酸化物薄膜の製造方法
【課題】既存の方法で得られるPLZT薄膜と比較して、結晶配向性に優れ、大きな電気光学定数を有するPLZT薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の酸化物薄膜の製造方法は、原料溶液を基板表面に塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する方法であって、この原料溶液に極性有機低分子化合物が添加されていることを特徴とする。極性有機低分子化合物はメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール、酢酸ブチルが好適である。特に、メタノールは極性があるために、液のなかで揃った形で乾燥時に固定されるため、結晶配向性が非常に優れた酸化物薄膜を得ることができる。
【解決手段】本発明の酸化物薄膜の製造方法は、原料溶液を基板表面に塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する方法であって、この原料溶液に極性有機低分子化合物が添加されていることを特徴とする。極性有機低分子化合物はメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール、酢酸ブチルが好適である。特に、メタノールは極性があるために、液のなかで揃った形で乾燥時に固定されるため、結晶配向性が非常に優れた酸化物薄膜を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶基板の表面に原料溶液を塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、エレクトロニクス機器の高速化・高性能化に伴い、光信号の伝達にも高速化が求められている。従来の信号伝達は、光ファイバーで伝達された情報を一旦電気信号に変換しスイッチングを行なっているため、高速での光スイッチができない。このため光を直接変調・スイッチングを行なう光ルーターの開発が活発であり、また、高速な電気光変換材料を低コストで実現するため多くの研究が行われている。
この状況下、PLZT(ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛)系のセラミックス材料は、バルクのセラミックス焼結体としては電圧印加による屈折率変化が極めて大きいことが知られており、光ルーター等への応用が期待されている。しかしながら、PLZT系のセラミックス材料をゾル−ゲル法などの従来法で薄膜化すると、酸化物セラミックス構造中に多くの微小欠陥(ボイド)を生じてしまい、ボイドを含んだポーラス状の組織を持つランダム配向のPLZT薄膜しか得ることができず、バルク状のPLZTに比べて電気光学効果といった特性が低下するという問題があった。
【0003】
一般に、電気光学効果とは電圧印加により屈折率等が変化する特性をあらわすものであり、この電気光学効果を利用して光スイッチ等の種々のデバイス応用が期待されている。電気光学効果は、電圧印加量に対する屈折率の変化量を示す定数(電気光学定数)で表される。この電気光学定数は、電界強度は印加電圧を距離で割ったものであり、電気光学定数の単位は距離(pm:ピコメーター)/電圧(V:ボルト)である。電気光学定数の値が大きい程、単位電圧当たりの屈折率変化が大きくなる。
電気光学効果が大きくなるとそれに反比例して印加電圧を下げることができ、また、光変調の度合いは光が通過する領域の長さと屈折率変化量に比例することから、電気光学効果が大きくなるとそれに反比例して屈折率変化領域を短くすることができるのである。
【0004】
電気光学効果はマクロな現象であり、ある程度の体積空間領域を必要とするためPLZT薄膜に比べバルク状のPLZTの方が光路長を稼ぐことができるという点で有利である。しかし、バルク状のPLZTは光路長を稼ぐことができるという長所をもつ半面で、バルク状のPLZTは単結晶育成が非常に困難であり多結晶体となってしまう。
一方、PLZT薄膜は、基板を任意に選択することで配向軸を制御できる長所を持つ。また、PLZT薄膜は、基板上に膜をエピタキシャルに成長させれば、結晶配向性が向上し、電気光学定数が大きくなる。これは光スイッチ等の種々のデバイスを設計するうえで、駆動電圧の低下や小型軽量化、高性能化に繋がるため、PLZT薄膜の結晶配向性の向上が要望されている。
【0005】
単純な金属酸化物薄膜の結晶配向性の向上の技術としては、単結晶の基板表面の汚れを除去する工程と、汚れの除去された基板表面に極性有機低分子化合物を付着(プリコート)させる工程と、その極性有機低分子化合物が付着している基板表面に有機基結合金属化合物分子を付着させる工程とを含む方法により、Fe2O3等の単純な酸化物膜が緻密でエピタキシャルな金属酸化物膜が得られることが知られている(特許文献1参照)。
基板表面に極性有機低分子化合物を付着させて、基板表面に規則正しく配列された極性有機低分子の存在によって、有機基結合金属化合物分子を配列されることで、金属酸化物膜の結晶配向性を向上するものであるが、PLZTのような複酸化物においても有効に働くかについては検証されていない。
【0006】
PLZT薄膜を含め、酸化物薄膜の物性を高度に利用するためには、化学組成均一性はもちろんのこと、単結晶あるいはエピタキシャルなどの結晶性が必須となる。これは結晶性の良否が電気光学効果に影響を与えるからである。
本発明の目的とするところは、既存の方法で得られる酸化物薄膜と比較して、結晶性、特に結晶配向性に優れ、大きな電気光学定数を有する酸化物薄膜の製造方法を確立することである。
【0007】
【特許文献1】特許第2976028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のPLZT薄膜の製造方法では、基板表面に極性有機低分子化合物を付着させており、基板表面の界面一層だけ分子が規則正しく配列している状態である。本発明の酸化物薄膜の製造方法は、基板表面の界面一層のみならず、二層目、三層目、・・・と酸化物薄膜内部の分子が規則正しく配列している状態を作り出し、その膜内部の分子の存在によって、有機基結合金属化合物分子を配列させることによって、より優れた結晶配向性を有する酸化物薄膜を得ることを目的とする。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、既存の方法で得られるPLZT薄膜と比較して、結晶配向性に優れ、大きな電気光学定数を有するPLZT薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の酸化物薄膜の製造方法は、原料溶液を基板表面に塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する方法であって、この原料溶液に極性有機低分子化合物が添加されていることを特徴とするものである。
あるいは極性有機低分子化合物を基板に付着(プリコート)し、その上に原料溶液を基板表面に塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する方法である。
【0010】
極性有機低分子化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、ジブチルエーテル等エーテル類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、オレイン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、フェノール、トルイル酸等の有機酸類、ブチルブチレート等のエステル酸類、ジメチルアミン、アニリン等アミン類、Nーメチルアセトアミド、フオルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等の硫黄含有化合物、ビリジン、フルフラール等の複素環物質類等を挙げることができる。
