説明

金型内で予備成形体を形成するための装置および方法

繊維予備成形体を形成する装置および方法は成形支持面上に繊維および結合材を分散し、それにより、材料が調整された後に成形支持面に対して塗布され、この成形支持面において複合材料が凝固する。繊維等の補強材料が熱可塑性材料または熱硬化性材料等の結合材と混合され、それにより、材料同士が付着する。その後、制御された所定の重量割合で粘着性混合物が支持面上に分散され、この支持面において、混合物が支持面に付着して冷却し凝固する。堆積された混合物は、繊維間に隙間を有するオープンマットになることができる。また、堆積された混合物は、完全に凝固する前に、最終的な所望の形状へと更に成形することができる。この方法によれば、溶媒の必要性およびそれに伴う問題が排除される。プロセスは、補強材料を所定位置に保持するための真空システムまたはプレナムシステムを必要としない。予備成形体は、部位や非対称形状を含む任意の形状に形成することができ、また、コンポジット成形品へと処理される間において金型内に残存することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本発明は、特にコンポジット成形品において使用するための予備成形体(preform)を形成する装置および方法、ならびに、コンポジット成形品に関する。装置および方法は、特に、高分子材料と共に使用できる構造的予備成形体の製造に関する。
【発明の背景】
【0002】
[0002]多くの用途では、金属等の従来の構造材料に代わり、高強度高分子材料が益々頻繁に使用されてきている。高分子材料は、軽量であるという利点を有するとともに、多くの場合において金属よりも安価であり耐久性がある。しかしながら、高分子材料は、強度が金属よりもかなり低い傾向がある。高分子材料が何らかの方法で補強されなければ、高分子材料は、多くの場合、金属に取って代わり得るだけの強度要件を満たさない。
【0003】
[0003]したがって、高分子複合体は、そのような強度要件を満たすように開発されてきた。これらの複合体は、通常は比較的硬質で高アスペクト比の材料であるガラス繊維等の補強材料が内部に埋め込まれる連続高分子マトリクスを有することを特徴としている。
【0004】
[0004]そのような複合体は、一般に、多くの場合に非対称である所定の形状に成形される。補強材料を複合体中に配置するため、通常、第1のステップにおいて補強材料が金型内に配置され、その後、金型を閉じた後、流体成形樹脂を導入する。成形樹脂は、繊維間の隙間を含めて金型を満たすとともに、(冷却または硬化により)固まって所望の複合体を形成する。あるいは、成形樹脂を成形前に補強繊維に対して加えることもできる。その上に樹脂を有する補強繊維は、その後、金型内に置かれ、この金型において温度および圧力が加えられる。これにより、樹脂が硬化し、所望の複合体が形成される。
【0005】
[0005]複合体の全体にわたって補強材料を均一に分配することが望ましい。さもなければ、複合体は、補強材が不足する脆弱部位を有することになってしまう。したがって、個々の繊維が複合体の全体にわたって均一に分配されるように補強材料を設けることが重要である。また、個々の繊維は、繊維の分配が乱されてしまう金型内への成形樹脂に流入に伴う流れに逆らうように所定位置に保持される必要がある。
【0006】
[0006]これらの理由により、従来、補強材は、金型の外側でマットを形成してきた。この予備成形体マットは、その後、金型内に配置され、最終的な複合物品を形成するために樹脂が含浸され、あるいは、非常に密度が低い複合物品を形成するために単に加熱されて加圧される。マットは、一般に、補強繊維を金型の内面に適合する形状に形成し且つ結合材を繊維に対して加えることにより形成される。ある場合には、熱硬化性結合材は、予め加えられた後、繊維がマットに成形された後に硬化される。
【0007】
[0007]他の方法では、熱可塑性結合材が加えられ、それにより、その後の作業において結合材を加熱して軟化させることができ、その後にマットを成形することができる。この結合材は個々の繊維同士を互いに「接着し」、それにより、結果として得られるマットは、それが更なる処理のために金型へ移動される際にその形状を保持する。また、結合材は、流体成形樹脂が金型内に導入される際に個々の繊維がその位置を保持することを助ける。ある場合には、成形樹脂の方を成形前に補強繊維に対して加えることができる。結合材および樹脂を伴う繊維が金型内に配置され、その後、金型において温度および圧力が加えられることにより、樹脂が硬化され、所望の複合体が形成される。
【0008】
[0008]従来において使用される結合材は主に3つのタイプから成り、それぞれのタイプが様々な欠点を有する。広く使用される結合材は、溶媒を伴う(溶媒によって運ばれる)高分子、すなわち液体、例えばエポキシ樹脂およびポリエステル樹脂であった。溶媒を伴う結合材は、通常、「エアー方向付け(エアー指向)」方法によりマット上へとスプレーされ、その後、マットが加熱されて溶媒が揮発され、また、必要に応じて結合材が硬化される。このことは、結合材の適用(塗布)が少なくとも2段階のプロセスであることを意味しており、これは経済的な観点から望ましくない。また、溶媒を使用すると、環境的な問題、暴露の問題、回収の問題が生じる。これらの問題を扱うと、プロセスの費用が著しくかさむ可能性がある。また、溶媒を気化させて結合材を硬化させるためにマット全体を加熱しなければならないため、その処置はエネルギ集約的である。また、硬化ステップによりプロセスが更に長くなってしまう。
【0009】
[0009]溶媒を伴う高分子結合材の使用は極めて厄介である。また、作業領域とマットがその上で形成されるスクリーンとをきれいに維持するのに伴う高いメンテナンスコストもかかる。この場合、結合材が低粘度流体であってもよい場合には、結合材が繊維の表面上の大部分にわたって流れてこれをコーティングする傾向がある。その後、このようにして形成された予備成形体から複合物品が形成される場合、結合材は、しばしば、繊維と連続高分子相との間の接着を邪魔し、それにより、最終的な複合体の物理的特性が損なわれる。
【0010】
[0010]第2の形態の結合材は粉末結合材である。これらの結合材は繊維と混合することができ、その後、その塊が予備成形体形状に成形される。そして、予備成形体が加熱されることにより、その場で結合材が硬化される。あるいは、これらの結合材をスプレーして繊維と接触させることもできる。しかしながら、エアー方向付け方法において粉末結合材に単に置き換えただけでは問題が生じる。例えば、最初にベールがスクリーンに対して加えられることによりスクリーンを通じた結合材粒子の吸込みを防止しなければ、粉末結合材を加えることはできない。この場合も同様に、これによって全体のコストが増大し、プロセスのステップが増えてしまう。空気によって運ばれる粉末もまた使用状態に応じて健康を害し、爆発の危険がある。また、粉末結合材を使用するには、結合材粒子が繊維に対して加えられた後に結合材粒子を溶かすための加熱ステップが必要となる。この加熱により、このプロセスはエネルギ集約的となる。
【0011】
[0011]第3のタイプの結合材は加熱された熱可塑性材料であり、これは溶かすことができるとともに、結合材としてスプレーすることができる。これらの材料を使用すると、その後の任意の加熱ステップが不要になる。なぜなら、幾つかの未決定の繊維に対する付着の量を達成するために結合材を加熱する必要がないからである。この方法は、「ロフティング」すなわち予備成形体の不十分な圧縮に伴う問題を有する。ロフティングは、一般に、従来において熱可塑性物質がその融点を上回る任意の無作為な温度まで加熱されるのに起因して生じるものであり、これにより、熱可塑性物質の冷却パターンおよび繊維表面に沿う広範囲にわたる移動の均一性が欠如する。そのため、熱可塑性物質を凝固することにより繊維が所定位置に設定される前に、一部の繊維が「跳ね返って」しまう可能性がある。その結果、予備成形体の全体にわたって望ましい密度勾配よりも低い密度の予備成形体が形成されてしまい、繊維同士の接着力が低下してしまう。
【0012】
[0012]本明細書で述べた問題に鑑みて、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,030,575号に開示された1つの従来の方法は、加熱された結合材を、支持面上に既に支持された繊維に対して塗布し、その間に、支持面の他方側に負圧を作用させている。この方法によれば、負圧により繊維が所定の位置に保持され、その間に、結合材がスプレー装置により高圧で塗布される。この塗布は繊維に対して圧力を加え、それにより、中実の補強構造体が形成される。塗布時、真空からの空気流を用いて、結合材は、冷えて所望の予備成形体形状へと凝固する。しかしながら、負圧を印加するには、プレナム装置の形態を成す更なる装置が必要であり、また、繊維および負圧を適切に加えるために更なる制御機能および労力が必要である。したがって、材料コストおよび作業コストが増大する。
【0013】
[0013]これらの従来技術の方法を考慮すると、溶媒を伴う結合材、粉末結合材、熱可塑性結合材の使用に伴う問題が最小限に抑えられ、あるいは解消される、予備成形体を形成するための簡単な装置および方法を提供することが望ましい。また、高い垂直な、または略垂直な表面からの予備成形体材料の垂れ下がり、落ち込み、分離が回避される装置および方法を提供することが望ましい。また、操作が簡単であり、したがって、更に自動化に繋がる低コストな方法を提供することが望ましい。より単純な成形プロセスにおいては、予備成形体を金型へ移動させる必要性を排除することができおよび/または成形面に対して負圧を作用させる必要性を排除することさえできる可能性がある。
【発明の概要】
【0014】
[0014]本発明の一態様は、高強度構造の予備成形体およびコンポジット成形品を効率的に且つ低コストで形成することができる装置および方法を提供する。
【0015】
[0015]本発明の他の態様は、更なる量の有機溶媒の使用を必要としない予備成形体および/またはコンポジット成形品を形成する装置および方法を提供する。
