説明

金属ベース基板の製造方法

【課題】金属板上に形成した低温焼結セラミック層を焼成時に平面方向に収縮しないようにしつつ、すべてのセラミック層を緻密化させることで、いずれのセラミック層にも回路パターンを問題なく形成することができるようにした、金属ベース基板の製造方法を提供する。
【解決手段】金属板4上に、低温焼結セラミック材料を含む第1のセラミック層5となる第1のセラミックグリーン層と、難焼結性セラミック材料を含む第2のセラミック層6となる第2のセラミックグリーン層とを配置し、これらを同時焼成して、金属ベース基板2を得る。第2のセラミックグリーン層は、第1のセラミックグリーン層の0.05倍以上かつ0.4倍以下の厚みとされ、焼成工程において、低温焼結セラミック材料を焼結させるとともに、低温焼結セラミック材料の一部を第2セラミックグリーン層に流動させて、第2セラミックグリーン層を緻密化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体素子などを実装しながら放熱機能をも与える金属ベース基板の製造方法に関するもので、特に、低温焼結セラミック材料を用いて構成されたセラミック層と金属板とを組み合わせた金属ベース基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属ベース基板は、比較的高い放熱機能を有しており、たとえば半導体素子のような放熱を必要とする電子部品を実装するために有利に用いられている。このような金属ベース基板において、金属板と組み合わせる基板層を構成する材料として、セラミック材料が用いられている。
【0003】
たとえば低温焼結セラミック材料は、1050℃以下の温度で焼結可能なセラミック材料である。したがって、低温焼結セラミック材料を用いて構成されたセラミック層を金属板上に形成した金属ベース基板であれば、それほど高い融点を有する金属からなる金属板を用いなくても、生の低温焼結セラミック層と金属板とを一括焼成して得ることができる。
【0004】
しかし、上述のような金属ベース基板の場合、焼成時に低温焼結セラミック層と金属板とが剥離しないようにすることが重要な課題となる。低温焼結セラミック層と金属板との間での剥離は、通常、各々の熱収縮挙動の差によって引き起こされる。
【0005】
上記の課題を解決するため、低温焼結セラミック層側を、焼成時において、平面方向へは実質的に収縮しないようにすることが考えられる。
【0006】
たとえば特表2002−505805号公報(特許文献1)では、ガラスと少量の酸化物充填剤とを含む第1のグリーンテープ層と、同一のガラスとより多量の酸化物充填剤からなる第2のグリーンテープ層とを交互に重ねることによって、x−y方向の収縮を生じさせず、かつ、金属支持基板からの剥離を生じさせずに、焼成することができることが開示されている。
【0007】
しかし、第2のグリーンテープ層は、焼成後に多孔質になる傾向にあるため、回路パターンは、特許文献1の「FIG. 9」に図示されているように、第1のグリーンテープ層同士が重なり合う界面に沿って形成されなければならない。焼成後に多孔質になる第2のグリーンテープ層上に、回路パターンを印刷すると、焼成後に第2の層に形成されるポア中の水分などによって、回路パターンに含まれる金属成分がマイグレーションを起こしてしまい、絶縁性を保ちにくいからである。
【0008】
そのため、回路パターンを形成する位置では、第1のグリーンテープ層を積層方向に少なくとも2層連続して配置しなければならず、このことが、金属ベース基板、ひいてはこれを用いて構成される電子部品装置の低背化を阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2002−505805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の目的は、金属板上に形成した低温焼結セラミック層を焼成時に平面方向には実質的に収縮しないようにしつつ、すべてのセラミック層を緻密化させることで、いずれのセラミック層にも回路パターンを問題なく形成することができ、そのため、低背化に有利な金属ベース基板の製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る金属ベース基板の製造方法は、上述した技術的課題を解決するため、金属板と、低温焼結セラミック材料を含む第1のセラミックスラリーと、低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない難焼結性セラミック材料を含む第2のセラミックスラリーとをそれぞれ準備する工程と、金属板の上に、第1のセラミックスラリーからなる第1のセラミックグリーン層および第2のセラミックスラリーからなる第2のセラミックグリーン層を配置する工程と、金属板ならびに第1および第2のセラミックグリーン層を同時焼成する工程とを備える。
