説明

過弗化物処理装置

【課題】
半導体製造装置または液晶製造装置が設置されるクリーンルームを小型化できる。
【解決手段】
触媒層17が設けられて過弗化物を含む排ガスが供給され、前記過弗化物を分解する過弗化物分解装置9と、前記過弗化物分解装置9から排出された前記排ガスに含まれた酸性物質がCa塩と反応して生成される第1反応生成物を除去する酸性物除去装置22とを備えていることを特徴とする過弗化物処理装置。半導体製造装置または液晶製造装置が設置されるクリーンルーム2内にPFC分解装置9を設置するスペースを確保する必要がなくなり、クリーンルームを小型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過弗化物処理装置に係り、特に、半導体製造プロセス及び液晶製造プロセス等で発生する過弗化物(PFC)ガスを処理するのに好適な過弗化物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PFCガスは、半導体製造プロセス及び液晶製造プロセスにおいて、半導体及び液晶用素材のエッチングガス,エッチャーのクリーニングガス、及びCVD装置のクリーニングガスとして用いられる。しかしながら、PFCガスは温暖化係数がCO2の1万倍から数千倍と非常に大きなガスである。半導体及び液晶の製造プロセスでは、PFCガスを全量消費せずに生産効率等の観点から、20〜50%を消費した後に、残りのPFCガスを排ガスとしてエッチャー(またはCVD装置)から排出している。地球温暖化の防止のため、PFCガスの外部環境への放出を防止する上で、PFCガスの分解処理が求められている。なお、代表的なPFCガスとしては、CF4,CHF3,C26,C38,C46,C58,NF3,SF6等がある。
【0003】
外部環境へのPFCガスの放出を抑制するために、特開平11−319485号公報に記載されたように、半導体及び液晶製造業界では、PFCガスを使用するエッチャーごとにその近傍に過弗化物分解装置(PFC分解装置という)を設置し、エッチャーから排出される排ガス中のPFCガスを触媒を用いて分解処理することが知られている。このPFC分解装置は、PFCを分解する触媒を充填した反応部,反応部に供給する排ガスに含まれたケイ素成分を除去するケイ素成分除去装置,触媒で分解されたPFCの分解ガスを含む排ガスを冷却する冷却室、更には冷却室から排出された排ガスに含まれた酸性ガスを除去する酸性ガス除去装置を備える。また、特開平11−70322号公報にも触媒を用いたPFC分解装置が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケイ素成分除去装置,冷却室及び酸性ガス除去装置は水を必要とするために、個々のPFC分解装置に水供給管を接続しなければならない。各PFC分解装置がクリーンルーム内に設置されている関係上、それらに接続される各水供給配管もクリーンルーム内に設置される。排水管も各PFC分解装置にそれぞれ接続される。このため、クリーンルーム内のスペースの一部が各PFC分解装置及びそれらの水供給管及び排水管によって占有されることになる。新たにクリーンルームを作成し内部に複数のエッチャー等の半導体製造装置(または液晶製造装置)を設置する場合には、複数のPFC分解装置及びそれらに対する各種ユーティリティ設備(水供給管及び排水管等)の設置スペースをクリーンルーム内に確保する必要があり、それだけクリーンルーム内のスペースを大きくしなけばならない。また、既設のクリーンルーム内にPFC分解装置を設置する場合には、PFC分解装置及び各種ユーティリティの設置スペースを確保するためにクリーンルーム内に設置されているエッチャー等の半導体製造装置(または液晶製造装置)を移動しなければならない事態も生じる。
【0005】
クリーンルーム内の各PFC分解装置に対して各種のユーティリティ設備を設置しているため、それらの設備の設置に多大の時間を要することになる。
【0006】
本発明の目的は、相対的にクリーンルームを小型化できる過弗化物処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、過弗化物を含む排ガスが供給され、前記過弗化物を分解する過弗化物分解装置と、前記過弗化物分解装置から排出された前記排ガスに含まれた酸性物質がCa塩と反応して生成される反応生成物を除去する酸性物質除去装置とを備えていることを特徴とする過弗化物分解装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体製造装置または液晶製造装置が設置されるクリーンルームを小型化できる。既設のクリーンルームに適用する場合には、過弗化物分解装置の据付けのためにクリーンルーム内の半導体製造装置または液晶製造装置を移動させる必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施例1)
本発明の好適な一実施例である過弗化物処理装置、すなわちPFC処理装置を説明する前に、半導体製造工場を含む半導体製造施設の概略構成をまず図1を用いて説明する。半導体製造施設は、半導体製造工場1,PFC処理装置44及び工場酸性ガス処理装置46を備える。半導体製造工場建屋1は、クリーンルーム2を内部に有する。ポリエッチャー3,酸化膜エッチャー5及びメタルエッチャー53等のエッチャーを含む複数の半導体製造装置が、クリーンルーム2内に設置される。クリーンルーム2内には、複数のガス供給装置48が設置される。ガス供給装置48は、エッチング工程及びクリーニング工程時に必要とするガス(PFCガス等)を該当するエッチャー(PFCガスが供給される半導体製造装置)に供給する装置である。ガス供給装置48は、例えば、必要とするガスを充填している複数のボンベ(図示せず)を密封されたボンベ収納容器(図示せず)に内蔵している。
【0010】
工場酸性ガス処理装置46は、酸性ガス除去装置47,ガス収集ダクト49及び排気ダクト51を備える。ガス収集ダクト49は、ボンベ収納容器内の空間と酸性ガス除去装置47とを連絡する。半導体製造工場建屋1の外に設置される酸性ガス除去装置47は、ブロア50を介してガス排出ダクト51に接続される。
【0011】