【0016】
[0016]本発明の更なる態様は、非対称部品または部品の一部を含む様々な形状をとることができる予備成形体および/またはコンポジット成形品を形成する装置および方法を提供する。
【0017】
[0017]本発明の更なる態様は、少ない部品を使用し、それにより、資本投入コストおよび運営上の製造コストを低減する装置および方法を提供する。
【0018】
[0018]本発明は、製造および/または制御を容易に自動化できるようになっている。
【0019】
[0019]本発明に係る方法は、補強材料を供給するステップと、結合材混合材料を供給するステップと、補強材料と結合材混合材料とを混ぜ合わせることにより、結合材材料を補強材料に対して付着させるステップと、混合物の流れを支持面に対して塗布することにより混合物を支持面に付着させるステップと、混合物を凝固させて予備成形体を形成するステップとを備える。
【0020】
[0020]特に、方法は、構造部品を形成する際に使用できる予備成形体を形成することに関し、この方法では、繊維補強材料の流れが供給され、ベンチュリ内で結合材料の流れを繊維補強材料の流れの中へ供給することにより粒子状または液状または霧状の結合材材料が補強材料に対して付着され、それにより、粘着性混合物が形成され、また、補強材料および結合材料の粘着性混合物が支持面に対して熱スプレーされ、随意的には、熱スプレーされて堆積されたばかりの粘着性混合物に対して冷却媒体を加えることにより粘着性混合物が連続的に冷却され、それにより、混合物が支持面に対して付着して凝固し予備成形体となる。
【0021】
[0021]本明細書で説明する方法およびその変形例にしたがって形成される予備成形体およびコンポジット成形品も本発明によって包含される。
【0022】
[0022]本明細書で説明する本発明を多くの態様で変更することができ、また、本発明が本明細書で説明する特定の実施形態に限定されないことは言うまでもない。本発明は、一般に、繊維および結合材料が表面に対する塗布前に組み合わされ、その後、これらの材料が前記表面で所望の形状に凝固される任意の実施形態を包含しようとするものである。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0023】
[0023]以下、図面と併せて本発明を詳細に説明する。
【0024】
[0044]以下、ボート用のモータボックス、ハッチ、デッキ、デッキ部分またはボート船体等の繊維ガラス強化製品を構成するために海洋産業において使用される予備成形体の構成を参照しながら、本発明について説明する。しかしながら、これが単なる典型的な実施形態であり、高強度構造部材が使用される様々な用途で本方法を適用できることは言うまでもない。例えば、本発明の開示された実施形態にしたがって形成される予備成形体は、自動車産業、航空機産業または建築産業において使用することができ、あるいは、電気製品等の家庭用品の構成部品として使用することもできる。また、ここでは材料の特定の例が与えられているが、任意の適当な材料を使用することができる。
【0025】
[0045]図1から分かるように、本発明に係る方法を実施するために使用される予備成形体製造アセンブリ10は、予備成形体18を形成するために予備成形材料混合物14を支持面16に対して塗布(apply)する材料アプリケータ12を有する。この出願における予備成形体という用語は、成形品であることが好ましいが必ずしも成形品である必要はない複合構造部品内で補強挿入体または構造支持体として使用される任意の構造体を網羅することを目的としている。そのような予備成形体18は、金型(モールド)内に残存した状態で使用できる。予備成形体18は、成形できるとともに、複合部品を形成するためその金型内に残存した状態で使用することができ、あるいは閉じられた金型内または開放された金型(例えばトレイまたはベース)内に配置することができる。あるいは、予備成形体18は、それに対して材料が付着され、あるいはモールドされるベース構造体として使用することができ、したがって、骨組またはトレイとしての機能を果たすことができ、また、金型ベースまたは成形型の必要性を排除できる。予備成形体18は任意の望ましい形状を成すことができる。その最も簡単な形状において、予備成形体は成形マットに似ている。
【0026】
[0046]図1の材料アプリケータ12はロボット制御されるアーム20を有しており、このアーム20は、予備成形材料混合物14を支持面16に対して供給するエンド・エフェクター22を有する。予備成形材料混合物14は、例えばスプレー、吹き付け、流し込み、射出、積層またはドレーピング等を含む任意の周知の塗布方法でエンド・エフェクター22により塗布することができる。
【0027】
[0047]図1から分かるように、支持面16は、部品形状全体または部品の一部を含む任意の面であってもよい。支持面16は、任意の平面内で方向付けられた複数の面を含むことができる。この方法は、材料を垂直面24に対して塗布するのに特に適している。図2は、例えば、ボート船体全体として形成され、成形中に独立して立っている構造ベースを成すことができる予備成形体18を示している。この場合、支持面16に対して塗布される予備成形材料混合物14は、図2Dに示されるように、熱可塑性結合材によって保持される任意の方向に向けられた細断ガラス繊維を含んでいる。
【0028】
[0048]言うまでもなく、支持面16は、繊維ガラス、金属またはセラミックを含む任意の適当な材料、特に成形型で使用できる周知の材料によって形成することができる。また、支持面は、必要に応じて前処理することもできる。例えば、付加的な成形工程を伴うことなく予備成形体を圧縮して加熱することによってのみ予備成形体18が使用される場合には、支持面16をパウダーコーティングすることが望ましい場合がある。また、単独でまたは様々に組み合わせて使用される例えばゲルコート、離型剤、剥離シェルまたはベール等、成形のために使用される表面処理を用いることもできる。無論、予備成形体18の意図する使用により、支持面16の正確な形状をかたどることができる。
【0029】
[0049]図2A〜図2Cは、本発明の実施形態に係る方法を用いて使用できる様々な支持面16を示している。支持面16は、図2Aに示されるように開口28を有する有孔板状部材26であっても良く、これによれば、塗布中に部材26の開口28を通じて空気を流すことができる。後述するように、支持面16には制御された空気流れは存在しないが、塗布中に支持面16と混合物14との間に閉じ込められた外気は開口28を通じて逃げることができ、それにより、混合物14の塗布中に更なる制御を行なうことができるとともに、よりコンパクトな予備成形体18を形成することができる。
【0030】
[0050]あるいは、支持面16は、図2Bに示されるように、硬いメッシュ30であってもよい。この実施形態において、混合物14は、メッシュ30に付着してメッシュ30と一体化することにより予備成形体を成すことができ、それにより、剛性を付与する。また、メッシュ30は、混合物14の塗布中にその開口を通じて外気を流すことができるという更なる利点を有する。メッシュ30は、繊維ガラス、プラスチック、金属、木材またはこれらの任意の組み合わせを含む任意の適当な材料であってもよい。メッシュ30は、その後に塗布される樹脂がその中へと流れて結合することができる隙間を形成することにより、その後の成形中に利益をもたらす。
【0031】
[0051]図2Cは、この方法に適した支持面16の第3のタイプを示している。この場合、支持面16は中実板32である。また、中実板面32は図1にも示されており、この図1では部品のための予備成形体が形成される。混合物14は、塗布中に板32に対して直接に付着される。このバリエーションによれば、混合物14が板32上に対して押圧されるため、コンパクトな予備成形構造を得ることができる。また、この場合、固化した混合物14は、その後の処理のために滑らかな外面を成すことができる。
【0032】
[0052]また、支持面16は、予備成形体18の最終的な望ましい形状に形成される必要はない。混合物14は粘着性または粘り気をもって塗布されるため、加えられる粘性を制御することにより、混合物14を固化前に支持面16とは異なる望ましい形状に押圧することができる。これにより、予備成形体18が支持面16の形状に制限されないため、予備成形形状の自由度を大きくすることができる。
【0033】
[0053]任意の適当な材料を使用して予備成形体18を形成することができる。補強材料は、補強としての使用に適した任意の材料であってもよい。補強材料は、比較的硬質で高アスペクト比の材料であることが好ましい。好ましい実施形態において、材料は、繊維ガラスやアラミド繊維(Kevlar商標繊維)等の細断繊維材料、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等の高分子量のポリオレフィン、炭素繊維、アクリロニトリル繊維、ポリエステル繊維、または、これらの任意の組み合わせである。材料は、チョップとして設けることができ、あるいは、塗布プロセス中または塗布プロセスの直前に切り刻むことができる。補強材が隙間を有する表面を形成し、それにより、その後に塗布される成形材料を補強材と密接に結合できるようにすることが好ましい。
【0034】
[0054]前述した様々な実施形態において、繊維補強材は、エフェクタ22による堆積のために十分にカットされ、あるいは切り刻まれることが好ましい可能性がある。しかしながら、これに代えて、あるいはこれに加えて、長繊維堆積を本発明にしたがって行なうこともできることは言うまでもない。ロボットアーム20の適切なプログラミングにより、適切なエンド・エフェクター22は、長繊維を所定のパターン(渦パターン、ループパターンまたは他のパターン)で支持面16上に堆積させることができ、あるいは、堆積中に長繊維を方向付けることにより、予備成形体およびそのような予備成形体から形成されるコンポジット成形品に対して特定の特性を与えることができる。例えば、長繊維パターンは、ボート船体用に予備成形体を形成する場合には船首から船尾に向かって配置することができ、および/または、梁を横切って横方向に(左舷から右舷に向かって)配置することができる。したがって、配置される繊維は所定のパターンで連続することができ、あるいは、エンド・エフェクター22が支持面16にわたって横切って指定されたポイントに達するときに繊維をばらばらにカットするようにチョッパをプログラミングすることができる。また、基本的には、予備成形体が金型内で製造される際に、切り刻まれた細断繊維と結合材との混合物を堆積させる状態から長繊維(繊維または繊維+結合材)を堆積させる状態等へとエンド・エフェクター22を切り換えることができるようにチョッパ装置44等のチョッパまたは図8a〜dのチョッパガンをプログラミングすることができ、したがって制御することができることは言うまでもない。
