説明

配線構造の製造方法及び配線構造

【課題】本発明は、簡素な工程で配線構造を形成することができ、簡素な構成で自由度の高い配線の取り出しが可能な配線構造の製造方法及び配線構造を提供することを目的とする。
【解決手段】接合界面に電荷蓄積が発生する異種材料を積層して積層体を形成し、該積層体の接合界面に2次元電子ガス層を形成する2次元電子ガス層形成工程と、
該2次元電子ガス層を選択的に加熱して該2次元電子ガス層に非導電性領域を選択的に形成し、非加熱の導電性領域とで所定の配線構造を形成する選択的加熱工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造の製造方法及び配線構造に関し、特に、2次元電子ガス層を用いた配線構造の製造方法及び配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電性基板上に、第1の化合物半導体層と、第1の化合物半導体層と組成の異なる第2の化合物半導体層とを積層することにより、両者の接合界面に2次元電子ガス層を形成した後、第1の化合物半導体層と第2の化合物半導体層の不要部分に酸素イオンを注入して半導体の性質を消滅させ、不要な2次元電子ガスを絶縁化するとともに必要な2次元電子ガス層を線状に残し、更に線状の2次元電子ガス層の両端の第2の化合物半導体層上に電極を設け、電極下に2次元電子ガス層に至るオーミック拡散層を形成したインピーダンス線路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−326737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、絶縁部分の幅を縮小することによる微細化加工を低コストで行うことは困難であり、なおかつ多重配線を行うために、配線の取り出し部分の設計の自由度が制限されるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、簡素な工程で配線構造を形成することができ、簡素な構成で自由度の高い配線の取り出しが可能な配線構造の製造方法及び配線構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る配線構造の製造方法は、接合界面に電荷蓄積が発生する異種材料を積層して積層体を形成し、該積層体の接合界面に2次元電子ガス層を形成する2次元電子ガス層形成工程と、
該2次元電子ガス層を選択的に加熱して該2次元電子ガス層に非導電性領域を選択的に形成し、非加熱の導電性領域とで所定の配線構造を形成する選択的加熱工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
これにより、2次元電子ガス層を形成してから選択的加熱を行うという簡素な工程で省スペース化が図られた配線構造を製造することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係る配線構造の製造方法において、
前記選択的加熱工程は、前記導電性領域を形成する位置の上方の前記積層体の表面上に、断熱性を有するマスクを形成するマスク形成工程と、
該マスクよりも上方から熱を供給して加熱処理を行う加熱工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
これにより、マスクの形成により容易に選択的加熱工程を実行することができ、工程の簡素化を図ることができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明に係る配線構造の製造方法において、
前記選択的加熱工程は、前記マスク形成工程と前記加熱工程との間に、前記積層体の表面に軽元素を注入し、前記マスクが存在しない領域に結晶欠陥を発生させる軽元素注入工程を更に含むことを特徴とする。
【0011】
これにより、選択的加熱工程における2次元電子ガス層の非導電性領域の形成を促進することができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る配線構造の製造方法において、
前記選択的加熱工程の後に、前記導電性領域の上方の前記積層体の表面上に保護膜を形成する保護膜形成工程を更に有することを特徴とする。
【0013】
これにより、積層体の上層に、大気と触れると表面に電荷が発生/蓄積し易い材料が用いられた場合であっても、配線間のリークを防ぐことができる。
【0014】
第5の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る配線構造の製造方法を繰り返し、多層の前記導電性領域を含む多層配線を形成することを特徴とする。
【0015】
これにより、省スペース化された多層構造の配線を、簡素な工程を繰り返すことで容易に形成することができる。
【0016】
第6の発明に係る配線構造は、接合界面に導電性を有する2次元電子ガス層を有する異種材料からなる積層部と、
前記2次元電子ガス層に接触する部分と、前記積層部の外部に存在する部分を有する取り出し電極と、を含むことを特徴とする。
【0017】
これにより、取り出し電極を制約の少ない簡素な構成で設けることができ、省スペース化と配線構成の自由度を向上させることができる。
【0018】
第7の発明は、第6の発明に係る配線構造において、
前記積層部は、第1の材料層上に第2の材料層が部分的に積層されて構成され、
前記取り出し電極は、前記第1の材料層上に形成された金属薄膜であることを特徴とする。
【0019】
これにより、金属薄膜を用いた簡素な構造で取り出し電極を設けることができ、取り出し電極のためのスペースを個別に設けることなく配線構造を構成することができる。
【0020】
第8の発明は、第6又は第7の発明に係る配線構造において、
前記取り出し電極の前記積層部の外部に存在する部分は、露出していることを特徴とする。
【0021】
これにより、露出部分に直接的に外部から電力を供給することができ、ロスを少なく電力供給を行うことができる。
【0022】
第9の発明は、第7の発明に係る配線構造において、
前記取り出し電極の上層には、非導電性領域が形成され、
該非導電性領域には、前記取り出し電極と電気的に接続するコンタクトホールが形成されていることを特徴とする。
【0023】
