説明

配線板積層体、部品実装配線板積層体、及び電子部品

【課題】熱伝導性に優れた配線板を形成可能で部品実装時の耐リフロー性に優れる配線板積層体、筐体への密着性に優れる部品実装配線板積層体、およびこの部品実装配線板積層体を有する電子部品を提供する。
【解決手段】配線板積層体90は、回路形成用金属層10と、絶縁層12と、支持用金属層14と、粘着剤層16と、耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18とがこの順に積層されてなり、前記粘着剤層が無機フィラーを含み且つ該無機フィラーの含有量が20体積%以下であり、前記粘着剤層の厚みが100μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板積層体、部品実装配線板積層体、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)を実装する配線板は液晶ディスプレイのバックライトなどの用途で、広く用いられている。この配線板はLEDの発する熱を効率的に外部に逃がす必要があることから、アルミ、銅などの金属板を片面に配したいわゆる金属ベース配線板が使用されることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
金属ベース配線板に使用される金属板は、配線板の部材としては比較的高価であり、金属板の厚みが厚くなると、材料費が大きくなるほか、重量増、熱抵抗の増大などの課題が発生する。そのため、薄い金属板を使用することが軽量化、熱抵抗低減、コスト削減の点で好ましい。しかしながら、金属板が薄いとフレキシブルになりすぎるため、回路加工、組立時の作業性が悪化する傾向にある。そのため、300μm以下の金属板を使用することは殆ど行われていない。
【0004】
また、金属ベース配線板は、部品実装後、筐体に両面粘着テープ等を介して貼り付けられる。しかし、部品実装した基板は表面に該部品が突出して設置されているため、部品を強く押すと破壊される可能性がある。そのため、金属ベース配線板を筐体に貼り付ける際には部品が配置されていない部分を軽く押して貼り付けるため、十分な密着性を得ることが難しい。また、密着性の不良は熱抵抗を増大させることになる。ここで、密着性を保つためには、厚い両面粘着テープを使用する方法が考えられるが、この方法では熱抵抗を悪化させるという問題があった。
【0005】
上記に関連して、金属ベース配線板における配線板とは反対面側に、粘着剤層と、金属箔又は高分子材料を積層した金属箔のセパレータを設置する技術が開示され、耐リフロー性、耐洗浄性に優れるとされている(例えば、特許文献2参照)。
また同様にセパレータとして、塩化ビニリデン系共重合体膜で被覆した紙を用いる技術(例えば、特許文献3参照)や、セラミックスと紙からなる複合材料を用いる技術(例えば、特許文献4参照)が開示され、耐リフロー性、耐洗浄性、打ち抜き性に優れるとされている。
さらにセパレータとしてガラスやセラミックスを用いる技術が開示され、耐熱性や耐エッチング性に優れるとされている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−46051号公報
【特許文献2】特開平8−64919号公報
【特許文献3】特開平8−222818号公報
【特許文献4】特許第4480814号明細書
【特許文献5】特許第4178869号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜5に記載の技術では、形成される配線板の熱伝導性や部品実装時の耐リフロー性が十分とはいえない場合があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、熱伝導性に優れた配線板を形成可能で部品実装時の耐リフロー性に優れる配線板積層体、筐体への密着性に優れる部品実装配線板積層体、および部品実装配線板積層体から作製される電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の通りである。
<1> 回路形成用金属層と、絶縁層と、支持用金属層と、無機フィラーの含有量が20体積%以下であり且つ平均厚みが100μm以下である粘着剤層と、耐熱性樹脂層を有するセパレータとがこの順に積層されてなる配線板積層体。
【0009】
<2> 前記回路形成用金属層は、回路形成された金属回路層である前記<1>に記載の配線板積層体。
【0010】
<3> 前記回路形成用金属層から前記支持用金属層までの積層体の平均厚さが、50μm以上500μm以下である前記<1>または<2>に記載の配線板積層体。
【0011】
<4> 前記粘着剤層の熱抵抗が、6℃・cm/W以下である前記<1>〜<3>のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【0012】
<5> 空気中で260℃2分間熱処理した後の前記粘着剤層のピール強度が、熱処理前の前記粘着剤層のピール強度に対して30%以上である前記<1>〜<4>のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【0013】
<6> 前記粘着剤層は、アクリル樹脂を50体積%以上含む前記<1>〜<5>のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【0014】
<7> 前記アクリル樹脂が(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、カルボキシル基および水酸基の少なくとも一種を有する前記<6>に記載の配線板積層体。
【0015】
<8> 前記耐熱性樹脂層は、250℃で1分間の熱処理後の収縮率が長さ基準で3%以下である前記<1>〜<7>のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【0016】
<9> 前記セパレータが、更にアルミニウム箔および銅箔の少なくとも一つを有する前記<1>〜<8>のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【0017】
<10> 前記<1>〜<9>のいずれか一項に記載の配線板積層体を用いて作製される部品実装配線板積層体。
【0018】
<11> 前記<10>に記載の部品実装配線板積層体を用いて作製される電子部品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱伝導性に優れた配線板を形成可能で部品実装時の耐リフロー性に優れる配線板積層体、筐体への密着性に優れる部品実装配線板積層体、およびこの部品実装配線板積層体から作製される電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】配線板積層体の一例の断面図である。
【図2】配線板積層体の他の例の断面図である。
【図3】金属回路層、絶縁層および支持用金属層が積層された配線板の一例の断面図である。
【図4】部品実装配線板積層体の一例の断面図である。
【図5】電子部品の一例の断面図である。
【図6】本発明に用いる固定冶具を説明する模式図であり、(A)は上面図、(B)は断面図を示す。
【図7】従来の電子部品の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
さらに本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0022】
<配線板積層体>
本発明は、回路形成用金属層、絶縁層、支持用金属層、粘着剤層、耐熱性樹脂層を有するセパレータがこの順に積層されてなる配線板積層体である。そして、前記粘着剤層の平均厚みが100μm以下であって、かつ前記粘着剤層中の無機フィラーの含有量が20体積%以下である。かかる構成により、熱伝導性に優れ、部品実装時の耐リフロー性を付与することができる。また、この配線板積層体に部品実装した部品実装配線板積層体は、筐体に十分に貼り付けでき、熱抵抗を低減することができる。よって、部品が発する熱を効率よく筐体に逃がすことができ、その結果、部品の温度上昇を抑制でき、部品の寿命が向上した電子部品を提供することができる。
【0023】
図1に、本発明の配線板積層体の一例の断面図を示す。図1に示す配線板積層体90は、回路形成用金属層10、絶縁層12、支持用金属層14、粘着剤層16、耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18がこの順に積層されている。なお、図1に示すセパレータ18は、耐熱性樹脂層20と基材22とから構成されている。
図2に、本発明の配線板積層体の他の例の断面図を示す。図2に示す配線板積層体92は、金属回路層11、絶縁層12、支持用金属層14、粘着剤層16、耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18がこの順に積層されている。金属回路層11は、回路形成用金属層10から回路が形成されたものである。また、図2に示すセパレータ18は、耐熱性樹脂層20と基材22とから構成されている。
【0024】
ここで、回路形成用金属層10、絶縁層12および支持用金属層14がこの順に積層された積層体を「配線板材料30」と称する。また、図3に示すように、金属回路層11、絶縁層12及び支持用金属層14がこの順に積層された積層体を「配線板31」と称する。
以下、本発明の配線板積層体の構成部品について、詳細に説明する。
【0025】
〔配線板材料または配線板〕
本発明における配線板材料とは回路形成用金属層10、絶縁層12および支持用金属層14がこの順に積層された積層体を意味する。また、本発明における配線板とは金属回路層11、絶縁層12及び支持用金属層14がこの順に積層された積層体を意味する。
配線板材料30または配線板31の平均厚み(つまり、回路形成用金属層10または金属回路層11から支持用金属層14までの積層体の平均厚み)は特に制限されないが、50μm以上500μm以下であることが好ましく、55μm以上440μm以下であることがより好ましく、74μm以上340μm以下であることがさらに好ましい。前記平均厚みが50μm以上の場合には取扱性に優れ、500μm以下の場合には熱抵抗の増加が抑えられ、加工性に優れ、重量の増加も抑えられる。尚、配線板材料30および配線板31の平均厚みは、5点の厚さをマイクロメーターを用いて測定しその算術平均値として与えられる。
【0026】
〔回路形成用金属層〕
本発明における回路形成用金属層10は、回路を形成可能な金属からなるものであれば特に制限はないが、一般的には金属箔を用いて構成される。金属箔の種類としては、銅、アルミ、鉄、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロム、モリブデン又はこれらの合金の箔が好適に用いられる。これらの中でも高い導電率と汎用性の観点から銅箔が好ましい。
【0027】