【0035】
[0055]結合材(binder)は、熱可塑性高分子および熱硬化性高分子、細胞高分子および非細胞高分子、ガラス、セラミックス、金属または多成分反応系を含む市販の粒状結合材料であってもよい。1つのタイプの適した結合材は、例えば熱可塑性エポキシ混成物である。結合材は、溶媒等の揮発性有機物がかなりの量で存在しないように、使用中に広く行き渡る大気温度で真性固体または過冷却液体であることが好ましい。これにより、溶媒に付随する環境問題を回避することができる。また、結合材は、硬化させるための後加熱処理を必要としない材料であることが好ましく、このようにすれば、所要時間および必要なエネルギが減少される。特定の材料は、任意の周知の結合材であっても良く、調整することができおよび/または重大な分解を伴うことなく溶かすことができ、冷却時に補強材料に対して付着することができ、成形における特有の温度範囲で耐久性がある結合材であることが好ましい。結合材は、ゴム状成分を含むように作成することができ、あるいは、予備成形体および予備成形体から成るコンポジット成形品に対して強靭性を与えるゴム状結合材であってもよい。また、ゴム状成分は、結合材とは別個におよび/または繊維とは別個に加えられてもよい。適したゴム状成分は、好ましくは適切に寸法付けられた微粒子として例えばニトリル、ウレタン、または、熱可塑性物質を含んでいる。単一の高分子結合材を使用することもできるが、堆積される材料が高く延びる垂直面または高く延びる略垂直面上にうまく付着する必要がある場合には、混合物であることが好ましい。これは、特に冷却媒体のカーテンが堆積材料(繊維および結合材混合物)を通過する際に付着力が高まるからである。前述した様々な実施形態において、結合材は、結合材の混合物または化合物であることが有益である。市販のポリエステルタイプの結合材、例えばグレード044−8015(Cook Composites and Polymers)等のStypole(登録商標)のポリエステルは、バーナから加熱領域で熱が加えられると粘着性を持つようになり、表面に対する良好な初期付着性を示すことができる。エポキシおよびポリエステル結合材料の混合物等の混合結合材は、急速に粘着性を持つことができるようになり、表面上に堆積された後に冷却媒体に晒されると、驚くべきことに、比較的急速に凝結して、硬くなり、剛性を持つようになり、堆積材料として繊維/結合材混合物が垂直または略垂直な表面上に塗布される際に繊維を所定位置に維持することができる。典型的な結合材混合物は、比較的高い分子量と約75〜80Cの軟化点とを持つエポキシ系の熱可塑性粒状粉(50〜100メッシュ,<35%粒度)を適当なポリエステルを用いて含むとともに、あるいは、これに加えて、約90〜95Cの高い軟化点を持つ低分子量の微粉エポキシ(50〜100メッシュ,<35%粒度)を有していてもよい。この場合、後者のエポキシは、前者のエポキシよりも多く溶媒中に溶けることができる。適したエポキシはDow Chemicalから市販されている。基本的には、パウダーコーティング(粉体塗装)産業において周知の反応性Tg等に基づいて、適した結合材成分の組み合わせを選択することができる。好ましい実施形態のうちの1つにおいては、ガラス繊維(カットされ、切り刻まれるなどした繊維)に対して約10wt.%の結合材が使用される。好ましい実施形態のうちの1つの更なる態様においては、10wt.%の結合材は、混成結合材として、ポリエステル:エポキシが約3:1の混合物を含んでいる。比率は、特定の用途の要件に適するように調整することができる。特定の結合材は、予備成形体の所望の特性および予備成形体の最終的な使用目的に基づいて選択することができる。予備成形体の密度は、繊維チョップの長さ、または、加えられる繊維長と結合材の量と加えられる繊維/結合材の1または複数の層との組み合わせによって、および/または、予備成形体がその後に圧縮されるか否かによって、制御することができる。
【0036】
[0056]言うまでもなく、エンド・エフェクター22が、「プリプレグ」と称されてもよい物を、成形型における成形面であってもよい表面16上に堆積させる前述した様々な実施形態もまた本発明の一部である。この実施形態において、エンド・エフェクター22によって堆積される繊維補強材および樹脂は、より多くの量の結合材を含むことができる。例えば、プリプレグタイプの実施形態において、結合材は、表面16上に堆積される材料の最大で約20〜30%あるいは更に最大で40%の範囲の量であってもよい。繊維補強材は、ほぼ残りの部分を構成することができるが、特定の最終用途のための堆積時にロフトの高い状態で堆積されることが好ましい。このような高ロフトは、カットされ、あるいは切り刻まれた更に長い繊維長を使用することにより、あるいは、長さが長い繊維補強材を高い割合で使用することにより得ることができる。
【0037】
[0057]基本的に、これらの実施形態および他の実施形態においては、他の材料をエンド・エフェクター22中に導入して支持面16に対して塗布することもできる。例えば、補強材流れ、結合材流れ、あるいは、別個の流れの中に粉末金属、カーボンパウダーあるいは導電性高分子を含ませることにより、所定の導電率を有する予備成形体を形成することができる。予備成形体の形成時には例えば難燃性材料を加えることもできる。表面16に塗布される混合物中に更なる任意の材料を組み入れることもできる。無論、必要に応じて、エンド・エフェクター22によって供給される繊維/結合材混合物とは別個に他の材料を表面16(例えば金型に設けられた面)に対して塗布することができる。
【0038】
[0058]典型的なタイプの適したエンド・エフェクター22が図3および図4に示されている。エンド・エフェクター22は、本方法および本明細書で説明したその変形例にしたがって材料を供給することができる任意の部材である。エンド・エフェクター22は、ロボットアーム20によって支持されることが好ましいが、手で支持することもでき、あるいは別の方法で支持できることは言うまでもない。この方法では二重加熱部材構造が使用される。図3に示されるように、平衡分割供給ヘッダ33は、2つのバーナ34,36に対して好ましくは天然ガスを供給する。平衡ヘッダ33は、バーナ34,36に対する共通な供給を可能にしてガス混合物供給および製造過程の入口圧状態の均一性および衡平性を維持できるように、メインヘッダを分割する。図示しないが、エンド・エフェクター22は、それが表面16を横切って通過する際に空気や引火しにくいガス等の冷却媒体のカーテンを表面16上に堆積された材料14に対して供給することができるマニホールド(時として、カーテン生成・方向付け装置と称される)を有することが好ましい。
【0039】
[0059]各バーナ34,36は、プログラム駆動の点火または手動による遠隔制御が可能なバーナ点火部材38,40をそれぞれ有する。本明細書で説明した他のバーナも同様に点火して制御することができる。後述するように、二重バーナ構造は、バーナ34,36によって発せられた炎の中に加熱エンベロープまたは加熱領域42を形成する。
【0040】
[0060]好ましくは、バーナ34(36)は、例えば、バーナの線インチ毎に約10000BTUの呼び容量をもって、制御された可変の均一な温度プロファイルを与える。バーナ34(36)は、火炎混合の質および酸素含有量を連続的に監視して修正するセンサを有する供給ガス混合制御キャビネットを含むことができる。したがって、火炎の質を所定の限界内で制御することができる。特定のパラメータを超えるとき、あるいは、危険な混合状態が生じる場合には、自動で駆動を停止することができる。天然ガスの使用は、コストおよび効率の点から好ましいが、任意の燃料を使用することができる。低圧の火炎または原理的にはホット空気流も使用できる。例えば、火炎速度は約1000フィート/分であってもよい。無論、加熱領域42の望ましいサイズおよび形状に応じて、任意の数のバーナまたは他の適当な加熱源を使用することができる。
【0041】
[0061]補強材料は材料チョッピング装置44によって供給される。チョッピング装置44は、切り刻まれる材料のタイプに応じて変えることができる。制御プログラム要件またはプロセスモニタリングからのプロセスセンサ信号および制御システム信号に基づいてプロセスの開始、停止、実行中におけるパラメータ調整を行なえるように、チョッピング装置44はプロセス制御システムと完全に一体化されていてもよい。また、チョッピング装置44は、手動制御されても良く、あるいは、オペレータ入力によって変えられてもよい。また、必要に応じて、予め細断された材料または他の微粒子材料を使用することもできる。ここでのこの実施形態または他の実施形態において、チョッピングガン等のチョッピング装置は、複数の長さの細断繊維補強材、すなわち、特定の長さの所定量の細断繊維補強材およびそれよりも長いまたは短い長さの他の量の細断繊維補強材を供給することができる。
【0042】
[0062]細断材料46は材料成形チューブ48を通じて供給される。「チョップ」とも呼ばれる細断材料46は、チューブ48から吹き付け、流下させ、射出させ、あるいは、放出させることができる。チューブ48は、材料流れ中への細断材料46の導入に備えて材料を処理するための別個の制御された領域を設けるように構成されている。また、チューブは、望ましいと思われる任意の材料調整媒体のための制御された容積を与えることもできる。図3に示されるように、細断材料46は、加熱領域42に向けて材料流れ中に供給される。細断材料46の流れがチューブ48から放出される際に細断材料46の流れを形作りまたは方向付けるのを助けるため、チューブ48には空気吸入口50が設けられている。
