説明

重合体の製造方法、膜形成用組成物、有機膜及び半導体装置

【課題】 重合収率が向上し、金属不純物の含有量が低減されたかご型構造を有する重合体の製造方法を提供するものである。さらには、金属不純物の含有量が低減された膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を含む有機膜及び前記有機膜を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】 分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する重合性反応基Bとを有する化合物を重合して、かご型構造を有する重合体を製造する方法であって、前記かご型構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bを有する化合物と、界面活性剤とを水相中で超音波処理により混合する工程を含むことを特徴とする重合体の製造方法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の製造方法、膜形成用組成物、有機膜及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、半導体デバイスの高集積化、高速化及び高性能化が進むにしたがって、半導体集積回路の配線間抵抗の増大や電気容量の増大による遅延時間が大きな問題となってきている。この遅延時間を減少させ、半導体デバイスをより高速化させるためには、回路の絶縁膜に低誘電率の絶縁膜を用いることが必要である。
【0003】
このような中、低誘電率の絶縁膜としては、有機材料を使用することが検討されている。有機材料を絶縁膜として使用するには、一般的に低分子のモノマーを種々の反応によりポリマー化し、分子量を数万から数十万の高分子体とする必要がある。このような高分子体の製造方法としては、低分子のモノマーを、重合開始剤を使用して重合する方法(例えば、特許文献1参照。)が一般的に知られている。しかしながら、このような重合方法では、パラジウム等の遷移金属触媒を含む重合開始剤などでは、重合開始剤に含まれる金属がポリマー中に残ってしまうことによる、絶縁膜中の金属不純物含有量の増加や、ポリマーの収率が安定しないという問題があった。
【0004】
一方、半導体デバイスにおける低誘電率の絶縁膜としては、半導体集積回路の電気的性能から、絶縁膜中に含まれる金属不純物量の低減が求められている。このような金属不純物を低減する手法としては、イオン交換樹脂を使用した低減方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、イオン交換樹脂による低減方法は、処理工程の増加や、歩留まりの低下を引き起こす問題があり、簡便な方法で収率の良好な手法が求められている。
【0005】
また、有機材料の製造方法として、低分子のモノマーを重合開始剤存在下で重合する方法が広く知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、ポリマーの収率が低いという問題があり、さらなる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−070597号公報
【特許文献2】特開2006−291160号公報
【特許文献3】特開2007−161788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、重合収率が向上し、金属不純物の含有量が低減されたかご型構造を有する重合体の製造方法を提供するものである。さらには、金属不純物の含有量が低減された膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を含む有機膜及び前記有機膜を備えた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する重合性反応基Bとを有する化合物を重合して、かご型構造を有する重合体を製造する方法において、前記かご型構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物と、界面活性剤とを水相中で超音波処理により混合する工程を行うことにより、部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物について、均一で安定な乳化重合をさせることができ、これにより重合収率が向上し、更には金属不純物の含有量が低減されることを見出し、さらに検討を進めることにより本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、下記(1)〜(7)に記載の本発明により達成される。
(1)分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する重合性反応基Bとを有する化合物を重合して、かご型構造を有する重合体を製造する方法であって、前記かご型構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物と、界面活性剤とを水相中で超音波処理により混合する工程を含むことを特徴とする重合体の製造方法。
(2)前記界面活性剤が、前記かご型構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物と、界面活性剤とを水相中で超音波処理により混合する工程によって、かご型構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物に対して疎水性部位を中心としたミセルを形成するものである第(1)項に記載の重合体の製造方法。
(3)前記重合性反応基Bが、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有することを特徴とする第(1)項又は第(2)項に記載の重合体の製造方法。
(4)前記かご構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物において、前記芳香環由来の炭素数が、当該かご構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下であることを特徴とする第(1)項ないし第(3)項のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
(5)第(1)項ないし第(4)項のいずれか1項に記載の重合体の製造方法により得られる重合体を含む膜形成用組成物。
(6)第(5)項記載の膜形成用組成物を含む有機膜。
(7)第(6)項記載の有機膜を備えたことを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合体の製造方法によれば、重合収率が向上し、金属不純物の含有量が低減されたかご型構造を有する重合体を得ることができる。また、本発明の重合体の製造方法により得られた重合体を用いた膜形成組成物は、金属不純物の含有量が低減されたものであり、これを用いて得られた有機膜を備えた半導体装置は、有機膜における金属不純物の含有量が低減されることで、遅延時間を減少させるなどのデバイス特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】半導体装置を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する重合性反応基Bとを有する化合物を重合して、かご型構造を有する重合体を製造する方法であって、前記かご構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物と、界面活性剤とを水相中で超音波処理により混合する工程を含むことを特徴とする重合体の製造方法であり、これにより得られる重合体は、収率が向上し、金属不純物の含有も低減されるものである。
【0013】
また、本発明の膜形成用組成物は、前記重合体の製造方法により得られる重合体を含むものであり、これにより、金属不純物の含有量が低減されたものである。また、本発明の有機膜は、前記膜形成用組成物を含む膜であり、これにより、金属不純物の含有量が低減されたものである。さらに、本発明の半導体装置は、前記有機膜を備えたことを特徴とするものであり、有機膜における金属不純物の含有量が低減されることで、遅延時間を減少させるなどのデバイス特性を向上させることができるものである。
【0014】
本発明に用いる、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する重合性反応基Bとを有する化合物(以下、かご構造を有する化合物と略す)としては、下記部分構造Aと、重合性反応基Bとを有するものが挙げられる。また、前記かご構造を有する化合物は、重合性反応基Bが、部分構造Aに直接結合した芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基を有するものが好ましく、前記芳香環由来の炭素数が、当該かご構造を有する化合物全体の炭素数に対して15%以上、38%以下である構造を有するものがより好ましい。
【0015】
(部分構造A)
かご構造を有する化合物が有する部分構造Aとしては、アダマンタン型のかご型構造を含むものである。これにより、本発明により得られる重合体を含む膜形成用組成物を用いて形成される膜を、低密度のものとすることができ、形成される膜の誘電率を低いものとすることができる。また、後に詳述するような重合性反応基Bを備える、かご型構造を有する化合物の反応性を適切なものとすることができるため、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとし、最終的に形成される膜の強度を優れたものとすることができる。
