説明

避難誘導システム及び避難誘導方法

【課題】避難場所まで誘導する避難ルートを適切に変更できる避難誘導システムを提供することにある。
【解決手段】避難場所までの避難ルートを示す地図情報100Gを端末10に提供する避難誘導システムが開示されている。システムのサーバ11は、端末10の移動を監視することにより、通行不可能な場所が発生しているなどの不都合な状況に応じて、避難ルートを変更する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には無線通信機能を備えた携帯端末を使用する避難誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害発生時に、GPS(Global Positioning Systems)機能を有する携帯電話を利用した避難誘導システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このシステムは、住民のGPS対応の携帯電話からの位置情報に基づいて、現在地から避難場所までの避難経路を、当該携帯電話のディスプレイ上に表示できるように提供する。
【0003】
また、GPS機能による位置情報を利用して、車両の現在位置から目的地までのルートを提示する車両用ナビゲーションが開発されている。この車両用ナビゲーションを利用して、車両などの移動体の位置情報を蓄積して、移動体の活動状況などの動向を解析するシステムが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2003−44969号公報
【特許文献2】特開2000−46856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような避難誘導システムがあれば、住民は、携帯電話のディスプレイ上に表示された避難経路を見ながら、迅速に指定された避難場所まで避難することができる。
【0005】
ところで、システム上で設定された避難経路の中には、例えば道路工事などにより通行不可能な場所(道路や空地)が存在する可能性がある。このような場合には、住民は、誘導されている経路では通行できないため、引き返したり、遠回りすることになり、避難が遅れるなどの支障がある。
【0006】
このような不都合を解消するには、システム側において、誘導するための避難経路を更新する必要があるが、実際上では、更新するタイミングなども含めて容易ではない。例えば、当該避難誘導システムと、前述したような移動体の位置情報を蓄積して、移動体の活動状況などの動向を解析するシステムとを組み合わせて、避難が遅れそうな住民の動向を解析して、リアルタイムで最適な避難経路を提供できるシステムが望ましいが、実現は容易ではない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、避難場所まで誘導する避難ルートを適切に変更できる避難誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の観点は、避難場所までの避難ルートを示す地図情報を端末に提供するシステムにおいて、当該端末の移動を監視することにより、当該避難ルートでは通行不可能な場所が発生しているなどの不都合な状況に応じて、避難ルートを変更する機能を含む避難誘導システムである。
【0009】
本発明の観点に従った避難誘導システムは、無線通信機能を有する端末から送信されて、当該端末の現在位置を示す位置情報を受信する受信手段と、前記位置情報に基づいて、前記端末の現在位置から避難場所までの避難ルートを決定する手段と、前記避難ルートを示す情報を含む地図情報を生成する手段と、前記地図情報を前記端末に送信する手段と、前記端末の移動に基づいて前記避難ルートの適否を判定し、前記避難ルートが不適切である場合に前記避難ルートを変更する変更手段とを備えた構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の避難誘導システムであれば、端末に提供した避難ルートが不適切であると判定した場合に、当該避難ルートを自動的に変更できる避難誘導システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(システム構成)
図1は、本実施形態に関する避難誘導システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
本システムは、図1に示すように、無線通信機能を有する端末10と、サーバ11と、データベース12と、無線基地局30とを有する。端末10は、例えば携帯電話であり、いわゆるGPS機能及びWebブラウザ機能などを有し、GPS衛星20からの電波に基づいて現在位置を示す位置情報100Pを生成して送信する。また、端末10は、後述するサーバ11から提供される地図情報(GIS情報)100Gを、ディスプレイ10A上に表示するための表示装置を内蔵している。
【0014】
サーバ11は、無線基地局30を経由して端末10と無線通信を行なう無線通信機能を有し、当該無線通信により地図情報100Gを端末10に送信し、かつ端末10からの位置情報100Pを受信する。
【0015】
サーバ11は、予め用意されたソフトウェア及びデータベース12に蓄積された情報を使用して、後述する避難誘導処理を実行する。データベース12は、避難誘導に必要な地図情報や、端末10から送信された位置情報などを蓄積する。
【0016】
(避難誘導処理)
以下図1と共に、図2及び図3のフローチャートを参照して、本実施形態に関する避難誘導処理を説明する。
【0017】