【0043】
[0063]結合材導入ポート52,54は、流れの形態で加熱領域42に向けて結合材56を堆積させる。ポート52,54は、空気により運ばれる結合材を計量分配ユニットから材料流れ中へ導入するように構成されていることが好ましい。結合材56は、微粒子の形態を成していても良く、あるいは、前述したように細断繊維46と混ぜ合わせることができる任意の従来の形態を成していてもよい。この構成において、結合材56は、加熱領域42内に入る前に細断繊維46の流れの中へと撒き散らされる2つの流れとして与えられる。
【0044】
[0064]他のエンド・エフェクターセンブリが図5に示されている。この図5において、エンド・エフェクター60はロボットアーム20上に装着されている。この構成において、中央バーナ部材62には、1つのバーナ点火部材64とバーナ面66とが設けられている。バーナ部材62の両側には一対の補強材料チョッピング装置68,70が位置されており、これらのチョッピング装置は、供給チューブ72,74をそれぞれ介して、加熱領域42の焦点に向けて細断繊維46の流れを供給する。焦点に向けて結合材の流れを供給するため、4つの結合材導入ポートE(参照符号76,76a,78,78a)が補強材料供給チューブ72,74に隣接して設けられている。これにより、材料を混合させて粘着混合物を形成するために、補強材料46および結合材56の流れを一緒に層状に重ね合わせた状態で加熱領域42へと向かわせることができる。図示しないが、エンド・エフェクター22は、それが方向付けられ、あるいは表面16を横切って通過する際に空気や引火しにくいガス等の冷却媒体のカーテンを表面16上に堆積された材料14に対して供給することができるマニホールド(時として、カーテン生成・方向付け装置と称される)を含むことが好ましい。
【0045】
[0065]あるいは、結合材56は、補強材料46の流れの中に導入される前に、ヒータ等の調整装置により調整することができる。この場合には、加熱領域が不要となり、それにより、ガス制御キャビネットおよび制御装置、独立の計量結合材供給ユニット、バーナ供給ヘッダ、点火・バーナ部材を排除できる。そのような結合材ヒータは、材料を熱処理した後、表面にわたって空気を吹き付け、加熱された結合材粒子を射出することができる。
【0046】
[0066]動作時、加熱された結合材56と混合できる領域に補強材料46が供給される場合には、特定のエンド・エフェクターを変えることができる。混合により、材料を粘着混合物14に付着させることができる。その後、粘着混合物14は、支持面16上に堆積され、ここで固まって予備成形体18となる。様々なエンド・エフェクター装置を使用することにより、様々な特性を得ることができる。補強材料46および結合材56の異なる数の流れまたは層を使用すると、最終的な予備成形体の特性が異なる。同様に、結合材56を加熱した後に混合した場合、加熱前に混合した場合、加熱中に混合した場合とでは、予備成形体18の最終的な特性が異なる。
【0047】
[0067]図6に示されるように、他の適したエンド・エフェクター22は、略中心に配置されたポート81を有するベンチュリ80を備えており、このポートを通じて補強材、細断繊維ガラス、炭素繊維などが導入される。結合材は、ポート100を通じてベンチュリ内に供給されて、ベンチュリ80を通じて流れる補強材をコーティングすることができるとともに、この補強材と共にノズル84を通じてキャリアガスによりベンチュリ80からスプレー状に放出される。
【0048】
[0068]図6および図7に示されるように、対向するバーナ85,86は、互いに対して僅かな角度で内側に傾けられていることが好ましい。動作時、バーナ85,86からの火炎は、ノズル84から放出される結合材および補強材の流れに対して平行でないことが好ましく、これにより、結合材および補強材の流れは、それがノズルから導出される際に、バーナ85,86からの火炎によって形成される加熱領域を通過する。この加熱領域は加熱領域42(図3および図4)と同様のものである。これは図9にも示されている。
【0049】
[0069]前述したように、エンド・エフェクター22は、表面上における結合材/補強材(「堆積材料」)の一貫した堆積を行なうため、表面16から所定距離離間して動作可能に位置されている(図示せず)ことが好ましい、
【0050】
[0070]ボート船体または車体の側面など、比較的垂直な部分、垂直な部分、または、複雑な曲率あるいは円弧を有する部分を含む表面16を用いると、(結合材がコーティングされた繊維の流れからの)材料14はそのような表面に最初に付着する。しかしながら、堆積された材料14は、例えばボート船体または車両部品の部位等のそのような垂直な部分(時として、部位または領域と呼ばれる)から垂れ下がり、落ち込み、あるいは、剥がれる可能性がある。冷却カーテンは前記問題を解消することができる。平衡マニホールド88,88a(図6,7,8,9)からのエアカーテン等のガス状の冷却媒体は、エンド・エフェクター22が表面16上にわたって横切る際あるいは表面上に予め堆積された層上にわたって横切る際に、堆積された繊維/結合材混合物に対して加えられる。冷却媒体が供給されると、結合材は、更に急速に凝結され、あるいは、少なくとも更に完全に部分硬化され、これにより、堆積された材料は、表面16の垂直部分、略垂直部分または非常に複雑に湾曲された部分上で、内的な剛性、形状、位置を維持することができる。表面16の急勾配部分も、前述したような冷却カーテンによるその後の冷却により、堆積材料を有利に受ける。図6および図7に示されるように、マニホールド88,88aは、バーナ85,86からの火炎により形成される加熱領域との干渉の可能性を最小限に抑えつつ表面16への冷却媒体の方向付けを助けるガイド部材89を含んでいてもよい。また、ガイド部材89は、繊維および浮遊結合材の蓄積物がマニホールド88,88a上に堆積してこれらのマニホールドを詰まらせてしまうことを防止するのに役立つ。マニホールド、例えば冷却カーテン形成・供給装置は、必要に応じて予め冷却して調整することができるガス状の冷却媒体を供給する。ガス状の冷却媒体は、空気、または、窒素等の不活性な引火しにくいガスであってもよい。また、エアカーテンは、表面16に向かって流れる際に有利に周囲の空気をともに流れていくことができるため、加えられる冷却媒体の全体の量が増大する。マニホールド88,88aを介して供給される冷却媒体は、冷却媒体の供給または適用における比率、量、圧力、持続時間、中断等を調整するプロセス制御を受けることが好ましい。
【0051】
[0071]図7に示されるように、ベンチュリ80は、結合材を導入するためのポート100と、繊維(カットされた繊維ガラス、炭素繊維、ポリエステル繊維、アクリロニトリル繊維、アラミド繊維(Kevlar商標繊維)および/または所望の長さに細断され、あるいはカットされたHMWPE)を導入するための繊維ポート81(ここでは時として入口と称される)と、加圧キャリアガスを導入するためのポート102と、ノズル84とを含むことができる。この選択により、動作時、結合材は、ベンチュリ80の中央通路内での圧縮前に、好ましくは繊維流れのほぼ中心へと結合材注入口100を通じて供給される。ベンチュリ効果により、ベンチュリ80は、ベンチュリ80に対して動作可能に接続されたチョッパガン等の繊維源から繊維補強材を引き寄せることができ、繊維および結合材は、ベンチュリ80内で混合された後、ノズル84を通じてキャリアガスによりベンチュリ80から押し出される(放出される)。放出された材料は、金型に用意された表面であってもよい対象表面へ向かう途中で加熱領域を通過して加熱される。この実施形態において、加熱領域は、バーナ85,86から火炎が投じられる領域の周囲でファンノズル84の下流側に形成することができる。繊維/結合材から成る粘着混合物は加熱領域を通過する(図9)。現在では、別個のキャリアガス流を使用することが好ましく、このガス流はポート102を通じて導入される。しかしながら、様々なベンチュリ構成および動作が本発明の範囲内に入る。例えば、結合材は、外気または他の適当なガス等の強制キャリア媒体を用いてベンチュリ80内へポート102を介して導入することもでき、また、このキャリア媒体は、必要に応じて、ベンチュリ80におけるキャリアガスとして使用することができる。また、繊維は、空気流等のキャリア媒体によりチョッパガンまたは繊維源から繊維ポート81内へと引き出され、あるいは放出される。いずれの場合も、キャリアガスおよびその流量等は、流量調整を含むコンピュータ制御等の適切なプロセス制御を受けることが好ましい。エンド・エフェクター22は、1または複数のベンチュリ80またはベンチュリ80の他の構成を有していてもよい。ベンチュリ80は、繊維と結合材とから成る粘着化合物を表面16上に堆積させる前に加熱領域を通じて供給するための効果的で且つ効率的な手段である。
【0052】
[0072]ベンチュリ80を通じてノズル84から流出する媒体の速度は、加熱領域内42での繊維/結合材混合物(時として混合物14と称される)のドウェル時間(滞留時間)に影響を及ぼす、したがって予備成形体の品質に影響を及ぼすパラメータである。したがって、エンド・エフェクター22が作動しているときに適切なプロセス制御によりベンチュリ80を通じたガス流の速度を監視して制御することができる。すなわち、例えば、流量(流速)を手動で設定することができる。この場合、流量が測定され、加熱領域を通過する流量に基づいてドウェル時間が確定される。したがって、結合材キャリアガスを用いて結合材がベンチュリ80内に導入される場合には、結合材供給を止めることができ、結合材キャリアガスをベンチュリ80を通じて流すことができる。同様に、繊維補強材または任意の他の材料がガスを用いてベンチュリ80内に押し出される場合には、繊維および他の全ての材料の供給を止めることができ、そのキャリアガスをベンチュリ80を通じて流すことができる。ベンチュリ80を通過する全ての「キャリアガス」の速度を監視して測定することができ、それにより、加熱領域内でのドウェル時間を計算し、あるいは見積もることができるとともに、流量を手動で設定し、あるいはプロセス制御により調整することができる。加熱領域42におけるドウェル時間は、繊維/結合材混合物中の結合材に適した熱処理を規定し、それにより、繊維/結合材混合物は、金型等の表面16上に堆積される際に、望ましくない垂れ下がりや落ち込み等を伴うことなく少なくともその形状および位置を保持することができる。ドウェル時間が不十分であると、堆積材料の粘着不良が生じ、それにより予備成形体の質が低下する可能性がある。言うまでもなく、基本的には、パラメータは、適当な試運転を行なうことにより、特定のプロセスの組み合わせに関して確定されてもよい。