【0011】
なお、好ましくは、極性有機低分子化合物はメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール、若しくは酢酸ブチルである。また、特に好ましくは、メタノールである。特に、メタノールは極性があるために、液のなかで揃った形で乾燥時に固定されるため、結晶配向性が非常に優れた酸化物薄膜を得ることができるのである。
また、より結晶配向性を向上させるため、目的とする酸化物の一部の元素を含む極薄膜をシード(seed)層として目的とする酸化物膜の堆積前に形成してもよい。
【0012】
また酸化物薄膜の結晶配向性の改善のための実験を繰り返す中で、酸化物薄膜の結晶配向性に関して、塗布する原料溶液の濃度によって影響を受けるということの知見を得た。従来は基板上に原料溶液を塗布する際は、ある程度濃度の濃い原料溶液を使用する。濃度が薄い場合は当然塗布によりできるコート層の厚みが薄くなり、所望の膜厚を得るには、何度も繰り返し塗布する必要があるため、通常はある程度濃い原料溶液を使用するのである。しかし、濃い原料溶液で作製した酸化物薄膜の結晶配向性は良いものではなく、あえて濃度の薄い原料溶液で塗布して作製した酸化物薄膜の結晶配向性は非常によくなったのである。
すなわち、使用する原料溶液の濃度は15重量%(溶液内に含まれる酸化物としての重量%、以下同じ)以下に希釈されていることが酸化物薄膜の結晶配向性を向上する上で、より好ましいのである。
原料溶液の濃度を薄くすることによって粘度が下がり、乾燥時に溶媒が抜けやすくなるために、微小欠陥(ボイド)の発生が抑制できる。その結果、ボイドのまわりからボイドを核として結晶成長が起こりにくくなるために、エピタキシャル成長が起こり、薄膜の結晶配向性が向上するのである。
【0013】
また、原料溶液は、ゾル−ゲル法により作製されていることが好ましい。詳細なゾル−ゲル法により作製法については後述する実施例で詳細に説明する。
【0014】
また、上述した極性有機低分子化合物を、原料溶液に添加する量は50重量%未満であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の製造方法により作製される酸化物薄膜は、好ましくは、PLZT(ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛)薄膜であるか、若しくは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)薄膜であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の酸化物薄膜の製造方法の他の観点からは、基板表面において、表面粗さ(Ra)が、20nm以下であることを特徴とする製造方法が提供される。基板表面が非常に粗い場合には、エピタキシャル成長が抑制されるが、基板がなめらかなものは、エピタキシャル成長が促進され結晶配向性に優れた酸化物薄膜を得ることができるのである。
【0017】
また、本発明の酸化物薄膜の製造方法の他の観点からは、基板に極性有機低分子化合物を付着(プリコート)し、その後複数の金属元素を含む原料溶液を基板表面に塗布し焼成して複酸化物薄膜を形成することを特徴とする酸化物薄膜の製造方法が提供される。
ここで、複数の金属元素は、鉛酸化物を含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明の酸化物薄膜の製造方法の他の観点からは、上述した酸化物薄膜の製造方法のいずれかを用いてPZTまたはPLZTを形成するものであって、該PZTまたはPLZTの形成前にチタン酸鉛を形成することを特徴とする酸化物薄膜の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の酸化物薄膜の製造方法によれば、既存の方法で得られるPLZT薄膜と比較して、結晶配向性に優れ、大きな電気光学定数を有するPLZT薄膜を得ることができるといった効果がある。
また、本発明の製造方法によれば、PLZT薄膜の電気光学効果を大幅に改善することが可能となり、光スイッチ等の種々のデバイスを設計するうえで、駆動電圧の低下や小型軽量化、高性能化を図ることができるといった効果がある。
さらに、本発明の製造方法によれば、バルク状のPLZTの値を超える1次の電気光学効果を有するPLZT薄膜を得ることができるといった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。本発明に係る酸化物薄膜の製造フローを図1に示す。
本発明に係る酸化物薄膜の製造フローは、基板を用意し(S101)、次に、酸化物材料をスピン塗布する(S102)。この酸化物材料をスピン塗布するときに、原料溶液の調整は、メタノール,エタノール,ブタルアセテート,1−ブタノールの4種のいずれか1種の有機溶媒と1-プロパノールの混合溶液とするのである。その後、乾燥処理(S103)、熱分解処理(S104)を施すことによって非晶質の酸化物薄膜を作製するのである(S105)。その後、さらに焼結処理(S106)を行って、酸化物薄膜を完成するものである(S107)。
【実施例1】
【0021】
実施例1は、本発明に係る酸化物薄膜の製造方法の一実施例として、PLZT薄膜の製造方法について説明する。図2は、本発明に係る酸化物薄膜の製造方法の一実施例として、PLZT薄膜の成膜プロセスフローを示している。
実施例1のPLZT薄膜の成膜プロセスにおいて、単結晶基板は、化学的に非常に安定な材料であるα−Al2O3基板を用いている。また、原料溶液であるPLZT前駆体溶液には、三菱マテリアル社製の厚膜用ゾル−ゲル前駆体溶液25重量%を希釈することにより、9重量%に調整した低粘溶液を用いている。
【0022】
(PLZT薄膜の成膜プロセスフローの説明)
先ず、Rカットのα−Al2O3基板を用意する(S201)。
α−Al2O3基板は、結晶の切り出し方によって、A−,C−,R−などの面を切り出すことができる。それぞれの面によって基板表面の原子配列が異なる。本実施例では、Si素子との集積化を考える場合に、SOI(silicon on insulator)構造に用いられるサファイアR面((01・2)面カット)を用いた強誘電体薄膜のエピタキシャル成長技術、化合物半導体素子との集積化を考慮して、Rカットのα−Al2O3基板を使用することにしたものである。
【0023】
(2)次に、基板の表面汚染を洗浄するため、過酸化水素水中で10分間超音波洗浄し(S202)、その後10分間乾燥した(S203)。
(3)次に、用意したRカットのα−Al2O3基板上に、PbTiO3(PT)をシード層としてスピン塗布する(S204)。PTの濃度は1重量%であり、スピン塗布は、回転速度4,000(rpm)で30秒間行った。堆積したPTの膜厚は極めて薄い極薄膜で測定ができなかったがPLZTに比べ薄い膜厚であった。
(4)その後、スピン塗布されたα−Al2O3基板を、ホットプレート上で380℃・1分間加熱し、熱分解させた(S205)。
【0024】
次から、PLZT薄膜を作製するフローの説明に入る。上述の説明の如く、PTのスピン塗布されたα−Al2O3基板を熱分解させた後に、以下の(5)〜(8)のプロセスを繰り返して、PLZTを基板表面に堆積させていく。
(5)PLZTのスピン塗布を行う(S206)。
