説明

配線基板

【課題】 表面の凹凸を形成することなく、絶縁層と配線導体の密着強度を大きくすることができる配線基板を提供する。
【解決手段】 配線基板3では、コア基板4、複数の配線導体2、絶縁層5およびビア導体9を含み、配線導体2の表面部の予め定める領域に、銅と錫との合金を含む材料から成る合金部分10が形成されるので、配線導体2の表面部を滑らかにすることができ、かつ、配線導体2と絶縁層5との密着強度を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関し、特に、配線導体と絶縁層との密着強度を大きくすることができる配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、移動体通信機器に代表されるように小型化、薄型化、軽量化、高性能、高機能、高品質および高信頼性が要求されてきており、このような電子機器に搭載される電気装置も小型化および高密度化が要求されるようになってきている。そのため、電気装置を構成する配線基板にも小型化、薄型化および多端子化が求められてきており、それを実現するために配線導体の幅を細くするとともにその間隔を狭くし、さらに配線導体を多層化することにより高密度配線化が図られている。
【0003】
第1の従来の技術では、このような高密度配線が可能な配線基板として、ビルドアップ法を採用して製作された配線基板が開示されている。ビルドアップ配線基板は、たとえばガラスクロスおよびアラミド不布織などの補強材に、耐熱性や耐薬品性を有するエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を含浸させて硬化した芯体を形成する。この芯体上に、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂から成るワニスを塗布するとともに加熱硬化して絶縁層を形成した後、絶縁層にレーザで径が200μm程度の貫通孔を穿設する。次に、貫通孔内壁および絶縁層表面を過マンガン酸カリウム溶液等の粗化液で化学的に粗化し、無電解銅めっき法および電解銅めっき法を用いて貫通孔内壁および絶縁層表面に銅導体膜を被着して貫通導体および配線導体を形成する。このように絶縁層のエポキシ樹脂と銅配線との密着を、物理的なアンカー効果で確保するために配線導体の全面を粗化する。この絶縁層上に前述と同様の工程を繰り返して複数の絶縁層、配線導体および貫通導体の形成を行うことによって配線基板が製造される(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
第2の従来の技術では、無電解銅めっきで配線導体を形成するフルアディティブによってビルドアップ法で製造された配線導体が開示されている(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−261869号公報
【特許文献2】特開平9−130050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の従来の技術では、粗化処理によって形成される表面部の凹凸に起因して、電気信号の伝播速度の低下し、またノイズが発生するおそれがある。したがって処理速度の高速化を妨げるという問題がある。
【0007】
また、配線導体の主面に施される粗化処理が配線導体の側面側にも施されており、高周波特性が悪くなるという問題もある。
【0008】
第2の従来の技術では、配線導体と絶縁層との密着強度が弱いので、配線導体と絶縁層とが剥離するおそれがあり、接続信頼性が低いという問題がある。このような問題を解決する技術として、本件出願人は、銅から成る配線導体に他の金属をめっきすることによって、配線導体と絶縁層との密着強度を高くできることを見出した。しかしながら、銅に錫をめっきした場合は、無電解銅めっきが付着しにくくなる問題がある。
【0009】
したがって本発明の目的は、絶縁層と配線導体との密着強度向上とともに、ノイズ発生を抑制した配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
コア基板に複数の配線導体を樹脂から成る絶縁層を介して積層してなる配線基板であって、
銅めっき法によって形成され、前記コア基板または前記絶縁層を基板厚み方向に貫通して互いに異なる配線導体間を電気的に接続するビア導体を含み、
