説明

避難情報配信装置およびプログラム

【課題】危機意識の低い住民に対して、避難の重要性や必要性を具体的に知らせる。
【解決手段】避難の際、位置情報取得部12により、通信端末のうち端末DB16で区分されている能動避難者端末21から、通信網40を介して当該能動避難者端末21の位置を示す位置情報を取得し、避難状況情報生成部14により、これら位置情報に基づいて、能動避難者20の避難状況を示す避難状況情報を生成し、通信端末のうち端末DB16で区分されている受動避難者端末31,32に対して、生成した避難状況情報を配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報配信技術に関し、特に災害時の避難に関連する各種避難情報を予め登録された端末装置に一斉配信する避難情報配信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
災害が発生する恐れがある場合、行政から住民に対して、広報車による伝達、広範囲にわたる場合その他必要に応じたテレビ放送、ラジオ放送、口頭による伝達、サイレンを併用して、避難勧告や避難指示が伝達される。このような避難勧告や避難指示では、勧告者や避難すべき理由に加え、避難先や避難所に至る経路を明確にすることが重要とされている。
【0003】
一方、携帯電話サービスの普及に伴い、このような通信サービスを利用して、災害時に避難先へ移動する人々に対して各自の経路情報を案内する技術が提案されている。例えば、携帯端末から経路探索サーバに対して、定期的に所望地点間の避難経路に関する経路探索を要求し、得られた避難経路を記憶部に記憶しておき、災害時に記憶部の避難経路を表示する技術がある(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4066439号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.gsi.go.jp/GIS/whatisgis.html、「GISとは…」、国土地理院
【非特許文献2】ネットが変える消費者行動、宮田加久子、池田謙一、NTT出版、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、避難行動を須らく一様に生起するといった人の行動原理が前提にしている。このため、危険認識度における避難意思決定基準の違い、すなわち危機意識の差異が考慮されておらず、危機意識の低い住民に対して、避難の重要性や必要性を具体的に知らせることができないという問題点があった。
【0007】
災害時などに用いる行政機関から提供される避難情報は、避難者個人や特定地域に対応した内容ではなく、一般的な広範囲の地域住民に対して広報される情報のみであり、一個人に特化した配信情報になってはいない。このため、現状の避難情報が伝達されても、危険認識度の高い避難者などはその情報などをもとに率先し避難行動を自ら起こすが、危険認識度の低い避難者などは、その危険度を適切に認識できないため、あるいはどのように行動すればよいか分からない事態に陥るなどにより、逃げ遅れが生じる。これは、地震などのような直接危険を感じ取れる災害種よりも、水害、土砂災害、高潮災害など、直接危険を感じ取れるまでにある程度の時間を要する災害種に顕著に表れる。
【0008】
実際の災害時には、このような危険認識度の違いにより、自ら率先して避難する避難者、誰かの避難行動を確認した後にはじめて避難しようとする動因が発生する避難者など、個々人(避難行動心理の近似な群)に避難意思決定基準の違いが発生する。
したがって、危険認識度が低く、心理的に不安をかかえる、いわゆる災害弱者に対しては、自ら率先して避難する人とは異なる避難情報、すなわち災害弱者が安心感を得られ、避難行動をスムーズに開始できるような避難情報を提供する必要がある。このことは、避難意思決定基準によって避難を支援する情報内容も異なるのが社会心理学の観点からも自然なアプローチ法と言え、避難意思決定基準の違いという定義は災害時の潜在的心理を捉えた自然な行動原理といえる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、危機意識の低い住民に対して、避難の重要性や必要性を具体的に知らせることができる避難情報を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかる避難情報配信装置は、災害時の避難に関する避難情報を、通信網を介して複数の避難者の通信端末へ配信する避難情報配信装置であって、通信端末が、能動的な避難行動をとる能動避難者が携帯する能動避難者端末、または受動的な避難行動をとる受動避難者が利用する受動避難者端末のいずれかに区分されて、それぞれの通信アドレスとともに登録されている端末データベースと、避難の際に、通信端末のうち端末データベースで区分されている能動避難者端末から、通信網を介して当該能動避難者端末の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報取得部で取得した位置情報に基づいて、能動避難者の避難状況を示す避難状況情報を生成する避難状況情報生成部と、通信端末のうち端末データベースで区分されている受動避難者端末に対して、避難状況情報生成部で生成された避難状況情報を配信する情報配信部とを備えている。
【0011】
この際、避難状況情報生成部で、位置情報取得部により時系列で取得した位置情報、または能動避難者端末の位置の時系列変化を示す位置情報に基づいて、能動避難者端末の位置の時系列変化を含む避難状況情報を生成するようにしてもよい。
【0012】
また、避難状況情報として、能動避難者端末の位置の時系列変化を示す軌跡を地図上にプロットした地図画像を用いてもよい。
【0013】
また、位置情報取得部で、能動避難者端末から新たな位置情報を逐次取得し、情報配信部で、避難状況情報生成部で新たな位置情報から生成された避難状況情報を、受動避難者端末に対して順次配信するようにしてもよい。
【0014】
また、情報配信部で、位置情報の取得開始または避難状況情報の配信開始から所定の配信期間経過後、位置情報の取得および避難状況情報の配信を停止するようにしてもよい。
【0015】
また、本実施の形態にかかるプログラムは、前述した避難情報配信装置を構成する各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、避難状況情報において、能動避難者が極めて迅速に避難していることが確認できた場合には、災害の危険性が高いと能動避難者が認識していることになり、能動避難者があまり急ぐことなく避難していることが確認できた場合には、災害の危険性が低いと能動避難者が認識していることになる。すなわち、避難状況情報には、能動避難者の危険認識度が含まれている。
