説明

避難誘導システムと避難誘導標識

【課題】地下街や商業ビルなど多数の施設利用者が自由に出入りする施設において、災害情報と、災害情報との関係で決定されるべき最適の避難ルートとを報知して、不特定多数の施設利用者を安全にしかも適確に非常口まで避難誘導できるシステムを提供する。
【解決手段】施設内の多数個所に設置される避難誘導標識1に、2次元コード等の固有情報記録媒体12を設けておき、災害発生時に施設利用者が最寄りの避難誘導標識1の2次元コード12を携帯電話4で読み込むことにより、施設利用者の現在位置を避難管理サーバー3に自動送信できるようにする。位置情報を受け取った避難管理サーバー3は、報知機2から送られた災害発生場所情報と、個々の避難誘導標識1の位置情報と、施設に設けた非常口の位置情報などから最適の避難ルートを判定し、受信した送信手段4に対して災害発生場所や災害内容などの災害情報と、最適の避難ルート情報とを返信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業ビル、ホテル、地下街などに適用されて、火災などの災害発生時に施設利用者を非常口まで避難誘導するための避難誘導システムと、避難誘導システムに適用される避難誘導標識とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の避難誘導標識では、非常時に点灯される非常灯の前面パネルに避難誘導表示を表示してある。避難誘導表示は、非常口の位置や方向を示す方向表示(矢印)と、非常口あるいは避難口と表記される文字表示と、現在の場所から非常口までの距離を示す距離表示などがある。本発明では、方向表示、文字表示などを蓄光材で表示するが、避難誘導表示を蓄光材で形成することは特許文献2に公知である。そこでは、廊下などの床面に、避難すべき方向を示す矢羽状の方向表示を繰り返し形成し、さらに現在場所から非常口までの距離を示す距離表示を一定間隔置きに形成している。
【0003】
携帯電話を利用して避難誘導を行うことは、例えば特許文献3に公知である。この避難誘導システムでは、携帯電話を持つ施設利用者が建物や会場へ入場するとき、携帯電話の電話番号やメールアドレスなどの宛先情報をサーバーに登録しておき、災害発生時に災害の内容、発生場所、最適の避難ルートや避難場所などの情報をサーバー側から携帯電話に送信して、避難行動を的確にしかも安全に行えるようにしている。怪我や建物の倒壊などで動けなくなった施設利用者がサーバーに電話をかけてその場所を特定することにより、救助活動を迅速化することもできる。視覚障害者や聴覚障害者に対して、音声で避難誘導をし、あるいは文字やイメージ表示で避難誘導をすることもできる。
【0004】
【特許文献1】実開昭52−92684号公報(第2頁11〜20行、第1図)
【特許文献2】特開平9−108368号公報(段落番号14〜19、図2)
【特許文献3】特開2003−345999号公報(段落番号0074、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
避難誘導表示を蓄光材で形成した特許文献2の避難誘導標識によれば、停電と同時に避難誘導表示が自己発光するので、非常口の位置や方向、あるいは非常口までの距離などを知ることができる。しかし、この種の避難誘導表示は、任意の場所における最寄りの非常口の情報などを固定的に表示しているに過ぎない。例えば、災害の内容や発生場所、あるいは最適な避難ルートなど、避難を行うのに重要な情報までは得ることができない。
【0006】
そのため、最適な避難ルートを的確に判断できないのはもちろんのこと、最悪の場合には、避難誘導表示に従って災害発生場所へ向かって避難する可能性もあり得る。施設の構造によっては、特定の非常口に施設利用者が殺到して混乱を招いたり、あるいは事故を誘発するおそれがある。例えば、地下街などにおいて、構築物の一部が倒壊するなどで避難移動が不可能になった場合に、自分が地下街のどの位置にいるかを知るすらできない。特許文献1の避難誘導標識にも同様の問題点がある。
【0007】