前記複数の配線導体の表面部に、銅と錫との合金を含む材料から成る合金部分が形成され、該合金部分は前記ビア導体と前記配線導体とが互いに接続される接続部から離間して設けられていることを特徴とする配線基板である。
【0011】
また本発明は、前記複数の配線導体のうち、ビア導体から離間して設けられる配線導体には、前記合金部分が、表面部の全域にわたって形成されることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明は、前記合金部分は、厚み寸法が50nm以上1500nm以下であることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明は、前記合金部分は、合金中の錫濃度が前記配線導体の表面部に向かうにつれて、漸次高くなっていることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、前記合金部分は、CuSnおよびCuSnを含み、前記配線導体の表面側ではCuSnに比べて、CuSnが多く分布していることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、前記合金部分の表面部には、複数の凹部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明は、前記合金部分は、ビア導体の周囲の環状の領域を除く残余の領域に形成され、
前記環状の領域で、前記ビア導体が前記配線導体に直に被着されていることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明は、前記合金部分の厚み寸法は、前記ビア導体に向かうにつれて、漸次小さくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配線基板は、コア基板、複数の配線導体、絶縁層およびビア導体を含む。前記複数の配線導体において、少なくともその表面部の予め定める領域に、銅と錫との合金を含む材料から成る合金部分が形成される。この合金部分は、前記ビア導体と前記配線導体とが互いに接続される接続部から離間させて形成されている。これによって合金部分が形成される領域は、銅と錫との合金によって、樹脂から成る絶縁層と密着強度を大きくすることができる。また合金部分によって、配線導体の表面部を滑らかにすることができるので、表面部の形状に起因して、電気信号の伝播速度の低下を防止するとともに、ノイズの発生を抑制することができる。このような配線基板を用いることによって、半導体装置の処理速度を高速化することができる。
【0019】
また前記合金部分が形成される領域は、前記ビア導体と前記配線導体とが互いに接続される接続部が除かれている。ビア導体は、銅めっき法によって形成されるので、合金部分に含まれる錫によって、合金部分にビア導体を形成すると、合金部分とビア導体との密着強度が小さいことに起因して、繰り返し応力などによって破断するおそれがあるが、前述の接続領域を除くことによって、ビア導体と配線導体との接続信頼性を損なうことなく、配線導体と絶縁層との密着強度を大きくすることができる。また合金部分を形成することによって、配線導体と絶縁層との密着性が向上し、吸湿後、はんだリフローなど加熱時の基板膨れを防ぐことができる。このように、配線導体と絶縁層との密着性を確保することができるので、配線基板に温度変化が加わった場合でも、絶縁層間のデラミネーション(層間剥離)を抑制し、絶縁層と配線導体との界面にクラックが発生することがなく、さらに、このクラックが伸展して生じる配線導体の断線を防ぐことができる。
【0020】
また本発明によれば、前記複数の配線導体のうち、ビア導体から離間して設けられる配線導体には、前記合金部分が、表面部の全域にわたって形成される。ビア導体から離間して設けられる配線導体は、ビア導体と接続される接続領域がないので、表面部の全域にわたって合金部分を形成し、配線導体と絶縁層との密着強度と表面部の全域にわたって大きくすることができる。
【0021】
さらに本発明によれば、前記合金部分は、厚み寸法が50nm以上1500nm以下である。合金部分の厚み寸法が50nm未満では配線導体と絶縁層との密着強度が低くなり、配線導体の剥がれ、および吸湿後のはんだリフロー工程での基板に膨れが生じるなどの問題が発生する。また合金部分の厚み寸法が1500nmを超えると、配線導体の電磁抵抗が大きくなり、高周波の伝送特性が低下する。したがって前記合金部分を厚み寸法が50nm以上1500nm以下にすることによって、配線導体と絶縁層との密着強度を確保することができ、高周波の伝送特性が低下することを防ぐことができる。