したがって、このような能動避難者の避難状況を受動避難者に対して配信することにより、誰かの避難行動を確認した後にはじめて避難しようとする受動避難者、すなわち危機意識の低い住民に対して、避難の重要性や必要性を具体的に知らせることができる。このため、受動避難者の避難行動を強く促すことができるとともに、避難行動をスムーズに開始させることができ、住民全体の避難率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態にかかる避難情報配信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】イノベータ理論の消費者類型を示す説明図である。
【図3】アンケート設問例である。
【図4】避難行動に関するクラスタリング分析結果である。
【図5】避難者行動分類ごとの心理的分析結果である。
【図6】避難者行動分類とイノベータ理論の消費者類型との対比表である。
【図7】避難者行動分類とイノベータ理論の消費者類型との対比グラフである。
【図8】避難情報設定画面の構成例である。
【図9】避難状況情報の構成例である。
【図10】端末DBの構成例である。
【図11】行動モニタ設定動作を示すシーケンス図である。
【図12】避難指示情報配信動作を示すシーケンス図である。
【図13】避難指示情報配信開始動作を示すシーケンス図である。
【図14】避難指示情報配信継続動作を示すシーケンス図である。
【図15】避難指示情報配信終了動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[避難情報配信装置]
まず、図1を参照して、本実施の形態にかかる避難情報配信装置について説明する。図1は、本実施の形態にかかる避難情報配信装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
この避難情報配信装置10は、全体としてサーバ装置などの通信処理装置からなり、災害が発生した場合や災害が発生する恐れがある場合など、災害時の避難に関する避難情報を、携帯電話網やインターネットなどの通信網40を介して能動避難者20が携帯する能動避難者端末21や、受動避難者30が利用する受動避難者端末31,32など、複数の避難者の通信端末へ配信する機能を有している。
【0020】
このうち、能動避難者端末21は、能動避難者20が携帯する携帯電話やPDAなどの携帯通信端末からなる。また、受動避難者端末31は、受動避難者30が携帯する携帯電話やPDAなどの携帯通信端末からなり、受動避難者端末32は、受動避難者30が屋内で利用するパーソナルコンピュータなど固定通信端末からなる。
【0021】
管理者端末50は、パーソナルコンピュータや携帯端末などの情報処理端末からなり、通信回線を介して避難情報配信装置10と接続して、避難情報の配信制御を遠隔操作する機能を有している。
地理情報システム(GIS:Geographic Information System)51は、サーバ装置などの通信処理装置からなり、通信回線を介して避難情報配信装置10と接続して、避難情報配信装置10からの要求に応じて地図情報を提供する機能と、取得した位置情報を、例えば、測位時に生じた位置誤差によって建物の上を行動軌跡の線が走ってしまう等の論理的矛盾が生じないように、システムが有している道路情報や建物情報を用いて必要な位置修正を施しつつ、地図上にプロットして新たな地図情報を生成する機能とを有している。この地理情報システム51は、防災関連の画像技術として広く利用可能であり、例えば、各要素の空間情報(属性情報)を付加して災害時などに利用することなどが既に行われている。なお、地理情報システムの具体例については、既存技術を利用すればよい(例えば、非特許文献1など参照)。
【0022】
[発明の原理]
まず、本発明の原理について説明する。
前述したように、災害時に行政機関から提供された、避難先や避難時刻など避難に関する避難情報に基づいて避難する避難者は、すべて同じ危険認識度を持っている訳ではなく、危険認識度の違いが認められる。
このため、現状の避難情報が伝達されても、危険認識度の高い避難者などはその情報などをもとに率先し避難行動を自ら起こすが、危険認識度の低い避難者などは、その危険度を適切に認識できないため、あるいはどのように行動すればよいか分からない事態に陥るなどにより、逃げ遅れが生じる。
【0023】
実際の災害時には、このような危険認識度の違いにより、自ら率先して避難する避難者、誰かの避難行動を確認した後にはじめて避難しようとする動因が発生する避難者など、個々人(避難行動心理の近似な群)に避難意思決定基準の違いが発生する。
したがって、危険認識度が低く、心理的に不安をかかえる、いわゆる災害弱者に対しては、自ら率先して避難する人とは異なる避難情報、すなわち災害弱者が安心感を得られ、避難行動をスムーズに開始できるような避難情報を提供する必要がある。
【0024】
発明者らは、このような危険認識度における避難意志決定基準の違い、すなわち危機意識の差異の存在を確認するため、社会心理学の理論に基づくアンケート調査を実施し、得られた集計データを解析して、被験者を避難者行動の違いにより、いくつかの群に分類した。また、これら群から得られた避難行動モデルと、エベレット・M・ロジャース(Everett M. Rogers)のイノベータ理論でいう消費者行動モデルとの共通性を、レオン・フェスティンガー(Leon Festinger)の社会的比較過程理論に基づき把握し、避難行動モデルにおける避難情報の重要性、すなわち災害に対する危険性に関する伝搬について解析した。
【0025】
[イノベータ理論]
図2は、イノベータ理論の消費者類型を示す説明図である。
まず、イノベータ理論とその消費者類型について説明する。イノベータ理論では、消費者の商品購入に対する態度を、新商品の購入時期の早い順に、イノベータ(Innovators:革新者)、オピニオンリーダ(Opinion leader:初期採用者)、アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者)、レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者)、ラガード(Laggards:遅滞者)からなる5つの消費者類型に分類している。
【0026】
このうち、イノベータは、冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人で、市場全体の2.5%を占める。オピニオンリーダは、流行に敏感で情報収集を自ら行い判断する人である。他の消費層への影響力が大きく、アーリーアダプター(Early Adopters)とも呼ばれ、市場全体の13.5%を占める。 アーリー・マジョリティは、平均より早くに新しいものを取り入れるものの、比較的慎重派な人であり、市場全体の34.0%を占める。レイト・マジョリティは、周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする、比較的懐疑的な人であり、市場全体の34.0%を占める。ラガードは、流行や世の中の動きに関心が薄く、イノベーションが伝統になるまで採用しない、最も保守的な人であり、市場全体の16.0%を占める。
【0027】