これにより、一般的な半導体装置と同様にコンタクトホールを用いて配線構造の配線と外部の電極又は配線との電気的接続を行うことができる。
【0024】
第10の発明は、第7又は9の発明に係る配線構造において、
前記積層部は、前記第1の材料層と前記第2の材料層が交互に積層された多層構造を有することを特徴とする。
【0025】
これにより、取り出し電極のスペースを個別に設けないで多層配線構造を構成することができ、多層化により構造が複雑化し、自由度が制限される事態を防ぎ、簡素な構造で高い自由度で多層配線構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、配線構造の製造工程を簡素化でき、配線の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施例に係る配線構造の製造方法により製造された配線構造の例を示した図である。図1(A)は、非導電性領域50を含む配線構造の一例を示した図である。図1(B)は、図1(A)と積層材料の積層関係を逆にした配線構造の一例を示した図である。
【図2】本実施例に係る配線構造の製造方法により製造された多層の配線構造の例を示した図である。図2(A)は、多層界面を用いた配線構造の一例を示した図である。図2(B)は、上下に並列して配置された多層界面を用いた配線構造の一例を示した図である。
【図3】本実施例に係る配線構造の製造方法により製造された非導電性領域50を含まない配線構造の例を示した図である。図3(A)は、保護膜60のない配線構造例を示した断面図である。図3(B)は、保護膜60を有する配線構造例を示した断面図である。
【図4A】実施例1に係る配線構造の製造方法の2次元電子ガス層形成工程の一例を示した図である。
【図4B】実施例1に係る配線構造の製造方法のマスク形成工程の一例を示した図である。
【図4C】実施例1に係る配線構造の製造方法の軽元素注入工程の一例を示した図である。
【図4D】実施例1に係る配線構造の製造方法の加熱工程の一例を示した図である。
【図4E】実施例1に係る配線構造の製造方法のマスク除去工程の一例を示した図である。
【図4F】実施例1に係る配線構造の製造方法の保護膜形成工程の一例を示した図である。
【図5】多層配線構造を製造するための2次元電子ガス層形成工程例を示した図である。
【図6A】実施例2に係る配線構造の製造方法の2次元電子ガス層形成工程の一例を示した図である。
【図6B】実施例2に係る配線構造の製造方法のマスク形成工程の一例を示した図である。
【図6C】実施例2に係る配線構造の製造方法のエッチング工程の一例を示した図である。
【図6D】実施例2に係る配線構造の製造方法のマスク除去工程の一例を示した図である。
【図6E】実施例2に係る配線構造の製造方法の保護膜形成工程の一例を示した図である。
【図7A】実施例3に係る配線構造の製造方法のイオン注入工程の一例を示した図である。
【図7B】実施例3に係る配線構造の製造方法のマスク除去工程及び拡散工程の一例を示した図である。
【図7C】実施例3に係る配線構造の製造方法の第1の材料層積層工程の一例を示した図である。
【図7D】実施例3に係る配線構造の製造方法の2次元電子ガス層形成工程の一例を示した図である。
【図7E】実施例3に係る配線構造の製造方法のエッチング工程の一例を示した図である。
【図7F】実施例3に係る配線構造の製造方法のマスク除去工程の一例を示した図である。
【図8】本発明の実施例4に係る配線構造の一例を示した図である。図8(A)は、実施例4に係る配線構造の断面図である。図8(B)は、実施例4の係る配線構造の斜視図である。
【図9】実施例5に係る配線構造の断面構成の一例を示した図である。
【図10】実施例6に係る配線構造の断面構成の一例を示した図である。
【図11】実施例7に係る配線構造の断面構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0029】
図1は、本発明の実施例に係る配線構造の製造方法により製造された配線構造の例を示した図である。図1(A)は、非導電性領域50を含む配線構造の一例を示した図であり、図1(B)は、図1(A)と積層材料の積層関係を逆にした配線構造の一例を示した図である。
【0030】
図1(A)において、本実施例に係る配線構造の製造方法により製造された配線構造は、第1の材料層10と、第2の材料層20と、2次元電子ガス層40と、非導電性領域50とを有する。第1の材料層10の上に、第2の材料層20が積層され、積層部30を構成している。積層部30は、凸状に形成されている。2次元電子ガス層40は、第1の材料層10と第2の材料層20との接合界面に形成されている。また、非導電性領域50は、凸状の積層部30を周囲から覆うように、積層部30以外の領域を満たしている。
【0031】
第1の材料層10及び第2の材料層20は、積層されて構成されたときに、両者の接合界面に電荷蓄積が発生するような組み合わせの異種材料から構成され、例えば、半導体と絶縁体又は異種半導体同士から構成される。ここで、接合界面に電荷蓄積が発生するというのは、接合界面に2次元状に電子が分布し、電子が充満した状態を意味する。第1の材料層10と第2の材料層20との接合界面に形成された2次元電子ガス層40内は、そのような電子が充満した状態となっている。2次元電子ガス層40内の電子は、接合界面に沿って運動し、2次元平面にのみ運動量を持つ希薄な電子となっている。よって、2次元電子ガス層40は、2次元の導電性領域を構成する。
【0032】
第1の材料層10及び第2の材料層20は、積層されたときに積層界面に2次元電子ガス層を形成する種々の異種材料から構成され得るが、例えば、InAsとAlSb、InAlAsとInGaAs、GaAsとAlGaAs、GaNとAlGaN等の種々の組み合わせが考えられる。また、異なる異種材料の組み合わせを、同一の半導体装置に用いる配線構造であってもよく、例えば、AlSb及びInAsで形成した2次元配線と、GaAs及びAlGaAsで形成した2次元配線が、同一の半導体装置に形成されていてもよい。図1(A)の例においては、左側の凸状の配線構造体と右側の凸状の配線構造体が、異なる異種材料の組み合わせであってもよい。なお、図1(A)においては、第1の材料層10がAlSbから構成され、第2の材料層20がInAsから構成されており、異なる組成の半導体材料が用いられていることとする。
【0033】