【0053】
[0073]図8a〜図8dは、ガイド部材89が細断ガンアセンブリに取り付けられていない図6のエンド・エフェクターを示している。図8aおよび図8bは、チョッパガンと接続して動作するエンド・エフェクター22を示しており、また、図8cおよび図8dは、エンド・エフェクター22およびチョッパガンをこれらがどのように接続できるかを示すために分離して示している。
【0054】
[0074]図9には、ロボットアーム20上のエンド・エフェクター22が示されている。この場合、ノズル84を通じて推し進められた材料の流れは、バーナ85,86からの火炎により形成される加熱領域を通過する。ファンノズル84から押し出された補強材および結合材の流れは、表面16(図示せず)上に堆積される前に、バーナからの火炎により形成される加熱領域を通過する。
【0055】
[0075]ロボットアーム20上のエンド・エフェクター22は、予め選択されたパターンで繊維/結合材を塗布(スプレー堆積等)するべく図10に示されるように制御することができる。特に、図10は、エンド・エフェクター22を有するロボットアーム20が制御されたパターンで適用されることにより第1の金型内で予備成形体が形成される状態を示している。矢印は、表面上にわたるエンド・エフェクター22の所定の横断に対応する堆積材料の典型的なパターンを示している。ロボットアームは、コンピュータプログラミング等のプロセス制御下にあることが好ましい。
【0056】
[0076]図11は、コンピュータ制御されたロボットアーム20、エンド・エフェクター22(エアカーテンを伴う)、第1の金型90のフランジ92、第1の金型90の外側周囲のスカート91を示している。この実施形態では、繊維/結合材を吹き付けて図示のようなボード船体予備成形体95を形成する前に、第1の金型90が、その成形面上にゲルコートを有していても良く、随意的にはゲルコート上にわたって配置されたバリアコートおよび/または補強層を有していてもよい。
【0057】
[0077]図12および図13は、やや過剰な材料の吹き付けにより材料がフランジ92(図示せず)を覆って突出した状態となった繊維/結合材の塗布完了後に得られる予備成形体95(図12)と、第1の金型90内で削り取られてフランジ92が明瞭になった予備成形体95a(図13)とをそれぞれ示している。図13では、第1の金型90のための支持構造の一部を示すために、保護スカート91が除去されている。
【0058】
[0078]図14は、支持構造96を有し且つ適合する第2の金型90aと開かれた関係を成す第1の金型90内における削り取られた予備成形体95aを示している。第2の金型90aは、予備成形体95aを収容できるモールドキャビティ(型穴)を画定するべく、第1の金型90と有効な成形関係を成して閉じることができ、例えばクランプ可能であり、あるいは真空シール可能であり、また、閉じられた金型のキャビティ内に樹脂を導入することができる。昇降機能を有する構台またはフレーム99は、金型90aを金型90と開放された対向関係を成す状態で支持するべく示されている。構台またはフレーム99は、金型90aを金型90へと降下させることにより、閉じられた金型を形成することができる。構台またはフレームは、特に、閉じられた金型を形成する前に金型90上にわたるその空間的な調整をより簡単に行なうことができるように金型90a用の伸縮可能(あるいは更に回転可能)なアーマチュアサポートを有していてもよいことは言うまでもない。所定位置に予備成形体95a(ボート船体)が形成された金型90はワークステーション間で移動される。支持構造96は、搬送システム98を含むことができ、あるいは搬送システム98に対して動作可能に接続することができ、それにより、1つのワークステーションで予備成形体95aが形成された後、この予備成形体を金型90内に残しつつ工場内で他のワークステーションへと搬送して例えばこの場合には金型90aに対して位置決めされるといったような他の処理を受けるための作用関係で位置決めすることができる。搬送システム98は図示のようにレールを有する。図15に示されるように、工場内の異なるワークステーション間でワークピース(金型等)を移動させるための他の適した装置を使用できることは言うまでもない。更に小さいワークピースの場合には、手で移動可能な装置により、予備成形体を有する金型を一方のワークステーションから他方のワークステーションへ搬送することもできる。基本的には、工場内で移動できるように、構台またはフレーム99をトラック上に載置し、あるいは他の適当な搬送機構に接続することもできる。搬送システムまたは搬送機構がプロセス制御されてもよいことは言うまでもない。
【0059】
[0079]図15は、第1の金型90(図示せず)の表面16および一対のロボット制御されたアーム20,20a、エンド・エフェクター22、台車(図示のローラ)を示している。各エンド・エフェクター22は、同一および/または異なる繊維/結合材混合物を堆積させることができる。できることなら、各エンド・エフェクターもプロセス制御される。ロボットアーム20,20aはそれぞれ、その対応するベース20b,20cから離れた反対側まで金型90等の表面16を横切ってその対応するエンド・エフェクター22をより簡単に延ばすことができ、それにより、金型90等の表面16の対応する対向部分に対して、特にそのような対向部分が複雑な形状部分または急勾配の部分を有する場合でも、繊維/結合材を簡単に堆積させることができる。
【0060】
[0080]言うまでもなく、予備成形体18または95aは、樹脂トランスファー成形(RTM)、VARTM(真空樹脂トランスファー成形)、圧縮成形プロセス、構造反応射出成形(S−RIM)を使用するその後の処理において、あるいは例えば真空注入プロセスにおいてコンポジット成形品を形成するために使用することができる。予備成形体から複合品を形成する際には、加熱成形工程および/またはプレス成形工程を使用することもできる。
【0061】
[0081]無論、適切な混合・加熱制御を使用できる場合には、任意の適当なエンド・エフェクター22を使用することができる。以上から分かるように、例えば加熱領域、結合材および補強材の温度、補強繊維、補強繊維が細断またはカットされる度合い、エンド・エフェクター22と支持面16との間の距離を制御することにより、様々な特性を持つ予備成形体18または95aを形成することができる。例えば、図9の場合のような材料14または繊維/結合材混合物は、当該混合物が支持面16に対して塗布される際に十分な粘着性を持ち、それにより、当該混合物が急速に凝固するように制御することができる。あるいは、支持面16に塗布(衝突)される混合物が、支持面16に対して付着できる十分な粘着性を有するが、鋳造可能でありそれにより押圧し、あるいは更に成形することができるように、混合を制御することができる。
【0062】
[0082]本明細書で説明したように、様々な要素およびパラメータの制御は、手動で行なうことができ、あるいは自動で行なうこともできる。自動の場合、システムは、周知のプログラミング技術を使用してコントローラまたはマイクロプロセッサ等の処理装置内に設けることができる。プロセス制御、特にロボット制御は、ロボット制御信号、プロセスセンサフィードバック信号、プロセス材料調整、材料選択および事前に設定された仕様によって行なうことができる。これらの概念および他の概念もコンピュータ制御等の用語の範囲内で具現化される。ロボットアーム20またはチョッパガンのためのコントローラをプログラミングするために使用できるプログラミングパッケージは市販されている。ロボットアームのためにプロセス制御を使用すると、エンド・エフェクター22を正確に方向付けるのに役立ち、それにより、材料が堆積される表面16または他の面にわたって最適な繊維濃度が得られ、形成される予備成形体同士の間の偏りおよび変動が最小限に抑えられる。
【0063】
[0083]他の箇所で言及したが、予備成形体の形成に影響を及ぼすパラメータとしては、加熱源または火炎の制御レベル、火炎、結合材およびチョッパが導入される速度、これらの要素間の比率、場合によっては金型90または90aに設けられた面であってもよい支持面16からのエンド・エフェクター22の距離を含むことができる。例えば、あまり粘り気がない混合物が望ましい場合には、高い温度まで加熱される際に粘性が小さい結合材を選択することができる。この方法により、粘着性混合物の塗布を制御することができる。また、粘着性混合物は、高速および高圧で塗布する必要もない。混合物14等の粘着性混合物は、支持面16に対して付着するため、予備成形体18または予備成形体95aにおいて様々な品質を得るように表面16(または金型90)上にわたって覆われてもよい。
【0064】
[0084]混合物14は例えば混合作業中の調整のおかげにより支持面16に対して粘着可能であるため、補強材料46を所定位置に保持する更なる方法は必ずしも必要ない。これにより、金型上にわたって任意の真空アセンブリまたはプレナムアセンブリを設ける必要がなくなる。また、低圧火炎速度が使用されるため、支持面16からの補強材料の吹き飛び、あるいは支持面16上の異なる場所への補強材料の吹き飛びの問題が存在しない。更に、混合物14を厳密に制御できるため、様々な形状および厚さの予備成形体18を得ることができる。しかしながら、本明細書で説明したように、特に表面16が例えば大きなボード船体の乾舷などの高く延びる垂直または略垂直部位であり、あるいはそのような部位を有する場合、粘着性混合物はガス状冷却ガスによる冷却を有利に受ける。