これら消費者類型のうち、イノベータは少人数であり、重視するポイントが商品の新しさそのもので、商品の価値にあまり注目していない。一方、オピニオンリーダは新しい価値に注目していて、他の消費者への影響力が大きいことから、新しい価値を自らのネットワークを通じて伝える役目を演じる。イノベータとオピニオンリーダは合わせても、その構成比累積は市場全体の16%しかない。しかしながら、この16%は、累積度数分布曲線が急成長する領域に相当しており、これら2者まで普及するかどうかが、次のアーリーマジョリティやレイトマジョリティに広がるかどうかの分岐点になると考えられる。イノベータ理論では、この分岐点に関する考察を「普及率16%の論理」として提唱している。
【0028】
[アンケート調査]
次に、アンケート調査について説明する。アンケート調査では、ある地区で実施した避難訓練の参加者44名を被験者として、避難行動および日常行動に関する設問を作成した。図3は、アンケート設問例である。回答方法は、「そう思わない」、「ややそう思わない」、「ややそう思う」、「そう思う」のうちからいずれか1つを選択する形式とした。
これら回答から被験者ごとに算出した避難行動および日常行動に関するスコアを指標として、被験者を避難者行動の違いにより、いくつかのクラスタに分類した。この際、消費者類型におけるオピニオンリーダとして資質を計る設問因子に対して重み付けをすることにより、危険認識度の違いをスコア化した。
【0029】
図4は、避難行動に関するクラスタリング分析結果である。ここでは、横軸が避難行動に関するスコア、縦軸が日常行動に関するスコアであり、スコアが大きいほど能動的な行動をとり、スコアが小さいほど受動的な行動をとると見なすことができる。
このクラスタリング分析結果によれば、被験者は、避難行動における行動特性と日常行動における行動特性との組み合わせにより、A群からF群まで、大きく6つの群に分類されることがわかった。また、F群については、F1群からF5群までの5つの小分類が存在することもわかった。
【0030】
図5は、避難者行動分類ごとの心理的分析結果である。ここでは、図4で得られた避難者行動分類ごとに、当該分類に属する被験者の心理的な分析と、イノベータ理論でいう消費者類型との対応、および当該分類に属する被験者の性別構成が示されている。
【0031】
このうち、A群は、日常の地域交流が盛んであり、町内でのリーダ的立場を望む傾向が非常に強い。災害時には近所の避難の様子を気にかけつつ自ら様々な情報収集を行い、自ら率先して避難する。また、その情報をもとに近所の人に注意喚起・行動指示を促す傾向と自分を評価しようとする動因も強く見られる(地域のリーダシップ的役割を担えるタイプ)。したがって、A群はイノベータ理論でいうオピニオンリーダに相当する。
【0032】
B群は、町内でのリーダ的立場を望む傾向はやや薄いが、地域交流は盛んに行っている。災害時には近所の避難の様子を気にかけず自ら様々な情報収集を行い、その情報をもとに近所の人に注意喚起・行動指示を促す傾向と自分を評価しようとする動因も強く見られる(能動的に避難勧告が出る前に様々な情報収集活動を行うタイプ)。したがって、B群は、いわゆるリーディングコンシューマであり、オピニオンリーダに相当する。
【0033】
C群は、地域交流は親しい知り合いとの交流に限られ、地域活動やご近所間との繋がりはやや薄い傾向がある。ただし、災害時には自ら様々な情報収集を行い、その情報をもとに近所の人に注意喚起・行動指示を促す傾向と自分を評価しようとする動因も強く見られる(能動的に避難勧告が出る前に様々な情報収集活動は行うタイプ)。したがって、C群は、いわゆるリーディングコンシューマ予備軍であり、アーリーマジョリティに相当する(例えば、非特許文献2など参照)。
【0034】
D群は、町内でのリーダ的立場を望む傾向は薄いが、地域交流は比較的盛んに行っている。災害時には近所の避難の様子を気にかけず自ら様々な情報収集を行い、その情報をもとに率先して避難するが、近所の人に注意喚起などを行う傾向のやや低い(自己完結タイプ)。したがって、D群はイノベータ理論でいうイノベータに相当する。
【0035】
E群は、日常の地域交流が非常に盛んであり、町内でのリーダ的立場を望む傾向が非常に強い。ただし、災害時は誰かの避難行動や周囲の避難の様子を確認した上で避難し、他の近所の人にも声をかける傾向と自分を評価しようとする動因もやや見られる(能動的に避難勧告が出る前に様々な情報収集活動は行わないタイプ)。したがって、E群は、情報伝達のハブ的役割を担うマーケットメイブンであり、アーリーマジョリティに相当する。
【0036】
F1群は、地域交流は親しい知り合いとの交流に限られ、地域活動やご近所間との繋がりはやや薄い傾向がある。災害時には自ら様々な情報収集や誰かの避難行動を確認するが、自ら率先して避難することはない。ただし、避難する際には近所の人にも声をかける傾向と自分を評価しようとする動因が見られる(率先して避難することのない慎重派タイプ)。したがって、F1群はイノベータ理論でいうアーリーマジョリティに相当する。
【0037】
F2群は、地域交流は親しい知り合いとの交流に限られ、地域活動やご近所間との繋がりは若干見られるが薄い傾向がある。災害時には情報収集活動や誰かの避難行動を確認することもなく、自ら率先して避難することもない。ただし、避難する際には近所の人にも声をかける傾向と自分を評価しようとする動因が見られる(受動的内向タイプ)。したがって、F2群はイノベータ理論でいうレイトマジョリティに相当する。
【0038】
F3群は、地域交流は親しい知り合いとの交流に限られ、地域活動やご近所間との繋がりはやや薄い傾向がある。人の意見には興味や関心はあるが、自分の相談をすることはない。災害時には自ら様々な情報収集や誰かの避難行動を確認し、自らの判断で避難する傾向も見られる。ただし、避難する際には近所の人にも声をかけるが達成感は多少低い傾向もある。したがって、F3群はイノベータ理論でいうアーリーマジョリティに相当する。
【0039】
F4群は、地域交流は親しい知り合いとの交流に限られ、地域活動やご近所間との繋がりはやや薄い傾向がある。人の意見には興味や関心はあるが、自分の相談をすることはない。災害時には情報収集活動や誰かの避難行動を確認する傾向と逆の傾向との2つに分かれるが、どちらも自らの判断で避難する傾向は低い。また、避難する際には近所の人にも声をかける傾向は一様にしてあるが達成感を全く感じない傾向のある人も混在する。したがって、F4群はイノベータ理論でいうアーリーマジョリティとレイトマジョリティの両方の特性を持つ。
【0040】
F5群は、地域交流は親しい知り合いとの交流に限られ、地域活動やご近所間との繋がりは薄い傾向がある。人の意見には興味や関心はあるが、自分の相談をすることはない。災害時には誰かの避難行動のみを確認し、情報収集活動は全く行わず、自らの判断で避難する傾向も低い。また、避難する際には近所の人にも声をかける傾向は見られるが達成感を全く感じない傾向がある。したがって、F5群はイノベータ理論でいうレイトマジョリティとラガードの両方の特性を持つ。
【0041】
[避難行動と消費者行動との対比]
図6は、避難者行動分類とイノベータ理論の消費者類型との対比表である。図7は、避難者行動分類とイノベータ理論の消費者類型との対比グラフである。
