説明

避難誘導制御装置、避難誘導制御方法、およびプログラム

【課題】避難開始時において施設内の人々をそれぞれの非常口へ分散して誘導する。
【解決手段】携帯電話数確認部13により、フロア50に設置された各基地局21,22からの通知に基づいて、当該基地局と対応する個々のエリア5,52に存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認し、非常口決定部14により、携帯電話数と非常口容量情報とに基づいて、各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定し、非常口通知部15により、各エリアの基地局を介して前各記携帯電話へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難誘導技術に関し、特に、災害発生時に施設内にいる人を非常口へ誘導する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デパートやショッピングモールなどの多くの人が集まる施設では、混雑を避けるための技術が必要とされる。
このような施設には、災害発生時に施設から外部へ避難するために、複数の非常口が設けられている。これら施設へ誘導するための誘導標識が、それぞれの避難経路に沿って設けられているが、誘導標識の場所や見え方によっては、特定の非常口へ人が集中する場合がある。したがって、施設内の人々を複数の非常口へ分散して、効率よく施設外部へ誘導する必要がある。
【0003】
従来、このような特定の非常口への集中を避けるため、各通路で計数した通過人数に基づいて、施設内に設けたディスプレイごとに、当該ディスプレイから非常口までの最適避難経路を計算して、各ディスプレイで誘導表示を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−165701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術では、各通路で計数した通過人数に基づいて避難誘導しているため、避難が開始された後については人の流れを適切に誘導できるものの、避難開始時における特定の非常口への人の集中を回避することはできない。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、避難開始時において施設内の人々をそれぞれの非常口へ分散して誘導することができる避難誘導制御装置、避難誘導制御方法、およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明にかかる避難誘導制御装置は、非常時に、施設内の1つのフロア内に存在する携帯電話に対して、当該フロアの非常口のいずれかを避難先として通知することにより、当該施設内の人々を各非常口へ分散して避難誘導する避難誘導制御装置であって、フロアに設置された各基地局からの通知に基づいて、当該基地局と対応する個々のエリアに存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認する携帯電話数確認部と、非常口のそれぞれに対して避難誘導すべき人数の比を示す非常口容量情報を記憶する記憶部と、携帯電話数と非常口容量情報とに基づいて、各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定する非常口決定部と、各エリアの基地局を介して前各記携帯電話へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口を通知する非常口通知部とを備えている。
【0007】
この際、非常口決定部で、各携帯電話グループと各非常口との対応関係からなる誘導パターンを生成し、これら誘導パターンのうち、当該誘導パターンを適用した際に個々の非常口へ避難誘導される携帯電話数の比と、非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを最適パターンとして選択し、この最適パターンに基づいて、接続サービス提供元ごとに避難誘導すべき非常口を決定するようにしてもよい。
【0008】
さらに、非常口決定部で、生成した誘導パターンのうち誤差が最も小さいものから順に候補として複数の誘導パターンを選択し、これら候補のうち、異なるエリアの非常口へ移動する携帯電話数が最も少ない誘導パターンを最適パターンとして選択するようにしてもよい。
【0009】
