説明

遮熱性内装材

【課題】 自動車の内装材に要求される遮熱性を有しつつ、成形、特に深絞り成形部分を有する成形に対応可能な遮熱性内装材を提供する。
【解決手段】 所定形状に成形されてなる遮熱性内装材は、基材と表層材とが積層されてなる内装材本体の基材側表面に接着剤を介して反射層11が接着された構成を有しており、上記反射層11は、合成樹脂製のベースフィルム15の一面に、粘着剤層16を介して、蒸着によって金属膜17を形成したフィルム材からなり、該ベースフィルム15を上記内装材本体側にして上記基材の表面に接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の天井、床材、ドアトリム、ダッシュボード、リアパーセル等の内装材に使用する遮熱性内装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、炎天下環境で自動車の車内温度が非常に高温になることを抑制するため、例えば特許文献1の内装材は、アルミニウム箔やリーフィングアルミニウム含有塗膜を用いた赤外線反射機能を有する層を設けている。また特許文献2の内装材は、車体外板からの熱伝達や輻射熱による熱線侵入を防ぎ、さらに吸遮音機能などを付与するため、最外層を除く少なくとも一層に金属箔、金属蒸着フィルム、金属箔内包樹脂フィルム、熱線反射フィルムなどを用いて熱線反射機能を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−158306号公報
【特許文献2】特開2003−237492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の内装材は、取付部の形状等に対応して所定形状に成形されるのが一般的であるが、凹部のような深絞内装材の成形時に延伸力が及ぼされることによって、特に深絞り成形部分において金属箔や金属蒸着膜が割れたり、破れたり、ひびが生じたり、剥離したりする等の成形不良が生じやすいという問題があった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、自動車の内装材に要求される遮熱性を有しつつ、成形、特に深絞り成形部分を有する成形に対応可能な遮熱性内装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するための手段として、本発明の遮熱性内装材は、基材と表層材とが積層されてなる内装材本体の基材側表面に接着剤を介して反射層が接着された構成を有しており、所定形状に成形されている遮熱性内装材であって、上記反射層は、合成樹脂製のベースフィルムの一面に、粘着剤層を介して、蒸着によって金属膜を形成したフィルム材からなり、該ベースフィルムを上記内装材本体側にして上記基材の表面に接着されていることを要旨とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の遮熱性内装材の発明において、上記金属膜は、厚さが350〜550Å(35〜55nm)であることを要旨とする。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の遮熱性内装材の発明において、上記反射層において、上記ベースフィルムの上記内装材本体に接着される側の面には粗面処理が施されていることを要旨とする。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遮熱性内装材の発明において、上記反射層においては、上記金属膜の上に不織布製のシート材が貼着されていることを要旨とする。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遮熱性内装材の発明において、上記反射層において上記粘着剤層に使用する粘着剤は、アクリル樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート基を有する化合物を含む混合物の反応生成物からなるものであることを要旨とする。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の遮熱性内装材の発明において、上記接着剤は、多価イソシアネートを主体とするものであることを要旨とする。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遮熱性内装材の発明において、上記反射層において上記ベースフィルムは、ポリエステル製のものであることを要旨とする。