クラスタリング分析結果で得られた避難者行動分類、すなわちA群〜E群と、F1群〜F5群のそれぞれを、イノベータ理論の消費者類型に当てはめて、その構成比を算出している。なお、被験者のうちには災害経験者も含まれていたことから、それぞれの消費者類型ごとに、当該消費者類型の被験者に占める災害経験者の割合を示す分類毎比と、経験者全体に占める当該災害経験者の割合を示す経験者全体比とが示されている。
【0042】
図6に示すように、避難者行動分類のうち、イノベータに属する分類の構成比は3.0%、オピニオンリーダに属する分類の構成比は17.7%、アーリーマジョリティに属する分類の構成比は52.9%、レイトマジョリティに属する分類の構成比は17.6、ラガードに属する分類の構成比は8.8%であった。これら構成比の度数分布曲線P1は、図7に示すように、消費者類型に関する構成比の度数分布曲線P0と比較して、アーリーマジョリティの構成比が大きく、レイトマジョリティの構成比が小さいものの、消費者類型と同様の分布傾向を有することが分かる。
【0043】
これにより、新商品に関する情報が、消費者類型に分類されるそれぞれの消費者群を経由して、多くの消費者へ伝搬していくという、イノベータ理論の消費者行動モデルに対して、被験者の避難行動モデルが類似性を有していることが分かる。したがって、新商品に関する情報を避難情報に置き換えた場合、避難情報は、避難行動モデル分類で得られたそれぞれの避難者群を経由して、多くの避難者へ伝搬していくことが理解できる。
【0044】
ここで、災害時には、前述した災害に対する危機認識度の違いに応じて、避難者それぞれに避難意思決定基準の違いが発生し、自ら率先して避難する避難者と、誰かの避難行動を確認した後にはじめて避難しようとする動因が発生する避難者とが分離される。
このことは、イノベータ理論でいうオピニオンリーダが積極的に新商品の価値を見出すという能動的な行動をとるのに対して、アーリーマジョリティやレイトマジョリティは新商品の価値の提供を受けるという受動的な行動をとる、という消費者行動モデルと極めて類似している。
【0045】
[避難の重要性の伝搬]
イノベータ理論における消費者行動モデルでは、アーリーマジョリティやレイトマジョリティの多くが、新商品の価値をオピニオンリーダから提供されており、新商品の販売拡大は、オピニオンリーダが鍵を握っていると指摘されている。すなわち、オピニオンリーダが新商品の価値を把握して得られた新たな情報を、アーリーマジョリティやレイトマジョリティへ配信することが、新商品の価値を広く伝えることに繋がる。
【0046】
一方、避難行動モデルでは、前述したように、自ら率先して避難する避難者、すなわち能動避難者がオピニオンリーダに相当し、誰かの避難行動を確認した後にはじめて避難しようとする動因が発生する避難者、すなわち受動避難者が、アーリーマジョリティやレイトマジョリティに相当している。
したがって、災害に関する避難情報についても、能動避難者が、避難情報を把握した結果を示す新たな情報を、受動避難者に対して配信することが、避難の重要性、すなわち災害に対する危険性を広く伝えることに繋がると考えられる。
【0047】
このため、能動避難者が避難情報を把握した結果を取得して、危機意識の低い受動避難者に対して配信すれば、避難の重要性や必要性を具体的に知らせることができる。また、これにより、受動避難者の避難行動を強く促すことができ、避難行動をスムーズに開始させることができ、住民全体の避難率を向上させることが可能となる。
【0048】
本発明は、このような点に着目し、災害時の避難に関する避難情報を、通信網40を介して複数の避難者の通信端末へ配信する避難情報配信装置10において、通信端末が、能動的な避難行動をとる能動避難者20が携帯する能動避難者端末21、または受動的な避難行動をとる受動避難者30が利用する受動避難者端末31,32のいずれかに区分して、それぞれの通信アドレスとともに端末データベースへ登録しておき、避難の際に、通信端末のうち端末データベースで区分されている能動避難者端末21から、通信網40を介して当該能動避難者端末21の位置を示す位置情報を取得し、これら位置情報に基づいて、能動避難者20の避難状況を示す避難状況情報を生成し、通信端末のうち端末データベースで区分されている受動避難者端末31,32に対して、生成した避難状況情報を配信するようにしたものである。
【0049】
[避難情報配信装置の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる避難情報配信装置10の構成について詳細に説明する。
この避難情報配信装置10には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、避難指示情報生成部13、位置情報取得部12、避難状況情報生成部14、記憶部15、端末データベース(以下、端末DBという)16、および情報配信部17が設けられており、内部バスを介して互いにデータやり取り可能に接続されている。
【0050】
通信I/F部11は、管理者端末50からの設定要求に応じて、記憶部15に予め登録されている避難情報設定画面データを管理者端末50へ提供する機能と、避難情報設定画面データに基づき入力された、避難情報の配信に関する配信設定内容を、管理者端末50から取得する機能とを有している。
【0051】
図8は、避難情報設定画面の構成例である。ここでは、HTTPに基づく各種操作シンボルを用いて記述されたWEB画面表示例が示されている。なお、この避難情報設定画面では、避難情報のうち避難指示情報と避難状況情報に関する設定内容を共通して入力する場合を例として説明するが、避難指示情報および避難状況情報のそれぞれについて個別の避難情報設定画面を用いてもよい。
【0052】
図8のうち、行動モニタ設定欄は、能動避難者端末21から位置情報を取得する取得タイミングを設定する欄であり、災害種別選択欄は、避難情報で通知する災害の種別を設定する欄である。また、発令種選択欄は、発令する避難情報の種別を設定する欄であり、配信エリア選択欄は、避難情報を配信する地区を選択する欄である。
【0053】
一方、発令内容設定欄は、避難情報で通知する発令内容を設定する欄である。このうち、発令時刻は、避難情報を配信する時刻を設定する欄であり、地図添付ボタンは、避難状況情報生成部14で生成された避難状況情報を添付するための操作ボタンであり、地図確認ボタンは、避難状況情報生成部14で生成された避難状況情報を画面表示して確認するための操作ボタンである。
【0054】
また、全文欄は、避難場所など、避難情報で通知する発令内容を示すテキストデータであり、保存ボタンは、設定内容を記憶部15へ保存するための操作ボタンであり、送信ボタンは、入力された設定内容に基づき避難情報を避難指示情報生成部13で生成し、発令時刻の到来に応じて情報配信部17から配信するための操作ボタンであり、クリアボタンは、設定内容を初期化するための操作ボタンである。また、送信結果欄は、発令時刻の到来に応じて配信した避難情報の配信結果を表示するための欄である。
【0055】
避難指示情報生成部13は、管理者端末50から入力された配信設定内容に基づいて、避難場所や避難日時など、災害避難に関する各種指示情報を含む避難指示情報を生成する機能を有している。
