説明

酸化物の透明な導電層をエッチングするためのエッチング媒体

本発明は、新規なエッチング媒体として、酸化物の透明な導電層のうち、例えばフラットパネルスクリーンを用いた液晶ディスプレイ(LCD)もしくは有機発光ディスプレイ(OLED)の製造、または薄層太陽電池において用いられるものの構築のためのものに関する。とくに、本発明は粒子フリーな組成物として、それを用いることによって微細構造の選択的なエッチングが、隣接する領域を傷つけたり攻撃することなく酸化物の透明な導電層になされるものに関する。前記新規な液体エッチング媒体は、印刷法によって、構築する酸化物の透明な導電層に有利に適用することができる。続く熱処理によって、エッチング工程が加速または開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエッチング媒体として、酸化物の(oxidic)透明な導電層のうち、例えばフラットパネルスクリーンを用いた液晶ディスプレイ(LCD)もしくは有機発光ディスプレイ(OLED)の製造、または薄層太陽電池において用いられるものの構築のためのものに関する。とくに、本発明は粒子フリーな組成物として、それを用いることによって微細構造の選択的なエッチングが、隣接する領域を傷つけたり攻撃することなく酸化物の透明な導電層になされるものに関する。前記新規な液体エッチング媒体は、印刷技法によって、構築する酸化物の透明な導電層に有利に適用することができる。続く熱処理によって、エッチング工程が加速または開始される。
【背景技術】
【0002】
従来技術
酸化物の透明な導電層の支持材料、例えば薄いガラス等、の上への構築が、液晶ディスプレイの製造には必要である。LCディスプレイは、本質的に2枚のガラスプレートからなり、これらは酸化物の、多くの場合インジウムスズ酸化物(ITO)の透明な導電層を備えている。これによって光透過性の変化が、電圧の印加によってなされる。液晶層が、これらの間に配置される。スペーサを用いることによって、ITOの前面部と背面部が接触するのを防ぐ。キャラクター、記号または他のパターンを表すために、前記ITO層をガラスシートに構築することが必要である。これによりディスプレイ内部の領域が選択的にアドレス指定されるようになる。
【0003】
したがって、酸化物の透明な導電層は、フラット・パネルスクリーンおよび薄層太陽電池の製造において肝要な役割を果たす。液晶ディスプレイや有機発光ダイオードをベースとするフラット・パネルスクリーンにおいては、少なくとも観者に正対している電極の透明度は高ければ高いほどよい。光学的効果を観者に可視化するためである。光学的効果は、液晶ディスプレイの場合のように透過もしくは反射の変化であるか、またはOLEDの場合のように光の放散を表す。
アモルファスケイ素(a−Si)銅インジウムセレナイド(CIS)またはカドミウムテルライドをベースとする薄層太陽電池においては、太陽電池の態様に正対する側が、同様に酸化物の透明な導電材料からなる。これは、半導体層の電導率が、荷電キャリア(charge carriers)を経済的に移送するには不適切だからである。
【0004】
酸化物の透明な導電層として当業者に知られているのは以下のとおりのものである:
・インジウムスズ酸化物 In:Sn(ITO)
・フッ素ドープスズ酸化物 SnO:F(FTO)
・アンチモニイドープスズ酸化物 SnO:Sb(ATO)
・アルミニウムドープ亜鉛酸化物 ZnO:Al(AZO)
【0005】
また、文献に記載があるのは、例えば、以下の系である:
・スズ酸カドミウム CdSnO(CTO)
・インジウムドープ亜鉛酸化物 ZnO:In(IZO)
・非ドープスズ(IV)酸化物 (TO)
・非ドープインジウム(III)酸化物 (IO)
・非ドープ亜鉛酸化物 (ZO)。
【0006】
ディスプレイおよび薄層太陽電池の技術において、インジウムスズ酸化物(ITO)が、酸化物の透明な導電層として実質的に確立されている。これは、とくに、極めて低い層抵抗である<6Ωが、200nmの厚さの場合に得られ、透過率>80%が、それによって達成されることによる。しかし、カソード・スパッタリングによる、成熟し、比較的簡便なコーティングにも起因する。
【0007】
酸化物の透明な導電層およびその堆積技術(deposition techniques)のすぐれた総説として、K.L. Chopra, S. MajorおよびD.K. Pandyaによる"Transparent Conductors - A Status Review“, Thin Solid Films, 102 (1983) 1-46, Electronics and Opticsがある。