回路形成用金属層10の厚みは回路を形成可能である限り特に制限されないが、導電性の観点から5μm〜150μmであることが好ましく、汎用性の観点から15μm〜110μmであることがより好ましく、放熱性の観点から30μm〜80μmであることがさらに好ましい。5μm以上の厚みの場合には、回路形成用金属層10から回路形成された金属回路層11の面内に部品40の熱を拡散しやすくなり、150μm以下の厚みの場合には、回路形成時の加工時間が長くなるのが抑えられる傾向にある。
【0028】
回路形成用金属層10は絶縁層12上の全面に設けられていても、一部の領域にのみ設けられていてもよく、熱伝達の向上のために、全面に設けられていることが好ましい。
【0029】
また、前記回路形成用金属層10は回路が形成されて、金属回路層11としてもよい。回路を形成する方法は配線板材料30の金属層を回路加工するのに通常用いられる方法から適宜選択して行うことができる。例えば、印刷、フォトレジストフィルム等を使用して、回路形成用金属層10上に回路形成用のレジストを所望の形状に形成する工程と、回路形成用金属層10のレジストが形成されていない領域の金属箔を腐食性の液でエッチングして除去する工程とを含む方法で回路を形成することができる。
【0030】
〔絶縁層〕
本発明における絶縁層12は、回路形成用金属層10上に設けられる。
本発明における絶縁層12は絶縁性を示すものであれば特に制限されないが、樹脂によって構成されることが好ましい。前記樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル等の高分子量樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及びこれらの混合物等を挙げることができる。耐熱性の観点からポリイミド樹脂およびエポキシ樹脂から少なくとも1種が選択されることが好ましい。
【0031】
前記樹脂のなかでも、機械特性や電気特性の観点から、少なくとも1種がポリイミド樹脂またはポリイミド前駆体であることが好ましい。ポリイミド前駆体であるポリアミック酸は製造過程でポリイミドに変換される。
【0032】
また、前記ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物として、エポキシ化合物、アクリル化合物、ジイソシアネート化合物、フェノール化合物等の硬化成分、フィラー、粒子、色材、レベリング剤、カップリング剤等の添加成分を任意に混合することも可能である。これらの硬化成分および添加成分の含有量は、ポリイミド樹脂使用の効果である機械特性や電気特性を低下させない観点から、ポリイミド樹脂の含有量よりも少なくすることが好ましい。
【0033】
絶縁層12内の積層数は特に制限されず、1層でもよく、2層以上の多層構造でもよい。例えば、2層の構造では、1層目が高い絶縁破壊電圧を示す層であり、2層目は高い密着力を示す層である等、求める機能が異なっていてもよい。
【0034】
〔支持用金属層〕
本発明における支持用金属層14は、絶縁層12の回路形成用金属層10が設けられた面とは反対側の面に設けられる。
支持用金属層14を有することで熱伝導性と加工性に優れる配線板積層体90,92を構成できる。支持用金属層14は一般的には金属箔を用いて構成される。支持用金属層14としては、回路形成用金属層10における金属箔と同様のものを挙げることができ、高熱伝導率の観点から銅箔が好適に用いられる。
【0035】
支持用金属層14の厚みは特に制限されないが、軽量化の観点から17μm〜300μmであることが好ましく、放熱性の観点から35μm〜200μmであることがより好ましく、柔軟性の観点から35μm〜150μmであることがさらに好ましい。17μm以上の厚みの場合には取扱に優れ、300μm以下の厚みの場合には熱抵抗の増加が抑えられ、加工性に優れ、重量の増加も抑えられる。
【0036】
支持用金属層14における絶縁層12と接する面には、絶縁層12との密着力を高めるために、化学的粗化、コロナ放電、サンディング、めっき、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等によって機械的又は化学的な処理が施されていてもよい。
【0037】
また、支持用金属層14は絶縁層12の全面に設けられていても、一部の領域にのみ設けられていてもよく、熱伝導性と加工性の観点から、絶縁層12の全面に設けられていることが好ましい。
【0038】
〔粘着剤層〕
本発明における粘着剤層16は、支持用金属層14における絶縁層12が設けられた面とは反対側の面に設けられる。粘着剤層16の平均厚みは100μm以下である。また、粘着剤層16中の前記無機フィラーの含有量は20体積%以下である。かかる構成により、熱伝導性に優れ、部品実装時の耐リフロー性を付与することができる。
【0039】
粘着剤層16の平均厚みは100μm以下である。粘着剤層16の平均厚みが100μmを超えると、熱抵抗が増加する恐れがある。また、粘着剤層16の平均厚みは、5μm〜100μmであることが好ましい。粘着剤層16の平均厚みが5μm以上の場合、十分な粘着性が得られ、回路加工時のエッチング工程で支持用金属層14を適切に保護することができ、また筐体50に十分に粘着することができる。
【0040】
さらなる低熱抵抗化の観点から、粘着剤層16の平均厚みは5μm〜70μmであることが好ましく、密着性の観点から20μm〜70μmであることがより好ましく、粘着力と低熱抵抗のバランスの観点から25μm〜60μmであることがさらに好ましい。
【0041】
粘着剤層16の平均厚みは、配線板積層体90、92から耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18を剥離した状態(図1の配線板材料30または配線板31と粘着剤層16の積層体)での平均厚みから、配線板材料30または配線板31の平均厚みを引くことにより求める。なお、平均厚みは5箇所測定したときの平均値であり、厚みはマイクロメーター(例えば、新潟精機社製)によって測定する。また、配線板材料30または配線板31は配線板積層体90、92から耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18を剥離し、さらに粘着剤層16を除去することで得られる。粘着剤層16の除去は、有機溶媒で膨潤あるいは溶解させた後にふき取ることで可能である。
【0042】
粘着剤層16中の無機フィラーの含有量は20体積%以下である。かかる範囲のように前記無機フィラー含有量を減らすことで粘着剤層16中の樹脂成分量を増すことができ、粘着力を高めることができる。
上記作用については次のように考えることができる。粘着剤層16の粘着力は、空気中での実装時における加熱により低下しやすいため、粘着力に寄与しない無機フィラーの含有量は高すぎないことが好ましく、20体積%を超える場合は実装温度での加熱により粘着剤層16の粘着力の低下が著しく大きくなり、耐リフロー性が低下する恐れがある。したがって、本発明において粘着剤層16中の無機フィラーの含有量は20体積%以下とする。
【0043】
なお粘着力向上の観点から、粘着剤層16中の前記無機フィラーの含有量は10体積%以下であることがより好ましく、粘着力の耐熱性向上の観点から8体積%以下であることがさらに好ましく、高温加熱後のピール強度の維持の観点から5体積%以下が最も好ましい。
【0044】
粘着剤層16中の前記無機フィラーの含有量の下限値は特に制限されず、耐熱性向上の観点からは前記無機フィラーは含有されていなくともよく、熱伝導率向上の観点からは5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましい。
【0045】
粘着剤層16中の無機フィラー含有量は、以下の方法によって測定したときの値とする。
まず、粘着剤層16の質量を測定し、その粘着剤層16を400℃2時間次いで700℃3時間焼成し、樹脂分を蒸発させ、残存した無機フィラーの質量を測定することで、粘着剤層16中の無機フィラーの質量比を求める。
次いで、その無機フィラーを水中に沈めて、水位の変化から無機フィラーの体積を測定し、無機フィラーの比重を求める。そして、同様の方法で粘着剤層16の比重を求める。
得られた粘着剤層16中の無機フィラーの質量比を無機フィラーの比重で除し、さらに粘着剤層16の比重を積算した値を無機フィラーの体積比率として求める。
【0046】
本発明における粘着剤層16は、例えば、高分子量成分、タッキファイヤ及び必要に応じてその他添加物を含んで構成される。前記高分子量成分として具体的には、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ブタジエンゴム、アクリルゴム、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート及びそれらの混合物等が挙げられる。粘着力の観点から、(メタ)アクリル樹脂、アクリルゴム、ブタジエンゴム、ウレタン樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂やアクリルゴムであることがより好ましい。
【0047】
これらの中でも、耐熱性やコストの観点から、前記高分子成分としてアクリル樹脂を主に含む(つまり50体積%以上含む)粘着剤が好ましい。このなかでも、前記高分子成分として(メタ)アクリル酸エステル共重合体を50体積%以上含むことが好ましく、70体積%以上含むことがより好ましく、80体積%以上含むことがさらに好ましく、90体積%以上含むことがさらに好ましい。前記高分子成分として(メタ)アクリル酸エステル共重合体を70体積%以上含有することで十分な粘着性をも付与することができる。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種とこれらと共重合可能な不飽和モノマーを材料として構成される。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、およびメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびそれらの混合物を意味する。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、およびスチレン等を挙げることができる。
【0050】
本発明に好適に用いられる(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、好ましくは20万〜150万であり、粘着力の観点からより好ましくは30万〜120万であり、耐熱性の観点からさらに好ましくは40万〜100万である。(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量を20万〜150万とすることで、粘着剤の凝集力を高めることによりセパレータ18の剥離を容易とすることができる。
尚、アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0051】