【0056】
位置情報取得部12は、管理者端末50から入力された配信設定内容に基づいて、位置情報の取得タイミングを計時する機能と、取得タイミングの到来に応じて、端末DB16に登録されている能動避難者端末21と通信網40を介してデータ通信を行うことにより、能動避難者端末21のGPS機能で得られた当該能動避難者端末21の位置情報、例えば緯度および経度を取得して記憶部15へ保存する機能を有している。
【0057】
避難状況情報生成部14は、能動避難者端末21から取得した位置情報に基づいて、当該能動避難者20が存在する位置の地図画像情報を地理情報システム51から取得する機能と、能動避難者端末21の位置の時系列変化を示す軌跡を地図上にプロットした地図画像を、能動避難者20の避難状況を示す避難状況情報として生成する機能とを有している。
図9は、避難状況情報の構成例である。ここでは、地理情報システム51に予め登録されている地図上に、能動避難者端末21の位置の時系列変化を示す軌跡が、能動避難者20の避難状況としてプロットされている。
【0058】
記憶部15は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、避難情報設定画面データや配信設定内容など、各機能部で用いる処理情報やプログラムを記憶する機能を有している。
【0059】
端末DB16は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、通信端末が、能動的な避難行動をとる能動避難者が携帯する能動避難者端末21、または受動的な避難行動をとる受動避難者が利用する受動避難者端末31,32のいずれかに区分して、それぞれの通信アドレスとともに登録する機能を有している。
図10は、端末DBの構成例である。ここでは、通信端末ごとに、当該通信端末を識別するためのID、当該通信端末の利用者の居住地区、当該通信端末の通信アドレス、および住所、氏名、電話番号、地域活動における役職名など、当該通信端末の利用者に関する本人情報が、それぞれ登録されている。
【0060】
情報配信部17は、管理者端末50から入力された配信設定内容に基づいて、避難指示情報生成部13で生成された避難指示情報を、端末DB16に登録されている受動避難者端末31,32へ、通信網40を介して配信する機能と、管理者端末50から入力された配信設定内容に基づいて、避難状況情報生成部14で新たな避難指示情報が生成されるごとに、端末DB16に登録されている受動避難者端末31,32へ、通信網40を介して配信する機能とを有している。
【0061】
これら機能部のうち、通信I/F部11、位置情報取得部12、避難指示情報生成部13、避難状況情報生成部14、および情報配信部17については、CPUでプログラムを実行することにより実現される。本実施の形態にかかる避難情報配信装置10は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
また、避難情報配信装置10には、これら機能部のほか、キーボード・マウスなどの操作入力装置やLCDなどの画面表示装置など、一般的なサーバ装置やパーソナルコンピュータが備える各種機能を備えている。
【0062】
[本実施の形態の動作]
次に、本実施の形態にかかる避難情報配信装置10の動作について説明する。
ここでは、集中豪雨による水害発生が予想されるため、行政機関が地域住民である避難者に対して、避難情報配信装置10から避難情報を配信する場合を例として説明する。
【0063】
避難情報の配信に関する避難情報配信装置10の動作は、行動モニタ設定動作、避難指示情報配信動作、避難状況情報配信開始動作、避難状況情報配信継続動作、および避難状況情報配信終了動作に大別される。
以下では、図面を参照して、これら動作を詳細に説明する。なお、管理者端末50での管理者操作に用いられる避難情報設定画面データは、これら動作において前述した図8が共用される場合を例として説明したが、それぞれの動作に固有の画面データを用いてもよい。
【0064】
[行動モニタ設定動作]
まず、図11を参照して、避難情報配信装置10の行動モニタ設定動作について説明する。図11は、行動モニタ設定動作を示すシーケンス図である。
避難情報配信装置10の通信I/F部11は、管理者端末50を介した管理者による行動モニタの設定要求に応じて、記憶部15に予め登録されている避難情報設定画面データを管理者端末50へ送信して画面表示する。この後、避難情報配信装置10は、管理者による管理者端末50での行動モニタ設定操作に応じて、図11の行動モニタ設定動作を実行する。
【0065】
まず、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、行動モニタ欄でモニタ間隔、すなわち位置情報の取得間隔を選択して開始ボタンを操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、これら行動モニタ設定操作が送信される。
【0066】
避難情報配信装置10の位置情報取得部12は、通信I/F部11により行動モニタ設定操作を受信した場合、タイマーを起動して指示されたモニタ間隔で行動モニタの実行タイミングおよび終了タイミングの計時を開始し(ステップ100)、初回のモニタ動作として、端末DB16に登録されている各能動避難者端末21と通信網40を介してデータ通信を行うことにより、これら能動避難者端末21の位置情報を取得する(ステップ101)。
【0067】
次に、避難情報配信装置10の避難状況情報生成部14は、位置情報取得部12で各能動避難者端末21から取得した位置情報に対して、それぞれの能動避難者のIDを付与し(ステップ102)、地理情報システム51へ送信する(ステップ103)。
地理情報システム51は、避難情報配信装置10からの位置情報を受信し、それぞれの位置情報と対応する地図上に、当該IDと紐付けた避難者位置をプロットして保存する(ステップ104)。この際、避難情報配信装置10は、最初の位置情報の受信を契機としてタイマーを起動して、タイマーのタイムアップに応じて、これら保存した地図情報の自動削除してもよい。
【0068】
[避難指示情報配信動作]
次に、図12を参照して、避難情報配信装置10の避難指示情報配信動作について説明する。図12は、避難指示情報配信動作を示すシーケンス図である。
避難情報配信装置10の通信I/F部11は、管理者端末50を介した管理者による避難指示情報の設定要求に応じて、記憶部15に予め登録されている避難情報設定画面データを管理者端末50へ送信して画面表示する。この後、避難情報配信装置10は、管理者による管理者端末50での避難指示情報設定操作に応じて、図12の避難指示情報配信動作を実行する。
【0069】
まず、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、災害種選択欄で災害種を選択操作し、発令種選択欄で発令種を選択操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、これら災害種選択操作および発令種選択操作が送信される。
