金属含有IV族薄膜の形成方法及び半導体装置の製造方法並びにマイクロデバイス
【課題】金属シリサイドなどの金属とIV族元素との化合物からなる薄膜や実質的に金属膜として機能する高濃度に金属を含有する金属含有薄膜のパターンを成膜することができる金属含有IV族薄膜の形成方法及びこれを適用した半導体装置の製造方法並びにマイクロデバイスを提供する。
【解決手段】基板の表面にIV族元素からなるIV族薄膜を成膜した後、パターニングし、所定領域にIV族薄膜パターンを有する被処理体とする工程と、この被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、前記IV族薄膜パターンを空間選択的に金属含有IV族薄膜パターンとする工程とを具備する。
【解決手段】基板の表面にIV族元素からなるIV族薄膜を成膜した後、パターニングし、所定領域にIV族薄膜パターンを有する被処理体とする工程と、この被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、前記IV族薄膜パターンを空間選択的に金属含有IV族薄膜パターンとする工程とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有IV族薄膜の形成方法及び半導体装置の製造方法並びにマイクロデバイスに関し、金属含有IV族薄膜を空間制御して形成できるものであり、MIS(MOS)トランジスタの電極膜などの製造に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
MIS(Metal Insulator Semiconductor)型FET(電界効果トランジスタ)、特にMOS(Metal Oxide Semiconductor)FETの電極として金属シリサイド、特にニッケルシリサイドが用いられている。
【0003】
このようなニッケルシリサイド膜などの金属シリサイドは、シリコン膜上に金属膜を成膜し、これを高温環境下に載置することで金属をシリコン膜内に熱拡散させて形成され、例えば、ニッケルシリサイドの場合には、450℃以上で熱処理をする必要がある(特許文献1〜3等参照)。このような熱処理により、ニッケルシリサイド膜においてウェハ面内でニッケル成分の濃度分布にばらつきが生じ易いとい問題があり、デバイス製造上の欠陥や特性劣化を引き起こすことがあるという問題がある。また、熱拡散の方法では、一般的には、熱拡散後、表面に残留した金属膜を除去する必要があった。さらに、従来の熱拡散によるニッケルシリサイドの形成においてはリン(P)やホウ素(B)をドープした多結晶シリコン上にニッケル膜を形成して熱処理を行うが、PやBがニッケルシリサイドと多結晶シリコンとの界面に掃き出され、結果的にニッケルシリサイドに固溶できないPやBは多結晶シリコンの粒界やニッケルシリサイド膜の底部に掃き出されるという、いわゆる「雪かき効果」があるという問題があった。
【0004】
一方、シリサイド膜の作製方法として、金属ハロゲン化物ガスと、シリコン水素化物ガスとを独立した分子線として基板上に供給して電子線を照射してシリサイド膜を作成する方法が提案されているが(特許文献4参照)、特殊な設備を必要とし、半導体製造への適用は困難である。
【0005】
かかるプロセスでは、工程数が多いばかりでなく、まだ処理温度が高いという問題がある。ちなみに、処理温度が高ければ高い程、ドープした不純物の拡散、ゲート絶縁膜での絶縁劣化等に起因する当該MOSトランジスタの性能劣化という問題を生起する。
【0006】
また、例えば、半導体製造プロセスにおいて、金属薄膜をパターニングする場合、フォトリソグラフィー及びエッチング等により、材料毎に設定した手法及び条件により加工する必要があり、工程が煩雑であり、また、微細加工を行うのが困難であるという問題がある。さらに、金属薄膜のパターニング工程で汚染物質が発生し易く、半導体の性能劣化の原因になるという問題もあった。
【0007】
一方、従来の微結晶金属膜を製造する方法は、結晶粒に相当する粉体状の材料に高い圧力等を掛けさらに高温度に晒すことで(焼結)、固体状にするか、又は、さらにその固体状の材料を原料ターゲットにしてスパッタリング法等で薄膜を形成するなどの方法が採用される。また、薄膜をパターンニングする場合は、フォトリソグラフィーとエッチング等により、材料毎に設定した手法、条件で加工することが行われている。
【0008】
例えば、従来の積層セラミックスコンデンサー(Multi-layer Ceramic Capacitor:MLCC)は、セラミックスグリーンシート上に、内部電極層となるペースト状ニッケル粉末を印刷し、それらを積み重ねて圧着後、焼結することにより製造される(特許文献5参照)。
【0009】
しかしながら、上述した従来の方法では、材料である粉体の製造方法、さらに焼結での高温処理、およびスパッタリングによるイオン衝撃のばらつき等の原因により、結晶粒の粒径の最小は数百nm程度と限界があり、かつ、原理上、粒径のばらつきが大きい。また、薄膜をパターンニングする際は、材料毎に夫々のエッチング手法および条件を確立する必要が生じる。また、従来のMLCC製造方法では、セラミックスグリーンシート上にペースト状ニッケル粉末を印刷後、さらに焼結する必要があり、製造コストがかかるという問題もある。
【0010】
【特許文献1】特開2006−186285号公報
【特許文献2】特開2005−019705号公報
【特許文献3】特開2004−165627号公報
【特許文献4】特開平09−059013号公報
【特許文献5】特開2004−300480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、金属シリサイドなどの金属とIV族元素との化合物からなる薄膜や実質的に金属膜として機能する高濃度に金属を含有する金属含有薄膜のパターンを成膜することができる金属含有IV族薄膜の形成方法及びこれを適用した半導体装置の製造方法並びにマイクロデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成する本発明の第1の態様は、基板の表面にIV族元素からなるIV族薄膜を成膜した後、パターニングし、所定領域にIV族薄膜パターンを有する被処理体とする工程と、この被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、前記IV族薄膜パターンを空間選択的に金属含有IV族薄膜パターンとする工程とを具備することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0013】
かかる第1の態様では、IV族薄膜をパターニングし、これに金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、空間選択的にIV族薄膜パターンを金属含有IV族薄膜とすることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記金属が、ニッケル、鉄、コバルト、チタン及び亜鉛から選択される少なくとも1種であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0015】
かかる第2の態様では、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、亜鉛を含有するIV族薄膜パターンを空間選択的に形成することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族元素が、シリコン、ゲルマニウム及び炭素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0017】
かかる第3の態様では、IV族元素としてシリコン、ゲルマニウム又は炭素を含む金属IV族薄膜パターンを空間選択的に形成することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1又は第2の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記金属含有IV族薄膜パターンが、多結晶シリコン薄膜であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0019】
かかる第4の態様では、多結晶シリコン薄膜をパターニングしてIV族薄膜パターンとし、これに金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、空間選択的にIV族薄膜パターンを金属含有IV族薄膜とすることができ、比較的容易に所望のパターンの金属含有IV族薄膜を得ることができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させる際に、真空容器であるチャンバの内部にハロゲン化物を形成する金属を含む材料で形成した被エッチング部材を配設すると共に当該被エッチング部材にハロゲンを含む作用ガスをプラズマ化して得られるハロゲンラジカルを作用させることにより金属とハロゲンとの化合物である前駆体を形成する一方、前記被処理体を前記チャンバ内に収納した状態でその温度を前記被エッチング部材よりも低温に保持して前記前駆体を前記IV族薄膜パターンの表面に吸着させると共に前記ハロゲンガスのラジカルを作用させることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0021】
かかる第5の態様では、所定の処理により、IV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記金属含有IV族薄膜とする際に前記基板温度を200℃〜350℃とすることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0023】
かかる第6の態様では、基板温度が比較的低温の条件で、金属含有IV族薄膜を比較的容易に形成することができる。
【0024】
本発明の第7の態様は、第5又は6の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記金属含有IV族薄膜とする際に前記チャンバ内の残留水分の分圧を、1×10−5Torr以下とすることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0025】
かかる第7の態様では、残留水分の分圧を所定圧力以下とすることにより、金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、有効に金属含有IV族薄膜を形成することができる。
【0026】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族薄膜が、前記所定領域以外の部分に保護膜を設けた基板を500℃〜1200℃とした条件下で、前記IV族元素を含有するIV族元素含有化合物ガス中に曝すことにより形成されたものであることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0027】
かかる第8の態様では、IV族元素の薄膜を比較的容易に製造でき、これに金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、有効に金属含有IV族薄膜を形成することができる。
【0028】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族薄膜の下側には、前記金属含有IV族薄膜パターンとする際に金属の拡散を規制する置換拡散防止膜が設けられていることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0029】
