説明

配管外壁ライニング装置および配管外壁ライニング方法

【課題】雑排水を流している使用時にもライニング作業を施せ、集合住宅などでは通常通りの水回りの家事を中断することなく持続でき、住人側の生活を配慮した配管外壁ライニング装置および配管外壁ライニング方法を提供する。
【解決手段】ライニングクロス10を縦管8の外周部に密着させる構成のため、縦管8に雑排水を流している使用時にライニング作業を施すことができる。このため、集合住宅などでは通常通りの居住生活をしながら炊事・洗濯・料理・入浴などの水回りの家事を持続することができ、しかも、ライニングクロス10を縦管8の外部から施工することができるため、ライニング作業が容易かつ迅速になり、作業効率が向上してコスト的に有利になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設管、排水管や給水管などの配管の外周部に塗装を施すようにした配管外壁ライニング装置および配管外壁ライニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内あるいは屋外に配置された埋設管や給排水管などの配管には、食物の残滓、油脂、使用済みの洗剤、毛髪、砂礫、土砂など多種類の異物が付着堆積し、錆瘤とともにスケール(水垢)を形成している。配管の機能や衛生を保つために、清掃装置を用いて定期的に配管の清掃を行って配管に付着堆積するスケールを完全に除去している。配管の清掃後には、耐久性などを確保する必要があるため、ライニング装置により配管内に所定の厚みの塗料を層状に形成している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−141843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、配管に供給された塗料に接触状態に配される膨縮自在の袋体を備えている。配管内に吸引圧を加えることにより、袋体が塗料を配管の内周部に押し広げながら順次移動して配管内壁部に塗装を施す。
袋体が塗料を配管内壁部に塗り上げるへらとして働いて万遍なく均等に塗布するため、作業性が高くコスト的に有利な配管ライニング装置を実現している。
【0004】
しかしながら、塗料を配管の内壁部に施すため、ライニング作業の開始から完了まで配管内に流れる下水などの雑排水を中断させなければならない事情にある。
このため、多数の家族が居住生活するマンションなどの集合住宅では、炊事・洗濯・料理・入浴などの水回りの家事が一時的にできなくなる不都合が生じる。この結果、生活水が使えない不便さが生じることは勿論、食料などの買い溜めや外食をしたり、洗濯物をクリーニング業者に頼んだり、銭湯などに通う必要が生じて予想外の出費を招く虞がある。また、テナントビル等の雑居ビルでは、各店舗の営業日の関係で、事実上断水を行うことは不可能となっている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は配管に雑排水を流している使用時にもライニング作業を施せるので、集合住宅などでは通常通りの炊事・洗濯・料理・入浴などの水回りの家事を中断することなく持続でき、住人側の生活と各店舗の営業を配慮した配管外壁ライニング装置および配管外壁ライニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1について)
ライニングクロスは、布に塗料が含浸されて配管の外周部に筒状に巻かれて装着される。覆いシートは、ライニングクロスの外周部を覆い、封止手段を用いて自らの一側辺部と他側辺部とを閉じることにより、ライニングクロスを配管の外周部に密着させる。
【0007】
ライニングクロスを配管の外周部に密着させる構成のため、配管に雑排水を流している使用時にライニング作業を施すことができる。このため、集合住宅などでは通常通りの居住生活をしながら炊事・洗濯・料理・入浴などの水回りの家事を持続することができ、集合住宅などの住人にとって極めて好都合となる。しかも、ライニングクロスを配管の外部から施工することができるため、ライニング作業が容易かつ迅速になり、作業効率が向上してコスト的に有利になる。この場合、ライニング作業後、長期使用に伴って配管の腐食が進行してその機能が失われても、配管の外周部に設けたライニングクロスが配管機能を保持することになる。
【0008】
(請求項2について)
覆いシートは、肉薄な熱収縮性樹脂により形成されているため、ライニング作業後、熱湯などを用いて覆いシートを加熱することにより、覆いシートが全体的に収縮する。これにより、覆いシートがライニングクロスを配管の外周部に強く密着するようになり、ライニングクロスの施工性が向上する。