まず、概略的には、災害発生時に、住民は携帯している端末(携帯電話)10から避難場所の問い合わせを、無線通信によりサーバ11に対して行なう。ここで、サーバ11は、例えば地方公共団体などが管理しているシステムセンターのコンピュータシステムに相当する。サーバ11は、問い合わせ(アクセス)のあった端末10に対して、予め設定されている避難場所までの避難ルートを提供する。
【0018】
住民は、当該サーバ11から提供された避難ルートを端末10のディスプレイ10A上で確認しながら、指定された避難場所まで移動する。
【0019】
以下、サーバ11の処理手順について、図3のフローチャートを参照して具体的に説明する。
【0020】
サーバ11は、端末10からのアクセスを受けると、当該端末10から送信される位置情報100Pを無線通信により受信する(ステップS1)。サーバ11は、当該位置情報100Pに基づいて端末10の現在位置を認識する。さらに、サーバ11は、データベース12に格納された情報(地図情報や指定の避難場所を示す情報)を使用して、現在位置から指定の避難場所までの避難ルート(避難経路)を決定する(ステップS2)。
【0021】
次に、サーバ11は、データベース12に格納された情報を使用して、決定した避難ルート(現在位置から避難場所までの経路)を含む地図情報100Gを生成する(ステップS3)。サーバ11は、生成した地図情報100Gを、無線通信により端末10に送信する(ステップS4)。
【0022】
端末10は、サーバ11から送信された地図情報100Gを受信し、当該地図情報100Gを使用して避難ルートを含む地図イメージを生成する。端末10は、生成した地図イメージをディスプレイ10A上に表示する。地図イメージは、端末10の現在位置から避難場所までの避難ルート(避難経路)を示す。
【0023】
当該端末10を携帯している住民は、ディスプレイ10A上に表示された避難ルートを確認しながら、現在位置から避難場所まで移動することができる。
【0024】
ここで、サーバ11は、地図情報100Gを提供した端末10からの位置情報100Pを継続的に受信し、当該端末10の移動ルートを監視する(ステップS5)。即ち、サーバ11は、当該端末10が実際に移動している経路を、データベース12に格納されている地図情報に関連付けて記録する。
【0025】
当該端末10の移動ルートが提供した避難ルートの避難場所まで一致したときには、サーバ11は、監視処理を中止して次の処理(別の端末の避難誘導処理)に移行する(ステップS6のNO)。
【0026】
(避難ルート変更処理)
一方、サーバ11は、当該端末10の移動ルートが提供した避難ルートとは異なるルートである場合には、避難ルート変更処理に移行する(ステップS6のYES)。サーバ11は、当該端末10の移動ルートを監視することにより、現在位置から避難場所まで到達するまでに実際の移動ルートと提供した避難ルートとの不一致な部分(場所や道路)を特定して記録する。
【0027】
ここで、サーバ11は、前述のステップS1からS5までの処理を繰り返し実行することにより、同一避難ルートに対する複数の端末10の移動ルートを監視することで、前記の不一致な部分(場所や道路)をデータベース12に蓄積する。
【0028】
そして、サーバ11は、複数の端末10の移動ルートの監視結果(同一避難ルートに対する不一致な部分の蓄積)に基づいて、提供した避難ルートには、通行不可能な場所(又は道路)が存在すると判定し、その通行不可能な場所を地図情報上で特定する(ステップS7)。
【0029】
次に、サーバ11は、以前に設定した避難ルートを、特定した通行不可能な場所を除く別の通行可能な場所を含む同一の避難場所までの新たな避難ルートに変更する(ステップS8)。この新たな避難ルートを、以前に設定した避難ルートに替えて、データベース12に格納する(ステップS9)。
【0030】
このような避難ルートの変更処理により、サーバ11は、前述のような避難誘導処理(ステップS1〜S4)により、端末10に対して、同一避難場所に対応する新たな避難ルート220を含む地図情報100Gを提供する。
【0031】
従って、端末10は、図2に示すように、生成した地図イメージ200をディスプレイ10A上に表示するとき、現在位置210から避難場所までの新たな避難ルート(避難経路)220を表示する。この場合、以前の避難ルートは、通行不可能な場所230を含むルートである。避難ルートの変更処理により、サーバ11は、当該通行不可能な場所230を除き、現在位置210から同一避難場所までの新たな避難ルート220を提供する。
【0032】
これにより、当該端末10を携帯している住民は、ディスプレイ10A上に表示された新たな避難ルート220を確認しながら、現在位置210から通行不可能な場所230を避けて、避難場所まで移動することができる。
【0033】
以上、本実施形態のシステムによれば、例えば災害発生時に、住民が携帯している端末10に対して、端末10の現在位置から避難場所までの避難ルートを提供できる。さらに、端末10の実際の移動ルートから、提供した避難ルートに含まれる通行不可能な場所(又は道路)の存在を判定し、当該通行不可能な場所を避ける新たな避難ルートを設定することができる。
【0034】
換言すれば、指定された避難場所まで避難ルートを提供できるとともに、通行不可能な場所を避ける確実に避難ルートに更新することが可能となる。従って、通行不可能な場所を含む避難ルートを自動的に更新できることにより、避難途中の住民が避難場所まで移動する際に、引き返したり、遠回りするような事態を減少することができる。
【0035】
要するに、本実施形態によれば、提供した避難ルートに基づいて移動する端末の移動状況から、避難ルートの適否を判定し、不適切な避難ルートを常に適切な避難ルートに更新することが可能となる。
【0036】
なお、端末10は、住民が携帯する携帯電話などの携帯端末を想定したが、これに限ることなく、GPS機能を有する車両に搭載される車両用ナビゲーションでもよい。