かかる第9の態様では、金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、有効に金属含有IV族薄膜を形成する際に、金属が下地層まで拡散することを有効に防止することができる。
【0030】
本発明の第10の態様は、第1〜9の何れか態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族薄膜パターンが、実質的に金属とIV族元素との化合物として機能することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0031】
かかる第10の態様では、金属とIV元素との化合物としての薄膜パターンとして機能する金属含有IV族薄膜を比較的容易に形成することができる。
【0032】
本発明の第11の態様は、第1〜9の何れかの態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族薄膜パターンが、実質的に金属薄膜として機能することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0033】
かかる第11の態様では、金属薄膜パターンとして機能する金属含有IV族薄膜を比較的容易に形成することができる。
【0034】
本発明の第12の態様は、第1〜11の何れかの態様に記載する金属含有IV族薄膜の形成方法を用いて金属含有IV族薄膜パターンを形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法にある。
【0035】
かかる第12の態様では、金属含有IV族薄膜の形成方法を用いて金属含有IV族薄膜パターンを形成することにより、金属含有IV族薄膜パターンを含む半導体装置を比較的容易に製造することができる。
【0036】
本発明の第13の態様は、第12の態様に記載の半導体装置の製造方法において、前記金属含有IV族薄膜パターンをMISトランジスタのゲート電極、ソース、ドレインの少なくとも1つとして製造することを特徴とする半導体装置の製造方法にある。
【0037】
かかる第13の態様では、金属含有IV族薄膜パターンをゲート電極、ソース、ドレインの少なくとも1つとする半導体装置を比較的容易に製造することができる。
【0038】
本発明の第14の態様は、第11の態様に記載された方法で形成された金属含有IV族薄膜を含むことを特徴とするマイクロデバイスにある。
【0039】
かかる第14の態様では、実質的に金属として機能する金属含有IV族薄膜を用いてマイクロデバイスとすることができる。
【0040】
本発明の第15の態様は、第14の態様に記載のマイクロデバイスにおいて、前記金属含有IV族薄膜を磁性薄膜としたインダクタであることを特徴とするマイクロデバイスにある。
【0041】
かかる第15の態様では、実質的に金属として機能する金属含有IV族薄膜を磁性薄膜とするマイクロインダクタが実現される。
【0042】
本発明の第16の態様は、第14の態様に記載のマイクロデバイスにおいて、前記金属含有IV族薄膜を電極としたキャパシタ又はバリスタであることを特徴とするマイクロデバイスにある。
【0043】
かかる第16の態様では、実質的に金属として機能する金属含有IV族薄膜を電極としたキャパシタ又はバリスタが実現される。
【0044】
かかる本発明によれば、金属シリサイドなどの金属とIV族元素との化合物からなる薄膜や実質的に金属膜として機能する高濃度に金属を含有する金属含有薄膜のパターンを比較的容易に形成することができ、これを適用した半導体装置を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明は、本発明者等によって開発された、金属をハロゲン化して再び還元し堆積させる技術(以下、MCR−CVD法(塩化還元気相成長法)という。)を応用したものである。よって、MCR−CVD法を最初に簡単に説明する。
【0046】
かかるMCR−CVD法では、まず、金属(M)製の被エッチング部材が備えられたチャンバ内にハロゲンを含む作用ガスを供給し、誘導プラズマを発生させてハロゲンガスプラズマを発生させ、ハロゲンラジカルを生成する。その後、ハロゲンラジカルで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分とハロゲンガス成分との前駆体を生成し、被エッチング部材よりも低い温度の基板上において、前駆体をハロゲンラジカルにより還元し、金属成分を基板表面に吸着させる方法である。
【0047】
かかる一連の反応はハロゲンを塩素とした場合、次式の様に表される。
(1)プラズマの解離反応;Cl2→2Cl*
(2)エッチング反応;M+Cl*→MCl(g)
(3)基板への吸着反応;MCl(g)→MCl(ad)
(4)成膜反応;MCl(ad)+Cl*→M+Cl2↑
式中のCl*は塩素ラジカル、(g)はガス状態、(ad)は吸着状態を示す。金属Mにはハロゲン化物を作る物質(銅など)が使用される。
【0048】
かかる、MCR−CVD法を応用した本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施の形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0049】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係るニッケルシリサイドを含有する薄膜パターンの製造方法を実現する装置(MCR−CVD装置)の概略を示す正面図である。本形態に係る方法の説明に先立ち、この装置について説明しておく。
【0050】
図1に示すように、例えば石英を材料として円筒状に形成されたチャンバ1の底部近傍には支持台2が設けられ、支持台2には石英で形成した被処理部材3が載置されている。この被処理部材3としては、図2(a)、(b)に示すように、シリコン基板31の表面に形成された酸化シリコン膜(二酸化シリコン膜)32上に形成した多結晶シリコン膜33を、所望パターンにパターニングしたシリコンパターン34を有するものを用いる。
【0051】
支持台2にはヒータ4及び冷媒流通手段5を備えた温度制御手段6が設けられている。ここで、支持台2は温度制御手段6により所定温度(例えば、被処理部材3が200℃乃至400℃に維持される温度)に制御される。
【0052】
チャンバ1の上面は開口部とされ、開口部は絶縁材料製の板状の天井板7によって塞がれている。天井板7の上方にはチャンバ1の内部をプラズマ化するためのプラズマアンテナ8が設けられ、プラズマアンテナ8は天井板7の面と平行な平面リング状に形成されている。プラズマアンテナ8には整合器9及び電源10が接続されて高周波電流が供給される。これら、プラズマアンテナ8、整合器9及び電源10により誘導プラズマを発生させるプラズマ発生手段が構成されている。
【0053】
チャンバ1にはニッケルを含む材料で形成した被エッチング部材11が保持され、この被エッチング部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れに対して被処理部材3と天井板7との間に不連続状態で配置されている。例えば、被エッチング部材11は、棒状の突起部12とリング部13とからなり、突起部12がチャンバ1の中心側に延びるようにリング部13が設けられている。これにより、被エッチング部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れ方向である周方向に対して構造的に不連続な状態とされている。
【0054】
なお、プラズマアンテナ8の電気の流れに対して不連続状態にする構成としては、被エッチング部材11を格子状に形成したり、網目状に形成したりする等の態様が考えられる。
【0055】
被エッチング部材11の上方におけるチャンバ1の筒部の周囲にはチャンバ1の内部にハロゲンである塩素を含有する作用ガス(Cl2ガス)21を供給するノズル14が周方向に等間隔で複数(例えば8箇所:図には2箇所を示してある)接続されている。ノズル14には流量及び圧力が制御される流量制御器15を介してCl2ガス21が送られる。流量制御器15によりチャンバ1内に供給されるCl2ガス21の量を制御することで、チャンバ1内のガスプラズマ密度を制御している。
【0056】
なお、反応に関与しないガス等は排気口18から排気され、天井板7によって塞がれたチャンバ1の内部は真空装置19によって真空引きすることにより所定の真空度に維持される。
【0057】
ここで、作用ガスに含有されるハロゲンとしては、フッ素、臭素及びヨウ素等を適用することが可能である。本形態ではハロゲンとして安価なCl2ガスを用いたことによりランニングコストの低減を図ることができる。
【0058】
かかる装置を使用して、被処理部材3を処理すると、酸化シリコン膜32上に形成されているシリコンパターン34が、図2(c)に示すように、ニッケルシリサイドを含有する金属含有薄膜35となる。
【0059】
以下、このような金属含有薄膜35の形成プロセスについて説明する。
【0060】
まず、ノズル14からCl2ガス21をチャンバ1内に供給するとともに、プラズマアンテナ8から高周波電磁波をチャンバ1内に入射することで、Cl2ガス21をイオン化してCl2ガスプラズマ23を発生させ、Clラジカルを生成する。
【0061】
ここで、ガスプラズマ23が被エッチング部材11に作用することにより、被エッチング部材11を加熱すると共に、被エッチング部材11にエッチング反応を生じさせる。このエッチング反応により被エッチング部材11の材料であるニッケルと塩素との化合物であるガス状の前駆体24(NimCln:m,nは1以上の整数)が形成される。そして、前駆体24は、前記被エッチング部材11よりも低温部となっている被処理部材3の表面に向かって輸送される。また、被処理部材3に対しては、前駆体24と共にClラジカルが輸送される。
【0062】
ここで、本実施形態では、シリコン基板31の表面(実際には酸化シリコン膜32の表面)上にはシリコンパターン34が予め形成されており、この上へ前駆体24とClラジカルとが輸送されることで、シリコンパターン34に対して空間選択的にNi成分が置換拡散すると考えられる。具体的には、シリコン基板31の表面に対してClラジカルと前駆体24とが輸送されると、シリコン基板31の表面近傍においてシリコンパターン34のみに空間選択的にClラジカルと前駆体24が作用してSi成分がNi成分に置換されながら、Ni成分がシリコンパターン34内に置換拡散しつつ塩素成分が離脱する還元反応が生じ、ニッケルシリサイドが生成する。この処理により、ニッケルシリサイドの生成は、酸化シリコン膜32の位置で停止され、結果的に、酸化シリコン膜32上に所定のニッケル濃度分布を有す金属含有薄膜35が形成される。なお、反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口から排気される。
【0063】
シリコンパターン34としては多結晶シリコン膜乃至単結晶シリコン膜の何れの膜も用いることはできるが、多結晶シリコン膜の方がより望ましい。単結晶シリコンに較べ、粒界が多い分、塩素ラジカルがシリコンパターン34内に侵入し易く、シリサイド化が容易且つ良好に行なわれ、Ni2Si、Ni3Si、Ni5Si2などを含むニッケルシリサイド膜を比較的容易に形成することができるからである。また、多結晶シリコン膜は、フォトリソグラフィー及びエッチングなどの公知の手法により、金属膜のパターニングなどと比較して比較的容易にパターニングすることができるという利点がある。
【0064】
IV族薄膜の一例である多結晶シリコン膜33(図2(a)参照)は、例えば、公知のCVD法などにより成膜できる。一般的には、IV族薄膜は、基板を500℃〜1200℃にした後、IV族元素を含有するIV族元素含有化合物ガス中に曝すことにより容易に形成できる。例えば、多結晶シリコン膜33は、シリコン基板31を約600℃に保持し、原料ガスとして、100mTorrの下、20%SiH4(N2希釈)などに晒すことにより、成膜できる。また、多結晶シリコン膜33は、例えば、フォトリソグラフィーと、例えば、CF4/O2ガスによるドライエッチングにより容易にパターニングして、シリコンパターン34とすることができる。
