説明

配線回路基板の製造方法

【課題】追加絶縁層を薄く形成できるとともに、追加絶縁層の金属支持基板からの剥離を防止することのできる配線回路基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】
金属支持基板2の上にベース絶縁層3を部分的に形成し、ベース絶縁層3およびベース絶縁層3から露出する金属支持基板2の上にクロム薄膜20および銅薄膜21を順次形成し、銅薄膜21の上に導体パターン4を形成し、導体パターン4から露出する銅薄膜21を除去し、導体パターン4およびクロム薄膜20の表面にパラジウム触媒22を付着させ、導体パターン4から露出するクロム薄膜20をその表面に付着するパラジウム触媒22とともに除去し、パラジウム触媒が付着する導体パターンの表面にニッケルめっき層を形成し、ベース絶縁層3の上に導体パターン4を被覆するようにカバー絶縁層5を形成するとともに、ベース絶縁層3から露出する金属支持基板2の上に台座13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板の製造方法、詳しくは、回路付サスペンション基板などの配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路付サスペンション基板は、金属支持基板と、金属支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、ベース絶縁層の上に、導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを備えている。そして、このような回路付サスペンション基板は、例えば、ヘッドスライダを搭載して、ハードディスクドライブなどに実装される。
【0003】
回路付サスペンション基板の製造方法としては、例えば、以下に示す方法が知られている。
すなわち、まず、支持基板の上に、ベース絶縁層を所定パターンで形成し、そのベース絶縁層から露出する支持基板の表面と、ベース絶縁層の全面とに、クロム薄膜および銅薄膜を順次形成する。次いで、ベース絶縁層の上に形成されている銅薄膜の表面に、導体層を配線回路パターンで形成し、導体層の配線回路パターンが形成されている部分以外の銅薄膜を除去する。次いで、導体層を、塩化パラジウム触媒液で活性化処理し、導体層を被覆する無電解ニッケルめっき層を形成する。その後、無電解ニッケルめっき層で被覆されている部分以外のクロム薄膜を除去した後、導体層を被覆するためのカバー絶縁層を、所定パターンで形成する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、このような回路付サスペンション基板において、ヘッドスライダは、通常、金属支持基板の上に形成される台座の上に、搭載される。
このような台座は、例えば、ヘッドスライダの搭載位置において、ベース絶縁層と同様の絶縁層から、ベース絶縁層とともに、台座ベース絶縁層として形成される(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−135981号公報
【特許文献2】特開2009−104712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるような回路付サスペンション基板では、ベース絶縁層は、支持基板と導体層とを絶縁するため、所定の厚み以上で形成される。
そのため、このような回路付サスペンション基板に、特許文献2に記載される方法によって、ベース絶縁層とともに台座ベース絶縁層を形成すると、ベース絶縁層の厚みに伴って、台座ベース絶縁層も厚く形成される。
【0007】
一方、近年では、ヘッドスライダが搭載される台座を薄く形成し、回路付サスペンション基板の薄層化を図ることが要求されている。
このような要求に対応するため、例えば、ヘッドスライダが搭載される台座を、カバー絶縁層と同様の絶縁層から、カバー絶縁層とともに形成することも勘案される。
カバー絶縁層は、ベース絶縁層よりも薄く形成することができるため、このような方法によれば、台座を薄く形成し、回路付サスペンション基板の薄層化を図ることができる。
【0008】
そして、特許文献1に記載の回路付スペンション基板の製造方法により、台座を形成する場合、支持基板の上のクロム薄膜が、導体層とともに塩化パラジウム触媒液で活性化されるため、無電解ニッケルめっき層が、クロム薄膜の上にも形成される。
そして、この方法では、無電解ニッケルめっき層で被覆されている部分以外のクロム薄膜のみが除去されるため、支持基板の上に形成されたクロム薄膜および無電解ニッケルめっき層は、除去されずに残存する。
【0009】
そのため、上記の方法により得られる回路付サスペンション基板に、カバー絶縁層とともに台座を形成すると、支持基板と台座との間に無電解ニッケルめっき層が介在し、この無電解ニッケルめっき層により、台座が支持基板から剥離しやすくなるという不具合を生じる。