【0016】
ここで部分構造Aとしては、例えば、アダマンタン、ポリアダマンタン(例えば、ビアダマンタン、トリアダマンタン、テトラアダマンタン、ヘプタアダマンタン、ヘキサアダマンタン等)、ポリアマンタン(例えば、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ペンタマンタン、ヘキサマンタン、ヘプタマンタン等)、これらの部分構造を構成する水素原子の少なくとも一部をアルキル基またはハロゲン原子で置換した部分構造等の二価基(上記部分構造を構成する2つの水素原子を除いた部分の構造)や、これらの二価基を2つ以上備えたもの(例えば、ビ(ジアマンタン)骨格、トリ(ジアマンタン)骨格、テトラ(ジアマンタン)骨格等の複数のジアマンタン骨格が連なったもの(ポリ(ジアマンタン)骨格を有するもの);ビ(トリアマンタン)骨格、トリ(トリアマンタン)骨格、テトラ(トリアマンタン)骨格等の複数のトリアマンタン骨格が連なったもの(ポリ(トリアマンタン)骨格を有するもの);アダマンタン骨格(またはポリアダマンタン骨格)とポリアマンタン骨格とが連なったもの等)等が挙げられる。以下に、部分構造Aの例の一部を、化学構造式で示すが、部分構造Aはこれらに限定されるものではない。ただし、下記式(C−1)〜式(C−7)中、置換基R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン基を示し、l、m、nは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【0017】
【化1】

【0018】
また、前記アダマンタン構造は、置換基としてメチル基を有するものであるのが好ましい。これにより、有機溶媒への溶解性を向上させることができる。
【0019】
部分構造Aとしては、特に、下記式(1)で示される構造を有するものであるのが好ましい。
【0020】
【化2】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【0021】
また、部分構造Aは、ジアマンタン構造を有するものであってもよい。これらの部分構造Aとすることにより、膜形成用組成物を用いて形成される膜の誘電率を特に低いものとすることができる。また、かご構造を有する化合物の反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0022】
(重合性反応基B)
本発明に用いるかご構造を有する化合物は、上記のような部分構造Aに加え、重合反応に寄与する重合性反応基Bを有している。重合性反応基Bとしては、反応基として重合性の官能基を有するものであれば、限定されるものではないが、例えば、炭素−炭素二重結合を有する基、炭素−炭素三重結合を有する基などの炭素−炭素不飽和結合の重合性官能基を有する基、マレイミド基、ナジイミド基、ビフェニレン基、シアナト基及びシクロペンタジエニル基などが挙げられ、反応性が高く、より耐熱性が高まる点から、炭素−炭素二重結合を有する基、炭素−炭素三重結合を有する基などの炭素−炭素不飽和結合を有する基が好ましい。
【0023】
前記炭素−炭素二重結合を有する基としては、ビニル基を有するものが好ましく、ビニル基以外のアルケニル基であっても良い。このようなアルケニル基の具体例としては、1,3−ブタジエニル基などの無置換アルケニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基及び1−デセニル基などの鎖状脂肪族置換アルケニル基、2−シクロヘキシルビニル基及び2−(ビシクロ[2,2,1]ヘプチル)ビニル基などの環状脂肪族置換アルケニル基及びスチリル基、2−トリルビニル基、2−キシリルビニル基、2−ナフチルビニル基及び2−アントラセニルビニル基などの芳香族置換アルケニル基、などが挙げられるが、これらに限定されない。また、前記炭素−炭素三重結合を有する基としては、エチニル基が好ましく、エチニル基以外のアルキニル基であっても良い。このようなアルキニル基の具体例としては、1,3−ブタジイニル基などの無置換アルケニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ヘキシニル基及び1−デシニル基などの鎖状脂肪族置換アルキニル基、2−シクロヘキシルエチニル基及び2−(ビシクロ[2,2,1]ヘプチル)エチニル基などの環状脂肪族置換アルキニル基及び芳香族置換アルキニル基、2−トリルエチニル基、2−キシリルエチニル基、2−ナフチルエチニル基及び2−アントラセニルエチニル基などの芳香族置換アルキニル基、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
かご構造を有する化合物が、このような重合性反応基Bを有することにより、かご構造を有する化合物の反応性を適切なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとし、最終的に形成される膜の強度を優れたものとすることができる。
【0025】
前記重合性反応基Bは、上記重合性反応基に芳香環を有するものを用いることができ、このような芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ナフタセン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ペリレン環、コロネン環、ビフェニル環、テルフェニル環及びアズレン環等の炭化水素環式芳香環や、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、インドール環、プリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、キノリン環及びテルチエニル環等の複素環式芳香環等が挙げられる。中でも、芳香環としては、ベンゼン環が好ましい。これにより、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物の付与をより容易に行うことができる。また、膜形成用組成物を用いて形成される膜の弾性率を好適なものとすることができ、形成される膜の強度、前記部材(半導体基板等)への密着性等を特に優れたものとすることができる。
【0026】
また、かご型構造を有する化合物において、前記芳香環由来の炭素数が、当該かご構造を有する化合物全体の炭素数に対して、15%以上、38%以下である構造を有するものが好ましい。これにより、かご構造を有する化合物の反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0027】
重合性反応基Bを構成する芳香環は、少なくとも1つの他の原子を介して部分構造Aを構成するかご型構造に結合したものであってもよいが、部分構造Aを構成するかご型構造に直接結合したものであるのが好ましい。これにより、かご構造を有する化合物の反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0028】
上記のように、かご構造を有する化合物を構成する重合性反応基Bは、芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基を有するものが好ましく、重合性反応基Bにおいて、芳香環上のビニル基は、2つのエチニル基またはビニル基を有し、一方の前記エチニル基または前記ビニル基は、他方の前記エチニル基または前記ビニル基のメタ位に存在するものであるのがより好ましい。これにより、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基またはビニル基のうち一方のエチニル基またはビニル基が反応(重合反応)した状態において、芳香環等の電子的な効果がより顕著に発揮され、他方のエチニル基またはビニル基の反応性をより効果的に低下させることができるとともに、当該反応した部位が適度な立体的な障害となり、他方のエチニル基またはビニル基(未反応のエチニル基またはビニル基)の反応性をより好適に制御することができる。その結果、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基またはビニル基についての反応性の選択性をより高いものとすることができるとともに、膜を形成するための焼成工程を、より好適な条件(半導体基板へのダメージを防止しつつ、優れた生産性で膜を形成することができる条件)で行うことができる。
【0029】
また、重合性反応基Bが有していてもよい2つのエチニル基またはビニル基は、いずれも、前記芳香環がかご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものであるのが好ましい。これにより、重合性反応基Bが有していてもよい2つのエチニル基またはビニル基のうち一方のエチニル基またはビニル基が反応(重合反応)した状態において、芳香環等の電子的な効果がより顕著に発揮され、他方のビニル基の反応性をより効果的に低下させることができるとともに、当該反応した部位、および、前述した部分構造Aが適度な立体的な障害となり、他方のエチニル基またはビニル基(未反応のエチニル基またはビニル基)の反応性をより好適に制御することができる。その結果、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基またはビニル基についての反応性の選択性をより高いものとすることができるとともに、膜を形成する焼成工程を、より好適な条件(半導体基板へのダメージを防止しつつ、優れた生産性で膜を形成することができる条件)で行うことができる。
【0030】
上記のような条件を満足するかご型構造を有する化合物としては、例えば、下記式(2)または(3)で示される構造を有するものが挙げられる。