【0008】
前記酸化物の透明な導電層の堆積は、多くの場合支持材料の領域全体に行われる。用いられる支持材料は、ほとんどの場合、フラットガラス(ソーダライムガラス、ホウ素ケイ酸ガラスまたは機械によって引き出されるかまたはフロートガラス工法によって製造される類似のガラス)である。
【0009】
他の適した支持材料は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)および類似の透明ポリマーである。
この場合は、主として以下の堆積方法が用いられる:
・酸化物の直接蒸着
・酸素の存在下における金属の反応蒸着
・酸化物の直接カソードスパッタリング(DC、マグネトロン、RFまたはイオンビームスパッタリング)
・酸素の存在下における金属の反応スパッタリング
・例えばSnCl等の前駆体の化学蒸着(CVD)
・スプレー熱分解
・適切な溶媒を用いた堆積コーティング
【0010】
酸化物の透明な導電層の最も重要な2つの適用(フラット・パネルスクリーンおよび薄層太陽電池)において、酸化物の透明な導電層が構築されている。フラット・パネルスクリーンの場合、個々の画素またはセグメントにアドレス指定することができる。薄層太陽電池の場合、複数の分離した太陽電池の連続したスイッチングが、基板の内部において達成される。これによって、より高い初期電圧が達成されるところ、それはオーム抵抗をより良好に克服できることにつながるため有利である。
【0011】
数多くの異なる構築方法が、その製造においては多くの場合用いられる。
とくに、以下のものについて記載する:
マスク蒸着またはマスクスパッタリング
比較的単純な構造の製造においては、酸化物の透明な導電層のコートは、適用されたマスクを通して行えば十分である。適用されたマスクを用いたスパッタリングは、当業者に知られた方法である。US 4,587,041 A1にはこのタイプの方法について記載されている。
【0012】
マスク蒸着またはマスクスパッタリングは、かなり簡便な方法である。しかし、当該方法は大量生産には不向きであり、とくに比較的大きい基板の製造には適さない。当該方法においては、マスクの歪みが生じてしまう。膨張率が、基板とマスクにおいて異なるからである。また、マスクを用いることができるのは、いくつかの被覆工程においてのみである。材料が、それらの上に常に堆積されるからである。さらに、比較的複雑な、例えば孔構造のような構造は、適用されたマスクを用いて製造することはできない。そのうえ、極めて微細な線や構造の形成における解像度については、この方法では相当な限界がある。したがって、マスクスパッタリングが確立しているのは、小型のものを短時間に対象とする場合においてのみである。
【0013】
レーザーアブレーション
近赤外領域(NIR)レーザー光を用いて、例えばNd:YAGレーザーから発せられるものを用いて、酸化物の透明な導電層を構築することができる。当該方法は、例えばLaserod.com, Inc.のウェブページ(http://www.laserod.com/laser_direct_write.htm)に記載されている。この方法の欠点は、装置が比較的複雑であること、比較的複雑な構造における低い生産性および溶かした物質が近接領域に再堆積することである。レーザーアブレーションが用いられるのは、実質的に薄層太陽電池の分野、例えばカドミウム−テルリウム太陽電池においてのみである。
酸化物の透明な導電層におけるレーザーアブレーションの例が記載されている(C. Molpeceres et al 2005 J. Micromech. Microeng. 15 1271-1278)。
【0014】
フォトリソグラフィ
エッチャント、すなわち化学的に攻撃的な化合物を用いると、エッチャントの攻撃にさらされた物質の分解が起こる。ほとんどの場合、目的はエッチングの対象である層を完全に除去することにある。エッチングの終了は、エッチャントに対して実質的に抵抗性である層に到達することによって達成される。
【0015】
エッチング構造のネガまたはポジ構造の製造は(フォトレジストに依存して)、多くの場合以下のステップによって行われる:
・基板表面のコーティング(例えば液体フォトレジストを用いたスピンコーティングによる)、
・フォトレジストの乾燥、
・コートされた基板表面の露出、
・現像、
・洗浄、
・必要な場合、乾燥、
【0016】
・構造のエッチング、例えば下記によるもの、