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、追加絶縁層を薄く形成できるとともに、追加絶縁層の金属支持基板からの剥離を防止することのできる配線回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の配線回路基板の製造方法は、金属支持基板を用意する工程と、前記金属支持基板の上に、ベース絶縁層を部分的に形成する工程と、前記ベース絶縁層の上、および、前記ベース絶縁層から露出する前記金属支持基板の上に、クロム薄膜を形成する工程と、前記クロム薄膜の上に、銅薄膜を形成する工程と、前記銅薄膜の上に、導体パターンを形成する工程と、前記導体パターンから露出する前記銅薄膜を除去する工程と、前記導体パターンの表面、および、前記クロム薄膜の表面に、パラジウム触媒を付着させる工程と、前記導体パターンから露出する前記クロム薄膜を、その表面に付着する前記パラジウム触媒とともに除去する工程と、前記パラジウム触媒が付着する前記導体パターンの表面に、無電解ニッケルめっきにより、ニッケルめっき層を形成する工程と、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するようにカバー絶縁層を形成するとともに、前記ベース絶縁層から露出する前記金属支持基板の上に、追加絶縁層を形成する工程とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線回路基板の製造方法によれば、ニッケルめっき層が形成される前に、パラジウム触媒が、金属支持基板の表面からクロム薄膜とともに除去されるため、ニッケルめっき層は、金属支持基板の表面には形成されず、導体パターンの表面にのみ形成される。
そのため、このような配線回路基板の製造方法によれば、追加絶縁層と金属支持基板との間にニッケルめっき層が介在することが防止され、その結果、金属支持基板から追加絶縁層が剥離することを防止することができる。
【0012】
また、本発明の配線回路基板の製造方法によれば、追加絶縁層がカバー絶縁層とともに形成されるため、追加絶縁層を薄く形成することができ、配線回路基板の薄層化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板の平面図である。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板の先端部の拡大平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図1に示す回路付サスペンション基板の製造方法を示す工程図であって、(a)は、金属支持基板を用意する工程、(b)は、金属支持基板の上に、ベース絶縁層を部分的に形成する工程、(c)は、ベース絶縁層の上、および、ベース絶縁層から露出する金属支持基板の上に、クロム薄膜を形成する工程、(d)は、クロム薄膜の上に、銅薄膜を形成する工程、(e)は、銅薄膜の上に、導体パターンを形成する工程、(f)は、導体パターンから露出する銅薄膜を除去する工程を示す。
【図5】図4に続いて図1に示す回路付サスペンション基板の製造方法を示す工程図であって、(g)は、導体パターンの表面、および、クロム薄膜の表面に、パラジウム触媒を付着させる工程、(h)は、導体パターンから露出するクロム薄膜を、その表面に付着するパラジウム触媒とともに除去する工程、(i)は、パラジウム触媒が付着する導体パターンの表面に、無電解ニッケルめっきにより、ニッケルめっき層を形成する工程、(j)は、ベース絶縁層の上に、導体パターンを被覆するようにカバー絶縁層を形成するとともに、ベース絶縁層から露出する金属支持基板の上に、台座を形成する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板の平面図、図2は、図1に示す回路付サスペンション基板の先端部の拡大平面図、図3は、図2のA−A線断面図、図4は、図1に示す回路付サスペンション基板の製造方法を示す工程図、図5は、図4に続いて図1に示す回路付サスペンション基板の製造方法を示す工程図である。なお、図1および図2において、導体パターン4の相対配置を明確に示すために、ベース絶縁層3(後述)およびカバー絶縁層5(後述)は省略されている。
【0015】
図1において、回路付サスペンション基板1は、長手方向に延びる金属支持基板2に、磁気ヘッド(図示せず)とリード・ライト基板(図示せず)とを電気的に接続するための導体パターン4が一体的に形成されている。
導体パターン4は、磁気ヘッドの接続端子(図示せず)に接続するための磁気ヘッド側接続端子部6(以下、単に「端子部6」という場合がある。)と、リード・ライト基板の接続端子(図示せず)に接続するための外部側接続端子部7と、磁気ヘッド側接続端子部6および外部側接続端子部7を接続するための配線8とを一体的に備えている。
