説明

配線基板及びその製造方法

【課題】コンデンサ等を配線基板に内蔵する場合、半導体チップと外部との間で誘電率が低い信号配線を構成し、信号の伝送遅延を抑制可能な配線基板を提供する。
【解決手段】本発明の配線基板10は、半導体チップ200(搭載部品)を載置し、上下を貫通する収容穴部11aが開口されたコア材11と、収容穴部11aに収容されくり抜き部100aが形成されたコンデンサ100(内蔵部品)と、コア材11の上下にそれぞれ絶縁層及び導体層を交互に積層形成した配線積層部12、13と、収容穴部11aとコンデンサ100の間隙部、及びくり抜き部100aに充填されコンデンサ100の材料より誘電率が低い樹脂充填材50、51と、樹脂充填材51を貫通するスルーホール導体60を備えている。スルーホール導体60は第1配線積層部12を介して半導体チップ100に接続される信号配線として用いられ、低い誘電率により信号の伝送遅延を抑制し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア材に開口された収容穴部に内蔵部品を収容した配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数の回路素子を形成した半導体チップを載置するためのパッケージが広く用いられている。パッケージの構造としては、例えば、コア材を配置し、その上下に導体層及び絶縁層を交互に積層した配線積層部を形成した配線基板が知られている。このような配線基板には、載置される半導体チップに対して電源供給のための電源配線、グランド配線、データや制御信号の送受信のための信号配線などの配線構造を設ける必要がある。半導体チップが載置された配線基板は、プリント基板等の外部基材に実装され、半導体チップの多数の端子と外部基材が配線基板の配線構造を経由して電気的に接続される。
【0003】
一方、半導体チップに供給される電源を安定化させるために、パッケージにコンデンサを配置して電源配線に接続することが望ましい。この場合、コンデンサを配線基板上に搭載する構成では、コンデンサの配置領域を確保するために他の搭載部品の配置の自由度が低下するとともに、コンデンサや半導体チップとの配線距離が他の配線等に制限されるために長くなり、配線抵抗やインダクタンスが大きくなるので、半導体チップに供給される電源電圧の降下などの特性劣化を招く。また、配線基板の完成後にコンデンサを搭載する必要があるため製造工程が複雑になる。一方、これらの欠点を是正すべく、配線基板の内部にコンデンサを内蔵する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようにコンデンサを配線基板に内蔵すれば、配線基板上に搭載する場合に比べて搭載部品に近接してコンデンサを配置することができる。
【特許文献1】特開2004−228190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の手法を採用したパッケージにおいては、配線基板上に載置された半導体チップの直下の領域にコンデンサが内蔵されるので、半導体チップの信号端子から延伸される信号配線はコンデンサの領域を避けて引き回す配置にせざるを得ない。そのため、配線基板の中央上部に載置された半導体チップから周辺領域を経由して信号配線を延伸し、それをビア導体で積層方向に接続する配線構造となるので、配線の自由度が小さくなり、さらにはパッケージサイズの増大につながる。ここで、コンデンサ自体に形成されるビア導体を信号配線として用いる構造も考えられるが、コンデンサは誘電率が比較的大きいセラミックからなるのが一般的であるため、配線基板のビア導体に比べるとコンデンサのビア導体を用いて信号を伝送させる場合の遅延が大きくなることは避けられない。