【0022】
さらに本発明によれば、前記合金部分は、合金中の錫濃度が前記配線導体の表面部に向かうにつれて、漸次高くなっている。これによって配線導体の表面部と絶縁層との密着強度を大きくすることができる。
【0023】
さらに本発明によれば、前記合金部分は、CuSnおよびCuSnを含み、前記配線導体の表面側ではCuSnに比べて、CuSnが多く分布している。したがって配線導体の表面側の方が、錫濃度が高いので、配線導体の表面部と絶縁層との密着強度を大きくすることができる。
【0024】
さらに本発明によれば、前記合金部分の表面部には、複数の凹部が形成されているので、導体と絶縁樹脂の密着性が更に向上する。
さらに本発明によれば、前記合金部分は、ビア導体の周囲の環状の領域を除く残余の領域に形成され、前記環状の領域で、前記ビア導体が前記配線導体に直に被着されている。これによって、ビア導体は、銅めっき法によって形成されるので、合金部分に含まれる錫によって、合金部分にビア導体を形成すると、合金部分とビア導体との密着強度が小さいことに起因して、繰り返し応力などによって破断するおそれがあるが、前述の環状の領域で、ビア導体と配線導体と直に被着することによって、接続信頼性を損なうことなく、ビア導体と配線導体との密着強度を大きくすることができる。
【0025】
さらに本発明によれば、前記合金部分の厚み寸法は、前記ビア導体に向かうにつれて、漸次小さくなっている。合金部分を有する配線導体を加熱および冷却すると、熱応力などに起因して、合金部分と合金部分を除く残余の部分とが剥離するおそれがあるが、合金部分の厚み寸法を漸次小さくすることによって、剥離する力を合金部分の端部に集中することを防止することができる。これによって配線導体の熱応力に対する耐性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の実施の一形態の電子装置1を示す断面図である。図2は、図1におけるセクションIIの拡大断面図である。図2では、電子装置1を構成する配線導体2に関する部分を拡大して示す。電子装置1は、配線基板3および配線基板3に実装される電子素子16を含んで構成される。配線基板3は、コア基板4と複数の絶縁層5と複数の配線導体2とを含んで構成される。
【0027】
コア基板4は、ガラス繊維を縦横に織り込んだガラスクロスにエポキシ樹脂およびビスマレイミドトリアジン樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させたシートを仮硬化することによって形成される。コア基板4は、厚み寸法がたとえば0.3mm以上1.5mm以下である。コア基板4は、ガラスクロスに未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させたシートを熱硬化させた後、ドリル加工またはレーザ加工によって、厚み方向に貫通するスルーホール6が形成される。
【0028】
スルーホール6は、複数形成され、直径がたとえば0.1mm以上1.0mm以下程度である。スルーホール6の内壁には、銅膜から成るスルーホール導体7が被着形成される。スルーホール導体7は、スルーホール導体7の軸線方向の両面部に形成される互いに異なる配線導体2を電気的に接続する。スルーホール導体7は、コア基板4にスルーホール6を穿設した後に、このスルーホール6に厚み寸法がたとえば3μm以上50μm以下の銅めっき膜をめっき法によって析出させることによって形成される。このスルーホール導体7は、たとえば円筒状に構成される。
【0029】
スルーホール導体7の内方には、エポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂が充填され、樹脂材22が設けられる。樹脂材22は、スルーホール6を塞ぐことによってスルーホール6の直上および直下に絶縁層5または配線導体2を形成可能とするためのものである。樹脂材22は、未硬化のペースト状の熱硬化性樹脂をスルーホール6内にスクリーン印刷法によって充填し、これを熱硬化させた後、厚み方向の両端面部を略平坦に研磨することによって形成される。またスルーホール導体7の抵抗を小さくするために樹脂材22に換えて、導体ペーストを充填してもよい。
【0030】