【0037】
(他の実施形態)
本実施形態では、サーバ11は、端末10の実際の移動ルートから、提供した避難ルートに含まれる通行不可能な場所(又は道路)の存在を判定し、当該通行不可能な場所を避ける新たな避難ルートを設定する変更処理を実行する。
【0038】
他の実施形態として、サーバ11は、端末10の実際の移動ルートから避難場所までの移動時間を測定し、この測定結果に基づいて避難ルートを変更する変更処理を実行してもよい。即ち、サーバ11は、提供した避難ルートに含まれる通行不可能な場所(又は道路)の存在を判定するのではなく、避難ルートに含まれる特定の位置から避難場所までの移動時間が最短時間になるように避難ルートを更新する処理を実行してもよい。
【0039】
この実施形態の避難ルート変更処理であれば、以前に避難ルートを設定した後に新たな道路ができたような場合に、当該新たな道路を含み、避難場所までの移動時間を短縮できる新たな避難ルートを提供することができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に関する避難誘導システムの構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態に関する避難ルートを示す地図情報の一例を示す図。
【図3】本実施形態に関するサーバの処理手順を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0042】
10…端末、10A…ディスプレイ、11…サーバ、12…データベース、
20…GPS衛星、30…無線基地局、100P…位置情報、100G…地図情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を有する端末から送信されて、当該端末の現在位置を示す位置情報を受信する受信手段と、
前記位置情報に基づいて、前記端末の現在位置から避難場所までの避難ルートを決定する手段と、
前記避難ルートを示す情報を含む地図情報を生成する手段と、
前記地図情報を前記端末に送信する手段と、
前記端末の移動に基づいて前記避難ルートの適否を判定し、前記避難ルートが不適切である場合に前記避難ルートを変更する変更手段と
を具備したことを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
前記変更手段は、
前記端末に前記地図情報を送信した後に、前記位置情報に基づいて前記端末の移動ルートを監視する手段と、
前記移動ルートの監視結果に基づいて、前記移動ルートが前記避難ルートに合致しない場合に前記避難場所までの新たな避難ルートを決定する手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記変更手段は、
前記端末に前記地図情報を送信した後に、前記位置情報に基づいて前記端末の移動ルートを監視する手段と、
前記移動ルートの監視結果に基づいて、前記避難ルートに含まれる通行不可能な場所を特定する手段と、
前記通行不可能な場所を除く前記避難場所までの新たな避難ルートを決定する手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項4】
前記変更手段は、
同一の避難ルートに対応する複数の端末の移動ルートの監視結果を記憶し、
前記監視結果に基づいて、前記避難ルートに含まれる場所の中で、前記各移動ルートには含まれない場所を通行不可能な場所として特定することを特徴とする請求項3に記載の避難誘導システム。
【請求項5】
前記変更手段は、
前記端末に前記地図情報を送信した後に、前記位置情報に基づいて前記端末の移動ルートを監視する手段と、
前記移動ルートの監視結果に基づいて、前記避難場所までの移動時間を測定する手段と、
前記測定された移動時間に基づいて、前記避難場所までの新たな避難ルートを決定する手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項6】
現在位置を示す位置情報を無線通信により送信可能な端末に対して、当該現在位置から避難場所までの避難ルートを誘導するシステムに適用する避難誘導方法において、
前記端末から送信される前記位置情報を受信するステップと、
前記位置情報に基づいて、前記端末の現在位置から避難場所までの避難ルートを決定するステップと、
前記避難ルートを示す情報を含む地図情報を生成するステップと、
前記地図情報を前記端末に送信するステップと、
前記端末の移動に基づいて、前記避難ルートを変更するステップと
を有する手順を実行することを特徴とする避難誘導方法。
【請求項7】
前記変更ステップは、
前記端末に前記地図情報を送信した後に、前記位置情報に基づいて前記端末の移動ルートを監視するステップと、
前記移動ルートの監視結果に基づいて、前記避難場所までの新たな避難ルートを決定するステップと
を含むことを特徴とする請求項6に記載の避難誘導方法。
【請求項8】
前記変更ステップは、
前記端末に前記地図情報を送信した後に、前記位置情報に基づいて前記端末の移動ルートを監視するステップと、
前記移動ルートの監視結果に基づいて、前記避難ルートに含まれる通行不可能な場所を特定するステップと、
前記通行不可能な場所を除く前記避難場所までの新たな避難ルートを決定するステップと
を含むことを特徴とする請求項6に記載の避難誘導方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−235980(P2006−235980A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49380(P2005−49380)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】