請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の遮熱性内装材の発明において、上記内装材本体の基材は、半硬質ポリウレタン発泡体のシートの両面に、ガラス繊維マットを積層した構成を有していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明の遮熱性内装材は内装材の原反を所定形状に成形することによって、例えば自動車の天井材等に適用されるが、その使用に際しては内装材本体の表層材が車内側となるように配置され、該内装材本体に接着された反射層が車外側に配される。該反射層は、蒸着によって形成された金属膜を有しているため、車外から車内へ侵入しようとする熱線を反射することで、自動車の内装材に要求される遮熱性能を発揮する。なお該反射層は熱線を反射する作用のみならず、遮音性能にも優れる。
一方、本発明の遮熱性内装材の原反を所定形状に成形する際、例えば自動車の天井材であればサンバイザーの収納凹所等のように深絞り成形部が存在するが、上記遮熱性内装材において上記反射層は、ベースフィルムの一面に粘着剤層を介して金属膜が形成されることで、該金属膜がベースフィルムに強固に粘着されて、該ベースフィルムから剥がれにくくなっているため、深絞り成形部分においても該金属膜の膜割れや剥がれが生じにくくなり、深絞り成形に対応可能となっている。
また金属膜の厚さを350〜550Å(35〜55nm)とすることが望ましい。該金属膜の厚さが350Å(35nm)に満たない場合、熱線に対する十分な反射性能を得られなくなり、金属膜の厚さが550Å(55nm)を超える場合、成形時に金属膜が伸びに対応できず、特に深絞り成形部分に膜割れを生ずるおそれがある。
また上記ベースフィルムの内装材本体に接着される側の面を粗面にして内装材本体との密着性を向上させることにより、深絞り成形への対応が更に容易になる。
また上記反射層を構成するフィルム材において、上記金属膜の上に不織布製のシート材を貼着することにより、自動車の天井裏に敷設される配線とのこすれ音の発生を抑制することができるようになり、加えて降雨による天井パネルのドラミング現象も吸音緩和することができるようになる。
また上記反射層を構成するフィルム材において、ベースフィルムと金属膜との間に介在される上記粘着剤層の粘着剤としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート基を有する化合物を含む混合物の反応生成物を使用すれば、金属膜を腐食することなくベースフィルムと金属膜との高い密着性を得ることができる。
また上記接着層において上記接着剤は、多価イソシアネートを主体とするものとすれば、上記多価イソシアネートの架橋によって接着剤層は耐熱性を獲得し、内装材本体と反射層とを強固に接着することができる。
また上記反射層を構成するフィルム材において、ベースフィルムは、ポリエステル製のものとすれば良好な可撓性を示し、取り扱いにおける容易性(ハンドリング性)や成形性の向上を図ることができるようになる。
また上記内装材本体を、半硬質ポリウレタン発泡体のシートとガラス繊維マットとによって構成すれば、好適な吸音性能を発揮することができるとともに、半硬質ポリウレタン発泡体のシートが芯材となり、該シートの両面に積層されたガラス繊維マットが補強材となることで、遮熱性内装材の剛性や耐熱性が高くなり、形状を安定して保つことが出来るようになる。
【0007】
〔効果〕
本発明の遮熱性内装材は高剛性であり、自動車の内装材に要求される吸音性能と遮熱性を満たしつつ、成形性、特に深絞り成形にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態の遮熱性内装材を示す断面図。
【図2】自動車の天井材として成形した実施形態の遮熱性内装材を示す斜視図。
【図3】実施形態の反射層を示す断面図。
【図4】自動車のドアトリムとして成形した別形態の遮熱性内装材を示す斜視図。
【図5】遮熱性能を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の遮熱性内装材を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の遮熱性内装材10は、反射層11と、内装材本体12とを備えており、自動車の内部で取り付けられる箇所に応じた所定形状に成形されている。なお本実施形態では、該遮熱性内装材10を自動車の天井材1に適用し、図2に示すような形状に成形している。該天井材1にあっては、全体として弯曲形状をなすとともに、自動車の前側となる前縁部には、サンバイザー(図示略)を収納するための2つの収納凹所1Aが深絞り成形部分として成形されている。そして、該天井材1は、反射層11を天井パネル側(上側)に、内装材本体12を車内側(下側)に配置するようにして自動車の車室内で天井パネル直下に取り付けられて使用される。
【0010】
[反射層]
上記反射層11について詳細に説明する。該反射層11は、自動車の車外から車室内に入り込もうとする熱線を反射するために設けられたものである。また該反射層11は、該遮熱性内装材10の通気を遮るものであり、車外から車内あるいは車内から車外へ伝わろうとする音を遮断する機能を有している。