絶縁層5は、エポキシ樹脂および変性ポリフェニレンエーテル樹脂などの熱硬化性樹脂からなる。絶縁層5は、仮硬化したコア基板4の厚み方向一表面部に粘着され、熱硬化することによって形成される。絶縁層5は、未硬化の熱硬化性樹脂のフィルムをコア基板4の厚み両端面部に貼着し、これを熱硬化させるとともにレーザ加工によりビアホール8が形成される。絶縁層5は、コア基板4の厚み方向両端面部に積層され、それぞれの厚み寸法がたとえば10μm以上80μm以下程度である。
【0031】
各絶縁層5は、厚み方向に貫通し、直径がたとえば20μm以上100μm以下のビアホール8が形成される。ビアホール8の内壁には、銅膜から成るビア導体9が銅めっき法によって被着形成される。ビア導体9は、ビア導体9の軸線方向の両面部に形成される配線導体2を電気的に接続する。したがって絶縁層5は、配線導体2を高密度に配線するための絶縁間隔を提供するためのものである。そして、上層の配線導体2と下層の配線導体2とをビア導体9を介して電気的に接続することによって高密度配線を立体的に形成可能としている。コア基板4に絶縁層5を積層した後、絶縁層5に配線導体2を形成する。なお、コア基板4上に直に配線導体2が形成されている形態もあり、このような形態においては、この配線導体2に絶縁層5を積層した後に、さらに他の配線導体2が形成される。このように、配線導体2およびビア導体9を有する絶縁層5が形成され、上述したような絶縁層5を順次積み重ねることによって配線基板3が形成される。
【0032】
配線導体2は、予めコア基板4上に直に形成されている配線導体2を除けば、絶縁層5の表面部に形成されている。複数の配線導体2のうち、少なくとも1つの配線導体2は、絶縁層5をそれぞれ基板厚み方向である厚み方向に貫通して設けられるビア導体9によって電気的に接続されている。絶縁層5を介して異なる層間に位置する配線導体2は、コア基板4を厚み方向に貫通して設けられるスルーホール導体7と、絶縁層5を厚み方向に貫通して設けられるビア導体9とによって電気的に接続することができ、これによって所望の配線回路が形成されている。
【0033】
複数の配線導体2において、少なくともその表面部の予め定める領域に、銅と錫との合金を含む材料から成る合金部分10が形成される。この合金部分10が形成される領域は、ビア導体9と配線導体2とが互いに接続される接続部30を除く残余の領域である。したがって合金部分10は、ビア導体9の周囲の環状の領域を除く残余の領域に形成される。これによってビア導体9の周囲の環状の領域には、合金部分10を除く、既存の銅めっき法による配線導体2が形成される。前記環状の領域内では、ビア導体9が配線導体2に直に被着されている。
【0034】
複数の配線導体2のうち、図1に示すように、ビア導体9から離間して設けられる配線導体2には、前記合金部分10が、厚み方向一表面部の全域にわたって形成される。配線導体2は、図2に示すように、銅部分11と合金部分10とを含んで構成される。銅部分11は、銅を主成分とし、コア基板4および絶縁層5に無電解めっき法および電解めっき法によって積層される。合金部分10は、銅と錫との合金からなり、銅部分11に電解めっき法によって錫を積層することによって、銅と錫とが反応し、銅と錫との合金が構成される。したがって配線導体2は、層状の銅部分11に、層状の合金部分10が積層されて構成される。これらをエッチング加工することによって所定のパターンに形成される。
【0035】
銅部分11の厚み寸法は、たとえば3μm以上20μm以下である。また合金部分10の厚み寸法は、たとえば50nm以上1500nm以下である。前記合金部分10は、合金中の錫濃度が前記配線導体2の表面部に向かうにつれて、漸次高くなっている。したがって配線導体2は、厚み方向一方に表面部が、残余の部分に比べて、最も錫濃度が高くなるように構成される。前記合金部分10は、CuSnおよびCuSnを含み、前記配線導体2の表面側ではCuSnに比べて、CuSnが多く分布している。CuSnから成る部分12は、CuSnから成る部分13よりも、配線導体2の厚み方向一方の表面部寄りに構成される。たとえばCuSnから成る部分の厚み寸法は、30nm以上1400nm以下であり、たとえばCuSnから成る部分の厚み寸法は、20nm以上1400nm以下である。
【0036】