非導電性領域50は、導電性を有しない、絶縁体の領域である。本実施例に係る配線構造の製造方法においては、導電性を有する2次元電子ガス層40の領域と、導電性を有しない非導電性領域50により、配線構造を構成する。
【0034】
図1(B)は、図1における第1の材料層10に用いられているAlSbを第2の材料層21に用い、図1の第2の材料層20に用いられているInAsを第1の材料層11に用い、積層部31を構成している例を示している。第1の材料層11と第2の材料層21との接合界面には、導電性の2次元電子ガス層41が形成され、その周囲を非導電性領域51が覆うように満たしている。この場合においても、図1(A)と同様の配線構造が実現される。
【0035】
このように、第1の材料層10と第2の材料層20は、接合界面に2次元電子ガス層40、41を形成する異種材料同士の組み合わせであれば、いずれを上層側としてもよい。例えば、積層部30の表面が露出される場合には、第2の材料層20をより酸化され難い材料として構成するようにしてもよい。
【0036】
図2は、本実施例に係る配線構造の製造方法により製造された多層構造の配線構造の例を示した図である。図2(A)は、多層界面を用いた配線構造の一例を示した図であり、図2(B)は、上下に並列して配置された多層界面を用いた配線構造の一例を示した図である。なお、図1と同様の構成要素には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図2(A)において、第1の材料層10と第2の材料層20とが積層されて構成された積層部30が、積層界面において2次元電子ガス層40を有し、その周囲が非導電性領域50で充填されている点は、図1(A)と同様である。図2(A)においては、積層部30及び非導電性領域50の上層に更に第1の材料層12が積層され、第2の材料層22とで積層部32を構成している点で、図1(A)と異なっている。上層の積層部32は、第1の材料層12と第2の材料層22の異種材料の積層体として構成され、第1の材料層12と第2の材料層22との接合界面に、2次元電子ガス層42が形成され、その周囲を非導電性領域52が充填して覆っている点は、下層の積層部30と同様である。このように、積層部30、32を多層構造として形成し、多層配線構造を構成するようにしてもよい。
【0038】
また、図2(A)においては、積層部30の2次元電子ガス層40と、積層部32の2次元電子ガス層42とは、独立して構成されており、2次元電子ガス層40、42は、各層を異なる配線として用いる例が示されている。このように、各層の2次元電子ガス層40、42は、各々を独立して構成することができる。
【0039】
なお、図2(A)において、第1の材料層10、12の双方をAlSbで構成し、第2の材料層20、22の双方をInAsで構成するようにし、同じ組み合わせの異種材料を用いて積層部30、32を構成するようにしてもよいし、積層部30、32を異なる組み合わせの異種材料で構成するようにしてもよい。
【0040】
図2(B)は、図2(A)とは異なり、上下に並列した多層界面を用いた多層配線の断面構成の一例を示した図である。図2(B)においては、第1の材料層10と第2の材料層20が積層されて2次元電子ガス層40を形成している点は、図2(A)と同様である。しかしながら、図2(B)においては、第2の材料層20の上に1層だけ第3の材料層13を積層し、第2の材料層20と第3の材料層13との間に2次元電子ガス層43を形成するとともに、2次元電子ガス層40、43の周囲を共通の非導電性領域53で満たしている点で、図2(A)の多層配線構造とは異なっている。2次元電子ガス層40、43は、上下に平行して形成されている。このような配線構造においては、2次元電子ガス領域40、43を、上下に複数本平行配置した2次元配線として用いることができる。
【0041】
なお、第3の材料層13は、第1の材料層10と同じ材料(例えば、AlSb)を用いるようにしてもよいし、第1の材料層10及び第2の材料層20の双方と異なる材料を用いるようにしてもよい。
【0042】
また、図2(A)、(B)において、多層配線構造は2層を例に挙げて説明したが、更に層を積層して更に層数の覆い多層構造に構成してもよい。
【0043】
図3は、本実施例に係る配線構造の製造方法により製造された非導電性領域50を含まない配線構造の例を示した図である。図3(A)は、保護膜60で覆われていない配線構造の一例を示した断面図であり、図3(B)は、保護膜60で覆われている配線構造の一例を示した断面図である。
【0044】
図3(A)において、第1の材料層14の上に、部分的に第2の材料層24が積層され、積層部34を構成している。また、第1の材料層14と第2の材料層24との接合界面には、2次元電子ガス層44が形成されている。図1(A)と異なる点は、積層部34を周囲から覆う非導電性領域50が形成されておらず、非導電性領域50が存在しない点である。このように、配線を構成する2次元電子ガス層44が不要な領域については、2次元電子ガス層44を除去することにより配線構造を形成してもよい。例えば、2次元電子ガス層44が不要な領域について、積層部34をエッチングで除去することにより、図3(A)のような構成の配線構造を形成することができる。
【0045】
図3(B)は、図3(A)の配線構造の表面を、保護膜60で覆った構成の配線構造を示している。図3(A)に示す構成では、第2の材料層24の表面、導電性領域である2次元電子ガス層44の側面及び第1の材料層14の表面が空気に曝されることになるので、図3(B)に示す構成では、酸化や異物の付着を防ぐべく、露出部分を保護膜60で覆っている。このように、配線構造の表面を、保護膜60で覆うようにしてもよい。
【0046】
なお、図1乃至図3において説明した導電性領域(配線部分)を構成する2次元電子ガス層40〜44は、10〔nm〕以下で構成することができる。半導体プロセスで用いられるイオン注入及び熱拡散による配線構造の形成では、熱拡散によりイオン注入部分が側方及び深さ方向に拡大して数10〜数100〔nm〕の深さを必要とするのに対し、非常に薄く導電性領域を構成することができ、配線構造の省スペース化を図ることができる。
【実施例1】
【0047】