PLZTのスピン塗布は、上述のPTのスピン塗布と同様に回転速度4,000(rpm)で30秒間行う。この時、PLZTのスピン塗布に用いる原料溶液の調整は、メタノール,エタノール,ブタルアセテート,1−ブタノールの4種のいずれか1種の有機溶媒と1-プロパノールの混合溶液で、厚膜用ゾル−ゲル前駆体溶液25重量%を希釈して9重量%の前駆体溶液を得ることとしている。
(6)上記(5)のスピン塗布した後、ホットプレート上で85℃・1分間過熱して乾燥させる(S207)。
(7)上記(6)の後、ホットプレート上で380℃・2分間加熱し、熱分解させる(S208)。
(8)更に、ホットプレート上で490℃・3分間加熱し、熱分解させる(S209)。
そして、膜厚が500nm前後になるように、上記(5)〜(8)の作業を繰り返す。
【0025】
(9)上記成膜作業を経て、非晶質PLZT薄膜が作製される(S210)。
(10)最後に、管炉を用いて700℃で30分間、焼結処理を行う(S211)。この焼結処理を経て、PLZT結晶膜が作製されることとなる(S212)。
【0026】
参考までに、本発明の製造方法との対比として、従来のPLZT薄膜の製造プロセスフローを図3に示す。図3中のPLZTのスピン塗布工程において、原料溶液に極性有機低分子化合物を添加させる点が、本発明と異なる点である。なお、ここに示した従来のPLZT薄膜の製造プロセスでも、PLZT結晶性を向上させるためPLZT形成前にPTシード層を形成している。
【0027】
なお、本実施例ではPTの原料溶液にはメタノールを添加していないが、メタノールを添加することにより、より高い結晶性が得られると期待される。
【実施例2】
【0028】
次に実施例2は、本発明に係る酸化物薄膜の製造方法に関して、上述した実施例1とは異なる実施形態のPLZT薄膜の製造方法について説明する。図4は、実施例2のPLZT薄膜の成膜プロセスフローを示している。
なお、単結晶基板は、α−Al2O3基板を用いた点、また、原料溶液であるPLZT前駆体溶液には、三菱マテリアル社製の厚膜用ゾル−ゲル前駆体溶液25重量%を希釈することにより、9重量%に調整した低粘溶液を用いた点は実施例1と同じである。
【0029】
(1)先ず、Rカットのα−Al2O3基板を用意する(S401)。
(2)次に、α−Al2O3基板を過酸化水素中で10分間超音波洗浄した後(S402)、メタノールですすぎ(S403)、その後乾燥させ基板表面にメタノールをプリコートし、その後10分間乾燥させる(S404)。
図5に、基板表面にメタノールをプリコートしてスピン塗布の施すプロセスの作業イメージ図を示す。これは、α−Al2O3基板を過酸化水素中で10分間超音波洗浄した後、メタノールですすぎ、その後乾燥させ基板表面にメタノールをプリコートし、その後10分間乾燥させ、後述するスピン塗布の施す一連のプロセスの理解を助けるべく、作業イメージを図示しているものである。
(3)次に、用意したRカットのα−Al2O3基板上に、PbTiO3(PT)をシード層としてスピン塗布する(S405)。PTの濃度は1重量%であり、スピン塗布は、回転速度4,000(rpm)で30秒間行った。堆積したPTの膜厚は極めて薄い極薄膜で測定ができなかったがPLZTに比べ薄い膜厚であった。
(4)その後、スピン塗布されたα−Al2O3基板を、ホットプレート上で380℃・1分間加熱し、熱分解させた(S406)。
【0030】
次から、PLZT薄膜を作製するフローの説明に入る。上述の説明の如く、PTのスピン塗布されたα−Al2O3基板を熱分解させた後に、以下の(5)〜(8)のプロセスを繰り返して、PLZTを基板表面に堆積させていく。
PLZTのスピン塗布を行う(S407)。
実施例2では、このPLZTのスピン塗布は、実施例1とは異なり、基板表面に極性有機低分子化合物を付着させている。上述のPTのスピン塗布と同様に回転速度4,000(rpm)で30秒間行う。この時、PLZTのスピン塗布に用いる原料溶液の調整は、厚膜用ゾル−ゲル前駆体溶液に用いられている溶媒(1-プロパノール)を用いた。
(6)上記(5)のスピン塗布した後、ホットプレート上で85℃・1分間過熱して乾燥させる(S408)。
(7)上記(6)の後、ホットプレート上で380℃・2分間加熱し、熱分解させる(S409)。
(8)更に、ホットプレート上で490℃・3分間加熱し、熱分解させる(S410)。
そして、膜厚が500nm前後になるように、上記(4)〜(7)の作業を繰り返す。
【0031】
(9)上記成膜作業を経て、非晶質PLZT薄膜が作製される(S411)。
(10)最後に、管炉を用いて700℃で30分間、焼結処理を行う(S412)。この焼結処理を経て、PLZT結晶膜が作製されることとなる(S413)。
【0032】
(極性有機溶媒を添加したことによるPLZT薄膜の結晶性の向上)
次に、本発明の実施例1ならびに2の製造方法を用いて、原料溶液にメタノールを添加させ作製したPLZT薄膜について、その薄膜結晶性を確認した。図6には、実施例1記載の原料溶液にメタノールを添加させ作製(以下、本明細書と図面においては「メタノール添加」という。)したPLZT薄膜のSEMイメージ図ならびに実施例2で示したPLZT薄膜の製造プロセスの如く基板表面にメタノールを付着させ作製(以下、本明細書と図面においては「メタノールプリコート」という。)したPLZT薄膜のSEMイメージ図を示している。なお、図6では、比較用のために原料溶液にメタノールを添加しないで原料溶液そのものを使って作製(以下、本明細書と図面においては「通常プロセス」という。)したPLZT薄膜も示した。
また、(A)メタノール添加で作製したPLZT薄膜と、(B)メタノールプリコートで作成したPLZT薄膜と、(C)通常プロセスで作製したPLZTとについて、図7に各々のPLZT薄膜のφスキャンを行った結果を、図8に各々の逆格子空間マッピングの結果を示している。また、図9には、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートの各々の101/110ピークのロッキングカーブ測定を行ったグラフを示している。
【0033】
図6のSEMイメージ図から、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートとのPLZT薄膜が、(C)通常プロセスのPLZT薄膜と比較して、薄膜の結晶性に優れていることが理解できる。
ここで、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスは、共に膜厚が500nm程度で、前述したスピン塗布を用いてPLZTを基板表面に堆積させていく作業を6回繰り返したものである。
【0034】
また、図7のPLZT薄膜のθ-2θスキャンを行った結果を見ると、高配向になると若干の反射角度の違いで強度が激減するのでθ-2θ法では比較が難しいことがわかるが、いずれにせよ基板のα−Al2O3に匹敵する強い回折ピークが得られていることが分かる。
また、図8の逆格子空間マッピングの結果を見ると、(A)メタノール添加の場合が、101と110のピークが60°の角度で分離している。このことから(A)メタノール添加の場合はより単結晶的になっており、メタノールプリコートや通常プロセスのものと比較して結晶性に優れていることが理解できる。
また、図9の(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートの各々の101/110ピークのロッキングカーブ測定を行ったグラフから、(A)メタノール添加の場合が、半値幅(FWHM)が小さく、より結晶配向性に優れていることがわかる。
【0035】