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、半導体チップを載置し、その直下の領域に内蔵部品を収容した配線基板において、コンデンサの領域を避けることなく半導体チップと外部基材との間に信号配線を配置し、誘電率が低い信号配線を構成して信号の伝送遅延を抑えるとともに、小型化に適した配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の配線基板は、搭載部品を載置し、当該搭載部品と外部基材との間を電気的に接続する配線基板であって、上面及び下面を貫通する収容穴部が開口されたコア材と、前記収容穴部に収容され、上面及び下面を貫通するくり抜き部が形成された内蔵部品と、前記コア材の上面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した第1配線積層部と、前記コア材の下面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した第2配線積層部と、前記くり抜き部に充填され、前記内蔵部品の材料より誘電率が低い樹脂充填材と、前記くり抜き部における前記樹脂充填材を貫通するスルーホール導体とを備え、前記スルーホール導体を、前記第1配線積層部を介して前記搭載部品に接続される信号配線として用いるように構成されている。
【0007】
本発明の配線基板によれば、コア材の収容穴部に内蔵部品を収容し、内蔵部品のくり抜き部を樹脂充填材で充填し、その樹脂充填材を貫通するスルーホール導体を形成し、これを搭載部品に接続される信号配線として用いる構造を実現した。これにより、搭載部材から外部基材に信号配線を延伸する場合、コンデンサが配置されない周辺領域に引き回すことなく、直下の短い経路を通すことができるともに、信号配線の周囲の材料を低い誘電率で形成できる。よって、搭載部品に入出力される伝送信号の遅延を防止できるとともに、配線基板における配置の自由度を高めてパッケージの小型化を実現することができる。
【0008】
本発明において、前記樹脂充填材を、前記くり抜き部に加えて、前記収容穴部と前記内蔵部品の側面との間隙部に充填してもよい。
【0009】
本発明において、前記スルーホール導体は、前記搭載部品の中央部の直下に設けることが望ましい。これにより、搭載部品と外部基材との間で、信号配線を最短の経路で接続することができる。
【0010】
本発明において、前記内蔵部品は、セラミック焼結体を用いて構成されたコンデンサを用いることができる。この場合、前記コンデンサは、例えば、正極となる第1内部電極層及び負極となる第2内部電極層と、前記第1内部電極層に接続された複数の第1ビア導体と、前記第2内部電極層に接続された複数の第2ビア導体とを有する構造とし、前記複数の第1ビア導体及び前記複数の第2ビア導体を前記スルーホール導体の周囲に配置することができる。
【0011】
本発明において、前記スルーホール導体は、例えば、内壁に銅メッキを形成し、空洞部に閉塞体となる樹脂を充填した構造を持たせることができる。これにより、導電率が高く、かつ誘電率が低い信号配線を容易に形成することができる。
【0012】
本発明において、前記くり抜き部における前記樹脂充填材には、複数の前記信号配線として用いられる複数の前記スルーホール導体を形成し、当該複数の信号配線の配置密度を10mm当り8本以上とすることが望ましい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の配線基板の製造方法は、搭載部品と外部基材との間を電気的に接続する配線基板の製造方法であって、内蔵部品に、上面及び下面を貫通するくりぬき部を形成する工程と、コア材の上面及び下面を貫通し、収容穴部を開口する工程と、前記コア材及び前記内蔵部品の上面及び下面を互いに同方向にした状態で、前記内蔵部品を前記収容穴部に収容する工程と、前記内蔵部品の前記くり抜き部に、前記内蔵部品の材料よりも誘電率が低い樹脂充填材を充填する工程と、前記内蔵部品に、前記樹脂充填材を貫通するスルーホール導体を形成し、当該スルーホール導体の空洞部に樹脂を充填して閉塞体を形成する工程と、前記コア材の上面側に絶縁層及び導体層を交互に積層し、前記スルーホール導体と前記搭載部品の信号用の接続端子とを接続する配線構造を含む第1配線積層部を形成する工程と、前記コア材の下面側に絶縁層及び導体層を交互に積層し、第2配線積層部を形成する工程とを含んでいる。
【0014】
本発明の製造方法において、前記樹脂充填材を、前記くり抜き部に加えて、前記収容穴部と前記内蔵部品の側面との間隙部に充填してもよい。
【0015】