エッチャーによっては、ボンベより供給される酸性ガスをウエハのエッチング工程に使用している。ボンベ内に充填された酸性ガスが何らかの原因で外部に漏洩したとき、ボンベ収納容器は漏洩した酸性ガスがクリーンルーム2内に流出することを防止する。ボンベ収納容器内に充満したその漏洩酸性ガスは、ブロア50の駆動によりガス収集ダクト49を経て酸性ガス除去装置47に達し、酸性ガス除去装置47で除去される。酸性ガスが除去された残りのガスは排気ダクト51を経て排気筒52より外部環境に排出される。
【0012】
PFC処理装置44は、ダクト7,PFC分解装置9及びガス排気ダクト28を備える。PFC分解装置9は、クリーンルーム2の外であってかつ半導体製造工場建屋1の外で半導体製造工場の敷地内に建設された小屋(図示せず)内(または屋外)に設置される。ダクト7は、クリーンルーム2内に設置されたポリエッチャー3,酸化膜エッチャー5及びメタルエッチャー53にそれぞれ接続され、PFC分解装置9にも接続される。酸性ガス除去装置4がポリエッチャー3との接続部付近におけるダクト7に設置される。酸性ガス除去装置4はメタルエッチャー53との接続部付近におけるダクト7にも設置される。一酸化炭素除去装置6が酸化膜エッチャー5との接続部付近におけるダクト7に設置される。排気ダクト28は、ブロア25を介してPFC分解装置9に接続され、排気筒52にも接続される。
【0013】
PFC分解装置9の詳細構成を図2に基づいて説明する。PFC分解装置9は、前処理塔10,反応器11,冷却装置20及び酸性ガス除去装置22を備える。前処理塔10は、固形分除去装置54、及び固形分除去装置54の下部に設けられた中和タンク61を有する。スプレー62,63が固形分除去装置54内に設置される。反応器11は、加熱部12及び反応部16を有する。加熱部12は、加熱装置(例えば、電気ヒーター)13を備え、加熱装置13の内側にガス通路となる空間14を形成する。反応部16は、加熱装置(例えば、電気ヒーター)18、及び加熱装置18の内側に配置された触媒層17を有する。反応部16において、ガス通路となる空間19が加熱装置18の内側で触媒層17より上方に形成される。空間14の上部と空間19の上部は、ダクト15によって連絡される。冷却装置20は内部にスプレー21を備える。酸性ガス除去装置22も内部にスプレー23,24を備える。
【0014】
ダクト7は三方弁8を介して固形分除去装置54に接続される。三方弁8の1つの排出口は、配管60によって、酸性ガス除去装置47の上流側でガス収集ダクト49に接続される。三方弁8は、排ガスの固形分除去装置54への供給及び配管60への供給を切り替える排ガス流路切替装置である。配管60はPFC分解装置9に対するバイパス管である。配管26は固形分除去装置54と加熱部12内の空間14とを連絡する。反応部16内で触媒層17の下方に形成される空間は配管27によって冷却装置20に連絡される。冷却装置20内の上部空間は酸性ガス除去装置22に連絡される。排気ダクト28はブロア25より上流側で酸性ガス除去装置22に接続される。ポンプ29が設けられた排水管30が冷却装置20の底部に接続される。ポンプ29の下流側で排水管30に接続された配管31はスプレー24に接続される。配管32は配管31とスプレー21を接続する。ポンプ36が設けられた排水管37が中和タンク61の底部に接続される。ポンプ36の下流側で排水管37に接続された配管38はスプレー63に接続される。水供給管33がスプレー23に接続される。水供給管34は水供給管33とスプレー12を接続する。水供給管35は加熱部12内の空間14に連絡される。アルカリタンク39は、ポンプ42が設けられた配管43によって中和タンク61に接続され、ポンプ40が設けられた配管41によって冷却装置20に接続される。
【0015】
ポリエッチャー3には、Cl2,HBr,CF4(場合によってはCHF3,C58,C26等)等が該当するガス供給装置48より供給される。酸化膜エッチャー5には、CO,CF4(場合によってはCHF3,C58,C26,SF6等)等が該当するガス供給装置48より供給される。メタルエッチャー53には、Cl2,BCl3,CF4(場合によってはCHF3,C58,C26等)等が該当するガス供給装置48より供給される。上記したそれぞれのガスは、該当するガス供給装置48において種類ごとに別々のボンベに充填されている。それぞれのエッチャーに供給された各種ガスの一部はウエハに対するエッチング工程で消費されるが、残りのガスはそれぞれのエッチャーから排ガスとして排出される。それぞれのエッチャー内では、消費されたPFC(CF4)の分解により酸性ガスであるHFが生成される。また、排ガスは、上記のHF以外に、エッチングによって削られたウエハの素材とPFCガスとの反応によって生成された副次生成物(SiF4,WF6等)、及び固形分(SiO2,WO3等)を含んでいる。
【0016】
ポリエッチャー3から排出された排ガスは、有害な酸性ガス(Cl2)が酸性ガス除去装置4で除去された後、ダクト7を経て固形分除去装置54に導かれる。酸化膜エッチャー5から排出された排ガスは、有害ガス(CO)が一酸化炭素除去装置6で除去された後、ダクト7を経て固形分除去装置54に導かれる。メタルエッチャー53から排出された排ガスは、有害な酸性ガス(Cl2,BCl3)が酸性ガス除去装置4で除去された後、ダクト7を経て固形分除去装置54に導かれる。PFC分解装置9が正常に機能する場合には、三方弁8は、各エッチャーから排出された排ガスがPFC分解装置9に流入できるようにエッチャーとPFC分解装置9とを連絡している。このため、排ガスはダクト7から配管60に流入できない。有害ガスが使用されないエッチャーから排出された排ガスは、そのエッチャーから、直接、ダクト7に排出される。
【0017】
水供給管34から供給された水がスプレー62から固形分除去装置54内に連続的にスプレーされる。固形分除去装置54に供給される排ガスは、PFC(CF4)と共に、エッチング工程で発生したSiF4及びWF6等の水との反応により固形分を生成する不純物、及びSiO2及びWO3等の固形分である不純物を含んでいる。排ガスに含まれたSiF4は数1の反応によりSiO2とHFに分解される。生成されたSiO2は、固体の微粒子であるので、生成と同時にスプレーされた水により排ガスから除去される。