【0016】
配線8は、金属支持基板2の長手方向に沿って複数(4本)設けられており、幅方向(長手方向に直交する方向)において互いに間隔を隔てて並列配置されている。
磁気ヘッド側接続端子部6は、角ランドとして形成されており、各配線8の先端部がそれぞれ接続されるように、複数(4つ)設けられ、金属支持基板2の先端部(長手方向一端部)において、幅方向に間隔を隔てて並列配置されている。
【0017】
外部側接続端子部7は、角ランドとして形成されており、各配線8の後端部がそれぞれ接続されるように、複数(4つ)設けられ、金属支持基板2の後端部(長手方向他端部)において、幅方向に間隔を隔てて並列配置されている。
また、回路付サスペンション基板1は、図3に示すように、金属支持基板2と、金属支持基板2の上に形成されるベース絶縁層3と、ベース絶縁層3の上に形成される導体パターン4と、ベース絶縁層3の上に形成され、導体パターン4の配線8を被覆するカバー絶縁層5とを備えている。
【0018】
ベース絶縁層3は、導体パターン4に対応して、金属支持基板2の表面に形成される。
導体パターン4は、詳しくは後述するが、例えば、公知のアディティブ法などにより形成され、各配線8とベース絶縁層3との間には、銅薄膜21およびクロム薄膜20が介在されている。
銅薄膜21およびクロム薄膜20は、それらが順次積層されるように配線8の下面に形成されており、より具体的には、配線8と略同一パターンで形成されている。
【0019】
また、導体パターン4の表面(上面および側面)には、ニッケルめっき層23が形成されている。
カバー絶縁層5は、ベース絶縁層3の表面において、配線8を被覆し、磁気ヘッド側接続端子部6および外部側接続端子部7を露出するように、形成されている。
次に、回路付サスペンション基板1の先端部について、図2および図3を参照して、詳細に説明する。
【0020】
回路付サスペンション基板1の先端部には、図2に示すように、端子部6と、U字開口部11と、スライダー9(図3(破線)参照)が接合される接合面12と、スライダー9(図3(破線)参照)を支持するための、追加絶縁層としての台座13とが設けられている。
各端子部6は、回路付サスペンション基板1の先端縁部に配置され、幅方向に互いに間隔を隔てて並列配置されている。各端子部6の後端面は、幅方向において面一となるように配置されている。各端子部6の先端には、配線8がそれぞれ接続されている。すなわち、配線8は、幅方向一方側の1対(2つ)の配線8Aと、幅方向他方側の1対(2つ)の配線8Bとが、それぞれ、回路付サスペンション基板1の先端部の幅方向両端部(U字開口部11の幅方向両外側)を通過し、先端縁部に至った後、幅方向内側に屈曲し、さらに後側に屈曲して、各端子部6の先端に接続されるように、引き回されている。
【0021】
各端子部6の幅(幅方向長さ)は、例えば、15〜200μm、好ましくは、50〜100μmであり、各端子部6間の間隔(幅方向の間隔)は、例えば、15〜200μm、好ましくは、20〜100μmである。これにより、幅方向両最外側に配置される端子部6間の長さが、例えば、400〜1100μm、好ましくは、500〜1000μmに設定される。
【0022】
U字開口部11は、平面視において先側に向かって開放される略U字状に形成されており、金属支持基板2を厚み方向に貫通するように、形成されている。U字開口部11は、幅方向において、幅方向一方側の1対の配線8Aと、幅方向他方側の1対の配線8Bとの間に配置されている。具体的には、U字開口部11は、その幅方向両外側に1対の配線8が通過できるように、金属支持基板2の幅方向両端縁との間にマージンが設定されるとともに、その先側縁部に端子部6が配置されるように、金属支持基板2の先端縁とのマージンが設定されている。
【0023】
接合面12は、U字開口部11の幅方向内側において、金属支持基板2の表面に区画されており、スライダー9(図3(破線)参照)が対向配置されるように、平面視略矩形状に区画されている。接合面12は、長手方向において端子部6と間隔を隔てて隣接配置されている。
台座13は、U字開口部11の幅方向内側において、接合面12よりもわずかに小さい平面視略矩形平板形状に形成されている。
【0024】
なお、図示しないが、カバー絶縁層5から露出する磁気ヘッド側接続端子部6および外部側接続端子部7の表面には、必要により、金属めっき層が設けられている。
次に、回路付サスペンション基板1の製造方法について、図4および図5を参照して説明する。
なお、回路付サスペンション基板1の製造方法には、公知のロール・トゥ・ロール法が採用される。
【0025】
まず、この方法では、図4(a)に示すように、金属支持基板2を用意する。