また、記憶部で、エリアごとに、当該エリアから各非常口へ避難する場合に要する平均的な移動距離をそれぞれ記憶し、非常口決定部で、各候補について、携帯電話グループごとに求めた当該携帯電話数と当該移動時に要する移動距離との積を合計して、当該候補の延べ移動距離をそれぞれ算出し、当該延べ移動距離が最も短い候補の誘導パターンを最適パターンとして選択するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明にかかる避難誘導制御方法は、非常時に、施設内の1つのフロア内に存在する携帯電話に対して、当該フロアの非常口のいずれかを避難先として通知することにより、当該施設内の人々を各非常口へ分散して避難誘導する避難誘導制御装置で用いられる避難誘導制御方法であって、携帯電話数確認部が、フロアに設置された各基地局からの通知に基づいて、当該基地局と対応する個々のエリアに存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認する携帯電話数確認ステップと、記憶部が、非常口のそれぞれに対して避難誘導すべき人数の比を示す非常口容量情報を記憶する記憶ステップと、非常口決定部が、携帯電話数と非常口容量情報とに基づいて、各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定する非常口決定ステップと、非常口通知部が、各エリアの基地局を介して前各記携帯電話へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口を通知する非常口通知ステップとを備えている。
【0011】
この際、非常口決定ステップとして、非常口決定部が、各携帯電話グループと各非常口との対応関係からなる誘導パターンを生成し、これら誘導パターンのうち、当該誘導パターンを適用した際に個々の非常口へ避難誘導される携帯電話数の比と、非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを最適パターンとして選択し、この最適パターンに基づいて、接続サービス提供元ごとに避難誘導すべき非常口を決定するステップを含んでもよい。
【0012】
さらに、非常口決定ステップとして、非常口決定部が、生成した誘導パターンのうち誤差が最も小さいものから順に候補として複数の誘導パターンを選択し、これら候補のうち、異なるエリアの非常口へ移動する携帯電話数が最も少ない誘導パターンを最適パターンとして選択するステップを含んでもよい。
【0013】
また、記憶ステップとして、記憶部が、エリアごとに、当該エリアから各非常口へ避難する場合に要する平均的な移動距離をそれぞれ記憶するステップを含み、非常口決定ステップとして、非常口決定部が、各候補について、携帯電話グループごとに求めた当該携帯電話数と当該移動時に要する移動距離との積を合計して、当該候補の延べ移動距離をそれぞれ算出し、当該延べ移動距離が最も短い候補の誘導パターンを最適パターンとして選択するステップを含んでもよい。
【0014】
また、本発明にかかるプログラムは、非常時に、施設内の1つのフロア内に存在する携帯電話に対して、当該フロアの非常口のいずれかを避難先として通知することにより、当該施設内の人々を各非常口へ分散して避難誘導する避難誘導制御装置のコンピュータに、携帯電話数確認部が、フロアに設置された各基地局からの通知に基づいて、当該基地局と対応する個々のエリアに存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認する携帯電話数確認ステップと、記憶部が、非常口のそれぞれに対して避難誘導すべき人数の比を示す非常口容量情報を記憶する記憶ステップと、非常口決定部が、携帯電話数と非常口容量情報とに基づいて、各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定する非常口決定ステップと、非常口通知部が、各エリアの基地局を介して前各記携帯電話へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口を通知する非常口通知ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、避難開始時において施設内の人々をそれぞれの非常口へ分散して誘導することができ、避難開始時から特定の非常口への避難集中を回避することが可能となる。このため、避難開始後の避難集中に応じて避難先の変更を通知した場合に発生しうる混乱を回避でき、より適切でスムーズな避難誘導を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる避難誘導制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】避難誘導例を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる避難誘導制御装置の避難誘導制御動作を示すシーケンス図である。
【図4】携帯電話数確認例である。
【図5】非常口容量情報の構成例である。
【図6】非常口決定結果例である。
【図7】本発明の第1の実施の形態にかかる避難誘導制御装置での非常口決定処理を示すフローチャートである。
【図8】非常口決定処理例である。
【図9】本発明の第2の実施の形態にかかる避難誘導制御装置での非常口決定処理を示すフローチャートである。
【図10】他の非常口決定処理例である。