【0018】
(数1)
SiF4+2H2O ⇒ SiO2+4HF …(1)
【0019】
エッチャーからの排出時に排ガスに含まれている固形分(SiO,WO3等)も併せて除去される。HFも、水への溶解度が大きいので、同様に排ガスから除去できる。SiO2を含み除去されたHFが溶解する水は中和タンク61内に落下する。排ガスに含まれたWF6も水と反応し、数2のようにWO3(酸化タングステン)とHFを生成する。
【0020】
(数2)
WF6+3H2O ⇒ WO3+6HF …(2)
【0021】
WO3は、固体の微粒子であり、スプレーされた水により排ガスから除去されて水と共に中和タンク61内に落下する。排ガスに含まれているケイ素成分及びタングステン成分は、水槽内の水中にその排ガスをバブリングしても除去することができる。
【0022】
固形分除去装置54は、前述したように、供給される排ガスに含まれている固形分(SiO2,WO3等)だけでなく、水との反応で固形分を生成する酸性ガス(SiF4及びWF6等)も除去される。固形分除去装置54は、その固形分を精製する酸性ガスを除去する際に、水との反応で生成された固形分(SiO2,WO3等)も除去する。反応器11の前段で、固形分除去装置54内でそれらの酸性ガスを水と反応させて除去しているため、反応器11内で、それらの酸性ガス(SiF4及びWF6等)と空間14に供給される反応水とが反応して固形分(SiO2,WO3等)が生成されることを回避できる。このため、反応器11内で固形分(SiO2,WO3等)が生成されることによる問題点、すなわち(1)固形分が触媒に形成されたポーラスを塞ぐ、及び(2)固形分が触媒間に形成される間隙を閉塞する、という問題点を解消できる。これにより、排ガスと接触する触媒の表面積が増大するため、PFCの分解効率が向上する。
【0023】
アルカリタンク39内のアルカリ水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)がポンプ42の駆動により配管43を通って中和タンク61内に供給される。アルカリ水溶液は、中和タンク61内の水に含まれたHF等の酸性物質を中和させる。中和タンク61内で中和された水は、ポンプ36の駆動により排水として排水管37に排出される。その排水の一部は配管38を経由してスプレー63より固形分除去装置54内にスプレーされる。残りの排水は、配水管37より後述の廃水処理設備に排出される。スプレー63からスプレーされる排水中の水によっても数1及び数2の反応が生じるため、スプレー62からスプレーされる新しい水の使用量を低減できる。このため、排水管37を通して排出される排水の量が減少する。スプレー62,63からスプレーされた水は、固形分除去装置54内に供給される排ガス中に残留している酸性ガスを吸収し、排ガス中から酸性ガスを除去する。
【0024】
固形分除去装置54から排出された排ガスは、配管26を経て反応器11内、具体的には加熱部12の空間14内に導かれる。水供給管35によって導かれる水(反応水)が空間14内の排ガスに添加される。この水の代わりに水蒸気を排ガスに添加してもよい。空間14内の排ガス及び添加された水は加熱装置13によって加熱され、その水は水蒸気となる。加熱部12で加熱された排ガスは、ダクト15を通って反応部16内の空間19に供給される。排ガスは、空間19内で加熱装置18によって更に650〜750℃の範囲に加熱される。加熱された排ガスは触媒層17内に流入する。触媒層17は、アルミナ系(Al23)の触媒、すなわちAl23が80%、NiO2が20%の組成を有する触媒が充填されている。具体的には、そのアルミナ系触媒は交換可能なカートリッジタイプを構成して反応部16内に設置される。排ガスに含まれたCF4は、触媒の作用により数3のように反応水との反応が促進され、HFとCO2に分解される。
【0025】
(数3)
CF4 +2H2O ⇒ CO2 +4HF …(3)
【0026】
1モルのCF4が分解されると、4倍量である4モルのフッ酸(HF)が発生する。なお、排ガスに含まれているPFCがC26の場合には、数4のような反応が生じて、C26はCO2とHFに分解する。
【0027】
(数4)
26+3H2O+(1/2)O2 ⇒ 2CO2 +6HF …(4)
【0028】
数4の反応に用いられる酸素は、空気供給管(図示せず)によって空気として空間14内に供給される。この空気は、空間14,19内で加熱されて触媒層17に供給される。また、PFCとしてSF6が使用される場合には、数5のような反応が生じて、SF6はSO3とHFに分解する。1モルのSF6が分解されると、1モルのSO3と6倍量である6モルのHFが発生する。
【0029】
(数5)
SF6+3H2O ⇒ SO3+6HF …(5)
【0030】
水供給管33で導かれる水はスプレー23より酸性ガス除去装置22内にスプレーされる。この水は酸性ガス除去装置22より冷却装置20内に集められる。冷却装置20内の水はポンプ29の駆動によって排水管30に排出される。この水の一部は、配管32よりスプレー21に、配管31によりスプレー24に供給され、それぞれからスプレーされる。
【0031】
触媒層17から排出された、分解ガスであるCO2及びHFを含む高温の排ガスは、冷却装置20内に導入される。この高温の排ガスは、冷却装置20内でスプレー21から連続的にスプレーされる水によって100℃以下に冷却される。
【0032】
CF4の分解によって生じたHFの一部はスプレーされた水に溶解して除去される。排ガスの冷却は、水槽内の水中に排ガスをバブリングして行ってもよい。温度が低下した排ガスは酸性ガス除去装置22に導入される。排ガスは、酸性ガス除去装置22内でスプレー23,24からスプレーされた水と接触する。これによって、排ガスに含まれているHF等の酸性ガス(PFCの分解によって生成)は、その水に溶解するため、排ガスから除去される。排ガスと水との接触効率を高め酸性ガスの除去効率を向上させるため、酸性ガス除去装置22内にはプラスチック製のラヒシリングが充填されている。HFが酸性ガス除去装置22によって数%から1ppm以下まで低減される。無害化された排ガスは、駆動しているブロア25,排気ダクト28及び排気筒52を介して外部環境に排出される。また、酸性ガスを吸収した水は酸性ガス除去装置22より冷却装置20内に排出される。