アクリル酸エステル共重合体の官能基は、粘着力の向上に有効な官能基であれば制限はなく、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ニトリル基などが挙げられる。なかでも、粘着力の耐熱性が高いことから、カルボキシル基、水酸基またはエポキシ基を有することが好ましく、カルボキシル基および水酸基の少なくとも一種を有することがより好ましく、カルボキシル基を少なくとも有することが更に好ましい。カルボキシル基、水酸基またはエポキシ基を有することは部品実装時などの高温加熱におけるアクリル酸エステル共重合体の粘着力の低下を抑制できる点で好ましい。
【0052】
また、柔軟性を損なわない範囲で架橋構造を含ませることが、長期間の密着保持性と膜強度の点で好ましい。アクリル酸エステル共重合体の前記官能基と結合する官能基を2個以上有する架橋剤をアクリル酸エステル共重合体と反応させてもよい。例えば、−OH基等の極性基を有するアクリル酸エステル共重合体に、複数のイソシアネート基やエポキシ基等の前記極性基と結合する官能基を持つ化合物を反応させることで、アクリル酸エステル共重合体に架橋構造を含ませることができる。架橋剤としては特に制限されないが、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、金属キレートなどが挙げられる。
【0053】
前記架橋剤の含有量としては例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に対して0.01質量%〜10質量%であることが好ましく、0.02質量%〜5質量%であることがより好ましい。前記架橋剤の含有量が0.01質量%以上の場合は、長期間の密着保持性に優れる。また、架橋剤量が10質量%以下の場合は、粘着剤の凝集力が高くなりすぎるのが抑えられ、粘着特性が損なわれにくくなる。
【0054】
粘着剤層16が前記無機フィラーを含有する場合、用いることのできる無機フィラーとしては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素が挙げられ、コストの観点から酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0055】
無機フィラーの平均粒子径は特に限定されず、膜厚均一性の観点からは、0.05μm〜50μmであることが好ましく、0.1μm〜40μmであることがより好ましく、0.2μm〜30μmであることが更に好ましい。
無機フィラーの平均粒子径は、重量累積粒度分布が50%となる粒子径(D50)を意味し、レーザー回折法を用いて測定される。レーザー回折法を用いた粒度分布測定は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS13)を用いて行なうことができる。
【0056】
粘着剤層16の熱抵抗は特に制限されないが、放熱性の観点から6℃・cm/W以下であることが好ましく、高放熱性の観点から4℃・cm/W以下であることがより好ましく、高温駆動素子への適用の観点から3℃・cm/W以下であることがさらに好ましい。粘着剤層16の熱抵抗が6℃・cm/W以下の場合は、部品40の温度低下が十分となる。
【0057】
なお、本発明において熱抵抗は以下のように測定される。10mmφの2枚の金属円板に粘着剤層16を挟んだ試料において、レーザーフラッシュ法やXeフラッシュ法により粘着剤層16の熱伝導率を測定し、次いで、粘着剤層16の厚み[mm]に10を乗算し、熱伝導率[W/mK]で除算することで、粘着剤層16の熱抵抗[℃・cm/W]を評価することができる。
【0058】
粘着剤層16のピール強度は特に制限されないが、配線板積層体92は部品実装のために加熱されるため、粘着剤層16のピール強度は加熱による減少が小さいことが好ましい。耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18が実装前に一部でも剥離すると、粘着剤層16は空気中で部品実装時の熱に曝され、粘着剤層16の粘着力はより低下しやすくなる。そのため、粘着力の高温耐久性が高い粘着剤層16が望ましい。
【0059】
以上の観点から、空気中で260℃2分間熱処理した後の粘着剤層16のピール強度が、熱処理前の粘着剤層16のピール強度に比べて30%以上であることが好ましい。上記範囲をとることにより、電子部品実装工程での高温加熱後の粘着剤層16のピール強度低下が抑制でき、部品実装した配線板31が筐体50に十分に粘着される。
【0060】
高温加熱後のピール強度の低下抑制の観点から、前記ピール強度比は50%以上であることがより好ましく、高温加熱後のピール強度の維持の観点から60%以上であることがさらに好ましく、粘着剤の高温耐久性の観点から70%以上であることがさらに好ましい。
【0061】
粘着剤層16のピール強度は以下の方法で測定される。
支持用金属層として100mm×25mm、105μm厚の銅箔に、粘着剤層16を貼り付け、さらに、粘着剤層16の上に、1mm厚のアルミ基板(A5052)を、ゴムロールを用いて50Nの応力にて貼り付けて剥離用サンプルを作製する。
剥離用サンプル作製後に室温で72時間放置した後に、引張試験機(テンシロン万能試験機RTA−100、オリエンテック社製)により、測定温度25℃、剥離角度90°、剥離速度0.2m/minでピール強度を測定する。
高温加熱後のピール強度は、上記剥離用サンプルの作製において、粘着剤層16を空気中に露出させた状態で260℃のホットプレートに2分間のせた後、室温にて放冷し、その後、アルミ基板を貼り付ける以外は、上記方法と同様にして測定される。
【0062】
また、本発明における粘着剤層16は、膜厚が均一な点で、両面粘着テープの形態で使用されることが好ましい。このような両面テープは粘着剤だけで形成されていてよく、また基材の両面に粘着剤層16が形成されたものでもよい。熱抵抗が低い観点から基材を含まないことが好ましい。
【0063】
〔セパレータ〕
本発明におけるセパレータ18は、粘着剤層16上に設けられるものであり、少なくとも耐熱性樹脂層20を有し、必要に応じてその他の層を含んで構成される。セパレータ18は、耐熱性樹脂層20からなるものであってもよく、またその他の層(好ましくは基材22)を含んでいてもよい。セパレータ18がその他の層(基材22等)を含む場合、前記その他の層(基材22等)の一方の面又は両面に耐熱性樹脂層20を有していてもよく、その他の層(基材22等)の両面に耐熱性樹脂層20を有することがより好ましい。なお、前記その他の層(基材22等)の一方の面に耐熱性樹脂層20を有する場合、粘着剤層16に対向する面とは反対側の面上に耐熱性樹脂層20を有することが好ましい。
【0064】
耐熱性樹脂層20は、250℃の雰囲気下で1分間熱処理した後の収縮率が、長さ基準で3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。前記収縮率が3%以下の場合、部品40実装のための加熱時のセパレータ18の収縮が抑えられ、配線板積層体90、92が変形したり、粘着剤層16からセパレータ18が剥離したりすることが抑えられる。
【0065】
耐熱性樹脂層20の前記収縮率は、具体的には以下のようにして測定される。長さ10cm×10cm、厚さ50μmのシート状に加工した評価用の樹脂シートを用意する。評価用の樹脂シートについて25℃で対角線の長さを測定する。次いで250℃の雰囲気下で1分間熱処理した後、室温で放冷した評価用の樹脂シートについて25℃で対角線の長さを測定し、熱処理前の対角線の長さと熱処理後の対角線の長さとの差分を求め、その差分を熱処理前の対角線の長さで除した値を収縮率として算出する。
【0066】
耐熱性樹脂層20は前記収縮率を満たす樹脂を含んで構成されることが好ましく、このような樹脂として具体的には、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びポリアミド樹脂等を挙げることができる。中でも低収縮性の観点から、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0067】
前記ポリイミド樹脂としては、耐熱性樹脂として通常用いられるポリイミド樹脂から適宜選択して用いることができる。前記エポキシ樹脂としては、耐熱性樹脂として通常用いられるエポキシ樹脂から適宜選択して用いることができる。前記ポリアミドイミド樹脂としては、耐熱性樹脂として通常用いられるポリアミドイミド樹脂から適宜選択して用いることができる。
【0068】
セパレータ18における耐熱性樹脂層20の厚みは、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐水性及び加工性の観点から、0.1μm〜10μmであることが好ましく、0.3μm〜7μmであることがより好ましい。
【0069】
セパレータ18は耐熱性樹脂層20に加えて、その他の層として基材22を含むものであることが好ましい。基材22を含むことで、加工性や取り扱い性がより向上する。
セパレータ18における基材22としては特に制限はないが、はんだリフロー工程で著しい変形や変質が起こらないよう、耐熱性を有するものが好ましい。具体的には例えば、紙、不織布、金属箔等を挙げることができる。中でも、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性及び耐水性の観点から、アルミニウム箔、銅箔、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種の金属箔であることが好ましく、アルミニウム箔および銅箔から選ばれる少なくとも1種の金属箔であることがより好ましい。回路形成用金属層10および金属回路層11には銅またはアルミニウムが用いられることが多いため、回路形成用金属層10または金属回路層11に近似する線膨張係数を有する金属をセパレータ18の基材22として用いることが好ましい。これにより、部品実装等の加熱時に配線板積層体92の変形や反りを抑制できる点で好ましい。
【0070】
セパレータ18における基材22の厚みは特に制限されないが、5μm〜200μmであることが好ましく、9μm〜110μmであることがより好ましく、17μm〜80μmであることがさらに好ましい。基材22の厚みが5μm以上の場合は取扱性に優れ、200μm以下の場合は加工性や副資材のコストの点で優れる。
【0071】
セパレータ18が基材22と耐熱性樹脂層20とから構成される場合、回路加工時の薬品からセパレータ18の基材22を保護するために、耐熱性樹脂層20は少なくとも基材22の粘着剤層16に対向する面とは反対側の面上に設けられていることが好ましい。ただし、基材22の両面に耐熱性樹脂層20が設けられていてもよく、その場合は、耐熱性樹脂層20の粘着剤層16に対向する表面に、離型処理を施すことが好ましい。
【0072】
上述のように、セパレータ18の粘着剤層16に対向する面は、粘着剤層16に対する剥離性を有していることが好ましい。これにより粘着剤層16からセパレータ18を剥離することが容易となり、配線板31を筐体50に貼付する工程をより効率的に実施することができる。
セパレータ18の粘着剤層16に対向する面に剥離性を付与する方法は特に制限されない。例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤、フッ素樹脂等の離型剤で表面処理する方法を挙げることができる。