特許文献3の避難誘導システムによれば、災害の内容や発生場所、あるいは最適な避難ルートなどを個々の施設利用者に携帯電話で知らせることができる。しかし、この避難誘導システムは、コンサートホールやサッカースタジアムなど、個々の施設利用者が定められたシートに座るであろうことを前提にして、その場所からの最適な避難ルートを報知できるに過ぎない。そのため、スタジアム内の別の場所に移動した施設利用者に対しては、適切な避難誘導を行うことができない。さらに、管理サーバーに対して予め携帯電話の登録やシート位置の登録を行う必要があるため、入場手続きが煩雑になる。当然、地下街や商業ビルなど多数の人間が自由に出入りする施設には対応できない。
【0008】
本発明の目的は、地下街や商業ビルなど多数の施設利用者が自由に出入りする施設において、災害発生の内容や場所などの災害情報を個々の施設利用者に報知でき、災害情報との関係で最適の避難ルートを施設利用者に報知し、安全にしかも的確に非常口まで避難誘導できる避難誘導システムを提供することにある。本発明の目的は、上記の避難誘導システムに好適な避難誘導標識を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の避難誘導システムは、それぞれ施設内の多数個所に設置される、避難誘導標識1、および災害発生場所を通報する報知機2と、報知機2から送られた災害発生場所情報と、個々の避難誘導標識1の位置情報と、施設に設けられた非常口の位置情報などから最適の避難ルートを判定し、判定結果を不特定多数の施設利用者に送って避難誘導する避難管理サーバー3とを含む。避難誘導標識1には、それぞれ蓄光材で構成された避難誘導表示9および位置表示11と、固有情報記録媒体12とが設けられている。固有情報記録媒体12には、施設内における避難誘導標識1の位置情報と、避難管理サーバー3の宛先情報などを含む固有情報とが記録されている。以て、固有情報記録媒体12に記録された固有情報は、施設利用者が携行する送信手段4で避難管理サーバー3へ送信することにより、避難管理サーバー3が、受信した送信手段4に対して災害発生場所および災害の内容などの災害情報と、最適の避難ルート情報とを返信して、不特定多数の施設利用者を非常口まで避難誘導することを特徴とする。送信手段4としては、携帯電話、専用のトランシーバー、あるいは携帯電話と同様の送受信機能を備えた通信機などがある。
【0010】
上記の固有情報記録媒体には、避難誘導標識1の表面に設けられた2次元コード12を用いることができ、この2次元コード12には、施設内における避難誘導標識1の位置データと、位置データを避難管理サーバー3に送るための宛先データなどの固有情報とが記録されている。送信手段としては、2次元コード12を読み込むカメラ付きの携帯電話4を用いることができ、この携帯電話4には、2次元コード12から読み込んだ固有情報を避難管理サーバー3へ自動送信するためのプログラムが組み込んである。
【0011】
固有情報記録媒体には、避難誘導標識1に設けられたICタグ12を用いることができ、このICタグ12には、施設内における避難誘導標識1の位置データと、位置データを避難管理サーバー3に送るための宛先データなどの固有情報とが記録されている。その場合の送信手段としては、ICタグ12のデータを読み込むリーダー付きの携帯電話4を用い、この携帯電話4には、ICタグ12から読み込んだ固有情報を避難管理サーバー3へ自動送信するためのプログラムを組み込んでおくことができる。ICタグ12とは、無線ICタグ(Radio Frequency Identification、RFID)を意味し、パッシブタグとアクティブタグのどちらであってもよい。タグ形状は、円板形、円筒形、ラベル形,カード形、箱形のいずれであってもよい。
【0012】
また、本発明に係る避難誘導標識は、施設内の多数個所に設置される避難誘導標識1が、枠体7と、枠体7で囲まれる標識表面に配置される避難誘導表示9および位置表示11と、固有情報記録媒体12とを含む。避難誘導表示9および位置表示11は、それぞれ自己発光可能な蓄光材で形成する。位置表示11は、施設内における避難誘導標識1の固有位置を意味する位置コードとして表示しておく。固有情報記録媒体12には、先の位置表示で特定される避難誘導標識1の位置情報と、避難管理サーバー3の宛先情報などを含む固有情報とが記録されていることを特徴とする。固有情報記録媒体12としては、2次元コードとICタグのいずれか、あるいは両者を適用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の避難誘導システムでは、施設内の多数個所に設置される避難誘導標識1に2次元コード等の固有情報記録媒体12を設けておき、災害発生時に施設利用者が最寄りの避難誘導標識1の固有情報記録媒体12を送信手段(携帯電話)4で読み込むことにより、施設利用者の現在位置を避難管理サーバー3に自動送信できるようにした。位置情報を受け取った避難管理サーバー3は、報知機2から送られた災害発生場所情報と、個々の避難誘導標識1の位置情報と、施設内に設けた非常口の位置情報などから最適の避難ルートを判定し、受信した送信手段4に対して災害発生場所および災害の内容などの災害情報と、最適の避難ルート情報とを返信する。