【図11】本発明の第3の実施の形態にかかる避難誘導制御装置での非常口決定処理を示すフローチャートである。
【図12】平均移動距離情報の構成例である。
【図13】他の非常口決定処理例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる避難誘導制御装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる避難誘導制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、避難誘導例を示す説明図である。
【0018】
この避難誘導制御装置10は、全体としてサーバ装置やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、災害発生時などの非常時に、避難誘導の対象となるデパートやショッピングモールなどの施設内の1つのフロア50内に存在する携帯電話に対して、当該フロア50の非常口のいずれかを避難先として通知することにより、当該施設内の人々を各非常口へ分散して避難誘導する機能を有している。
【0019】
図2の例では、施設の1つのフロア50内に2つの基地局21,22が設置されており、有線回線を介して避難誘導制御装置10とデータ通信可能に接続されている。基地局21,22は、接続サービス提供元が異なる各携帯電話30と無線回線を介してデータ通信を行う一般的な基地局装置であり、これら基地局21,22の通信圏内が、それぞれのエリア51,52に対応している。
これら避難誘導制御装置10と基地局21,22により、避難誘導システム1が構築されている。
【0020】
エリア51,52には、それぞれ非常口41,42が含まれており、災害発生時の避難誘導先となる。
このうち、エリア51には、それぞれ1つ以上の携帯電話30からなる複数の携帯電話グループ31A,31B,31Cが存在しており、これら携帯電話30は、基地局21との無線回線を介して避難誘導制御装置10とデータ通信可能に接続されている。このうち携帯電話グループ31AはA社が接続サービスを提供する携帯電話30のグループ、携帯電話グループ31BはB社が接続サービスを提供する携帯電話30のグループ、携帯電話グループ31CはC社が接続サービスを提供する携帯電話30のグループである。
【0021】
同じく、エリア52には、それぞれ1つ以上の携帯電話30からなる複数の携帯電話グループ32A,32B,32Cが存在しており、これら携帯電話30は、基地局22との無線回線を介して避難誘導制御装置10とデータ通信可能に接続されている。このうち携帯電話グループ32AはA社が接続サービスを提供する携帯電話30のグループ、携帯電話グループ32BはB社が接続サービスを提供する携帯電話30のグループ、携帯電話グループ32CはC社が接続サービスを提供する携帯電話30のグループである。
なお、携帯電話30は、市販の携帯電話のように、基地局21,22からの問合せ要求に応じて、何らかの問合せ応答を返送する機能を有しておればよい。
【0022】
[避難誘導制御装置]
避難誘導制御装置10には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、記憶部12、携帯電話数確認部13、非常口決定部14、および非常口通知部15が設けられており、内部バスを介して相互にデータやり取り可能に接続されている。
【0023】
通信I/F部11は、専用の通信回路からなり、基地局21,22とデータ通信を行う機能を有している。
記憶部12は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置からなり、各機能部での処理動作に用いる各種処理情報を記憶する機能を有している。主な処理情報としては、非常口41,42のそれぞれに対して避難誘導すべき人数の比を示す非常口容量情報や、各携帯電話グループと各非常口との対応関係を示す誘導パターンがある。
【0024】
携帯電話数確認部13は、基地局21,22からの計数結果の通知に基づいて、各エリア51,52に存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話グループごとに確認する機能を有している。
非常口決定部14は、携帯電話数と非常口容量情報とに基づいて、各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定する
非常口通知部15は、各エリア51,52の基地局21,22を介して前各記携帯電話30へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口をそれぞれ通知する機能を有している。
【0025】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図3を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる避難誘導制御装置の動作について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態にかかる避難誘導制御装置の避難誘導制御動作を示すシーケンス図である。