【0065】
また、シリコンパターン34は、成膜後パターニングにより形成するほか、所望パターン以外の領域をレジストなどの保護膜で保護した後、CVD法などでシリコンパターン34を成膜してもよい。
【0066】
何れにしても、所望パターン形状のシリコンパターン34を有するものであれば、シリコンパターン34の領域のみに空間選択的にニッケル成分が置換拡散され、ニッケルシリサイドを含む金属含有薄膜35が形成できる。
【0067】
ここで、空間選択的とは、シリコンパターン34の領域のみにニッケル成分が空間選択的に置換拡散されて、その周囲の領域にはニッケルが作用しない状態をいう。すなわち、金属含有薄膜35は、セルフアライメントされた状態でシリコンパターン34の領域に形成され、その周囲の領域には形成されない。なお、シリコンパターン34の周囲は、シリコン以外であれば特に限定されないが、酸化膜であるのが好ましく、酸化シリコン膜であるのが好ましい。
【0068】
また、シリコンパターン34の下地がシリコン基板の場合には、条件によってはニッケルがシリコン基板まで置換拡散するが、下地が酸化シリコン膜32であるので、置換拡散防止膜として作用し、ニッケル成分の置換拡散は酸化シリコン膜32で停止される。よって、シリコンパターン34を金属含有薄膜35とする際には、下地として金属の置換拡散を規制する置換拡散防止膜を設けるのが好ましく、この場合には、酸化シリコン膜32が置換拡散防止膜として作用する。
【0069】
なお、従来技術で示した熱拡散により形成されたニッケルシリサイド膜の形成では、例えば、シリコン膜上にニッケル膜を設けて800℃で5分間加熱することによりニッケルがシリコン膜中に熱拡散するが、シリコン膜の下地に酸化シリコン膜があってもニッケルは酸化シリコン膜を突き抜けてさらに下層にまで熱拡散することになり、熱拡散を所定位置で制御するのが困難である。
【0070】
さらに、本発明によれば、金属の置換拡散による金属含有薄膜35の形成を比較低温で行うので、従来技術で説明したような「雪かき効果」などの不具合が生じないという利点がある。
【0071】
この点、本発明の金属含有薄膜の形成方法では、処理温度を熱拡散が生じない温度、例えば、200℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃で行うことができる。すなわち、本発明によると、低温処理で金属シリサイド膜を形成することができるので、半導体装置の製造方法に適用した場合にも、他の層への影響も小さいという利点もある。
【0072】
また、本発明方法では、金属含有薄膜35とする際にチャンバ内の残留水分の分圧を、1×10−5Torr以下とするのが好ましい。
【0073】
上述したMCR−CVD法では、一般的には、基板表面に作用するハロゲンラジカルのフラックスと前駆体のフラックスとの和である総フラックスと、総フラックスに対するハロゲンラジカルのフラックスの比率とにより、処理条件が決定し、ハロゲンラジカルのフラックスの比率が相対的に低くなると、成膜モードとなり、ハロゲンラジカルのフラックスの比率が高くなるとエッチングモードとなる。
【0074】
本発明方法では、総フラックスを高くなるように制御することにより、金属含有薄膜35中の平均ニッケル濃度を高くすることができ、逆に低くなるように制御することにより、平均ニッケル濃度を低くすることができる。例えば、被エッチング部材11を同一とし、ハロゲンガスである作用ガス21の導入量を一定とし、プラズマアンテナ8に印加するRFパワーを高くすると、総フラックスが高くなると共にニッケルを含む前駆体24のフラックスが高くなり、一方、RFパワーを低くすると、総フラックスが低くなると共にニッケルを含む前駆体24のフラックスが低下する。
【0075】
ここで、MCR−CVD法を実施する条件では、一般的には、ハロゲンラジカルのフラックスが飽和状態となるので、この条件下ではRFパワーを変化させてもハロゲンラジカルのフラックスはほとんど変化せずに、RFパワーを低くすると、前駆体のフラックスが低くなり、RFパワーを高くすると、前駆体のフラックスが高くなるので、これにより平均ニッケル濃度を制御することができる。
【0076】
また、平均ニッケル濃度は、ハロゲンラジカルのフラックスと前駆体24のフラックスとの比や被処理部材3の温度、基板の温度などによっても変化し、これらによって変化する前駆体24の吸着量と、この前駆体24が吸着した表面へ作用するハロゲンラジカルの量によって、ニッケルシリサイドの生成量が規定されると推定される。
【0077】
したがって、本発明方法によると、主にRFパワーによって制御できる総フラックスを制御することにより、平均ニッケル濃度を増減できるが、被エッチング部材11の形状、温度、ハロゲンガスの導入量、被処理部材3の温度など諸条件によっても変化するものである。例えば、他の条件を同一にし、被処理部材3の温度を高くすると、平均ニッケル濃度は低くなる方向に制御でき、逆に被処理部材3の温度を低くすると、平均ニッケル濃度が高くなる方向に制御できる。
【0078】
また、ニッケルとシリコンとの比が1:2〜2:1の領域、すなわち、例えば、ニッケル平均濃度が35%を超えると、ニッケルがシリコン中に全固溶する領域となり、ニッケルがシリコン中に拡散し易くなり、ニッケル分布が膜厚方向に平均化するようになる。一方、ニッケル濃度が35%〜60%の範囲では金属含有薄膜35がニッケルシリサイド膜として機能する傾向が強く、ニッケル濃度が60%を超えると、ニッケル膜と同様な特性を有する傾向が強いが、これらは用途に応じて、金属含有量を選定すればよい。
【0079】
また、ニッケル濃度が60%を超え、特に80%以上となると、金属含有薄膜35が実質的にはニッケル膜として機能する。すなわち、空間選択的に金属パターンが形成できるということになり、半導体製造プロセスやマイクロデバイスなど種々の用途に適用可能である。また、ニッケル濃度が高いと、軟磁性体としての特性も出現する、種々の用途で使用可能である。
【0080】
なお、以上説明した実施形態では、IV族元素としてシリコンを例示したが、化学的にシリコンに近いゲルマニウム又は炭素をシリコンに置き換えても同様な金属含有薄膜が形成できる。
【0081】
また、上述した実施形態では、金属としてニッケルを例示したが、ニッケルの代わりに、鉄、コバルト、チタン、亜鉛などに置き換えても、同様に金属含有薄膜が形成できると容易に推測できる。
【0082】
以上説明した金属含有IV族薄膜の形成方法によると、所望の金属含有薄膜パターンを形成できる。したがって、かかる方法は、金属含有IV族薄膜をゲート電極、ソース、ドレインなどとして使用する半導体装置、例えば、MOS型FETなどの製造方法に適用できる。また、この際、処理温度が、200℃〜400℃と比較的低温であるので、半導体装置の製造に適用して非常に有用である。
【0083】
半導体装置の製造に適用する場合、上述したような二次元の多結晶シリコンパターンの他、貫通孔を介してのプラグ接続用パターンに用いることもできる。この手法の概略を図3を参照しながら説明する。図3(a)に示すように、例えば、シリコン基板41上に形成された絶縁膜としての酸化シリコン膜42に貫通孔42aを形成した後、図3(b)に示すように、多結晶シリコン膜43を成膜し、パターニングしてシリコンパターン44とする。これにより、貫通孔42aの内周面を介してシリコン基板41と接続したシリコンパターン44が形成される。このシリコンパターン44を有するシリコン基板41に、上述しように、前駆体24及び塩素ラジカルを作用させると、空間選択的にシリコンパターン44に作用してシリコンパターン44中にニッケルシリサイドが生成し、図3(c)に示すように、金属含有薄膜45が形成される。なお、この場合、条件によっては、ニッケルがシリコン基板41中にも侵入する。
【0084】
また、図4に示すように、シリコン基板41上にパターニングした酸化シリコン膜42を形成した状態で、上述したように、前駆体24及び塩素ラジカルを作用させてもよく、この場合、貫通孔42aの中のシリコン基板41にニッケルシリサイドを含有する金属含有領域41aが形成される。
【0085】
このような金属含有薄膜45及び金属含有領域41aは、ニッケルの平均含有量が60%より少なければ、ニッケルシリサイド膜として機能し、ニッケルの平均含有量が60%を超えて、好ましくは80%以上となると、ニッケル膜として機能するので、用途に応じて適用すればよい。
【0086】
例えば、図3の金属含有薄膜45は、ニッケル膜としてプラグ配線などに使用することができ、また、図4の金属含有領域41aは、MOSトランジスタのソース又はドレイン領域として適用することができる。
【0087】
<半導体装置の実施形態>
図5及び図6には、本発明方法を適用できる半導体装置の構造を示し、上述した金属含有IV族薄膜の形成方法を従来から公知の半導体製造装置の製造方法に適用して製造することができる。
【0088】
図5は、MOSトランジスタの一例であり、このMOSトランジスタは、n型シリコン基板104上に二つのp領域を形成し、各p領域にソース電極101及びドレイン電極102を形成するとともに、前記n型シリコン基板104上に形成したSiO2膜であるゲート絶縁膜105を介してゲート電極103を形成したものである。かかるMOSトランジスタにおいて、ゲート電極103は、ニッケルシリサイド膜などの金属シリサイド膜からなり、上述した実施形態で説明した方法により製造することができ、また、ソース電極101及びドレイン電極102も上述したニッケルシリサイド膜で形成することができる。
【0089】
図6は、立体チャンネル構造の半導体装置の一例であり、n型シリコン基板204上に二つのp領域を形成し、各p領域にソース電極201及びドレイン電極202を形成するとともに、前記n型シリコン基板204上に形成したSiO2膜であるゲート絶縁膜205を介してゲート電極203を形成した構造は図5と同様であるが、この上に酸化シリコン膜206を形成してソース電極201及びドレイン電極202の上にコンタクトホール207、208を形成し、コンタクトホール207、208の内周面に上述した手法で、ニッケルシリサイド膜などの金属含有薄膜209、210を形成したのち、コンタクトホール207、208をタングステンなどの金属211、212で埋め込んだ構造を有するものである。
【0090】
図7〜図9には、本発明方法を適用した半導体装置の製造プロセスの要部(マルチゲートの製造工程)の一例を示す。図7(a)、(b)に示すように、シリコン基板301の表面をパターニングして帯状に延びる(図面の紙面厚さ方向)凸部302を形成した後、図7(c)に示すように、シリコン基板301を熱酸化することにより、凸部302を含む表面に熱酸化膜303を形成する。続いて、図7(d)に示すように、熱酸化膜303上にポリシリコン(多結晶シリコン)膜304をCVD、スパッタなどにより形成する。次に、図7(e)に示すように、ポリシリコン膜304上に凸部302の長手方向の一部の領域を覆うレジストパターン305を形成して、レジストパターン305以外の領域のポリシリコン膜304を除去した後、図7(f)に示すように、レジストパターン305を除去し、凸部302の長手方向の一部を覆うポリシリコンパターン306を形成する。そして、ポリシリコンパターン306の凸部302の幅方向外側の領域にレジストパターン307を形成し(図8参照)、この状態でP、Bなどをドープする。
【0091】