金属支持基板2を形成する金属材料としては、例えば、ステンレス、42アロイなどが用いられ、好ましくは、ステンレスが用いられる。
金属支持基板2の厚みは、例えば、10〜60μm、好ましくは、15〜25μmであり、また、幅方向長さは、例えば、50〜500mm、好ましくは、100〜300mmである。
【0026】
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、金属支持基板2の上に、ベース絶縁層3を部分的に形成する。より具体的には、導体パターン4が形成される部分に対応し、かつ、接合面12(図2参照)における金属支持基板2の表面が露出するように、ベース絶縁層3を形成する。
ベース絶縁層3を形成する絶縁材料は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂が用いられる。これらのうち、好ましくは、感光性の合成樹脂が用いられ、さらに好ましくは、感光性ポリイミドが用いられる。
【0027】
ベース絶縁層3を形成するには、公知の方法が採用される。より具体的には、例えば、金属支持基板2の全面に、例えば、感光性の合成樹脂の溶液(ワニス)を塗布し、例えば、60〜180℃、好ましくは、90〜160℃で加熱して前駆体皮膜を得た後、フォトマスクを用いて、例えば、300〜450nm、好ましくは、350〜420nmの波長の照射線によって、所定パターンとする。なお、露光における積算露光量は、例えば、100〜2000mJ/cm、好ましくは、600〜1300mJ/cmである。次いで、例えば、150〜200℃で加熱して、露光部分を不溶化した後、例えば、アルカリ現像液などの公知の現像液により、所定パターンで現像する。その後、例えば、250℃以上で加熱し、硬化させる。
【0028】
また、ベース絶縁層3の形成は、金属支持基板2の全面に、上記した合成樹脂の溶液(ワニス)を均一に塗布した後、乾燥し、次いで、必要に応じて、加熱することによって硬化させ、その後、エッチングなどにより上記したパターンに形成することもできる。
さらに、ベース絶縁層3の形成は、例えば、合成樹脂を上記したパターンのフィルムに予め形成して、そのフィルムを、金属支持基板2の表面に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0029】
このようにして形成されるベース絶縁層3の厚みは、例えば、5〜15μm、好ましくは、8〜10μmである。
次いで、この方法では、図4(c)に示すように、ベース絶縁層3の上、および、ベース絶縁層3から露出する金属支持基板2の上に、クロム薄膜20を形成する。
クロム薄膜20は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法など、公知の方法により形成することができる。好ましくは、スパッタリング法(クロムスパッタリング法)が挙げられる。
【0030】
クロム薄膜20の厚みは、例えば、10〜60nm、好ましくは、20〜40nmである。
次いで、この方法では、図4(d)に示すように、クロム薄膜20の上に、銅薄膜21を形成する。
銅薄膜21は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法など、公知の方法により形成することができる。好ましくは、スパッタリング法(銅スパッタリング法)が挙げられる。
【0031】
銅薄膜21の厚みは、例えば、50〜200nm、好ましくは、60〜80nmである。
次いで、この方法では、図4(e)に示すように、銅薄膜21の上に、導体パターン4を形成する。
導体パターン4を形成する導体材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの導体材料が用いられ、好ましくは、銅が用いられる。
【0032】
導体パターン4を形成するには、まず、銅薄膜21の表面に、例えば、感光性ドライフィルムレジストなどからなるめっきレジストを、導体パターン4の反転パターンで形成する。
その後、めっきレジストから露出する銅薄膜21の表面に、電解めっきにより、導体パターン4を形成し、その後、めっきレジストを、例えば、水酸化ナトリウム水溶液など、公知のレジスト剥離液などにより除去する。
【0033】
このようにして形成される導体パターン4の厚みは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜25μmである。
次いで、この方法では、図4(f)に示すように、導体パターン4から露出する銅薄膜21を除去する。
銅薄膜21は、例えば、硝酸過酸化水素混合液などをエッチング液として用いて、エッチングすることにより、除去することができる。
【0034】
次いで、この方法では、図5(g)に示すように、導体パターン4の表面、および、クロム薄膜20の表面に、パラジウム触媒22を付着させる。