−浸漬法(例えばウェット化学ベンチ内におけるウェットエッチング):基板のエッチングバス内へのディッピング、エッチング法
−スピン・オンまたはスプレー法:エッチング溶液を回転している基板に適用し、エッチング工程を、エネルギーを付加するか(例えばIRまたはUV照射)または付加せずに行ってよい
−ドライエッチング法、例えば、複雑な真空ユニット内におけるプラズマエッチングまたは反応ガスによる、フローリアクター内におけるエッチング等、
・フォトレジストの除去、
・洗浄、
・乾燥。
【0017】
エッチング領域の高度な構造上の正確性、−エッチング構造のエッチングは正確に数μmまで行い得る−およびかなり高い生産性が、高度に複雑なエッチングされる構造においても得られるため、フォトリソグラフィが、フラットパネルスクリーンの領域における酸化物の透明な導電層を構築する際に選択される方法である。しかし、それは、数多くの工程ステップを要し、極めて高価な装置を用いて行う必要がある点において著しい欠点を有する。加えて、多量の補助化合物(フォトレジスト、現像剤、エッチング媒体、レジスト剥離剤)および洗浄水を消費する。
【0018】
文献に記載されている液体エッチング媒体、とくにフラットパネルスクリーンの領域において広く用いられている完全に酸化されたインジウムスズ酸化物(ITO)用のものは:
・塩化鉄(III)+塩酸
・高温の、約30重量%の塩酸
・高温の、約48重量%の臭化水素酸
・王水(薄い場合もある)
【0019】
気相中のエッチング、任意にプラズマ中のもの、も知られているが、現在の役割は小さい。ここで用いられるのは、例えば臭化水素ガスまたはヨウ化水素ガスである。対応する方法は、三井化学によってウェブページ http://www.mitsui-chem.co.jp/ir/010910.pdf p.23に記載されている。
【0020】
上記エッチング媒体の全てに共通する特性は、それらが極めて腐食性が高い系であるということである。エッチング媒体は、周囲の機器、オペレータおよび環境に対してかなり問題を与えるものに分類されている。
【0021】
したがって、酸化物の透明な導電材料の構築、とくにフラットパネルスクリーンの構築には、多くの場合、既知の方法のように、煩雑で多くの物質を必要とする(material intensive)方法であるフォトリソグラフィを用いる。現存する代替法(レーザーアブレーションおよびマスクスパッタリング)の能力が不十分だからである。
【0022】
目的
したがって、本発明の目的は、新規かつ安価なエッチングペーストとして、極めて均一で微細な、幅500μm未満の、とくに100μm未満の線、およびLCディスプレイに用いられる、ドープしたスズ酸化物層上の極めて微細な構造をエッチングするためのものを与えることにある。ドープしたスズ酸化物層は透明な導電層であり、液晶ディスプレイ(LCD)としてフラットパネルスクリーンを用いるものや有機発光ディスプレイ(OLED)の製造または薄層太陽電池において用いられる。さらに本発明の他の目的は、新規なエッチング媒体として、エッチングの後に、処理面からの除去を簡便な方法で、熱の作用の下で、残渣を残さずに行うことができるものを提供することにある。
【0023】
発明の記載
本発明は、酸化物の透明な導電層をエッチングするためのエッチング媒体として、以下からなる少なくとも1種のエッチャントを含むエッチング媒体を与える。
リン酸、もしくはその塩または
リン酸付加物または
リン酸と、リン酸塩および/またはリン酸付加物との混合物。実験によって、本発明のエッチング媒体は、ドープしたスズ酸化物層のエッチングにとくに好適であることが示されている。
【0024】
本発明のエッチング媒体は、活性を有するエッチング成分として、少なくとも1種の酸として、オルト−、メタ−、ピロ−、オリゴ−および/またはポリリン酸および/またはメタ五酸化リン、またはそれらの混合物の群からのものを含む。しかし、エッチングするリン酸をエネルギーの熱付加によって遊離する、1種または2種以上の異なるリン酸のアンモニウム塩(複数でもよい)および/またはリン酸のモノ−もしくはジ−あるいはトリエステルが存在してもよい。
【0025】
本発明は、対応するエッチング媒体としてペースト形態の、少なくとも1種のエッチャントに追加して、溶媒、微粒子および/または可溶性無機および/または有機増粘剤を含み、ならびに添加剤として消泡剤、チキソトロープ剤、流動調節剤、脱気剤および粘着促進剤を任意に含むものにも関する。
【0026】