【0031】
【化3】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【0032】
【化4】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【0033】
本発明に用いる界面活性剤としては、疎水性部位及び親水性部位を有するものであり、前記界面活性剤を溶剤中に所望の条件で添加すると、界面活性剤が有する性質により、二分子膜、ベシクル、ミセルを形成することができる。これらの中でも、より重合収率と金属不純物の低減効率を向上させる上で、ミセルを形成するものが好ましく、ミセルは、疎水性部位を中心としたミセル、親水性部位を中心とした逆ミセルが挙げられるが、本発明の実施形態としては、疎水性部位を中心としたミセル構造であることがより好ましい。
このような界面活性剤としては、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。より具体的には、例えば、前記アニオン界面活性剤としては、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、脂肪酸アルカリ塩、アルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルアリールスルホン酸塩、アルキル基の炭素数が8〜18のアルキル硫酸塩、アルキル基の炭素数が8〜18の脂肪酸アルカリ塩が好ましく、特にドデシル硫酸ナトリウムが好適に使用できる。また、界面活性剤のHLB値が18以上、42以下のものが、分散安定化とミセル形成の観点から好ましく、例えば、分散後1時間静置した状態あっても懸濁もしくは乳化状態を保つことができ、製造上の利便性から好ましい。このような界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
このHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)とは、親水性と疎水性のバランスを表す指標であり、その値が小さいほど親油性が高い。HLB値の代表的な算出方法としてグリフィン法とデイビス法が挙げられる。なお、本発明において、HLB値はデイビス法により得ることができ、以下のように定義される。
HLB=7×Σ(親水基の基数)+Σ(親油基の基数)
(但し、親水基の基数及び親油基の基数は、基の種類によって定められた値であり、例えば、本多健一編集「表面、界面化学大系 基礎編 上巻」の364頁に示された値である。)
【0035】
また、HLB値は上記範囲外でも使用できるが、上記範囲内とすることにより、本発明による重合反応において、より安定した乳化状態を保つことができる。また、重合中、モノマー液滴同士の合一が起こりにくくなり、均一な液滴が得られる。この液滴はミセル形成による液滴であり、液滴の内部で重合反応が進行していると考えられる。液滴の内部で重合反応が進行することにより、かご構造を有する化合物に含まれている金属不純物、重合開始剤に含まれている金属不純物、あるいは遷移金属触媒由来の金属不純物等は、液滴の外部である水相に移動するものと考えられる。上述の現象によって、金属不純物がより低減された所望の重合体を製造することができ、本発明の効果が十分に発現される。
【0036】
本発明の重合体の製造方法は、例えば、前記かご構造を有する化合物と界面活性剤を用意して、これらを、水溶媒と有機溶剤が投入された加熱攪拌装置付の反応装置に投入し、超音波処理を印加して、これを混合しながら、前記かご構造を有する化合物の周囲に、界面活性剤が配列した二分子膜、ベシクル、ミセルを形成する。次いで、加熱・攪拌工程を実施することにより、前記かご構造を有する化合物を反応させて重合し、かご構造を有する重合体を製造することができる。また、超音波処理を印加しながら加熱・攪拌工程を行っても良く、ミセル等を形成するための超音波処理を印加する工程が製造工程内で実施されていれば、工程の順番は特に限定されない。
【0037】
このようにして行われる重合反応において、例えばミセルを形成する場合、平均粒子径10nm以上40nm以下の比較的粒子径の小さな液滴を生成することが好ましい。前記範囲外の粒子径でも使用できるが、この範囲内の粒子径とすることにより、均一で安定なミセルを反応場として、モノマー同士が効率よく反応するため、モノマーの反応率が高くなり、収率がより向上するとともに、金属不純物の除去もし易くなる。なお、本発明において、液滴の平均粒子径の測定方法としては、粒子径を測定できるものであれば、特に限定されないが、例えば、ゼータ電位・粒径測定システム等が挙げられる。
【0038】
また、前記かご構造を有する化合物の反応においては、公知の重合開始剤を用いることができ、このような重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ペルオキソ二硫酸カリウム及びアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤、酢酸銅(II)等の遷移金属触媒などを挙げることができる。重合開始剤の使用量としては、例えば、0.1当量倍以上、1当量倍以下が好ましい。この範囲外でも使用できるが、この範囲とすることにより、より反応が促進され、収率が向上する。前記重合反応に用いる有機溶剤としては、かご型構造化合物を溶解させることができるものであれば、特に限定されないが、オクタノール/水分配係数が3以下である1種以上の有機溶剤が好ましい。例えば、オクタノール/水分配係数が3以下である有機溶剤としてはトルエン、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられるが、これらの中でも特にトルエンがより好適に使用できる。
【0039】
本発明に用いる界面活性剤の量は、安定したミセル形成および重合で得られた樹脂の特性の観点から、かご型構造化合物に対して、4当量倍以上、15当量倍以下が好ましい。界面活性剤の量が、前記範囲外でも使用できるがこの範囲内とすることにより、より安定したミセルを形成することができ、重合収率がより高く、金属不純物の含有量が低減された重合体を得ることができる。
【0040】
水の添加量としては、安定したミセル形成および得られた樹脂の特性の観点から、界面活性剤に対して5wt倍以上、15wt倍以下が好ましい。前記範囲外の水添加量でも使用できるがこの範囲内とすることにより、安定したミセルを形成することができ、重合収率がより高く、金属不純物の含有量が低減された樹脂を得ることができる。
【0041】
また有機溶剤は、かご型構造を有する化合物を溶解させることができるものであれば、特に限定されないが、反応を速やかに進行させる上では、オクタノール/水分配係数が3以下である1種以上の有機溶剤を水に対して20wt%以上、80wt%以下の比率で用いることが好ましい。この範囲外でも使用できるが、この範囲とすることにより、より反応が促進され、収率が向上する。
【0042】
本発明に用いる超音波処理装置としては、超音波処理を印加できるものであればよく、公知の超音波処理装置を用いることができ、例えば、任意の適切な超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機等が挙げられる。
超音波処理条件としては、周波数、振幅等が挙げられる。周波数としては、特に制限はないが、分散性の観点から、好ましくは30kHz以下であり、特に10kHz以上、30kHz以下の範囲でより好適に使用できる。振幅についても、大きいほどキャビテーション圧が高くなるため、一般的な振幅範囲である、20μm以上、60μm以下の範囲で使用することが好ましい。
【0043】
本発明の重合体の製造方法における重合反応では、界面活性剤を用いる乳化重合において、超音波処理により混合する工程を含むことで、好ましくは均一で安定なミセルを形成することにより、このミセルを反応場として重合が進行し、溶液重合と比較してモノマー同士が効率良く反応するため、モノマーの反応率が高くなり収率が向上する。
【0044】
重合反応における反応温度としては、かご型構造を有する化合物の構造により、適宜変更すれば良いが、通常0℃以上200℃以下程度であり、60℃以上がより好ましい。
反応時間としては、適宜変更すれば良く、通常0.1時間以上100時間以下程度である。上記反応温度及び反応時間は、前記範囲外でも使用できるが、それぞれ前記上限値より高すぎたり、長すぎたりすると、重合体の分子量が大きくなり、有機溶剤への不溶化を引き起こす恐れがある。一方、反応温度及び反応時間が、それぞれ前記下限値より、低すぎたり、短すぎたりすると、重合体の分子量が小さくなり、塗布膜作成時に、析出物などによる塗布膜の外観不良を引き起こす可能性がある。
【0045】
本発明の重合体の製造方法で得られる反応溶液は、例えば、これに食塩を加えて攪拌した後、メタノールなどの溶媒を注ぐことにより反応物を析出させ、得られた析出物を濾別し、エタノールと水の混合溶媒(体積比1:1)などで洗浄した後、減圧乾燥することにより、精製することができる。
【0046】
このようにして得られる重合体は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)
により測定したポリスチレン換算の数平均分子量が、10,000以上200,000以下程度である。前記範囲外でも、有機膜に使用できるが、前記範囲内であると、重合体は有機溶剤への溶解性が高く、外観良好な塗布膜を得ることができる。また、前記重合反応により得られる重合体は、分散比(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0以上2.5以下程度であり、分散比が狭いため、塗布膜作成用のワニス液調製時に、ろ過を容易に行うことができる。