【0012】
ここで、第2のセラミックグリーン層の厚みは、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.05倍以上かつ0.4倍以下とされる。
【0013】
そして、上記同時焼成する工程において、低温焼結セラミック材料を焼結させるとともに、低温焼結セラミック材料の一部を第2のセラミックグリーン層に流動させることによって、第2のセラミックグリーン層を緻密化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、第2のセラミックグリーン層は、焼成工程において、平面方向へは実質的に収縮しないため、第1のセラミックグリーン層の平面方向での収縮を抑制するように作用する。したがって、金属板の上の第1および第2のセラミックグリーン層からなる積層体部分全体の平面方向での収縮が有利に抑制され、この収縮に起因する剥離を生じさせにくくすることができる。
【0015】
また、第2のセラミックグリーン層の厚みが、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.05倍以上であるため、第2のセラミックグリーン層による焼成時の収縮抑制作用を十分に働かせることができ、その結果、収縮に起因する剥離をより生じにくくすることができる。
【0016】
また、第2のセラミックグリーン層の厚みは、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.4倍以下と薄いため、同時焼成する工程において、第1のセラミックグリーン層を緻密化させることができるばかりでなく、第1のセラミックグリーン層に含まれる低温焼結セラミック材料の一部を第2のセラミックグリーン層に十分に流動させることができ、その結果、第2のセラミックグリーン層をも緻密化させることができる。すなわち、金属ベース基板に備えるすべてのセラミック層を緻密化することができる。よって、いずれのセラミック層に接する状態であっても、面内配線導体や層間接続導体といった回路パターンを問題なく形成することができる。このことは、低背化に有利である。
【0017】
また、第2のセラミックグリーン層の存在は、焼成工程における脱脂段階において、脱脂の結果生じたガスの排出経路の確保を可能にする。そのため、特に金属板の近傍での脱脂性を良好にし、残留炭素による当該部分での剥離発生を抑制することができる。
【0018】
この発明において、第2のセラミックグリーン層の厚みが、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.06倍以上であると、上述した脱脂の結果生じたガスの排出経路の確保をより確実なものとすることができ、よって、剥離発生をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る製造方法を実施して得られた金属ベース基板を備える電子部品装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照して、まず、この発明に係る製造方法を実施して得られた金属ベース基板を備える電子部品装置の一例について説明する。
【0021】
図1に示した電子部品装置1は、金属ベース基板2と、その上に実装される半導体素子3とを備えている。
【0022】
金属ベース基板2は、金属板4と、金属板4の上に配置される第1および第2のセラミック層5および6とを備えている。この図示した実施形態では、第1のセラミック層5が金属板4に接しながら、第1のセラミック層5と第2のセラミック層6とが交互に積層され、最上層は第2のセラミック層6によって与えられている。しかしながら、第2のセラミック層6が金属板4に接していても、最上層が第1のセラミック層5によって与えられてもよい。
【0023】
第1のセラミック層5は、第2のセラミック層6より厚い。後述する製造方法の説明から明らかになるように、第1のセラミック層5は低温焼結セラミック材料の焼結体からなる。他方、第2のセラミック層6は、上記低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない難焼結性セラミック材料を含むが、焼成時において、第1のセラミック層5に含まれていた低温焼結セラミック材料の一部が第2のセラミック層6へと流動することによって、難焼結性セラミック材料が固化され、緻密化されている。
【0024】