避難指示情報生成部13は、通信I/F部11を介して管理者端末50から災害種選択操作および発令種選択操作を受信した場合、選択された災害種および発令種に応じたテキスト文を、記憶部15に予め登録されている各種テキストフォーマットから選択する(ステップ110)。
【0070】
続いて、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、配信エリア選択欄で配信地区を選択操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、配信地区選択操作が送信される。
避難指示情報生成部13は、通信I/F部11を介して管理者端末50から配信地区選択操作を受信した場合、選択された配信地区と対応する能動避難者端末21を端末DB16から検索し、検索した能動避難者端末21の通信アドレスを避難指示情報の配信先として選択する(ステップ111)。
【0071】
また、避難指示情報生成部13は、選択された配信地区に対応する配信地区名や避難場所を記憶部15から取得し、災害種および発令種に応じて選択したテキスト文に配信地区名や避難場所を追加して更新し、通信I/F部11から管理者端末50へ送信する(ステップ112)。
管理者端末50は、避難情報配信装置10から通知されたテキスト文で、避難情報設定画面のうち発令内容欄の全文欄の表示を更新する。
【0072】
続いて、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、発令内容欄で発令時刻を選択操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、発令時刻選択操作が送信される。
避難指示情報生成部13は、通信I/F部11を介して管理者端末50から発令時刻選択操作を受信した場合、選択された発令時刻をテキスト文に追加し、通信I/F部11から管理者端末50へ送信する(ステップ113)。
【0073】
管理者端末50は、避難情報配信装置10から通知されたテキスト文で、避難情報設定画面のうち発令内容欄の全文欄の表示を更新する。管理者は、更新された全文欄の内容を確認し、必要に応じて修正する。これにより、避難指示情報の内容が確定され、避難指示情報の生成が完了する。
【0074】
この後、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、発令内容欄の送信ボタンを操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、送信ボタン操作が送信される。
避難情報配信装置10の情報配信部17は、通信I/F部11を介して管理者端末50から送信ボタン操作を受信した場合、避難指示情報生成部13で生成された避難指示情報を、避難指示情報生成部13で選択された避難指示情報の配信先なる能動避難者端末21に対して、通信網40を介して送信する(ステップ114)。
【0075】
能動避難者端末21は、通信網40を介して避難情報配信装置10からの避難指示情報を受信し、画面表示部で避難指示情報を表示する(ステップ115)。
これにより、能動避難者は、避難指示情報を確認し、指示された避難場所への避難を開始する(ステップ116)。
【0076】
[避難状況情報配信開始動作]
次に、図13を参照して、避難情報配信装置10の避難状況情報配信開始動作について説明する。図13は、避難指示情報配信開始動作を示すシーケンス図である。
避難情報配信装置10の通信I/F部11は、管理者端末50を介した管理者による避難状況情報の設定要求に応じて、記憶部15に予め登録されている避難情報設定画面データを管理者端末50へ送信して画面表示する。この後、避難情報配信装置10は、管理者による管理者端末50での避難状況情報設定操作に応じて、図12の避難状況情報配信動作を実行する。
【0077】
まず、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、災害種選択欄で災害種を選択操作し、発令種選択欄で発令種を選択操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、これら災害種選択操作および発令種選択操作が送信される。
避難状況情報生成部14は、通信I/F部11を介して管理者端末50から災害種選択操作および発令種選択操作を受信した場合、選択された災害種および発令種に応じたテキスト文を、記憶部15に予め登録されている各種テキストフォーマットから選択する(ステップ120)。
【0078】
続いて、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、配信エリア選択欄で配信地区を選択操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、配信地区選択操作が送信される。
避難状況情報生成部14は、通信I/F部11を介して管理者端末50から配信地区選択操作を受信した場合、選択された配信地区と対応する受動避難者端末31,32を端末DB16から検索し、検索した受動避難者端末31,32の通信アドレスを避難指示情報の配信先として選択する(ステップ121)。
【0079】
また、避難状況情報生成部14は、選択された配信地区に対応する配信地区名や避難場所を記憶部15から取得し、災害種および発令種に応じて選択したテキスト文に配信地区名や避難場所を追加して更新し、通信I/F部11から管理者端末50へ送信する(ステップ122)。
管理者端末50は、避難情報配信装置10から通知されたテキスト文で、避難情報設定画面のうち発令内容欄の全文欄の表示を更新する。
【0080】
また、避難状況情報生成部14は、選択された配信地区を示す地区情報を地理情報システム51へ送信する(ステップ123)。
地理情報システム51は、保存した地図情報のうち、避難情報配信装置10から受信した地区情報に対応する地図情報を選択して画像化して地図画像を生成し(ステップ124)、避難情報配信装置10へ送信する(ステップ125)。
避難状況情報生成部14は、通信I/F部11を介して地理情報システム51から受信した地図画像を、電子メールと同様にテキスト文に添付する(ステップ126)。
【0081】
続いて、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、発令内容欄で発令時刻を選択操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、発令時刻選択操作が送信される。
避難状況情報生成部14は、通信I/F部11を介して管理者端末50から発令時刻選択操作を受信した場合、選択された発令時刻をテキスト文に追加し、通信I/F部11から管理者端末50へ送信する(ステップ127)。
【0082】
管理者端末50は、避難情報配信装置10から通知されたテキスト文で、避難情報設定画面のうち発令内容欄の全文欄の表示を更新する。管理者は、更新された全文欄の内容を確認し、必要に応じて修正する。これにより、避難状況情報の内容が確定され、避難状況情報の生成が完了する。
【0083】