【0073】
<配線板積層体の製造方法>
配線板積層体90,92の製造方法は、回路形成用金属層10または金属回路層11と、絶縁層12と、支持用金属層14と、粘着剤層16と、耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18とをこの順に積層可能であれば特に制限されない。例えば、回路形成用金属層10、絶縁層12及び支持用金属層14がこの順に積層された配線板材料30や、金属回路層11、絶縁層12及び支持用金属層14がこの順に積層された配線板31を用いて、配線板積層体が製造されてもよい。
【0074】
具体的には例えば、配線板材料30または配線板31の支持用金属層14上に粘着剤層16を設ける工程と、粘着剤層16上にセパレータ18を積層する工程とを含む第一の製造方法;セパレータ18上に粘着剤層16を設ける工程と、セパレータ18上に設けられた粘着剤層16が、配線板材料30または配線板31の支持用金属層14と接するように配線板材料30または配線板31上に粘着剤層16が設けられたセパレータ18を積層する工程とを含む第二の製造方法;等を挙げることができる。中でも、生産性の観点から、第二の製造方法であることが好ましい。
【0075】
セパレータ18上に粘着剤層16を設ける工程としては、粘着剤層16形成に通常用いられる方法を特に制限なく適用することができる。例えば、セパレータ18上に粘着剤を含む粘着剤層用組成物を塗布又はラミネートする方法等を挙げることができる。また、別の基材上に粘着剤層16を形成した後、形成された粘着剤層16をセパレータ18上に転写してもよい。前記別の基材としては、例えば離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムなどが使用される。さらに、セパレータ18上に両面粘着テープを付着させて粘着剤層16を形成してもよい。
セパレータ18の粘着剤層16が設けられる面は、離型剤で表面処理されていることが好ましい。用いる離型剤については既述の通りである。
【0076】
配線板材料30または配線板31の支持用金属層14と接するように配線板材料30または配線板31上に、粘着剤層16が設けられたセパレータ18を積層する工程としては、通常に用いられる積層方法を特に制限なく適用することができる。例えば、プレス、ホットロールラミネート方法が挙げられ、連続的に製造でき、効率が良好な観点から、ホットロールラミネート方法が好ましい。
プレス、ホットロールラミネート方法は当該技術分野で通常行なわれる方法から適宜選択して行うことができる。例えば、ホットロールラミネートとしては、シリコーンゴム被覆ロールを備えたホットロールラミネータを用いて、20℃〜50℃という条件で行うことができる。
【0077】
なお、回路形成用金属層10を有する配線板材料30を用いて、金属回路層11を有する配線板積層体92の製造方法としては、次の方法が挙げられる。
まず、配線板材料30の支持用金属層14上に粘着剤層16及び耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18をこの順に積層する。次いで、配線板材料30の回路形成用金属層10をエッチングにより金属回路層11とし、配線板31を得る。
【0078】
本発明の配線板積層体90においては、支持用金属層14が粘着剤層16とセパレータ18とで保護されているため、支持用金属層14が前記エッチングによってダメージを受けることなく、回路形成用金属層10に回路を形成し金属回路層11とすることができる。特に、回路形成用金属層10及び支持用金属層14の厚みを前述のように薄くすることで、配線板積層体90の外周部に保護材を使用する必要がなくなり、より容易に回路加工ができる。
【0079】
<部品実装配線板積層体>
本発明の部品実装配線板積層体は、本発明の配線板積層体を用いて作製される。具体的には、部品実装配線板積層体は、回路形成用金属層10から形成された金属回路層11を有する配線板積層体92と、金属回路層11上に設けられた部品40とを有している。
【0080】
本発明の部品実装配線板積層体の製造方法の一つとして、回路形成用金属層10から形成された金属回路層11、絶縁層12及び支持用金属層14がこの順に積層されてなる配線板31を用い、下記の工程を含む部品実装配線板積層体100の製造方法が挙げられる。この製造方法を、図3および図4を参照しながら説明する。
【0081】
まず、図3に示す配線板31の支持用金属層14上に粘着剤層16を積層する。次いで、粘着剤層16上に耐熱性樹脂層20を有するセパレータ18を、耐熱性樹脂層20が粘着剤層16とは反対側の面に配置されるように積層する。
【0082】
次いで、部品40とはんだ等の導電性接続材料42を金属回路層11上に載せて、この状態でリフロー炉を通すなどして、配線板31の金属回路層11上に部品40を実装し、部品実装配線板積層体100を製造する。
【0083】
金属回路層11上にリフロー処理によって部品40を実装する工程においては、例えば、必要に応じて、ソルダーレジストを回路面に形成する工程や、配線板積層体92を必要な大きさに外形加工する工程を実施した後、部品40とはんだを金属回路層11上に配置し、リフロー処理によって部品40を金属回路層11に実装する。このとき部品40以外のその他の部品を同時に実装してもよい。リフロー処理は通常用いられる条件で行われる。
【0084】
本発明の配線板積層体92においては、セパレータ18の表面に耐熱性樹脂層20を有することから、リフロー処理時に支持用金属層14が露出していないために、リフロー処理によって加熱されても、支持用金属層14に酸化層が形成されることが抑制できる。その結果、酸化層による熱抵抗の上昇を抑制でき、優れた放熱性を達成することができるため、耐リフロー性に優れている。
【0085】
部品40は、例えばLED素子などの半導体部品などである。半導体部品の実装方法は、通常用いられる方法から適宜選択することができる。例えば、金属回路層上に設けられた金属ペーストなどを介して実装される方法が用いられる。
【0086】
前記半導体部品は、半導体素子と、半導体素子及び外部を電気的に接続する端子と、半導体素子を密封し保持する封止材とから構成される。前記端子としては、特に制限されず、例えば、銅などの導体や、はんだ等が用いられる。前記封止材としては、特に制限されず、エポキシ樹脂等が用いられる。なお、半導体部品は、特開2007−110113号公報等に記載の方法等に準じて得ることができる。
【0087】
本発明の部品実装配線板積層体100は、本発明の配線板積層体90,92を用いているため、筐体50への密着性に優れ、熱伝導性に優れた電子部品を形成することが可能である。
【0088】
<電子部品>
本発明の電子部品は、部品実装配線板積層体100を用いて作製される。具体的には、部品実装配線板積層体100におけるセパレータ18を粘着剤層16との界面で剥離して、セパレータ18が除去された粘着剤層16の面上に筐体50を貼付することで、図5に例示されるような電子部品を製造することができる。図5に示す電子部品は、金属回路層11、絶縁層12及び支持用金属層14がこの順に積層された配線板31と、金属回路層11上に導電性接続材料42を介して実装した部品40と、支持用金属層14の外側表面に粘着剤層16を介して粘着された筐体50とを有する。
【0089】
従来の電子部品の製造方法においては、一般に、図7に示すように、両面に金属層を有する配線板材料30の片面に保護フィルム70を配置し(図7(A))、配線板材料30の回路形成用金属層10を回路加工して金属回路層11を形成し配線板31を得た後(図7(B))、保護フィルム70を剥離し(図7(C))、次いでリフロー処理によりはんだ等の導電性接続材料42を介して部品40を実装した後(図7(D))、部品40の実装面とは反対側に、粘着剤層16とセパレータ18とを積層し(図7(E))、そしてセパレータ18を剥離して(図7(F))、粘着剤層16上に筐体50を貼付する(図7(G))。
【0090】
これに対して、本発明の配線板積層体を用いる電子部品の製造方法では、セパレータ18の表面に耐熱性樹脂層20を有することから、リフロー処理時に支持用金属層14の表面の酸化が抑えられる。そのため保護フィルムを配置、剥離する、という工程が省かれ、工程が簡略化される。また、リフロー処理時の支持用金属層14の保護が充分であることから、熱抵抗の上昇を抑制することができる。更に、本発明の部品実装配線板積層体100は筐体への密着性に優れることから、得られる電子部品は、熱抵抗の上昇が抑制される。
【0091】
本発明に係る電子部品の製造方法において、セパレータ18を粘着剤層16との界面で剥離する方法、およびセパレータ18が除去された粘着剤層16の面上に筐体50を貼付する方法は特に制限されず、通常行なわれる方法から適宜選択することができる。このなかでも、配線板31の変形を抑制することができ、これに付随する不具合の発生を抑制することができる観点から、図6に示すような特定構成の固定冶具60を部品実装配線板積層体100に配置し、部品40を実装した配線板31を筐体50に粘着する電子部品の製造方法が好適である。特定構成の固定冶具60を用いる電子部品の製造方法は、具体的には以下の工程を含む。
【0092】
(I)部品実装配線板積層体100における部品40の実装面上に、固定冶具60を配置する固定冶具設置工程、
(II)部品実装配線板積層体100におけるセパレータ18を粘着剤層16との界面で剥離して粘着剤層16の表面を露出するセパレータ剥離工程、
(III)露出した粘着剤層16の表面に筐体50を貼付する貼付工程。
【0093】
部品実装配線板積層体100に図6に示すような特定構成の固定冶具60を用いると、部品実装した配線板31を筐体50に確実に優れた密着性で貼付することができ、部品実装した配線板31と筐体50間の熱抵抗を効果的に低減することができる。そのため、半導体等で構成される部品40が発する熱を効率よく筐体50に逃がすことができ、その結果、部品40の温度上昇を抑制でき、部品40の寿命を改善できる。これは例えば、固定冶具60を配置した部品実装配線板積層体100は、部品実装配線板積層体100単体に比べて強度があり、部品実装した配線板31を筐体50方向に充分な圧力で加圧して粘着することができるためと考えることができる。
【0094】
また、上記製造方法においては、部品実装面上に固定冶具60が配置されることで、筐体50貼付時に部品実装した配線板31の変形を抑制することができ、これに付随する不具合の発生を抑制することができる。さらに部品実装面上に配置された固定冶具60が部品実装面に対して粘着性を有することで、セパレータ18剥離時の応力を緩和することができ、部品実装した配線板31の変形を抑制することができる。
【0095】
〔固定冶具設置工程〕
固定冶具設置工程においては、部品実装配線板積層体100における部品40が実装された部品実装面上に、固定冶具60を配置する。固定冶具60は、半導体部品を受容する部品受容空間62と部品実装配線板積層体100に接する面とを有し、部品実装配線板積層体100に接する面が粘着性を有する。
【0096】