また、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスの各々のPLZT薄膜(但し、原液溶液濃度が9重量%のもの)について、基板表面粗さRa(nm)を横軸にとり、縦軸にはPLZT101/110 強度 (カウント)および101/110ピークの半値幅をとったものを図10に示す。
図10から、基板表面が粗い(基板表面粗さRaが大きい)場合には、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスとであまり顕著な差がでないことが示されている。これは基板表面でのエピタキシャル成長が抑制されてしまうことが要因であると考えられる。
【0036】
一方、基板表面が滑らか(基板表面粗さRaが小さい)場合には、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスの違いによって顕著な差が現れている。ピーク強度の差は基板表面粗さRaが10(nm)程度の時、大きくなっている。このことからも、メタノール添加の場合がPZLT薄膜の結晶性が最も優れていること理解できる。
基板が滑らかであるほどその結晶配向性がよいのである。
また、図10中、点線のグラフを用いてピーク値の半値幅を示している。半値幅(FWHM)が小さい方が勿論、結晶性がよい。(A)メタノール添加が他のものと比べて、最も半値幅(FWHM)が小さくなっており、このことからもメタノール添加の場合がPZLT薄膜の結晶性が最も優れていること理解できる。またメタノール添加であれば、メタノールをプリコートするプロセスが不要で、より簡便に良質な結晶膜を形成できるという利点もある。
以上から、本発明の酸化物薄膜の製造方法で作製したRカットのα−Al2O3基板上へエピタキシャル成長させたPLZT薄膜が光学的に高品位であり、また、基板とほぼ垂直方向の光路長に対し、従来のPLZT薄膜と比較して優位性をもつことが理解されるであろう。
いずれにせよ、本実施例で示したメタノール添加ならびにメタノールプリコートはPLZT薄膜の結晶性改善に大きな効果があるということができる。
【0037】
参考までに、図11に、(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスのPZLT薄膜について、原料溶液の濃度と101/110のピーク強度の関係を示したグラフを示す。原料溶液の濃度が15重量%以下になると、101/110のピーク強度のプロットが立ち上がることが理解される。また、(B)メタノールプリコートが(C)通常プロセスよりも、101/110のピーク強度が高く、特に、9重量%付近でピークとなっている。ピーク強度が高いほうが、結晶の配向性がよいことから、原料溶液の濃度が結晶配向性をコントロールする重要なパラメータであることが理解されよう。
【0038】
また図12に電気光学効果の測定結果を示す。この場合メタンールプリコートの方がメタノール添加に比べ電気光学効果が大きくなっており、結晶学的解析結果と一致しないが、いずれにせよ通常プロセスに比べ大きな電気光学効果を示すばかりでなく、バルクにも匹敵する大きな電気効果が確認されており、本発明の有効性が示された。測定した電気光学定数をまとめたものを下記表1に示す。本結果は、最近薄膜のPLZTにおいて日本電気で発表されている電気光学効果(http://www.nec.co.jp/press/ja/0408/2403.html)より8倍以上大きいものであり、きわめて有効性の高いプロセスであるということが理解されよう。
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の材料や製造条件の変更が可能であることは理解されるであろう。
なお通常プロセスにおいてもバルクより大きな1次の電気光学効果が確認されているが、これはPTシード層ならびに原料溶液を15重量%以下にして結晶性よくPLZTを形成した効果であると考えられる。
【0039】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の酸化物薄膜の製造方法は、電気光学結晶や半導体メモリなどに有用であり、また低電圧駆動の高速光変調素子などに適用でき、ネットワーク機器の小型化、コンピュータでの高速データ転送に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の酸化物薄膜の製造プロセスフローを示す。
【図2】本実施例1のPLZT薄膜の成膜プロセスフローを示す。
【図3】従来のPLZT薄膜の製造プロセスフローを示す。
【図4】本実施例2のPLZT薄膜の成膜プロセスフローを示す。
【図5】基板表面にメタノールをプリコートしてスピン塗布の施すプロセスの作業イメージ図を示す。
【図6】PLZT薄膜のSEMイメージ図を示す。
【図7】PLZT薄膜のθ-2θスキャンを行った結果を示す。
【図8】逆格子空間マッピングの結果を示す。
【図9】101/110ピークのロッキングカーブ測定を行ったグラフを示す。
【図10】基板表面粗さRa(nm)を横軸にとり、縦軸にはPLZT101/110 強度 (カウント)および101/110ピークの半値幅をとったグラフを示す。
【図11】原料溶液の濃度と101/110のピーク強度の関係を示したグラフを示す。
【図12】電気光学特性
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶基板の表面に原料溶液を塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、エレクトロニクス機器の高速化・高性能化に伴い、光信号の伝達にも高速化が求められている。従来の信号伝達は、光ファイバーで伝達された情報を一旦電気信号に変換しスイッチングを行なっているため、高速での光スイッチができない。このため光を直接変調・スイッチングを行なう光ルーターの開発が活発であり、また、高速な電気光変換材料を低コストで実現するため多くの研究が行われている。
この状況下、PLZT(ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛)系のセラミックス材料は、バルクのセラミックス焼結体としては電圧印加による屈折率変化が極めて大きいことが知られており、光ルーター等への応用が期待されている。しかしながら、PLZT系のセラミックス材料をゾル−ゲル法などの従来法で薄膜化すると、酸化物セラミックス構造中に多くの微小欠陥(ボイド)を生じてしまい、ボイドを含んだポーラス状の組織を持つランダム配向のPLZT薄膜しか得ることができず、バルク状のPLZTに比べて電気光学効果といった特性が低下するという問題があった。
【0003】
一般に、電気光学効果とは電圧印加により屈折率等が変化する特性をあらわすものであり、この電気光学効果を利用して光スイッチ等の種々のデバイス応用が期待されている。電気光学効果は、電圧印加量に対する屈折率の変化量を示す定数(電気光学定数)で表される。この電気光学定数は、電界強度は印加電圧を距離で割ったものであり、電気光学定数の単位は距離(pm:ピコメーター)/電圧(V:ボルト)である。電気光学定数の値が大きい程、単位電圧当たりの屈折率変化が大きくなる。
電気光学効果が大きくなるとそれに反比例して印加電圧を下げることができ、また、光変調の度合いは光が通過する領域の長さと屈折率変化量に比例することから、電気光学効果が大きくなるとそれに反比例して屈折率変化領域を短くすることができるのである。
【0004】
電気光学効果はマクロな現象であり、ある程度の体積空間領域を必要とするためPLZT薄膜に比べバルク状のPLZTの方が光路長を稼ぐことができるという点で有利である。しかし、バルク状のPLZTは光路長を稼ぐことができるという長所をもつ半面で、バルク状のPLZTは単結晶育成が非常に困難であり多結晶体となってしまう。
