説明

過給機付き内燃機関の出力制御装置

【課題】加速感を向上させてドライバビリティーの向上を図りつつ、非過給領域での運転時間を確保して燃費の向上を図れる、過給機付き内燃機関を提供する。
【解決手段】過給機4を備えた内燃機関1の吸入空気量を調整するスロットル弁6と、スロットル弁6を操作するアクセルペダルの変位を検知するアクセル変位検知手段14と、内燃機関の回転数を検知する回転検知手段12を備え、アクセル変位検知手段14で検知されたアクセルペダルの変位θAPSを基準として、スロットル弁6の開度θTPSを回転検知手段で検知された回転数Neに応じて可変制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機を備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関であるエンジンには、その出力を向上させるために過給機を備えたものがある。このような過給機を備えたエンジンにおいては、エンジン回転数とアクセル開度から要求過給圧を設定し、当該要求設定圧が正圧となるまでは非過給状態で運転し、要求設定圧が正圧になると過給機を駆動するように構成されている。また、過給機付きのエンジンにおいては非過給での運転領域が長いと燃費が向上することから、目標設定圧を0ブースト(0mmHg)以下の負圧(要求過給圧無し)に設定することがある。このようなスロットル弁と過給の組み合わせ制御に関しては、例えば特許文献1が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−150990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のように、非過給での運転領域が長いと燃費が向上することから、目標設定圧が0ブースト以下の領域を大きく設定する場合は、アクセル開度を大きくしないと、すなわちスロットル開度が大きくならないと過給機が作動しないので、ドライバーが加速感を感じ難い。これはアクセル開度に対するスロットル開度の比率が略1対1の関係に設定されていることも要因である。
【0005】
そこで、過給開始となるアクセル開度を一定に設定することが考えられる。このようにすると、エンジン高回転域での過給開始となるアクセル開度が浅化できるので、ドライバーは加速感を得られ、スポーツ走行時などのドライバビリティーが向上する。しかし、過給開始となるアクセル開度が浅化されることは、相対的に非過給領域での運転時間が短くなるので、燃費向上の観点からは不利になる。
【0006】
本発明は、加速感を向上させてドライバビリティーの向上を図りつつ、非過給領域での運転時間を確保して燃費の向上を図れる、過給機付き内燃機関を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、過給機を備えた内燃機関への吸入空気量を調整するスロットル弁と、スロットル弁を操作するアクセルペダルの変位を検知するアクセル変位検知手段と、内燃機関の回転数を検知する回転検知手段と、アクセル変位検知手段で検知されたアクセルペダルの変位を基準として、スロットル弁の開度を回転検知手段で検知された回転数に応じて可変制御する制御手段とを有することを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の過給機付き内燃機関において、制御手段は、回転数が大きくなるほど、アクセルペダルの変位に対するスロットル弁の開度の可変率が大きくなるよう制御することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の過給機付き内燃機関において、過給開始となるアクセルペダルの変位を一定に設定するとともに、回転数が大きくなるほど過給機による目標過給圧を大きく設定する設定手段をさらに有することを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1、2又は3記載の過給機付き内燃機関において、前記制御手段による可変制御は、主として前記過給機による非過給領域にて行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アクセル変位検知手段で検知されたアクセルペダルの変位を基準として、スロットル弁の開度を回転検知手段で検知された回転数に応じて可変制御するのでことにより、非過給での運転領域を充分に確保して、燃費の悪化を抑制することができる。
【0012】
本発明によれば、回転数が大きくなるほど、アクセルペダルの変位に対するスロットル弁の開度の可変率が大きくなるよう制御することにより、アクセルペダルの踏み込みが浅くてもスロットル弁の開度を大きくすることができるので、非過給での運転領域を広く確保することができ、燃費の悪化を一層抑制することができる。
【0013】
本発明によれば、過給開始となるアクセルペダルの変位を一定に設定するとともに、回転数が大きくなるほど過給機による目標過給圧を大きく設定することにより、加速感の悪化を抑制でき、ドライバビリティーの悪化を抑制することができる。
【0014】