この後、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、発令内容欄の送信ボタンを操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、送信ボタン操作が送信される。
避難状況情報生成部14は、通信I/F部11を介して管理者端末50から送信ボタン操作を受信した場合、生成した避難状況情報を配信地区と関連付けて記憶部15へ保存するとともに、この避難状況情報と配信先とを情報配信部17へ通知する。
これに応じて、情報配信部17は、その避難状況情報を配信先となる受動避難者端末31,32に対して、通信網40を介して送信する(ステップ128)。
【0084】
受動避難者端末31,32は、通信網40を介して避難情報配信装置10からの避難指示情報を受信し、画面表示部で避難状況情報を表示する(ステップ129)。
これにより、能動避難者は、避難状況情報で通知された能動避難者20の避難状況を確認し、指示された避難場所への避難を開始する(ステップ130)。
【0085】
[避難状況情報配信継続動作]
次に、図14を参照して、避難情報配信装置10の避難状況情報配信継続動作について説明する。図14は、避難指示情報配信継続動作を示すシーケンス図である。
避難情報配信装置10の位置情報取得部12および避難状況情報生成部14は、前述した行動モニタ設定動作で設定した行動モニタの実行タイミング到来に応じて、図14の避難状況情報配信継続動作を実行する。
【0086】
まず、位置情報取得部12は、端末DB16に登録されている各能動避難者端末21と通信網40を介してデータ通信を行うことにより、これら能動避難者端末21の位置情報を取得する(ステップ140)。
避難状況情報生成部14は、位置情報取得部12で各能動避難者端末21から取得した位置情報に対して、それぞれの能動避難者のIDを付与し(ステップ141)、地理情報システム51へ送信する(ステップ142)。
地理情報システム51は、避難情報配信装置10からの位置情報を受信し、前回保存した地図情報のうち、それぞれの位置情報と対応する地図情報上に、当該IDと紐付けた避難者位置をプロットして保存する(ステップ143)。これにより、能動避難者端末21の位置の時系列変化を示す軌跡がプロットされる。
【0087】
また、避難状況情報生成部14は、前述した避難状況情報配信開始動作で、避難状況情報を配信した各配信地区を示す地区情報を地理情報システム51へ送信する(ステップ144)。
地理情報システム51は、保存した地図情報のうち、避難情報配信装置10から受信した地区情報に対応する地図情報を選択して画像化して地図画像を生成し(ステップ145)、避難情報配信装置10へ送信する(ステップ146)。
避難状況情報生成部14は、通信I/F部11を介して地理情報システム51から受信した地図画像により、記憶部15に保存した当該配信地区の避難状況情報の地図画像に代えて、テキスト文に添付する(ステップ147)。これにより、避難状況情報の地図画像が更新され、避難状況情報の生成が完了する。
【0088】
この後、管理者は、管理者端末50において、表示された避難情報設定画面のうち、発令内容欄の送信ボタンを操作し、これに応じて、管理者端末50から避難情報配信装置10へ、送信ボタン操作が送信される。
避難状況情報生成部14は、通信I/F部11を介して管理者端末50から送信ボタン操作を受信した場合、生成した避難状況情報を配信地区と関連付けて記憶部15へ保存するとともに、この避難状況情報と配信先とを情報配信部17へ通知する。
これに応じて、情報配信部17は、その避難状況情報を配信先となる受動避難者端末31,32に対して、通信網40を介して送信する(ステップ148)。
【0089】
受動避難者端末31,32は、通信網40を介して避難情報配信装置10からの新たな避難指示情報を受信し、画面表示部で避難状況情報を表示する(ステップ149)。
これにより、能動避難者は、避難状況情報で通知された能動避難者20の新たな避難状況を確認し、指示された避難場所への避難を開始する(ステップ150)。
【0090】
[避難状況情報配信終了動作]
次に、図15を参照して、避難情報配信装置10の避難状況情報配信終了動作について説明する。図15は、避難指示情報配信終了動作を示すシーケンス図である。
避難情報配信装置10の位置情報取得部12および避難状況情報生成部14は、前述した行動モニタ設定動作で設定した行動モニタの終了タイミング到来に応じて、図15の避難状況情報配信終了動作を実行する。
【0091】
位置情報取得部12は、タイマーを停止して行動モニタの実行タイミングおよび終了タイミングの計時を終了する(ステップ160)。
また、避難状況情報生成部14は、地理情報システム51で保存している地図情報の削除指示を地理情報システム51へ送信する(ステップ161)。これにより、地理情報システム51は、保存している地図情報をすべて削除する(ステップ162)。
【0092】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、通信端末が、能動的な避難行動をとる能動避難者20が携帯する能動避難者端末21、または受動的な避難行動をとる受動避難者30が利用する受動避難者端末31,32のいずれかに区分して、それぞれの通信アドレスとともに端末DB16へ登録しておき、避難の際に、位置情報取得部12により、通信端末のうち端末DB16で区分されている能動避難者端末21から、通信網40を介して当該能動避難者端末21の位置を示す位置情報を取得し、避難状況情報生成部14により、これら位置情報に基づいて、能動避難者20の避難状況を示す避難状況情報を生成し、通信端末のうち端末DB16で区分されている受動避難者端末31,32に対して、生成した避難状況情報を配信するようにしたものである。
【0093】
この際、避難状況情報において、能動避難者20が極めて迅速に避難していることが確認できた場合には、災害の危険性が高いと能動避難者20が認識していることになり、能動避難者20があまり急ぐことなく避難していることが確認できた場合には、災害の危険性が低いと能動避難者20が認識していることになる。すなわち、避難状況情報には、能動避難者20の危険認識度が含まれている。
したがって、このような能動避難者20の避難状況を受動避難者30に対して配信することにより、誰かの避難行動を確認した後にはじめて避難しようとする受動避難者30、すなわち危機意識の低い住民に対して、避難の重要性や必要性を具体的に知らせることができる。このため、受動避難者の避難行動を強く促すことができるとともに、避難行動をスムーズに開始させることができ、住民全体の避難率を向上させることが可能となる。
【0094】
特に、能動避難者20としては、前述したように、地域住民が日頃より信頼している、例えば自治会長・消防団長・班長など、災害時に率先して能動的に避難行動を行う、地域のリーダー的存在の人が選ばれる。このため、受動避難者30は、これら信頼のおける人が避難を開始していることが、避難状況情報により知らさせることになる。