本発明の製造方法において、セラミックグリーンシートの一方の面上に、正極となる内部電極層用ペーストを塗布した第1塗布膜と負極となる内部電極層用ペーストを塗布した第2塗布膜とを形成する工程と、前記第1塗布膜を形成したシートと前記第2塗布膜を形成したシートとを積層した積層体を得る工程と、所定の位置にビア用貫通孔を形成する工程と、前記第1塗布膜に接続されかつ第1充填体となるビア導体用ペーストを前記ビア用貫通孔に充填するとともに、前記第2塗布膜に接続されかつ第2充填体となるビア導体用ペーストを前記ビア用貫通孔に充填する工程と、前記第1充填体及び前記第2充填体のそれぞれの上端及び下端に接するようにメタライズ層を形成する工程と、前記積層体の中央部に前記くり抜き部を形成する工程と、前記各工程における各形成物を一体的に焼成することにより、前記内蔵部品としてのコンデンサを得る工程と、をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明の製造方法において、前記内蔵部品の前記樹脂充填材を貫通する前記スルーホール導体に加えて、前記コア材の上面及び下面を貫通するスルーホール導体を同時に形成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、搭載部品を載置する配線基板にコンデンサ等の内蔵部品を収容する場合、内蔵部品をくり抜いて樹脂充填材を充填した部分を貫通するスルーホール導体を形成し、これを信号配線として用いる構造を採用したので、配線基板上で直下のコンデンサを避けて信号配線を引き回す必要がなくなる。これにより、信号の伝送遅延の防止と、配線基板の小型化を実現することができる。また、スルーホール導体の周囲に低誘電率の材料を容易に配置できるので、伝送遅延を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用した配線基板の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の配線基板の概略の断面構造を示す図である。図1に示す配線基板10は、コア材11と、コア材11の上面側の第1配線積層部12と、コア材11の下面側の第2配線積層部13とを含む構造を有している。本実施形態の配線基板10は、その内部に内蔵部品としてのコンデンサ100が内蔵されているとともに、上部に搭載部品としての半導体チップ200が載置されている。
【0020】
コア材11は、例えば、SiOなどのフィラー材を含有するエポキシ樹脂からなる。コア材11の上面には導体層21が形成され、コア材11の下面には導体層22が形成されている。コア材11には、中央を矩形状に貫通する収容穴部11aが形成され、この収容穴部11aにコンデンサ100が埋め込まれた状態で収容されている。また、このコンデンサ100の中央部にはくり抜き部100aが形成されている。収容穴部11aとコンデンサ100の側面との間隙部には、樹脂充填材50が充填されるとともに、コンデンサ100のくり抜き部100aにも樹脂充填材51が充填されている。なお、コンデンサ100の詳細な構造については後述する。樹脂充填材50、51としては、例えば高分子材料からなる熱硬化性樹脂が用いられる。樹脂充填材50はコンデンサ100を固定する役割を有し、コンデンサ100及びコア材11が変形する際に樹脂充填材50が吸収するように作用する。
【0021】
コア材11には、所定箇所を積層方向に貫通する複数のスルーホール導体30が形成されている。スルーホール導体30の内部は、例えばガラスエポキシ等からなる閉塞体31で埋められている。同様に、コンデンサ100の樹脂充填材51にも複数のスルーホール導体60が形成され、スルーホール導体60の内部は閉塞体61で埋められている。スルーホール導体30、60は、各導体層21、22における任意の配線パターンを積層方向に接続導通する役割を有する。本実施形態では、コンデンサ100の樹脂充填材51に形成されたスルーホール導体60が信号配線として用いられるが、詳しくは後述する。
【0022】
第1配線積層部12は、コア材11の上面側に積層形成された樹脂絶縁層14、16と、樹脂絶縁層14の上面に形成された導体層23と、樹脂絶縁層16の上面に形成された複数の端子パッド25と、樹脂絶縁層16の上面を覆うソルダーレジスト層18とからなる構造を有する。樹脂絶縁層14の所定位置には、各導体層21、23を積層方向に接続導通する複数のビア導体32が設けられ、樹脂絶縁層16の所定位置には、導体層23と端子パッド25を積層方向に接続導通する複数のビア導体34が設けられている。ソルダーレジスト層18は、複数箇所が開口されて複数の端子パッド25が露出し、そこに複数の半田バンプ40が形成されている。各々の半田バンプ40は、配線基板10に載置される半導体チップ200の各パッド201に接続される。