図6(A)に、固定冶具60が配線板31の部品実装面上に配置された状態の上面図を、図6(B)にその断面図を示す。図6(A)(B)に示すように、部品実装配線板積層体100の部品実装側面上に固定冶具60を配置する工程では、固定冶具60の部品受容空間62には配線板31上の部品40が挿入され、固定冶具60の粘着性を有する面が配線板31の部品実装面に接するように固定冶具60が配置される。配線板31上にコネクタ44がさらに配置されている場合には、コネクタ44を受容可能な部品受容空間62にコネクタ44が挿入されるように、固定冶具60を配線板31の部品実装面上に配置することが好ましい。
【0097】
固定冶具60を配線板31の部品実装面上に配置する際には、固定冶具60の配線板31と接する面とは反対側の面から配線板31方向に圧力を加えることが好ましい。これにより固定冶具60の配線板31に接する面は粘着性を有するため、配線板31の部品実装面上に配置された固定冶具60をより確実に固定することができる。
【0098】
固定冶具60を配置する際の圧力を加える方法は特に制限されない。ローラー等の回転体を用いて加圧してもよく、板状や棒状、球状の部材で加圧してもよく、さらに道具を用いずに手や指で直接加圧してもよい。このときの圧力は固定冶具60の粘着性等に応じて適宜設定できる。例えば0.1MPa〜50MPaとすることができ、1MPa〜20MPaであることが好ましい。
【0099】
固定冶具60の詳細について説明する。
固定冶具60は部品受容空間62として、固定冶具60の厚み方向に貫通穴または非貫通孔である凹みを有し、かつ、部品実装配線板積層体100に接する面が粘着性を有する。前記粘着性は、例えば部品実装配線板積層体100に接する面に粘着層を設けることで付与することができる。
【0100】
かかる構成の固定冶具60であることで部品実装配線板積層体100に実装された部品40を保護しつつ固定冶具60を部品実装配線板積層体100に容易に貼り付けることができる。また、固定冶具60を部品実装配線板積層体100の部品40が実装された側(金属回路層11側)に設けることで、部品40が実装された配線板31を筐体50に貼り付ける際の圧力が部品40に集中するのが抑えられ、部品40の脱落や損傷の発生が抑制される。また固定冶具60をロールや指で加圧して配線板31を筐体50に貼付することで、配線板31は少なくとも部品実装部分以外の全面も加圧されるために、より高い密着性を得ることができる。
【0101】
部品受容空間62の形状は部品40を受容可能であれば特に制限されない。例えば、部品受容空間62は、厚み方向の断面で観察したときに、固定冶具60の厚み方向の貫通孔又は凹みのような非貫通孔であってもよい。部品受容空間62としての貫通孔または非貫通孔の断面形状は、矩形、多角形、円形または楕円形等のいずれの形状であってもよい。
【0102】
図6に示すように部品受容空間62が貫通穴である場合、固定冶具60の厚みは受容する部品40の高さの80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。固定冶具60が部品40の高さの80%以上の厚みを有することで、固定冶具60及び部品40に、例えばロール等を用いて応力を加えた場合に、部品40に加えられるせん断方向の応力を緩和することができ、部品40が接続部から剥れること等の不具合を抑制できる。また固定冶具60の厚みが部品40の高さの80%〜100%の範囲でも、ローラー等の加圧用道具の柔らかさを調整すること等で部品40にだけ応力が集中することを防ぐことができ、固定冶具60へも応力を加えることができる。
【0103】
一方、部品受容空間62が非貫通穴である場合、その非貫通穴の深さは部品40の高さの90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。固定冶具60における非貫通穴の深さが部品40の高さの90%以上であると、固定冶具60を加圧した場合に部品40に応力が集中することを抑制することができる。
【0104】
また固定冶具60の面方向での部品受容空間62の形状は特に制限されず、受容する部品40の形状に応じて適宜選択することができる。さらに配線板31に部品40が複数実装される場合、固定冶具60に設けられる部品受容空間62は、個々の部品40に対応するよう独立して設けられていても(図6(A))、連続して設けられていてもよい(不図示)。
【0105】
固定冶具60の配線板31に接する面方向の大きさは特に制限されない。例えば固定冶具60の縦方向及び横方向の長さは、配線板31の縦方向及び横方向の長さに対してそれぞれ80%〜150%であることが好ましく、60%〜300%であることがより好ましい。これにより配線板31と筐体50との密着性をより向上させることができる。
また固定冶具60を配線板31上に配置した場合の固定冶具60と配線板31の接触面積は特に制限されない。例えば接触面積は配線板31の面積に対して30%以上とすることができ、40%以上であることがより好ましい。これにより配線板31と筐体50との密着性をより向上させることができる。
【0106】
固定冶具60の本体の材質には特に制限はない。固定冶具60設置工程において、部品受容空間と半導体部品との位置ずれが小さくなるようなヤング率を有する材質で構成されることが好ましい。具体的には、固定冶具60のヤング率は0.1GPa〜1000GPaが好ましく、寸法精度を高める観点から、1GPa〜1000GPaがより好ましい。
【0107】
このようなヤング率を有する材質としては例えば、ウレタンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどの一般的なゴム、塩化ビニル、PMMA等のプラスチック、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属、ガラスエポキシ基材のような複合材などを用いることができる。特にウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムは柔らかさと強度を兼ね備えており、取扱い易い、または配線板31に均一に加圧できる点で好ましい。
【0108】
または、固定冶具60の本体は一層だけでなく、二層以上の多層構造にしてもよい。例えば、固定冶具60の配線板31と対向する側に配置される層をゴム等の柔軟な層とし、それを支持する層として一般的なプラスチック板や金属板等のように、弾性変形し、かつ取扱に必要な強度を十分に有する材料の基材を用いて構成してもよい。
【0109】
固定冶具60の配線板31に接する面は粘着性を有する。固定冶具60は配線板31に設けて取り扱うため、配線板31の全面あるいは一部と固定冶具60とが密着し、配線板31を筐体50に粘着した後は容易に剥離できる程度の、粘着性があることが好ましい。具体的には、固定冶具60の配線板31に対するピール強度は1.5N/25mm以下であることが好ましく、0.01N/25mm以上1.5N/25mm以下であることがより好ましく、0.1N/25mm以上1.0N/25mm以下であることがさらに好ましい。
【0110】
固定冶具60に粘着力を与える方法は特に制限はない。例えば固定冶具60の本体に微粘着層を形成する方法を挙げることができる。その際に固定冶具60の表面に微粘着層が、配線板31表面に対するよりも強固に粘着するように、化学的あるいは機械的な表面処理を施すか、あるいはプライマー層を形成してもよい。また固定冶具60の本体に、微粘着層/基材/強粘着層からなる両面粘着テープの強粘着層側を貼り付けることで、固定冶具60表面に微粘着層を形成してもよい。また、微粘着層は繰り返し使用しても粘着性を維持するタイプの粘着層を用いることが好ましい。これより微粘着層の再形成の頻度を減らすことができる。このような繰り返し使用が可能な粘着層は微粘着層/基材の構成を有していることが多く、基材面に強粘着層を積層して用いてもよい。
【0111】
微粘着層と強粘着層の粘着剤の材質は特に限定されない。固定冶具60に微粘着層/基材/強粘着層からなる両面粘着テープの強粘着層側を貼り付ける場合、微粘着層と配線板31とのピール強度は0.01N/25mm〜1.5N/25mmが好ましく、0.1N/25mm〜1.0N/25mmがより好ましい。また強粘着層と固定冶具60とのピール強度は2N/25mm以上が好ましい。
【0112】
〔セパレータ剥離工程〕
セパレータ剥離工程では、部品実装配線板積層体100におけるセパレータ18を粘着剤層16との界面で剥離して粘着剤層面を露出させる。
セパレータ18の剥離の前に予め粘着性を有する固定冶具60が配線板31に接して配置されていることで、セパレータ18の剥離力による配線板31の変形を防ぐことができる。ここで固定冶具60は粘着性を有するために配線板31に接した際に粘着される。そして固定冶具60の配線板31に対する粘着力が、セパレータ18の粘着剤層16からの剥離力を上回ることで、配線板31が固定冶具60からはずれることなく、セパレータ18のみを配線板31上に積層された粘着剤層16から剥がすことができる。
【0113】
〔貼付工程〕
貼付工程では、筐体50を前記露出した粘着剤層16面に貼付する。粘着剤層16上に筐体50を貼付する方法は、粘着剤層16と筐体50とを接触させ、部品40が実装された領域以外または部品40と配線板31の両方の領域に圧力を加える方法であることが好ましい。
【0114】
前述の通り、固定冶具60は、配線板31に実装された部品40を受容れる貫通孔または非貫通孔を有し、部品実装配線板積層体100における部品40が実装された部品実装面上に配置されている。そのため、貼付時に固定冶具60をロールや指で加圧することで、配線板31における少なくとも部品実装部分以外の全面を加圧することができ、高い密着性を得ることができ、かつ部品40の損傷が抑えられる。加える圧力は特に制限されず粘着剤層16の構成に応じて適宜選択される。
【0115】
なお貼付の際、配線板31の長尺方向の一方の端部を筐体50に設置し、配線板31のもう一方の他端部を筐体50から離しておき、そして他端部を徐々に筐体50に近づけながら、一方の端部から他端部に向けて加圧して粘着することが好ましい。これにより、粘着剤層16と筐体50の間に気泡等が巻き込まれなくなり、密着性が向上する。このようにして、部品実装した配線板31を筐体50に粘着した電子部品が得られる。
【0116】
筐体50としては、部品40が発する熱を逃がす材料であれば、特に限定しない。例えば金属筐体、セラミック製筐体などが挙げられるが、取扱い性や熱を効率よく逃がす点から金属筐体が好ましい。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0118】
[実施例1]
<耐熱性樹脂層を有するアルミセパレータの作製>
フェノールノボラックエポキシ樹脂(社製、YDPN−638)22部とトリエチレンテトラミン3部とを混合し、さらにメチルエチルケトンで希釈した溶液を30μm厚のアルミ箔に塗布した。エポキシ樹脂を塗布したアルミ箔を150℃で1時間焼成し、5μmのエポキシ樹脂層(耐熱性樹脂層)とアルミ箔とが積層された総厚35μmの積層物を得た。
【0119】