本発明は同様に、酸化物の透明な導電層をエッチングするための方法、とくに対応するスズ酸化物層をエッチングするための方法に関する。用いられる本発明のエッチング媒体の一貫性および適用に依存して、エッチング媒体は、スプレー、スピンコーティング、浸漬、またはスクリーン印刷、ステンシル印刷、スタンプ印刷、パッド印刷もしくはインクジェット印刷によって適用される。
【0027】
当該方法を実施するために、対応するエッチング媒体は、好ましくは印刷技法によってエッチングする基板に適用する。適用するエッチング媒体は、多くの場合温めて活性化することができる。エッチング媒体の組成物および用いるエッチャントに依存して、この目的のため、異なる温度への加熱を行う必要がある。したがって、加熱を異なる方法によって行うことが可能であり、例えばホットプレート上、通常のオーブン内、IR放射、可視光線、UV放射またはマイクロ波によって行うことができる。
【0028】
本発明の方法は、太陽電池の製造のための酸化物の透明な導電層を構築するために用いることができる。しかしながら、酸化物の透明な導電層を、対応する方法で、フラットパネルスクリーンの製造のために構築することもできる。
【0029】
発明の詳細な記載
WO 03/040345には、窒化ケイ素のエッチングのための、エッチングとドーピングの媒体を組み合わせたものが記載されている。存在するエッチャントはリン酸、またはその塩および/または対応する前駆体をベースとするものである。実験で示されているように、窒化ケイ素層の処理のみが、適切なエッチング速度で、この特許出願に記載されている条件下において行うことができる。
【0030】
驚くべきことに、実験によって、酸化物の透明な導電層として、とくに、インジウムスズ酸化物のエッチングを、高いエッチング速度、穏やかな温度における適切な条件下において、対応するエッチング媒体であるエッチャントがリン酸、もしくはその塩または対応する前駆体がベースであるものを用いることによって、行い得ることがここに示された。
本発明のエッチング媒体において用いられるエッチャントは、リン酸、もしくはその塩または適切な適用条件下でリン酸を遊離する適切な前駆体である。
【0031】
本発明の目的において、リン酸の語は、とくに以下のリン酸を意味するものと解される:
オルトリン酸(HPO)、
ピロリン酸(HPO)、
メタリン酸[(HPO]、
オリゴリン酸およびポリリン酸、
ホスホン酸(亜リン酸)、
ホスフィン酸(次亜リン酸)、
フェニルホスフィン酸および他の有機ホスフィン酸類、
フェニルホスホン酸および他の有機ホスホン酸類。
【0032】
リン酸の塩として用い得るものは、リン酸において述べた酸のモノ−、ジ−およびトリ塩である。とくに、これらの意味は対応するアンモニウム塩であると解される。対応するリン酸は、前記エッチング媒体の製剤中のこれらの塩から遊離するところ、必要に応じて加熱によって遊離する。
【0033】
リン酸前駆体の語の意味は、化学反応および/または熱分解によってリン酸および/またはその塩を形成する化合物であると解される。本発明のエッチング媒体において用いるためには、前記したリン酸の対応するモノ−、ジ−およびトリエステル、例えばモノメチルホスフェート、ジ−n−ブチルホスフェート(DBP)およびトリ−n−ブチルホスフェート(TBP)等、がとくに好適である。
【0034】
リン酸類自体は、ルイス酸であってルイス塩基と付加物を形成することができるものである。これらのリン酸付加物類は、昇温下において分解して出発物質に戻ってよい。より揮発性が高いかまたは分解性であるルイス塩基によって、本方法においてリン酸が遊離する。
好適なルイス塩基は1−メチル−2−ピロリドン(NMP)であり、同塩基は例として再現した本発明の組成物においても用いられている。
【0035】
リン酸ベースエッチング媒体には、上記において概要を述べたITOのエッチングのための公知のエッチング媒体を上回る顕著な優位性がある:
・濃ペースト形状のエッチング媒体の適用は、印刷技法によって、エッチングする基板に選択的に行える。煩雑なフォトリソグラフィは省略することができる。
・エッチング媒体の揮発性が極めて小さく、ガラス様の状態(「リン塩ビーズ」)をエッチング工程中に取るため、プリント・オンしたエッチング媒体が極端に少量の場合でも、 エッチング速度はより長きにわたり常に大きい。水性エッチング媒体や他の溶媒をベースとするものでは、エッチング力は数分以内に実質的に完全に失われる。溶媒またはエッチング媒体の蒸発のためである。
・エッチングを熱の付加によって開始することができる。室温でのエッチング速度は極めて小さい(<1nm/min)。