【0065】
[0085]したがって、本発明に係る装置、方法およびそれらの変形例によれば、金型等の成形面上で直接に複雑な形状を容易に成形することができ、それにより、予備成形体18または95aの形成プロセスおよび予備成形体18または95aが使用される最終的な成形プロセスが簡略化されるのが分かる。また、ワンピース(単体)の予備成形体は、ボート船体のように大きな形状を成していても、予備成形体を最初にその金型から除去することなく、予備成形体をしようして形成することができる。これにより、人件費および製造時間が減少し、その結果、強固な複合部品を得ることができる。
【0066】
[0086]前述した任意の実施形態にしたがって形成される予備成形体18または95aは、複合構造部品を形成するための成形プロセスにおいて使用することができる。例えば、予備成形体18または95aは、真空(負圧)を用いて樹脂が予備成形体18または95aに対して加えられた後に複合構造体が硬化される真空成形プロセスにおいて使用されてもよい。あるいは、予備成形体18または95aに対して樹脂等の成形材料を加える(塗布する)ことができ、その後、複合部品を形成するために熱および/または圧力を加えることができる。また、単に熱および/または圧力を予備成形体18または95aに対して加えて、混合物14を圧縮し、部品を形成することもできる。圧力としては、減圧バッグ装置内での減圧を含むこともできる。複合体の直接的な形成は、プリプレグの実施形態に特に適している。プリプレグの実施形態は、航空宇宙の用途および非民間的な用途において特定の用途を見出すことができる。
【0067】
[0087]本発明は、既存のゲルコーティングされた金型内へ直接に繊維補強材を加えて、予備成形体をその対応する金型から除去する必要なく予備成形体を形成し、それにより、最終的なコンポジット成形品を形成するコスト的に有利なプロセスを複合部品メーカーに与える。予備成形体が最終的なコンポジット成形品の所望の成形面に対応する成形面を有し得ることは言うまでもない。
【0068】
[0088]例えば、本発明にしたがって形成される予備成形体は、以下のステップを含む成形プロセスにおいて使用することができる。予備成形体が凝固された後、予備成形体はその金型内に残っており(あるいは、適切な金型内に配置されており)、樹脂等の成形材料が加えられる。必要に応じて、予備成形体が金型内に配置される前に、ゲルコート等を最初に金型内に形成することができる。金型は、開放金型であっても良く、あるいは、密閉金型であってもよい。後者の場合、金型は、通常、金型キャビティ(型穴)内への樹脂の導入前に閉じられる。その後、金型が完全に満たされた後、樹脂が硬化される。その後、物品は、金型から除去されてその状態で使用することができ、あるいは、製造プロセスに適合するように更に処理または成形することができる。成形材料の導入前に、所望の成形状態に適合させるために、予備成形体をその完全な凝固前に成形し、カットし、加熱および成形することもできる。また、成形前に構造的なベースを形成するため、別個の予備成形体を一緒に使用することもできる。
【0069】
[0089]特に、製造の実施形態においては、ボート船体、ボートデッキまたは他の複合部品を以下のようにして形成することができる。最初に、金型が用意される。第1の金型の成形面の準備は、クリーニングを含んでいても良く、また、必要に応じて、離型材のコーティングを行なうことを含んでいてもよい。用意された金型はゲルコーティングすることができる。例えば、第1の金型面によって形成される最終的な複合部品の表面が装飾的あるいは保護的なコーティングを有する必要がある場合には、用意された第1の金型の成形面に対して所謂パウダーコーティング(粉体塗装)を適用することができる。あるいは、必要に応じてそのような表面を事前に準備することもできる。予備成形体または最終的な複合体のいずれかにおいて特定の表面コーティングが必要とされない場合には、ゲルコーティングまたはパウダーコーティングが省かれてもよい。ゲルコートが適用される場合には、硬化できるようにすることが好ましい。必要に応じて、あるいは要望通りに、ゲルコート上にわたってバリアコートを適用することもできる。第1の金型が厳格な半径または複雑な曲率を持つ部位、領域または区域を有する場合には、必要に応じて、繊維素線または空気で毛羽立てられた繊維素線あるいは任意の他の補強材のストリップを前記厳格の半径または複雑な曲率において任意のコーティング(ゲルコートまたはバリア層)上にわたって含ませ、それにより、その後のプロセスステップ中における繊維ブリッジを最小限に抑えることもできる。更に長さが短い繊維をエンド・エフェクター22を用いてこれらの厳格な角部や複雑な曲率に対して適用して、繊維ブリッジを最小限に抑えることもできる。第1の金型およびその支持体(支持体が設けられている場合)が位置決めされるとともに、好ましくはエンド・エフェクター22を備える少なくとも1つのロボット制御される装置を使用して、繊維/結合材が直接に塗布されて、硬化されたゲルコート上に堆積材料のマットが形成される。ロボット制御される装置には、ベンチュリ80および冷却カーテン手段88および/または88aを有するエンド・エフェクター22が動作可能に設けられていることが好ましい。図9の場合のような繊維/結合材混合物または混合物14は、例えば図10に示されるように、堆積材料として所定のパターンにしたがって塗布することができるとともに、繊維/結合材のマット内に層を形成するように塗布することができる。マットは、繊維同士の間に開放された隙間を有することが好ましい。ロボットにより加えられる材料は、特定の予備成形体の構造を簡単且つ繰り返し可能に形成できるようにコンピュータ制御されることが好ましい。例えば、コンピュータ制御できる特徴の中には、繊維チョップ、結合材供給、スプレーパターン、層状化、火炎温度、冷却空気(冷却カーテン)、基材からの距離がある。しかしながら、エンド・エフェクター22を手動で制御することにより繊維/結合材を加えることができるが、これによりプロセスの変動を伴い、プロセスおよび最終的な複合構造における一貫性が低減する可能性があることは言うまでもない。また、言うまでもなく、1つのエンド・エフェクター22または複数のエンド・エフェクター22により様々な繊維材料を加えることによって、様々な複合的特性を持つ予備成形体の様々な層または領域を形成できることは言うまでもない。例えば、多層予備成形体においては、基本的に、異なる層は、異なる繊維補強材または異なる繊維方向を有することができる。予備成形体を形成するプロセス中に金型内に置かれていてもよい加工繊維を全体的に、あるいは部分的に置き換えるため、e−ガラス層の上端に炭素繊維層を加えることができる。無論、本発明では、炭素繊維だけ、他の繊維だけ、e−ガラス(繊維ガラス等)だけ、あるいは、これらの任意の組み合わせを加えることも考えられる。製造される複合構造に応じて、繊維/結合材が加えられる前、最中、後に、他の加工繊維を要望通りに配置しておくこともできる。特定のボート船体または他の海洋複合体を製造する際には、予備成形体が形成される際にまたはその後に、スティンガ、バルクヘッド、フローリングサポート等の更なる構造要素を第1の金型内に導入できることは言うまでもない。そのような更なる構造要素は、倉庫領域または例えば海洋モータまたは燃料タンクを内部に設置できる区画室を画定するために使用することができる。参照としてその全体の開示内容が本明細書に組み込まれる米国特許第5,664,518号に開示されているようなスティンガ、バルクヘッド、他の構造要素等を使用することもできる。無論、予備成形体形成方法は、プリガラス構造要素自体を形成できるようにもなっている。好ましくは繊維/樹脂が完全に硬化する前に、繊維補強材をもってプリガラス化され、あるいはプレフリース化されることなく、バルクヘッド、スティンガ等の更なる予備成形体構造を形成するため、クローズドセル形状の発泡体または他の構造材料を仕込んでおくこともできる。発泡体または他の構造材料は、予備成形体中の堆積材料に適合する接着材または結合材が設けられた表面を有することができる。更なる構造要素の設置が可能となるように、繊維/結合材の塗布を中断することもできる。この場合には、加えられた構造要素上にわたって堆積された層を設け、それを予備成形体の一体かつ比較的継ぎ目のない部分にするために、必要に応じて繊維/結合材の塗布を再開することができる。材料が表面上に堆積された後、特に表面が急勾配を有し、あるいは高い垂直部位を有する場合には、マニホールド88および/または88a(例えば少なくとも1つの冷却カーテン手段)を有するエンド・エフェクター22(図6および図7)は、堆積されたばかりの材料に対してガス状冷却媒体のカーテンを加えて、表面または表面上に堆積された他の介在層からの堆積繊維/結合材の垂れ下がり、落ち込み、剥がれ、あるいは他の分離を回避する。繊維/結合材の塗布が完了して硬化した後、得られた予備成形体は、必要に応じて削り取られ、第1の金型のフランジ等が必要に応じて洗浄される。好ましい実施形態において、密閉金型システムは、雌金型である第1の金型およびこの相手側の雄金型である第2の金型と共に使用される。この場合、第1および第2の金型の一方または両方を相手側に対して閉じることができ、それにより、これらの間に金型キャビティが画定される。成形プロセスに応じて、その後のステップでは、金型キャビティ内に樹脂を射出または注入することができる。ボートの製造時には、熱可塑性樹脂を含む任意の従来の樹脂を使用することができる。樹脂が硬化して、金型が開放されることにより、製造された複合体(この例では、ボート船体)が取り出される。
【0070】