【0047】
上記重合体は、金属不純物の含有量が少ないことより、半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、表面保護膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、液晶配向膜等の用途として使用することができる。
【0048】
本発明の膜形成用組成物は、上記で得た膜形成用重合体を含むものであり、一般的には、後述するように、ワニスとして、支持体上に塗布することによって膜を形成することから、該重合体を溶解又は分散させる溶媒を含むことができる。ワニスにするにあたっては、上記にて反応して得た重合体を回収、乾燥させて固形としたものを有機溶剤に溶解させて絶縁膜形成用組成物ワニスとしてもよいし、前記重合体の製造により得られた反応溶液を、直接、ワニスとして用いてもよいし、また、反応溶液に別の有機溶剤を混合してもよい。
【0049】
膜形成用組成物に用いる有機溶媒としては、前記重合体を溶解又は分散させることができるものであれば、特に限定されないが、上記重合反応に用いる有機溶媒と同様のものを挙げることができる。膜形成用組成物のワニスにおける濃度としては、前記重合体の構造や分子量により、適宜決めればよいが、膜形成用組成物ワニス中に、前記重合体が、0.1質量%から50質量%が好ましく、さらには0.5質量%から15質量%がより好ましい。
【0050】
また、前記膜形成用組成物には、必要に応じて、空孔形成剤、界面活性剤、シランカップリング剤に代表されるカップリング剤等の密着促進剤、加熱により酸素ラジカルやイオウラジカルを発生するラジカル開始剤、ジスルフィド類等の触媒等の各種添加剤を添加することができる。また、前記膜形成用組成物に、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物等を添加することにより、感光性を有する表面保護膜として用いることもできる。
【0051】
上述した本発明における膜形成用組成物の成分の中で、密着促進剤を加えることにより、後述する有機膜の基板への密着性、また後述する半導体デバイスを形成するにあたり、該有機膜の上部に形成する各種膜との密着性が向上し、半導体デバイスの信頼性がより高くなる。
【0052】
密着促進剤としては、シラン系化合物、もしくはその加水分解化合物や縮合化合物、及びそれらの混合物、アルミニウム系キレート化合物、チタン系キレート化合物及びジルコニウム系キレート化合物などの金属キレート化合物、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール及びポリベンゾチアゾール等のポリベンザゾール化合物などを挙げることができる。具体的な例としては、N−メチルアミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ジフェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N−トルイルアミノエチルトリメトキシシラン、N−(ジメチルフェニル)アミノエチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、N−エチルアミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ジフェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N−トルイルアミノエチルトリエトキシシラン、N−(ジメチルフェニル)アミノエチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチルアミノエチルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピトリエトキシシラン、3−エトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−メチルアミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノエチルトリブトキシシラン、N−メチルアミノエチルトリヘキソキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルトリプロポキシシラン、N、N−ジメチルアミノエチルトリブトキシシラン、N、N−ジメチルアミノエチルトリヘキソキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、などのアミノシラン化合物;、テトラエトキシシラン及びテトラメトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びp−スチリルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物;、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、などのエポキシシラン化合物;、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などのメタクリルシラン化合物;、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、などのウレイドシラン化合物;、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、などのメルカプトシラン化合物;、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、などのイソシアネートシラン化合物;、N−(3−トリエトキシシリルプロピル−4,5−ジヒドロイミダゾール、などのイミダゾリルシラン化合物;、アルミニウムブトキシエチルアセトアセテート、などの金属キレート化合物;等が挙げられる。言うまでもないが、上記の化合物は代表例であり、本発明はこれらに何ら制限されることはない。また、これらを複数併用することもできる。これらの中で、アミノシラン化合物、ビニルシラン化合物、イミダゾリルシラン化合物及びそれらの混合物が好ましく、特にアミノシラン化合物及びアミノシラン化合物の混合系が特に好ましい。これら、密着促進剤の膜形成用組成物への添加量としては、絶縁膜形成用組成物中の重合体に対して、0.01質量%から10質量%、好ましくは、0.05質量%から5質量%、さらに好ましくは、0.1質量%から3質量%である。
【0053】
密着促進剤の使用形態としては、上述したように本発明の膜形成用組成物に添加するという手法以外に、該膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する基板を、予め上記密着促進剤で処理を行い、有機膜を形成するという手法も適用できる。その際、膜形成用組成物が、密着促進剤を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0054】
次に、有機膜について説明する。
本発明の有機膜は、前記膜形成用組成物を用いて得られるが、例えば、上記で得られた膜形成用組成物ワニスを、基板などの支持体に塗布し、これを、加熱や活性エネルギー線照射などの処理をすることで製造できる。また、上記で得られた反応溶液をそのまま、又は前記膜形成用組成物を加熱して溶解して、支持体に塗布して製造しても良い。前記加熱や活性エネルギー線照射など処理を行うことにより、重合体中に残存する不飽和結合を、架橋反応することにより、より耐熱性に優れる有機膜を提供することができる。また、本発明の重合体の製造方法により製造した重合体を、膜形成用組成物として使用しているため、金属不純物の含有量が少なく、電気特性、特に破壊電圧、リーク電流に優れる有機膜を提供することができる。
【0055】
さらに、本発明の有機膜の製造方法について、前記膜形成用組成物ワニスを用いる場合の具体例を説明すると、まず、前記膜形成用組成物ワニスを、適当な支持体、例えば、ポリエステルフィルムなどの有機基材、銅箔などの金属板、シリコンウエハやセラミック基板などの半導体基板等の基材に、塗布して塗膜を形成する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等の方法が挙げられる。その後、塗膜を乾燥し、加熱等の処理をして、溶媒除去に続いて、加熱による方法や活性エネルギー線を照射する方法、これら両方の方法を用いる方法などにより硬化させて、機械特性に優れる有機膜とすることができる。ここで言う硬化とは、上記で得られた重合体において、重合反応において未反応で残存した反応性基が反応することにより架橋構造等を形成する、あるいは該重合体同士が凝集することにより相互作用が増大する、等の現象を総称するものである。
【0056】
前記加熱による方法においては、例えば、ホットプレート等の熱板、ファーネス炉、オーブン及び減圧オーブン等により、150〜450℃で1分〜24時間程度、好ましくは200〜425℃で3分〜5時間、更に好ましく250℃〜400℃で3分〜2時間で加熱して行うことができる。前記活性エネルギー線としては、可視光、紫外光、赤外光及びレーザー光等の活性エネルギー光線、X線、電子線ならびにマイクロ波などが挙げられる。これら活性エネルギー線を照射する際には、同時に加熱を行っても、加熱と別に行ってもよい。加熱及び活性エネルギー線を照射するにあたっては、特に制限はないが、有機膜の酸化を抑制するために、雰囲気中における酸素などの酸化性ガスの濃度を1体積%以下、好ましくは100ppm以下とすることが好ましい。
【0057】
本発明の有機膜は、上記方法により、半導体基板などの基板に直接塗布して形成しても良いし、有機基材などの支持体に形成した有機膜を、該支持体より剥離することにより、ドライフィルムとして使用することもできる。