したがって、受動避難者にとって安心感が得られる避難情報を提供することができることから、受動避難者の避難行動を強く促すことができる。
【0095】
また、本実施の形態では、避難状況情報生成部14で、位置情報取得部12により時系列で取得した位置情報、または能動避難者端末21の位置の時系列変化を示す位置情報に基づいて、能動避難者端末21の位置の時系列変化を含む避難状況情報を生成するようにしたので、さらには、能動避難者端末21の位置の時系列変化を示す軌跡を地図上にプロットした地図画像からなる避難状況情報を生成するようにしたので、能動避難者20の避難状況を極めて的確に受動避難者30へ通知することができる。
【0096】
また、本実施の形態では、位置情報取得部12で、能動避難者端末21から新たな位置情報を逐次取得し、情報配信部17により、避難状況情報生成部14で新たな位置情報から生成された避難状況情報を、受動避難者端末31,32に対して順次配信するようにしたので、能動避難者20は、最新の避難状況情報を順次確認するとこができる。
【0097】
また、本実施の形態では、位置情報の取得開始または避難状況情報の配信開始から所定の配信期間経過後、位置情報の取得および避難状況情報の配信を停止するようにしたので、災害発生からある程度時間が経過して、避難状況情報が不要となった時点で、避難状況情報の配信を自動的に停止することができる。特に、避難状況情報には、能動避難者20の個人情報に近い位置情報を含むことから、不要な情報の公開を回避できる。
【0098】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0099】
また、本実施の形態では、避難情報配信装置10に外部接続された地理情報システム51により、避難状況情報を示す地図画像を生成する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、避難情報配信装置10の記憶部15に、配信対象となる地区の地図情報を登録しておき、避難状況情報生成部14で、この地図上に能動避難者端末21の位置をプロットした地図画像を生成するようにしてもよい。
【0100】
また、本実施の形態では、避難状況情報として地図画像を用いた場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、避難情報配信装置10の記憶部15に、位置情報とその地点名の組を登録しておき、位置情報取得部12で取得した能動避難者端末21の位置情報を地点名に変換したものを避難状況情報として用いてもよい。
【0101】
また、本実施の形態では、避難状況情報として能動避難者端末21の時系列変化を示す軌跡を用いる場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、能動避難者端末21に関する最新の位置のみを避難状況情報として用いてもよい。
【0102】
また、本実施の形態では、位置情報取得部12で、能動避難者端末21から一定間隔ごとに位置情報を取得して、地理情報システム51で能動避難者20の移動した軌跡を地図上にプロットする場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、能動避難者端末21で一定間隔ごとに検出した複数の位置情報から、能動避難者20の移動した軌跡を示す軌跡情報を生成しておき、位置情報取得部12で、この軌跡情報を取得して地理情報システム51で地図上にプロットしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10…避難情報配信装置、11…通信I/F部、12…位置情報取得部、13…避難指示情報生成部、14…避難状況情報生成部、15…記憶部、16…端末DB、17…情報配信部、20…能動避難者、21…能動避難者端末、30…受動避難者、31,32…受動避難者端末、40…通信網、50…管理者端末、51…地理情報システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害時の避難に関する避難情報を、通信網を介して複数の避難者の通信端末へ配信する避難情報配信装置であって、
前記通信端末が、能動的な避難行動をとる能動避難者が携帯する能動避難者端末、または受動的な避難行動をとる受動避難者が利用する受動避難者端末のいずれかに区分されて、それぞれの通信アドレスとともに登録されている端末データベースと、
前記避難の際に、前記通信端末のうち前記端末データベースで区分されている前記能動避難者端末から、前記通信網を介して当該能動避難者端末の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部で取得した前記位置情報に基づいて、前記能動避難者の避難状況を示す避難状況情報を生成する避難状況情報生成部と、
前記通信端末のうち前記端末データベースで区分されている前記受動避難者端末に対して、前記避難状況情報生成部で生成された前記避難状況情報を配信する情報配信部と
を備えることを特徴とする避難情報配信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の避難情報配信装置において、
前記避難状況情報生成部は、前記位置情報取得部により時系列で取得した前記位置情報、または前記能動避難者端末の位置の時系列変化を示す前記位置情報に基づいて、前記能動避難者端末の位置の時系列変化を含む前記避難状況情報を生成することを特徴とする避難情報配信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の避難情報配信装置において、
前記避難状況情報は、前記能動避難者端末の位置の時系列変化を示す軌跡を地図上にプロットした地図画像からなることを特徴とする避難情報配信装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の避難情報配信装置において、
前記位置情報取得部は、前記能動避難者端末から新たな位置情報を逐次取得し、
前記情報配信部は、前記避難状況情報生成部で前記新たな位置情報から生成された前記避難状況情報を、前記受動避難者端末に対して順次配信することを特徴とする避難情報配信装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の避難情報配信装置において、
前記情報配信部は、前記位置情報の取得開始または前記避難状況情報の配信開始から所定の配信期間経過後、前記位置情報の取得および前記避難状況情報の配信を停止することを特徴とする避難情報配信装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の避難情報配信装置を構成する各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−237917(P2011−237917A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107235(P2010−107235)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】