・180℃において、完全に酸化されたインジウムスズ酸化物におけるエッチング速度は、約100nm/minである。対照的に、18重量%の塩酸を含むインジウムスズ酸化物におけるエッチング速度は、わずか8Å/s(=48nm/min)である。これはbetelcoのウェブページに記載の通りである(http://www.betelco.com/sb/phd/pdf/chapter5.pdf p. 128)。
・前記エッチング媒体は極めて低い蒸気圧を有する。そのため、環境を腐食しない。したがって、例えばプリントヘッド、プリントスクリーン等のような、エッチング媒体と直接接触している金属部材を用いても問題は生じない。
【0036】
高解像度スクリーン印刷織(screen-printing fabrics)を用いた試し印刷において、エッチライン幅として50μmが達成された。有意により小さい線幅を作出することは、実質的に不可能である。主として用い得るスクリーン印刷織に起因する。しかし、多くのアプリケーション、例えば標準的なTN−LCD類(7セグメントディスプレイ等)においては、この解像度は全く適切である。よりハイ・クウォリティなディスプレイ、例えばSTNマトリクスディスプレイまたはTFTマトリクスディスプレイにおいては、より高い解像度が必要である。より高い解像度またはより微細な印刷構造を作出するためには、他の印刷工程が必要である。クラシカルな印刷工程である、例えばオフセット印刷、パッド印刷等は、いずれも、例えば薄いガラスシート等基板上では用いることができないか、またはそれらを用いても所望の解像度が達成できない。
【0037】
用いることができる印刷工程はインク・ジェット印刷である。例えば、Litrex (Peasanton, CA, USA) が高解像度工業用インク・ジェットプリンターを製造している。Litrex 120インク・ジェットプリンターによって、10ピコリットルの体積である個々のエッチング媒体の液滴の適用が、ITO被覆ガラス基板に接触することなく、定位確度±10μmで可能となる。したがって、当該装置により、ITOにエッチされる線幅が、本発明のエッチング媒体において用いられて30μmにまで低減される。
【0038】
さらに説明を加えなくても、本技術分野の当業者であれば、前記記載を最大限に用いることができると思われる。したがって、好ましい態様および例は、単に説明のためのものであり、開示を如何なる意味においても限定するものではないと解されるべきである。
【0039】
上記および下記の全ての出願、特許および刊行物、ならびに対応する、2005年7月25日に出願された出願DE 10 2005 035 255.3の開示全体を、本願に参照によって組み入れる。
【0040】
理解を深めるとともに本発明を説明するために、下記に本発明の保護範囲内にある例を与える。これらの例は可能な変種の説明にも資する。しかしながら、記載された発明の原理の一般的な有効性に鑑み、例は、本願の保護範囲を前記例のみに減縮するのに適するものではない。
【0041】
例:
例1
酸化インジウムスズのエッチングペーストの調製
446gのリン酸(85%)を、
176gの脱イオン水および
271gの1−メチル−2−ピロリドン
からなる溶媒混合物に、攪拌しながら添加する。
続いて、15gのヒドロキシエチルセルロースを激しく攪拌しながら添加する。
次に、293gのVestosintポリアミドパウダーを、澄明で均一な混合物に添加し、さらに2時間攪拌する。
ペーストは使えるようになり、これは260メッシュのステンレススチール織スクリーンを用いて印刷することができる。原則上、ポリエステルまたは類似のスクリーン材料も用いることができる
【0042】
例2
460gのリン酸(85%)を、
181gの脱イオン水、
181gのエチレングリコールおよび
98gの1−メチル−2−ピロリドン
からなる溶媒混合物に、攪拌しながら添加する。
続いて、17gのヒドロキシエチルセルロースを激しく攪拌しながら添加する。
次に、293gのCoathyleneポリエチレンパウダーを、澄明で均一な混合物に添加し、さらに2時間攪拌する。
ペーストは使えるようになり、これは260メッシュのステンレススチール織スクリーンを用いて印刷することができる。原則上、ポリエステルまたは類似のスクリーン材料も用いることができる。
【0043】
例3
446gのリン酸(85%)を、
176gの脱イオン水および
271gの1−メチル−2−ピロリドン
からなる溶媒混合物に、攪拌しながら添加する。