また、基板などの支持体との密着性を高めるために、基板上に密着促進剤層を形成後、その上に有機膜を形成しても良い。
【0058】
前記有機膜の用途としては、例えば、半導体用の層間絶縁膜や表面保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜、エッチング保護膜(エッチングストッパー)、接着剤等が挙げられる。これらの中でも、半導体用の層間絶縁膜及び表面保護膜、エッチング保護膜等として好適に用いられる。
【0059】
前記有機膜の厚さは、特に限定されないが、半導体用層間絶縁膜などにおいては、0.01〜20μmが好ましく、特に0.02〜10μmが好ましく、最も0.05〜0.5μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、半導体の製造プロセス適合性に優れる。
半導体用保護膜などにおいては、0.05〜70μmが好ましく、特に0.1〜50μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に半導体素子の保護特性及び加工性の両方に優れる。
【0060】
前記有機膜を、半導体用層間絶縁膜として用いる場合、例えば、前記膜形成用組成物ワニスを、シリコンウエハやセラミック基板等の所定の位置に直接塗布して塗膜を形成する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等による方法が挙げられる。その後、塗膜を乾燥し、溶媒を除去し、上記同様に加熱による方法や活性エネルギー線を照射する方法、これら両方の方法を用いる方法などにより硬化させて、層間絶縁膜とすることができる。また、予め前記膜形成用組成物を用いてドライフィルムとし、これを所定の位置に積層しても良い。
【0061】
また、前記有機膜を前記半導体用の保護膜として用いる場合も、前記半導体用層間絶縁膜同様に、膜形成用組成物ワニスを、シリコンウエハやセラミック基板等の所定の位置に直接塗布する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等の方法が挙げられる。その後、塗膜を乾燥し、溶媒を除去し、上記同様に加熱による方法や活性エネルギー線を照射する方法、これら両方の方法用いる方法などにより硬化させて、前記有機膜で構成される保護膜とすることができる。
【0062】
次に、本発明の半導体装置について、好適な実施の形態に基づいて説明する。但し、本発明はこの形態に限定されるのもではない。
図1は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
半導体装置100は、素子が形成された半導体基板1と、半導体基板1の上側(図1上側)に設けられたSiCN膜2と、SiCN膜2の上に設けられた層間絶縁膜3およびバリアメタル層6で覆われた銅配線層7を有している。本実施形態の半導体装置100は、本発明の有機膜として、層間絶縁膜3を備えている。
層間絶縁膜3には、配線すべきパターンに対応した凹部が形成されており、その凹部内には銅配線層7が設けられている。
また、層間絶縁膜3と、銅配線層7との間には、改質処理層5が設けられている。
また、層間絶縁膜3の上側(SiCN膜2と反対側面)には、ハードマスク層4が形成されている。
【0063】
上記のような半導体装置100は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、上記有機膜で説明した方法を用いて、層間絶縁膜3とハードマスク層4とで構成される絶縁膜の所定の位置に、貫通した配線溝が形成された所定形状をなす絶縁膜を形成する。
次に、前記配線溝の内面に、プラズマ処理等により、改質処理層5を形成し、さらにPVD法やCVD法等の方法により、Ta、Ti、TaN、TiN、WN等で構成されるバリアメタル層6を形成する。
さらに、電解めっき法等により、配線層となる銅配線層7を形成し、その後、CMP法により配線部以外の銅配線層およびバリアメタル層を研磨除去、平坦化することで、半導体装置100を得ることができる。
さらに配線層を積層する場合にも、基本的に上記1層目の配線形成と同様な方法により形成することができる。
【0064】
さらに具体的な層間絶縁膜3の形成方法としては、上記半導体基板1の上に、絶縁膜形成用組成物ワニスを直接塗布して形成することができるが、予め有機膜のドライフィルムを用意し、これは半導体基板1のSiCN膜2の上に積層するように形成することもできる。より具体的には、上記半導体基板1のSiCN膜2の上に、上記で得た膜形成用組成物ワニスを直接塗布して塗膜を形成し、加熱及び/又は活性エネルギー線を照射して硬化して形成することができる。ドライフィルムを用いる場合は、予め、上記で得た膜形成用組成物ワニスを用いて、基材上に樹脂層を形成して乾燥して、ドライフィルムを形成し、これを、上記半導体基板1のSiCN膜2の上に、積層して、加熱及び/又は活性エネルギー線を照射して硬化して形成することができる。なお、層間絶縁膜を形成する位置はこれに限定されない。
【0065】
また、本実施の形態では、層間絶縁膜3を用いた半導体装置100について説明したが、本発明はこれに限定されない。
本発明の半導体装置において、上述したような層間絶縁膜は、誘電特性に優れているので、配線遅延を低下することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
[1]かご構造を有する化合物の合成
(合成例1)
まず、1,3−ジメチルアダマンタンを用意し、温度計、撹拌機および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、四塩化炭素:700mL、臭素:35g(0.22mol)を入れ、撹拌しながら、用意した1,3−ジメチルアダマンタン:32.9g(0.2mol)を、少量ずつ添加した。添加中、内温は20〜30℃に保った。
添加終了後、温度が上昇しなくなってから、さらに1時間反応させた。
その後、冷水:約2000mLに注いで、粗生成物を濾別し、純水で洗い、乾燥した。
さらに粗生成物を、熱エタノールにより再結晶した。得られた再結晶物を、減圧乾燥することにより、生成物:37.4gを得た。赤外分光分析(IR分析)によりブロモ基の吸収が690〜515cm−1に見られること、質量分析による分子量が322である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタンであることが示された。
【0068】
次に、フラスコ内で、上記で得た3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタン:33.2g(103.2mmol)および1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)を攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。5%塩酸水溶液:700mlに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mlに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mlで3回洗浄することにより、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:57gを得た。質量分析による分子量が632である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0069】
次に、上記で得られた3,5,−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:39.8g(62.9mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:3.53g(5.0mmol)、トリフェニルホスフィン:6.60g(25.2mmol)、ヨウ化銅(II):4.79g(25.2mmol)、トリエチルアミン:750mlをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:37.1g(377.7mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mlを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mlを加えて分液した。有機層を水:1000mlで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mlに溶解させた。不溶物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mlを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:36.1gを得た。質量分析による分子量が701である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0070】
さらに、上記で得られた3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:32.3g(46.1mmol)と炭酸カリウム:1.46g(10.6mmol)とを、テトラヒドロフラン:600mlとメタノール:300mlとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mlに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mlで洗浄、さらにアセトン:1000mlで洗浄したのち乾燥させることにより、かご構造を有する化合物としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン:15.0gを得た。
