表示パネル部312が取り付けられている。また、装飾部304の一部として、前記装飾部304の上部には、立体的な装飾ランプ304Aも左右方向に設けられている。また、装飾ランプ304近傍には、演出用の音声等を再生するためのスピーカ305R、305Lが設けられている。
【0034】
装飾部304の表示パネル部312は、演出用の動画像を表示するための液晶表示装置(LCD)313と、回胴表示図柄を表示するための表示窓314とを備えている。表示窓314は、前記表示パネル部312と一体成型される透明領域で構成されている。
【0035】
この表示窓314の内部には、3個の回胴リール350A、350B、350Cを主要部として構成された図柄変動部316が配設されている。
【0036】
また、表示窓314の下部には、このパチスロ機300の遊技媒体であるメダルの払出枚数を表示する7セグメント表示部315A、ジャックゲーム残回数や遊技状態の設定(6段階)表示等を行なう表示部315B、クレジット枚数を表示する7セグメント表示部315Cが設けられている。
【0037】
操作部306は、その上部が手前に突き出ており、この突き出し部分の上面の右端部にはメダル投入部320が設けられ、また、上面左端部からは順にクレジットの払い戻しをする際に押下操作される精算ボタン103、1枚ベット(投入)ボタン352A、マックスベット(最大投入)ボタン352Bが設けられている。また、突き出し部分の前面左端部からは、順に始動レバー354、停止ボタン356A、356B、356C等が設けられている。
【0038】
払出部310は、メダル排出口326と、このメダル排出口326から排出されるメダルを受取る受け皿328とを備えている。
【0039】
3個のリール350A、350B、350Cは、回転することで図柄が順次前記表示窓314から見えるようになっている。回転方向は、表示窓314では、図柄図1の上から下に移動するように見える。
【0040】
ここで、回転を停止した場合に表示窓314から見える図柄のうち、中行に並んだ図柄の中心を結ぶライン、上行に並んだ図柄の中心を結ぶライン、下行に並んだ図柄の中心を結ぶラインと、2本の対角線上に並んだ図柄の中心をそれぞれ結ぶ2本のラインと、の5本の有効ライン上に停止した図柄の組み合わせが遊技の結果を示す。
【0041】
なお、5本のラインのうち、どのラインが有効ラインとされるかはメダルの投資数によって決まり、1枚のメダルがベットされた場合は中行に並んだ図柄の中心を結ぶラインが有効ラインとされ、3枚のメダルがベットされた場合は全てのラインが有効ラインとされる。
【0042】
前記停止ボタン356A、356B、356Cは、図柄変動部316下部に設けられており、各リール350A、350B、350Cに対応している。すなわち、対応するそれぞれのリール350A、350B、350Cの回転を遊技者による停止ボタン356A、356B、356Cの操作で停止させることができる。
【0043】
また、この停止ボタン356A、356B、356Cの左側に設けられた始動レバー354を操作(傾倒)することで、各リール350A、350B、350Cが回転を開始するようになっている。なお、この回転は、通常は3個のリール350A、350B、350Cが同時に回転を開始するようになっている。
【0044】
さらに、この始動レバー354による操作タイミングは、後述する内部抽選のタイミングとなっており、当該始動レバー354の操作によって、当たり(役当選)/外れが決定するようになっている。
【0045】
また、前記ラインの内、上行に横一直線に並ぶラインを、後述する停止制御(滑り制御を含む)の基準ラインとしている。すなわち、この基準ラインと、当該基準ライン上に位置する図柄の中心線との位置関係で、停止制御を行っている。
【0046】
図柄と図柄の間でリール350A、350B、350Cが停止することはなく、必ず図柄ピッチで停止制御されるようになっている。
【0047】
さらに、詳しくは、現在、基準ライン上にある第1の図柄の中心線が基準ラインを超えた時点で停止操作があった場合は、リール350A、350B、350Cを逆転させることはできないので、超えた直後から次の第2の図柄の中心線が基準ラインと一致するまでの間は、当該第2の図柄を停止させる制御(最大図柄ピッチ未満)が所謂ビタ止めの基準となる。
【0048】
(制御系)
図2には、上記パチスロ機300の動作を制御するための制御ブロック図が概略的に示されている。
【0049】
パチスロ機300の制御系は、主制御部100を中心に構成されており、この主制御部100には、メダル投入部320から投入されたメダルを識別し、メダルの投入数や種類(不正又は純正)等を出力するメダルセレクタ102が接続されると共に、始動レバー354、上述したリール350A、350B、350Cのそれぞれに対応する停止ボタン356A、356B、356C、MAXベットボタン352B、1枚ベットボタン352A並びに遊技を中止する際に遊技機内部に貯留(クレジット)したメダルを戻すための精算ボタン103が、それぞれ操作状態を検出する不図示のセンサ等を介して接続されている。