図3に示すように、該反射層11は、合成樹脂製のベースフィルム15の一面に粘着剤層16を形成したうえで、該粘着剤層16の上に蒸着によって金属膜17を形成することによって構成されている。さらに該金属膜17上には、不織布製のシート材18が接着層19を介して貼着されている。
上記反射層11を上記内装材本体12に接着する場合、ベースフィルム15の上記金属膜17が設けられた面と反対側の面が該内装材本体12に接着される。
【0011】
(ベースフィルム)
上記ベースフィルム15は、上記反射層11を構成するフィルム材の芯材となるものである。該ベースフィルム15は、折り曲げ可能で物理的な力により比較的容易に変形する柔軟な合成樹脂製フィルムによって形成される。該ベースフィルム15の材料に用いる合成樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレンを含むポリスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリ酢酸セルロース等の各種セルロース、(メタ)アクリル樹脂、各種ナイロン等のポリアミド、フッ素樹脂などが挙げられる。これら合成樹脂のうち、熱に比較的強く、成形性が良好であり、ガスバリア性(通気遮断性)に優れ、入手が容易である等の観点から、ポリエステルが好ましく、特にPETが好ましい。
上記ベースフィルム15の厚さは、柔軟性、耐久性、強度、成形性などの観点から、5〜30μmの範囲であるのが好ましい。
【0012】
上記ベースフィルム15は、少なくとも上記内装材本体12と接着される側の面、あるいは両面に粗面化処理を施すことが望ましい。これは上記内装材本体12、あるいは上記内装材本体12及び上記粘着剤層16の密着性を向上させるためである。該粗面化処理としてはサンドブラスト処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UV洗浄処理、超音波洗浄処理、プライマー塗工処理等の種々の方法が挙げられるが、作業性が容易な点からみて、コロナ放電処理が望ましい。
【0013】
(粘着剤)
上記粘着剤層16は、上記金属膜17を上記ベースフィルム15の一面に強固に密着させるために、該ベースフィルム15に粘着剤を塗布して設けられたものである。
該粘着剤としては、耐熱性の観点からみて、アクリル樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート基を有する化合物を含む混合物の反応生成物からなるものが望ましい。上記粘着剤の詳細は、特開2004−122456号公報に詳記されている。
上記粘着剤層16の厚さは、特に限定されるものではないが、一般に0.3〜0.5μmの範囲である。
【0014】
(金属膜)
上記金属膜17は、車外から車内へ入り込もうとする熱線を反射し、遮熱するために設けられるものである。
該金属膜17に用いる金属の具体例としては、アルミニウム、銅、錫、ニッケル、金、白金、銀、はんだ、Ag−Pd、Ni−Sn、Ni−B、Ni−P等の合金等が挙げられる。これら金属のなかでも、一般的に入手可能なアルミニウムと銅が好ましく、特に、アルミニウムが好ましい。
上記金属は上記ベースフィルムの一面に蒸着されるが、該蒸着は物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)の何れの方法で行ってもよく、特にRFプラズマやイオン銃照射等の蒸着前処理を施すことで密着性を向上できるという観点から、物理蒸着(PVD)の一種である真空蒸着が望ましい。
上記金属膜17の厚さは、熱反射性を好適に発揮しつつ、成形不良の発生を抑えるという観点から、350〜550Å(35〜55nm)の範囲である。金属膜の厚さが35nmに満たない場合、熱反射性が好適に発揮できない。一方、金属膜の厚さが55nmを超える場合、金属膜17が成形時の伸びに対応できずに膜割れを生ずるおそれがある。
【0015】
(シート材)
上記シート材18は、自動車の天井裏にハーネス等の配線がアルミテープ等によって固定されている場合に、上記フィルム材の金属膜17と該配線とがこすれて異音を発生させたり、あるいは摩擦によって金属膜17が剥がれたり傷付いたりしてしまうため、このような異音の発生や金属膜17の損傷等を抑制するために設けられたものである。
該シート材18としては、該金属膜17の保護や異音の発生を抑えるべく可撓性のあるものとするため、一般に不織布が使用されている。該不織布としては、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、ステッチボンド不織布等が挙げられる。また不織布に使用する繊維としては、合成繊維、半合成繊維の何れでもよく、特に限定されないが、廃棄時の分別性や環境負荷の低減などといった観点から、上記ベースフィルム15と同じ材料、例えばPETなどのポリエステル繊維が望ましい。