【0014】
したがって、本発明の避難誘導システムによれば、地下街や商業ビルなど多数の施設利用者が自由に出入りする施設において、災害発生の内容や場所などの災害情報を個々の施設利用者に報知できるし、災害情報との関係で最適の避難ルートを不特定多数の施設利用者に報知して、安全にしかも適確に非常口まで避難誘導できる。
【0015】
固有情報記録媒体が避難誘導標識1の表面に設けられた2次元コード12であり、送信手段が2次元コード12を読み込むカメラ付きの携帯電話4からなる避難誘導システムによれば、広く普及しているカメラ付きの携帯電話4を利用して避難誘導を行えるので、施設に入場した不特定多数の施設利用者を、任意位置から最寄りの非常口まで効果的に避難誘導できる。加えて、特定の非常口に施設利用者が殺到するなどの混乱を防止できる。広く普及しているカメラ付きの携帯電話4を利用するので、広大な施設において避難誘導システムを導入するためのコストを大幅に削減できる。施設に入場する際に、電話番号やメールアドレスを登録する煩わしさもない。
【0016】
固有情報記録媒体が避難誘導標識1に設けられたICタグ12であり、送信手段がICタグ12のデータを読み込むリーダー付きの携帯電話4からなる避難誘導システムによれば、携帯電話4をICタグ12にかざすだけで、ICタグ12に記録された固有情報を携帯電話4に取り込んで避難管理サーバー3へ自動送信できるので、施設内の照明器具が消灯した状態においても、ライターなどでICタグ12の位置を確認しながら支障なく固有情報を携帯電話4に取り込め、避難行動を起こすのが遅れた施設利用者であっても安全にしかも的確に避難できる。
【0017】
本発明の避難誘導標識によれば、避難誘導表示9および位置表示11を自己発光が可能な蓄光材で形成したので、停電や、非常電源装置の停止によって照明機器が消灯した状態であっても、施設利用者を避難誘導できるし、固有情報記録媒体12の固有情報を読み込んで、避難管理サーバー3と送受信することにより、施設内の現在位置を知って避難すべき非常口までの最適な避難ルートを知ることができる。位置表示11で特定される施設内における現在位置を消防や警察に通報することにより、救助活動を効果的にしかも迅速に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施例) 図1ないし図3は本発明に係る避難誘導システムの実施例を示す。図1において避難誘導システムは、それぞれ施設内の多数個所に設置される避難誘導標識1と、災害発生場所を避難管理サーバー3に対して自動通報する報知機2と、施設の一画に配置される避難管理サーバー3と、施設に入場した不特定多数の施設利用者が携行する携帯電話(送信手段)4とを含む。
【0019】
図2において避難誘導標識1は、アルミニウム条材、あるいは強化樹脂製の条材を四角枠状に組んで構成される枠体7と、枠体7に装着固定される透明のパネル8と、パネル表面の大半を占める状態で配置される横長の避難誘導表示9と、パネル表面の下部左側に配置される広告表示10と、広告表示10の右隣に配置される位置表示11と、広告表示10と位置表示11との間に配置される2次元コード(固有情報記録媒体)12などで構成する。
【0020】
避難誘導表示9、広告表示10、位置表示11の三者は、それぞれ蓄光材で形成してあって、施設の照明器具が消灯するのと同時に点描部分が自己発光する。各表示9〜11は、パネル8の内面に蓄光塗料を図例のようなパターンで直接印刷して形成する。ベースシートの片面に蓄光塗料を印刷したうえで、ベースシートをパネル8に貼付けて形成することもできる。場合によっては、市販品を利用して形成することができる。例えば市販の高輝度蓄光式標識陶板(大塚オーミ陶業社製、商品名セライト)や、プラスチックシートに避難表示が印刷してある高輝度蓄光表示ユニット(ターンオン社製)などをパネル8に貼り付けて形成することができる。
【0021】