金属ベース基板2における第1および第2のセラミック層5および6によって構成される積層体部分7には、回路パターンが形成される。図1では、いくつかの回路パターンの図示を省略しているが、半導体素子3に関連して、たとえば、いくつかの表面導体8、いくつかの層間接続導体9、およびいくつかの面内配線導体10が形成されている。また、表面導体8の特定のものと半導体素子3とは、ボンディングワイヤ11によって電気的に接続されている。
【0025】
使用状態において、半導体素子3において発生した熱は、積層体部分7を介して金属板4に伝導され、金属板4から放熱される。金属板4は、その機能を効果的に発揮させるため、たとえば銅または銀を主成分とすることが好ましい。
【0026】
このような電子部品装置1において用いられる、金属ベース基板2は、次のようにして製造される。
【0027】
まず、金属板4が用意されるとともに、低温焼結セラミック材料を含む第1のセラミックスラリーと、この低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない難焼結性セラミック材料を含む第2のセラミックスラリーとがそれぞれ用意される。
【0028】
次に、金属板4の上に、第1のセラミックスラリーからなる第1のセラミックグリーン層および第2のセラミックスラリーからなる第2のセラミックグリーン層が配置される。ここで、第1のセラミックグリーン層は第1のセラミック層5となるべきものであり、第2のセラミックグリーン層は第2のセラミック層6となるべきものである。また、前述した表面導体8、層間接続導体9および面内配線導体10が、必要に応じて、特定のセラミックグリーン層に設けられる。
【0029】
上述の工程を実施するにあたり、好ましくは、第1のセラミックスラリーをシート状に成形して得られたセラミックグリーンシート上で、第2のセラミックスラリーをシート状に成形することによって、第1のセラミックグリーン層と第2のセラミックグリーン層とが重ね合わされた複合グリーンシートを得た上で、この複合グリーンシートを金属板4上に必要枚数積層し、圧着することが行なわれる。
【0030】
なお、上記方法に代えて、第1のセラミックスラリーを成形して得られた第1のセラミックグリーンシートと、第2のセラミックスラリーを形成して得られた第2のセラミックグリーンシートとを、金属板4上で、交互に積層してもよい。あるいは、第1のセラミックグリーンシート上で、第2のセラミックグリーン層の成形と第1のセラミックグリーン層の成形とを繰り返してもよい。
【0031】
次に、金属板4ならびに第1および第2のセラミックグリーン層を同時焼成する工程が実施される。この同時焼成する工程において、第1のセラミックグリーン層に含まれている低温焼結セラミック材料は焼結する。また、この低温焼結セラミック材料の一部は、第2のセラミックグリーン層へと流動し、第2のセラミックグリーン層に含まれる難焼結性セラミック材料を固化し、第2のセラミックグリーン層を緻密化させる。
【0032】
上記第2のセラミックグリーン層は、焼成工程において、平面方向へは実質的に収縮しないため、第1のセラミックグリーン層の平面方向での収縮を抑制するように作用する。したがって、金属板4の上の第1および第2のセラミックグリーン層からなる積層体部分全体の平面方向での収縮が有利に抑制される。そのため、収縮に起因する第1または第2のセラミックグリーン層と金属板4との間での剥離を生じさせにくくすることができる。
【0033】
第2のセラミックグリーン層の厚みが、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.05倍以上であれば、第2のセラミックグリーン層による焼成時の収縮抑制作用を十分に働かせることができ、その結果、収縮に起因する第1または第2のセラミックグリーン層と金属板4との間での剥離をより生じにくくすることができる。
【0034】
この同時焼成する工程において、第1のセラミックグリーン層を緻密化させることができるばかりでなく、第1のセラミックグリーン層に含まれる低温焼結セラミック材料の一部を第2のセラミックグリーン層に十分に流動させ、その結果、第2のセラミックグリーン層をも緻密化させることを可能とするため、第2のセラミックグリーン層の厚みは、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.4倍以下と薄くされる。
【0035】
また、第2のセラミックグリーン層は、焼成工程における脱脂段階では、未だ緻密化されていないため、脱脂の結果生じたガスの排出経路を与える。そのため、第1および第2のセラミックグリーン層からなる積層体部分全体において、良好な脱脂性が確保される。特に金属板4の近傍での脱脂性についても良好なものとされるので、残留炭素による当該部分での剥離発生を抑制することができる。
【0036】