また該シート材18は接着層19を介して上記金属膜17上に接着されるが、該接着層19に用いる接着剤は、上記シート材18と上記金属膜17とを接着可能であれば特に限定されない。但し、接着剤の具体例を挙げると、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤のようなホットメルト接着剤が挙げられるが、価格の点からみて特にポリオレフィン系ホットメルト接着剤が望ましい。
【0016】
[内装材本体]
上記内装材本体12について詳細に説明する。該内装材本体12は、上記遮熱性内装材10を構成する主となるものであり、一般に基材12Aと、表層材12Bとを積層して構成されている。該基材12Aは、内装材本体12に形状保持性を付与するものである。該表層材12Bは、遮熱性内装材10を構成するもののうち、最も車内側に配置されるものであり、該遮熱性内装材10を装飾し、外観品質を向上させるものである。
なお上記内装材本体12は、遮熱性内装材10の車内での適用箇所に応じて基材12A及び表層材12Bの構成が適宜変更されるが、この実施形態では上述したように遮熱性内装材10を天井材1に適用するものとし、基材12A及び表層材12Bの構成について説明する。
【0017】
[基材]
上記基材12Aは、複数の多孔質体を積層して構成されることにより、車室内で発生した音、あるいは上記反射層11で反射された音に対する吸音性能を発揮できるように構成されている。上記基材12Aは、図1に示されるように、多孔質体からなる芯材21と、該芯材21の両面に接着剤によって貼着された多孔質体からなる補強材22と、によって構成されている。
【0018】
(芯材)
上記芯材21は、内装材本体12の基体として設けられたものであり、吸音効果と断熱効果を発揮する。また、多孔質体からなる該芯材21は、その表面の孔に接着剤が染み込むことで、上記補強材22に対する密着性が良好なものとなる。
本発明の遮熱性内装材10の芯材21として用いられる材料としては、半硬質ポリウレタン発泡体、多価イソシアナート含浸軟質ポリウレタン発泡体、ガラス繊維強化ポリプロピレン発泡体、メラミン樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体等の合成樹脂発泡体、紙製ダンボール、プラスチック製ダンボール、合成樹脂含浸繊維板等が例示される。
上記合成樹脂含浸繊維板に使用されている繊維としては、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、パルプ繊維、麻繊維、ケナフ、竹繊維、ヤシ繊維等の植物性剛性繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、あるいはこれらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維が例示され、上記繊維は2種以上混合使用されてもよい。上記繊維は通常、不織布、編織物、シート状ウェブ等の状態にされ、含浸される合成樹脂としては、一般にフェノール樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されるが、上記熱硬化性樹脂の全部あるいは一部に代えて熱可塑性樹脂が使用されてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が例示される。
上記芯材21の材料には、断熱効果が良好であり、成形性に優れるという観点から、半硬質ポリウレタン発泡体のシートが望ましい。また芯材21の材料には、軟質ポリウレタン発泡体に多価イソシアナートを含浸させたもの、あるいは紙製のダンボールを使用してもよい。
上記芯材21の厚さは、特に限定されるものではないが、一般に1〜50mmの範囲である。
【0019】
(補強材)
上記補強材22は、遮熱性内装材10に要求される強度、剛性に応じて、上記芯材21の表面に接着されるものであり、特に上記芯材21の材料が半硬質ポリウレタン発泡体等の合成樹脂発泡体の場合、その表面が脆く崩れやすくなる傾向があるため、該芯材21の表面の崩れを防止するために設けられる。
該補強材22としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、パルプ繊維、麻繊維、ケナフ、竹繊維、ヤシ繊維等の植物性剛性繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、あるいはこれらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維の1種または2種以上の繊維からなる編織物または不織布等が使用される。これらの中でも補強材22には、難燃性を有しているという観点から、ガラス繊維マットが望ましい。