【0050】
また、主制御部100は、CPUを含んで構成される主制御回路110を備えており、主制御回路110には、主として遊技の進行状況等を一時的に記憶するRAM128と、各種プログラム等が記憶されたROM130と、が接続されると共に、主制御回路110の動作の基準となるクロックパルスを生成するクロックパルス発生回路124が分周器126を介して接続されている。
【0051】
また、主制御回路110には、乱数発生器120及び乱数サンプリング回路122が接続されている。主制御回路110は、分周器126を介して入力されたクロックパルスに同期して乱数発生器120を制御して順次乱数を発生させ、乱数サンプリング回路122では、当該乱数発生器120により発生された乱数を取得してサンプリングする。
【0052】
パチスロ機300では、始動レバー354による操作タイミングで大役、小役等の当落を決定する内部抽選が主制御部100により行われるようになっており、主制御回路110では、始動レバー354が操作されると上記乱数サンプリング回路122に対して、乱数の取得、サンプリング及び出力を指示し、これにより乱数サンプリング回路122から入力された乱数に応じて抽選結果を導出する。
【0053】
なお、内部抽選が当たり(役当選)の場合は、その後の停止ボタン356A、356B、356Cによる停止操作により当たり図柄が揃うと、遊技者は各図柄に応じた数のメダルを獲得できるほか、揃った図柄に応じて遊技者に有利な遊技状態となる。
【0054】
ここで、役には小役と大役とがある。このうち、大役には、ビッグボーナス(以下、適宜「BB」という)及びレギュラーボーナス(以下、適宜「RB」という)があり、それぞれに対応する遊技においては遊技者に対する有利さの度合いが異なる。RBに対応する遊技(以下、適宜「RBゲーム」という)は複数回の小役ゲームにより構成されており、BBに対応する遊技(以下、適宜「BBゲーム」という)は、その遊技中に、獲得したメダル数が上限値を超えない範囲で複数回入賞可能なRBゲームを含んで構成されている。このため、当然、小役ゲームよりもRBゲームの方が、RBゲームよりもBBゲームの方が、遊技者にとってより有利な遊技状態となる。
【0055】
また、主制御部100には、モータ駆動回路132が接続されており、当該モータ駆動回路132には、左(L)、中(C)、右(R)用の各リールモータ106A、106B、106Cを介してそれぞれ左、中、右の各リール350A、350B、350Cが接続されている。
【0056】
さらに、主制御部100には、3個のリール350A、350B、350Cの回転位置を検出するためのリール位置検出回路134が接続されており、主制御部100では、各リール350A、350B、350Cの位置を常時把握することができるようになっている。
【0057】
また、パチスロ機300では、上記始動レバー354による操作タイミングで図柄変動部316による図柄変動を開始するようになっており、主制御部100は、始動レバー354が操作されると、モータ駆動回路132を介したリールモータ106A、106B、106Cの駆動をそれぞれ開始し、3個のリール350A、350B、350Cをそれぞれ回転させると共に、その後の停止ボタン356A、356B、356Cによる操作に基づいて、3個のリール350A、350B、350Cの回転を停止させる。
【0058】
ここで、主制御部100では、上記停止ボタン356A、356B、356Cによる停止操作に基づいてリール350A、350B、350Cの回転を停止させる際、内部抽選の結果に応じて、所定コマ数の滑り制御を実行するようになっている。
【0059】
すなわち、内部抽選が外れのとき、当りの場合のみ停止する図柄が有効ライン上に停止する停止タイミングで停止ボタン356A、356B、356Cが操作された場合、意図的にこの図柄での停止を回避するため、停止位置をずらし(蹴飛ばし)、外れ図柄配列で停止するように制御する。
【0060】
また、内部抽選が当りのとき、遊技者が操作した停止タイミングでは当り図柄が停止しない場合でも、所定図柄数内であれば、意図的にこの当たり図柄が有効ライン上に揃って停止するように停止位置をずらす(引き込み)制御を行う。
【0061】
上記蹴飛ばし、引き込みを行うことで、内部抽選の結果と遊技の結果との統一性を持たせることができると共に、若干停止操作タイミングがずれても当り図柄を揃えることが可能となることで、遊技者の取りこぼしを可能な範囲で防いでいる。
【0062】
ここで、上記のような蹴飛ばし、引き込みを含む滑り制御は、内部抽選の結果により、滑り量(滑りコマ数)が異なることになる。
【0063】
従って、主制御回路では、それぞれの内部抽選の結果毎に、停止ボタン356A、356B、356Cによる停止操作タイミング(前述の基準ラインにビタ止めする図柄の特定)と滑りコマ数とを対応付けた滑り制御テーブルを格納し、当該内部抽選の結果に基づいて該当する滑り制御テーブルを読み出し、滑り制御を実行するようにしている。この滑り制御に用いる滑り制御テーブルに関しては、後述する。