【0023】
第2配線積層部13は、コア材11の下面側に積層形成された樹脂絶縁層15、17と、樹脂絶縁層15の下面に形成された導体層24と、樹脂絶縁層17の下面に形成された複数のBGA用パッド26と、樹脂絶縁層17の下面を覆うソルダーレジスト層19とからなる構造を有する。樹脂絶縁層15の所定位置には、各導体層22、24を積層方向に接続導通する複数のビア導体33が設けられ、樹脂絶縁層17の所定位置には、導体層24とBGA用パッド26を積層方向に接続導通する複数のビア導体35が設けられている。ソルダーレジスト層19は、複数箇所が開口されて複数のBGA用パッド26が露出し、そこに複数の半田ボール41が接続される。配線基板10をBGAパッケージとして用いる場合、複数の半田ボール41を介して、外部基材(不図示)と配線基板10の各部との電気的接続が可能となる。
【0024】
本実施形態の配線基板10の構造上の特徴は、内蔵されるコンデンサ100のくり抜き部100aを樹脂充填材51で充填し、この樹脂充填材51を貫通するスルーホール導体60を信号配線として用いる点である。本来、コンデンサ100には、電源とグランドを内部電極層に供給するためのビア導体のみが積層方向の配線として形成されるが、本実施形態の構造ではコンデンサ100自体には供給されない信号配線を配線基板10の中央領域に配置することができる。そのため、半導体チップ200のパッド201から半田ボール41に至る信号経路は、スルーホール導体60を含む最短の経路を構成することができる。また、コンデンサ100に形成されるビア導体は誘電率が高いセラミックに囲まれるのに比べ、スルーホール導体60の内部の閉塞体61及び樹脂充填材51はコンデンサ100に比べて誘電率が低いため、信号の遅延を防ぐことができる。以上のように本実施形態の構造により、信号配線の経路長の短縮とその周辺材料の低誘電率化を実現し、信号の遅延を有効に防止することができる。
【0025】
一方、コンデンサ100の熱膨張率が比較的小さいのに対し、樹脂充填材51や閉塞体61は熱膨張率が大きいため、相対的に温度変化による影響が大きくなる。例えば、コンデンサ100の材料としてチタン酸バリウムを用いる場合、その熱膨張率が約5ppm/Kであるのに対し、樹脂充填材51や閉塞体61は、例えば40ppm/K程度である。このような熱膨張率の差は、上方の半導体チップ200の中央部及び周辺部における下方からの応力として作用し得るが、本実施形態の場合は、複数のスルーホール導体60の存在によって応力が緩和される。すなわち、樹脂充填材51の内部に剛性が高いスルーホール導体60を信号配線として配置するので、上述した樹脂充填材51や閉塞体61の熱による膨張、収縮を抑制する効果を有する。
【0026】
なお、本実施形態では簡単のため、コンデンサ100のくり抜き部100aに4本の信号配線(2×2)を形成する場合を例にとって説明するが、信号配線の本数は適宜に変更できる。この場合、信号配線の配置密度が比較的高い場合に上述の効果が高まるので、くり抜き部100aにおいて平面方向で10mm当り8本以上の信号配線の配置密度に対応する複数のスルーホール導体60を形成することが望ましい。
【0027】
次に、図1のコンデンサ100の構造について、図2及び図3を参照して説明する。それぞれ、図2にコンデンサ100の断面図を示し、図3にコンデンサ100の上面図を示している。本実施形態のコンデンサ100は、いわゆるビアアレイタイプのコンデンサであり、セラミック焼結体101を用いて、複数のセラミック誘電体層102を積層形成した構造を有する。セラミック焼結体101は、例えばチタン酸バリウム等の高誘電率セラミックからなる。各々のセラミック誘電体層102の間には、第1内部電極層110aと第2内部電極層110bが交互に配置されている。第1内部電極層110aは電源用の電極として機能し、第2内部電極層110bはグランド用の電極として機能し、両電極が絶縁体である各セラミック誘電体層102を挟んで対向配置されることで所定の容量が形成される。
【0028】