なお上記繊維からなる編織物または不織布等に、補強性を向上させる目的で、あるいは成形性を付与する目的で、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等の熱可塑性樹脂やウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等の熱硬化性合成樹脂等の1種または2種以上の混合物を含浸あるいは片面または両面に塗布したもの、あるいはフェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂、エポキシ樹脂等を含浸または片面または両面に塗布し乾燥させBステージにプレキュアーさせたものを補強材22として使用してもよい。
上記補強材22の目付は、特に限定されるものではないが、1m当たりの質量で1〜500gの範囲である。
【0020】
[表層材]
上記表層材12Bは、複数の多孔質体を積層して構成されることにより、上記基材12Aと同様に、車室内で発生した音、あるいは上記反射層11で反射された音に対する吸音性能を発揮できるように構成されている。すなわち上記表層材12Bは、図1に示されるように、多孔質体からなる表皮材23と、該表皮材23の裏面に接着剤によって接着された多孔質体からなる裏打材24と、によって構成されている。
(表皮材)
上記表皮材23は、遮熱性内装材10の最も車内側に配置されるものであり、該遮熱性内装材10を装飾するために設けられている。また該表皮材23は、多孔質体から構成されることによって、音を反射することなく通過させて上記基材12A等で吸音させるように機能する。
該表皮材23の材料には、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、アクリル、ビスコースレーヨン、アセテート、トリアセテート等のセルロースエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、サラン等のビニル誘導体、綿、羊毛、竹繊維、ケナフ繊維、ジュート等の天然繊維や合成繊維等からなる編織物や不織布、ポリ塩化ビニル合成皮革、ポリウレタン合成皮革、ポリアミド合成皮革等の合成皮革、あるいは上記編織物、不織布や合成皮革にポリウレタン発泡体シート、ポリエチレン発泡体シート、ポリプロピレン発泡体シート等を裏打ちした積層シート等が使用される。
【0021】
(裏打材)
裏打材24は、表皮材23の裏面に貼着されて該表皮材23の表面、すなわち遮熱性内装材10の表面にクッション性を与えるものであり、厚みが縮小拡大出来るシートが使用される。
該裏打材24に使用される材料としては、軟質ポリウレタン発泡体シート、ポリエチレン発泡体シート、ポリプロピレン発泡体シート等の合成樹脂製の多孔質シートや繊維シート等が挙げられ、該繊維シートとしては、例えば、綿花、麻類(亜麻、大麻、ラミー、ジュート、ケナフ、マニラ麻等)繊維、木材繊維、竹繊維、パルプからなる紙等の天然セルロール繊維、キワタ、ガマ繊維等の種子繊維、靱皮繊維、羊毛、モヘア、カシミア、ラクダ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ等の獣毛繊維、蚕糸等のタンパク繊維、石綿等の鉱物繊維、レーヨン(人絹、スフ)、ポリノジック、キュプラ、アセテート、トリアセテート等のセルロース系人造繊維等の1種または2種以上の繊維からなる編織物、不織布、フェルトおよびそれらの積層物等の繊維集合体が挙げられる。他に、繊維シートとしては、例えば、ナイロン、アラミド等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、アクリル等のポリアクリロニトリル繊維、ビニロン等のポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維等の合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコーンカーバイド繊維、岩石繊維、鉱滓繊維、金属繊維等の無機繊維等の1種または2種以上の繊維からなる編織物、不織布、フェルトおよびそれらの積層物等の繊維集合体も挙げられる。
【0022】
[接着剤]
上記反射層11と上記内装材本体12、該内装材本体12を構成する上記基材12Aと上記表層材12B、該基材12Aを構成する各層、および該表層材12Bを構成する各層の全ては、接着剤によって相互に接着されており、遮熱性内装材10の成形に際して各所で剥がれや破れなどの不良が生じることを防止している。