[0090]また、言うまでも無く、ボート船体等の複合構造は、仕上げ外側露出船体面と、仕上げ内側露出面(デッキ、コックピット等)を有することができる。この実施形態において、一般的な手順は、前述した手順と同じであってもよいが、第2の金型が第1の金型で閉じられ且つ閉じられた金型によって画定されるキャビティ内に樹脂が導入される前に第2の金型の成形面が離型材でコーティングされ、ゲルコーティングされ、仕上げコーティングされるように変更することもできる。最終的な複合体が所望の内面を有することができるように第2の金型の輪郭を形作ることもできる。基本的には、一般的な手順は、第1の金型内の予備成形体および第2の金型内で形成された予備成形体から複合体を形成するように更に変更することができる。互いに合わせられる第1および第2の金型が閉じられると、射出され、あるいは注入された樹脂は2つの予備成形体同士を結合する。この実施形態および他の実施形態において、樹脂は、基本的には、密閉金型または開放金型の用途での使用のために発泡可能であってもよい。
【0071】
[0091]本発明に係るエンド・エフェクター22は、いわゆるゼロ射出圧力樹脂トランスファー成形(「ZIP RTM成形」)と組み合わせて使用することができる。後者の成形プロセスは、一般に、Composite Fabricationの24頁〜28頁(2003年3月)に記載されており、その全体の開示内容は参照として本明細書に組み込まれる。例えば、エンド・エフェクター22、好ましくは冷却媒体のカーテンを伴い且つ繊維および結合材を供給するためのベンチュリを使用するエンド・エフェクターは、繊維マットおよび結合材を層状に重ね合わせた繊維/結合材層を手に代わって形成するために使用される。ZIP RTM成形プロセスにおいてはフレームに対して負圧を加えることもできるが、この実施形態ではその必要もない。例えば、この実施形態において、ZIP RTM成形プロセスに係る下側金型は、開放金型に類似しているため、第1の金型として使用することができるが、更に軽量な金型が実現可能になるのが有益である。
【0072】
[0092]ゲルコーティングの代わりに表面薄層を第1の金型内で最初に形成でき、随意的に、1または複数のバリア層(中実および/または発泡状)を表面薄層の露出面上に形成でき、本発明に係るエンド・エフェクター22を使用して繊維/結合材層をバリア層上にわたって塗布することができる複合構造を形成できることは言うまでもない。残りの手順は前述したように行なうことができる。この実施形態および他の実施形態の更なる変形例においては、密閉金型内に導入される全ての樹脂または一部の樹脂が発泡可能な樹脂であってもよい。
【0073】
[0093]マニホールド88および/または88aを選択的に制御して、暖かいまたは熱いエアカーテンを必要に応じて供給できることは言うまでもない。すなわち、一方のマニホールが暖かいまたは熱いエアカーテンを供給し、他方のマニホールドが冷却エアカーテンを供給することもできる。この変形例では、各マニホールドを適切にプロセス制御することができ、それにより、選択された温度のエアカーテンを加えることができる。
【0074】
[0094]前述したように、繊維ガラス強化品を利用する海洋産業または他の産業で使用できる様々な部品を形成することができる。例えば、このプロセスにしたがって形成される予備成形体を使用して、船体の一部、ボートデッキの全体または一部、ハッチ、カバー、エンジンカバー、海洋付属品等が製造されてもよい。同様に、例えばエンジンカバー、船体の全体または一部、ハッチ等を含むこのプロセスによって形成される部品を用いて、パーソナルウォータークラフト(水上バイク)等の他の海洋船舶が製造されてもよい。また、このプロセスにしたがって形成される部品は、自動車の内外部品または車体部分を製造するために自動車産業においても使用できる。そのような部品の使用は、そのような部品が例えば保管容器や建設部品等の任意の構造物品に使用できるため車両に限定されない。
【0075】
[0096]本発明の本質が、本明細書で説明した特定の実施形態に限定されず、添付の請求項によって網羅され得る他の実施形態および変形例にまで及ぶことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一態様にしたがって予備成形体を形成するために表面上に材料を堆積させるエンド・エフェクターの概略斜視図である。
【図2】本発明の一態様にしたがって形成される予備成形体の概略斜視図である。
【図2A】本発明に係る方法と共に使用できる成形面の1つのタイプの拡大部分図である。
【図2B】本発明に係る方法と共に使用できる成形面の他のタイプの拡大部分図である。
【図2C】本発明に係る方法と共に使用できる成形面の他のタイプの拡大部分図である。
【図2D】本発明に係る方法によって形成される予備成形体の拡大部分図である。
【図3】本発明に係る方法の一実施形態と共に使用できるエンド・エフェクターの部分側面図である。
【図4】図3のエンド・エフェクターの部分斜視図である。
【図5】本発明に係る方法の一実施形態と共に使用できるエンド・エフェクターの部分側面図である。
【図6】冷却媒体のカーテンを作用させるための部材が設けられた状態を示すエンド・エフェクターの部分斜視図である。
【図7】冷却媒体のカーテンを供給するための装置およびエンド・エフェクターの部分端面図である。
【図7A】一対のベンチュリ装置の一部切り取られた断面図である。
【図8a】図6のエンド・エフェクター上に装着されたチョッパガンアセンブリの部分図である。
【図8b】図6のエンド・エフェクター上に装着されたチョッパガンアセンブリの部分図である。
【図8c】図6のエンド・エフェクターから取り外されたチョッパガンの部分図である。
【図8d】図6のエンド・エフェクターから取り外されたチョッパガンの部分図である。
【図9】加熱領域を形成するために作動中のヒータを有するエンド・エフェクター、および加熱領域を通過して流れる補強繊維および結合材の混合物を示している。
【図10】ロボット制御されるアーム上に装着され、ボート船体のための予備成形体を形成する際に使用されるエンド・エフェクターを示している。
【図11】ゲルコーティングされた金型内に繊維/結合材を加える際に使用されるエンド・エフェクターを有するロボット制御されたアームを写真で示している。
【図12】図11における繊維/結合材の塗布が完了した後に第1の金型内で得られるボート船体の予備成形体を写真で示している。
【図13】最終的なコンポジット成形品を形成するその後の製造のために予備成形体が削り取られた状態にある、第1の金型内のボート船体予備成形体を写真で示している。
【図14】コンポジット成形品を製造するために樹脂トランスファー成形を開始する前の状態であって、相手側の第2の金型が開放位置に示された、支持された第1の金型内の削り取られたボート船体予備成形体を写真で示している。
【図15】予備成形体の製造時における複数のエンド・エフェクターの使用を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内で予備成形体を作成する方法であって、前記金型はその後のコンポジット成形品に対する加工処理中において前記予備成形体が金型内に残存するように適合されており、上記方法は、
補強材料を供給し、
結合材混合材料を供給し、
前記補強材料と前記結合材混合材料とをベンチュリミキサ内で混ぜ合わせることにより、前記結合材材料を前記補強材料に付着させ、
前記混合物のストリームを前記ベンチュリミキサから加熱領域を経由して金型ツールの所定の面に対してプレナムシステムを用いることなくアプライ(apply)し、
ガス状冷却媒体のストリーム又はカーテンを前記所定面上の前記材料に対してアプライし、さらに
前記混合物を十分に凝固させて前記金型内で前記予備成形体を形成し、そこにおいて、その後のコンポジット成形品に対する加工処理中において前記予備成形体が前記金型内に残存する、
というステップを含む方法。
【請求項2】
前記混合物のストリームをアプライする前記ステップが、前記所定面に対して混合物をスプレーする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
補強材料を供給する前記ステップが、細断繊維を供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
細断繊維を供給する前記ステップが、細断繊維ガラスを供給する工程を含む、請求項3に記載に方法。
【請求項5】
前記補強材料を供給する前記ステップが、細断繊維のストリームを前記ベンチュリミキサ内へ放出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
結合材を供給する前記ステップが、結合材微粒子のストリームを前記ベンチュリミキサ内へ放出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
結合材を供給する前記ステップが、結合材と補強材料とを混合する前に結合材を調整する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
結合材を調整する前記工程が、結合材を加熱することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
補強材料と結合材とを混ぜ合わせる前記ステップが、補強材料の流れおよび結合材の流れをベンチュリミキサ内で混合させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
補強材料および結合材の混合された流れが前記ベンチュリミキサから放出され、前記混合物が、前記成形面上に複数の層を形成するように塗布される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱領域が、制御された加熱領域を形成することにより熱を加えるステップと、補強材料および結合材の混合物を加熱領域を通じて放出するステップとを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
熱を加える前記ステップが、火炎を形成する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項13】