図3に示すように、矩形のセラミック焼結体101における比較的小さい矩形の中央領域に、上述のくりぬき部100aが形成されている。セラミック焼結体101の上面の周辺領域には、複数の第1端子電極107a及び複数の第2端子電極107bがアレイ状に配置されている。ここで、くり抜き部100aが形成される中央領域は、第1(第2)端子電極107a(107b)4個分のスペースに対応する。本実施形態では、コンデンサ100を配線基板10に内蔵する前の時点では、くり抜き部100aに図1の樹脂充填材51が充填されない状態になっている。
【0029】
セラミック焼結体101の上面に形成された上述の第1端子電極107a及び第2端子電極107bに加えて、セラミック焼結体101の下面には、複数の第1端子電極108aと第2端子電極108bが形成されている。また、セラミック焼結体101には、全てのセラミック誘電体層102を貫通する多数のビアホールにニッケル等を埋め込んだ複数の第1ビア導体109a及び複数の第2ビア導体109bが形成されている。そして、各々の第1ビア導体109aは、上方の第1端子電極107aと下方の第1端子電極108aとを積層方向に接続導通している。また、各々の第2ビア導体109bは、上方の第2端子電極107bと下方の第2端子電極108bとを積層方向に接続導通している。
【0030】
図1及び図2において、半導体チップ200における電源用のパッド201は、半田バンプ40、端子パッド25、ビア導体34、導体層23、ビア導体32、第1端子電極107a、第1ビア導体109aを経由して第1内部電極層110aに接続されるとともに、さらに第1端子電極108a、ビア導体33、導体層24、ビア導体35、BGA用パッド26を経由して、電源用の半田ボール41に接続される。また、半導体チップ200におけるグランド用のパッド201は、上記のような経路を経て、第2端子電極107b、第2ビア導体109b、第2内部電極層110bに接続され、最終的にグランド用の半田ボール41に接続される。
【0031】
なお、図2及び図3において、コンデンサ100に形成されるくり抜き部100aのサイズと位置は一例であって、適宜に変更することができる。ただし、くり抜き部100aのサイズは、電源配線、グランド配線、信号配線にそれぞれ必要な配線数に依存し、くり抜き部100aの位置は、信号配線の引き回しの自由度を高くする観点からコンデンサ100の中央付近にあることが好ましい。
【0032】
次に、本実施形態の配線基板10の製造方法について、図4〜図9を参照して説明する。まず、図4に示すように、収容穴部11aを有するコア材11を作製して準備する。コア材11の作製に際しては、例えば、一辺が400mm程度の正方形の平面形状と厚さ0.8mm程度の基材の両面に銅箔が貼付された銅張積層板を用意する。そして銅張積層板にルータを用いて穴あけ加工を施し、収容穴部11aとなる貫通孔を所定位置にあらかじめ形成しておく。
【0033】
一方、図2の構造を有するコンデンサ100を作製して準備する。コンデンサ100の作製に際しては、セラミックのグリーンシートにニッケルペーストをスクリーン印刷し、第1内部電極層110aとなる第1塗布膜/第2内部電極層110bとなる第2塗布膜を形成する。そして、第1内部電極層110aとなる第1塗布膜が形成されたグリーンシートと第2内部電極層110bとなる第2塗布膜が形成されたグリーンシートとを交互に積層し、積層方向に押圧力を付与して各グリーンシートを一体化し、積層体を形成する。続いて、レーザー加工機を用いて積層体に複数のビアホールを貫通形成し、ニッケルペーストを各ビアホールに充填して第1ビア導体109aとなる第1充填体及び第2ビア導体109bとなる第2充填体を形成する。そして、積層体の上面にペーストを印刷し、第1端子電極107a及び第2端子電極107bのメタライズ層を形成する。同様に、積層体の下面にペーストを印刷し、第1端子電極108a及び第2端子電極108bのメタライズ層を形成する。
【0034】
次いで、パンチング機を用いて、くり抜き部100aの形状に沿って(図3参照)貫通孔を形成する。なお、パンチング機の代わりに、レーザー加工機やドリルを用いて貫通孔を形成してもよい。積層体を乾燥させた後に脱脂し、積層体を所定温度で所定時間焼成する。その結果、チタン酸バリウム及びペースト中のニッケルが同時焼結し、セラミック焼結体101が得られる。そして、セラミック焼結体101の第1端子電極107a、108a及び第2端子電極107b、108bに対し、例えば、厚さ10μm程度の電解銅めっきを施して銅めっき層を形成し、コンデンサ100が完成する。