避難誘導表示9は、非常口であることを示す表示パターンと、非常口の方向を示す表示パターンと、あるいは単に避難すべき方向を示す表示パターンのいずれであってもよい。広告表示10は商品名、会社名、施設名、あるいは啓蒙すべき標語などの文字列からなる。災害発生時の携帯電話4の使い方を表示する説明文であってもよい。
【0022】
位置表示11は、施設内における避難誘導標識1の設置場所を意味する文字表示からなり、例えば、図2に示すように避難誘導標識1の設置ゾーンを意味するアルファベット記号と、設置ゾーン内の何番目の避難誘導標識1かを意味するアラビア数字記号とでコード化しておく。このコードと、施設に設けられた非常口の位置コードとは、それぞれ避難管理サーバー3で管理されるデータベースに予め登録しておく。同様に、施設の通路構造や、災害発生場所を通報する報知機2の位置コードなどもデータベースに予め登録しておく。
【0023】
2次元コード12はパネル8の内面に直接印刷して形成してあり、そこには先の位置表示11で特定される避難誘導標識1の位置情報と、避難管理サーバー3に対する宛先情報などを含む情報とが記録してある。さらに、避難誘導標識1が設置してあるフロアの通路構造や、非常口の配置位置を意味する情報などが付加してあってもよい。2次元コード12としては、QRコード、PDF417、データマトリクス、マキシコードなどを適用できる。図例の2次元コード12はQRコードである。2次元コード12は、避難誘導表示9や位置表示11の、表示領域内の発光部分に配置することができる。
【0024】
報知機2は、例えば煙感知機やスプリンクラーの作動に連動して、あるいは火災報知機の報知ボタンがオン操作されるのに連動して、災害発生場所を避難管理サーバー3に対して自動通報する。第三者からの電話などによる災害発生の通報を受けた管理者が、避難管理サーバー3に災害発生場所や災害の内容を入力することもできる。災害内容の多くは火災であるが、ガス洩れ、水漏れ、犯罪、あるいは事故など、緊急避難をすべき状況の全てを含む。
【0025】
避難管理サーバー3は、報知機2などから送られて来た報知情報から、災害の内容と災害発生の場所を基準にして、個々の避難誘導標識1の位置と、施設に設けられた非常口の位置とを対照し、個々の避難誘導標識1を起点とし、非常口に至るまでの最適の避難ルートを判定する。この判定は、災害の広がりや副次的な災害の発生に応じて繰り返し行って、常に内容を更新することになるであろう。避難管理サーバー3で特定された災害の内容は、施設内の放送設備13で一斉に報知して、施設利用者に最寄りの避難誘導標識1へ向かって避難移動し、さらに避難誘導標識1に設けられた2次元コード12を携帯電話4に読み込むよう勧告する。
【0026】
携帯電話4には、2次元コード12を読み込むためのカメラと、カメラで読み込んだコード情報を解釈し、宛先情報に基づいて位置データと、携帯電話4の電話番号やメールアドレスなどの固有情報を避難管理サーバー3へ自動的に送信するプログラムとが組み込んである。このプログラムは、予め携帯電話4に組み込んでおくことが好ましいが、施設内において随時ダウンロードできるようにしてあってもよい。
【0027】
災害発生時には、図3に示すように施設利用者は、放送設備13の勧告に従って最寄りの避難誘導標識1へ行き、避難誘導標識1に設けた2次元コード12を携帯電話4で読み込む。これにより、避難誘導標識1の位置情報(施設利用者の現在位置)と、送信してきた携帯電話4の電話番号やメールアドレスなどが避難管理サーバー3へ自動送信される。
【0028】
位置情報などを受信した避難管理サーバー3は、個々の避難誘導標識1を起点とする最寄の非常口に至る最適の避難ルート情報(基本ルート)と、災害の場所および内容などの災害情報を、送信してきた携帯電話4に返信する。返信される情報は、電子メールによる文字情報を主とするが、視覚障害者のために音声情報を送ってもよい。電子メールによるイメージ情報であってもよい。聴覚障害者は、避難管理サーバー3から返信された電子メールによる文字情報から、避難ルート情報や災害情報等を知ることができる。
【0029】
上記のように施設利用者は、避難管理サーバー3から返信された災害情報からその場所や災害の内容を知ることができ、さらに最適の避難ルートに従って非常口まで移動できるので、安全にしかも適確に避難移動できる。
【0030】