また本実施の形態では、合金部分10は、厚み方向一方の表面部に錫の酸化物14を含んでもよい。錫の酸化物14は、具体的には、CuSnから成る部分の厚み方向一方の表面部に、CuSnから成る層15と、SnOから成る層16と、SnOから成る層17が、順次積層される。CuSnから成る層15の厚み寸法は、たとえば5nm以上100nm以下である。SnOから成る層16の厚み寸法は、たとえば10nm以上100nm以下である。SnOから成る層17の厚み寸法は、たとえば10nm以上100nm以下である。
【0037】
前記合金部分10の表面部には、複数の凹部が形成されている。複数の凹部を形成する場合、まず銅部分11の表面に複数の凹部を形成し、凹部が形成された銅部分11に合金部分10を形成することによって、合金部分10の表面部には、銅部分11の形状が反映され、複数の凹部が形成される。複数の凹部を形成する場合、たとえば置換型の無電解めっきが用いられる。置換型の無電解めっきでは、銅部分11の表面部の一部を溶解しながら合金部分10を構成するめっき部分を付着させる。このため、めっき処理の条件、たとえば処理時間、処理液のpH(ペーハー)および処理温度を選定することで、合金部分10が銅部分11に形成されると同時に、微細な凹部が複数形成される。
【0038】
置換型無電解めっきの処理は、たとえばpH4.5以下の処理液を用い、処理温度は50℃以下、処理時間は20分以下が好適に用いられる。処理温度が50℃を超えたり、処理時間が20分を越えると、3μmを越える凹部が形成され、高速デジタル信号の伝送に悪影響を与える。最適な処理温度は35℃以下、処理時間は5分以内である。この条件によって、50nm以上1500nm以下の深さの凹部が複数形成される。また、置換型無電解めっきの処理に選定される処理液のpHを1.0〜3.0の範囲内で調製すれば、処理時間をさらに短縮することができる。
【0039】
凹部の深さ寸法は、合金部分10の厚さ寸法以下となるように設定される。凹部の深さは、50nm以上1500nm以下という微細な寸法であることが好ましい。凹部の深さが50nm未満では密着強度の改善効果が少なく、また、1500nmを越えるとでは表面の凹凸が大きくなるため、高速デジタル信号の表皮効果によって信号伝送に悪影響を与える傾向がある。
【0040】
凹部の径は、50nm以上500nm以下が好ましい。凹部の径が、50nm未満では密着強度の改善効果が少なく、また、500nm以上では表面の凹凸が大きくなり、高速デジタル信号の伝送に悪影響を与える傾向がある。
【0041】
置換型の無電解めっきによって、銅部分11に錫をめっきする場合、銅と錫との合金からなり、複数の凹部が形成される合金部分10が形成される。
【0042】
配線導体2の合金部分10の厚み寸法は、ビア導体9に向かうにつれて、漸次小さくなっている。合金部分10の外周部における漸次小さくなる範囲は、0.2μm以上5μm以下が望ましい。0.2μm未満では応力集中を緩和する効果が少なく、また、5μmを超える絶縁層5に当接する領域が小さくなりすぎるので、密着強度が低下する。またビア導体9の接続部分を大きくする必要が生じ、配線密度が低下する。
【0043】
漸次小さくなる部分を製造する方法は、合金部分10を銅部分11にめっきする場合の、表面拡散と内部拡散との速度の差を用いる方法が用いられる。すなわち、銅部分11に合金部分10を形成し、たとえば60℃以上150℃以下の温度に加熱して、めっきした合金部分10を表面および内部に拡散させる。表面拡散の方が内部拡散よりも早いので合金部分10は表面に拡散し、その後、徐々に内部に拡散する。合金部分10をめっき後の加熱温度を前述の範囲とすることで、合金部分10の厚み寸法は、たとえば50nm以上1500nm以下であり、CuSnおよびCuSnを含み、たとえばCuSnから成る部分の厚み寸法は、30nm以上1400nm以下であり、たとえばCuSnから成る部分の厚み寸法は、20nm以上1400nm以下であって、漸次小さくなる範囲は、0.2μm以上5μm以下の範囲に形成することができる。
【0044】
配線基板3の厚み方向一表面部に半田バンプ17を介して、半導体素子などの電子素子16が搭載されて、電子装置1が構成される。本実施の形態では、配線基板3の電子素子16が搭載された一面部とは逆側の面部に半田ボール18などが形成され、この半田ボール18を介して、たとえば、プリント基板と接続される。配線基板3の表面には、ソルダーレジストが形成されていてもよく、ソルダーレジストが形成された配線基板3と電子素子16との間にアンダーフィルが形成されていてもよい。
【0045】