【0033】
冷却装置20及び酸性ガス除去装置22を含めたシステム全体の内部はブロア25によって負圧に維持され、排ガス中に含まれるHF等が系外に漏洩するのを防止している。なお、酸性ガス除去装置22もバブリング方式が可能である。ただし、スプレー方式ないしは充填塔方式の方が圧力損失が少なく、排気用のブロアを小さくできる。
【0034】
アルカリタンク39内のアルカリ水溶液がポンプ40の駆動により配管41を通って冷却装置20内に供給される。アルカリ水溶液は、冷却装置20内で、酸性ガス除去装置22から排出された水、及びスプレー21からスプレーされた水にそれぞれ含まれたHF等の酸性物質を中和させる。冷却装置20内で中和された水は、ポンプ29の駆動により排水管30を通って排水処理設備(図示せず)に排出される。排水処理設備は、排水管30,37により供給された排水に含まれるフッ素(弗化物として含まれるフッ素も含む)を除去し、フッ素が除去された排水を外部に排出する。
【0035】
本実施例は、クリーンルーム内に設置されている、PFCガスが供給される半導体製造装置(エッチャー,化学的蒸着装置(CVD装置))の全てが、ダクト7を介してPFC分解装置9に接続されている。このため、それらの全てから排出されるPFCガスを一基のPFC分解装置9で集中して処理することができる。本実施例は、従来のようにクリーンルーム内に設置された複数のPFC分解装置に、それぞれ、水供給管,排水管及び電気配線を接続する必要がなく、一基のPFC分解装置9に水供給管,排水管及び電気配線を接続すればよい。このため、水供給管,排水管及び電気配線の据付けに要する時間を短縮でき、それらの据付作業も容易になる。
【0036】
本実施例では、PFC分解装置9がクリーンルーム2の外に設置されている。このため、クリーンルームを新たに設置する場合において、本実施例は、PFC分解装置9、及びPFC分解装置9に接続される水供給管及び排水管の設置スペースをクリーンルーム2内に確保する必要がなく、それだけクリーンルーム2を小型化できる。併せて、クリーンルーム2の内部のちりを除去する清浄化装置、及びクリーンルーム2に対する空調設備の各容量を小さくすることができる。また、PFC分解装置9、及びPFC分解装置9に接続される水配管及び排水管がクリーンルーム2内に配置されないため、クリーンルーム2の小型化及び半導体製造装置の配置変更が容易に行える。
【0037】
既設のクリーンルーム内に設置された複数のエッチャーから排出されるPFCガスを処理のためにPFC分解装置を新たに設置する場合は、本実施例のようにPFC分解装置9をクリーンルーム2外に設置することによって、製造する製品の変更等に伴うクリーンルーム内のエッチャー等の半導体製造装置の移動及びその半導体製造装置の取替えが容易になる。すなわち、本実施例は、フレキシブルな製造ラインの変更,組替えにより、柔軟性の高い半導体製造工場とすることができる。半導体製造装置を移動する時間も不要または著しく短縮できる。また、本実施例は、既設のクリーンルーム2でも、クリーンルーム2内にダクト7を設置するだけで半導体製造装置を移動させることなく、PFC分解装置9を導入することができる。このため、PFC分解装置9の導入に際しては、そのクリーンルーム2内の半導体製造ラインによる半導体製造の停止期間を短縮できる。
【0038】
本実施例は、反応器11がそれぞれ加熱装置を備える加熱部12及び反応部16に分かれ、加熱部12及び反応部16が小屋内の床に設置されている。これは、クリーンルーム2内に設置されてPFCガスが供給される全半導体製造装置から排出されるPFCガスを集中的に処理する関係上、反応器11の高さ(加熱部12及び反応部16のそれぞれの高さの合計が約5mと著しく高くなって車での搬送が困難になるために、反応器11を加熱部12及び反応部16の2つに分割しているのである。
【0039】
本実施例は、増設するエッチャーのガス排出部とダクト7とをクリーンルーム内で接続すればよく、クリーンルーム2内におけるエッチャーの増設が簡単に行える。増設されたエッチャーから排出されるPFCガスは、クリーンルーム2外に設置されたPFC分解装置9によって処理できる。また、本実施例は、エッチャーの出口付近に設置された酸性ガス除去装置4(または一酸化炭素除去装置6)によってエッチャーから排出される酸性ガス(または一酸化炭素)を除去しているため、クリーンルーム2内でダクト7に損傷が生じた場合でも、クリーンルーム2内の作業環境を害することを防止できる。ダクト7の信頼性を向上させることによって、これらの有害ガス(一酸化炭素,塩素等)の処理する有害ガス処理設備をクリーンルーム2の外でPFC分解装置9の上流側に設置し、それらの有害ガスを集中して処理することも可能である。
【0040】
本実施例では、中和タンク11及び冷却装置20内にアルカリ水溶液を供給することによって排ガスから分離されて水に溶け込んでいるHF等の酸性物質を中和しているため、中和タンク11及び冷却装置20から排出される中和処理を行ったそれぞれの排水は、排ガスに含まれたHF等の酸性ガスの吸収能力(溶解度)が向上する。これらの排水の一部は、該当するスプレー63及び24からスプレーする水に再利用でき、排ガスに含まれた酸性ガスの除去効率を高めることができる。
【0041】
クリーンルーム2内の全てのエッチャーから排出されるPFCガスを集中的に処理するPFC分解装置9が故障等によりPFCガスの処理を停止した場合、そのクリーンルーム2内での半導体の製造が全て停止してしまう。本実施例では、PFC分解装置9が停止する緊急事態において、三方弁8を回転させて三方弁8よりも上流側のダクト7と配管60とを連絡する。各エッチャーから排出された排ガスは、ブロア50の駆動によって、一時的に、PFC分解装置9に導入されないで配管60及びガス収集ダクト49を経て酸性ガス除去装置47に導かれる。その排ガス中に残留している酸性ガスは、酸性ガス除去装置47で除去される。一般に、酸性ガス除去装置47で処理できるガス容量は、ダクト7によってPFC分解装置9に供給される排ガス容量の約10〜50倍となっている。このため、PFC分解装置9に供給される排ガスに残留している酸性ガスを酸性ガス除去装置47で除去することは可能である。酸性ガスが除去された排ガスが排気筒52から外部環境に排出される。配管60を通して酸性ガス除去装置47に排ガスを導いている間に、故障したPFC分解装置9の点検修理を行う。修理が完了した後、三方弁8を回転させて排ガスをPFC分解装置9に供給する。このように、本実施例は、PFC分解装置9の故障時等の緊急時に配管60を介して排ガスを酸性ガス除去装置47に供給できるため、クリーンルーム2内での半導体製造を停止することなく、PFC分解装置9の点検修理が可能になる。PFC分解装置9の点検修理に要する期間は約1〜2日であるため、分解されないで外部環境に放出されるPFCガスの量は、本実施例においてPFC分解装置9で年間に処理されるPFCガス量に対して著しく小さな割合である。