上述した良好な脱脂性のより確実な確保のためには、第2のセラミックグリーン層の厚みが、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.06倍以上であることが好ましい。
【0037】
このようにして、金属ベース基板2が得られる。この金属ベース基板2において、そこに備える積層体部分7を構成する第1および第2のセラミック層5および6のすべてが緻密化されている。よって、第1のセラミック層5のいずれ、あるいは第2のセラミック層6のいずれに接する状態であっても、面内配線導体10や層間接続導体9といった回路パターンを問題なく形成することができる。このことは、金属ベース基板2の低背化、ひいては電子部品装置1の低背化に有利である。
【0038】
次に、この発明に基づいて実施した実験例について説明する。
【0039】
[複合グリーンシートの作製]
BaCO、Al、およびSiOの各粉末を用意し、これらを混合した混合粉末を840℃の温度で120分間仮焼することによって、BaO:37.0重量%、Al:11.0重量%、およびSiO:52.0重量%の含有比率となる原料粉末を作製した。
【0040】
次に、上記原料粉末:90.0重量部、MnCO粉末:7.0重量部、Mg(OH)粉末:1.0重量部、およびTiO粉末:2.0重量部を、分散剤が添加された有機溶剤中で混合し、後に樹脂および可塑剤を添加してさらに混合して、低温焼結セラミック材料を含む第1のセラミックスラリーを得た。
【0041】
次に、第1のセラミックスラリーを脱泡した後、ドクターブレード法により、表1の「第1のセラミックグリーン層厚み」の欄に示す厚みを有する第1のセラミックグリーン層となるべきセラミックグリーンシートを作製した。
【0042】
他方、BaO、Al、SiO、MgO、B、およびLiOからなるガラス粉末とAl粉末とを、40重量部:60重量部の比率で、分散剤が添加された有機溶剤中で混合し、後に樹脂および可塑剤を添加してさらに混合して、難焼結性セラミック材料を含む第2のセラミックスラリーを得た。
【0043】
次に、第2のセラミックスラリーを脱泡した後、前述したセラミックグリーンシート上で、ドクターブレード法により、表1の「第2のセラミックグリーン層厚み」の欄に示す厚みをもってシート状に成形した。このようにして、上記セラミックグリーンシートによって与えられた第1のセラミックグリーン層と、第2のセラミックスラリーから成形された第2のセラミックグリーン層とが重ね合わされた複合グリーンシートを得た。
【0044】
なお、上記第2のセラミックスラリーを単独で成形して得られたセラミック成形体は、後述する焼成条件で焼成しても、焼結しないことが確認されている。
【0045】
[グリーン積層体の作製]
上記複合グリーンシートを10枚積層し、温度80℃、圧力150MPaの条件でプレスし、平面寸法100mm□のグリーン積層体を作製した。
【0046】
このグリーン積層体は、金属ベース基板における第1および第2のセラミック層からなる積層体部分の未焼成段階のものと同様の構成を有するが、これ単独で、後述する焼成収縮率測定のための試料として供した。
【0047】
[焼成前の金属ベース基板の作製]
金属板として、厚み0.8mmの銅板を用意し、この銅板上に、上記複合グリーンシートを10枚積層し、温度80℃、圧力150MPaの条件でプレスし、平面寸法100mm□の焼成前の金属ベース基板を得た。ここで、複合グリーンシートは、第1のセラミックグリーン層が銅板に接するように配置した。
【0048】
[焼成]
上記焼成収縮率測定用グリーン積層体および焼成前の金属ベース基板を、還元性雰囲気中、980℃の温度で180分間焼成することによって、焼成後の積層体および金属ベース基板をそれぞれ得た。
【0049】
[評価]
・焼成収縮率測定
平面寸法100mm□の焼成収縮率測定用グリーン積層体の一辺の長さ100mmから焼成後の積層体の一辺の長さを引いた値を100mmで除し、100倍した値を積層体の焼成収縮率[%]とした。
【0050】
・銅板と積層体との間での剥離度評価
焼成後の金属ベース基板の相対向する各端面から1mm内方の各位置での断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率1000倍で観察した。観察箇所は、1個の評価用試料の各端面につき30箇所、すなわち、両端面で合計60箇所とした。
【0051】
1観察視野でも、銅板と積層体部分との界面で剥離またはクラックが確認されれば、「剥離あり」と判断し、他方、剥離またはクラックが1観察視野も確認されなければ、「剥離なし」と判断した。そして、それぞれの試料について、試料数10個において、「剥離なし」となった個数を求めた。
【0052】
なお、剥離度の評価には、上記のように、厳しい条件を設定したため、「剥離あり」の場合でも、実用的に問題がない場合もあることを指摘しておく。