避難ルートが長い場合には、非常口にたどり着くまでに状況が変化しているおそれがある。例えば、災害の広がりや副次的な災害の発生で、避難ルートが遮断されたり、あるいは避難ルートが危険な状態になっていることがあり得る。このような場合には、再度、最寄りの避難誘導標識1へ行って2次元コード12を携帯電話4で読み込み、避難管理サーバー3に対して送受信を行って、更新された最適の避難ルート情報を受信する。
【0031】
このとき、遮断された避難ルートの災害状況が避難管理サーバー3に報知されていれば、新たな避難ルートを施設利用者に報知する。しかし、そうでない場合には、複数回受信した電話番号を認識して(1<n?)、新たに送られてきた位置情報と前回の最適の避難ルート情報とから、新たに送られてきた位置情報と非常口との間に何らかの障害があるかも知れないことを判定できる。
【0032】
この判定結果は、任意の避難誘導標識1から非常口までの最適の避難ルートを判定するうえで、とりあえず参考情報として反映され、前回の避難ルートで決定された非常口とは異なる非常口への避難ルート(変則ルート)を選定し、送信してきた携帯電話4に返信する。
【0033】
また、別の場所からの携帯電話4の送信を受けた避難管理サーバー3は、同程度の最適の避難ルートが複数ある場合には、何らかの障害があるかも知れない問題個所を避けて最適の避難ルートを選定する。その後に、例えば問題個所の近傍に設けられたスプリンクラーの作動に伴って新たな災害情報を受け、先の障害を確認できた場合には、先の参考情報を災害現場の真の情報として取り扱うことで、危険な個所を確実に避けて避難ルートを最適化できる。
【0034】
施設利用者が、怪我や建物の崩壊等で避難できなくなった場合には、消防もしくは警察へ電話をかけ、避難誘導標識1の位置表示11を通知して救助を要請することができる。さらに、負傷者の有無や人数などの災害状況の詳細を通報することにより、災害救助を迅速にしかも効果的に行える。
【0035】
本発明の避難誘導システムによれば、携帯電話4を携行する施設利用者が、施設内の避難誘導標識1に設けた2次元コード12を携帯電話4に読み込むだけで、災害発生の内容や場所などの災害情報を避難管理サーバー3から施設利用者に報知できるうえ、災害情報との関係で決定される最適の避難ルートを施設利用者に報知して、安全にしかも的確に非常口まで避難誘導できる。しかも、避難誘導標識1に設けた2次元コード12によって施設利用者の現在位置を特定できるので、多数の施設利用者が自由に出入りする地下街や商業ビルなどの施設であっても、不特定多数の施設利用者を適確に避難誘導できる。
【0036】
地下街などでは、現在位置が施設内のどの部分であるかを判断しにくいが、災害が発生していない場合に限って、施設利用者の現在位置を特定することを目的として避難誘導システムを利用することができる。その場合には、施設の通路配置や施設の出入口、2次元コード12を読み込んだ避難誘導標識1の設置位置などのイメージデータを携帯電話4に送信して、施設利用者に現在位置を報知することができる。
【0037】
先に説明したように、地下街などでは通路が錯綜し、方位を把握するのが難しいうえ、施設内のどの部分にいるのかを明確に知るのが難しい。こうした場合に対応するために、地下街の全ての店舗の店頭に小形の避難誘導標識1を設置することができる。その場合には、避難誘導標識1の位置表示11から、現在位置が地下街のどの部分であるかを知ることができるので、目的とする場所へ無駄なく移動できるし、災害発生時に閉じ込められてしまっても、位置表示11を通報することにより効果的に救助作業を行える。
【0038】
上記の実施例では、固有情報記録媒体として2次元コードを用いたが、ICタグ12を固有情報記録媒体として用いてもよい。その場合には、携帯電話4に、ICタグ12に記録された情報を読み込むためのリーダーを組み込んでおく。この場合には、ICタグ12の装着部分の周りを蓄光材で形成したガイド表示で囲んで、携帯電話4をかざすべき位置を表示することにより、停電状態であっても携帯電話4による固有情報の読み込みを的確に行える。なお、避難誘導標識1に災害発生と同時に音声や振動を発生する発振装置を設けておくと、視覚障害者を避難誘導標識1の設置位置まで誘導して、ICタグ12に記録された情報を携帯電話4で確実に読み取ることができるであろう。
【0039】