【0026】
基地局21,22は、それぞれ対応するエリア51,52内の携帯電話30に対して、当該携帯電話30の存在を確認するための問合せ要求を、各接続サービス提供元で使用する無線周波数や無線通信方式を使用して、間欠的に送信する(ステップ100,110)。この問合せ要求は、基地局21,22において自律的に送信してもよく、避難誘導制御装置10からの指示に応じて送信してもよい。
携帯電話30は、基地局21,22からの問合せ要求に応じて、自己の存在を示す問合せ応答を無線電波により返送する(ステップ101,111)。
【0027】
基地局21,22は、各携帯電話30からの問合せ応答に応じて、当該エリア51,52に存在する携帯電話30の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに計数し、問合せ結果として避難誘導制御装置10へ通知する(ステップ102,112)。この際、各携帯電話30に対する接続サービス提供元の識別方法については、問合せ応答を受信した無線周波数や無線通信方式で識別してもよく、当該問合せに含まれている接続サービス提供元識別情報で識別してもよい。
【0028】
避難誘導制御装置10は、通信I/F部11を介して基地局21,22からの問合せ結果を受信し、携帯電話数確認部13により、当該エリア51,52に存在する携帯電話30の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認する(ステップ120)。この際、各携帯電話グループの携帯電話数については、基地局21,22で集計してもよいが、各携帯電話30からの問合せ応答に関する情報を基地局21,22から避難誘導制御装置10へ通知して、避難誘導制御装置10の携帯電話数確認部13で集計してもよい。
【0029】
図4は、携帯電話数確認例である。この例では、エリア51内に、A社、B社、C社の携帯電話がそれぞれ78台,25台、15台ずつ存在し、エリア52内に、A社、B社、C社の携帯電話がそれぞれ43台,33台、15台ずつ存在している。
【0030】
次に、避難誘導制御装置10は、非常口決定部14により、記憶部12から非常口容量情報の人数比を取得し(ステップ121)、この人数比と各携帯電話グループの携帯電話数とに基づいて、各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定する(ステップ122)。
【0031】
図5は、非常口容量情報の構成例である。この例では、エリア51の非常口41に対して、フロア50全体の人々の50%を避難誘導し、エリア52の非常口42に対して、フロア50全体の人々の50%を避難誘導するよう設定されている。
図6は、非常口決定結果例である。この例では、エリア51のA社およびB社の携帯電話グループ31A,31Bの避難先として非常口41が割り当てられ、エリア52のA社、B社、およびC社の携帯電話グループ32A,32B,32Cと、エリア51のA社の携帯電話グループ31Cの避難先として非常口42が割り当てられている。
【0032】
この後、避難誘導制御装置10は、各エリアの携帯電話グループに対応する非常口を示す非常口通知を、通信I/F部11を介して基地局21,22へ通知する(ステップ130,131)。
基地局21,22は、避難誘導制御装置10からの非常口通知に応じて、個々の接続サービス提供元の無線周波数や無線通信方式を使用して、当該エリア51,52内の各携帯電話グループの各携帯電話30へ、当該サービス提供元と対応する非常口を示す非常口通知を送信する(ステップ131,141)。
【0033】
各携帯電話30は、基地局21,22からの非常口通知に応じて、その非常口通知に含まれる非常口を画面表示する(ステップ132,142)。これにより、各エリア51,52内に存在する人々は、自己の携帯電話30の画面表示により、避難すべき非常口を確認し、避難を開始する(ステップ133,143)。
【0034】
[非常口決定処理]
次に、図7を参照して、避難誘導制御装置10の非常口決定部14における、非常口決定処理について説明する。図7は、本発明の第1の実施の形態にかかる避難誘導制御装置での非常口決定処理を示すフローチャートである。
【0035】
非常口決定部14は、まず、携帯電話数確認部13で確認されたエリア51,52の携帯電話グループと、記憶部12から読み出した非常口容量情報とに基づいて、各携帯電話グループと各非常口41,42との対応関係を示す誘導パターンを生成する(ステップ200)。
続いて、非常口決定部14は、生成した誘導パターンごとに、当該誘導パターンを適用した際に個々の非常口41,42へ避難誘導される携帯電話数の比を算出し(ステップ201)、この携帯電話数比と非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを最適パターンとして選択する(ステップ202)。