【0042】
本実施例は、クリーンルーム2内に設置されたCVD装置から排出されるPFCガスをPFC分解装置9で処理することも可能である。
【0043】
クリーンルーム2内を清浄に保つ清浄化装置及びクリーンルーム2の空調設備を設置する機械室が、機械室半導体製造工場1内、または半導体製造工場に付属する建屋内に設けられている場合には、PFC分解装置9をその機械室内に設置してもよい。反応器11が加熱部12及び反応部16に分割されているPFC分解装置9は、機械室の天井を高くする改造を行う必要がなく、機械室内に簡単に設置できる。
【0044】
三方弁8及び配管60を設置しないで、PFC分解装置9をダクト7に並列に設置し、これらのPFC分解装置9を切り替えて運転できるようにしてもよい。
【0045】
これにより、一方のPFC分解装置9が故障しても他方のPFC分解装置9で排ガスの処理(残留酸性ガスの除去及びPFCの分解処理)を行うことができる。
【0046】
また、故障したPFC分解装置9の点検修理も半導体を製造しながら行うことができる。
【0047】
PFC分解装置の他の実施例を、図3を用いて説明する。本実施例のPFC分解装置9Aは、PFC分解装置9の配管27に水蒸発器55を設置し、水供給管35が水蒸発器55に接続され、更に水蒸気供給管56が水蒸発器55と加熱部12の空間14とを連絡する構成を有する。PFC分解装置9Aの他の構成はPFC分解装置9と同じである。水蒸発器55内において、配管27で供給される高温の排ガスは伝熱管(図示せず)内を流れ、水供給管35で供給される水(反応水)はシェル側を流れる。水は水蒸発器55内で排ガスによって加熱され水蒸気となる。発生した水蒸気は水蒸気供給管56を通って空間14内に供給されて排ガスに添加される。
【0048】
PFC分解装置9AはPFC分解装置9と同じ機能を発揮し同じ作用効果を得ることができる。PFC分解装置9Aは反応部16から排出された排ガスの熱で反応水を水蒸気にしているため、PFC分解装置9Aの加熱部12において排ガスの加熱のために加える熱エネルギーを低減できる。これは、PFC分解装置9の加熱部12で反応水を水蒸気化するためのエネルギーが不要になるためである。
【0049】
図1に示すPFC処理装置44において、PFC分解装置9の替りにPFC分解装置9Aを用いた場合でも、実施例1のPFC処理装置44で生じる効果を得ることができる。
【0050】
PFC分解装置の他の実施例を図4を用いて説明する。本実施例のPFC分解装置9Bは、PFC分解装置9の配管26にガス予熱器57を設置し、配管26がガス予熱器57を介して加熱部12の空間14に接続される構成を有する。
【0051】
PFC分解装置9Bの他の構成はPFC分解装置9と同じである。触媒層17から排出されて配管27により供給される高温の排ガスはガス予熱器57内に設けられた伝熱管(図示せず)内を流れ、配管26で供給される排ガスはガス予熱器57内のシェル側を流れる。配管26で供給される排ガスは、配管27で供給された高温の排ガスによって加熱されて温度が上昇した状態で空間14内に導かれる。ガス予熱器57内に設けられた伝熱管内を流れる高温の排ガスは、冷却装置20内に導かれて前述のように冷却される。
【0052】
PFC分解装置9BはPFC分解装置9と同じ機能を発揮し同じ作用効果を得ることができる。PFC分解装置9Bは反応部16から排出された排ガスの熱で加熱部12に供給される排ガスを加熱しているため、PFC分解装置9Bの加熱部12において排ガスの加熱のために加える熱エネルギーを低減できる。
【0053】
図1に示すPFC処理装置44において、PFC分解装置9の替りにPFC分解装置9Bを用いた場合でも、実施例1のPFC処理装置44で生じる効果を得ることができる。
【0054】
(実施例2)
本発明の他の実施例であるPFC処理装置を、図5を用いて説明する。本実施例のPFC処理装置44Aは、図1に示すPFC処理装置44において排気ダクト28を酸性ガス除去装置47に接続した構成を有する。PFC処理装置44Aの他の構成はPFC処理装置44と同じである。本実施例では、PFC分解装置9の酸性ガス除去装置22から排出された排ガスが排気ダクト28を経て酸性ガス除去装置47に供給される。このため、酸性ガス除去装置22における酸性ガス除去機能が低下した場合には、反応部16内でPFCの分解によって生成される酸性ガスは酸性ガス除去装置47で除去することができる。このように、酸性ガス除去装置47を酸性ガス除去装置22のバックアップとして用いることができる。本実施例のPFC処理装置44Aは前述のPFC処理装置44で生じる効果も得ることができる。
【0055】
本実施例のPFC処理装置44Aにおいて、PFC分解装置9の酸性ガス除去装置22を削除し、反応部16内でPFCの分解によって生成される酸性ガスを、酸性ガス除去装置22ではなく、酸性ガス除去装置47で除去してもよい。この場合には、酸性ガス除去装置47は、半導体が製造されている間、連続的に運転される。PFC処理装置44Aにおいて、PFC分解装置9を前述したPFC分解装置9A及びPFC分解装置9Bのいずれかと交換することも可能である。
【0056】
(実施例3)