【0064】
また、主制御部100には、パチスロ機300内部に設けられたホッパー138を作動させるためのホッパー駆動回路136が接続されている。ホッパー138にはメダルが貯留されており、主制御部100では、リール位置検出回路134からの出力により特定された停止図柄に応じて、ホッパー駆動回路136を介したホッパー138からのメダルの払い出しが実行される。
【0065】
さらに、ホッパー138近傍には、ホッパー138から払出されるメダルを検出するメダル検出センサ140が配設されており、払出完了信号回路142を介して主制御部100に接続されている。払出完了信号回路142では、メダル検出センサ140からの検出信号に基づいて払出が完了したか否かが判定され、払出が完了したと判定された時点で払出完了信号が生成されて主制御部100に入力される。
【0066】
主制御部100では、払出完了信号回路142から払出完了信号が入力されるとホッパー駆動回路136を介してホッパー138によるメダルの払出しを終了する。
【0067】
さらに、主制御部100には、表示ランプ駆動回路144が接続されており、当該表示ランプ駆動回路144を介して前述した7セグメント表示部315A、表示部315B、7セグメント表示部315C及び有効化ライン等の表示ランプ146の点灯及び消灯を制御する。
【0068】
一方、主制御部100には、副制御部150が接続されており、主制御部100は副制御部150に対して、随時制御状態を示すコマンド信号を入力する。なお、本実施の形態では、主制御部100と副制御部150との間の通信としては、主制御部100から副制御部150に対する一方的な通信だけが実行され、副制御部150から主制御部100に対する通信は一切行うことができない構成となっている。
【0069】
副制御部150には、液晶制御回路152が接続されており、液晶制御回路152では、演出のために設けられた液晶表示装置(LCD)313の表示状態を制御する。
【0070】
また、副制御部150には、ランプ駆動回路156が接続されており、当該ランプ駆動回路156を介して装飾ランプ304Aに内蔵されているランプ112や、リール350A、350B、350Cの内部に設けられ、表示窓314に表示されるリール350A、350B、350C周面の図柄に対向する位置に向けて発光するバックライト158等の発光を制御する。
【0071】
さらに、副制御部150には、スピーカ駆動回路154が接続され、スピーカ305L、305Rからの音声(効果音)出力を制御する。
【0072】
副制御部150では、主制御部100のパチスロ機300の制御状態に応じて、LCD313、スピーカ305L、305R及びバックライト158や装飾ランプ304Aに内蔵されたランプ112等による報知演出を実行する。
【0073】
特に、LCD313では、始動レバー354が操作されときに実行される役抽選の結果に応じて、当該遊技に関わる予告演出を実行する場合があり、遊技者はこの予告演出を見ることで、当該遊技の役抽選における当選への期待感を持つことができる。
【0074】
図3は、本実施の形態に係る主制御部100における遊技制御のための制御系を機能的に示したブロック図である。
【0075】
主制御部100は、抽選部180を含んで構成されており、当該抽選部180には、始動レバー354が操作されたことを示す操作信号が入力されるようになっている。抽選部180は、所定数のメダルの投入(ベット)がなされた後の始動レバー354の操作をトリガとして、内部抽選を実行するようになっている。
【0076】
抽選部180では、始動レバー354の操作に同期して乱数値を取得し、当該乱数値をテーブル選択部182を経由して当選役・図柄決定部184へ送出する。
【0077】
テーブル選択部182には、抽選部180により取得され得る数値に対応する役・図柄を示す情報がパチスロ機300の遊技状態毎に記憶された役・図柄テーブル(図6参照)が格納されている。
【0078】
なお、図6は、本パチスロ機の遊技状態における内部抽選毎の当選エリア区分テーブルを示している。図6は、行方向に当選エリアナンバーをNo.0からNo.6までの7区分、列方向には、通常遊技、RT遊技、BB内部当選中、RB内部当選中、BB作動時の通常遊技、BB作動時のRB内部当選中、RB遊技の7つの遊技状態を配列している。この表において、不当選は抽選の外れを意味する。再遊技は所謂(リプレイ)を意味し、ベル、スイカ、チェリーはそれぞれ小役を意味する。RBはレギュラーボーナス、BBはビッグボーナスを意味する。この図6(図表)においては、各遊技状態毎、メダルの設定数毎に各当選エリアNo.に割り当てられている乱数の数は異なる。例えば、通常遊技とRT遊技とは、各当選エリアNo.1の再遊技には通常遊技に比べ格段に多い3〜4倍の数の乱数が割り当てられ、その分当選エリアNo.1の不当選に割り当てられる乱数の数は少ない。また、各遊技状態において、少なくともRB、BBについては、設定値(現在通常1乃至6の6段階ある)によっても各当選エリアに割り当てられている乱数の数は異なる。なお、図6の「及びRB」、「及びBB」とは、それぞれの内部抽選においてその乱数は「小役」や「不当選」であってもその遊技においてそれぞれRB、BBが留保されていて、RB、BBを揃えることも可能であることを意味している。