絶縁層5の一方の最外層表面に形成された配線導体2の一部は、電子素子16の各電極にたとえば鉛−錫から成る半田バンプ17を介して接合される電子部品接続用の接合パッド19が形成される。また、絶縁層5の他方の最外層表面に形成された配線導体2の一部は、外部プリント基板の各電極にたとえば鉛−錫から成る半田ボール18を介して接続される外部接続用の接合パッド20が形成される。
【0046】
接合パッド19,20となる配線導体2の表面部には、その酸化腐食を防止するとともに半田バンプ17、および半田ボール18との接続を良好とするために、半田との濡れ性が良好で耐腐蝕性に優れたニッケルおよび金のめっき層が被着されている。
【0047】
接合パッド19,20には、接合パッド19,20を露出させる開口を有するソルダーレジスト層21が被着されている。このようなソルダーレジスト層21は、感光性樹脂と光開始剤と無機粉末フィラーとから成る未硬化樹脂フィルム、または熱硬化性樹脂と無機粉末フィラーとから成る未硬化樹脂ワニスを塗布するか、もしくは未硬化樹脂フィルムをラミネートした後、露光および現像によって開口部を形成し、これをUV硬化および熱硬化させることにより被着される。
【0048】
半田バンプ17は、鉛−錫、錫−亜鉛および錫−銀−ビスマスなどの合金の導電材料からなり、たとえば、鉛−錫から成る半田の場合、鉛−錫から成る半田ペーストをソルダーレジスト層21の開口の露出した接合パッド19上にスクリーン印刷で充填し、リフロー炉を通すことによって接合パッド19上に半球状に固着形成される。接合パッド19に電子素子16の各電極を、半田バンプ17を介して接合して電子素子16を搭載することで、本発明の電子装置1となる。
【0049】
次に、本実施の形態の電子装置1の製造方法に関して説明する。図3は、電子装置1の製造工程の一部を段階的に示す断面図である。図3では、コア基板4に積層される配線導体2に、順次、絶縁層5およびビア導体9を形成する場合に関して示す。図4は、電子装置1の製造方法の一部を示すフローチャートである。図3A(a)に示すように、配線導体前駆体33を形成したコア基板4を準備し、ステップa1に移る。配線導体前駆体33は、配線導体2の前駆体であって、銅から成り、合金部分10は形成されていない。
【0050】
ステップa1では、図3A(b)に示すように、配線導体前駆体33の一表面部に感光性フィルム31を貼付し、ステップa2に移る。感光性フィルム31は、感光性を有する樹脂材料から成る。ステップa2では、図3A(c)に示すように、感光性フィルム31をフォトリソグラフィ技術でエッチングし、めっきマスク部32を形成し、ステップa3に移る。具体的には、感光性フィルム31にフォトマスクを載せ露光する。露光された部分の樹脂が硬化し、残余部の硬化しない部分を現像液で溶解(エッチング)除去する。これを現像工程という。この現像工程により、感光性フィルム31の一部を、配線導体前駆体33に至るまでエッチングして、配線導体前駆体33の一部を露出させる。これによってめっきマスク部32が形成される。めっきマスク部32が形成されると、ステップa3へ移る。
【0051】
ステップa3では、図3A(d)に示すように、合金層26である合金部分10を形成し、配線導体前駆体33から配線導体2を形成し、ステップa4に移る。まず、蒸着、スパッタ、電解めっきおよび無電解めっきなどで露出している配線導体前駆体33に錫を、たとえば0.1μmめっきし、その後、めっきした錫層および配線導体前駆体33を105℃の温度で1時間加熱して、めっきした錫を合金化して、銅と錫との合金から成る合金部分10が形成され、配線導体2が形成される。したがってめっきマスク部32によって覆われていた配線導体前駆体33の領域は、合金部分10が形成されない。また前述したように、合金部分10を形成すると同時に、配線導体2の一表面部に複数の微小な凹部(図示せず)が形成される。このような凹部は、前述のようにステップa7にて合金部分10を形成すると同時に形成される。
【0052】
ステップa4では、図3A(e)に示すように、めっきマスク部32を、配線導体2から除去し、ステップa5に移る。ステップa5では、図3B(f)に示すように、絶縁層の前駆体である樹脂フィルム31を配線導体2およびコア基板4の一表面部の全域を覆うように、貼付し、ステップa6に移る。樹脂フィルム31は、絶縁性を有する樹脂から成る。
【0053】