該接着剤としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物、あるいはトリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルジイソシナート、2−クロロ−1,4−フェニルジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシナート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,2’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、ω−キシリレンジイソシアネート、ω’−キシリレンジイソシアネート等の多価イソシアネート、およびこれらの化合物とポリエチレンアジペート、ポリテトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオール、1,4−シスブテンジオール、1,5−ジヒドロキシエトキシナフタリン、1,4−ブチンジオール、ポリエステル、ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレン)ポリオール、アクリルポリオール、ヒマシ油ダイマー、トール油ダイマー等の多価アルコールのアダクト等の多価イソシアネート、ウレタンプレポリマー等の合成樹脂液が使用される。
これらのうち接着剤としては、入手が容易である、扱いやすい、接着力が良好である、コストが安い等の観点から、上記多価イソシアネートからなる合成樹脂液が最も望ましい。なお、上記多価イソシアネートは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また上記接着剤には、必要に応じて触媒を使用することが出来る。該触媒は特に制限無く使用することができ、具体例としてトリエチルアミン、ナフテン酸コバルト、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、塩化第一スズ、テトラ−n−ブチルチン、塩化第二スズ、トリ−n−ブチルチンアセテート、n−ブチルチントリクロライド、トリメチルチンハイドロオキサイド、ジメチルチンジクロライド、ジブチルチンジラウレート等のような有機酸、金属化合物、アミン系化合物が挙げられる。
【0023】
[遮熱性内装材の製造方法]
上記遮熱性内装材10は、接着剤が塗布された吸音層12の上面に反射層11を重ねて加熱プレスし、所定形状に成形される。該加熱プレスの際、吸音層12の接着剤は、大半が硬化して芯材21と補強材22とを接着する。また一部の接着剤は、ガス状となって該補強材22内に拡散し、該補強材22の表面で再び液化することによって滲出し、硬化することで表皮材23や反射層11を接着する。
【0024】
[遮熱性内装材の別形態]
遮熱性内装材10は、上記したような自動車の天井材1に適用することに限らず、例えば図4に示すような自動車のドアトリムDTに適用してもよい。該ドアトリムDTにおいては、その中央部分に肘置きARが深絞り成形部分として凸状に成形されている。そして、該ドアトリムDTは、反射層11をドアパネル側(外側)に、内装材本体12を車内側(内側)に配置するようにしてドアパネルに取り付けられて使用される。
上記天井材1や上記ドアトリムDTの他に、遮熱性内装材10は、自動車の床材、ダッシュボード、リアパーセル等の内装材に適用してもよい。
また上記内装材本体12の上記基材12Aは、遮熱性内装材10が適用される箇所に合わせて、例えばダンボールのみ、あるいはプラスチックボードのみ等で構成してもよい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明をより具体化した実施例について説明する。なお本発明は、この実施例のみによって必ずしも限定されるものではない。
〔実施例〕
反射層11の製造:ベースフィルム15として厚さ12μmのPET製フィルムを用い、該ベースフィルム15の一面に粘着剤層16を0.4μmの厚さで塗布した後、該粘着剤層16の上にアルミニウムからなる金属膜17を450Å(45nm)の厚さで真空蒸着した。その後、金属膜17の表面にポリプロピレンからなるホットメルト接着剤を20μmの厚さで塗布して接着層19を設けた後、目付量(単位面積当たりの質量)が30g/mのPET製スパンレース不織布からなるシート材18を接着層19表面に重ね、押し出し式のラミネート機を用いて貼り合わせることで反射層11を得た。
内装材本体12の製造:厚さ10mmの半硬質ポリウレタン発泡体からなる芯材21の両面に、1m当たりの質量が100gのガラス繊維マットからなる補強材22を接着してなる基材12Aと、トリコットからなる表皮材23の裏面に、不織布を重合してなる裏打材24を接着してなる表層材12Bと、をMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)とジブチルチンラウレートからなる接着剤で接着し、内装材本体12を得た。
遮熱性内装材の原反の製造:上記内装材本体12と上記反射層11とを接着剤を介して重ね合わせた後、所定形状に裁断し、原反として実施例1の試料を得た。
【0026】
〔比較例〕
上記実施例において、粘着剤層16を省略した以外は同様にして、原反として比較例1の試料を得た。
【0027】
〔遮熱性内装材の製造〕