【0079】
なお、この当選エリア区分テーブルに関しては、図6に限らず、図7又は図8に示される当選エリア区分テーブルであってもよい。
【0080】
テーブル選択部182では、遊技状態制御部186から現在の遊技状態(一般遊技中、RTゲーム中、大役フラグ成立中、大役(BB、RB)中等)を示す情報を得て、上記遊技状態毎に設けられた役・図柄テーブルから役・図柄を決定すべき役・図柄テーブルを選択する。
【0081】
このテーブル選択部182で選択された役・図柄テーブルに基づいて、当選役・図柄決定部184は、当選役(小役(リプレイを含む)、大役(RB、BB))及び当選図柄を決定し、決定した当選役及び当選図柄を遊技状態制御部186に入力する。
【0082】
遊技状態制御部186には、パチスロ機300の遊技状態に応じた各種プログラムを示すデータが記憶された遊技プログラムメモリ188が接続されている。遊技状態制御部186は、主として遊技実行制御部186Aにより遊技プログラムメモリ188から遊技状態に応じた遊技プログラムデータを適宜読み出して実行することにより、遊技状態を制御するようになっている。
【0083】
なお、遊技プログラムメモリ188には、通常遊技プログラムを示すデータ及び大役遊技プログラムを示すデータがそれぞれ記憶されており、例えば、通常遊技状態の場合は、遊技プログラムメモリ188から通常遊技プログラムデータが読み出され、大役遊技状態の場合はBB、RBの内部当選状態、BB、RBの各遊技状態に応じて、大役遊技プログラムデータが読み出され、それぞれのプログラムデータに基づいて処理が実行される。
【0084】
一方、主制御部100は、リール駆動制御部194を含んで構成されており、始動レバー354の始動操作に基づき、前回の遊技の終了後、4.1秒を経過した後、モータ駆動部132を介してリールモータ106A、106B、106Cを駆動させてリール350A、350B、350Cの回転を開始する。
【0085】
また、リール駆動制御部194は、停止ボタン356A、356B、356Cの操作に基づいてリール350A、350B、350Cの回転を停止させる停止制御を行う。
【0086】
また、リール350A、350B、350Cには、それぞれ位置検出センサ198A、198B、198Cが取り付けられており、リール位置検出回路134を介してリール駆動制御部194に接続されている。リール駆動制御部194では、リール350A、350B、350Cのそれぞれの回転位置を認識し、前記滑り制御を加味した状態でリール350A、350B、350Cを停止させると共に、停止したリール350A、350B、350Cの図柄配列を遊技状態制御部186へ送出する。
【0087】
この停止したリール350A、350B、350Cの図柄配列により、遊技状態制御部186では、何らかの役に入賞したか否かが確認され、小役の入賞であれば所定の配当が行われると共に、入賞した役がリプレイであればリプレイ制御が実行され、大役であれば遊技実行制御部186Aにより大役遊技プログラムが遊技プログラムメモリ188から読み出されて実行される。
【0088】
また、大役プログラムには、レギュラーボーナスゲームプログラム及びビッグボーナスゲームプログラムが、それぞれ別個に記憶されており、当選した大役に基づいて選択的に読み出されるようになっている。
【0089】
レギュラーボーナスプログラムでは、権利行使として小役の抽選確率が通常遊技中の抽選確率よりも高い状態で最高12回の遊技(最大遊技回数)を実行可能である。この12回の遊技の間で何らかの小役に最高8回入賞(最大入賞回数)すると、レギュラーボーナスゲームは終了する。
【0090】
一方、ビッグボーナスプログラムでは、権利行使としてレギュラーボーナスゲームが高確率に実行可能であり、ビッグボーナスゲームにおける獲得枚数が予め設定された上限枚数に到達すれば、レギュラーボーナスゲームの実行中であってもビッグボーナスゲームは終了する。なお、本実施の形態では、ビッグボーナスゲーム中における小役の当選確率は、通常遊技とほぼ同じとなっている。
【0091】
また、遊技状態制御部186には、フラグ管理制御部190を介してフラグメモリ192が接続されており、上述した内部抽選の当選結果に応じた役の内部当選状態をフラグの状態によって管理している。
【0092】
各フラグは、内部抽選により当選することにより成立し、一般に、小役のフラグの状態は1回の遊技で消滅(フラグ不成立)するが(当選の無効)、大役のフラグの状態はその後各リール350A、350B、350Cが停止して表示窓314に大役図柄が所定の配列で表示されることにより大役に入賞するまで維持される(当選の持ち越し)。
【0093】