図4A〜図4Fは、本発明の実施例1に係る配線構造の製造方法の一連の工程を示した図である。実施例1に係る配線構造の製造方法においては、例として、InAlAsとInGaAsを用いた場合の配線構造の製造方法について説明する。これらは、界面に電荷が蓄積する異種材料の組み合わせであれば、種々の組み合わせを適用することができ、例えば、AlSbとInAs、GaAsとAlGaAs、GaNとAlGaN等の組み合わせであってもよい。本実施例に係る配線構造の製造方法においては、理解の容易のため、具体的な材料を例に挙げて説明することとする。
【0048】
図4Aは、実施例1に係る配線構造の製造方法の2次元電子ガス層形成工程の一例を示した図である。図4Aにおいて、InP基板1上に、nドープInAlAs層2、アンドープInAlAs層15、InGaAs層25が形成された状態が示されている。アンドープInAlAs層15は第1の材料層に相当し、InGaAs層25は第2の材料層に相当する。また、アンドープInAlAs層15とInGaAs層25とで、積層体35を構成する。また、第1の材料層であるアンドープInAlAs層15と第2の材料層であるInGaAs層25との接合界面には、界面電荷を有した導電性領域である2次元電子ガス層45が形成されている。
【0049】
実施例1に係る配線構造の製造方法の2次元電子ガス層形成工程においては、InP基板1上に、分子線エピタキシー(MBE、Molecular Beam Epitaxy)法でnドープInAlAs層2、アンドープInAlAs層15、InGaAs層25を形成することにより、アンドープInAlAs層15とInGaAs層25の接合界面に2次元電子ガス層45を形成する。層厚は、例えば、nドープInAlAs層2が3〔nm〕、アンドープInAlAs層15が15〔nm〕、InGaAs層25が10〔nm〕程度であってもよい。
【0050】
このように、2次元電子ガス層形成工程においては、異種材料の第1の材料層と第2の材料層を積層することにより、積層体35の接合界面の全体に2次元電子ガス層45を形成する。
【0051】
図4Bは、実施例1に係る配線構造の製造方法のマスク形成工程の一例を示した図である。マスク形成工程においては、積層体35の表面上、つまり第2の積層体であるInGaAs等25の表面上に、配線形状に合わせてマスク70を形成し、マスク70のパターニングを行う。なお、マスク70は、断熱材料を用いて構成し、例えば、ポリイミド等の断熱材で構成する。また、マスク70は、配線として残す部分を覆うように形成する。マスク70は、例えば、厚さ200〔nm〕、幅200〔nm〕程度で形成するようにしてもよい。
【0052】
図4Cは、実施例1に係る配線構造の製造方法の軽元素注入工程の一例を示した図である。軽元素注入工程においては、積層体35を表面に有する基板の表面に、マスク70をパターニングした状態で軽元素を注入する。軽元素の注入により、積層体35のマスク70が存在しない領域に、結晶欠陥が発生する。これにより、次に行う加熱処理において、結晶欠陥が存在する部分がアロイ化し易くなる。なお、軽元素注入時点では、積層体35は未だアロイ化されていない。軽元素注入工程は、その後の熱処理によるアロイ化を促進させる役割を果たす。ここで、アロイ化とは、積層体35が、接合界面に導電性を有する2次元電子ガス層45が形成され易い量子井戸を有するエネルギーバンド構造から、そのような量子井戸を有しないエネルギーバンド構造に変化し、2次元電子ガス層45が導電性を有しない非導電性領域に変化すること、つまり絶縁化することを意味する。
【0053】
また、軽元素注入工程で注入する軽元素は、例えば、He、He2+、H等であり、例えば、加速器で注入してよい。
【0054】
なお、軽元素注入工程は、本実施例に係る配線構造の製造方法において、必須の工程ではなく、必要に応じて行うようにしてよい。
【0055】
図4Dは、実施例1に係る配線構造の製造方法の加熱工程の一例を示した図である。加熱工程においては、マスク70が形成された積層体35の上面全面から加熱処理を行い、2次元電子ガス層45も含めて積層体35に熱を供給する。加熱処理は、例えば、積層体35の上面全面にレーザ等を照射し、400℃、5分程度の加熱処理を行うようにしてもよいし、ヒータ等を用いた他の手段による加熱処理が行われてもよい。加熱処理により、2次元電子ガス層45も含めて積層体35はアロイ化し、断熱材料のマスク70の下方以外の領域では、InAlAs層15とInGaAs層25の界面に電荷が蓄積しなくなる。これは、2次元電子ガス層45が形成されている場合には、InAlAs層15とInGaAs層25の積層体35の界面のエネルギーバンド構造において、電子が溜まりやすい量子井戸が形成されているが、加熱処理によりInAlAs層15とInGaAs層25が反応し、量子井戸の部分が消滅してしまうためと考えられる。加熱処理により、マスク70で覆われた箇所以外の領域には、非導電性領域55が形成されることになる。
【0056】
このように、加熱工程においては、マスク70を用いた状態で非導電性領域55を形成するため、高精度に配線構造を形成することができる。また、形成できる配線幅は、マスクパターン幅200〔nm〕より小さくすることも可能である。つまり、加熱時間を長くすることにより、非導電性領域55を拡大させることができるため、配線幅をマスク幅よりも小さくすることができ、例えば、幅10〔nm〕の配線を形成することも可能である。
【0057】
なお、図4B〜図4Dに示した工程で、2次元電子ガス層45を含めた積層体35の選択的加熱を行うので、これらの一連の工程を、選択的加熱工程と呼んでもよい。なお、選択的加熱工程において、軽元素注入工程は、必要に応じて設けられてよい点は、図4Cにおいて説明した通りである。
【0058】
また、実施例1においては、選択的加熱工程を、マスク70を用いた例を挙げて説明したが、2次元電子ガス層45を含む積層体35の選択的加熱が可能であれば、他の方法によってもよい。例えば、指向性の極めて高い加熱手段で、マスク70を設けずに選択的加熱が可能な場合には、マスク形成工程を省略して、加熱工程のみを行うことも可能である。また、第1の材料層であるInAlAs層15と、第2の材料層であるInGaAs層25は、そのままの状態では導電性を有しないので、例えば、積層体35の表面からではなく、側面から加熱を行い、2次元電子ガス層45のみ加熱することが可能な手法があれば、そのような手法により、2次元電子ガス層45のみをアロイ化して配線構造を形成してもよい。原理的には、2次元電子ガス層45のみが導電性領域であるので、積層体35の総てを加熱しなくても、2次元電子ガス層45のみ加熱して絶縁化できれば、配線構造の形成は可能である。