実施例及び比較例の試料を用い、プレス機によって130〜140℃で加熱しつつプレス成形を行い、図1に示す天井材1を成形した。このときサンバイザーを収納するための収納凹所1Aが深絞り成形部となり、その深さは10mmであった。
実施例については、何ら成形不良はなかった。一方、比較例については、収納凹所1Aの周縁の段差部分で金属膜17に亀裂が生じていた。
上記実施例及び比較例の試料からなる遮熱性内装材を用い、遮熱性能試験を行った。遮熱性能試験は、遮熱性内装材から30cm離れた位置にレフランプを置き、該レフランプで該遮熱性内装材を15分間照らすとともに、該遮熱性内装材で光が照射された面と反対の面に赤外線センサーを設け、該赤外線センサーで温度を測定することにより行った。その結果を図5に示す。
上記遮熱性能試験の結果、実施例の試料を用いた遮熱性内装材は、比較例のものに比べて明らかに温度上昇が抑えられており、遮熱性能が高いことが示された。
【0028】
〔参考例1〕
金属膜17を45nmの厚さを300Å(30nm)とした以外は同様にして、参考例1の試料を得た。この参考例1を用いて図1に示す天井材1を成形した結果、金属膜17に破れ、割れが生じていた。
〔参考例2〕
金属膜17を45nmの厚さを550Å(55nm)とした以外は同様にして、参考例2の試料を得た。この参考例2を用いて図1に示す天井材1を成形した結果、金属膜17の剥がれが生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の遮熱性内装材は、自動車の内装材に要求される吸音性能と遮熱性を有しつつ、反射層のベースフィルムと金属膜とが粘着剤を介して強固に密着しているため深絞り成形に対応可能であるから、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 遮熱性内装材
11 反射層
12 吸音層
12A 基材
12B 表層材
15 ベースフィルム
16 粘着剤
17 金属膜
18 シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と表層材とが積層されてなる内装材本体の基材側表面に接着剤を介して反射層が接着された構成を有しており、所定形状に成形されている遮熱性内装材であって、
上記反射層は、合成樹脂製のベースフィルムの一面に、粘着剤層を介して、蒸着によって金属膜を形成したフィルム材からなり、該ベースフィルムを上記内装材本体側にして上記基材の表面に接着されている
ことを特徴とする遮熱性内装材。
【請求項2】
上記金属膜は、厚さが350〜550Å(35〜55nm)である
請求項1に記載の遮熱性内装材。
【請求項3】
上記反射層において、上記ベースフィルムの上記内装材本体に接着される側の面には粗面処理が施されている
請求項1または請求項2に記載の遮熱性内装材。
【請求項4】
上記反射層においては、上記金属膜の上に不織布製のシート材が貼着されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遮熱性内装材。
【請求項5】
上記反射層において上記粘着剤層に使用する粘着剤は、アクリル樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート基を有する化合物を含む混合物の反応生成物からなるものである
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遮熱性内装材。
【請求項6】
上記接着剤は、多価イソシアネートを主体とするものである
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の遮熱性内装材。
【請求項7】
上記反射層において上記ベースフィルムは、ポリエステル製のものである
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遮熱性内装材。
【請求項8】
上記内装材本体の基材は、半硬質ポリウレタン発泡体のシートの両面に、ガラス繊維マットを積層した構成を有している
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の遮熱性内装材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−86661(P2012−86661A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234747(P2010−234747)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(592110808)株式会社吉良紙工 (11)
【出願人】(599100453)タイヨーテクノ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】