この後、上述した本発明方法を適用し、例えば、図1に示すような装置に投入し、図9(a)に示すように、ニッケルとハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルとを作用させ、ポリシリコンパターン306中にニッケル成分を置換拡散させ、ニッケルシリサイド膜308とする。この際、ポリシリコンパターン306以外の領域は熱酸化膜303で覆われているので、ニッケル成分がシリコン基板301に置換拡散することは基本的にはないが、熱酸化膜303が薄い場合には、ニッケル成分を置換拡散したくない領域に二酸化シリコン膜(SiO2)や酸窒化シリコン膜(SiON)などをさらに設けてもよい。
【0092】
この後、図9(b)に示すように、ニッケルシリサイド膜308を含む全体に、二酸化シリコン膜(SiO2)や酸窒化シリコン膜(SiON)などからなる層間絶縁膜309を、例えば、低温プラズマCVDなどにより形成し、パターニングによりニッケルシリサイド膜308の凸部302の頂部に対向する領域にコンタクトホール310を形成し、図9(c)に示すように、コンタクトホール310中に、ニッケルシリサイド膜308と電気的に導通されるコンタクト電極311を形成する。
【0093】
以上説明した半導体装置及び製造プロセスは例示であり、比較的低温条件下で、且つ空間選択的に金属含有薄膜を製造できるという利点を生かして、種々の半導体装置に適用可能である。
【0094】
<マイクロデバイスの実施形態>
図10には、上述した金属含有薄膜を磁性薄膜として用いたマイクロインダクタを模式的に示す。図10(a)は平面図、図10(b)及び(c)は(a)のA−A′線断面図及びB−B′線断面図である。これらの図面に示すように、マイクロインダクタ120は、例えば、半導体装置に組み込まれるものであり、例えば、シリコン基板121の酸化シリコン膜122上に設けられた磁性薄膜123は、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜124で覆われ、その周りを螺旋状に巻回するように金属薄膜からなる配線125を設けたものである。
【0095】
なお、このようなマイクロインダクタでは、配線125は磁性薄膜123を必ずしも巻回するように設ける必要はない。図11には他の例のマイクロインダクタを示す。図11(a)は平面図、図11(b)は(a)のC−C′線断面図である。これらの図面に示すように、磁性薄膜123の上部を覆うように配線125Aを設けたマイクロインダクタ120Aとしてもよく、何れにしても、インダクタとして機能する。
【0096】
このようなマイクロインダクタにおいては、コアコイル型でもトロイダルコイル型でも、その特性を結晶粒内の磁化特性に依存しているから、小型化(薄膜化)には粒径の微小化が必須である。磁性薄膜123を上述した金属含有薄膜とすることにより、その成膜条件から膜中の粒径を容易に制御でき、かつ、数十nmの粒径での成膜が可能であるので、小型化が容易であるという利点がある。また、特に酸化シリコン膜上の成膜選択性より、多結晶シリコンのパターンニングに依存した成膜が可能であり、個別のパターニング条件の設定なしに、かつ、粒径の小さい薄膜による所望の微小パターンの形成が可能となり、電子回路としてのLSIと同チップ上に受動素子としてのインダクタの形成が可能となり、電子回路の機能向上、小型化、低コスト化を果たすことができる。
【0097】
図12には、微結晶金属薄膜を電極としたマイクロバリスタの一例を示す。図12(a)は平面図、図12(b)は(a)のD−D′線断面図である。これらの図面に示すように、マイクロバリスタ130は、例えば、半導体装置に組み込まれるものであり、例えば、シリコン基板131の酸化シリコン膜132上に設けられた下電極133と上電極134との間にバリスタ膜135を有するものである。なお、図12(a)では、下電極133からのリード線133aと、絶縁層136を介して設けられた上電極134からのリード線134aとを示している。
【0098】
かかるマイクロバリスタ130では、下電極133及び上電極134の一方又は両方を上述した金属含有薄膜とすることができる。なお、このように金属含有薄膜を電極として用いた場合、金属薄膜と比較してパターニングしやすいという利点があり、また、表面粗さを粗くすることにより、素子としての容量を増大することができるという利点がある。このような構成により、電子回路としてのLSIと同チップ上に保護素子としてのバリスタの形成が可能となり、小型化、低コスト化が果たせるという効果を奏する。
【0099】
なお、バリスタ膜135の代わりに誘電体膜を用いることにより、同様にマイクロキャパシタを構成することができる。
【0100】
<他の実施形態>
第1の実施の形態に用いた、図1に示す装置においては、チャンバ1内でハロゲンガスをプラズマ化することによりそのラジカルを形成したが、ラジカルの形成方法はこれに限る必要はない。例えば次のような方法によっても形成し得る。
1) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスに高周波の電界を作用させてこのハロゲンガスをプラズマ化する。
2) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスにマイクロ波を供給してこのハロゲンガスをプラズマ化する。
3) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスを加熱して熱的解離する。
4) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスに電磁波又は電子線を供給してこのハロゲンガスを解離させる。
5) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスを、触媒作用により解離させる触媒金属に接触させる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、半導体装置の製造の他、他の電子デバイスの製造に関する産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る金属含有薄膜の形成方法に使用する装置の概略を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における金属含有薄膜部材の形成方法の一例を説明する断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における金属含有薄膜部材の形成方法の他の例を説明する断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における金属含有薄膜部材の形成方法の他の例を説明する断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法を適用した半導体装置の一例のMOSトランジスタを概念的に示す説明図である。
【図6】本発明の半導体装置の製造方法を適用した半導体装置の他の例を概念的に示す説明図である。
【図7】本発明の半導体装置の製造方法の一例を概念的に示す説明図である。
【図8】本発明の半導体装置の製造方法の一例を概念的に示す説明図である。
【図9】本発明の半導体装置の製造方法の一例を概念的に示す説明図である。
【図10】本発明のマイクロデバイスの一例であるマイクロインダクタを模式的に表す図である。
【図11】本発明のマイクロデバイスの他の例であるマイクロインダクタを模式的に表す図である。
【図12】本発明のマイクロデバイスの一例であるマイクロバリスタを模式的に表す図である。
【符号の説明】
【0103】
1 チャンバ
3 被処理部材
8 プラズマアンテナ
11 被エッチング部材
21 作用ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有IV族薄膜の形成方法及び半導体装置の製造方法並びにマイクロデバイスに関し、金属含有IV族薄膜を空間制御して形成できるものであり、MIS(MOS)トランジスタの電極膜などの製造に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
MIS(Metal Insulator Semiconductor)型FET(電界効果トランジスタ)、特にMOS(Metal Oxide Semiconductor)FETの電極として金属シリサイド、特にニッケルシリサイドが用いられている。
【0003】
このようなニッケルシリサイド膜などの金属シリサイドは、シリコン膜上に金属膜を成膜し、これを高温環境下に載置することで金属をシリコン膜内に熱拡散させて形成され、例えば、ニッケルシリサイドの場合には、450℃以上で熱処理をする必要がある(特許文献1〜3等参照)。このような熱処理により、ニッケルシリサイド膜においてウェハ面内でニッケル成分の濃度分布にばらつきが生じ易いとい問題があり、デバイス製造上の欠陥や特性劣化を引き起こすことがあるという問題がある。また、熱拡散の方法では、一般的には、熱拡散後、表面に残留した金属膜を除去する必要があった。さらに、従来の熱拡散によるニッケルシリサイドの形成においてはリン(P)やホウ素(B)をドープした多結晶シリコン上にニッケル膜を形成して熱処理を行うが、PやBがニッケルシリサイドと多結晶シリコンとの界面に掃き出され、結果的にニッケルシリサイドに固溶できないPやBは多結晶シリコンの粒界やニッケルシリサイド膜の底部に掃き出されるという、いわゆる「雪かき効果」があるという問題があった。
【0004】
一方、シリサイド膜の作製方法として、金属ハロゲン化物ガスと、シリコン水素化物ガスとを独立した分子線として基板上に供給して電子線を照射してシリサイド膜を作成する方法が提案されているが(特許文献4参照)、特殊な設備を必要とし、半導体製造への適用は困難である。
【0005】
かかるプロセスでは、工程数が多いばかりでなく、まだ処理温度が高いという問題がある。ちなみに、処理温度が高ければ高い程、ドープした不純物の拡散、ゲート絶縁膜での絶縁劣化等に起因する当該MOSトランジスタの性能劣化という問題を生起する。
【0006】
また、例えば、半導体製造プロセスにおいて、金属薄膜をパターニングする場合、フォトリソグラフィー及びエッチング等により、材料毎に設定した手法及び条件により加工する必要があり、工程が煩雑であり、また、微細加工を行うのが困難であるという問題がある。さらに、金属薄膜のパターニング工程で汚染物質が発生し易く、半導体の性能劣化の原因になるという問題もあった。
【0007】
一方、従来の微結晶金属膜を製造する方法は、結晶粒に相当する粉体状の材料に高い圧力等を掛けさらに高温度に晒すことで(焼結)、固体状にするか、又は、さらにその固体状の材料を原料ターゲットにしてスパッタリング法等で薄膜を形成するなどの方法が採用される。また、薄膜をパターンニングする場合は、フォトリソグラフィーとエッチング等により、材料毎に設定した手法、条件で加工することが行われている。
【0008】
例えば、従来の積層セラミックスコンデンサー(Multi-layer Ceramic Capacitor:MLCC)は、セラミックスグリーンシート上に、内部電極層となるペースト状ニッケル粉末を印刷し、それらを積み重ねて圧着後、焼結することにより製造される(特許文献5参照)。
【0009】
しかしながら、上述した従来の方法では、材料である粉体の製造方法、さらに焼結での高温処理、およびスパッタリングによるイオン衝撃のばらつき等の原因により、結晶粒の粒径の最小は数百nm程度と限界があり、かつ、原理上、粒径のばらつきが大きい。また、薄膜をパターンニングする際は、材料毎に夫々のエッチング手法および条件を確立する必要が生じる。また、従来のMLCC製造方法では、セラミックスグリーンシート上にペースト状ニッケル粉末を印刷後、さらに焼結する必要があり、製造コストがかかるという問題もある。
【0010】
【特許文献1】特開2006−186285号公報
【特許文献2】特開2005−019705号公報
【特許文献3】特開2004−165627号公報
【特許文献4】特開平09−059013号公報