一方、PLZT薄膜は、基板を任意に選択することで配向軸を制御できる長所を持つ。また、PLZT薄膜は、基板上に膜をエピタキシャルに成長させれば、結晶配向性が向上し、電気光学定数が大きくなる。これは光スイッチ等の種々のデバイスを設計するうえで、駆動電圧の低下や小型軽量化、高性能化に繋がるため、PLZT薄膜の結晶配向性の向上が要望されている。
【0005】
単純な金属酸化物薄膜の結晶配向性の向上の技術としては、単結晶の基板表面の汚れを除去する工程と、汚れの除去された基板表面に極性有機低分子化合物を付着(プリコート)させる工程と、その極性有機低分子化合物が付着している基板表面に有機基結合金属化合物分子を付着させる工程とを含む方法により、Fe2O3等の単純な酸化物膜が緻密でエピタキシャルな金属酸化物膜が得られることが知られている(特許文献1参照)。
基板表面に極性有機低分子化合物を付着させて、基板表面に規則正しく配列された極性有機低分子の存在によって、有機基結合金属化合物分子を配列されることで、金属酸化物膜の結晶配向性を向上するものであるが、PLZTのような複酸化物においても有効に働くかについては検証されていない。
【0006】
PLZT薄膜を含め、酸化物薄膜の物性を高度に利用するためには、化学組成均一性はもちろんのこと、単結晶あるいはエピタキシャルなどの結晶性が必須となる。これは結晶性の良否が電気光学効果に影響を与えるからである。
本発明の目的とするところは、既存の方法で得られる酸化物薄膜と比較して、結晶性、特に結晶配向性に優れ、大きな電気光学定数を有する酸化物薄膜の製造方法を確立することである。
【0007】
【特許文献1】特許第2976028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のPLZT薄膜の製造方法では、基板表面に極性有機低分子化合物を付着させており、基板表面の界面一層だけ分子が規則正しく配列している状態である。本発明の酸化物薄膜の製造方法は、基板表面の界面一層のみならず、二層目、三層目、・・・と酸化物薄膜内部の分子が規則正しく配列している状態を作り出し、その膜内部の分子の存在によって、有機基結合金属化合物分子を配列させることによって、より優れた結晶配向性を有する酸化物薄膜を得ることを目的とする。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、既存の方法で得られるPLZT薄膜と比較して、結晶配向性に優れ、大きな電気光学定数を有するPLZT薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の酸化物薄膜の製造方法は、原料溶液を基板表面に塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する方法であって、この原料溶液に極性有機低分子化合物が添加されていることを特徴とするものである。
あるいは極性有機低分子化合物を基板に付着(プリコート)し、その上に原料溶液を基板表面に塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する方法である。
【0010】
極性有機低分子化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、ジブチルエーテル等エーテル類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、オレイン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、フェノール、トルイル酸等の有機酸類、ブチルブチレート等のエステル酸類、ジメチルアミン、アニリン等アミン類、Nーメチルアセトアミド、フオルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等の硫黄含有化合物、ビリジン、フルフラール等の複素環物質類等を挙げることができる。
【0011】
なお、好ましくは、極性有機低分子化合物はメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール、若しくは酢酸ブチルである。また、特に好ましくは、メタノールである。特に、メタノールは極性があるために、液のなかで揃った形で乾燥時に固定されるため、結晶配向性が非常に優れた酸化物薄膜を得ることができるのである。
また、より結晶配向性を向上させるため、目的とする酸化物の一部の元素を含む極薄膜をシード(seed)層として目的とする酸化物膜の堆積前に形成してもよい。
【0012】
また酸化物薄膜の結晶配向性の改善のための実験を繰り返す中で、酸化物薄膜の結晶配向性に関して、塗布する原料溶液の濃度によって影響を受けるということの知見を得た。従来は基板上に原料溶液を塗布する際は、ある程度濃度の濃い原料溶液を使用する。濃度が薄い場合は当然塗布によりできるコート層の厚みが薄くなり、所望の膜厚を得るには、何度も繰り返し塗布する必要があるため、通常はある程度濃い原料溶液を使用するのである。しかし、濃い原料溶液で作製した酸化物薄膜の結晶配向性は良いものではなく、あえて濃度の薄い原料溶液で塗布して作製した酸化物薄膜の結晶配向性は非常によくなったのである。
すなわち、使用する原料溶液の濃度は15重量%(溶液内に含まれる酸化物としての重量%、以下同じ)以下に希釈されていることが酸化物薄膜の結晶配向性を向上する上で、より好ましいのである。
原料溶液の濃度を薄くすることによって粘度が下がり、乾燥時に溶媒が抜けやすくなるために、微小欠陥(ボイド)の発生が抑制できる。その結果、ボイドのまわりからボイドを核として結晶成長が起こりにくくなるために、エピタキシャル成長が起こり、薄膜の結晶配向性が向上するのである。
【0013】
また、原料溶液は、ゾル−ゲル法により作製されていることが好ましい。詳細なゾル−ゲル法により作製法については後述する実施例で詳細に説明する。
【0014】
また、上述した極性有機低分子化合物を、原料溶液に添加する量は50重量%未満であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の製造方法により作製される酸化物薄膜は、好ましくは、PLZT(ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛)薄膜であるか、若しくは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)薄膜であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の酸化物薄膜の製造方法の他の観点からは、基板表面において、表面粗さ(Ra)が、20nm以下であることを特徴とする製造方法が提供される。基板表面が非常に粗い場合には、エピタキシャル成長が抑制されるが、基板がなめらかなものは、エピタキシャル成長が促進され結晶配向性に優れた酸化物薄膜を得ることができるのである。
【0017】
また、本発明の酸化物薄膜の製造方法の他の観点からは、基板に極性有機低分子化合物を付着(プリコート)し、その後複数の金属元素を含む原料溶液を基板表面に塗布し焼成して複酸化物薄膜を形成することを特徴とする酸化物薄膜の製造方法が提供される。
ここで、複数の金属元素は、鉛酸化物を含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明の酸化物薄膜の製造方法の他の観点からは、上述した酸化物薄膜の製造方法のいずれかを用いてPZTまたはPLZTを形成するものであって、該PZTまたはPLZTの形成前にチタン酸鉛を形成することを特徴とする酸化物薄膜の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の酸化物薄膜の製造方法によれば、既存の方法で得られるPLZT薄膜と比較して、結晶配向性に優れ、大きな電気光学定数を有するPLZT薄膜を得ることができるといった効果がある。