【0059】
図4Eは、実施例1に係る配線構造の製造方法のマスク除去工程の一例を示した図である。マスク除去工程においては、加熱工程終了後の積層体35の表面から、マスク70を除去する。マスク70の除去は、種々の方法により行われてよいが、例えば、エッチングにより行われてもよい。
【0060】
図4Fは、実施例1に係る配線構造の製造方法の保護膜形成工程の一例を示した図である。保護膜形成工程においては、積層体35の表面、つまり第2の材料層であるInGaAs層25の表面に、保護膜65を形成する。本実施例で用いたInGaAs層25を含むInAs層は、大気と接触すると表面に電荷が発生及び/又は蓄積するため、配線間でリークが発生するおそれがある。そこで、積層体35の表面材料が、露出していると電荷発生や電荷蓄積が起こる性質の材料である場合、表面に保護膜65を形成し、配線間のリーク電流を抑制することが好ましいので、本工程により保護膜65を形成する。
【0061】
なお、保護膜形成工程は、積層体35の表面材料の性質に応じて、必要に応じて設けるようにしてよい。
【0062】
また、実施例1に係る配線構造の製造方法においては、単相構造の配線構造を製造する例を挙げて説明したが、2層構造以上の積層構造でもよく、また、積層構造は、図2において例示したように、種々の積層構造をとることができる。
【0063】
具体的には、図2(A)に示した配線構造を製造するためには、図4Eに示したマスク除去工程の後、積層体35の表面に、更に積層体35又は積層体35とは異なる積層体を形成し、図4Aの2次元電子ガス層形成工程、図4B〜図4Dの選択的加熱工程、図4Eのマスク除去工程を繰り返すことにより、多層構造の配線構造を製造することができる。そして、多層構造の配線構造を形成した後、保護膜65の形成が必要であれば、最後に図4Fの保護膜形成工程を行うようにすればよい。これにより、多層構造の配線構造も容易に製造することができる。
【0064】
また、図2(B)に示した配線構造を製造する製造方法を、図5を用いて説明する。
【0065】
図5は、図2(B)の示した多層構造の配線構造を製造するための、2次元電子ガス層形成工程の一例を示した図である。図5に示すように、2次元電子ガス層形成工程において、積層体35の上に、更に第3の材料層13aを積層し、積層体33aを形成する。そして、2次元電子ガス層43aを積層体35の表面のInGaAs層25と第3の材料層13aとの接合界面に形成する。
【0066】
その後、図4B〜図4Dの選択的加熱工程、図4Eのマスク除去工程、必要に応じて図4Fの保護膜形成工程を行うことにより、図2(B)に示した上下に平行な2次元配線を有する配線構造を製造することができる。つまり、図5の積層体33aの表面、つまり第3の材料層13aの上にマスク70を形成し、以下、図4B〜図4Eに示した工程を順次行うことにより、積層体33の配線不要部分をまとめてアロイ化し、多層化された導電性領域45、43aと、非導電性領域55を形成することができる。
【0067】
同様に、2次元電子ガス層形成工程において、更に層数の多い積層体を構成すれば、3層以上の多層構造の配線構造を製造することができる。
【0068】
また、実施例1に係る配線構造の製造方法においては、用途を問わない一般的な配線の製造方法について説明したが、第1の材料層15及び/又は第2の材料層25に半導体材料を用い、半導体装置の配線構造を製造するようにすれば、実施例1に係る配線構造の製造方法を、半導体装置の製造方法に用いることができる。
【0069】
実施例1に係る配線構造の製造方法によれば、実質的に、2次元電子ガス層形成工程と選択的加熱工程の2つの工程で構成されるという簡素な製造工程により、高精度に所望の配線構造を容易に形成することができる。
【実施例2】
【0070】
図6A〜図6Eは、本発明の実施例2に係る配線構造の製造方法の一連の工程を示した図である。実施例2に係る配線構造の製造方法においては、図3(A)、(B)に係る配線構造の製造方法について説明する。よって、参照符号は、図3と同様の構成要素には、同一の参照符号を付する。また、実施例2に係る配線構造の製造方法においては、第1の材料層14にAlSb層を用い、第2の材料層24にInAs層を用いた例について説明する。他の材料として、InAlAsとInGaAs、GaAsとAlGaAs、GaNとAlGaN等の組み合わせてもよく、接合界面に電荷蓄積が発生する材料の組み合わせであれば、種々の材料を適用できる点は、実施例1と同様である。また、例として、単層の配線層(電導性領域)を含む配線構造の製造方法を示すが、多層の配線層を含む配線構造でもよい点も、実施例1と同様である。
【0071】
図6Aは、実施例2に係る配線構造の製造方法の2次元電子ガス層形成工程の一例を示した図である。2次元電子ガス層形成工程においては、第1の材料層14のAlSb上に第2の材料層24のInAsを分子線エピタキシー法で形成して積層体34を形成することで、第1の材料層14と第2の材料層24との接合界面に、導電性を有する2次元電子ガス層44を形成する。層厚は、例えば、第1の材料層14のAlSbが10〔nm〕、第2の材料層のInAsが10〔nm〕程度であってもよい。また、第1の材料層14の下層に、支持基板としてAlGaSb層等の他の材料が存在してもよい。以下の図6A〜図6Eにおいては、簡略化のため、第1の材料層14と第2の材料層24のみを記載する。
【0072】
図6Bは、実施例2に係る配線構造の製造方法のマスク形成工程の一例を示した図である。マスク形成工程においては、積層体34の表面である第2の材料層24の表面上に、配線形状に合わせてエッチング用マスク71を形成し、マスクパターニングを行う。マスク71には、例えば、レジストが用いられてもよい。また、マスク71は、例えば、厚さが200〔nm〕、幅が200〔nm〕程度で形成されてもよい。
【0073】
図6Cは、実施例2に係る配線構造の製造方法のエッチング工程の一例を示した図である。エッチング工程においては、第2の材料層24を完全にエッチングし、マスク71の下方の部位のみ積層体34の積層構造とする。なお、等方的なエッチングを行うことで、形成可能な配線幅は、マスクパターン幅の200〔nm〕よりも小さくすることが可能である。つまり、エッチング時間を長くすることにより、マスク71の下方の領域を側方から除去していき、配線幅を小さくすることが可能である。例えば、幅10〔nm〕の配線を形成することも可能である。