次いで、この積層物のアルミ箔面に、フッ素含有珪素化合物を固形分濃度0.2%含有するフッ素含有珪素化合物の処理液(住友スリーエム社製、EGC−1720)を塗布し、室温で6時間乾燥させた。その後、100℃で1時間熱処理し、アセトンを浸したキムワイプでアルミ箔面を擦ることで、耐熱性樹脂層を有するアルミセパレータを作製した。
【0120】
また、前記耐熱性樹脂層の収縮率を測定するためのサンプルは以下のように作製した。上記と同様にして得たアルミ箔および50μm厚のエポキシ樹脂層が積層されてなる積層物からアルミ箔をエッチングにより除去し、50μmのエポキシ樹脂フィルムを得た。なお、耐熱性樹脂層の収縮率の測定では、基材であるアルミ箔を取り除いて測定するため、耐熱性樹脂層の単独膜としての強度を要することから、耐熱性樹脂層であるエポキシ樹脂層の厚さを50μmとした。以降、耐熱性樹脂層の収縮率の測定において同様である。
このエポキシ樹脂フィルムを10cm×10cmに切り出し、対角線の長さを25℃で測定した。次いで250℃のオーブンで1分間熱処理し、室温で放冷した後に再度エポキシ樹脂フィルムの対角線の長さを測定し、収縮率を求めた。エポキシ樹脂フィルムの収縮率は1.7%だった。
【0121】
<配線板の作製>
回路形成用金属層として35μm厚の銅箔、10μm厚の絶縁層、支持用金属層として105μm厚の銅箔がこの順に積層されてなる配線板材料(日立化成工業社製、HT−9000IMC)の回路形成用金属層にエッチングレジストを設けた後、塩化第二鉄水溶液中で銅を溶解することで回路加工し、金属回路層とした。その後、金属回路層面上の所定箇所にソルダーレジストを印刷し、120℃90分間の熱処理により硬化した。次いで、6mm幅、100mm長に外形加工し、配線板を作製した。
【0122】
<粘着剤層の積層>
上記配線板と同形で、両面に離型PETフィルムが貼り付けられた両面粘着テープ(日立化成工業社製、ヒタレックスDA−3050、平均厚み50μm)を準備した。この両面粘着テープの一方の面の離型PETフィルムを剥がして、上記配線板の支持用金属層に貼り付けることで粘着剤層を積層した。
なお、粘着剤層の熱伝導率は0.2W/mK、熱抵抗は2.5℃・cm/Wであった。また、粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は0体積%であった。これらの測定は以下の方法により行った。
【0123】
<粘着剤層の熱伝導率と熱抵抗の評価>
まず、粘着剤層の熱伝導率をレーザーフラッシュ法にて評価した。キセノンフラッシュアナライザー(NETZSCH社製NanoflashLFA447)を用いて、粘着剤層を0.6MPaで挟んだ2枚の銅板(1mm厚)にキセノンフラッシュ光を照射し、裏面銅板の温度の時間依存性を測定し、3層モデルを解析することで粘着剤層の熱伝導率[W/mK]を評価した。
【0124】
次いで、熱抵抗を計算式(熱抵抗[℃・cm/W]=10×粘着剤層の厚み[mm]/熱伝導率[W/mK])から評価した。ここで粘着剤層の厚みは、前記の熱伝導シートを0.6MPaで挟んだ2枚の銅板の厚みから、銅板の厚みを差し引いた値とした。
【0125】
<粘着剤層中の無機フィラー含有量の測定>
まず、粘着剤層をセラミックス製のるつぼに入れ、質量を測定し、るつぼの質量を差し引くことで粘着剤層の焼成前の質量を評価した。次いで、400℃2時間次いで700℃3時間焼成し、有機物成分を揮発させ、質量を測定し、るつぼの質量を差し引くことで粘着剤層の焼成後の質量を評価した。粘着剤層の焼成後の質量を焼成前の質量を除すことで、粘着剤層中の無機フィラーの質量比率を評価した。
次いで、その無機フィラーを水中に沈めて、水位の変化から無機フィラーの体積を測定し、無機フィラーの比重を評価した。そして、同様の方法で粘着剤層の比重を評価した。得られた粘着剤層中の無機フィラーの質量比を無機フィラーの比重で除し、さらに樹脂シートの比重を積算した値を無機フィラーの体積比率として評価した。
【0126】
<セパレータの積層>
前記配線板に粘着させた粘着剤層からもう一枚の離型PETフィルムを剥離した後に、粘着剤層上に上記アルミセパレータを積層し、配線板積層体を得た。このとき、アルミセパレータの長尺方向の一方の端部を配線板に付け、他方の他端部を配線板から離した状態で、他端部を徐々に配線板に近づけながら、アルミセパレータの一方の端部から他端部に向けてゴムロールで加圧して粘着した。
【0127】
<部品実装>
前記金属回路層に、複数のはんだ(千住金属工業社製、ECO SOLDER PASTE Lead Free、M705、Sn-3.0Ag-0.5Cu、溶融温度220℃)、LEDパッケージ(Philips Lumileds Lighting社製、LXML-PWC1-0080、4.6mm長×3.2mm幅×2.1mm高)、コネクタ等を載せ、リフロー処理(最大260℃)することで、片面実装した部品実装配線板積層体を得た。
【0128】
<固定冶具の作製>
3mm厚のアクリル樹脂(PMMA)の板に、両面粘着剤層として両面粘着テープ(日立化成工業社製、ヒタレックスDA−3050、50μm厚)を貼り付け、両面粘着剤層上に微粘着剤層として微粘着テープ(日立化成工業社製、ヒタレックスA−1310、60μm厚)の基材面を貼り付け、さらに離型PETフィルムを積層して、微粘着剤層付アクリル板を得た。
【0129】
次いで、前記微粘着剤層付アクリル板を7mm幅、150mm長に外形加工し、さらに5.6mm長、4.2mm幅の長方形の貫通穴を複数設けて、微粘着剤層付固定冶具とした。なお、貫通穴の中心は配線板に実装される部品の中心と一致させた。上記方法により、図6のような固定冶具を得た。
【0130】
<固定冶具の設置>
前記固定冶具から離型PETフィルムを剥離して微粘着剤層を露出させ、この微粘着剤層を片面部品実装した前記配線板の金属回路層側に貼り付けた。
【0131】
<配線板と筐体の粘着>
前記配線板の粘着剤層から耐熱性樹脂層を有するセパレータを剥離し、次いで露出した粘着剤層を筐体に粘着して、電子部品を作製した。なお、筐体にはアノダイジング処理したアルミ製ヒートシンクを用いた。筐体の粘着の際、配線板の長尺方向の一方の端部を筐体に付け、他方の他端部は筐体から離した状態で、他端部を徐々に筐体に近づけながら、配線板の一方の端部から他端部に向けてゴムロールで加圧して粘着した。
【0132】
<配線板と筐体の温度差評価>
LEDパッケージに0.3A通電し続け、30分間経過後に、配線板の部品実装していない部分の温度Tと筐体の温度Tをサーモカメラ(アピステ社製、FSV−7000E)を用いて行い、配線板と筐体の温度差ΔT=T−Tを評価した。その結果、配線板と筐体の温度差ΔTは5.5℃であった。
【0133】
<セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性>
上記同様に粘着剤層の積層、セパレータの積層を行い、配線板積層体を得た。次いで、配線板積層体の長尺方向の両端において、セパレータを端から10mmだけ剥離させた。そして上記同様に部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行った。その結果、セパレータを剥離した前記両端においても配線板は筐体に密着していた。
【0134】
<初期時の粘着剤層のピール強度評価>
支持用金属層として100mm×25mm、105μm厚の銅箔に、同形の両面粘着テープ(日立化成工業社製、ヒタレックスDA−3050、50μm)を貼り付けることで粘着剤層を積層し、粘着サンプルを得た。次いで、前記粘着サンプルにおける粘着剤層に、1mm厚のアルミ基板(A5052)を、ゴムロールを用いて50Nの応力にて貼り付け、剥離用サンプルを得た。
【0135】
剥離用サンプル作製後に室温で72時間放置した後に、引張試験機(テンシロン万能試験機RTA−100、オリエンテック社製)により剥離用サンプルにおける粘着剤層のピール強度を測定した。剥離条件は25℃、剥離角度90°、剥離速度0.2m/minとした。このときのピール強度(初期値)は27N/25mmであった。
【0136】
<加熱処理後の粘着剤層ピール強度評価>
前記方法と同様にして粘着サンプルを作製した。そして、粘着剤層を空気中に露出させた状態で粘着サンプルを260℃のホットプレートに2分間のせた後、室温にて放冷した。次いで、粘着サンプルにおける粘着剤層に、1mm厚のアルミ基板(A5052)を、ゴムロールを用いて50Nの応力にて貼り付け、加熱処理した剥離用サンプルを得た。
【0137】
加熱処理した剥離用サンプル作製後に室温で72時間放置した後に、引張試験機(テンシロン万能試験機RTA−100、オリエンテック社製)により、この剥離用サンプルにおける粘着剤層のピール強度を測定した。剥離条件は25℃、剥離角度90°、剥離速度0.2m/minとした。加熱試験後のピール強度は18N/25mmだった。
加熱試験後のピール強度を、ピール強度の初期値で除した値をピール強度の高温耐久率として評価した結果、67%であった。
【0138】
[実施例2]
<ワニス状樹脂組成物>
ポリプロピレン製の1L蓋付き容器中に、粒子径D50が18μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA18)を47.14gと、粒子径D50が3μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA3)を16.84gと、粒子径D50が0.4μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA04)を10.85gと、を秤量し、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)を0.099g、溶剤として2−ブタノン(和光純薬株式会社製)を11.18g、分散剤(楠本化成株式会社製、ED−113)を0.180g、フェノール樹脂(日立化成工業株式会社製)を5.96g加えて攪拌した。
【0139】
さらに、ここにビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、エピコート828)を6.39g、ナフタレン系エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP4032D)を0.657g、イミダゾール化合物(四国化成工業株式会社製、2PHZ)を0.012g加えた。ここに、直径5mmのジルコニア製ボールを500g投入し、ボールミル架台上で、100rpm、48時間攪拌した後、ジルコニア製ボールを濾別し、ワニス状の樹脂組成物を得た。
【0140】
なお前記フェノール樹脂(日立化成工業株式会社製)は、下記合成により得られたフェノール樹脂である。
撹拌機、冷却器、温度計を備えた3Lのセパラブルフラスコにレゾルシノール594g、カテコール66g、37%ホルマリン316.2g、シュウ酸15g、水100gを入れ、オイルバスで加温しながら100℃に昇温した。還流温度で4時間反応を続けた。その後水を留去しながら、フラスコ内の温度を170℃に昇温した。170℃を保持しながら8時間反応を続けた。その後減圧下、20分間濃縮を行い系内の水等を除去して、フェノール樹脂を取り出した。得られたフェノール樹脂の数平均分子量は530、重量平均分子量は930であった。またフェノール樹脂のフェノール当量は65g/eq.であった。