パラジウム触媒22は、例えば、導体パターン4およびクロム薄膜20を、塩化パラジウム水溶液に浸漬することにより、それらの表面に付着させることができる。このような場合における浸漬時間は、例えば、30〜150秒、好ましくは、60〜120秒である。
【0035】
次いで、この方法では、図5(h)に示すように、導体パターン4から露出するクロム薄膜20を、その表面に付着するパラジウム触媒22とともに除去する。
この方法において、クロム薄膜20は、例えば、銅に対する溶解性が低く、かつ、クロムに対する溶解性の高いエッチング液を用いて、エッチングすることにより、除去することができる。このような溶液として、より具体的には、例えば、フェリシアン化カリウム水溶液などが挙げられる。
【0036】
これにより、金属支持基板2の上のクロム薄膜20が、パラジウム触媒22とともに除去され、パラジウム触媒22は、導体パターン4の表面(上面および側面)にのみ付着する。
次いで、この方法では、図5(i)に示すように、パラジウム触媒22が付着する導体パターン4の表面に、無電解ニッケルめっきにより、ニッケルめっき層23を形成する。
【0037】
この方法では、無電解ニッケルめっき層23は、例えば、ベース絶縁層3から露出する金属支持基板2の表面には形成されず、パラジウム触媒22が付着した導体パターン4(磁気ヘッド側接続端子部6および外部側接続端子部7を含む)の上面および側面のみを被覆するように、形成される。
この無電解ニッケルめっき層23は、硬質のニッケル薄膜として形成され、その厚みは、例えば、0.05〜0.2μmである。
【0038】
次いで、この方法では、図5(j)に示すように、ベース絶縁層3の上に、導体パターン4を被覆するようにカバー絶縁層5を形成するとともに、ベース絶縁層3から露出する金属支持基板2の上に、台座13を形成する。
より具体的には、この方法では、配線8を被覆し、磁気ヘッド側接続端子部6および外部側接続端子部7を露出するように、カバー絶縁層5形成し、それとともに、金属支持基板2の表面に、台座13を形成する。
【0039】
カバー絶縁層5および台座13を形成する絶縁材料は、ベース絶縁層3の絶縁材料と同様のものが挙げられる。
カバー絶縁層5および台座13を同時に形成するには、ベース絶縁層3、および、ベース絶縁層3から露出する金属支持基板2の全面に、例えば、感光性の合成樹脂の溶液(ワニス)を塗布し、その後、上記のベース絶縁層3の形成と同様の方法によって、乾燥後、露光および現像し、必要により硬化させる。なお、露光における積算露光量は、例えば、100〜2000mJ/cm、好ましくは、300〜1300mJ/cmである。
【0040】
また、カバー絶縁層5および台座13の形成は、ベース絶縁層3の上面全面に、上記した合成樹脂の溶液(ワニス)を均一に塗布した後、乾燥し、次いで、必要に応じて、加熱することによって硬化させ、その後、エッチングなどにより上記したパターンに形成することもできる。
さらに、カバー絶縁層5および台座13の形成は、例えば、合成樹脂を上記したパターンのフィルムに予め形成して、そのフィルムを、ベース絶縁層3の表面に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0041】
このようにして形成されるカバー絶縁層5および台座13の厚みは、例えば、3〜8μm、好ましくは、4〜5μmである。
その後、図示しないが、カバー絶縁層5から露出する磁気ヘッド側接続端子部6および外部側接続端子部7の表面(上面)に形成されたニッケルめっき層23を、除去し、その後、磁気ヘッド側接続端子部6および外部側接続端子部7の表面(上面)に、例えば、電解金めっきにより、金属めっき層を形成する。
【0042】
ニッケルめっき層23は、例えば、硝酸過酸化水素混合液などをエッチング液として用いて、エッチングすることにより、除去することができる。
その後、必要により、金属支持基板2を所望の形状に外形加工する。
外形加工は、特に制限されず、例えば、金属支持基板2の表面(ベース絶縁層3、導体パターン4、カバー絶縁層5および台座13を含む)および裏面に、例えば、感光性ドライフィルムレジストを積層し、露光および現像して所定パターンとした後、そのドライフィルムレジストから露出する金属支持基板2を、例えば、塩化第二鉄、過酸化水素/硫酸混合液、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの酸性薬液などのエッチング液を用いてエッチングする。
【0043】
これにより、回路付サスペンション基板1を形成することができる。
なお、図示しないが、回路付サスペンション基板1において、そのインピーダンスを制御するために、例えば、ベース絶縁層3の下面の金属支持基板2を、部分的に除去し、開口部を形成することもできる。
金属支持基板2の開口部は、特に制限されず、例えば、上記金属支持基板2の外形加工とともに、同様の方法で形成することができる。