【0074】
図6Dは、実施例2に係る配線構造の製造方法のマスク除去工程の一例を示した図である。マスク除去工程においては、マスク71を除去し、導電性領域である2次元電子ガス層44が形成された配線構造が完成する。これにより、図2(A)に示した配線構造が製造されたことになる。なお、マスク71の除去は、例えば、エッチング等により行われてもよい。
【0075】
図6Eは、実施例2に係る配線構造の製造方法の保護膜形成工程の一例を示した図である。保護膜形成工程においては、露出している第1の材料層14の表面、第2の材料層24の表面及び2次元電子ガス層44の側面を覆うように、保護膜60が形成される。例えば、本実施例において説明したInAs層は、大気に触れると表面に電荷が発生及び/又は発生するため、配線間でリークを発生するおそれがある。よって、表面材料が、露出により電荷の発生や蓄積を生ずる性質を有する材料の場合には、表面に保護膜60を形成し、配線間のリーク電流を抑制する。なお、保護膜形成工程は、必要に応じて設けるようにしてよい。
【0076】
実施例2に係る配線構造の製造方法によれば、エッチングにより、容易に省スペース化が図られた配線構造を製造することができる。
【実施例3】
【0077】
図7A〜図7Eは、本発明の実施例3に係る配線構造の製造方法の一連の工程の一例を示した図である。実施例3に係る配線構造の製造方法においては、半導体基板に配線構造を形成し、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ又は高電子移動度トランジスタ(HEMT、High Electron Mobility Transistor)のゲート電極を製造する半導体装置の製造方法について説明する。
【0078】
なお、実施例3に係る配線構造の製造方法においては、ゲート電極の形成のために、InAsとAlSbを材料として用いた例を挙げて説明するが、積層したときに接合界面に電荷が蓄積する材料の組み合わせであれば種々の異種材料の組み合わせを利用することができる点は、今までの説明と同様である。例えば、InAlAsとInGaAs、GaAsとAlGaAs、GaNとAlGaN等の組み合わせであってもよい。
【0079】
図7Aは、実施例3に係る配線構造の製造方法のイオン注入工程の一例を示した図である。イオン注入工程においては、基板3のソース領域4及びドレイン領域5を形成する領域に、不純物のイオンを注入する。イオンの注入は、基板3の、ソース領域4及びドレイン領域5を形成しない領域の表面にマスク72が形成された状態で、イオン注入法により行われてよい。基板3は、種々の半導体材料からなる半導体基板を適用することができるが、例えば、InAlAsを用いてもよい。また、マスク72には、例えばレジストが用いられてよい。マスク72の大きさは、ゲート長、ゲート幅等の設計仕様に応じて定められてよいが、一例として例えば、厚さ1〔μm〕、幅(ソース−ドレイン間距離)25〔μm〕程度であってもよい。また、注入される不純物も、用途に応じて適切なイオンが選択されてもよいが、例えば、Siが注入されてもよい。
【0080】
図7Bは、実施例3に係る配線構造の製造方法のマスク除去工程及び拡散工程の一例を示した図である。マスク除去工程においては、マスク72が、エッチング等により除去される。また、拡散工程においては、基板3が加熱され、ソース領域4及びドレイン領域5内の注入された不純物が熱拡散する。
【0081】
図7Cは、実施例3に係る配線構造の製造方法の第1の材料層積層工程の一例を示した図である。第1の材料層積層工程においては、基板3の上の全面に、第1の材料層16が積層される。第1の材料層16には、上述のように、例えば、InAsが用いられてよい。第1の材料層16の積層は、種々の方法により行われてよいが、例えば、分子線エピタキシー法により行われてよい。
【0082】
図7Dは、実施例3に係る配線構造の製造方法の2次元電子ガス層形成工程の一例を示した図である。2次元電子ガス層形成工程においては、第1の材料層16の上の全面に第2の材料層26を積層し、積層体36を形成するとともに、第1の材料層16と第2の材料層26との接合界面に、界面電荷が満たされた2次元電子ガス層46を形成する。これにより、2次元配線層が形成されることになる。第2の材料層は、上述のように、例えば、AlSbが用いられてよい。本工程により、InAs層とAlSb層の界面に界面電荷が発生することになる。また、第2の材料層26の積層は、種々の方法により行われてよいが、例えば、分子線エピタキシー法により行われてもよい。
【0083】
図7Eは、実施例3に係る配線構造の製造方法のエッチング工程の一例を示した図である。エッチング工程においては、第2の材料層26の表面上のゲート電極を形成する領域にマスク73を形成した後、第2の材料層26の上面全面からエッチングを行う。エッチングは、積層体36の深さ分行い、これにより、第2の材料層26及び第1の材料層16の不要部分が除去される。例えば、積層体36が20〔nm〕の厚さを有する場合には、20〔nm〕の深さ分エッチングが行われる。エッチング工程により、マスク73以外の領域は、2次元電子ガス層46を形成するAlSb/InAs界面が消滅し、そこに含まれる界面電荷が消滅する。これにより、ゲート電極が所望の形状に形成されることになる。
【0084】
図7Fは、実施例3に係る配線構造の製造方法のマスク除去工程の一例を示した図である。マスク除去工程においては、エッチング等により、マスク73が除去される。これにより、残された第1の材料層16と第2の材料層26との接合界面に存在する2次元電子ガス層46が、ゲート電極として機能する半導体装置が完成する。
【0085】
2次元電子ガス層46を用いたゲート電極は、厚さ10〔nm〕以下に形成することが可能であるので、従来の金属やポリシリコンで形成した100〔nm〕程度の厚さを有するゲート電極よりも、大幅に厚さを薄くすることができる。これにより、製造されるデバイス(半導体装置)を小型化することができる。
【実施例4】
【0086】