【0009】
(請求項3について)
封止手段は、係合歯が植え込まれた布テープをスライダで開閉するジッパーである。このため、配管に対するライニングクロスの装着後、スライダを操作することによりライニング作業が迅速になり、ライニングの作業効率がよくなり作業性が向上する。
【0010】
(請求項4について)
封止手段は、多数の係合子とフック部とを着脱可能に係脱させる押圧テープからなる。このため、配管に対するライニングクロスの装着後、押圧テープを装着することにより、請求項2と同様に、ライニング作業が迅速になり、ライニングの作業効率が良くなり作業性が向上する。
【0011】
(請求項5について)
有端環状のループ軸に複数の鼓状ローラを設け、ライニングクロスを配管に装着した後、ループ軸を覆いシートの外周部に嵌める。鼓状ローラを覆いシートの外周部に圧接させた状態で配管の軸方向に移動させる。この場合、鼓状ローラの圧接によりライニングクロスの表面が円滑になるとともに、ライニングクロスが配管の外周部に強く密着し、ライニングクロスの高品質化が図られる。
【0012】
(請求項6について)
ライニングクロスは、長軸方向に伸縮可能な蛇腹状になっており、ライニングクロスを収縮状態で配管に装着した後、配管に沿って伸長させる。
この場合、ライニング作業前には、ライニングクロスを収縮状態で、コンパクトに纏めて保管しておくことができる。
【0013】
(請求項7について)
布に塗料を含浸してなるライニングクロスを複数の帯状部から形成し、帯状部を拡縮可能な一対の有端リングの間に連結する。帯状部を有端リングとともに配管の外周部へ巻き付けて装着した後、有端リングを配管の周りに回転して帯状部を捻じることにより、帯状部同士を配管の外周部で螺旋状に密着させる。
この場合、有端リングの捻じり度合いにより、配管の外周部に対する帯状部の密着度合いを調整できる利点がある。
【0014】
(請求項8について)
半筒状に形成された二個の樋部は、互いの一側辺部で、開位置と閉位置との間で回動可能にヒンジ部により連結され、互いの他側辺部に異極となる磁石を取付けている。ライニングクロスは、布に塗料を含浸してなり、二個の樋部内に配されている。二個の樋部を開位置でライニングクロスとともに配管の外周部に装着し、閉位置に回動して磁石同士の吸着により二個の樋部を締付けて保持する。
この場合、二個の樋部をライニングクロスと一緒に配管に装着した後、閉位置に回動して磁石により締付けて保持するので、ライニング作業が容易かつ迅速になり、ライニングの作業効率が向上して作業性に優れる。
【0015】
(請求項9について)
布に塗料を含浸してなるライニングクロスを配管の外周部に筒状に巻く工程を有し、覆いシートによりライニングクロスの外周部を覆い、封止手段を用いて覆いシートの一側辺部と他側辺部とを閉じて、ライニングクロスを配管の外周部に密着させる工程を備えている。
【0016】
ライニングクロスを配管の外周部に密着させる方法のため、請求項1と同様に、配管に雑排水を流している使用時にもライニング作業を施すことができるので、集合住宅などでは通常通りの居住生活をしながら炊事・洗濯・料理・入浴などの水回りの家事を持続させることができる。しかも、ライニングクロスを配管の外部から施すことができるため、ライニング作業が容易かつ迅速になり、作業効率が向上してコスト的に有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明では、ライニングクロスを配管の外周部に密着させる構成のため、配管に雑排水を流している使用時にもライニング作業を施すことができる。このため、集合住宅などでは通常通りの居住生活をしながら炊事・洗濯・料理・入浴などの水回りの家事を持続可能とし、集合住宅などの住人にとって極めて好都合となる。
【実施例1】
【0018】
図1および図2は本発明の実施例1を示す。
図1は建物Hの排水管におけるライニング施工例であり、配管として縦型の通気管1、汚水本管2および外部枡5に連通する雑排水本管3を有している。雑排水本管3からは、各階Fに連通する室内横引管4が設けられている。
【0019】
配管のなかには、図2の(a)に示すように、各階Fにおけるコンクリート製のスラブ6、7を貫いて雑排水を流す縦管8が設けられている。長期使用に伴って縦管8の内壁部に腐食などが生じて補修が必要となる場合、図2の(b)に示す配管外壁ライニング装置9を用いる。
【0020】