【0036】
図8は、非常口決定処理例である。図4の例において、各エリア51,52の携帯電話が当該エリアの非常口41,42へ移動する誘導パターンXによれば、図8に示すように、各エリア51,52に存在する携帯電話数が、それぞれ130(=90+25+15)台と101(=43+33+25)台であり、これら携帯電話30をそれぞれのエリア51,52の非常口41,42へ誘導した場合、携帯電話数比は、約56.3%:43.7%となる。したがって、非常口容量情報の人数比である50%:50%とは約6.3%の誤差がある。
【0037】
これに対して図6に示した誘導パターンYでは、図8に示すように、各エリア51,52に存在する携帯電話数が、それぞれ115(=90+25)台と116(=43+33+25+15)台であり、これら携帯電話30をそれぞれのエリア51,52の非常口41,42へ誘導した場合、携帯電話数比は、約49.8%:50.2%となる。したがって、非常口容量情報の人数比である50%:50%とは約0.2%の誤差となり、図4の場合と比較して、非常口容量情報の人数比と誤差の少ない誘導パターンが最適パターンとして選択されている。
【0038】
[第1の実施の形態の効果]
このような、本実施の形態では、携帯電話数確認部13により、フロア50に設置された各基地局21,22からの通知に基づいて、当該基地局と対応する個々のエリア5,52に存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認し、非常口決定部14により、携帯電話数と非常口容量情報とに基づいて、各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定し、非常口通知部15により、各エリアの基地局を介して前各記携帯電話へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口を通知する。
【0039】
したがって、避難開始時において施設内の人々をそれぞれの非常口へ分散して誘導することができ、避難開始時から特定の非常口への避難集中を回避することが可能となる。このため、避難開始後の避難集中に応じて避難先の変更を通知した場合に発生しうる混乱を回避でき、より適切でスムーズな避難誘導を実現することが可能となる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる避難誘導制御装置について説明する。図9は、本発明の第2の実施の形態にかかる避難誘導制御装置での非常口決定処理を示すフローチャートである。
【0041】
第1の実施の形態では、各携帯電話グループに対応する非常口を決定する際、非常口容量情報の人数比と最も誤差の少ない誘導パターンを最適パターンとして選択する場合を例として説明した。本実施の形態では、これに加えて他のエリアの非常口へ移動する移動携帯電話数が最も少ない誘導パターンを最適パターンとして選択する場合について説明する。
なお、本実施の形態では、後述のとおり、非常口決定部14における非常口決定処理が異なるものの、避難誘導制御装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0042】
[非常口決定処理]
次に、図9を参照して、避難誘導制御装置10の非常口決定部14における、非常口決定処理について説明する。
非常口決定部14は、まず、携帯電話数確認部13で確認されたエリア51,52の携帯電話グループと、記憶部12から読み出した非常口容量情報とに基づいて、各携帯電話グループと各非常口41,42との対応関係を示す誘導パターンを生成する(ステップ210)。
【0043】
続いて、非常口決定部14は、生成した誘導パターンごとに、当該誘導パターンを適用した際に個々の非常口41,42へ避難誘導される携帯電話数の比を算出し(ステップ211)、この携帯電話数比と非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを候補として規定数だけ選択する(ステップ212)。
次に、非常口決定部14は、これら候補ごとに、他のエリアの非常口へ移動する移動携帯電話数を算出し(ステップ213)、候補のうち、移動携帯電話数が最も少ない誘導パターンを最適パターンとして選択する(ステップ214)。
【0044】
図10は、非常口決定処理例である。例えば、図6の誘導パターンYのうち、エリア51の携帯電話グループ31Bとエリア52の携帯電話グループ32Cとを入れ替えた誘導パターンZも、図6の例と同じ誤差となる。この際、図10に示すように、誘導パターンYでは、避難元エリアから他のエリアの非常口へ避難する携帯電話数は、携帯電話グループ31Cの15台であるが、誘導パターンZでは、携帯電話グループ31Cの15台に加え、携帯電話グループ31Bの25台と携帯電話グループ32Cの25台の合わせて65台が、避難元エリアから他のエリアの非常口へ避難することになる。