図8は、本発明の実施例4に係る配線構造の一例を示した図である。図8(A)は、実施例4に係る配線構造の断面図の一例であり、図8(B)は、実施例4の係る配線構造の斜視図の一例である。実施例4に係る配線構造においては、2次元配線を形成した場合の外部電極取り出し構造について説明する。
【0087】
図8(A)において、実施例4に係る配線構造は、第1の材料層17と、第2の材料層27と、取り出し電極80とを備える。第1の材料層17の上に第2の材料層27が積層されて積層部37が構成され、第1の材料層17と第2の材料層27の接合界面に2次元電子ガス層47が形成されている点は、今まで説明した配線構造と同様である。実施例4に係る配線構造においては、積層部37が、第1の材料層17の全面ではなく一部に形成され、積層部37の端部を跨ぐように取り出し電極80が備えられている点で、今まで説明した配線構造と異なっている。取り出し電極80は、一部が2次元配線を構成する2次元電子ガス層45に接触して導通され、一部が露出している。これにより、2次元電子ガス層47は、取り出し電極80を介して外部の電極又は配線と接続可能となり、外部から2次元電子ガス層47に電力を供給することが可能となる。
【0088】
なお、取り出し電極80は、例えば、金属薄膜で構成されてもよい。取り出し電極80の厚さを薄く構成することができるとともに、金属蒸着等を用いて容易に形成することができる。
【0089】
図8(B)において、図8(A)の右側の取り出し電極80が斜視図として示されている。図8(B)に示されるように、第1の材料層17を基板として、第2の材料層27が第1の材料層17の一部に形成され、積層部37は、アロイ化されて非導電性領域57となった領域と、導電性領域で配線となる2次元電子ガス層47とを含んでいる。2次元電子ガス層47は、第1の材料層17と第2の材料層27の接合界面に形成されている。また、一部が2次元電子ガス層47に接触し、一部が露出するように、第1の材料層17の表面上の積層部37の境界領域に、取り出し電極80が形成されている。かかる構成により、取り出し電極80の露出部分を、外部の電極や配線との接続に用いることができる。
【0090】
このように、実施例4に係る配線構造は、2次元電子ガス層47による2次元配線の外部電極取り出し構造を有し、2次元電子ガス層47への電力の供給が容易な構成となっている。従来、オーミック拡散を用いて、複雑な構成で外部電極取り出し構造を構成していたが、実施例4に係る配線構造によれば、簡素な構成で外部電極取り出し構造を構成することができる。
【0091】
なお、取り出し電極80に用いる材料は、種々の金属を利用することができ、例えば、Alを用いてもよい。また、取り出し電極80の厚さも、用途に応じて種々の厚さに構成してよいが、例えば、100〔nm〕程度としてもよい。
【0092】
また、取り出し電極80は、第1の材料層17の表面上に金属蒸着等により金属薄膜を予め形成しておき、その後に第2の材料層27を第1の材料層17の上に積層して積層部37を形成するようにすれば、実施例4に係る配線構造を製造することができる。
【実施例5】
【0093】
図9は、本発明の実施例5に係る配線構造の断面構成の一例を示した図である。実施例5に係る配線構造は、実施例4に係る配線構造と同様に、外部電極取り出し構造を有するが、外部電極取り出し構造の構成が異なる。
【0094】
図9において、実施例5に係る配線構造は、第1の材料層18と、第2の材料層28と、2次元電子ガス層48と、非導電性領域56と、取り出し電極81と、コンタクトホール81とを有する。第1の材料層18と第2の材料層28とが積層されて積層部38を構成するとともに、接合界面に2次元電子ガス層48が形成されており、取り出し電極81が、2次元電子ガス層48に接触する部分と、積層体38の外部に存在する部分を有する点は、実施例4に係る配線構造と同様である。実施例5に係る配線構造においては、積層部38の外側に非導電性領域56が形成されており、取り出し電極81が露出していない点で、実施例4に係る配線構造と異なっている。また、実施例5に係る配線構造は、取り出し電極81と接続するコンタクトホール82を有し、コンタクトホール82に充填された金属等の導体を介して外部の電極又は配線と接続が可能に構成されている点で、実施例4に係る配線構造と異なっている。
【0095】
このように、取り出し電極81は、積層部38の外部に存在する部分があれば、その部分が必ずしも露出していなくてもよい。図9に示すように、取り出し電極81と接続するコンタクトホール82等の配線手段を設ければ、そのような配線手段を介して外部の電極又は配線と接続が可能となるからである。
【0096】
なお、実施例5に係る配線構造は、取り出し電極81となる金属薄膜を第1の材料層18に形成してから第2の材料層28を積層し、側方を選択的に加熱してアロイ化し、非導電性領域56とすればよい。取り出し電極81は、金属薄膜により構成されているので、加熱処理がなされても、アロイ化する訳ではなく、そのまま金属薄膜として存在することになる。その後、取り出し電極81の上方を、選択的エッチングによりコンタクトホール82を形成し、コンタクトホール82にめっきや蒸着等で導体を充填することにより、実施例5に係る配線構造を製造することができる。
【0097】
実施例5に係る配線構造によれば、表面が露出しない外部電極取り出し構造をとりながらも、コンタクトホール82を用いて外部との電気的接続を容易に行うことができる。
【実施例6】
【0098】
図10は、本発明の実施例6に係る配線構造の断面構成の一例を示した図である。実施例6に係る配線構造は、実施例4及び実施例5に係る配線構造と同様に、外部電極取り出し構造を有するが、取り出し電極83が、金属薄膜ではなく、金属片である点で、実施例4及び実施例5に係る配線構造と異なる。
【0099】
図10において、実施例6に係る配線構造は、第1の材料層19と、第2の材料層29と、2次元電子ガス層48と、取り出し電極83とを有する。第1の材料層19と第2の材料層29の積層により、積層部39が形成され、第1の材料層19と第2の材料層29の接合界面に2次元電子ガス層48が形成されており、取り出し電極83は、一部が2次元電子ガス層48に接触しており、一部が積層部29の外部にある点は、実施例4及び実施例5に係る配線構造と同様である。実施例6に係る配線構造は、取り出し電極83の露出部分が、両面とも露出しており、第1の材料層19に支持されていない点で、実施例4及び実施例5に係る配線構造と異なっている。