【特許文献5】特開2004−300480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、金属シリサイドなどの金属とIV族元素との化合物からなる薄膜や実質的に金属膜として機能する高濃度に金属を含有する金属含有薄膜のパターンを成膜することができる金属含有IV族薄膜の形成方法及びこれを適用した半導体装置の製造方法並びにマイクロデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成する本発明の第1の態様は、基板の表面にIV族元素からなるIV族薄膜を成膜した後、パターニングし、所定領域にIV族薄膜パターンを有する被処理体とする工程と、この被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、前記IV族薄膜パターンを空間選択的に金属含有IV族薄膜パターンとする工程とを具備することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0013】
かかる第1の態様では、IV族薄膜をパターニングし、これに金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、空間選択的にIV族薄膜パターンを金属含有IV族薄膜とすることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記金属が、ニッケル、鉄、コバルト、チタン及び亜鉛から選択される少なくとも1種であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0015】
かかる第2の態様では、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、亜鉛を含有するIV族薄膜パターンを空間選択的に形成することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族元素が、シリコン、ゲルマニウム及び炭素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0017】
かかる第3の態様では、IV族元素としてシリコン、ゲルマニウム又は炭素を含む金属IV族薄膜パターンを空間選択的に形成することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1又は第2の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記金属含有IV族薄膜パターンが、多結晶シリコン薄膜であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0019】
かかる第4の態様では、多結晶シリコン薄膜をパターニングしてIV族薄膜パターンとし、これに金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、空間選択的にIV族薄膜パターンを金属含有IV族薄膜とすることができ、比較的容易に所望のパターンの金属含有IV族薄膜を得ることができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させる際に、真空容器であるチャンバの内部にハロゲン化物を形成する金属を含む材料で形成した被エッチング部材を配設すると共に当該被エッチング部材にハロゲンを含む作用ガスをプラズマ化して得られるハロゲンラジカルを作用させることにより金属とハロゲンとの化合物である前駆体を形成する一方、前記被処理体を前記チャンバ内に収納した状態でその温度を前記被エッチング部材よりも低温に保持して前記前駆体を前記IV族薄膜パターンの表面に吸着させると共に前記ハロゲンガスのラジカルを作用させることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0021】
かかる第5の態様では、所定の処理により、IV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記金属含有IV族薄膜とする際に前記基板温度を200℃〜350℃とすることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0023】
かかる第6の態様では、基板温度が比較的低温の条件で、金属含有IV族薄膜を比較的容易に形成することができる。
【0024】
本発明の第7の態様は、第5又は6の態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記金属含有IV族薄膜とする際に前記チャンバ内の残留水分の分圧を、1×10−5Torr以下とすることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0025】
かかる第7の態様では、残留水分の分圧を所定圧力以下とすることにより、金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、有効に金属含有IV族薄膜を形成することができる。
【0026】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族薄膜が、前記所定領域以外の部分に保護膜を設けた基板を500℃〜1200℃とした条件下で、前記IV族元素を含有するIV族元素含有化合物ガス中に曝すことにより形成されたものであることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0027】
かかる第8の態様では、IV族元素の薄膜を比較的容易に製造でき、これに金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、有効に金属含有IV族薄膜を形成することができる。
【0028】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族薄膜の下側には、前記金属含有IV族薄膜パターンとする際に金属の拡散を規制する置換拡散防止膜が設けられていることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0029】
かかる第9の態様では、金属とハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルを作用させることにより、有効に金属含有IV族薄膜を形成する際に、金属が下地層まで拡散することを有効に防止することができる。
【0030】
本発明の第10の態様は、第1〜9の何れか態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族薄膜パターンが、実質的に金属とIV族元素との化合物として機能することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0031】
かかる第10の態様では、金属とIV元素との化合物としての薄膜パターンとして機能する金属含有IV族薄膜を比較的容易に形成することができる。
【0032】
本発明の第11の態様は、第1〜9の何れかの態様に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、前記IV族薄膜パターンが、実質的に金属薄膜として機能することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法にある。
【0033】
かかる第11の態様では、金属薄膜パターンとして機能する金属含有IV族薄膜を比較的容易に形成することができる。
【0034】
本発明の第12の態様は、第1〜11の何れかの態様に記載する金属含有IV族薄膜の形成方法を用いて金属含有IV族薄膜パターンを形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法にある。
【0035】
かかる第12の態様では、金属含有IV族薄膜の形成方法を用いて金属含有IV族薄膜パターンを形成することにより、金属含有IV族薄膜パターンを含む半導体装置を比較的容易に製造することができる。
【0036】
本発明の第13の態様は、第12の態様に記載の半導体装置の製造方法において、前記金属含有IV族薄膜パターンをMISトランジスタのゲート電極、ソース、ドレインの少なくとも1つとして製造することを特徴とする半導体装置の製造方法にある。
【0037】
かかる第13の態様では、金属含有IV族薄膜パターンをゲート電極、ソース、ドレインの少なくとも1つとする半導体装置を比較的容易に製造することができる。
【0038】
本発明の第14の態様は、第11の態様に記載された方法で形成された金属含有IV族薄膜を含むことを特徴とするマイクロデバイスにある。
【0039】
かかる第14の態様では、実質的に金属として機能する金属含有IV族薄膜を用いてマイクロデバイスとすることができる。
【0040】
本発明の第15の態様は、第14の態様に記載のマイクロデバイスにおいて、前記金属含有IV族薄膜を磁性薄膜としたインダクタであることを特徴とするマイクロデバイスにある。
【0041】
かかる第15の態様では、実質的に金属として機能する金属含有IV族薄膜を磁性薄膜とするマイクロインダクタが実現される。
【0042】
本発明の第16の態様は、第14の態様に記載のマイクロデバイスにおいて、前記金属含有IV族薄膜を電極としたキャパシタ又はバリスタであることを特徴とするマイクロデバイスにある。
【0043】
かかる第16の態様では、実質的に金属として機能する金属含有IV族薄膜を電極としたキャパシタ又はバリスタが実現される。
【0044】
かかる本発明によれば、金属シリサイドなどの金属とIV族元素との化合物からなる薄膜や実質的に金属膜として機能する高濃度に金属を含有する金属含有薄膜のパターンを比較的容易に形成することができ、これを適用した半導体装置を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明は、本発明者等によって開発された、金属をハロゲン化して再び還元し堆積させる技術(以下、MCR−CVD法(塩化還元気相成長法)という。)を応用したものである。よって、MCR−CVD法を最初に簡単に説明する。
【0046】
かかるMCR−CVD法では、まず、金属(M)製の被エッチング部材が備えられたチャンバ内にハロゲンを含む作用ガスを供給し、誘導プラズマを発生させてハロゲンガスプラズマを発生させ、ハロゲンラジカルを生成する。その後、ハロゲンラジカルで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分とハロゲンガス成分との前駆体を生成し、被エッチング部材よりも低い温度の基板上において、前駆体をハロゲンラジカルにより還元し、金属成分を基板表面に吸着させる方法である。
【0047】
かかる一連の反応はハロゲンを塩素とした場合、次式の様に表される。
(1)プラズマの解離反応;Cl2→2Cl*
(2)エッチング反応;M+Cl*→MCl(g)
(3)基板への吸着反応;MCl(g)→MCl(ad)
(4)成膜反応;MCl(ad)+Cl*→M+Cl2↑
式中のCl*は塩素ラジカル、(g)はガス状態、(ad)は吸着状態を示す。金属Mにはハロゲン化物を作る物質(銅など)が使用される。
【0048】
かかる、MCR−CVD法を応用した本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施の形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0049】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係るニッケルシリサイドを含有する薄膜パターンの製造方法を実現する装置(MCR−CVD装置)の概略を示す正面図である。本形態に係る方法の説明に先立ち、この装置について説明しておく。