本発明によれば、可変制御を非過給領域にて行うことにより、非過給領域における車速の低下を回避しつつ、過給開始となるアクセル開度を浅化した設定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1に示す内燃機関となるエンジン1は、その吸気系2に吸入吸気を圧縮する過給機となるコンプレッサ4を備えている。このコンプレッサ4は、電動駆動源5によって回転駆動される電動コンプレッサである。吸気系2には、エンジン1の図示しないインテークマニホールドに基端が接続する吸気経路3が設けられている。この吸気経路3の吸気上流側にはエアクリーナ9が配置されている。エアクリーナ9よりも吸気下流側には、コンプレッサ4と、エンジン1への吸入空気量を調整するスロットル弁6が配置されている。つまり、コンプレッサ4はスロットル弁6よりも上流側の吸気通路3に配置されている。
【0016】
コンプレッサ4とスロットル弁6の間に位置する吸気経路3には、コンプレッサ4を迂回するように、コンプレッサ4の上流側の吸気通路3と接続するバイパス通路7が設けられている。バイパス通路7にはリードバルブ8が設けられている。リードバルブ8はコンプレッサ4が非作動の時には開弁し、コンプレッサ4の作動時には閉弁する構成とされている。スロットル弁6は、図示しないアクセルペダルが操作されると、その操作量(開度)に応じて電動アクチュエータ14によって開閉される電子スロットル弁で構成されている。
【0017】
エンジン1の出力制御装置は、制御手段となるコントローラ10と、スロットル弁6の開度を検知し、その開度情報θTPSを出力するスロットル開度検知手段11と、エンジン回転数Neを検知する回転検知手段12と、図示しないアクセルペダルの変位を検知し、その変位情報θTPSを出力するアクセル変位検知手段13と、スロットル弁6よりも下流側の吸気通路3に配置され、コンプレッサ4の過給圧を検知する過給圧検知手段15を備えている。スロットル開度検知手段11、回転検知手段12、アクセル変位検知手段13、過給圧検知手段15は、それぞれセンサで構成されている。これら各センサと電動駆動源5及び電動アクチュエータ14は、図示しない信号線によってコントローラ10と接続されていて、その制御下におかれている。
【0018】
コントローラ10は、周知のコンピュータで構成されていて、各センサからの入力情報に応じて、電動アクチュエータ14の駆動を制御してスロットル弁6の開度を調整するとともに、過給領域と非過給領域を判断してコンプレッサ4の電動駆動源5の作動を制御する。
【0019】
すなわち、コントローラ10は、エンジン回転数Neとアクセル変位情報θAPSから求められる要求過給圧に、過給圧検知手段15で検知される実過給圧を近づけるように電動駆動源5の駆動を制御する。
【0020】
コントローラ10は、非過給領域においてアクセル変位情報θAPSに対するスロットル開度θTPSを可変するように制御する機能を備えている。このため、コントローラ10のROMには、図2、図3、図4に示す制御マップが記憶されている。
【0021】
図2は、エンジン回転数Neとアクセル開度θAPSと要求過給圧Pbとの関係を示す3次元マップである。同図において、符号aは過給開始となるアクセル変位情報θAPSをエンジン回転領域全域にわたって早くした(浅くした)領域を示し、符号bは最大過給圧となるアクセル変位情報θAPSをエンジン回転領域全域にわたって早くした(浅くした)領域を示し、符号cは同一アクセル変位情報θAPSでのエンジン回転数上昇時の要求過給圧特性を示す。
【0022】
本形態では、最大過給圧になるアクセル変位情報θAPSを従来よりも浅化し、エンジン回転数Neが上昇すると要求過給圧が漸増するように設定している。つまり、図2に示すように、最大過給圧になるアクセル変位情報θAPSを従来よりも浅化していることで、少ないアクセルペダルの踏込量で最大過給圧を得られ、ドライバビリティーが向上する。さらに、アクセル変位情報θAPSが一定で、エンジン回転数Neが上昇すると要求過給圧が漸増するように設定していることで、エンジン回転上昇時のトルクの落ち込みを低減でき、ドライバビリティーが向上する。
【0023】
図3に示すマップは、非過給領域において、エンジン回転数Neに対するアクセル変位情報θAPSとスロットル開度θTPSとの比の関係を設定したマップである。図3において、縦軸はアクセル変位情報θAPSに対するスロットル開度θTPSの比率(=θTPS/θAPS)を示し、横軸はエンジン回転数Neを示す。図3において符号Aで示す線は、本形態との対比で記載した従来のスロットル開度θTPS/アクセル変位情報θAPSを示すものであり、実際のマップに設定されたものではない。符号Bで示す線は本形態のスロットル開度θTPS/アクセル変位情報θAPSを示す。符号Bで示す本形態の特性では、所定のエンジン回転領域においてはエンジン回転数Neが大きくなるほど、スロットル開度θTPS/アクセル変位情報θAPS(可変率)が大きくなるように設定している。すなわち、この符号Bで示す設定がコントローラ10のROMに記憶されている。この時のスロットル開度θTPS/アクセル変位情報θAPSの比率は、1:1〜2:1の範囲で可変するように設定している。
【0024】