【0053】
・焼結性の評価
焼成後の金属ベース基板における積層体部分の断面をSEMにより観察した。観察画像を画像解析し、平面気孔率が5%以上であった場合を「焼結性悪:×」、5%未満であった場合を「焼結性良:○」とした。
【0054】
以上の評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1において、「厚み比率」に注目すると、これが0.4倍を超える試料8では、「焼結性」が「×」となっている。これは、第2のセラミックグリーン層の厚みが厚いため、第1のセラミックグリーン層に含まれる低温焼結セラミック材料の一部を第2のセラミックグリーン層に十分に流動させることができず、その結果、第2のセラミックグリーン層の緻密化が不十分であったためであると推測される。
【0057】
これに対して、「厚み比率」が0.4倍以下の試料1〜7および9〜11では、「焼結性」が「○」であり、金属ベース基板の積層体部分全体が緻密化されていることがわかる。
【0058】
また、「厚み比率」が0.05倍未満の試料1および9では、「剥離度」がすべての評価用試料で「剥離あり」となっている。これは、第2のセラミックグリーン層による収縮抑制作用を十分に働かせることができず、その結果、「焼成収縮率」が、それぞれ、「3.2%」および「3.4%」と他の試料に比べて高くなったためであると推測される。
【0059】
なお、試料2および10においても、「厚み比率」が0.05倍以上であるが、「剥離なし」が評価用試料10個中6〜7個となっている。このような「剥離度」の結果は、試料1および9の場合とは異なり、「焼成収縮率」が影響しているとは考えにくい。
【0060】
まず、試料2について注目すると、「焼成収縮率」が「0.9%」と低いにも関わらず、「剥離なし」が評価用試料10個中6個となっている。同様に、試料10についても、「焼成収縮率」が「0.8%」と低いにも関わらず、「剥離なし」が評価用試料10個中7個となっている。これらのことは、「焼成収縮率」のみが必ずしも「剥離度」に影響するものではないこと証明している。現に、「焼成収縮率」がともに「0.8%」である試料3と試料10とを比較すると、試料3ではすべての評価用試料で「剥離なし」であるのに対し、試料10では「剥離なし」が評価用試料10個中7個となっている。
【0061】
以上のような試料2および10に関する考察から、「厚み比率」が「剥離度」に影響し、「厚み比率」が低い場合、良好な脱脂性が得られず、そのために残留した炭素が、銅板と積層体部分との接合性を阻害したものと推測される。
【0062】
以上の実験例では、金属板として銅板を用いたが、銅板以外の金属板を用いた場合であっても同様の結果が得られることが確認されている。
【符号の説明】
【0063】
1 電子部品装置
2 金属ベース基板
4 金属板
5 第1のセラミック層
6 第2のセラミック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、低温焼結セラミック材料を含む第1のセラミックスラリーと、前記低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない難焼結性セラミック材料を含む第2のセラミックスラリーとをそれぞれ準備する工程と、
前記金属板の上に、前記第1のセラミックスラリーからなる第1のセラミックグリーン層および前記第2のセラミックスラリーからなる第2のセラミックグリーン層を配置する工程と、
前記金属板ならびに前記第1および第2のセラミックグリーン層を同時焼成する工程と
を備え、
前記第2のセラミックグリーン層の厚みは、前記第1のセラミックグリーン層の厚みの0.05倍以上かつ0.4倍以下であり、
前記同時焼成する工程において、前記低温焼結セラミック材料を焼結させるとともに、前記低温焼結セラミック材料の一部を前記第2のセラミックグリーン層に流動させることによって、前記第2のセラミックグリーン層を緻密化させる、
金属ベース基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2のセラミックグリーン層の厚みは、前記第1のセラミックグリーン層の厚みの0.06倍以上である、請求項1に記載の金属ベース基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207027(P2011−207027A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76685(P2010−76685)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】