なお、フラグメモリ192は、上述したリール駆動制御部194に接続されており、当該フラグメモリ192に記憶されたフラグの状態は、リール駆動制御部194による停止ボタン356A、356B、356Cの操作に基づく停止制御の際の引き込みまたは蹴飛ばしの滑り制御のパラメータとして適用される。
【0094】
ここで、本実施の形態では、複数の小役の内、予め特典を付与するきっかけとなる特定の小役(例えば、図9に記載の図柄配列で言えば、「スイカ−スイカ−スイカ」)を予め設定しており、この特定の小役が内部当選し、かつ遊技者の停止操作で当該特定の小役に対応する図柄が揃えられなかった場合に、特典を付与するようにしている。言い換えれば、特定の小役の内部当選のとりこぼしの救済措置として、特典を付与するようになっている。
【0095】
この特典付与の制御は、遊技状態制御部186の特典付与制御部186Bにおいて実行されるようになっている。特典付与制御部186Bは、前記遊技実行制御部186Aとバス186Cによって連携されている。
【0096】
通常は、前述の如く、滑り制御機能により、停止ボタン356A、356B、356Cの所定の範囲内の停止操作タイミングのずれ分は、引き込みによって目的の図柄を揃えられるが、所定の範囲外の停止操作タイミングのずれ分は、対応しきれなかった。このため、特に、1回の遊技で完結する小役の場合、内部当選しても、図柄を揃えられないことで無効となり、権利行使がなされない仕様となっていた。
【0097】
このため、本実施の形態の特典付与制御部186Bでは、このような小役のとりこぼしの救済をするべく、特典付与の機会を遊技仕様として付加している。
【0098】
図4には、遊技状態制御部186における、前記特典付与を制御するための特典付与制御部186Bの機能ブロック図が示されている。
【0099】
この特定の小役に対応する図柄(情報)は、特定小役対応図柄メモリ10に記憶されており、照合部12に接続されている。照合部12には、当選役・図柄決定部158で決定し、遊技状態制御部186に入力される図柄(情報)が入力され、両者が照合される。
【0100】
照合部12において、一致した場合には、特典付与の第1の条件が揃ったことになり、第1の条件成立信号を条件成立判断部14へ送出する。
【0101】
また、前記照合部12は、リール駆動制御部194に接続されており、第1の条件が成立したことを示す第1の条件成立信号を送出する。リール駆動制御部194では、第1の条件成立信号に基づいて、滑り制御機能により、当該特定の小役が内部当選している状態での停止操作が、滑り制御機能の引き込み範囲外の場合に、予め設定した特典付与図柄(例えば、「バー」)を停止させるようにように制御する。
【0102】
さらに詳細に説明すると、「スイカ−スイカ−スイカ」の小役(特定の小役)に内部当選し、第1のリール350Aと第2のリール350Bの停止操作で「スイカ−スイカ−↓」となったとき、第3のリール350Cの停止操作で「スイカ」を引き込めない場合に、特典付与図柄である「スイカ−スイカ−バー」となった時点で特典が付与される制御である。
【0103】
図9に各リール350A、350B、350C(図1参照)の図柄配列図を示す。この図9では、リール350A、350B、350Cにそれぞれ巻き付けられているリールテープを展開して示したものである。図柄変動は、上から下となり、それぞれ上下に連続する3図柄が一度に表示される(表示窓314から見える)ことになる。なお、各リール350A、350B、350Cの図柄の左側に付加されているのは図柄番号であり、実際には、リールテープには、表示されないものである。
【0104】
図9に示される如く、特定の小役である「スイカ」が、第1のリール(左リール)350A、第2のリール(中リール)350Bでは、揃えやすい(停止し易い)配列となっているが、第3のリール(右リール)350Cでは、取りこぼしの可能性が高い。
【0105】
この第3のリール350Cに、特典付与図柄「バー」を「スイカ」の配置に基づいて、配置しておくことで、「スイカ」をとりこぼした場合の救済とすることが可能となっている。
【0106】
より具体的には、第1のリール350A、第2のリール350Bにおいて、表示窓314の上段で[スイカ」が揃い、所謂テンパイしている場合、第3のリール350Cでは以下の形態が考え得る。
(1) 図柄番号「1」,「2」,「11」,「12」,「13」,「14」,「15」,「21」が上段に位置したときに停止操作があった場合
「スイカ」が引き込めるので、「スイカ」を停止させるように制御する。
(2) 図柄番号「4」,「5」,「6」,「7」,「16」,「17」,「18」,「19」が上段に位置したときに停止操作があった場合
「バー」のみが引き込めるので、「バー」を停止させるように制御する。
(3) 図柄番号「3」,「20」が上段に位置したときに停止操作があった場合
「スイカ」、「バー」の双方が引き込めるので、「スイカ」を優先して停止させるように制御する。
(4) 図柄番号「8」,「9」,「10」が上段に位置したときに停止操作があった場合
「スイカ」、「バー」の双方共、引き込めないので、外れ目で停止させるように制御する。