本発明の他の実施例であるPFC処理装置を、以下に説明する。本実施例のPFC処理装置44Bは、図1に示すPFC処理装置44においてPFC分解装置9を図6に示すPFC分解装置9Cに替えた構成を有する。PFC処理装置44Bの他の構成はPFC処理装置44と同じである。PFC処理装置44Bに用いられるPFC分解装置9Cの構成を説明する。PFC分解装置9が排水が発生する湿式型PFC分解装置であるのに対して、本実施例に用いられるPFC分解装置9Cは排水が発生しない乾式型PFC分解装置である。
【0057】
PFC分解装置9Cは、反応器11,フィルタ装置65,66及び粉体サイロ81を備える。ダクト7は、フィルタ装置65の下部空間68に連絡される。加熱部12に連絡される配管26は、フィルタ装置65の上部空間69に連絡される。フィルタ装置66の下部空間68には配管27が連絡される。排気ダクト28はフィルタ装置66の上部空間69に連絡される。粉体サイロ81は、配管82によって三方弁8の下流側の位置でダクト7に、配管83によって配管27にそれぞれ接続される。
【0058】
フィルタ装置65,66の構成を図7により説明する。フィルタ装置65,66は、容器80内に管状の複数のフィルタエレメント67A,67B,67C等を設置している。各フィルタエレメントは外表面に巻き付けられたろ布(図示せず)を有する。各フィルタエレメントによって容器80内の空間が下部空間68と上部空間69とに分離される。弁71Aを設けた空気供給管70Aが上方よりフィルタエレメント67A内に挿入されている。同様に、弁71Bを設けた空気供給管70Bが上方よりフィルタエレメント67B内に、弁71Cを設けた空気供給管70Cが上方よりフィルタエレメント67C内に、それぞれ挿入される。固形分貯留槽72は弁77Aを介してフィルタ装置65の容器80の底部に接続される。スクリューコンベア74が固形分貯留槽72の下方に配置される。固形分貯留槽73は弁77Bを介してフィルタ装置66の容器80の底部に接続される。スクリューコンベア75が固形分貯留槽73の下方に配置される。
【0059】
ダクト7で導かれる排ガスは、実施例1で述べたように、PFC(CF4)と共に、エッチング工程で発生したSiF4及びWF6等の水との反応により固形分を生成する不純物、及びSiO2及びWO3等の固形分である不純物を含んでいる。この排ガスは、フィルタ装置65の下部空間68内に供給される。粉体サイロ81内に充填されているCa塩の粉末、具体的には水酸化カルシウム〔Ca(OH)2〕の粉末が、バルブ(図示せず)を開くことによって配管82を通ってダクト7内に供給される。Ca(OH)2の粉末は、排ガスに混合されてフィルタ装置65の下部空間68内に流入する。排ガスに含まれるSiF4及びWF6は、Ca(OH)2と数6及び数7に示す中和反応が生じ、CaF2,SiO2及びWO3を生成する。
【0060】
(数6)
3Ca(OH)2+SiF4 ⇒ 2CaF2+SiO2+2H2O …(6)
【0061】
(数7)
3Ca(OH)2+WF6 ⇒ 3CaF2+WO3+3H2O …(7)
【0062】
更に、その排ガスに含まれたHFは、Ca(OH)2と後述の数8の反応を生じフッ化カルシウム(CaF2)を生成する。排ガスに含まれたSiO2及びWO3等の固形分,未反応のCa(OH)2、及び数6,数7及び数8の反応で生成されたCaF2,SiO2及びWO3がフィルタ装置65の各フィルタエレメント67に設置されたろ布によってトラップされ、排ガスから除去される。フィルタエレメント67を通過したCH4を含む排ガスは上部空間69及び配管26を経て反応器11内の空間14,19に流入する。CH4は触媒層17で実施例1で述べたように分解される。反応器11に供給される排ガスは、HF,SiF4,WF6,SiO2,WO3を含んでいない。
【0063】
触媒層17でCH4の分解によって生成された酸性ガス(HF)はフィルタ装置66の空間68内に導かれる。粉体サイロ81内のCa(OH)2の粉末が、バルブ(図示せず)を開くことによって配管83により配管27内に供給され、排ガスに混入される。Ca(OH)2も空間68内に導かれる。HFは粉末状のCa(OH)2と数8の中和反応が生じ、CaF2を生成する。
【0064】
(数8)
Ca(OH)2+2HF ⇒ CaF2+2H2O …(8)
【0065】
このCaF2及び未反応のCa(OH)2はフィルタ装置66内のろ布に捕捉される。未反応のHFは、ろ布の表面に捕捉されて形成されたCaF2及び未反応のCa(OH)2の層を通過する間にそのCa(OH)2と反応して固定化される。HFとCa(OH)2との化学反応は、温度が高いほど促進される。触媒層17から排出された排ガスは温度が高いため、その化学反応が促進される。フィルタ装置66のフィルタエレメント67の上流側、すなわち下部空間68内に配管76より冷却空気が供給される。この冷却空気によって下部空間68内の排ガスが冷却され、その排ガスの温度が約200℃以上300℃未満に調整される。これは、ろ布の耐熱温度が300℃であるためである。冷却空気の供給位置は、配管27と配管83の接合点よりも下流側が好ましい。これは、より高温状態でHFとCa(OH)2粉末とを混合接触させることにより、効率よく中和反応を進めるためである。ブロワ25が駆動しているため、排ガスはフィルタ装置66から排気ダクト28に排出される。排気ダクト28に排出される排ガスは、酸性ガスを含んでいない。排気ダクト28内の排ガスは、配管84から排気ダクト28内に供給される冷却空気によって冷却され、温度が50℃に低下する。温度が50℃に低下するが空気が供給されるため、数8の反応によって生成されるH2Oが凝縮して液体に変ることはない。
【0066】
フィルタ装置65,66において、それぞれ上部空間69と下部空間68の差圧が差圧計(図示せず)にて検出される。その差圧が設定値に達したフィルタ装置、例えばフィルタ装置66において、フィルタエレメントの逆洗が実施される。すなわち、まず、弁71Aを開く。空気供給管70Aから供給される逆洗用空気は、フィルタエレメント67Aの内側に排出されてろ布を通り、下部空間68に排出される。この逆洗用空気の流れによってろ布の外表面に付着している固形分(フッ化カルシウム、未反応のCa(OH)2等)が塊となって容器80の底部に落下する。フィルタエレメント67Aの逆洗が終了した後、弁71Bが開き空気供給管70Bからフィルタエレメント67B内に空気を供給してフィルタエレメント67Bの逆線を行う。次に、空気供給管70Bから供給される空気によってフィルタエレメント67Cの逆洗が行われる。容器80の底部に蓄積された固形分79は、弁77Bを開くことによって固形分貯留槽73内に排出される。更に、開いた弁78Bを通して落下した固形分79はスクリューコンベア75によって固形分収集サイロ(図示せず)に移送されて貯蔵される。フィルタ装置65の各フィルタエレメントの逆洗も同様に行われ、容器80内の固形分79は弁77Aを開いたとき固形分貯留槽72内に排出される。その固形分も弁78Aを通して落下してスクリューコンベア74によって上記の固形分収集サイロに移送される。固形分収集サイロ内の固形分79はセメントの原料として再利用される。