また、本発明の製造方法によれば、PLZT薄膜の電気光学効果を大幅に改善することが可能となり、光スイッチ等の種々のデバイスを設計するうえで、駆動電圧の低下や小型軽量化、高性能化を図ることができるといった効果がある。
さらに、本発明の製造方法によれば、バルク状のPLZTの値を超える1次の電気光学効果を有するPLZT薄膜を得ることができるといった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。本発明に係る酸化物薄膜の製造フローを図1に示す。
本発明に係る酸化物薄膜の製造フローは、基板を用意し(S101)、次に、酸化物材料をスピン塗布する(S102)。この酸化物材料をスピン塗布するときに、原料溶液の調整は、メタノール,エタノール,ブタルアセテート,1−ブタノールの4種のいずれか1種の有機溶媒と1-プロパノールの混合溶液とするのである。その後、乾燥処理(S103)、熱分解処理(S104)を施すことによって非晶質の酸化物薄膜を作製するのである(S105)。その後、さらに焼結処理(S106)を行って、酸化物薄膜を完成するものである(S107)。
【実施例1】
【0021】
実施例1は、本発明に係る酸化物薄膜の製造方法の一実施例として、PLZT薄膜の製造方法について説明する。図2は、本発明に係る酸化物薄膜の製造方法の一実施例として、PLZT薄膜の成膜プロセスフローを示している。
実施例1のPLZT薄膜の成膜プロセスにおいて、単結晶基板は、化学的に非常に安定な材料であるα−Al2O3基板を用いている。また、原料溶液であるPLZT前駆体溶液には、三菱マテリアル社製の厚膜用ゾル−ゲル前駆体溶液25重量%を希釈することにより、9重量%に調整した低粘溶液を用いている。
【0022】
(PLZT薄膜の成膜プロセスフローの説明)
先ず、Rカットのα−Al2O3基板を用意する(S201)。
α−Al2O3基板は、結晶の切り出し方によって、A−,C−,R−などの面を切り出すことができる。それぞれの面によって基板表面の原子配列が異なる。本実施例では、Si素子との集積化を考える場合に、SOI(silicon on insulator)構造に用いられるサファイアR面((01・2)面カット)を用いた強誘電体薄膜のエピタキシャル成長技術、化合物半導体素子との集積化を考慮して、Rカットのα−Al2O3基板を使用することにしたものである。
【0023】
(2)次に、基板の表面汚染を洗浄するため、過酸化水素水中で10分間超音波洗浄し(S202)、その後10分間乾燥した(S203)。
(3)次に、用意したRカットのα−Al2O3基板上に、PbTiO3(PT)をシード層としてスピン塗布する(S204)。PTの濃度は1重量%であり、スピン塗布は、回転速度4,000(rpm)で30秒間行った。堆積したPTの膜厚は極めて薄い極薄膜で測定ができなかったがPLZTに比べ薄い膜厚であった。
(4)その後、スピン塗布されたα−Al2O3基板を、ホットプレート上で380℃・1分間加熱し、熱分解させた(S205)。
【0024】
次から、PLZT薄膜を作製するフローの説明に入る。上述の説明の如く、PTのスピン塗布されたα−Al2O3基板を熱分解させた後に、以下の(5)〜(8)のプロセスを繰り返して、PLZTを基板表面に堆積させていく。
(5)PLZTのスピン塗布を行う(S206)。
PLZTのスピン塗布は、上述のPTのスピン塗布と同様に回転速度4,000(rpm)で30秒間行う。この時、PLZTのスピン塗布に用いる原料溶液の調整は、メタノール,エタノール,ブタルアセテート,1−ブタノールの4種のいずれか1種の有機溶媒と1-プロパノールの混合溶液で、厚膜用ゾル−ゲル前駆体溶液25重量%を希釈して9重量%の前駆体溶液を得ることとしている。
(6)上記(5)のスピン塗布した後、ホットプレート上で85℃・1分間過熱して乾燥させる(S207)。
(7)上記(6)の後、ホットプレート上で380℃・2分間加熱し、熱分解させる(S208)。
(8)更に、ホットプレート上で490℃・3分間加熱し、熱分解させる(S209)。
そして、膜厚が500nm前後になるように、上記(5)〜(8)の作業を繰り返す。
【0025】
(9)上記成膜作業を経て、非晶質PLZT薄膜が作製される(S210)。
(10)最後に、管炉を用いて700℃で30分間、焼結処理を行う(S211)。この焼結処理を経て、PLZT結晶膜が作製されることとなる(S212)。
【0026】
参考までに、本発明の製造方法との対比として、従来のPLZT薄膜の製造プロセスフローを図3に示す。図3中のPLZTのスピン塗布工程において、原料溶液に極性有機低分子化合物を添加させる点が、本発明と異なる点である。なお、ここに示した従来のPLZT薄膜の製造プロセスでも、PLZT結晶性を向上させるためPLZT形成前にPTシード層を形成している。
【0027】
なお、本実施例ではPTの原料溶液にはメタノールを添加していないが、メタノールを添加することにより、より高い結晶性が得られると期待される。
【実施例2】
【0028】
次に実施例2は、本発明に係る酸化物薄膜の製造方法に関して、上述した実施例1とは異なる実施形態のPLZT薄膜の製造方法について説明する。図4は、実施例2のPLZT薄膜の成膜プロセスフローを示している。
なお、単結晶基板は、α−Al2O3基板を用いた点、また、原料溶液であるPLZT前駆体溶液には、三菱マテリアル社製の厚膜用ゾル−ゲル前駆体溶液25重量%を希釈することにより、9重量%に調整した低粘溶液を用いた点は実施例1と同じである。
【0029】
(1)先ず、Rカットのα−Al2O3基板を用意する(S401)。
(2)次に、α−Al2O3基板を過酸化水素中で10分間超音波洗浄した後(S402)、メタノールですすぎ(S403)、その後乾燥させ基板表面にメタノールをプリコートし、その後10分間乾燥させる(S404)。
図5に、基板表面にメタノールをプリコートしてスピン塗布の施すプロセスの作業イメージ図を示す。これは、α−Al2O3基板を過酸化水素中で10分間超音波洗浄した後、メタノールですすぎ、その後乾燥させ基板表面にメタノールをプリコートし、その後10分間乾燥させ、後述するスピン塗布の施す一連のプロセスの理解を助けるべく、作業イメージを図示しているものである。
(3)次に、用意したRカットのα−Al2O3基板上に、PbTiO3(PT)をシード層としてスピン塗布する(S405)。PTの濃度は1重量%であり、スピン塗布は、回転速度4,000(rpm)で30秒間行った。堆積したPTの膜厚は極めて薄い極薄膜で測定ができなかったがPLZTに比べ薄い膜厚であった。
(4)その後、スピン塗布されたα−Al2O3基板を、ホットプレート上で380℃・1分間加熱し、熱分解させた(S406)。
【0030】
次から、PLZT薄膜を作製するフローの説明に入る。上述の説明の如く、PTのスピン塗布されたα−Al2O3基板を熱分解させた後に、以下の(5)〜(8)のプロセスを繰り返して、PLZTを基板表面に堆積させていく。
PLZTのスピン塗布を行う(S407)。
実施例2では、このPLZTのスピン塗布は、実施例1とは異なり、基板表面に極性有機低分子化合物を付着させている。上述のPTのスピン塗布と同様に回転速度4,000(rpm)で30秒間行う。この時、PLZTのスピン塗布に用いる原料溶液の調整は、厚膜用ゾル−ゲル前駆体溶液に用いられている溶媒(1-プロパノール)を用いた。
(6)上記(5)のスピン塗布した後、ホットプレート上で85℃・1分間過熱して乾燥させる(S408)。