【0107】
また、リール駆動制御部194は、前記条件成立判断部14に接続されており、前記特典付与図柄が揃った場合には、これを第2の条件成立として、第2の条件成立信号を送出するようになっている。
【0108】
条件成立判断部14では、第1の条件成立信号と第2の条件成立信号との双方が入力したことを条件(AND条件成立)として、特典付与部16へ特典付与信号を送出する。これにより、遊技実行制御部186Aでは、一般遊技中において、特典を付与するようになっている。
【0109】
なお、本実施の形態の特典は、リプレイタイムゲーム(RTゲーム)であり、遊技実行制御部186Aでは、一般遊技中に、特定の小役をとりこぼした時点から所定回数(例えば、50回から100回程度)のRTゲームを実行するように制御する。
【0110】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0111】
本実施の形態では、特定の小役が内部当選したにも拘わらず、遊技者の停止ボタン356A、356B、356Cの操作による停止タイミングが悪く、滑り制御を駆使しても、前記内部当選した特定の小役に対応する図柄を揃えることができなかった場合、滑り制御の制御範囲内に予め設定した図柄(本実施の形態では「バー」図柄)が存在した場合に、この「バー」を用いた図柄配列で停止させ(「スイカ−スイカ−バー」)、遊技者のRTゲームという特典を与える可能性を持たせた。
【0112】
これは、特定の小役の内部当選が無効になったことを報知する機能であると共に、内部当選した特定の小役の権利を行使できなかった遊技者への救済措置ということができる。
【0113】
以下、図5のフローチャートに従い、前記特定の小役が内部当選し、かつ対応する図柄が揃えられなかった状況を主とした、通常遊技の流れを説明する。
【0114】
メダルがクレジットされている状態(或いは、メダル投入部320からメダルを投入した状態)で、1枚ベットボタン352A、またはマックスベットボタン352Bの操作によりメダルのベットが完了するか、或いは、メダル投入部320からメダルを投入することによりベットが完了すると、始動レバー354の操作が可能となる。始動レバー354が操作されると(ステップ200)、この操作と同時に当り/外れの抽選がなされる(ステップ202)と共に、リール駆動制御部194の制御により、リール350A、350B、350Cが回転を開始する。
【0115】
ステップ202では、上記抽選の結果が判断され、かつ当選した場合はステップ204で大役か小役かが判断される。
【0116】
この当選/不当選(外れ)、並びに当選役種類は、当選役・図柄決定部158から遊技状態制御部186に伝えられる。遊技状態制御部186は、抽選の結果が不当選、再遊技、小役の場合には、小役フラグメモリ168にそのフラグを記憶させ、RB又はBBの場合には大役フラグメモリ170にそのフラグを記憶させる等の処理(ステップ206の不当選準備処理、ステップ208の小役内部当選準備処理、ステップ210の大役内部当選準備処理)が実行される。なお、ステップ206及びステップ210の準備処理後は、ステップ218へ移行する。
【0117】
また、ステップ208、すなわち、小役内部当選準備処理後は、ステップ212へ移行して内部当選した小役が特定の小役か否かが判断される。このステップ212で否定判定の場合は、ステップ218へ移行する。
【0118】
一方、ステップ212で肯定判定された場合には、ステップ214へ移行して、リール駆動制御部194へ第1の条件成立信号を送出する。これにより、リール駆動制御部194では、特定の小役に対応する図柄が揃わなかったときに、特典付与図柄を揃えるように制御する。
【0119】
次のステップ216では、条件成立判断部14へ第1の条件成立信号を送出し、ステップ218へ移行する。
【0120】
リール駆動制御部194は、小役メモリ制御部168、大役メモリ制御部170にのフラグに従ってリールモータ106A、106B、106Cを駆動しつつ、リール350A、350B、350Cを遊技者の以後の操作に従って停止制御する。
【0121】
その後、遊技者が、停止ボタン356A、356B、356Cを操作すると(ステップ218での肯定判定)、この停止操作によってリール350A、350B、350Cの回転を停止させるが、小役フラグメモリ168、大役フラグメモリ170に記憶されているフラグに従って、滑り制御を加味して該当する図柄を所定位置に引き込むように、或いは所定位置から蹴飛ばすようにリール350A、350B、350Cの停止制御が実行される(ステップ220)。すなわち、前記フラグが成立している場合には、的確な目押しタイミングによって当たり図柄を停止させることができる。また、多少の停止操作タイミングのずれは滑り制御によって矯正される。逆に、フラグが成立していない場合には、目押しを行っても、リール350A、350B、350Cの回転に滑りを生じさせ、当り図柄では停止しないようにする。
【0122】