【0071】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンであることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):413(M+)
元素分析:理論値(/%)C;93.16、H;6.84、実測値(/%)C;93.11、H;6.82
【0072】
(合成例2)
合成例1において、1,3−ジメチルアダマンタン:32.9g(0.2mol)に代えて、テトラメチルビアダマンタン:65.3g(0.2mol)を用いた以外は、前記合成例1と同様にして、生成物を得た。
【0073】
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、下記式(4)で表されるかご構造を有する化合物であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):574(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.93、H;8.07、実測値(/%)C;91.87、H;8.00
【0074】
【化5】

【0075】
(合成例3)
合成例1において、1,3−ジメチルアダマンタン:32.9g(0.2mol)に代えて、デカメチルペンタアダマンタン:162.7g(0.2mol)を用いた以外は、前記合成例1と同様にして、生成物を得た。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、下記式(5)で表されるかご構造を有する化合物であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1062(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.51、H;9.49、実測値(/%)C;90.49、H;9.47
【0076】
【化6】

【0077】
(合成例4)
合成例1において、1,3−ジメチルアダマンタン:32.9g(0.2mol)に代えて、ドデカメチルヘキサアダマンタン:195.1g(0.2mol)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様にして、生成物を得た。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、下記式(6)で表されるかご構造を有する化合物であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1223(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.28、H;9.72、実測値(/%)C;90.26、H;9.70
【0078】
【化7】

【0079】
(合成例5)
まず、5Lナスフラスコに、合成例1と同様にして得られた3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン14.3g(34.7mmol)、キノリン67.4g(522mmol)、5%パラジウム−炭酸カルシウム0.37g(0.174mmol)、テトラヒドロフラン(1000mL)及び攪拌子をそれぞれ投入し、水素気流下、室温で攪拌を開始し、水素3.35L(139mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させた。反応液を濾過した後、ろ液の溶媒を減圧除去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、生成物として3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジビニルフェニル)アダマンタン13.0g(31.0mmol;収率89%)を得た。
【0080】
以下に、生成物の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジビニルフェニル)アダマンタンであることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):420(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.37、H;8.63、実測値(/%)C;91.34、H;8.60
【0081】
(合成例6)
合成例5において、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン14.3g(34.7mmol)に代えて、合成例2と同様にして得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:19.9g(34.6mmol)を用いたこと以外は、前記合成例5と同様にして、生成物を得た。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、下記式(7)で表されるかご構造を有する化合物において、n=2の構造であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):582(M
元素分析:理論値(/%):C,90.66;H,9.34、実測値(/%):C,90.59;H,9.41
【0082】
【化8】

【0083】
(合成例7)
合成例1において、1,3−ジメチルアダマンタン:32.9g(0.2mol)に代えて、ヘキサメチルトリアダマンタン:97.8g(0.2mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサメチル−7,7’’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’:7’,1’’−トリアダマンタン:39.1gを得た。
合成例5において、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン14.3g(34.7mmol)に代えて、上記で得られた3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサメチル−7,7’’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’:7’,1’’−トリアダマンタン:25.6g(34.7mmol)を用いたこと以外は、前記合成例5と同様にして、生成物を得た。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、上記式(7)で表されるかご構造を有する化合物において、n=3の構造であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):745(M
元素分析:理論値(/%):C,90.26;H,9.74、実測値(/%):C,90.25;H,9.71
【0084】
(合成例8)
合成例1において、1,3−ジメチルアダマンタン:32.9g(0.2mol)に代えて、オクタメチルテトラアダマンタン:130.2g(0.2mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして3,3’,3’’,3’’’,5,5’,5’’,5’’’−オクタメチル−7,7’’’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’:7’,1’’:7’’,1’’’−テトラアダマンタン:49.5gを得た。
合成例5において、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン14.3g(34.7mmol)に代えて、3,3’,3’’,3’’’,5,5’,5’’,5’’’−オクタメチル−7,7’’’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’:7’,1’’:7’’,1’’’−テトラアダマンタン:36.8g(34.7mmol)を用いたこと以外は、前記合成例5と同様にして、生成物を得た。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、上記式(7)で表されるかご構造を有する化合物において、n=4の構造であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):907(M
元素分析:理論値(/%):C,90.00;H,10.00、実測値(/%):C,89.87;H,9.99
【0085】
(合成例9)
合成例5において、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン14.3g(34.7mmol)に代えて、合成例3と同様にして得られた3,3’,3’’,3’’’,3’’’’,5,5’,5’’,5’’’,5’’’’−デカメチル−7,7’’’’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’:7’,1’’:7’’,1’’’:7’’’,1’’’’−ペンタアダマンタン:36.8g(34.7mmol)を用いたこと以外は、前記合成例5と同様にして、生成物を得た。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、上記式(7)で表されるかご構造を有する化合物において、n=5の構造であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1069(M