続いて、32gのポリエチレングリコール1500および15gのヒドロキシエチルセルロースを激しく攪拌しながら添加する。
次に、271gの硫酸マグネシウムパウダーを、澄明で均一な混合物に添加し、さらに2時間攪拌する。
ペーストは使えるようになり、これは260メッシュのステンレススチール織スクリーンを用いて印刷することができる。原則上、ポリエステルまたは類似のスクリーン材料も用いることができる。
【0044】
ITO−コート基板上の高解像度スクリーン印刷
印刷およびエッチの試験に、以下のパラメータを用いた:
スクリーン:スチールスクリーンであって、メッシュ数が260メッシュ/インチであり、フィラメント径が20μmであり、エマルション厚が15μmであるもの。
レイアウト:45μmの線
スクリーン印刷機:EKRA E1
基板:125nmのITO層を具備するガラス
エッチング:180℃で120秒間加熱
結果:エッチされた線は、平均50μmの幅であった。
【0045】
ITO−コート基板上のインクジェット印刷
インクジェットプリンター:OTB
印刷ヘッド: XAAR Omnidot 760
エッチング媒体の粘度:7〜10mPas(最適化したエッチングペースト)
最大振動数:5.5kHz
最大線速度:700 mm/s
画素解像度:1440dpi
印刷ヘッドの距離:1 mm
基板:125nmのITO層を具備するガラス
エッチング:180℃で120秒間加熱
結果:エッチされた線は、<35μmの幅であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物の透明な導電層をエッチングするためのエッチング媒体であって、以下からなる少なくとも1種のエッチャントを含むエッチング媒体。
リン酸、もしくはその塩または
リン酸付加物または
リン酸と、リン酸塩および/またはリン酸付加物との混合物。
【請求項2】
活性成分として、オルト−、メタ−、ピロ−、オリゴ−および/またはポリリン酸および/またはメタ五酸化リン、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載のエッチング媒体。
【請求項3】
エッチングするリン酸をエネルギーの熱付加によって遊離する、1種または2種以上の異なるリン酸のアンモニウム塩(複数でもよい)および/またはリン酸のモノ−もしくはジ−あるいはトリエステルを含む、請求項2に記載のエッチング媒体。
【請求項4】
少なくとも1種のエッチャントに追加して、溶媒、微粒子および/または可溶性無機および/または有機増粘剤を含み、ならびに添加剤として消泡剤、チキソトロープ剤、流動調節剤、脱気剤および粘着促進剤を任意に含む、ペースト形態の請求項1〜3のいずれかに記載のエッチング媒体。
【請求項5】
酸化物の透明な導電層をエッチングするための方法であって、請求項1〜4のいずれかに記載のエッチング媒体を、印刷工程によってエッチングする基板に適用することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のエッチング媒体の適用が、一貫性に依存して、スプレー、スピンコーティング、浸漬、またはスクリーン印刷、ステンシル印刷、スタンプ印刷、パッド印刷もしくはインクジェット印刷によってなされることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
加熱を、ホットプレート上、通常のオーブン、IR放射、可視光線、UV放射またはマイクロ波によって行うことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
太陽電池の製造のための酸化物の透明な導電層を構築するための、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
フラットパネルスクリーンの製造のための酸化物の透明な導電層を構築するための、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−503825(P2009−503825A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523160(P2008−523160)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006444
【国際公開番号】WO2007/012378
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】