【0141】
<樹脂組成物シート(絶縁層)>
上記で得られた樹脂組成物を、バーコーターを用いて、PETフィルム(帝人デュポンフィルム社製、A53)上に塗布し、100℃で20分間乾燥を行なった。乾燥後の膜厚は50μmであった。乾燥後の樹脂組成物シートを向かい合わせに2枚載置し、ロールラミネーターを用い、110℃、0.3MPa、送り速度0.3m/minにて積層し、平均厚さ100μmの樹脂組成物シート(Bステージシート)を得た。得られた樹脂組成物シートは可とう性に優れていた。
【0142】
また、樹脂組成物シート中における全絶縁性無機フィラーが占める割合を以下のように評価した。まず、樹脂組成物シートの質量を測定し、その樹脂組成物シートを400℃2時間次いで700℃3時間焼成し、樹脂分を蒸発させ、残存した無機フィラーの質量を測定することで、無機フィラーの樹脂組成物シート中の質量比を評価した。
次いで、その無機フィラーを水中に沈めて、水位の変化から無機フィラーの体積を測定し、無機フィラーの比重を評価した。そして、同様の方法で樹脂組成物シートの比重を評価した。得られた樹脂シート中の無機フィラーの質量比を無機フィラーの比重で除し、さらに樹脂シートの比重を積算した値を無機フィラーの体積比率として評価した。その結果、樹脂組成物シート中における全絶縁性無機フィラーの含有率は、67.8体積%であった。
【0143】
<配線板材料の作製>
PETを剥離した500mm×600mmの樹脂組成物シートを、550mm×650mmの銅箔(日本電解社製、35μm厚)と550mm×650mmの銅箔(日本電解社製、105μm厚))のそれぞれの粗化面側の間に挟んで、真空加圧プレスを用い、3kPaの真空下で2MPa加圧にて、140℃で2時間、190℃で2時間加圧加熱した。これにより、回路形成用金属層として35μm厚の銅箔、100μm厚の絶縁層、支持用金属層として105μm厚の銅箔がこの順に積層されてなる配線板材料を得た。
【0144】
<電子部品の作製>
この配線板材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして配線板の作製を行った。次いで、実施例1と同様にして、粘着剤層の積層、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行い、電子部品を作製した。
【0145】
<評価>
得られた電子部品について、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは5.5℃であった。また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端は筐体に密着していた。更に、実施例1と同様にピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、27N/25mm、18N/25mm、67%であった。
【0146】
[実施例3]
<電子部品の作製>
実施例1と同様の方法で、配線板を作製した。
アクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス社製、HTR−280DR、アクリル酸ブチル/アクリロニトリル系共重合体、ニトリル基及びカルボキシル基含有、Mw90万、Tg−29℃)をトルエンで希釈した溶液を離型PETフィルムに塗布し、100℃で30分乾燥させ、平均厚み60μmの両面粘着テープ(粘着剤層)を得た。粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は0体積%であった。
【0147】
次いで、前記配線板の支持用金属層に配線板と同形の前記両面粘着テープを貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.2W/mK、熱抵抗は3℃・cm/Wであった。
次いで、実施例1の方法と同様にして、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行い、電子部品を作製した。
【0148】
<評価>
得られた電子部品について、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは6.5℃であった。また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端は筐体に密着していた。更に、実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、23N/25mm、21N/25mm、91%だった。
【0149】
[実施例4]
<耐熱性樹脂層を有する銅セパレータの作製>
35μm厚の銅箔、15μm厚のポリイミド層が積層されてなる配線板材料(日立化成工業社製、MCF−5000IS)を150℃で1時間焼成した。次いで、配線板材料の銅箔面にフッ素含有珪素化合物を固形分濃度0.2%含有したフッ素含有珪素化合物の処理液(住友スリーエム社製、EGC−1720)を塗布し、室温で6時間乾燥させた。その後、配線板材料を100℃で1時間熱処理し、アセトンを浸したキムワイプで銅箔面を擦ることで、耐熱性樹脂層を有する銅セパレータを作製した。
【0150】
また、耐熱性樹脂層の収縮率を測定するためのサンプルは以下のように作製した。35μm厚の銅箔、50μm厚のポリイミド層が積層されてなる配線板材料(日立化成工業社製、MCF−5000IS)から銅をエッチングにより除去し、50μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの収縮率を実施例1と同様の方法により求めた。ポリイミドフィルムの収縮率は0.1%未満だった。
【0151】
<配線板材料への粘着剤層の積層>
回路形成用金属層として35μm厚の銅箔、10μm厚の絶縁層、支持用金属層として105μm厚の銅箔がこの順に積層されてなる配線板材料(日立化成工業社製、HT−9000IMC)の支持用金属層に配線板と同形の両面粘着テープ(日立化成工業社製、ヒタレックスDA−3050、平均厚み50μm)を貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.2W/mK、熱抵抗は2.5℃・cm/Wであった。また、粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は0体積%であった。
【0152】
<セパレータの積層>
この配線板材料に上記銅セパレータを積層した。積層方法は実施例1と同様である。
【0153】
<配線板積層体の作製>
銅セパレータを積層した後、配線板材料の回路形成用金属層を回路加工し金属回路層とした。回路加工は、回路形成用金属層にエッチングレジストを設けた後、塩化第二鉄水溶液中で銅を溶解して行った。
回路加工の後、ソルダーレジストを所定箇所に印刷、硬化した。次いで、配線板および粘着剤層を6mm幅、100mm長に外形加工し、配線板積層体を製造した。
【0154】
<電子部品の作製>
次いで、実施例1と同様に部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行い、電子部品を得た。
【0155】
<評価>
得られた電子部品について、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差ΔTを測定したところ、5.5℃であった。また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端は筐体に密着していた。
さらに実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、27N/25mm、18N/25mm、67%であった。
【0156】
[実施例5]
<電子部品の作製>
実施例1と同様の方法で、配線板を作製した。
アクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス社製、HTR−811DR、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル系共重合体、水酸基含有、Mw42万、Tg−43℃)をトルエンで希釈した溶液を離型PETフィルムに塗布し、100℃で30分乾燥させ、平均厚み80μmの両面粘着テープ(粘着剤層)を得た。粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は0体積%であった。
【0157】
次いで、配線板の支持用金属層に配線板と同形の前記両面粘着テープを貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.2W/mK、熱抵抗は4℃・cm/Wであった。
次いで、実施例1の方法と同様にして、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行い、電子部品を得た。
【0158】
<評価>
得られた電子部品について、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは8.5℃だった。また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端は筐体に密着していた。
更に、実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、22N/25mm、18N/25mm、82%だった。
【0159】
[実施例6]
<電子部品の作製>
実施例1と同様の方法で、配線板を作製した。
アクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス社製、HTR−811E1DR、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル系共重合体、エポキシ基含有、Mw50万、Tg−45℃)をトルエンで希釈した溶液を離型PETフィルムに塗布し、100℃で30分乾燥させ、平均厚み40μmの両面粘着テープ(粘着剤層)を得た。粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は0体積%であった。
【0160】
次いで、配線板の支持用金属層に配線板と同形の前記両面粘着テープを貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.18W/mK、熱抵抗は2.2℃・cm/Wであった。
次いで、実施例1の方法と同様にして、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行い、電子部品を得た。
【0161】
<評価>
得られた電子部品について、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは5℃だった。また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端は筐体に密着していた。更に、実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、20N/25mm、8N/25mm、40%だった。