次に、全てのリール350A、350B、350Cが停止すると(ステップ222での肯定判定)、停止図柄が当たりか否かが判断され、当たりの場合には当たり役を判別する(ステップ224)。
【0123】
このステップ224の判別で、当選図柄が揃ったと判定された場合(肯定判定)は、ステップ226へ移行して、当選役に応じた権利行使を指示する。
【0124】
このステップ224からステップ226への移行のケースは、前述した図9の図柄番号で言うと、(1)の図柄番号「1」,「2」,「11」,「12」,「13」,「14」,「15」,「21」が上段に位置したときに停止操作があった場合と、(3)の図柄番号「3」,「20」が上段に位置したときに停止操作があった場合とに相当する。
【0125】
すなわち、大役と判定された場合には、その停止図柄に従って、ビッグボーナス(BB)又はレギュラーボーナス(RB)のボーナスゲーム制御を実行し(権利行使)、小役と判定された場合には、当該小役に予め設定されている所定の払出し制御を実行する。
【0126】
一方、ステップ224で否定判定、当選図柄が揃わなかった場合には、ステップ228へ移行して特典付与図柄が揃ったか否かが判断される。
【0127】
このステップ228で否定判定された場合には、特定の小役以外の小役のとりこぼし、或いはボーナスゲームのとりこぼしと判断され、このルーチンは終了する。なお、ボーナスゲームのとりこぼしは、フラグの成立を解除するものではない。
【0128】
このステップ228の否定判定のケースは、前述した図9の図柄番号で言うと、(4)の図柄番号「8」,「9」,「10」が上段に位置したときに停止操作があった場合に相当する。
【0129】
ステップ228で肯定判定された場合には、特定の小役に内部当選し、かつこの特定の小役に対応する図柄が揃わず、代わりに特典付与図柄が揃ったと判断し、ステップ230へ移行して、条件成立判断部14へ第2の条件成立信号を送出する。
【0130】
このステップ228からステップ230への移行のケースは、前述した図9の図柄番号で言うと、(2)の図柄番号「4」,「5」,「6」,「7」,「16」,「17」,「18」,「19」が上段に位置したときに停止操作があった場合に相当する。
【0131】
次のステップ232では、条件成立判断部14において、2つの条件が成立したか否かが判断される。このステップ232で否定判定(通常はあり得ない)されると、このルーチンは終了する。
【0132】
一方、ステップ232で肯定判定されると、ステップ234へ移行してRTゲームを実行するように指示して、このルーチンは終了する。
【0133】
RTゲームの回数は、本実施の形態では、50〜100回としたがこの回数に限定されるものではなく、また、連続してRTゲームを実行せず、複数回に分けて断続的に行うようにしてもよい。
【0134】
このように本実施の形態では、予め特定の小役を設定しておき、この特定の小役に内部当選したが、当該特定の小役に対応する図柄を揃えられず、特定の小役の権利行使(配当)ができなかった場合、このとりこぼしを特定の図柄を揃えることで報知し、かつとりこぼしの救済として、複数回のRTゲームを実行可能とした。これにより、遊技者は、とりこぼしを認識することで、遊技技術のレベルアップのきっかけとなり、かつ救済措置を受けることで遊技意欲の減退を回避することができるため、遊技趣向性を向上することができる。
【0135】
なお、本実施の形態では、特定の小役のとりこぼし時の特典として、複数回のRTゲームの実行を行ったが、遊技者に有利なものであれば、RTゲームに限らず、アシストタイムゲーム(ATゲーム)、或いは、新規に設けた通常のパチスロ機のゲームから逸脱した別設定のゲーム(例えば、煙草やジュース等を賞品とした遊技店設定の特別ゲーム等)であってもよい。
【0136】
また、特定の小役は1種類に限らず、全ての小役を含む複数種類の小役であってもよい。また、適宜、特定の小役を変更してもよい。
【0137】
なお、本実施の形態では、特定の小役を取りこぼし、かつ特典の付与もない形態が存在したが、特定の小役が内部当選したにも拘わらず、遊技者の停止ボタン356A、356B、356Cの操作による停止タイミングが悪く、滑り制御を駆使しても、前記内部当選した特定の小役に対応する図柄を揃えることができなかった場合、滑り制御の制御範囲内で、いかなるときでも揃えることが可能な図柄配列で停止させ、遊技者のRTゲームという特典を与えるようにしてもよい。所謂特定の役に内部当選した場合は、特典を当たりと仮定すれば、外れがないということができる。
【0138】
このような、外れがない形態を構成するためには、図9に示される図柄配列において、予め設定した特典付与図柄を、「リプレイ」図柄とすることで、特定の小役を取りこぼし、かつ特典も付与されないといった、遊技者に最も不利な状態を回避することができる。
【0139】
すなわち、特典付与図柄とした「リプレイ」図柄は、図9に示される如く、滑り制御機能の引き込み範囲内で必ず揃えることができる図柄であり、いかなる停止操作タイミングでも、当該特典付与図柄を揃えることが可能となっている。