【0035】
次に図5に示すように、収容穴部11aの底部に、剥離可能な粘着テープ70を密着配置する。この粘着テープ70は支持台71により支持される。そして、マウント装置を用いて、収容穴部11a内にコンデンサ100を収容し、粘着テープ70にコンデンサ100を貼り付けて仮固定する。なお、図5においては、図1のコア材11及びコンデンサ100の各上面を下方に向けた状態を示している(図6及び図7も同様)。
【0036】
続いて図6に示すように、ディスペンサ装置を用いて、収容穴部11aとコンデンサ100の側面との間隙部に樹脂充填材50を充填するとともに、コンデンサ100のくり抜き部100aの内部に樹脂充填材51を充填する。樹脂充填材50、51は熱硬化性樹脂からなるので加熱処理により硬化する。コンデンサ100は、硬化した樹脂充填材50により収容穴部11aの内部で固定され、コア材11と一体化される。このとき、コア材11の導体層21と、コンデンサ50の第1端子電極107a及び第2端子電極107bが粘着テープ70と接するので、積層方向で位置が揃ったフラットな面に形成される。
【0037】
なお、樹脂充填材50、51を充填する方法はディスペンサ装置に限られず、例えば、フィルム状絶縁樹脂材料を押圧して充填する方法を用いてもよい。
【0038】
次いで、コンデンサ100の固定後に粘着テープ70を剥離する。その後、コア材11の上面とコンデンサ100の上面に対し酸性脱脂で溶剤洗浄を施してから研磨することにより、剥離した粘着テープ70の残存する粘着剤を除去する。続いて、第1端子電極107a及び第2端子電極107bの上部の銅めっき層の表面を粗化するとともに、コア材11の上部の導体層21の表面を粗化する。粗化の終了後には、コア材11及びコンデンサ100を洗浄する。
【0039】
その後、図7に示すように、ドリル機を用いた孔あけ加工により、コア材11のスルーホール導体30の形成位置に貫通孔を形成するとともに、樹脂充填材51のスルーホール導体60の形成位置に貫通孔を形成する。そして、スルーホール導体30、60となるそれぞれの貫通孔に対し、無電解銅めっき及び電解銅めっきを施した後、それぞれの空洞部にエポキシ樹脂からなるペーストを印刷して硬化することにより閉塞体31、61を形成する。さらに、コンデンサ100と一体化されたコア材11の両面の銅箔にエッチングを行い、例えばサブトラクティブ法を用いて、上下の導体層21、22を形成する。具体的には、無電解銅めっきを施し、その部分を共通電極として電解銅めっきを施した後、ドライフィルムをラミネートして露光及び現像を行うことにより、所定パターンのドライフィルムを形成する。この状態で、不要な電解銅めっき層、無電解銅めっき層、銅箔をエッチングでそれぞれ除去した後、ドライフィルムを剥離する。
【0040】
次に、コア材11及びコンデンサ100の上下の各面に、それぞれエポキシ樹脂を主成分とするフィルム状絶縁樹脂材料を積層する。そして、真空下にて加圧加熱することにより絶縁樹脂材料を硬化させ、図8に示すように、上面側の樹脂絶縁層14と下面側の樹脂絶縁層15とを形成する。続いて、図9に示すように、樹脂絶縁層14には複数のビア導体32を形成するとともに、樹脂絶縁層15には複数のビア導体33を形成する。このとき、レーザー加工により樹脂絶縁層14、15に複数のビアホールを形成し、その中のスミアを除去するデスミア処理を施した後、各ビアホール内にビア導体32、33を形成する。なお、図8及び図9においては、コア材11及びコンデンサ100の各上面を上方に向けた状態を示している。
【0041】
その後、図1に示すように、樹脂絶縁層14、15の表面にパターニングを施し、導体層23、24をそれぞれ形成する。次いで、樹脂絶縁層14の上面と樹脂絶縁層15の下面に、それぞれ上述のフィルム状絶縁樹脂材料を積層し、真空下にて加圧加熱することにより絶縁樹脂材料を硬化させ、樹脂絶縁層16、17を形成する。そして、樹脂絶縁層16、17には、上述のビア導体32、33と同様の手法で、複数のビア導体34、35を形成する。続いて、樹脂絶縁層16の上部に複数の端子パッド25を形成し、樹脂絶縁層17の下部にBGA用パッド26を形成する。次に、樹脂絶縁層16の上面と樹脂絶縁層17の下面に、それぞれ感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、ソルダーレジスト層18、19を形成する。その後、ソルダーレジスト層18に開口部をパターニングし、複数の端子パッド25に接続される複数の半田バンプ40を形成する。また、ソルダーレジスト層19に開口部をパターニングし、BGA用パッド26に接続される複数の半田ボール41を形成する。以上の手順により、本実施形態の配線基板10が完成する。