ステップa6では、図3B(g)に示すように、樹脂フィルム31にビアホール8を形成し、絶縁層を形成して、ステップa7に移る。ビアホール8は、たとえばレーザ加工によって形成される。ビアホール8は、配線導体2を露出するように形成され、その露出される領域は、前述のめっきマスク部32が形成されていた領域を略同一である。
【0054】
ステップa7では、図3B(h)に示すように、絶縁層5の一表面部および配線導体2がビアホールによって露出している領域に、無電解銅めっき層35を形成し、ステップa8に移る。絶縁層5に無電解銅めっき層35を形成する場合、先ず、絶縁層5に無電解めっき用のパラジウム触媒を被着させる。具体的には、絶縁層5の一表面部を50℃の過マンガン酸塩類水溶液等の粗化液に15分間浸漬し、粗化し、その後、絶縁層5を30℃の無電解めっき用のパラジウム触媒の水溶液中に5分間浸漬し、絶縁層5の一表面部にパラジウム触媒を付着させる。
【0055】
次に、絶縁層5を硫酸銅、ロッセル塩、ホルマリン、EDTAナトリウム塩および安定剤などから成る60℃の無電解めっき液に約30分間浸漬して絶縁層5の予め定める領域に0.1μm以上2μm以下程度の無電解銅めっき層35が析出される。
【0056】
ステップa8では、図3B(i)に示すように、配線導体前駆体33である電解銅めっき層33およびビア導体9を形成し、ステップa9に移る。所定のパターンの電解銅めっき層33を形成するには、たとえばセミアディティブ法またはサブトラクティブ法が用いられる。本実施の形態では、セミアディティブ法に関して、詳述する。先ず、無電解銅めっき層35に耐めっき樹脂層を被着させる。耐めっき樹脂層は、たとえば、厚みが10μm以上30μm以下の感光性樹脂からなり、ラミネートすることによって被着形成される。次に、耐めっき樹脂層の一部を露光と現像によって配線導体2のパターン形状に除去して、電解銅めっき層33を被着させるための開口部を形成する。
【0057】
次に、硫酸、硫酸銅5水和物、塩素または光沢剤などから成る電解銅めっき液に2A/dm以上5A/dm以下の電流を印加しながら、絶縁層5を数時間浸漬することによって、開口部に厚みが3μm以上20μm以下の電解銅めっき層33およびビアホール8に充填されるビア導体9が形成される。
【0058】
次に、30℃の水酸化ナトリウム水溶液で耐めっき樹脂層を除去し、さらに、耐めっき樹脂層23を除去したことにより露出する無電解銅めっき層35を25℃の硫酸、過酸化水素水および硫酸銅などの硫酸系水溶液により5分間エッチングして除去する。これによって所定のパターンの電解銅めっき層33である配線導体前駆体33が形成される。
【0059】
ステップa9では、ビルドアップ工程が終了したか否かが判断され、さらに配線導体2を絶縁層5を介して積層する場合、ステップa1に戻り、ビルドアップ工程が終了した場合、本フローを終了する。
【0060】
図3B(j)、図3C(k)〜図3C(n)および図3D(o)〜図3D(q)までは、前述のステップa9にて、さらに絶縁層5および配線導体2を形成する場合の工程を示す図である。図3B(j)は、前述のステップa1に対応し、図3C(k)は、前述のステップa2に対応し、図3C(k)は、前述のステップa2に対応し、図3C(l)は、前述のステップa3に対応し、図3C(m)は、前述のステップa4に対応し、図3C(n)は、前述のステップa5に対応し、図3D(o)は、前述のステップa6に対応し、図3D(p)は、前述のステップa7に対応し、図3D(q)は、前述のステップa8に対応する。図3D(q)では、前述したように、絶縁層5の一方の最外層表面に形成された配線導体2の一部は、電子部品接続用の接合パッド19が形成される。また接合パッド19を露出させる開口を有するソルダーレジスト層21が、絶縁層5の一方の最外層表面に被着されている。このような製造方法によって、配線基板3が製造される。
【0061】
なお、本発明の製造方法は、上述の実施の形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更および改良を施すことが可能である。たとえば、前述の配線基板3では、絶縁層5の厚み方向一表面部のみに積層し、この絶縁層5上に配線導体2を形成したが、絶縁層5の厚み方向両面部に積層し、この両面部に配線導体2を形成してもよい。また、前記両面部に形成した配線導体2間を絶縁層5の内部に形成したスルーホール導体7で電気的に接続してもよい。
【0062】