(7)上記(6)の後、ホットプレート上で380℃・2分間加熱し、熱分解させる(S409)。
(8)更に、ホットプレート上で490℃・3分間加熱し、熱分解させる(S410)。
そして、膜厚が500nm前後になるように、上記(4)〜(7)の作業を繰り返す。
【0031】
(9)上記成膜作業を経て、非晶質PLZT薄膜が作製される(S411)。
(10)最後に、管炉を用いて700℃で30分間、焼結処理を行う(S412)。この焼結処理を経て、PLZT結晶膜が作製されることとなる(S413)。
【0032】
(極性有機溶媒を添加したことによるPLZT薄膜の結晶性の向上)
次に、本発明の実施例1ならびに2の製造方法を用いて、原料溶液にメタノールを添加させ作製したPLZT薄膜について、その薄膜結晶性を確認した。図6には、実施例1記載の原料溶液にメタノールを添加させ作製(以下、本明細書と図面においては「メタノール添加」という。)したPLZT薄膜のSEMイメージ図ならびに実施例2で示したPLZT薄膜の製造プロセスの如く基板表面にメタノールを付着させ作製(以下、本明細書と図面においては「メタノールプリコート」という。)したPLZT薄膜のSEMイメージ図を示している。なお、図6では、比較用のために原料溶液にメタノールを添加しないで原料溶液そのものを使って作製(以下、本明細書と図面においては「通常プロセス」という。)したPLZT薄膜も示した。
また、(A)メタノール添加で作製したPLZT薄膜と、(B)メタノールプリコートで作成したPLZT薄膜と、(C)通常プロセスで作製したPLZTとについて、図7に各々のPLZT薄膜のφスキャンを行った結果を、図8に各々の逆格子空間マッピングの結果を示している。また、図9には、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートの各々の101/110ピークのロッキングカーブ測定を行ったグラフを示している。
【0033】
図6のSEMイメージ図から、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートとのPLZT薄膜が、(C)通常プロセスのPLZT薄膜と比較して、薄膜の結晶性に優れていることが理解できる。
ここで、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスは、共に膜厚が500nm程度で、前述したスピン塗布を用いてPLZTを基板表面に堆積させていく作業を6回繰り返したものである。
【0034】
また、図7のPLZT薄膜のθ-2θスキャンを行った結果を見ると、高配向になると若干の反射角度の違いで強度が激減するのでθ-2θ法では比較が難しいことがわかるが、いずれにせよ基板のα−Al2O3に匹敵する強い回折ピークが得られていることが分かる。
また、図8の逆格子空間マッピングの結果を見ると、(A)メタノール添加の場合が、101と110のピークが60°の角度で分離している。このことから(A)メタノール添加の場合はより単結晶的になっており、メタノールプリコートや通常プロセスのものと比較して結晶性に優れていることが理解できる。
また、図9の(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートの各々の101/110ピークのロッキングカーブ測定を行ったグラフから、(A)メタノール添加の場合が、半値幅(FWHM)が小さく、より結晶配向性に優れていることがわかる。
【0035】
また、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスの各々のPLZT薄膜(但し、原液溶液濃度が9重量%のもの)について、基板表面粗さRa(nm)を横軸にとり、縦軸にはPLZT101/110 強度 (カウント)および101/110ピークの半値幅をとったものを図10に示す。
図10から、基板表面が粗い(基板表面粗さRaが大きい)場合には、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスとであまり顕著な差がでないことが示されている。これは基板表面でのエピタキシャル成長が抑制されてしまうことが要因であると考えられる。
【0036】
一方、基板表面が滑らか(基板表面粗さRaが小さい)場合には、(A)メタノール添加と(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスの違いによって顕著な差が現れている。ピーク強度の差は基板表面粗さRaが10(nm)程度の時、大きくなっている。このことからも、メタノール添加の場合がPZLT薄膜の結晶性が最も優れていること理解できる。
基板が滑らかであるほどその結晶配向性がよいのである。
また、図10中、点線のグラフを用いてピーク値の半値幅を示している。半値幅(FWHM)が小さい方が勿論、結晶性がよい。(A)メタノール添加が他のものと比べて、最も半値幅(FWHM)が小さくなっており、このことからもメタノール添加の場合がPZLT薄膜の結晶性が最も優れていること理解できる。またメタノール添加であれば、メタノールをプリコートするプロセスが不要で、より簡便に良質な結晶膜を形成できるという利点もある。
以上から、本発明の酸化物薄膜の製造方法で作製したRカットのα−Al2O3基板上へエピタキシャル成長させたPLZT薄膜が光学的に高品位であり、また、基板とほぼ垂直方向の光路長に対し、従来のPLZT薄膜と比較して優位性をもつことが理解されるであろう。
いずれにせよ、本実施例で示したメタノール添加ならびにメタノールプリコートはPLZT薄膜の結晶性改善に大きな効果があるということができる。
【0037】
参考までに、図11に、(B)メタノールプリコートと(C)通常プロセスのPZLT薄膜について、原料溶液の濃度と101/110のピーク強度の関係を示したグラフを示す。原料溶液の濃度が15重量%以下になると、101/110のピーク強度のプロットが立ち上がることが理解される。また、(B)メタノールプリコートが(C)通常プロセスよりも、101/110のピーク強度が高く、特に、9重量%付近でピークとなっている。ピーク強度が高いほうが、結晶の配向性がよいことから、原料溶液の濃度が結晶配向性をコントロールする重要なパラメータであることが理解されよう。
【0038】
また図12に電気光学効果の測定結果を示す。この場合メタンールプリコートの方がメタノール添加に比べ電気光学効果が大きくなっており、結晶学的解析結果と一致しないが、いずれにせよ通常プロセスに比べ大きな電気光学効果を示すばかりでなく、バルクにも匹敵する大きな電気効果が確認されており、本発明の有効性が示された。測定した電気光学定数をまとめたものを下記表1に示す。本結果は、最近薄膜のPLZTにおいて日本電気で発表されている電気光学効果(http://www.nec.co.jp/press/ja/0408/2403.html)より8倍以上大きいものであり、きわめて有効性の高いプロセスであるということが理解されよう。
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の材料や製造条件の変更が可能であることは理解されるであろう。
なお通常プロセスにおいてもバルクより大きな1次の電気光学効果が確認されているが、これはPTシード層ならびに原料溶液を15重量%以下にして結晶性よくPLZTを形成した効果であると考えられる。
【0039】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の酸化物薄膜の製造方法は、電気光学結晶や半導体メモリなどに有用であり、また低電圧駆動の高速光変調素子などに適用でき、ネットワーク機器の小型化、コンピュータでの高速データ転送に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の酸化物薄膜の製造プロセスフローを示す。