【0042】
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができる。図10は、本実施形態の変形例として、図1のスルーホール導体30、60及び閉塞体31、61の形成方法を変更した場合の配線基板10の概略の断面構造を示している。図10に示す配線基板10は、図1のスルーホール導体30、60及び閉塞体31、61と比べると、積層方向に延伸されて上下の樹脂絶縁層14、15を貫くスルーホール導体30a、60a及び閉塞体31a、61aを形成した点で相違する。よって、配線基板10の製造時には、コア材11の上下に樹脂絶縁層14、15を形成した後に、スルーホール導体30a、60a及び閉塞体31a、61aを形成する必要がある。なお、図10の配線基板10において、スルーホール導体30a、60a及び閉塞体31a、61a以外の構造は図1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態の配線基板の概略の断面構造を示す図である。
【図2】図1のコンデンサの断面図である。
【図3】図1のコンデンサの上面図である。
【図4】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第1の図である。
【図5】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第2の図である。
【図6】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第3の図である。
【図7】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第4の図である。
【図8】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第5の図である。
【図9】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第6の図である。
【図10】本実施形態の他の変形例として、スルーホール導体及び閉塞体の形成方法を変更した場合の配線基板の概略の断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10…配線基板
11…コア材
11a…収容穴部
12…第1配線積層部
13…第2配線積層部
14、15、16、17…樹脂絶縁層
18、19…ソルダーレジスト層
21、22、23、24…導体層
25…端子パッド
26…BGA用パッド
30、60、30a、60a…スルーホール導体
31、61、31a、61a…閉塞体
32、33、34、35…ビア導体
40…半田バンプ
41…半田ボール
50、51…樹脂充填材
100…コンデンサ
100a…くり抜き部
200…半導体チップ
201…パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載部品を載置し、当該搭載部品と外部基材との間を電気的に接続する配線基板であって、
上面及び下面を貫通する収容穴部が開口されたコア材と、
前記収容穴部に収容され、上面及び下面を貫通するくり抜き部が形成された内蔵部品と、
前記コア材の上面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した第1配線積層部と、
前記コア材の下面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した第2配線積層部と、
前記くり抜き部に充填され、前記内蔵部品の材料より誘電率が低い樹脂充填材と、
前記くり抜き部における前記樹脂充填材を貫通するスルーホール導体と、