【0100】
このように、取り出し電極83の露出部分は、表裏面の双方とも露出されていてもよい。但し、この場合には、取り出し電極83を金属薄膜として構成することはできないので、支持がなくても形状を保つことができる金属片であることが好ましい。用途によっては、配線構造を、このように構成してもよい。より直接的に、2次元電子ガス層48との接続を行うことができる。
【実施例7】
【0101】
図11は、本発明の実施例7に係る配線構造の断面構成の一例を示した図である。実施例7に係る配線構造は、1層目と2層目の構成は、実施例4に係る配線構造と同様であるが、第2の材料層27の更に上層に、第3の材料層13bが積層されている点で、実施例4に係る配線構造と異なっている。なお、図11において、実施例4に係る配線構造と同様の構成要素には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0102】
図11において、実施例7に係る配線構造は、第1の配線層17上に第2の材料層27が積層されており、接合界面に2次元電子ガス層47が形成され、2次元電子ガス層47に接触する取り出し電極80を備える点では、実施例4に係る配線構造と同様である。実施例9に係る配線構造においては、第2の材料層27の上に、第3の材料層13bが積層され、全体で積層部33bを構成している。そして、第2の材料層27と第3の材料層13bの接合界面には、第2の2次元電子ガス層43bが形成されており、第2の2次元電子ガス層43bと一部が接触し、一部が露出する第2の取り出し電極84が設けられている。
【0103】
このように、外部電極取り出し構造を、多層の配線構造に適用することも可能である。また、この場合においても、実施例5のように、取り出し電極80、84の表面を露出させず、コンタクトホール82等の接続手段を用いて、外部との接続を図るようにしてもよいし、実施例6のように、取り出し電極80、84の両面を露出する構成としてもよい。
【0104】
また、実施例7においては、2層の2次元電子ガス層80、84を含む配線構造の例を挙げて説明したが、更に多数の配線層を含む配線構造とすることも可能である。
【0105】
実施例7に係る配線構造によれば、多層の配線構造においても、簡素な取り出し電極を設けて、配線設計の自由度を高めることができる。
【0106】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、種々の配線が必要な配線構造に利用することができ、例えば、半導体装置の配線構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1、3 基板
4 ソース領域
5 ドレイン領域
10、11、12、14〜19 第1の材料層
13、13a、13b 第3の材料層
20〜29 第2の材料層
30〜33、33a、33b、34、37、38、39 積層部
35、36 積層体
40〜43、43a、43b、44〜48 2次元電子ガス層
50〜56 非導電性領域
60、65 保護膜
70、71、72 マスク
80、81、83、84 取り出し電極
82 コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合界面に電荷蓄積が発生する異種材料を積層して積層体を形成し、該積層体の接合界面に2次元電子ガス層を形成する2次元電子ガス層形成工程と、
該2次元電子ガス層を選択的に加熱して該2次元電子ガス層に非導電性領域を選択的に形成し、非加熱の導電性領域とで所定の配線構造を形成する選択的加熱工程と、を含むことを特徴とする配線構造の製造方法。
【請求項2】
前記選択的加熱工程は、前記導電性領域を形成する位置の上方の前記積層体の表面上に、断熱性を有するマスクを形成するマスク形成工程と、
該マスクよりも上方から熱を供給して加熱処理を行う加熱工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の配線構造の製造方法。
【請求項3】
前記選択的加熱工程は、前記マスク形成工程と前記加熱工程との間に、前記積層体の表面に軽元素を注入し、前記マスクが存在しない領域に結晶欠陥を発生させる軽元素注入工程を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の配線構造の製造方法。
【請求項4】
前記選択的加熱工程の後に、前記導電性領域の上方の前記積層体の表面上に保護膜を形成する保護膜形成工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線構造の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線構造の製造方法を繰り返し、多層の前記導電性領域を含む多層配線を形成することを特徴とする配線構造の製造方法。
【請求項6】
接合界面に導電性を有する2次元電子ガス層を有する異種材料からなる積層部と、
前記2次元電子ガス層に接触する部分と、前記積層部の外部に存在する部分を有する取り出し電極と、を含むことを特徴とする配線構造。
【請求項7】
前記積層部は、第1の材料層上に第2の材料層が部分的に積層されて構成され、
前記取り出し電極は、前記第1の材料層上に形成された金属薄膜であることを特徴とする請求項6に記載の配線構造。
【請求項8】
前記取り出し電極の前記積層部の外部に存在する部分は、露出していることを特徴とする請求項6又は7に記載の配線構造。
【請求項9】
前記取り出し電極の上層には、非導電性領域が形成され、
該非導電性領域には、前記取り出し電極と電気的に接続するコンタクトホールが形成されていることを特徴とする請求項7に記載の配線構造。
【請求項10】
前記積層部は、前記第1の材料層と前記第2の材料層が交互に積層された多層構造を有することを特徴とする請求項7又は9に記載の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−124273(P2011−124273A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278573(P2009−278573)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】