配管外壁ライニング装置9は、液状エポキシ樹脂などの塗料を布に含浸させてなる矩形状のライニングクロス10とライニングクロス10の外周部に接触状態に添えたプラスチック製の覆いシート11を有する。ライニングクロス10は、所定の厚みtを有し、縦管8の長さ寸法に見合った縦長寸法Tを有する。ライニングクロス10の横長寸法は、縦管8の外径Dから算出される周長寸法と同一、あるいは若干大きくなるように設定されている。
覆いシート11の横長寸法は、ライニングクロス10の横長寸法よりも大きく設定されており、両者の寸法差に相当する領域を覆いシート11の一側辺部11aとしている。
【0021】
ライニング作業時、配管外壁ライニング方法の手順により覆いシート11とともにライニングクロス10を縦管8の外周部に筒状に巻いて装着する。覆いシート11の一側辺部11aを強く巻き締めて接着剤などにより覆いシート11の他側辺部11bに接合して閉じる{図2の(a)参照}。
この状態では、覆いシート11の一側辺部11aが他側辺部11bと重なり合って封止手段を構成する。ライニングクロス10は、左右の開口端10a、10b同士を突き合せた筒状体をなし、自らの内周面を縦管8の外周部に密着させる。
【0022】
ライニングクロス10を養生して乾燥させた後、覆いシート11はライニングクロス10から剥離させて取り除いてもよい。ライニングクロス10の開口端10a、10b同士は、突き合わせずに部分的に重ね合わせるようにしてもよい。
【0023】
覆いシート11は、肉薄な熱収縮性樹脂(PTFE、PFA、FEP)により形成してもよい。この場合、ライニング作業後、熱湯などを用いて覆いシート11を加熱することにより、覆いシート11が全体的に収縮する。これにより、覆いシート11がライニングクロス10を縦管8の外周部に強く密着させるようになり、ライニングクロス10の施工性が向上する。
【0024】
上記構成では、ライニングクロス10を縦管8の外周部に密着させる構成のため、縦管8に雑排水を流している使用時にライニング作業を施すことができる。このため、集合住宅などでは通常通りの居住生活をしながら炊事・洗濯・料理・入浴などの水回りの家事を持続することができ、集合住宅などの住人にとって極めて好都合となる。しかも、ライニングクロス10を縦管8の外部から施工することができるため、ライニング作業が容易かつ迅速になり、作業効率が向上してコスト的に有利になる。この場合、ライニング作業後、長期使用に伴って縦管8の腐食が進行してその機能が失われても、縦管8の外周部に設けたライニングクロス10が縦管8の機能を保持することになる。
【0025】
スラブ6、7間の縦管8を補修・更生させるには、通常では、内部に腐蝕部分を有する縦管8を切断して新たな縦管と取換えることが考えられる。この場合、取換え作業が大がかりになり、作業コストも上昇する不利がある上に、取換え作業の開始から終了まで建物の住人側に雑排水の使用を中断させる不都合を避けることができない。
これに対して、本発明の実施例1では、縦管8に雑排水を流している使用時にライニング作業を施すことができるため、建物の住人側に水回りの家事を中断させる不都合がなく自由に行わせることができ、住人側の便宜を図る配慮が行き届いているものである。
【実施例2】
【0026】
図3の(a)は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、覆いシート11の横長寸法は、ライニングクロス10の横長寸法と略同一にし、覆いシート11の一側辺部11aと他側辺部11bとを閉じられるようにしたことである。このため、覆いシート11の一側辺部11aには、係合歯12aが植え込まれた布テープ12を設け、他側辺部11bには係合歯13aが植え込まれた布テープ13を設けている。
【0027】
スライダ14は、スライド操作により係合歯12a、13aとの噛合いを係脱させるもので、係合歯12a、13aとともに封止手段としてジッパー15を構成する。
ライニング作業時、スライダ14を引き上げることで、覆いシート11の一側辺部11aと他側辺部11bとが閉じられるため、覆いシート11がライニングクロス10を締付けて縦管8の外周部に密着させる。
【実施例3】
【0028】
図3の(b)は本発明の実施例3を示す。実施例3が実施例2と異なるところは、ジッパー15に代わって押圧テープ16を設けたことである。
押圧テープ16は多数の係合子17aを有するシート片部17と、フック部18aを有するシート片部18とから成る。シート片部17は、覆いシート11の一側辺部11aに上下複数段にわたって取付けられ、シート片部18は、覆いシート11の他側辺部11bに上下複数段にわたって取付られている。