【0140】
より具体的に説明すると、第1のリール350A、第2のリール350Bにおいて,表示窓314の上段で[スイカ」が揃い、所謂テンパイしている場合、第3のリール350Cでは以下の形態が考え得る。
(1) 図柄番号「4」,「5」,「6」,「7」,「8」,「9」,「10」,「16」,「17」,「18」,「19」が上段に位置したときに停止操作があった場合
「リプレイ」のみが引き込めるので、「リプレイ」を停止させるように制御する。
(2) 図柄番号「1」,「2」,「3」,「11」,「12」,「13」,「14」,「15」,「20」,「21」が上段に位置したときに停止操作があった場合
「スイカ」、「リプレイ」の双方が引き込めるので、「スイカ」を優先して停止させるように制御する。
【0141】
すなわち、「スイカ」も「リプレイ」共に引き込むことができない形態は存在しない(外れなし)。
【0142】
なお、上記実施の形態(変形例を含む)では、通常遊技状態において、「スイカ・スイカ・スイカ」に内部当選し、とりこぼした場合にRTを特典として付与するようにしたが、BB後にもRTを付与する場合がある。
【0143】
そこで、遊技性、経営方針、出玉率等に基づいてこのBB後に付与するRTと、前記とりこぼしの救済としてのRTと、のそれぞれに関して、有効/無効の選択ができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0144】
10 特定小役対応図柄メモリ
12 照合部
14 条件成立判断部
16 特典付与部
100 主制御部
154 抽選部
156 テーブル選択部
158 当選役・図柄決定部
186 遊技状態制御部
186A 遊技実行制御部
186B 特典付与制御部
162 遊技プログラムメモリ
194 リール駆動制御部(図柄停止補助手段)
106A、106B、106C リールモータ
172A、172B、172C 位置検出センサ
300 パチスロ機(遊技機)
352A 1枚ベットボタン
352B マックスベットボタン
354 始動レバー
350A、350B、350C リール
356A、356B、356C 停止ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図柄を表示可能な複数列の表示手段を有し、遊技媒体の投入を受けて遊技可能となり、遊技者の始動開始操作に基づいて、役遊技を行う権利を与える抽選を行うと共に前記図柄の変動を開始し、前記複数列の表示手段の各列を前記遊技者の停止操作に基づいて停止する図柄配列により前記抽選の結果を報知し、前記抽選が前記役に内部当選し、かつ当該役に対応する図柄配列で前記複数列の表示手段による表示が停止した場合に、当該内部当選した役に対応する遊技を可能とする遊技機であって、
前記遊技者の停止操作に対して、予め定めた範囲内で図柄変動停止を遅延させ、遊技者の停止操作を補助する滑り制御機能を備えた図柄停止補助手段を有し、
特定の役が内部当選したにも拘わらず、前記複数列の表示手段の特定列について、前記遊技者の停止操作では、当該特定の役に対応する図柄配列で前記複数列の表示手段による表示を停止させることはできないが、前記図柄停止補助手段による滑り制御機能の制御可能範囲に前記特定の役に対応する図柄とは異なる別の特別の図柄が存在する場合に、当該特別の図柄で停止させて特別の図柄配列で前記複数列の表示手段の表示を停止させ、当該特別の図柄配列に対応する特典遊技を付与する契機とすることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記特定の役に対応する図柄配列となり得る停止操作期間中であり、かつ前記予め設定した図柄が前記滑り制御機能の範囲内である場合には、前記特定の役に対応する図柄配列を優先して、前記滑り制御機能が動作することを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記特典遊技は、先の遊技で投入した遊技媒体と同量の遊技媒体を再投入することなく次の遊技を可能とする再遊技の当選確率が他の遊技状態よりも高い遊技状態を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊技機。
【請求項4】
前記特定の役が、一般遊技中に抽選され、内部当選かつ権利行使の場合に、予め設定した数の遊技媒体の配当を受け取ることができる小役であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−251200(P2011−251200A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207150(P2011−207150)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2005−108690(P2005−108690)の分割
【原出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】