【0045】
避難時に、人々が異なる非常口へ移動する際、より迅速に非常口まで移動することが望ましい。したがって、移動時の混雑発生を抑制する必要がある。上記誘導パターンZを適用した場合、エリア51,52間で移動する携帯電話数が増大して、フロア50内での混雑の度合いが大きくなる。このため、他のエリアの非常口へ移動する移動携帯電話数が最も少ない誘導パターンを選択することにより、より迅速に非常口まで避難させることが可能となる。
【0046】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、非常口決定部14により、携帯電話数比と非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを候補として規定数だけ選択し、これら候補のうち、他のエリアの非常口へ移動する移動携帯電話数が最も少ない誘導パターンを最適パターンとして選択するようにしたので、エリア51,52間で移動する人数を抑制できる。これにより、移動時の混雑発生を抑制でき、人々をより迅速に非常口まで避難させることが可能となる。
【0047】
[第3の実施の形態]
次に、図11および図12を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる避難誘導制御装置について説明する。図11は、本発明の第3の実施の形態にかかる避難誘導制御装置での非常口決定処理を示すフローチャートである。図12は、平均移動距離情報の構成例である。
【0048】
第2の実施の形態では、各携帯電話グループに対応する非常口を決定する際、携帯電話数比が非常口容量情報の人数比と誤差の少ない誘導パターンからなる候補のうち、他エリアの非常口へ移動する携帯電話数が最も少ない誘導パターンを最適パターンとして選択する場合を例として説明した。本実施の形態では、上記候補のうち、非常口へ移動する各携帯電話の移動距離の合計を示す延べ移動距離が最も短い候補の誘導パターンを最適パターンとして選択する場合について説明する。
なお、本実施の形態では、後述のとおり、非常口決定部14における非常口決定処理が異なるものの、避難誘導制御装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0049】
[非常口決定処理]
次に、図11を参照して、避難誘導制御装置10の非常口決定部14における、非常口決定処理について説明する。
非常口決定部14は、まず、携帯電話数確認部13で確認されたエリア51,52の携帯電話グループと、記憶部12から読み出した非常口容量情報とに基づいて、各携帯電話グループと各非常口41,42との対応関係を示す誘導パターンを生成する(ステップ220)。
【0050】
続いて、非常口決定部14は、生成した誘導パターンごとに、当該誘導パターンを適用した際に個々の非常口41,42へ避難誘導される携帯電話数の比を算出し(ステップ221)、この携帯電話数比と非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを候補として規定数だけ選択する(ステップ222)。
【0051】
次に、非常口決定部14は、これら候補について、携帯電話グループごとに当該携帯電話数と当該移動時に要する移動距離との積を求め、これら積を合計することにより、当該候補の延べ移動距離をそれぞれ算出する(ステップ223)。
この後、非常口決定部14は、候補のうち、延べ移動距離が最も短い誘導パターンを最適パターンとして選択する(ステップ224)。
【0052】
本実施の形態では、記憶部12において、平均移動距離情報を予め記憶しておく。平均移動距離情報は、図12に示すように、各エリア51,52内に存在する携帯電話が任意の非常口41,42への移動時に要する避難経路の移動距離の平均値であり、エリアと非常口との組合せごとに設定しておく。この際、各エリア内において携帯電話は一様に分布しているものとして平均移動距離を算出しておく。
【0053】
図12の例では、エリア51に存在する携帯電話が、非常口41,42まで移動する際に要する平均移動距離として1.0,3.0が設定されており、エリア52に存在する携帯電話が、非常口41,42まで移動する際に要する平均移動距離として3.0,1.0が設定されている。
【0054】
図13は、非常口決定処理例である。前述した誘導パターンYでは、エリア51から非常口41へ移動する携帯電話数は115台であり、その平均移動距離1.0との積は115となる。同様にして、エリア51から非常口42へ移動する携帯電話数は15台であり、その平均移動距離3.0との積は45となる。一方、エリア52から非常口41へ移動する携帯電話数は0であり積も0となる。同様にして、エリア52から非常口41へ移動する携帯電話数は91台であり、その平均移動距離1.0との積は91となる。したがって、これら積の合計は251となる。