【0029】
ライニング作業時、シート片部18をシート片部17上に重ね合わせて押圧することにより、フック部18aが係合子17aに着脱可能に係合する。これにより、覆いシート11の一側辺部11aと他側辺部11bとが閉じられるため、覆いシート11がライニングクロス10を締付けて縦管8の外周部に密着させる。なお、係合子17aとフック部18aとは、便宜上、黒点で図示した。
【実施例4】
【0030】
図4は本発明の実施例4を示す。実施例4が実施例1と異なるところは、ライニングクロス10を蛇腹状に形成し、覆いシート11を省いたことである。
すなわち、ライニングクロス10は、図4の(a)に示すように長軸方向に伸縮可能な蛇腹状になっており、左右の開口端10a、10bが接近して対向する状態に配置されている。
【0031】
図4の(b)に示すようにライニングクロス10を収縮状態で縦管8に装着した後、縦管8に沿って伸長させる。このため、有端リング状のブラケット環18Aをライニングクロス10の上端部、中間部および下端部に嵌着している。ブラケット環18Aの両開口端部には、螺子穴19aを有する取付片19が一体に延設されている。
二枚の取付片19を重ねて螺子穴19aに取付ボルト20を螺合させることにより、ブラケット環18Aが縮径変形する。このため、ライニングクロス10の開口端10a、10b同士が接合するとともに、ライニングクロス10を締付けて縦管8の外周部に密着させる。
【実施例5】
【0032】
図5は本発明の実施例5を示す。実施例5が実施例1と異なるところは、ライニングクロス10を複数の帯状部21により形成したことである。すなわち、図5の(a)に示すように、複数の帯状部21を拡縮可能な一対の有端リング22の間に連結している。有端リング22の両開口端部22a、22bには、螺子穴23aを有する耳辺部23が延設されている。
【0033】
ライニング作業時、有端リング22を拡開して帯状部21とともに縦管8の外周部へ巻き付けて装着した後、有端リング22を縦管8の周りに回転して帯状部21を捻じる。これにより、帯状部21同士が螺旋状に変形して隙間なく密着し合うとともに、縦管8の外周部に密着する。
【0034】
図5の(b)に示すように、二枚の耳辺部23を重ねて取付ボルト24を螺子穴23aに螺合することにより、有端リング22が縦管8に取付けられるとともに、縦管8に対するライニングクロス10の密着状態が保持される。有端リング22の帯状部21を捻じる時、帯状部21が螺旋形になり、有端リング22間の距離が短くなるので、その短縮量を見込んで帯状部21を縦管8の必要な長さ寸法よりも大きく設定しておくものである。
実施例5では、有端リング22の捻じり度合いにより、縦管8の外周部に対する帯状部21の密着度合いを調整できる利点がある。
【実施例6】
【0035】
図6は本発明の実施例6を示す。実施例6が実施例1と異なるところは、ライニングクロス10を二枚の半筒部26により形成したことである。すなわち、半筒部26は、半筒状の樋部27の内面部に薄肉のビニールシート28を介して収容されている。樋部27の外周面には、左右の端部に耳部29を延設した半円弧状のバンド部30が宛がわれている。
【0036】
ライニング作業時、半筒部26を樋部27とともに縦管8の外周部に宛がう。この状態で、螺子穴29aを有する耳部29を重ね合わせ、螺子穴29aに取付ボルト31を螺合する。これにより、半筒部26の内周面が縦管8の外周部に密着するとともに、半筒部26の開口端部26a同士および開口端部26b同士が押し合って接合される。この場合、螺子穴29aに対する取付ボルト31の締付け具合によって、縦管8に対するライニングクロス10の密着度合いを調整することができる。
半筒部26の養生・乾燥後、樋部27を半筒部26から剥離して取外すが、取外しが不要な場合、樋部27は取付けたままであってもよい。
【実施例7】
【0037】
図7は本発明の実施例7を示す。実施例7が実施例6と異なるところは、バンド部30を省き、樋部27同士をヒンジ部32により連結したことである。すなわち、樋部27は、互いの一側辺部27a同士をヒンジ部32により連結し、開位置と閉位置との間で回動可能になっている。樋部27の他側辺部27bには、互いに異極となる磁石M1、M2を封止手段として固着している。
【0038】
ライニング作業時、二個の樋部27を開位置で半筒部26とともに縦管8の外周部に装着し、閉位置に回動して磁石M1、M2により締付けて保持する。これにより、樋部27が半筒部26に押圧力を与え、半筒部26の内周面を縦管8の外周部に密着させてライニング施工を終了する。