元素分析:理論値(/%):C,89.82;H,10.18、実測値(/%):C,89.67;H,10.16
【0086】
(合成例10)
合成例5において、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン14.3g(34.7mmol)に代えて、合成例4と同様にして得られた3,3’,3’’,3’’’,3’’’’,3’’’’’,5,5’,5’’,5’’’,5’’’’,5’’’’’−ドデカメチル−7,7’’’’’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’:7’,1’’:7’’,1’’’:7’’’,1’’’’:7’’’’,1’’’’’−ヘキサアダマンタン:42.4g(34.7mmol)を用いたこと以外は、前記合成例10と同様にして、生成物を得た。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、上記式(7)で表されるかご構造を有する化合物において、n=6の構造であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1231(M
元素分析:理論値(/%):C,89.69;H,10.31、実測値(/%):C,89.67;H,10.28
【0087】
(合成例11)
まず、Journal of Organic Chemistry.,39,2987-3003(1974)に記載の合成法に従って、4,9−ジブロモジアマンタンを合成した。IR分析によりブロモ基の吸収が690〜515cm−1に見られること、質量分析による分子量が346である結果より、生成物が4,9−ジブロモジアマンタンであることが示された。
【0088】
次に、合成例1における合成中間体としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンの合成において、3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ジブロモジアマンタン:35.7g(103.1mmol)を用いた以外は、前記合成例1と同様な方法で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:56gを得た。質量分析による分子量が656である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0089】
次に、合成例1における合成中間体としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンの合成において、3,5,−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:41.2g(62.8mmol)を用いた以外は合成例1と同様な反応で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:35.5gを得た。質量分析による分子量が725である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0090】
さらに合成例1における最終生成物としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンの合成において、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン38.8g(53.5mmol)を用いた以外は合成例1と同様な反応で反応させることにより、生成物14.3gを得た。
【0091】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンであることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):436(M+)
元素分析:理論値(/%)C;93.54、H;6.46、実測値(/%)C;93.46、H;6.38
【0092】
(合成例12)
合成例11において、4,9−ジブロモジアマンタンに代えて、ジブロモペンタ(ジアマンタン)を用意したこと以外は前記合成例11と同様にして、生成物を得た。
なお、ここで得られた生成物について、外観、質量分析、及び元素分析の結果は、下記の通りであり、下記式(8)で表されるかご構造を有する化合物であることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1181(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.47、H;8.53、実測値(/%)C;91.42、H;8.50
【0093】
【化9】

【0094】
(実施例1)
1.重合体の製造
前記合成例1で得られた3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン1.13g(2.73mmol)、アゾビスイソブチロニトリル0.135g(0.822mmol)、トルエン62.4g、ドデシル硫酸ナトリウム(HLB値40)9.98g(34.6mmol)、水101gを500mLビーカーに入れ、超音波処理装置(Branson社製Sonifier450D、周波数20kHz)を用いて、50Wの出力で、氷浴中、1時間超音波処理することすることにより乳化液を調整した。この乳化液を80℃で7時間攪拌することにより乳化重合を行った。GPCによりモノマー転化率が99%以上に達していることを確認した。この溶液に食塩3.2gを加えて30分間攪拌した後、メタノール約700mLを注いだ。得られた析出物を濾別し、エタノールと水の混合溶媒(体積比1:1)200mLで洗浄した後、減圧乾燥することにより重合体の固形物0.91g(収率81%)を得た。GPCにより得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は19,000、数平均分子量(Mn)は11,800、分散比(Mw/Mn)は1.6であった。
なお、重合反応後における反応液中に分散している液滴の平均粒子径を、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子社製、ELSZ−2)により測定したところ、平均粒子径は18nmであった。
【0095】
また、上記で得られた重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散比(Mw/Mn)については、GPC装置(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)を用い、また、カラムとして、TSKgel GMHXL(ポリスチレン換算排除限界4×10(推定))×2本およびTSKgel G2000HXL(ポリスチレン換算排除限界1×10)×2本を直列接続して、検出器として、屈折率計(RI)または紫外・可視検出器(UV(254nm))を用いて測定を行い、RIまたはUVで得られた結果を解析することにより求めた。また、測定条件としては、移動相:テトラヒドロフラン、温度:40℃、流量:1.00mL/min、試料濃度:0.1wt%テトラヒドロフラン溶液とした。
【0096】
得られた重合体の金属濃度を、フレームレス原子吸光法により測定した。重合体0.2gを蒸留シクロへキサノン10mLに溶解して試料溶液を調整した。リガク社製 原子吸光光度計ZEEnit60型を用いて溶液中のPd、Fe,Co.Ni量を測定したところ、Pd(62ppb)、Fe(68ppb)、Co(3ppb)、Ni(2ppb)が検出された。上記、Pd、Fe、Co、Niを含めた全金属の濃度は142ppb(400ppb以下)であった。
【0097】
2.膜形成用組成物と有機膜の製造
上記で得た重合体1gをシクロペンタノン9gに溶解し、孔径が0.05μmのフィルターでろ過することで、塗布液(膜形成用組成物)を調整した。この塗布液をスピンコーターにより、低抵抗の4インチシリコンウェーハに塗布し、200℃のホットプレート上で1分間加熱ベークし、その後、400℃のオーブン中で30分間硬化させることにより、膜厚0.5μmの均一な有機膜を得た。
上記で得た有機膜について、膜厚は、n&kテクノロジー社製n&kアナライザー1500により測定した。
【0098】
(比較例1)
前記合成例1で合成されたかご構造を有する化合物としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン:5gを1,3−ジメトキシベンゼン:45gに溶解させ、乾燥窒素下170℃で3時間反応させた。その後、150℃で6時間反応させ、反応液を、10倍の体積のメタノール/テトラヒドロフラン=3/1の混合溶媒に滴下して沈殿物を集めて乾燥し、2.8gの重合体を得た(収率:56%)。得られた重合体:1gを用いて、前記実施例1と同様にして、塗布液を調整し、塗布、硬化の操作を行うことで、均一な有機膜を得た。
【0099】
(実施例2〜10)
かご構造を有する化合物として、合成例2〜10で合成したものをそれぞれ用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、重合体を得、さらに、当該重合体:1gを用いて、前記実施例1と同様にして、塗布液を調整し、塗布、硬化の操作を行うことで、均一な有機膜を得た。
【0100】
(実施例11)
実施例1において、かご構造を有する化合物として、合成例11で合成したものを用い、また界面活性剤として、ステアリルアミン塩酸塩(HLB値7.9)10.6g(34.6mmol)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、重合体を得、さらに、当該重合体:1gを用いて、前記実施例1と同様にして、塗布液を調整し、塗布、硬化の操作を行うことで、均一な有機膜を得た。