【0055】
また、前述した誘導パターンYでは、エリア51から非常口41へ移動する携帯電話数は90台であり、その平均移動距離1.0との積は90となる。同様にして、エリア51から非常口42へ移動する携帯電話数は40台であり、その平均移動距離3との積は120となる。一方、エリア52から非常口41へ移動する携帯電話数は25台であり、その平均移動距離3との積は120となる。同様にして、エリア52から非常口41へ移動する携帯電話数は76台であり、その平均移動距離1.0との積は76となる。したがって、これら積の合計は386となる。
【0056】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、非常口決定部14により、携帯電話数比と非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを候補として規定数だけ選択し、これら候補について、携帯電話グループごとに求めた当該携帯電話数と当該移動時に要する移動距離との積を合計して、当該候補の延べ移動距離をそれぞれ算出し、当該延べ移動距離が最も短い候補の誘導パターンを最適パターンとして選択するようにしたので、エリアの大きさや、エリアごとに非常口の位置が異なる場合にも、最適パターンを精度よく選択でき、移動時の混雑発生を抑制でき、人々をより迅速に非常口まで避難させることが可能となる。
【0057】
[実施の形態の拡張]
以上の説明では、フロア50が2つのエリア51,52に等分割されている場合、各エリア51,52にそれぞれ1つずつ非常口41,42が設けられている場合、携帯電話の接続サービス提供元が3社の場合など、特定の条件を例として説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、フロア50が3つ以上に分割されている場合や、それぞれのエリアの広さが異なる場合、あるいは1つのエリアに複数の非常口が設けられている場合、さらには接続サービス提供元が2社あるいは4社以上ある場合など、他の条件でもあっても、各実施の形態を前述と同様にして適用でき、同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0058】
1…避難誘導システム、10…避難誘導制御装置、11…通信I/F部、12…記憶部、13…携帯電話数確認部、14…非常口決定部、15…非常口通知部、21,22…基地局、30…携帯電話、31A,31B,31C,32A,32B,32C…携帯電話グループ、41,42…非常口、50…フロア50、51,52…エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常時に、施設内の1つのフロア内に存在する携帯電話に対して、当該フロアの非常口のいずれかを避難先として通知することにより、当該施設内の人々を各非常口へ分散して避難誘導する避難誘導制御装置であって、
前記フロアに設置された各基地局からの通知に基づいて、当該基地局と対応する個々のエリアに存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認する携帯電話数確認部と、
前記非常口のそれぞれに対して避難誘導すべき人数の比を示す非常口容量情報を記憶する記憶部と、
前記携帯電話数と前記非常口容量情報とに基づいて、前記各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定する非常口決定部と、
前記各エリアの基地局を介して前各記携帯電話へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口を通知する非常口通知部と
を備えることを特徴とする避難誘導制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の避難誘導制御装置において、
前記非常口決定部は、前記各携帯電話グループと前記各非常口との対応関係からなる誘導パターンを生成し、これら誘導パターンのうち、当該誘導パターンを適用した際に個々の非常口へ避難誘導される携帯電話数の比と、前記非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを最適パターンとして選択し、この最適パターンに基づいて、前記接続サービス提供元ごとに避難誘導すべき非常口を決定することを特徴とする避難誘導制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の避難誘導制御装置において、
前記非常口決定部は、生成した前記誘導パターンのうち前記誤差が最も小さいものから順に候補として複数の誘導パターンを選択し、これら候補のうち、異なるエリアの非常口へ移動する携帯電話数が最も少ない誘導パターンを前記最適パターンとして選択することを特徴とする避難誘導制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の避難誘導制御装置において、