【0044】
そして、このようにして得られた回路付サスペンション基板1には、図3に示すように、スライダー9(破線参照)を搭載する。スライダー9は、図示しないが、接合面12よりもやや大きいサイズの矩形平板形状に形成されており、その先端部には、磁気ヘッドが実装されている。
このようなスライダー9の搭載方法としては、公知の方法でよく、例えば、台座13の上面に接着剤を塗布した後、スライダー9を、その下面と台座13の上面とが接触するように、台座13に載置する。
【0045】
その後、はんだボール(図示せず)を、磁気ヘッドの接続端子(図示せず)と、端子部6(または端子部6の表面に形成される金属めっき層)との間に配置し、そのはんだボールを溶融後、固化させることにより、磁気ヘッドの接続端子(図示せず)と、端子部6とを電気的に接続する。
これにより、回路付サスペンション基板1に、スライダー9を搭載することができる。
【0046】
そして、回路付サスペンション基板1の製造方法において、例えば、台座13と金属支持基板2との間にニッケルめっき層23が介在していると、ニッケルめっき層23をエッチングにより除去するときに、台座13の下のニッケルめっき層23が部分的に除去され(すなわち、台座13にアンダーカットが生じ)、これにより、台座13が金属支持基板2から剥離する場合がある。
【0047】
一方、このような回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、ニッケルめっき層23が形成される前に、パラジウム触媒22が、金属支持基板2の表面からクロム薄膜20とともに除去されるため、ニッケルめっき層23は、金属支持基板2の表面には形成されず、導体パターン4の表面(上面および側面)にのみ形成される。
そのため、このような回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、台座13と金属支持基板2との間にニッケルめっき層23が介在することが防止され、その結果、金属支持基板2から台座13が剥離することを、防止することができる。
【0048】
また、このような回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、台座13がカバー絶縁層5とともに形成されるため、台座13を薄く形成することができ、回路付サスペンション基板1の薄層化を図ることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されることはない。
実施例
以下の方法により、ロール・トゥ・ロール法にて、回路付サスペンション基板を製造した。
【0050】
すなわち、まず、幅300mm、厚さ18μm、長さ140mのロール形状のステンレス箔を用意し(図4(a)参照)、その上に、感光性ポリアミック酸溶液(JR−3380P、日東電工社製)を、25μmの厚みで塗布した後、150℃で加熱処理し、ポリイミド前駆体皮膜を得た。次いで、そのポリイミド前駆体皮膜に、フォトマスクを用いて、ベース絶縁層が形成される所定パターンで露光した。このとき、積算露光量は、1000mJ/cmとした。その後、ポリイミド前駆体皮膜を、有機溶媒現像液を用いて現像し、所定パターンとした後、370〜400℃にて硬化して、ステンレス箔の上に、部分的に厚み10μmのベース絶縁層を形成した(図4(b)参照)。
【0051】
次いで、ベース絶縁層の上、および、ベース絶縁層から露出するステンレス箔の上に、スパッタリングにより、厚さ30nmのクロム薄膜を形成し(図4(c)参照)、その後、クロム薄膜の上に、スパッタリングにより、厚さ70nmの銅薄膜を形成した(図4(d)参照)。
次いで、感光性ドライフィルムレジスト(UFG255、旭化成イーマテリアルズ社製)をラミネートし、フォトマスクを用いて、導体パターンが形成されるパターンと逆のパターンで露光した。このとき、積算露光量は、180mJ/cmとした。その後、25℃において、0.7重量%の炭酸ナトリウム水溶液にて感光性ドライフィルムレジストを現像し、導体パターンが形成されるパターンと逆のパターンのめっきレジストを形成した。
【0052】
次いで、めっきレジストから露出する銅薄膜の上に、電解銅めっきにより厚さ12μmの導体パターンを形成し、その後、めっきレジストを除去した(図4(e)参照)。
次いで、導体パターンから露出する銅薄膜を、硝酸過酸化水素混合液を用いて、エッチングにより除去した(図4(f)参照)。
次いで、塩化パラジウム水溶液に浸漬させ、導体パターンの表面、および、クロム薄膜の表面に、パラジウム触媒を付着させた(図5(g)参照)。
【0053】
次いで、導体パターンから露出するクロム薄膜を、フェリシアン化カリウム水溶液を用いてエッチングし、その表面に付着するパラジウム触媒とともに除去した(図5(h)参照)。