図4に示すマップは、縦軸をアクセル変位情報θTPS、横軸をアクセル開度θAPSとした特性マップであり、アクセル変位情報θAPSとスロットル開度θTPSと過給領域と車速の関係を示している。同図において符号Cは過給領域を示し、符号Dは非過給領域を示す。また、○印は第一の速度、☆印は第二の速度を示し、両者の関係は第一の速度<第二の速度となっている。符号Eはスロットル開度θTPS/アクセル変位情報θAPSが1:1で過給開始となるアクセル変位情報θAPSを深化した場合を、符号Fはスロットル開度θTPS/アクセル変位情報θAPSが1:1で過給開始となるアクセル変位情報θAPSを浅化した場合を、符号Gはスロットル開度θTPS/アクセル変位情報θAPSを2:1とし、過給開始となるアクセル変位情報θAPSを浅化した場合の特性をそれぞれ示す線図である。なお、図中符号Eで示す特性は、本形態と対比するために記載した従来の特性であり、図4に示すマップに設定されてものではない。
【0025】
このような構成によると、コンプレッサ4による過給開始となるアクセル変位情報θAPSを一定に設定し、アクセル変位情報θAPSが図4に示す非過給機領域Dである場合、アクセル変位情報θAPSに対するスロットル開度θTPSが、1:1〜1:2で可変される。これにより、アクセル変位情報θAPSに対するスロットル開度θTPSが1:1に固定されている場合より、すなわち図4の符号Eで示す場合よりも過給開始となるアクセル変位情報θAPSを浅化した設定が可能となる。
【0026】
つまり、アクセル変位情報θAPS:スロットル開度θTPSを1:1に固定した状態で、アクセル変位情報θAPSの浅い領域から要求過給圧を設定する場合は、過給開始となるアクセル変位情報θAPSを浅化することはできても、非過給領域Dにおける車速が低下してしまう。これに対し、本構成のようにアクセル変位情報θAPSが非過給機領域Dである場合にアクセル変位情報θAPS:スロットル開度θTPSを1:1〜1:2に可変とすることで、非過給領域Dにおける車速の低下を回避しつつ、過給開始となるアクセル変位情報θAPSを浅化した設定を行うことが可能となる。これにより、加速感が向上してドライバビリティーが向上する。
【0027】
また、アクセル変位情報θAPSが非過給機領域Dである場合、アクセル変位情報θAPSに対するスロットル開度θTPSの可変率が、1:1〜1:2の範囲で、エンジン回転数Neが大きくなるほど1:1から1:2側へと大きくなるように設定しているので、非過給機領域の車速が第一の車速から第二の車速へと高まり、非過給領域Dでの運転時間を確保して燃費の向上を図ることができる。
【0028】
なお、本可変制御は、基本的には非過給領域にて行う。過給領域においては、吸気圧損を減らすためアクセル操作にかかわらずスロットル開度を全開とした方が良いが,その場合、過給開始時期とスロットル全開時期を同時に設定してもよいし、過給開始前にスロットルを全開とする、あるいはその逆に過給開始後にスロットルを全開とするよう設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる内燃機関の出力制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】アクセル開度と要求過給圧設定の特性を示す三次元マップである。
【図3】エンジン回転数とスロットル開度とアクセル開度の関係を示す図である。
【図4】スロットル開度とアクセル開度の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 内燃機関
3 吸気通路
4 過給機
6 スロットル弁
10 制御手段
11 スロットル開度検知手段
13 アクセル変位検知手段
12 回転検知手段
θAPS アクセル変位情報
θTPS スロットル開度
D 非過給領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機を備えた内燃機関への吸入空気量を調整するスロットル弁と、
前記スロットル弁を操作するアクセルペダルの変位を検知するアクセル変位検知手段と、
前記内燃機関の回転数を検知する回転検知手段と、
前記アクセル変位検知手段で検知されたアクセルペダルの変位を基準として、前記スロットル弁の開度を前記回転検知手段で検知された回転数に応じて可変制御する制御手段と、
を有することを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項2】
請求項1記載の過給機付き内燃機関において、
前記制御手段は、前記回転数が大きくなるほど、前記アクセルペダルの変位に対する前記スロットル弁の開度の可変率が大きくなるよう制御することを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項3】
請求項1又は2記載の過給機付き内燃機関において、
前記過給開始となる前記アクセルペダルの変位を一定に設定するとともに、前記回転数が大きくなるほど前記過給機による目標過給圧を大きく設定する設定手段をさらに有することを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の過給機付き内燃機関において、
前記制御手段による可変制御は、主として前記過給機による非過給領域にて行われることを特徴とする過給機付き内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−169820(P2008−169820A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6408(P2007−6408)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】