作動して前記金型に対して移動できる状態でエンド・エフェクター(end effector)装置が設けられ、前記エンド・エフェクター装置が、熱を加えて加熱領域を形成するための部材加熱し、補強材料および混成結合材の混合物を前記加熱領域を通じて前記成形面へと放出するベンチュリと、ガス状の冷却媒体の少なくとも1つのカーテンを形成し前記成形面に対して作用させる部材とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
混合物を成形面に対して塗布する前記ステップが、少なくとも垂直に方向付けられた成形面に対して混合物を塗布する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
混合物を成形面に対して塗布する前記ステップが、混合物を中実の成形面に対して塗布する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
混合物を成形面に対して塗布する前記ステップが、外気状態の表面に対して混合物を塗布する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
混合物を成形面に対して塗布する前記ステップが、開口を有する表面に対して混合物を塗布する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
成形面に対する塗布後で且つ凝固前に混合物を成形するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
混合物を凝固させる前記ステップが、支持面の形状と一致するように混合物を冷却する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
成形可能な材料を予備成形体に対して塗布して複合体を形成するステップと、前記複合体を硬化させて部品を形成するステップとを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
部品が硬化される前に複合体に対して負圧を作用させるステップを更に備える、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
熱および圧力のうちの少なくとも一方を予備成形体に対して加えて成形部品を形成するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
熱および圧力のうちの少なくとも一方を予備成形体に対して加える前に、予備成形体に対して樹脂を加えるステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法にしたがって形成された予備成形体。
【請求項25】
構造部品を形成する際に使用される予備成形体を作成する方法であって、
繊維状補強材料のストリームを供給し、
ベンチュリ装置内で前記繊維状補強材料のストリームに結合材材料のストリームを組み合わせることによって微粒子結合材材料を補強材料に対して付着させて粘着性混合物を形成し、さらに
前記補強材料および結合材料の粘着性混合物を前記ベンチュリから加熱領域を経由して支持面に対してアプライし、任意的に(optionally)前記面上にスプレーされた材料に対してガス状冷却媒体のストリームをアプライすることによって、前記混合物を前記支持面に付着させると共に前記予備成形体へと凝固させる、
というステップを含む上記方法。
【請求項26】
前記支持面上にスプレーされた粘着性混合物上にわたって冷却エアカーテンを通過させることにより、ガス状冷却媒体の前記流れを作用させるステップを含み、前記粘着性混合物を塗布する前記ステップが、スプレーする工程を備える、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記スプレーおよび前記冷却が、前記支持面の周囲または前記支持面に対して適用されるプレナムシステムが無い状態で行なわれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
補強材料に対して結合材料を付着させる前記ステップが、熱を用いて結合材料を調整し、調整された結合材料を補強材料の流れの中へ押し進める工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記スプレーのステップが、加熱領域を形成し、この加熱領域を通じて粘着性混合物を供給する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
繊維材料の流れを供給する前記ステップが、細断繊維ガラスを吹き付ける工程を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
粘着性混合物をスプレーする前記ステップが、垂直な支持面に対して混合物をスプレーする工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
粘着性混合物をスプレーする前記ステップが、中実面に対して混合物をスプレーする工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
粘着性混合物をスプレーする前記ステップが、有孔面に対して混合物をスプレーする工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
粘着性混合物をスプレーする前記ステップが、外気状態下で支持面に対して混合物をスプレーする工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
請求項25に記載の方法にしたがって形成される予備成形体。
【請求項36】
請求項25に記載の方法にしたがって形成された予備成形体から得られる成形された複合構造。
【請求項37】
結合材と補強繊維とから成る加熱された粘着性混合物を表面に対してアプライ(apply)するための、ロボットアームへの接続に適合されたエンド・エフェクター(end effector)であって、上記エフェクターは、
フレーム支持体と、
それぞれの火炎を生成するための前記フレーム上に装着された少なくとも2つの互いに離間されたバーナであって、上記2つの火炎はバーナ間に位置する領域を加熱するように方向付けられており、
結合材と補強繊維が混合されたストリームを前記加熱された領域へと分配(dispense)して前記混合物を加熱させるためのノズル装置と、
前記各バーナに繋がっており(associated)、冷却媒体の入口が接続されているそれぞれのマニホールド、及び
前記各マニホールドとそれと繋がったバーナとの間に配置されており、冷却媒体のストリームと前記加熱された領域との間の相互作用を最小限に抑えるそれぞれのシールド部材
を含むエンド・エフェクター。
【請求項38】
ロボットアームに接続されている、請求項37に記載のエンド・エフェクター。
【請求項39】
前記少なくとも2つのバーナが、細長く、前記フレーム上に対称的に配置されとともに、互いに平行に延びて内側に傾斜している、請求項37に記載のエンド・エフェクター。
【請求項40】
前記マニホールドが、細長く、前記フレーム上に対称的に配置され、互いに平行に延びているとともに、関連するバーナの長さに沿って延びることにより冷却媒体のカーアテンを形成する、請求項39に記載のエンド・エフェクター。
【請求項41】
前記シールド部材が、細長く、前記フレーム上に対称的に配置されるとともに、互いに平行に延びている、請求項40に記載のエンド・エフェクター。
【請求項42】
前記ノズル装置が、前記2つのバーナ間で前記フレーム上に装着され且つ補強材料を受けるための入口開口をその一端に有するとともに混合された流れのためのスプレーパターン出口ノズルをその他端に有するベンチュリチューブと、液体結合材を導入するために前記ベンチュリチューブの内部へと延びる入口ポートと、キャリアガスを導入するために前記ベンチュリチューブの内部へ向かう通気孔とを含む、請求項41に記載のエンド・エフェクター。
【請求項43】
前記出口ノズルが、前記バーナの延在方向に対して平行に延びる細長い形状を有する、請求項42に記載のエンド・エフェクター。
【請求項44】
一対の前記ベンチュリチューブには、前記バーナの延在方向で軸方向に位置合わせされる対応する出力ノズルが設けられている、請求項43に記載のエンド・エフェクター。
【請求項45】
前記ノズル装置が、前記2つのバーナ間で前記フレーム上に装着され且つ補強材料を受けるための入口開口をその一端に有するとともに混合された流れのためのスプレーパターン出口ノズルをその他端に有する少なくとも1つのベンチュリチューブと、液体結合材を導入するために前記ベンチュリチューブの内部へと延びる入口ポートと、キャリアガスを導入するために前記ベンチュリチューブの内部へ向かう通気孔とを含む、請求項37に記載のエンド・エフェクター。
【請求項46】
前記少なくとも2つのバーナが、細長く、前記フレーム上に対称的に配置されとともに、互いに平行に延びて内側に傾斜しており、前記出力ノズルが、前記バーナの延在方向に対して平行に延びる細長い形状を有する、請求項45に記載のエンド・エフェクター。
【請求項47】
一対の前記ベンチュリチューブには、前記バーナの延在方向で軸方向に位置合わせされる対応する出力ノズルが設けられている、請求項46に記載のエンド・エフェクター。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−506585(P2007−506585A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528213(P2006−528213)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031387
【国際公開番号】WO2005/030462
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(592014436)ブランズウィック コーポレイション (4)
【氏名又は名称原語表記】BRUNSWICK CORPORATION
【Fターム(参考)】