【0067】
Ca塩としてはCa(OH)2の替りに炭酸カルシウム〔CaCO3〕または酸化カルシウム(CaO)の粉末を用いてもよい。酸性ガス等との反応性は、CaCO3よりもCa(OH)2の方が高いためCa(OH)2を用いることが望ましい。酸性ガス等との反応は表面で起きるので、Ca塩は表面積を増加させるために粉末が好ましい。CaCO3をダクト7内の排ガスに添加した場合、SiF4及びWF6と数9及び数10の中和反応が生じる。
【0068】
(数9)
3CaCO3+SiF4 ⇒ 2CaF2+SiO2+2CO2 …(9)
【0069】
(数10)
3CaCO3+WF6 ⇒ 3CaF2+WO3+3CO2 …(10)
【0070】
CaOをダクト7内の排ガスに添加した場合、SiF4及びWF6と数11及び数12の中和反応が生じる。
【0071】
(数11)
3CaO+SiF4 ⇒ 2CaF2+SiO2 …(11)
【0072】
(数12)
3CaO+WF6 ⇒ 3CaF2+WO3 …(12)
【0073】
それらの各反応によって生成されたCaF2,SiO2及びWO3等がフィルタ装置65のろ布で除去される。
【0074】
CaCO3を配管27内の排ガスに添加した場合、HFと数13の中和反応が生じる。
【0075】
(数13)
CaCO3+2HF ⇒ CaF2+H2O+CO2 …(13)
【0076】
CaOを配管27内の排ガスに添加した場合、HFと数14の中和反応が生じる。それらの各反応によって生成されたCaF2等がフィルタ装置66のろ布で除去される。
【0077】
(数14)
CaO+2HF ⇒ CaF2+H2O …(14)
【0078】
湿式型PFC分解装置を用いている実施例1及び2は、排水処理設備において、排水管30,37にて導かれた排水に含まれているフッ素を除去する必要がある。このため、排水処理設備では以下の処理が行われる。すなわち、排水内にCa塩(CaCO3またはCa(OH)2)を添加して撹拌する。排水に含まれているHFとCa塩との反応によって生成されたフッ化カルシウム、及び未反応のCa塩等の固形分は沈降分離される。更に、排水に凝集剤を添加して微細粒径のそれらの固形分を凝集させて分離する。分離されたフッ化カルシウム等の固形分は、脱水,乾燥されて、セメントの原料として利用する。排ガス中の固形分,酸性ガスの除去に水を用いている実施例1及び2は、排水に含まれたフッ素の除去に上記した複雑な処理を行う必要があり、かつ多量の排水が発生する。排水処理設備からの排水は、多量のカルシウムイオンが含まれており、工業用水として排出される。実施例1及び2は、前述したように種々の効果を得ることができるが、フッ素除去の複雑な処理を行う排水処理設備を必要とする。
【0079】
これに対して、本実施例は、Ca塩を排ガス中に添加するため、排水を発生させずに排ガス中のフッ素を再利用可能な固形分として回収することができる。当然のことながら、本実施例は排水処理設備が不要となる。水使用量が極めて少ない本実施例のPFC処理装置の設置により、水資源の乏しい地域に半導体製造工場を設置することができるようになった。また、排水の排出基準が厳しくなっても、本実施例は容易に対応できる。本実施例は、排水が発生しないため排水管が不要となり、実施例1及び2よりも設備を簡素化できる。一般的に、乾式状態での化学反応は、湿式におけるイオン状態での化学反応に比べて反応速度が遅く効率が悪い。しかしながら、湿式型PFC分解装置は排水中の低濃度のFイオンを除去するために理論値の数倍と過剰なカルシウム塩(Ca(OH)2,CaCO3,CaO等)を添加する必要があるため、必要となるCa塩の量は乾式型PFC分解装置とあまり変わらない。
【0080】
また、エッチャーにおいてPFCガスとしてSF6が使用された場合には、触媒層17で数5の反応でSO3が生成される。このSO3と配管27内に添加されたCa塩との反応により硫酸カルシウム(CaSO4)が生成する。具体的に説明すると、Ca(OH)2,CaCO3及びCaOのいずれかが添加された場合には、数15〜数17のいずれかの反応が生じる。この硫酸カルシウムは、石膏やセメントの原料として再使用できる。
【0081】
(数15)
Ca(OH)2+SO3 ⇒ CaSO4+H2O …(15)
【0082】
(数16)
CaCO3+SO3 ⇒ CaSO4+CO2 …(16)
【0083】
(数17)
CaO+SO3 ⇒ CaSO4 …(17)
【0084】
本実施例は、実施例1で生じる(1)クリーンルーム2の小型化及び半導体製造装置の配置変更が容易に行える、(2)既設のクリーンルーム内におけるエッチャー等の半導体製造装置の移動及びその半導体製造装置の取替えが容易になる、(3)PFC分解装置9の導入に際してクリーンルーム2内の半導体製造ラインによる半導体製造の停止期間を短縮できる、(4)加熱部12及び反応部16が分割されているため車での搬送が可能である、(5)増設するエッチャーのガス排出部とダクト7とを接続すればよく、クリーンルーム2内におけるエッチャーの増設が簡単に行える、及び(6)反応水との反応で固形分が生成されないため触媒によるPFCの分解効率が向上する、といった効果を得ることができる。
【0085】