【0050】
図1に示すように、例えば石英を材料として円筒状に形成されたチャンバ1の底部近傍には支持台2が設けられ、支持台2には石英で形成した被処理部材3が載置されている。この被処理部材3としては、図2(a)、(b)に示すように、シリコン基板31の表面に形成された酸化シリコン膜(二酸化シリコン膜)32上に形成した多結晶シリコン膜33を、所望パターンにパターニングしたシリコンパターン34を有するものを用いる。
【0051】
支持台2にはヒータ4及び冷媒流通手段5を備えた温度制御手段6が設けられている。ここで、支持台2は温度制御手段6により所定温度(例えば、被処理部材3が200℃乃至400℃に維持される温度)に制御される。
【0052】
チャンバ1の上面は開口部とされ、開口部は絶縁材料製の板状の天井板7によって塞がれている。天井板7の上方にはチャンバ1の内部をプラズマ化するためのプラズマアンテナ8が設けられ、プラズマアンテナ8は天井板7の面と平行な平面リング状に形成されている。プラズマアンテナ8には整合器9及び電源10が接続されて高周波電流が供給される。これら、プラズマアンテナ8、整合器9及び電源10により誘導プラズマを発生させるプラズマ発生手段が構成されている。
【0053】
チャンバ1にはニッケルを含む材料で形成した被エッチング部材11が保持され、この被エッチング部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れに対して被処理部材3と天井板7との間に不連続状態で配置されている。例えば、被エッチング部材11は、棒状の突起部12とリング部13とからなり、突起部12がチャンバ1の中心側に延びるようにリング部13が設けられている。これにより、被エッチング部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れ方向である周方向に対して構造的に不連続な状態とされている。
【0054】
なお、プラズマアンテナ8の電気の流れに対して不連続状態にする構成としては、被エッチング部材11を格子状に形成したり、網目状に形成したりする等の態様が考えられる。
【0055】
被エッチング部材11の上方におけるチャンバ1の筒部の周囲にはチャンバ1の内部にハロゲンである塩素を含有する作用ガス(Cl2ガス)21を供給するノズル14が周方向に等間隔で複数(例えば8箇所:図には2箇所を示してある)接続されている。ノズル14には流量及び圧力が制御される流量制御器15を介してCl2ガス21が送られる。流量制御器15によりチャンバ1内に供給されるCl2ガス21の量を制御することで、チャンバ1内のガスプラズマ密度を制御している。
【0056】
なお、反応に関与しないガス等は排気口18から排気され、天井板7によって塞がれたチャンバ1の内部は真空装置19によって真空引きすることにより所定の真空度に維持される。
【0057】
ここで、作用ガスに含有されるハロゲンとしては、フッ素、臭素及びヨウ素等を適用することが可能である。本形態ではハロゲンとして安価なCl2ガスを用いたことによりランニングコストの低減を図ることができる。
【0058】
かかる装置を使用して、被処理部材3を処理すると、酸化シリコン膜32上に形成されているシリコンパターン34が、図2(c)に示すように、ニッケルシリサイドを含有する金属含有薄膜35となる。
【0059】
以下、このような金属含有薄膜35の形成プロセスについて説明する。
【0060】
まず、ノズル14からCl2ガス21をチャンバ1内に供給するとともに、プラズマアンテナ8から高周波電磁波をチャンバ1内に入射することで、Cl2ガス21をイオン化してCl2ガスプラズマ23を発生させ、Clラジカルを生成する。
【0061】
ここで、ガスプラズマ23が被エッチング部材11に作用することにより、被エッチング部材11を加熱すると共に、被エッチング部材11にエッチング反応を生じさせる。このエッチング反応により被エッチング部材11の材料であるニッケルと塩素との化合物であるガス状の前駆体24(NimCln:m,nは1以上の整数)が形成される。そして、前駆体24は、前記被エッチング部材11よりも低温部となっている被処理部材3の表面に向かって輸送される。また、被処理部材3に対しては、前駆体24と共にClラジカルが輸送される。
【0062】
ここで、本実施形態では、シリコン基板31の表面(実際には酸化シリコン膜32の表面)上にはシリコンパターン34が予め形成されており、この上へ前駆体24とClラジカルとが輸送されることで、シリコンパターン34に対して空間選択的にNi成分が置換拡散すると考えられる。具体的には、シリコン基板31の表面に対してClラジカルと前駆体24とが輸送されると、シリコン基板31の表面近傍においてシリコンパターン34のみに空間選択的にClラジカルと前駆体24が作用してSi成分がNi成分に置換されながら、Ni成分がシリコンパターン34内に置換拡散しつつ塩素成分が離脱する還元反応が生じ、ニッケルシリサイドが生成する。この処理により、ニッケルシリサイドの生成は、酸化シリコン膜32の位置で停止され、結果的に、酸化シリコン膜32上に所定のニッケル濃度分布を有す金属含有薄膜35が形成される。なお、反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口から排気される。
【0063】
シリコンパターン34としては多結晶シリコン膜乃至単結晶シリコン膜の何れの膜も用いることはできるが、多結晶シリコン膜の方がより望ましい。単結晶シリコンに較べ、粒界が多い分、塩素ラジカルがシリコンパターン34内に侵入し易く、シリサイド化が容易且つ良好に行なわれ、Ni2Si、Ni3Si、Ni5Si2などを含むニッケルシリサイド膜を比較的容易に形成することができるからである。また、多結晶シリコン膜は、フォトリソグラフィー及びエッチングなどの公知の手法により、金属膜のパターニングなどと比較して比較的容易にパターニングすることができるという利点がある。
【0064】
IV族薄膜の一例である多結晶シリコン膜33(図2(a)参照)は、例えば、公知のCVD法などにより成膜できる。一般的には、IV族薄膜は、基板を500℃〜1200℃にした後、IV族元素を含有するIV族元素含有化合物ガス中に曝すことにより容易に形成できる。例えば、多結晶シリコン膜33は、シリコン基板31を約600℃に保持し、原料ガスとして、100mTorrの下、20%SiH4(N2希釈)などに晒すことにより、成膜できる。また、多結晶シリコン膜33は、例えば、フォトリソグラフィーと、例えば、CF4/O2ガスによるドライエッチングにより容易にパターニングして、シリコンパターン34とすることができる。
【0065】
また、シリコンパターン34は、成膜後パターニングにより形成するほか、所望パターン以外の領域をレジストなどの保護膜で保護した後、CVD法などでシリコンパターン34を成膜してもよい。
【0066】
何れにしても、所望パターン形状のシリコンパターン34を有するものであれば、シリコンパターン34の領域のみに空間選択的にニッケル成分が置換拡散され、ニッケルシリサイドを含む金属含有薄膜35が形成できる。
【0067】
ここで、空間選択的とは、シリコンパターン34の領域のみにニッケル成分が空間選択的に置換拡散されて、その周囲の領域にはニッケルが作用しない状態をいう。すなわち、金属含有薄膜35は、セルフアライメントされた状態でシリコンパターン34の領域に形成され、その周囲の領域には形成されない。なお、シリコンパターン34の周囲は、シリコン以外であれば特に限定されないが、酸化膜であるのが好ましく、酸化シリコン膜であるのが好ましい。
【0068】
また、シリコンパターン34の下地がシリコン基板の場合には、条件によってはニッケルがシリコン基板まで置換拡散するが、下地が酸化シリコン膜32であるので、置換拡散防止膜として作用し、ニッケル成分の置換拡散は酸化シリコン膜32で停止される。よって、シリコンパターン34を金属含有薄膜35とする際には、下地として金属の置換拡散を規制する置換拡散防止膜を設けるのが好ましく、この場合には、酸化シリコン膜32が置換拡散防止膜として作用する。
【0069】
なお、従来技術で示した熱拡散により形成されたニッケルシリサイド膜の形成では、例えば、シリコン膜上にニッケル膜を設けて800℃で5分間加熱することによりニッケルがシリコン膜中に熱拡散するが、シリコン膜の下地に酸化シリコン膜があってもニッケルは酸化シリコン膜を突き抜けてさらに下層にまで熱拡散することになり、熱拡散を所定位置で制御するのが困難である。
【0070】
さらに、本発明によれば、金属の置換拡散による金属含有薄膜35の形成を比較低温で行うので、従来技術で説明したような「雪かき効果」などの不具合が生じないという利点がある。
【0071】
この点、本発明の金属含有薄膜の形成方法では、処理温度を熱拡散が生じない温度、例えば、200℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃で行うことができる。すなわち、本発明によると、低温処理で金属シリサイド膜を形成することができるので、半導体装置の製造方法に適用した場合にも、他の層への影響も小さいという利点もある。
【0072】
また、本発明方法では、金属含有薄膜35とする際にチャンバ内の残留水分の分圧を、1×10−5Torr以下とするのが好ましい。
【0073】
上述したMCR−CVD法では、一般的には、基板表面に作用するハロゲンラジカルのフラックスと前駆体のフラックスとの和である総フラックスと、総フラックスに対するハロゲンラジカルのフラックスの比率とにより、処理条件が決定し、ハロゲンラジカルのフラックスの比率が相対的に低くなると、成膜モードとなり、ハロゲンラジカルのフラックスの比率が高くなるとエッチングモードとなる。
【0074】
本発明方法では、総フラックスを高くなるように制御することにより、金属含有薄膜35中の平均ニッケル濃度を高くすることができ、逆に低くなるように制御することにより、平均ニッケル濃度を低くすることができる。例えば、被エッチング部材11を同一とし、ハロゲンガスである作用ガス21の導入量を一定とし、プラズマアンテナ8に印加するRFパワーを高くすると、総フラックスが高くなると共にニッケルを含む前駆体24のフラックスが高くなり、一方、RFパワーを低くすると、総フラックスが低くなると共にニッケルを含む前駆体24のフラックスが低下する。
【0075】
ここで、MCR−CVD法を実施する条件では、一般的には、ハロゲンラジカルのフラックスが飽和状態となるので、この条件下ではRFパワーを変化させてもハロゲンラジカルのフラックスはほとんど変化せずに、RFパワーを低くすると、前駆体のフラックスが低くなり、RFパワーを高くすると、前駆体のフラックスが高くなるので、これにより平均ニッケル濃度を制御することができる。
【0076】
また、平均ニッケル濃度は、ハロゲンラジカルのフラックスと前駆体24のフラックスとの比や被処理部材3の温度、基板の温度などによっても変化し、これらによって変化する前駆体24の吸着量と、この前駆体24が吸着した表面へ作用するハロゲンラジカルの量によって、ニッケルシリサイドの生成量が規定されると推定される。
【0077】
したがって、本発明方法によると、主にRFパワーによって制御できる総フラックスを制御することにより、平均ニッケル濃度を増減できるが、被エッチング部材11の形状、温度、ハロゲンガスの導入量、被処理部材3の温度など諸条件によっても変化するものである。例えば、他の条件を同一にし、被処理部材3の温度を高くすると、平均ニッケル濃度は低くなる方向に制御でき、逆に被処理部材3の温度を低くすると、平均ニッケル濃度が高くなる方向に制御できる。
【0078】