【図2】本実施例1のPLZT薄膜の成膜プロセスフローを示す。
【図3】従来のPLZT薄膜の製造プロセスフローを示す。
【図4】本実施例2のPLZT薄膜の成膜プロセスフローを示す。
【図5】基板表面にメタノールをプリコートしてスピン塗布の施すプロセスの作業イメージ図を示す。
【図6】PLZT薄膜のSEMイメージ図を示す。
【図7】PLZT薄膜のθ-2θスキャンを行った結果を示す。
【図8】逆格子空間マッピングの結果を示す。
【図9】101/110ピークのロッキングカーブ測定を行ったグラフを示す。
【図10】基板表面粗さRa(nm)を横軸にとり、縦軸にはPLZT101/110 強度 (カウント)および101/110ピークの半値幅をとったグラフを示す。
【図11】原料溶液の濃度と101/110のピーク強度の関係を示したグラフを示す。
【図12】電気光学特性
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料溶液を基板表面に塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する方法であって、
前記原料溶液に極性有機低分子化合物が添加されていることを特徴とする酸化物薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記原料溶液が、酸化物に重量換算として15重量%以下に希釈されていることを特徴とする請求項1に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記原料溶液が、ゾル−ゲル法により作製されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記極性有機低分子化合物が、低級のアルコールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記極性有機低分子化合物が、酢酸ブチル又はメタノールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記極性有機低分子化合物を前記原料溶液に添加する量が、50重量%未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記酸化物薄膜が、鉛(Pb),ランタン(La),ジルコン(Zr),チタン(Ti)を含む酸化物セラミックス(PLZT;ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記酸化物薄膜が、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb ( ZrXTi1−X ) O3) であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記基板表面において、表面粗さ(Ra)が、20nm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項10】
基板に極性有機低分子化合物を付着(プリコート)し、その後複数の金属元素を含む原料溶液を基板表面に塗布し焼成して複酸化物薄膜を形成することを特徴とする酸化物薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記複数の金属元素が鉛酸化物を含むことを特徴とする請求項10に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法を用いてPZTまたはPLZTを形成するものであって、該PZTまたはPLZTの形成前にチタン酸鉛を形成することを特徴とする酸化物薄膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法を用いて作製された電気光学結晶。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法を用いて作製された半導体メモリ。
【請求項1】
原料溶液を基板表面に塗布し焼成して酸化物薄膜を形成する方法であって、
前記原料溶液に極性有機低分子化合物が添加されていることを特徴とする酸化物薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記原料溶液が、酸化物に重量換算として15重量%以下に希釈されていることを特徴とする請求項1に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記原料溶液が、ゾル−ゲル法により作製されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記極性有機低分子化合物が、低級のアルコールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記極性有機低分子化合物が、酢酸ブチル又はメタノールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記極性有機低分子化合物を前記原料溶液に添加する量が、50重量%未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記酸化物薄膜が、鉛(Pb),ランタン(La),ジルコン(Zr),チタン(Ti)を含む酸化物セラミックス(PLZT;ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記酸化物薄膜が、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb ( ZrXTi1−X ) O3) であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記基板表面において、表面粗さ(Ra)が、20nm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項10】
基板に極性有機低分子化合物を付着(プリコート)し、その後複数の金属元素を含む原料溶液を基板表面に塗布し焼成して複酸化物薄膜を形成することを特徴とする酸化物薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記複数の金属元素が鉛酸化物を含むことを特徴とする請求項10に記載の酸化物薄膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法を用いてPZTまたはPLZTを形成するものであって、該PZTまたはPLZTの形成前にチタン酸鉛を形成することを特徴とする酸化物薄膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法を用いて作製された電気光学結晶。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の酸化物薄膜の製造方法を用いて作製された半導体メモリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−217250(P2007−217250A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41753(P2006−41753)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】
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