【0101】
(実施例12)
実施例1において、かご構造を有する化合物として、合成例12で合成したものを用い、また界面活性剤として、ラウリルアミン塩酸塩(HLB値10.7)7.67g(34.6mmol)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、重合体を得、さらに、当該重合体:1gを用いて、前記実施例1と同様にして、塗布液を調整し、塗布、硬化の操作を行うことで、均一な有機膜を得た。
【0102】
(比較例2〜12)
かご構造を有する化合物として、合成例2〜12で合成したものをそれぞれ用いた以外は、前記比較例1と同様にして重合反応を行い、重合体を得、さらに、当該重合体:1gを用いて、前記実施例1と同様にして、塗布液を調整し、塗布、硬化の操作を行うことで、均一な有機膜を得た。
【0103】
なお、各実施例および各比較例における膜形成用組成物に含まれるかご構造を有する化合物について、それぞれ、芳香環由来の炭素数、重合性反応基由来の炭素数、部分構造由来の炭素数および芳香環由来の炭素の割合を表1に示した。また、各実施例および各比較例における膜形成用組成物に含まれるかご構造を有する化合物について重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分散比(Mw/Mn)、液滴の平均粒子径、重合体の収率を表2、金属濃度を表3に示した。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
表2から明らかなように、本発明では、膜形成用組成物を構成する重合体の分散比が小さかった。また、表3から、樹脂中に含まれる金属濃度が低いことが明らかである。
これに対して、各比較例では、分散比が大きかった。また、重合体中に含まれる金属濃度は400ppb以上と多く、満足のいく結果が得られなかった。
【0108】
(有機膜についての評価)
前記各実施例および各比較例にかかる有機膜について、誘電率、破壊電圧、リーク電流および耐熱性のそれぞれの特性を、下記の評価方法により、評価を行った。
【0109】
[誘電率]
有機膜の誘電率は、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495を用いて評価した。
[破壊電圧、リーク電流]
破壊電圧、リーク電流は、誘電率と同様に、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495を用いて評価した。
破壊電圧は、1×10−2Aの電流が流れた時に印加した電圧を破壊電圧とし、電界強度(1×10−2Aの電流が流れた時に印加した電圧(MV)を膜厚(cm)で除した値。単位:MV/cm)で示した。
リーク電流は、1MV/cmの電界強度の時に流れる電流値をリーク電流とし、電流密度(1MV/cmの電界強度の時に流れる電流値(A)を、自動水銀プローブCV測定装置の水銀電極面積(cm)で除した値。単位:A/cm)で示した。
[耐熱性]
耐熱性は、熱分解温度で評価した。得られた絶縁膜をTG/DTA測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製、TG/DTA220)を用いて、窒素ガス200mL/min.フロー下、昇温速度10℃/min.の条件により測定し、重量の減少が5%に到達した温度を、熱分解温度とした。
これらの結果を表4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
表4から、本発明では、破壊電圧が高く、リーク電流も少ないことから、絶縁膜として優れた電気特性を示している。これに対し、各比較例では満足のいく結果が得られなかった。
【0112】
次に、半導体装置の性能を評価するために、配線の信号遅延の評価を行った。
(実施例13)
シリコン基板を用意し、前記シリコン基板上にCVD法により30nm厚のSiCN膜を形成し、次に、実施例1で得られた塗布液を用いて、スピンコートにより、前記SiCN膜上に、実施例1の有機膜と同様の絶縁膜塗膜を150nm厚で形成した。この絶縁膜上にハードマスク層として、CVD法により60nm厚のSiO膜を形成した。そして、配線溝形成用マスクパターンを転写するための60nm厚の反射防止膜および250nm厚のフォトレジスト膜を設け、フォトレジスト膜に対する露光・現像処理を施した。そして、ドライエッチングにより、反射防止膜、ハードマスク層、絶縁膜をエッチングした。次に、表面に残ったフォトレジスト膜および反射防止膜をアッシングで除去し、更に配線溝内の残渣物を洗浄により除去し、配線溝形成を完了させた。次に配線溝の下面および側面、そしてドライエッチングされていない平坦部上に、バリアメタル層として、PVD法によりTaN膜及びTa膜を併せて20nm厚で設けた。更に、銅シード膜をPVD法により堆積させた後、電解めっき法により、配線溝内へ銅を埋め込んだ。めっき法で成膜した余分な銅はCMPにより除去・平坦化を行った。そして、CMPにより平坦部においてTaN膜及びTa膜併せて20nm堆積させたバリアメタル層を除去・平坦化を行い、ハードマスク層が30nm厚になった時点でCMPを完了させた。CMP完了後、CVD法により30nm厚のSiCN膜を成膜し、更にその上部にCVD法によりSiO膜を500nm厚で成膜した。更にアルミニウム配線を形成して銅の1層配線の電気特性評価用サンプルを作製した。
【0113】
このサンプルを用いて、東京精密製プローバーUF−3000、アジレントテクノロジ製テスターE5270A、同じくアジレントテクノロジ製LCRメーター4284Aにより、銅配線抵抗及び配線間容量の測定を行った。配線抵抗(R)と線間容量(C)の積が、絶縁膜として、CVD成膜により形成した誘電率3.0のSiOC膜に対して何パーセント低減したかを評価した。結果は下記表5に示す。
なお、SiOC膜を使用した電気特性比較用サンプルは、前記電気特性評価用サンプル作製において、塗布液を用いて、スピンコートにより、SiCN膜上に、絶縁膜塗膜を形成する工程を、CVD法によりSiOC膜を150nm厚で形成すること以外は、前記電気特性評価用サンプル作製と同様にして、電気特性比較用サンプルを準備した。
【0114】
(実施例14−24)
実施例13と同様な方法により、実施例2−12で得られた塗布液を、それぞれ、用いて形成した絶縁膜からなる、銅1層配線の電気特性評価用サンプルを作成し、配線抵抗(R)と線間容量(C)の積が、絶縁膜として、CVD成膜により形成した誘電率3.0のSiOC膜に対して何パーセント低減したかを評価した。結果は表5に示す。
【0115】
(比較例13−24)
実施例13と同様な方法により、比較例1−12で得られた塗布液を、それぞれ、用いて形成した絶縁膜からなる、銅1層配線の電気特性評価用サンプルを作成し、配線抵抗(R)と線間容量(C)の積が、絶縁膜として、CVD成膜により形成した誘電率3.0のSiOC膜に対して何パーセント低減したかを評価した。結果は表5に示す。
【0116】
【表5】

【0117】
これらの結果より、本発明により得られる有機膜を絶縁膜として用いることにより、配線の信号遅延の評価は良好なものであった。
【符号の説明】
【0118】
1 半導体基板
2 SiCN膜
3 層間絶縁膜
4 ハードマスク層
5 改質処理層
6 バリアメタル層
7 銅配線層
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する重合性反応基Bとを有する化合物を重合して、かご型構造を有する重合体を製造する方法であって、前記かご型構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物と、界面活性剤とを水相中で超音波処理により混合する工程を含むことを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が、前記かご型構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物と、界面活性剤とを水相中で超音波処理により混合する工程によって、かご型構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物に対して疎水性部位を中心としたミセルを形成するものである請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
前記重合性反応基Bが、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
前記かご構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物において、前記芳香環由来の炭素数が、当該かご構造を含む部分構造Aと重合性反応基Bとを有する化合物全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の重合体の製造方法により得られる重合体を含む膜形成用組成物。
【請求項6】
請求項5記載の膜形成用組成物を含む有機膜。
【請求項7】
請求項6記載の有機膜を備えたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−12438(P2012−12438A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148045(P2010−148045)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】