【0039】
この場合、二個の樋部27をライニングクロス10とともに縦管8に装着した後、閉位置に回動して磁石M1、M2により締付けて保持するので、ライニング作業が容易かつ迅速になり、ライニングの作業効率が向上して作業性に優れる。
半筒部26の養生・乾燥後、樋部27を半筒部26から剥離して取外すが、取外しが不要な場合、樋部27は実施例6と同様に取付けたままであってもよい。
【実施例8】
【0040】
図8は本発明の実施例8を示す。実施例8が実施例1と異なるところは、ライニングクロス10の覆いシート11を押圧するローラ機構32Aを付設したことである。
ローラ機構32Aでは、有端環状のループ軸33に複数の鼓状ローラ34を設け、ライニングクロス10を縦管8に装着した後、ループ軸33を覆いシート11の外周部に嵌める。
【0041】
鼓状ローラ34を覆いシート11の外周部に圧接させた状態で縦管8の軸方向に移動させる。ループ軸33は半ループ部33a、33bを取付ボルト35で着脱可能に連結してなり、二分割形のループ構造になっている。鼓状ローラ34の曲率半径は、覆いシート11の外周部の曲率半径の見合った寸法に設定されている。
この場合、鼓状ローラ34の圧接により、ライニングクロス10の表面が円滑になるとともに、ライニングクロス10が縦管8の外周部に強く密着し、ライニングクロス10の高品質化が図られる。
【0042】
(使用例)
高層および超高層ビル向けの配管工事で使用され、上部集合管と下部集合管とを接続する単管式排水継手40では、内部に流下速度緩和用の整流部(図示せず)および旋回羽根39、41などの起伏部を備えている(図9および図10参照)。この場合、単管式排水継手40に対して垂直に接続された水平な支管40aについても、実施例1と同様にライニングクロス10を施すことができる。
【0043】
また、高層ビルには、図11に示すように、単管式排水方式のソベントやセクチャーなどの集合継手45が用いられるが、集合継手45は横引き管46および縦本管47、48を連結して内部に断面形状急変部45a、45b、45cを有する。
この場合、集合継手45における横引き管46および縦本管47についても、実施例1と同様にライニングクロス10を施すことができる。
【0044】
(変形例)
(a)なお、塗料には、エポキシ樹脂に限らず、補強材となるFRPを組み込むことにより強度的に優れたライニングクロス10を雑排水管として機能させることができる。
(b)覆いシート11は、プラスチック製に限らず、布や網であってもよく、あるいは保温材を兼ねたものでもよく、要はライニングクロス10を配管に密着状態に締付けることができるものであればよい。
(c)実施例8で用いたローラ機構32Aは実施例1に限らず、実施例2ないし実施例7に適用してもよい。
(d)ライニングクロス10は、雑排水管ばかりでなく、水道管(給水管、冷却水管)、空調ダクトや排気ダクト(工業ダクト、厨房ダクト)などに適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
配管外壁ライニング装置では、ライニングクロスを配管の外周部に密着させる構成のため、配管に雑排水を流している使用時にもライニング作業を施すことができる。このため、集合住宅などでは通常通りの居住生活をしながら炊事・洗濯・料理・入浴などの水回りの家事を持続可能とする。水回りの家事を続行しながらライニング作業を行える便宜性により、需要を喚起して関連部品の流通を介して機械産業に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】塗装の対象となる排水管のライニング施工例を示す概略図である(実施例1)。
【図2】(a)はライニングクロスを縦管に装着した状態を示す斜視図、(b)は配管外壁ライニング装置の斜視図である(実施例1)。
【図3】(a)は配管外壁ライニング装置の斜視図(実施例2)、(b)は配管外壁ライニング装置の斜視図である(実施例3)。
【図4】(a)は収縮状態にあるライニングクロスを示す配管外壁ライニング装置の斜視図、(b)は伸長状態にあるライニングクロスを示す配管外壁ライニング装置の斜視図である(実施例4)。
【図5】(a)は装着前のライニングクロスを示す配管外壁ライニング装置の斜視図、(b)は装着後のライニングクロスを示す配管外壁ライニング装置の斜視図である(実施例5)。
【図6】縦管に装着する配管外壁ライニング装置の分解斜視図である(実施例6)。
【図7】縦管に装着する配管外壁ライニング装置の分解斜視図である(実施例7)。