図6のPFC分解装置9Cにおいて、配管27に、Ca塩の粉体を供給する替りにCa塩(CaCO3またはCa(OH)2)のスラリーを供給してもよい。Ca塩は、粉体としてよりもスラリーにしたほうが搬送が容易であり配管27への供給が容易になる。Ca塩スラリーの水分は反応部16から排出された高温の排ガスと接触することによって蒸発して水蒸気となる。排ガス中の酸性ガス(HF)はCa塩と反応してフッ化カルシウムを生成する。水蒸気はろ布を通過して排気ダクト28,排気筒52を経て外部環境に放出される。本実施例は、排気ダクト28内の排ガス温度が100℃を保持するように配管84から冷却空気を供給する。これによって、排気ダクト28内での水蒸気の凝集を避けることができる。
【0086】
本実施例のPFC分解装置9Cは、クリーンルーム2内にPFC分解装置を設置するPFC処理装置にも適用可能である。
【0087】
乾式型PFC分解装置の他の実施例を説明する。PFC分解装置9D(図8参照)は、水蒸発器55をPFC分解装置9Aと同様に配管27に設置し、水供給管35で供給する反応水を加熱する構成を有する。図9に示すPFC分解装置9Eは、ガス予熱器57を配管27に設置し、配管26で導かれる排ガスを加熱する構成を有する。PFC分解装置9D及び9Eのそれぞれは、実施例3のPFC分解装置9Cの替りにPFC処理装置44Bに設置することができる。更に、PFC処理装置44Aにおいても、PFC分解装置9の替りにPFC分解装置9D及び9Eのそれぞれを適用できる。
【0088】
液晶製造工場を含む液晶製造施設においても、液晶製造装置としてPFCガスを使用するエッチャー(またはCVD装置)をクリーンルーム内に設置している。このため、前述したPFC処理装置44,44A及び44Bのいずれかを液晶製造施設に適用することにより、クリーンルーム内の全てのエッチャーから排出されるPFCガスを集中的に処理することができる。そのPFC処理装置のPFC分解装置(PFC分解装置9,9A,9B,9C,9D及び9Eのいずれか)は、実施例1及び2と同様に、クリーンルーム外に設置される。
【0089】
前述の各実施例のPFC処理装置は、PFC分解装置として、触媒を用いたPFC分解装置を用いているが、そのPFC分解装置の替りにPFCを燃焼により分解する燃焼方式のPFC分解装置、またはPFCをプラズマ化して分解するプラズマ方式のPFC分解装置を用いることもできる。また、ブロワ25の代わりにエゼクターを用いてもよい。前述した各実施例は、CF4,CHF3,C26,C38,C46,C58,NF3,SF6等のPFCを分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の好適な一実施例であるPFC処理装置の構成図である。
【図2】図1の湿式型PFC分解装置の詳細構成図である。
【図3】湿式型PFC分解装置の他の実施例の構成図である。
【図4】湿式型PFC分解装置の他の実施例の構成図である。
【図5】本発明の他の実施例であるPFC処理装置の構成図である。
【図6】乾式型PFC分解装置を適用した本発明の他の実施例であるPFC処理装置の構成図である。
【図7】図6のフィルタ装置の詳細構成図である。
【図8】乾式型PFC分解装置の他の実施例の構成図である。
【図9】乾式型PFC分解装置の他の実施例の構成図である。
【符号の説明】
【0091】
1…半導体製造工場、2…クリーンルーム、3…ポリエッチャー、5…酸化膜エッチャー、7…ダクト、9,9A,9B,9C,9D,9E…PFC分解装置、10…前処理塔、11…反応器、12…加熱部、16…反応部、17…触媒層、20…冷却装置、22,47…酸性ガス除去装置、44,44A,44B…PFC処理装置、46…工場酸性ガス処理装置、48…ガス供給装置、53…メタルエッチャー、54…ケイ素除去装置、55…水蒸発器、57…ガス予熱器、65,66…フィルタ装置、67,67A,67B,67C…フィルタエレメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過弗化物を含む排ガスが供給され、前記過弗化物を分解する過弗化物分解装置と、前記過弗化物分解装置から排出された前記排ガスに含まれた酸性物質がCa塩と反応して生成される反応生成物を除去する酸性物質除去装置とを備えていることを特徴とする過弗化物処理装置。
【請求項2】
前記過弗化物分解装置は、加熱部と触媒層を具備している請求項1に記載の過弗化物処理装置。
【請求項3】
前記過弗化物分解装置は、前記過弗化物を含む排ガスを加熱する第1加熱装置と、第2加熱装置及び前記触媒が充填された触媒層を有している請求項1に記載の過弗化物処理装置。
【請求項4】
前記酸性物質除去装置に前記Ca塩を供給するCa塩供給装置を備えた請求項1に記載の過弗化物処理装置。
【請求項5】
前記酸性物質除去装置には、フィルタエレメントを有し、前記Ca塩供給装置から供給されるCa塩との反応して生成される生成物を前記フィルタエレメントで除去する請求項4に記載の過弗化物処理装置。
【請求項6】
前記フィルタエレメントに付着した反応生成物を取り除く逆洗用空気を供給する空気配管を前記フィルタエレメントの下流側に設けた請求項5に記載の過弗化物処理装置。
【請求項7】
前記過弗化物分解装置の前段で前記排ガスに含まれるCa塩との反応により固形物を生じる物質を除去する固形物除去装置を設けた請求項1に記載の過弗化物処理装置。
【請求項8】
前記固形物除去装置に前記Ca塩を供給するCa塩供給装置を備えた請求項7に記載の過弗化物処理装置。
【請求項9】
前記固形物除去装置には、フィルタエレメントを有し、前記Ca塩供給装置から供給されるCa塩と反応して生成される固形物を前記フィルタエレメントで除去する請求項8に記載の過弗化物処理装置。
【請求項10】
前記フィルタエレメントに付着した反応生成物を取り除く逆洗用空気を供給する空気配管を前記フィルタエレメントの下流側に設けた請求項9に記載の過弗化物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−246485(P2008−246485A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151200(P2008−151200)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【分割の表示】特願2002−158505(P2002−158505)の分割
【原出願日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】