次いで、無電解ニッケルめっき処理し、パラジウム触媒が付着する導体パターンの上面および側面に、無電解ニッケルめっきにより、ニッケルめっき層を形成した(図5(i)参照)。
【0054】
次いで、感光性ポリアミック酸溶液(JR−3380P、日東電工社製)を9μmの厚みで塗布した後、150℃で加熱処理し、ポリイミド前駆体皮膜を得た。次いで、そのポリイミド前駆体皮膜に、フォトマスクを用いて、カバー絶縁層および台座が形成される所定パターンで露光した。このとき、積算露光量は、1000mJ/cmとした。その後、ポリイミド前駆体皮膜を、有機溶媒現像液を用いて現像し、所定パターンとした後、370〜400℃にて硬化して、ベース絶縁層の上に、導体パターンを被覆するようにカバー絶縁層を形成するとともに、ベース絶縁層から露出するステンレス箔の上に、台座を形成した(図5(j)参照)。なお、カバー絶縁層および台座の厚みは、5μmであった。
【0055】
次いで、カバー絶縁層から露出する導体パターン(磁気ヘッド側接続端子部の上面、および、外部側接続端子部の上面)に形成されたニッケルめっき層を、硝酸過酸化水素混合液を用いて、エッチングにより除去した。
次いで、ステンレス箔を外形加工するとともに、ベース絶縁層の下面側のステンレス箔に、インピーダンス制御用の開口部を形成した。すなわち、感光性ドライフィルムレジスト(AQ−4059、旭化成イーマテリアルズ社製)をラミネートし、フォトマスクを用いて、所定パターンで露光した。このとき、積算露光量は、105mJ/cmとした。その後、25℃において、0.7重量%の炭酸ナトリウム水溶液にて感光性ドライフィルムレジストを現像し、所定パターンで、エッチングレジストを形成した。
【0056】
次いで、塩化第二鉄溶液を用いて、エッチングレジストから露出するステンレス箔をエッチングにより除去し、ステンレス箔を外形加工するとともに、そのステンレス箔に開口部を形成した後、エッチングレジストを剥離した。
その後、カバー絶縁層から露出する導体パターン(磁気ヘッド側接続端子部の上面、および、外部側接続端子部の上面)に、電解金めっきにより、金属めっき層を形成した。
【0057】
これにより、回路付サスペンション基板を得た。
得られた回路付サスペンション基板において、台座は、ステンレス箔に対する密着性に優れ、ステンレス箔から剥離しなかった。
比較例
クロム薄膜を除去する前に、パラジウム触媒が付着する導体パターンの上面および側面と、金属支持基板の表面とに、無電解ニッケルめっきにより、ニッケルめっき層を形成した後、ニッケルめっき層から露出するクロム薄膜を、パラジウム触媒とともに除去した以外は、実施例と同様の操作により、回路付サスペンション基板を得た。
【0058】
得られた回路付サスペンション基板において、台座は、ステンレス箔に対する密着性に劣り、ステンレス箔から剥離しやすかった。
【符号の説明】
【0059】
1 回路付サスペンション基板
2 金属支持基板
3 ベース絶縁層
4 導体パターン
5 カバー絶縁層
6 磁気ヘッド側接続端子部
7 外部側接続端子部
8 配線
9 スライダー
11 U字開口部
12 接合面
13 台座
20 クロム薄膜
21 銅薄膜
22 パラジウム触媒
23 ニッケルめっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持基板を用意する工程と、
前記金属支持基板の上に、ベース絶縁層を部分的に形成する工程と、
前記ベース絶縁層の上、および、前記ベース絶縁層から露出する前記金属支持基板の上に、クロム薄膜を形成する工程と、
前記クロム薄膜の上に、銅薄膜を形成する工程と、
前記銅薄膜の上に、導体パターンを形成する工程と、
前記導体パターンから露出する前記銅薄膜を除去する工程と、
前記導体パターンの表面、および、前記クロム薄膜の表面に、パラジウム触媒を付着させる工程と、
前記導体パターンから露出する前記クロム薄膜を、その表面に付着する前記パラジウム触媒とともに除去する工程と、
前記パラジウム触媒が付着する前記導体パターンの表面に、無電解ニッケルめっきにより、ニッケルめっき層を形成する工程と、
前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するようにカバー絶縁層を形成するとともに、前記ベース絶縁層から露出する前記金属支持基板の上に、追加絶縁層を形成する工程と
を備えることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−96933(P2011−96933A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251087(P2009−251087)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】