【図8】(a)は配管外壁ライニング装置の上面図、(b)は配管外壁ライニング装置の側面図である(実施例8)。
【図9】単管式排水継手の斜視図である(使用例)。
【図10】単管式排水継手の斜視図である(使用例)。
【図11】集合継手の斜視図である(使用例)。
【符号の説明】
【0047】
1 通気管(配管)
2 汚水本管(配管)
3 雑排水本管(配管)
4 室内横引管(配管)
8 縦管(配管)
9 配管外壁ライニング装置
10 ライニングクロス
11 覆いシート
11a 覆いシートの一側辺部(封止手段)
11b 覆いシートの他側辺部(封止手段)
12、13 布テープ(封止手段)
12a、13b 係合歯(封止手段)
14 スライダ(封止手段)
15 ジッパー(封止手段)
16 押圧テープ(封止手段)
17、18 シート片部(封止手段)
17a 係合子(封止手段)
18a フック部(封止手段)
21 帯状部
22 有端リング
26 半筒部
27 樋部
27a 樋部の一側辺部
27b 樋部の他側辺部
32 ヒンジ部
32A ローラ機構
33 ループ軸
34 ローラ
M1、M2 磁石(封止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布に塗料が含浸されて配管の外周部に筒状に巻かれるライニングクロスと、
前記ライニングクロスの外周部を覆い、封止手段を用いて一側辺部と他側辺部とを閉じることにより、前記ライニングクロスを前記配管の外周部に密着させる覆いシートとを備えた配管外壁ライニング装置。
【請求項2】
前記覆いシートは、肉薄な熱収縮性樹脂により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管外壁ライニング装置。
【請求項3】
前記封止手段は、係合歯が植え込まれた布テープをスライダで開閉するジッパーであることを特徴とする請求項1に記載の配管外壁ライニング装置。
【請求項4】
前記封止手段は、多数の係合子とフック部とを着脱可能に係脱させる押圧テープからなることを特徴とする請求項1に記載の配管外壁ライニング装置。
【請求項5】
有端環状のループ軸に複数の鼓状ローラを設け、前記ライニングクロスを前記配管に装着した後、前記ループ軸を前記覆いシートの外周部に嵌めて、前記鼓状ローラを前記覆いシートの外周部に圧接させた状態で前記配管の軸方向に移動させるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配管外壁ライニング装置。
【請求項6】
前記ライニングクロスは、長軸方向に伸縮可能な蛇腹状になっており、前記ライニングクロスを収縮状態で前記配管に装着した後、前記配管に沿って伸長させることを特徴とする請求項1に記載の配管外壁ライニング装置。
【請求項7】
布に塗料を含浸してなるライニングクロスを複数の帯状部から形成し、前記帯状部を拡縮可能な一対の有端リングの間に連結し、前記帯状部を前記有端リングとともに前記配管の外周部へ巻き付けて装着した後、前記有端リングを前記配管の周りに回転して前記帯状部を捻じることにより、前記帯状部同士を前記配管の外周部で螺旋状に密着させることを特徴とする配管外壁ライニング装置。
【請求項8】
互いの一側辺部で、開位置と閉位置との間で回動可能にヒンジ部により連結されて互いの他側辺部に異極となる磁石を取付けて半筒状に形成された二個の樋部と、
布に塗料を含浸してなり、前記二個の樋部内に配されたライニングクロスとを備え、 前記二個の樋部を前記開位置で前記ライニングクロスとともに配管の外周部に装着し、前記閉位置に回動して前記磁石同士の吸着により前記二個の樋部を締付けて保持することを特徴とする配管外壁ライニング装置。
【請求項9】
布に塗料を含浸してなるライニングクロスを配管の外周部に筒状に巻く工程と、
覆いシートにより前記ライニングクロスの外周部を覆い、封止手段を用いて前記覆いシートの一側辺部と他側辺部とを閉じて、前記ライニングクロスを前記配管の外周部に密着させる工程とを備えた配管外壁ライニング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−55650(P2008−55650A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232646(P2006−232646)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(592036519)株式会社P・C・Gテクニカ (11)
【出願人】(501219002)TEXAS株式会社 (13)
【Fターム(参考)】