また、ニッケルとシリコンとの比が1:2〜2:1の領域、すなわち、例えば、ニッケル平均濃度が35%を超えると、ニッケルがシリコン中に全固溶する領域となり、ニッケルがシリコン中に拡散し易くなり、ニッケル分布が膜厚方向に平均化するようになる。一方、ニッケル濃度が35%〜60%の範囲では金属含有薄膜35がニッケルシリサイド膜として機能する傾向が強く、ニッケル濃度が60%を超えると、ニッケル膜と同様な特性を有する傾向が強いが、これらは用途に応じて、金属含有量を選定すればよい。
【0079】
また、ニッケル濃度が60%を超え、特に80%以上となると、金属含有薄膜35が実質的にはニッケル膜として機能する。すなわち、空間選択的に金属パターンが形成できるということになり、半導体製造プロセスやマイクロデバイスなど種々の用途に適用可能である。また、ニッケル濃度が高いと、軟磁性体としての特性も出現する、種々の用途で使用可能である。
【0080】
なお、以上説明した実施形態では、IV族元素としてシリコンを例示したが、化学的にシリコンに近いゲルマニウム又は炭素をシリコンに置き換えても同様な金属含有薄膜が形成できる。
【0081】
また、上述した実施形態では、金属としてニッケルを例示したが、ニッケルの代わりに、鉄、コバルト、チタン、亜鉛などに置き換えても、同様に金属含有薄膜が形成できると容易に推測できる。
【0082】
以上説明した金属含有IV族薄膜の形成方法によると、所望の金属含有薄膜パターンを形成できる。したがって、かかる方法は、金属含有IV族薄膜をゲート電極、ソース、ドレインなどとして使用する半導体装置、例えば、MOS型FETなどの製造方法に適用できる。また、この際、処理温度が、200℃〜400℃と比較的低温であるので、半導体装置の製造に適用して非常に有用である。
【0083】
半導体装置の製造に適用する場合、上述したような二次元の多結晶シリコンパターンの他、貫通孔を介してのプラグ接続用パターンに用いることもできる。この手法の概略を図3を参照しながら説明する。図3(a)に示すように、例えば、シリコン基板41上に形成された絶縁膜としての酸化シリコン膜42に貫通孔42aを形成した後、図3(b)に示すように、多結晶シリコン膜43を成膜し、パターニングしてシリコンパターン44とする。これにより、貫通孔42aの内周面を介してシリコン基板41と接続したシリコンパターン44が形成される。このシリコンパターン44を有するシリコン基板41に、上述しように、前駆体24及び塩素ラジカルを作用させると、空間選択的にシリコンパターン44に作用してシリコンパターン44中にニッケルシリサイドが生成し、図3(c)に示すように、金属含有薄膜45が形成される。なお、この場合、条件によっては、ニッケルがシリコン基板41中にも侵入する。
【0084】
また、図4に示すように、シリコン基板41上にパターニングした酸化シリコン膜42を形成した状態で、上述したように、前駆体24及び塩素ラジカルを作用させてもよく、この場合、貫通孔42aの中のシリコン基板41にニッケルシリサイドを含有する金属含有領域41aが形成される。
【0085】
このような金属含有薄膜45及び金属含有領域41aは、ニッケルの平均含有量が60%より少なければ、ニッケルシリサイド膜として機能し、ニッケルの平均含有量が60%を超えて、好ましくは80%以上となると、ニッケル膜として機能するので、用途に応じて適用すればよい。
【0086】
例えば、図3の金属含有薄膜45は、ニッケル膜としてプラグ配線などに使用することができ、また、図4の金属含有領域41aは、MOSトランジスタのソース又はドレイン領域として適用することができる。
【0087】
<半導体装置の実施形態>
図5及び図6には、本発明方法を適用できる半導体装置の構造を示し、上述した金属含有IV族薄膜の形成方法を従来から公知の半導体製造装置の製造方法に適用して製造することができる。
【0088】
図5は、MOSトランジスタの一例であり、このMOSトランジスタは、n型シリコン基板104上に二つのp領域を形成し、各p領域にソース電極101及びドレイン電極102を形成するとともに、前記n型シリコン基板104上に形成したSiO2膜であるゲート絶縁膜105を介してゲート電極103を形成したものである。かかるMOSトランジスタにおいて、ゲート電極103は、ニッケルシリサイド膜などの金属シリサイド膜からなり、上述した実施形態で説明した方法により製造することができ、また、ソース電極101及びドレイン電極102も上述したニッケルシリサイド膜で形成することができる。
【0089】
図6は、立体チャンネル構造の半導体装置の一例であり、n型シリコン基板204上に二つのp領域を形成し、各p領域にソース電極201及びドレイン電極202を形成するとともに、前記n型シリコン基板204上に形成したSiO2膜であるゲート絶縁膜205を介してゲート電極203を形成した構造は図5と同様であるが、この上に酸化シリコン膜206を形成してソース電極201及びドレイン電極202の上にコンタクトホール207、208を形成し、コンタクトホール207、208の内周面に上述した手法で、ニッケルシリサイド膜などの金属含有薄膜209、210を形成したのち、コンタクトホール207、208をタングステンなどの金属211、212で埋め込んだ構造を有するものである。
【0090】
図7〜図9には、本発明方法を適用した半導体装置の製造プロセスの要部(マルチゲートの製造工程)の一例を示す。図7(a)、(b)に示すように、シリコン基板301の表面をパターニングして帯状に延びる(図面の紙面厚さ方向)凸部302を形成した後、図7(c)に示すように、シリコン基板301を熱酸化することにより、凸部302を含む表面に熱酸化膜303を形成する。続いて、図7(d)に示すように、熱酸化膜303上にポリシリコン(多結晶シリコン)膜304をCVD、スパッタなどにより形成する。次に、図7(e)に示すように、ポリシリコン膜304上に凸部302の長手方向の一部の領域を覆うレジストパターン305を形成して、レジストパターン305以外の領域のポリシリコン膜304を除去した後、図7(f)に示すように、レジストパターン305を除去し、凸部302の長手方向の一部を覆うポリシリコンパターン306を形成する。そして、ポリシリコンパターン306の凸部302の幅方向外側の領域にレジストパターン307を形成し(図8参照)、この状態でP、Bなどをドープする。
【0091】
この後、上述した本発明方法を適用し、例えば、図1に示すような装置に投入し、図9(a)に示すように、ニッケルとハロゲンとの化合物である前駆体とハロゲンラジカルとを作用させ、ポリシリコンパターン306中にニッケル成分を置換拡散させ、ニッケルシリサイド膜308とする。この際、ポリシリコンパターン306以外の領域は熱酸化膜303で覆われているので、ニッケル成分がシリコン基板301に置換拡散することは基本的にはないが、熱酸化膜303が薄い場合には、ニッケル成分を置換拡散したくない領域に二酸化シリコン膜(SiO2)や酸窒化シリコン膜(SiON)などをさらに設けてもよい。
【0092】
この後、図9(b)に示すように、ニッケルシリサイド膜308を含む全体に、二酸化シリコン膜(SiO2)や酸窒化シリコン膜(SiON)などからなる層間絶縁膜309を、例えば、低温プラズマCVDなどにより形成し、パターニングによりニッケルシリサイド膜308の凸部302の頂部に対向する領域にコンタクトホール310を形成し、図9(c)に示すように、コンタクトホール310中に、ニッケルシリサイド膜308と電気的に導通されるコンタクト電極311を形成する。
【0093】
以上説明した半導体装置及び製造プロセスは例示であり、比較的低温条件下で、且つ空間選択的に金属含有薄膜を製造できるという利点を生かして、種々の半導体装置に適用可能である。
【0094】
<マイクロデバイスの実施形態>
図10には、上述した金属含有薄膜を磁性薄膜として用いたマイクロインダクタを模式的に示す。図10(a)は平面図、図10(b)及び(c)は(a)のA−A′線断面図及びB−B′線断面図である。これらの図面に示すように、マイクロインダクタ120は、例えば、半導体装置に組み込まれるものであり、例えば、シリコン基板121の酸化シリコン膜122上に設けられた磁性薄膜123は、例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜124で覆われ、その周りを螺旋状に巻回するように金属薄膜からなる配線125を設けたものである。
【0095】
なお、このようなマイクロインダクタでは、配線125は磁性薄膜123を必ずしも巻回するように設ける必要はない。図11には他の例のマイクロインダクタを示す。図11(a)は平面図、図11(b)は(a)のC−C′線断面図である。これらの図面に示すように、磁性薄膜123の上部を覆うように配線125Aを設けたマイクロインダクタ120Aとしてもよく、何れにしても、インダクタとして機能する。
【0096】
このようなマイクロインダクタにおいては、コアコイル型でもトロイダルコイル型でも、その特性を結晶粒内の磁化特性に依存しているから、小型化(薄膜化)には粒径の微小化が必須である。磁性薄膜123を上述した金属含有薄膜とすることにより、その成膜条件から膜中の粒径を容易に制御でき、かつ、数十nmの粒径での成膜が可能であるので、小型化が容易であるという利点がある。また、特に酸化シリコン膜上の成膜選択性より、多結晶シリコンのパターンニングに依存した成膜が可能であり、個別のパターニング条件の設定なしに、かつ、粒径の小さい薄膜による所望の微小パターンの形成が可能となり、電子回路としてのLSIと同チップ上に受動素子としてのインダクタの形成が可能となり、電子回路の機能向上、小型化、低コスト化を果たすことができる。
【0097】
図12には、微結晶金属薄膜を電極としたマイクロバリスタの一例を示す。図12(a)は平面図、図12(b)は(a)のD−D′線断面図である。これらの図面に示すように、マイクロバリスタ130は、例えば、半導体装置に組み込まれるものであり、例えば、シリコン基板131の酸化シリコン膜132上に設けられた下電極133と上電極134との間にバリスタ膜135を有するものである。なお、図12(a)では、下電極133からのリード線133aと、絶縁層136を介して設けられた上電極134からのリード線134aとを示している。
【0098】
かかるマイクロバリスタ130では、下電極133及び上電極134の一方又は両方を上述した金属含有薄膜とすることができる。なお、このように金属含有薄膜を電極として用いた場合、金属薄膜と比較してパターニングしやすいという利点があり、また、表面粗さを粗くすることにより、素子としての容量を増大することができるという利点がある。このような構成により、電子回路としてのLSIと同チップ上に保護素子としてのバリスタの形成が可能となり、小型化、低コスト化が果たせるという効果を奏する。
【0099】
なお、バリスタ膜135の代わりに誘電体膜を用いることにより、同様にマイクロキャパシタを構成することができる。
【0100】
<他の実施形態>
第1の実施の形態に用いた、図1に示す装置においては、チャンバ1内でハロゲンガスをプラズマ化することによりそのラジカルを形成したが、ラジカルの形成方法はこれに限る必要はない。例えば次のような方法によっても形成し得る。
1) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスに高周波の電界を作用させてこのハロゲンガスをプラズマ化する。
2) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスにマイクロ波を供給してこのハロゲンガスをプラズマ化する。
3) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスを加熱して熱的解離する。
4) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスに電磁波又は電子線を供給してこのハロゲンガスを解離させる。
5) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスを、触媒作用により解離させる触媒金属に接触させる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、半導体装置の製造の他、他の電子デバイスの製造に関する産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る金属含有薄膜の形成方法に使用する装置の概略を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における金属含有薄膜部材の形成方法の一例を説明する断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における金属含有薄膜部材の形成方法の他の例を説明する断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における金属含有薄膜部材の形成方法の他の例を説明する断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法を適用した半導体装置の一例のMOSトランジスタを概念的に示す説明図である。
【図6】本発明の半導体装置の製造方法を適用した半導体装置の他の例を概念的に示す説明図である。
【図7】本発明の半導体装置の製造方法の一例を概念的に示す説明図である。
【図8】本発明の半導体装置の製造方法の一例を概念的に示す説明図である。
【図9】本発明の半導体装置の製造方法の一例を概念的に示す説明図である。
【図10】本発明のマイクロデバイスの一例であるマイクロインダクタを模式的に表す図である。
【図11】本発明のマイクロデバイスの他の例であるマイクロインダクタを模式的に表す図である。
【図12】本発明のマイクロデバイスの一例であるマイクロバリスタを模式的に表す図である。
【符号の説明】
【0103】
1 チャンバ
3 被処理部材
8 プラズマアンテナ
11 被エッチング部材
21 作用ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にIV族元素からなるIV族薄膜を成膜した後、パターニングし、所定領域にIV族薄膜パターンを有する被処理体とする工程と、
この被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、前記IV族薄膜パターンを空間選択的に金属含有IV族薄膜パターンとする工程と
を具備することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記金属が、ニッケル、鉄、コバルト、チタン及び亜鉛から選択される少なくとも1種であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族元素が、シリコン、ゲルマニウム及び炭素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記金属含有IV族薄膜パターンが、多結晶シリコン薄膜であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させる際に、真空容器であるチャンバの内部にハロゲン化物を形成する金属を含む材料で形成した被エッチング部材を配設すると共に当該被エッチング部材にハロゲンを含む作用ガスをプラズマ化して得られるハロゲンラジカルを作用させることにより金属とハロゲンとの化合物である前駆体を形成する一方、前記被処理体を前記チャンバ内に収納した状態でその温度を前記被エッチング部材よりも低温に保持して前記前駆体を前記IV族薄膜パターンの表面に吸着させると共に前記ハロゲンガスのラジカルを作用させることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記金属含有IV族薄膜とする際に前記基板温度を200℃〜350℃とすることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記金属含有IV族薄膜とする際に前記チャンバ内の残留水分の分圧を、1×10−5Torr以下とすることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族薄膜が、前記所定領域以外の部分に保護膜を設けた基板を500℃〜1200℃とした条件下で、前記IV族元素を含有するIV族元素含有化合物ガス中に曝すことにより形成されたものであることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族薄膜の下側には、前記金属含有IV族薄膜パターンとする際に金属の拡散を規制する置換拡散防止膜が設けられていることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族薄膜パターンが、実質的に金属とIV族元素との化合物として機能することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜9の何れか一項に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族薄膜パターンが、実質的に金属薄膜として機能することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載する金属含有IV族薄膜の形成方法を用いて金属含有IV族薄膜パターンを形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、前記金属含有IV族薄膜パターンをMISトランジスタのゲート電極、ソース、ドレインの少なくとも1つとして製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載された方法で形成された金属含有IV族薄膜を含むことを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項15】
請求項14に記載のマイクロデバイスにおいて、前記金属含有IV族薄膜を磁性薄膜としたインダクタであることを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項16】
請求項14に記載のマイクロデバイスにおいて、前記金属含有IV族薄膜を電極としたキャパシタ又はバリスタであることを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項1】
基板の表面にIV族元素からなるIV族薄膜を成膜した後、パターニングし、所定領域にIV族薄膜パターンを有する被処理体とする工程と、
この被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、前記IV族薄膜パターンを空間選択的に金属含有IV族薄膜パターンとする工程と
を具備することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記金属が、ニッケル、鉄、コバルト、チタン及び亜鉛から選択される少なくとも1種であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族元素が、シリコン、ゲルマニウム及び炭素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記金属含有IV族薄膜パターンが、多結晶シリコン薄膜であることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記被処理体の表面に形成されたIV族薄膜パターンに、ニッケル、鉄、コバルトを含む遷移金属から選択される少なくとも1種である金属とハロゲンとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させる際に、真空容器であるチャンバの内部にハロゲン化物を形成する金属を含む材料で形成した被エッチング部材を配設すると共に当該被エッチング部材にハロゲンを含む作用ガスをプラズマ化して得られるハロゲンラジカルを作用させることにより金属とハロゲンとの化合物である前駆体を形成する一方、前記被処理体を前記チャンバ内に収納した状態でその温度を前記被エッチング部材よりも低温に保持して前記前駆体を前記IV族薄膜パターンの表面に吸着させると共に前記ハロゲンガスのラジカルを作用させることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記金属含有IV族薄膜とする際に前記基板温度を200℃〜350℃とすることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記金属含有IV族薄膜とする際に前記チャンバ内の残留水分の分圧を、1×10−5Torr以下とすることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族薄膜が、前記所定領域以外の部分に保護膜を設けた基板を500℃〜1200℃とした条件下で、前記IV族元素を含有するIV族元素含有化合物ガス中に曝すことにより形成されたものであることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族薄膜の下側には、前記金属含有IV族薄膜パターンとする際に金属の拡散を規制する置換拡散防止膜が設けられていることを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族薄膜パターンが、実質的に金属とIV族元素との化合物として機能することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜9の何れか一項に記載の金属含有IV族薄膜の形成方法において、
前記IV族薄膜パターンが、実質的に金属薄膜として機能することを特徴とする金属含有IV族薄膜の形成方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載する金属含有IV族薄膜の形成方法を用いて金属含有IV族薄膜パターンを形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、前記金属含有IV族薄膜パターンをMISトランジスタのゲート電極、ソース、ドレインの少なくとも1つとして製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載された方法で形成された金属含有IV族薄膜を含むことを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項15】
請求項14に記載のマイクロデバイスにおいて、前記金属含有IV族薄膜を磁性薄膜としたインダクタであることを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項16】
請求項14に記載のマイクロデバイスにおいて、前記金属含有IV族薄膜を電極としたキャパシタ又はバリスタであることを特徴とするマイクロデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−270251(P2008−270251A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106982(P2007−106982)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(506239658)株式会社フィズケミックス (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(506239658)株式会社フィズケミックス (37)
【Fターム(参考)】
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