前記記憶部は、前記エリアごとに、当該エリアから前記各非常口へ避難する場合に要する平均的な移動距離をそれぞれ記憶し、
前記非常口決定部は、前記各候補について、前記携帯電話グループごとに求めた当該携帯電話数と当該移動時に要する移動距離との積を合計して、当該候補の延べ移動距離をそれぞれ算出し、当該延べ移動距離が最も短い候補の誘導パターンを前記最適パターンとして選択することを特徴とする避難誘導制御装置。
【請求項5】
非常時に、施設内の1つのフロア内に存在する携帯電話に対して、当該フロアの非常口のいずれかを避難先として通知することにより、当該施設内の人々を各非常口へ分散して避難誘導する避難誘導制御装置で用いられる避難誘導制御方法であって、
携帯電話数確認部が、前記フロアに設置された各基地局からの通知に基づいて、当該基地局と対応する個々のエリアに存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認する携帯電話数確認ステップと、
記憶部が、前記非常口のそれぞれに対して避難誘導すべき人数の比を示す非常口容量情報を記憶する記憶ステップと、
非常口決定部が、前記携帯電話数と前記非常口容量情報とに基づいて、前記各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定する非常口決定ステップと、
非常口通知部が、前記各エリアの基地局を介して前各記携帯電話へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口を通知する非常口通知ステップと
を備えることを特徴とする避難誘導制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の避難誘導制御方法において、
前記非常口決定ステップは、前記非常口決定部が、前記各携帯電話グループと前記各非常口との対応関係からなる誘導パターンを生成し、これら誘導パターンのうち、当該誘導パターンを適用した際に個々の非常口へ避難誘導される携帯電話数の比と、前記非常口容量情報の人数比との誤差が最も小さい誘導パターンを最適パターンとして選択し、この最適パターンに基づいて、前記接続サービス提供元ごとに避難誘導すべき非常口を決定するステップを含むことを特徴とする避難誘導制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の避難誘導制御方法において、
前記非常口決定ステップは、前記非常口決定部が、生成した前記誘導パターンのうち前記誤差が最も小さいものから順に候補として複数の誘導パターンを選択し、これら候補のうち、異なるエリアの非常口へ移動する携帯電話数が最も少ない誘導パターンを前記最適パターンとして選択するステップを含むことを特徴とする避難誘導制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載の避難誘導制御方法において、
前記記憶ステップは、前記記憶部が、前記エリアごとに、当該エリアから前記各非常口へ避難する場合に要する平均的な移動距離をそれぞれ記憶するステップを含み、
前記非常口決定ステップは、前記非常口決定部が、前記各候補について、前記携帯電話グループごとに求めた当該携帯電話数と当該移動時に要する移動距離との積を合計して、当該候補の延べ移動距離をそれぞれ算出し、当該延べ移動距離が最も短い候補の誘導パターンを前記最適パターンとして選択するステップを含むことを特徴とする避難誘導制御方法。
【請求項9】
非常時に、施設内の1つのフロア内に存在する携帯電話に対して、当該フロアの非常口のいずれかを避難先として通知することにより、当該施設内の人々を各非常口へ分散して避難誘導する避難誘導制御装置のコンピュータに、
携帯電話数確認部が、前記フロアに設置された各基地局からの通知に基づいて、当該基地局と対応する個々のエリアに存在する携帯電話の数を、接続サービス提供元を同じくする携帯電話のグループごとに確認する携帯電話数確認ステップと、
記憶部が、前記非常口のそれぞれに対して避難誘導すべき人数の比を示す非常口容量情報を記憶する記憶ステップと、
非常口決定部が、前記携帯電話数と前記非常口容量情報とに基づいて、前記各エリアの携帯電話グループごとに避難誘導すべき非常口を決定する非常口決定ステップと、
非常口通知部が、前記各エリアの基地局を介して前各記携帯電話へ、当該携帯電話グループに対応する避難先となる非常口を通知する非常口通知ステップと
を実行させるプログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−160539(P2010−160539A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−643(P2009−643)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】