【0162】
[実施例7]
<電子部品の作製>
実施例1と同様の方法で、配線板を作製した。
次いで、配線板の支持用金属層に配線板と同形の両面粘着テープ(日立化成工業社製、ヒタレックスDA−3025、平均厚み25μm)を貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.12W/mK、熱抵抗は2.1℃・cm/Wであった。粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は0体積%であった。
【0163】
次いで、実施例1の方法と同様にして、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行い、電子部品を作製した。
【0164】
<評価>
得られた電子部品について、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは4.5℃だった。また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端は筐体に密着していた。更に、実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、16N/25mm、10N/25mm、60%だった。
【0165】
[実施例8]
<電子部品の作製>
実施例1と同様の方法で、配線板を作製した。
アクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス社製、HTR−280DR、アクリル酸ブチル/アクリロニトリル系共重合体、ニトリル基及びカルボキシル基含有、Mw90万、Tg−29℃)を70部にアルミナフィラー(昭和電工製、AS50、粒子径(D50):9μm)を30部混合し、トルエンで希釈した溶液を離型PETフィルムに塗布し、100℃で30分乾燥させ、平均厚み60μmの両面粘着テープ(粘着剤層)を得た。また、粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は10体積%であった。
【0166】
次いで、配線板の支持用金属層に配線板と同形の前記両面粘着テープを貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.26W/mK、熱抵抗は2.3℃・cm/Wであった。
次いで、実施例1と同様の方法で、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行い、電子部品を作製した。
【0167】
<評価>
得られた電子部品について、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは6.0℃だった。また、実施例1と同様の方法で、セパレータ離状態での配線板と筐の密着性を評価した結果、配線板の両端は筐に密着していた。更に、実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、16N/25mm、14N/25mm、88%だった。
【0168】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で、配線板を作製し、更に実施例1と同様の方法で粘着剤層の積層を行った。50μm厚の離型PETフィルムを粘着剤層の外側表面に積層したまま、実施例1と同様にして部品実装を行った。その結果、離型PETフィルムの熱収縮により配線板が変形し、LEDパッケージが所定の位置に実装されなかった。なお、この離型PETフィルムの収縮率を実施例1と同様の方法により求めたところ、30%であった。
【0169】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で、配線板を作製し、配線板の支持用金属層に、配線板と同形の熱伝導性粘着テープ(3M社製、#9885、平均厚み125μm)を貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.5W/mK、熱抵抗は2.5℃・cm/Wであった。また、粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は30体積%であった。
【0170】
次いで、実施例1と同様の方法で、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行った。その後、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは5.5℃だった。
【0171】
また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端のセパレータを剥離した部分は全て筐体に密着しなかった。
更に、実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、19N/25mm、0N/25mm、0%であった。
【0172】
[比較例3]
実施例1と同様の方法で、配線板を作製し、配線板の支持用金属層に配線板と同形の熱伝導性粘着テープ(3M社製、#9882、平均厚み50μm)を貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.5W/mK、熱抵抗は1℃・cm/Wであった。また、粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は30体積%であった。
【0173】
次いで、実施例1と同様の方法で、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行った。その後、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは2.5℃だった。
【0174】
また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端のセパレータを剥離した部分は全て筐体に密着しなかった。
更に、実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、13N/25mm、0N/25mm、0%だった。
【0175】
[比較例4]
実施例1と同様の方法で、配線板を作製した。
アクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス社製、HTR−811DR、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル系共重合体、水酸基含有、Mw42万、Tg−43℃)をトルエンで希釈した溶液を離型PETフィルムに塗布し、100℃で30分乾燥させ、厚み140μmの両面粘着テープ(粘着剤層)を得た。粘着剤層中の無機フィラーの体積比率は0体積%であった。
【0176】
次いで、配線板の支持用金属層に配線板と同形の前記両面粘着テープを貼り付けることで粘着剤層を積層した。なお、粘着剤層の熱伝導率は0.2W/mK、熱抵抗は7℃・cm/Wであった。
次いで、実施例1と同様の方法で、セパレータの積層、部品実装、固定冶具の設置、配線板と筐体の粘着を行った。その後、実施例1と同様の方法で、配線板と筐体の温度差評価を行った結果、ΔTは14.5℃だった。
【0177】
また、実施例1と同様の方法で、セパレータ剥離状態での配線板と筐体の密着性を評価した結果、配線板の両端は筐体に密着していた。
更に、実施例1と同様の方法で、ピール強度の初期値、加熱試験後のピール強度、ピール強度の高温耐久率を評価した結果、それぞれ、33N/25mm、28N/25mm、85%だった。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【0180】
以上の結果から、本発明の電子部品の配線板積層体又は配線板積層体を用いれば、熱伝導性に優れる電子部品を、効率よく製造できることが分かる。
【符号の説明】
【0181】
10 回路形成用金属層
11 金属回路層
12 絶縁層
14 支持用金属層
16 粘着剤層
18 セパレータ
20 耐熱性樹脂層
22 基材
30 配線板材料
31 配線板
40 部品
42 導電性接続材料
44 コネクタ
50 筐体
60 固定冶具
62 部品受容空間
70 保護フィルム
90,92 配線板積層体
100 部品実装配線板積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路形成用金属層と、絶縁層と、支持用金属層と、無機フィラーの含有量が20体積%以下であり且つ平均厚みが100μm以下である粘着剤層と、耐熱性樹脂層を有するセパレータとがこの順に積層されてなる配線板積層体。
【請求項2】
前記回路形成用金属層は、回路形成された金属回路層である請求項1に記載の配線板積層体。
【請求項3】
前記回路形成用金属層から前記支持用金属層までの積層体の平均厚さが、50μm以上500μm以下である請求項1または請求項2に記載の配線板積層体。
【請求項4】
前記粘着剤層の熱抵抗が、6℃・cm/W以下である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【請求項5】
空気中で260℃2分間熱処理した後の前記粘着剤層のピール強度が、熱処理前の前記粘着剤層のピール強度に対して30%以上である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【請求項6】
前記粘着剤層は、アクリル樹脂を50体積%以上含む請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【請求項7】
前記アクリル樹脂が(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、カルボキシル基および水酸基の少なくとも一種を有する請求項6に記載の配線板積層体。
【請求項8】
前記耐熱性樹脂層は、250℃で1分間の熱処理後の収縮率が長さ基準で3%以下である請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【請求項9】
前記セパレータが、更にアルミニウム箔および銅箔の少なくとも一つを有する請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の配線板積層体。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の配線板積層体を用いて作製される部品実装配線板積層体。
【請求項11】
請求項10に記載の部品実装配線板積層体を用いて作製される電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−58611(P2013−58611A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196093(P2011−196093)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】