を備え、前記スルーホール導体は、前記第1配線積層部を介して前記搭載部品に接続される信号配線として用いられることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記樹脂充填材は、さらに前記収容穴部と前記内蔵部品の側面との間隙部に充填されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記スルーホール導体は、前記搭載部品の中央部の直下に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記内蔵部品は、セラミック焼結体を用いて構成されたコンデンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項5】
前記コンデンサは、正極となる第1内部電極層及び負極となる第2内部電極層と、前記第1内部電極層に接続された複数の第1ビア導体と、前記第2内部電極層に接続された複数の第2ビア導体とを備え、前記複数の第1ビア導体及び前記複数の第2ビア導体が前記スルーホール導体の周囲に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記スルーホール導体は、内壁に銅メッキが形成され、空洞部に閉塞体となる樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項7】
前記くり抜き部における前記樹脂充填材には、複数の前記信号配線として用いられる複数の前記スルーホール導体が形成され、当該複数の信号配線の配置密度は、10mm当り8本以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項8】
搭載部品と外部基材との間を電気的に接続する配線基板の製造方法であって、
内蔵部品に、上面及び下面を貫通するくりぬき部を形成する工程と、
コア材の上面及び下面を貫通し、収容穴部を開口する工程と、
前記コア材及び前記内蔵部品の上面及び下面を互いに同方向にした状態で、前記内蔵部品を前記収容穴部に収容する工程と、
前記内蔵部品の前記くり抜き部に、前記内蔵部品の材料よりも誘電率が低い樹脂充填材を充填する工程と、
前記内蔵部品に、前記樹脂充填材を貫通するスルーホール導体を形成し、当該スルーホール導体の空洞部に樹脂を充填して閉塞体を形成する工程と、
前記コア材の上面側に絶縁層及び導体層を交互に積層し、前記スルーホール導体と前記搭載部品の信号用の接続端子とを接続する配線構造を含む第1配線積層部を形成する工程と、
前記コア材の下面側に絶縁層及び導体層を交互に積層し、第2配線積層部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂充填材を、前記くり抜き部に加えて、前記収容穴部と前記内蔵部品の側面との間隙部に充填することを特徴とする請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
セラミックグリーンシートの一方の面上に、正極となる内部電極層用ペーストを塗布した第1塗布膜と負極となる内部電極層用ペーストを塗布した第2塗布膜とを形成する工程と、
前記第1塗布膜を形成したシートと前記第2塗布膜を形成したシートとを積層した積層体を得る工程と、
所定の位置にビア用貫通孔を形成する工程と、
前記第1塗布膜に接続されかつ第1充填体となるビア導体用ペーストを前記ビア用貫通孔に充填するとともに、前記第2塗布膜に接続されかつ第2充填体となるビア導体用ペーストを前記ビア用貫通孔に充填する工程と、
前記第1充填体及び前記第2充填体のそれぞれの上端及び下端に接するようにメタライズ層を形成する工程と、
前記積層体の中央部に前記くり抜き部を形成する工程と、
前記各工程における各形成物を一体的に焼成することにより、前記内蔵部品としてのコンデンサを得る工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記内蔵部品の前記樹脂充填材を貫通する前記スルーホール導体に加えて、前記コア材の上面及び下面を貫通するスルーホール導体を同時に形成することを特徴とする請求項8又は9に記載の配線基板の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−153667(P2010−153667A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331582(P2008−331582)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】