固有情報記録媒体12としては、避難誘導標識1に2次元コードとICタグとの少なくともいずれか一方が設けてあればよいが、2次元コードとICタグの両者を設けておけば、リーダー付きの携帯電話4と、カメラ付きの携帯電話4のいずれにも対応できる点で有利である。この発明における固有情報記録媒体12としては、バーコードを含む。上記の実施例における避難誘導標識1の広告表示10は省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】避難誘導システムの概念図である。
【図2】避難誘導標識の正面図である。
【図3】避難誘導システムの運用例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
1 避難誘導標識
2 報知機
3 避難管理サーバー
9 避難誘導表示
11 位置表示
12 固有情報記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ施設内の多数個所に設置される、避難誘導標識(1)、および災害発生場所を通報する報知機(2)と、
報知機(2)から送られた災害発生場所情報と、個々の避難誘導標識(1)の位置情報と、施設に設けられた非常口の位置情報などから最適の避難ルートを判定し、判定結果を不特定多数の施設利用者に送って避難誘導する避難管理サーバー(3)とを含み、
避難誘導標識(1)には、それぞれ蓄光材で構成された避難誘導表示(9)および位置表示(11)と、固有情報記録媒体(12)とが設けられており、
固有情報記録媒体(12)には、施設内における避難誘導標識(1)の位置情報と、避難管理サーバー(3)の宛先情報などを含む固有情報とが記録されており、
固有情報記録媒体(12)に記録された固有情報を、施設利用者が携行する送信手段(4)で避難管理サーバー(3)へ送信することにより、避難管理サーバー(3)が、受信した送信手段(4)に対して災害発生場所および災害の内容などの災害情報と、最適の避難ルート情報とを返信して、不特定多数の施設利用者を非常口まで避難誘導することを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
固有情報記録媒体が、避難誘導標識(1)の表面に設けられた2次元コード(12)であり、
2次元コード(12)には、施設内における避難誘導標識(1)の位置データと、位置データを避難管理サーバー(3)に送るための宛先データなどの固有情報が記録されており、
送信手段が2次元コード(12)を読み込むカメラ付きの携帯電話(4)からなり、
携帯電話(4)に、2次元コード(12)から読み込んだ固有情報を避難管理サーバー(3)へ自動送信するためのプログラムが組み込んである請求項1記載の避難誘導システム。
【請求項3】
固有情報記録媒体が、避難誘導標識(1)に設けられたICタグ(12)であり、
ICタグ(12)には、施設内における避難誘導標識(1)の位置データと、位置データを避難管理サーバー(3)に送るための宛先データなどの固有情報とが記録されており、
送信手段がICタグ(12)のデータを読み込むリーダー付きの携帯電話(4)であり、
携帯電話(4)に、ICタグ(12)から読み込んだ固有情報を避難管理サーバー(3)へ自動送信するためのプログラムが組み込んである請求項1記載の避難誘導システム。
【請求項4】
施設内の多数個所に設置される避難誘導標識(1)が、枠体(7)と、枠体(7)で囲まれる標識表面に配置される避難誘導表示(9)および位置表示(11)と、固有情報記録媒体(12)とを含み、
避難誘導表示(9)および位置表示(11)が、それぞれ自己発光可能な蓄光材で形成されており、
位置表示(11)は、施設内における避難誘導標識(1)の固有位置を意味する位置コードとして表示されており、
固有情報記録媒体(12)に、先の位置表示で特定される避難誘導標識(1)の位置情報と、避難管理サーバー(3)の宛先情報などを含む固有情報とが記録してある避難誘導標識。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−34671(P2007−34671A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216952(P2005−216952)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000181572)篠原電機株式会社 (18)
【出願人】(505282905)
【出願人】(505284208)
【出願人】(505284091)
【Fターム(参考)】