以上、説明したように、本実施の形態の配線基板3では、コア基板4、複数の配線導体2、絶縁層5およびビア導体9を含む。複数の配線導体2の表面部において、銅と錫との合金を含む材料から成る合金部分10が形成される。この合金部分10は、ビア導体9と配線導体4とが互いに接続される接続部30から離間させて形成されている。これによって合金部分10が形成される領域は、銅と錫を含む材料から成る合金部分10によって、樹脂から成る絶縁層5と密着強度を大きくすることができる。また合金部分10によって、配線導体4の表面部を滑らかにすることができるので、表面部の形状に起因して生じる電気信号の伝播速度の低下を防止するとともに、ノイズの発生を抑制することができる。このような配線基板を用いれば、半導体装置の処理速度を高速化することができる。
【0063】
本実施の形態の電子装置1によれば、上記の配線基板3の主面に電子部品を搭載し、配線導体2と電子部品の各電極とを電気的に接続したことから、配線導体2間の絶縁性が良好であるとともに配線導体2が断線することのない信頼性の良好な電子装置1とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の一形態の電子装置1を示す断面図である。
【図2】図1におけるセクションIIの拡大断面図である。
【図3A】電子装置1の製造工程の一部を段階的に示す断面図である。
【図3B】電子装置1の製造工程の一部を段階的に示す断面図である。
【図3C】電子装置1の製造工程の一部を段階的に示す断面図である。
【図3D】電子装置1の製造工程の一部を段階的に示す断面図である。
【図4】電子装置1の製造方法の一部を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 電子装置
2 配線導体
3 配線基板
4 コア基板
5 絶縁層
6 スルーホール
7 スルーホール導体
8 ビアホール
9 ビア導体
10 合金部分
11 銅部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板に複数の配線導体を樹脂から成る絶縁層を介して積層してなる配線基板であって、
銅めっき法によって形成され、前記コア基板または前記絶縁層を基板厚み方向に貫通して互いに異なる配線導体間を電気的に接続するビア導体を含み、
前記複数の配線導体の表面部に、銅と錫との合金を含む材料から成る合金部分が形成され、該合金部分は前記ビア導体と前記配線導体とが互いに接続される接続部から離間して設けられていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記複数の配線導体のうち、ビア導体から離間して設けられる配線導体には、前記合金部分が、表面部の全域にわたって形成されることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記合金部分は、厚み寸法が50nm以上1500nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記合金部分は、合金中の錫濃度が前記配線導体の表面部に向かうにつれて、漸次高くなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項5】
前記合金部分は、CuSnおよびCuSnを含み、前記配線導体の表面側ではCuSnに比べて、CuSnが多く分布していることを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記合金部分の表面部には、複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項7】
前記合金部分は、ビア導体の周囲の環状の領域を除く残余の領域に形成され、
前記環状の領域で、前記ビア導体が前記配線導体に直に被着されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項8】
前記合金部分の厚み寸法は、前記ビア導体に向かうにつれて、漸次小さくなっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−273896(P2007−273896A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100685(P2006−100685)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】