説明

金属微粒子分散体

【課題】 大気圧下、不活性雰囲気での加熱処理によって、基材の上に体積抵抗値の低い金属薄膜の形成が可能な金属微粒子分散体、及び金属微粒子分散体を用いた金属薄膜の製造方法の提供。
【解決手段】 一次粒子径が30nm以下の金属微粒子及び分散媒を含む金属微粒子分散体であって、分散媒が直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有する金属微粒子分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄膜を形成するのに適した金属微粒子分散体及びこの分散体を用いる金属薄膜の製造方法に関する。本発明によって、電極、配線、回路等の導電性薄膜を容易に作成することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に金属薄膜を形成する方法には、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、金属ペースト法等が知られている。
真空蒸着法、スパッタ法、CVD法は、いずれも高価な真空装置を必要とし、成膜速度が遅いという問題がある。
メッキ法によると、導電性を有する基材の上に、比較的容易に金属膜を形成することが可能であるが、絶縁基材の上に形成する場合には、導電層をはじめに形成する必要があり、したがって、そのプロセスは煩雑なものになるという問題がある。また、メッキ法は溶液中での反応を利用するため、大量の廃液が副生し、この廃液処理に多大な手間とコストがかかるという問題がある。
【0003】
金属ペースト法は、金属フィラーを分散させた溶液を基材上に塗布し、加熱処理して金属薄膜を得る方法である。真空装置等の特別な装置を必要とせず、プロセスが簡易であるという利点を有するが、金属フィラーを溶融するには、通常、1000℃以上の高温を必要とする。したがって、基材は、セラミック基材等の耐熱性を有する基材に限られ、また、基材が熱で損傷したり、加熱により生じた残留応力により基材が損傷を受けやすいという問題もある。
一方、金属酸化物フィラーを分散させた金属酸化物ペーストを用いて、金属薄膜を形成するという方法も知られている。特許文献1には、結晶性高分子を含み、粒径300nm以下の金属酸化物を分散させた金属酸化物ペーストを加熱し、結晶性高分子を分解させて金属薄膜を得るという方法が開示されている。しかしながら、この方法では、300nm以下の金属酸化物を結晶性高分子中にあらかじめ分散させる必要があり、非常な手間を必要とするのに加えて、結晶性高分子を分解するのに400℃〜900℃の高温を必要とする。したがって、使用可能な基材は、その温度以上の耐熱性を必要とし、使用可能な基材に制限があるという問題がある。
【0004】
一方、金属フィラーの粒径を低減することによって、金属ペーストの焼成温度を低減するという技術は公知である。例えば、特許文献2には、粒径100nm以下の金属粒子を分散した分散液を用いて、金属薄膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、ここで必要となる100nm以下の金属粒子の製造方法は、低圧雰囲気で揮発した金属蒸気を急速冷却する方法であるために、大量生産が難しく、したがって、金属フィラーのコストが非常に高くなるという問題を有している。また、上記金属粒子は難焼失性の有機化合物に覆われているために、有機化合物を焼失させて良好な金属間結合を得るためには、酸素雰囲気での加熱処理か、あるいは減圧雰囲気での加熱処理が必要であり、銅等の特に酸化されやすい金属種に対して、その金属薄膜を得ることは難しいことが問題となっている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−98195号公報
【特許文献2】特許第2561537号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、基材上に塗布・加熱処理して金属薄膜を得ることができる金属微粒子分散体に関し、大気圧下、不活性雰囲気での加熱処理により、抵抗値の低い金属薄膜の形成が可能な金属微粒子分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成を有するものである。
(1) 一次粒子径が30nm以下の金属微粒子及び分散媒からなる金属微粒子分散体 であって、分散媒が直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有する金属微粒子分 散体。
(2) 直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物は、ポリエチレングリコール構造及び/又はポ リプロピレングリコール構造を含む化合物であり、分子量が150以上600以 下である上記(1)に記載の金属微粒子分散体。
(3) 直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の少なくとも一方の末端に、炭素数1〜4のア ルキル基を有する、上記(1)または(2)に記載の金属微粒子分散体。
(4) 金属微粒子は、銅、ニッケル、コバルト、銀、白金、金、モリブデン及びチタン から選ばれる少なくとも1つである上記(1)又は(2)に記載の金属微粒子分 散体。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の金属微粒子分散体を基板に塗布した 後、加熱処理して金属薄膜を形成させることからなる金属薄膜の製造方法。
(6) 加熱処理温度は、80℃以上400℃以下である上記(5)に記載の金属薄膜の 製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属微粒子分散体は、基材上に塗布して、大気圧下、不活性雰囲気で加熱処理することにより、基板上に体積抵抗値の低い金属薄膜を形成することが可能である。これらの金属微粒子分散体は、金属/樹脂積層体、電磁シールド金属薄膜等の金属薄膜形成材料、金属配線材料、導電材料等の用途に好適に用いられる。
また、低粘度の金属微粒子分散体を調整することにより、インクジェット法等を用いた配線直描用途に本発明の金属微粒子分散体を用いることも可能であり、必要な場所のみに本分散体を塗布・焼成することで省資源で低コストな配線形成が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の金属微粒子分散体は、一次粒子径が30nm以下の金属微粒子と直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有することに特徴がある。
本発明に用いられる金属微粒子の粒子径は30nm以下であり、好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。粒子径が30nmより大きいと、金属微粒子間の融着性が低下し、得られる金属薄膜の緻密性が低下する。
金属微粒子は、加熱処理によって微粒子間が融着するものであれば、いかなるものも使用可能である。例えば、銅、ニッケル、コバルト、銀、白金、金、モリブデン、チタン等が挙げられる。これらの金属微粒子は、市販品を用いてもよいし、公知の方法を用いて調製することも可能である。
【0010】
金属微粒子分散体中に直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が含有されていると、加熱処理により、分散体から金属薄膜を形成するときの成膜性が向上し、かつ抵抗値が低減する。直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物は、大気圧下、不活性雰囲気での加熱処理によっても分解・焼失するので、大気圧下、不活性雰囲気での加熱処理によっても金属薄膜を形成することが可能であり、酸化されやすい金属微粒子を含む分散体に対して特に有効である。直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物は、易分解・易焼失性バインダーとして加熱処理中の金属微粒子間の局所的な造粒を防ぐため、金属薄膜形成時の成膜性が向上し、抵抗値が低減するものと考えられる。
【0011】
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は、繰り返し単位が炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましい。直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は、2元以上のポリエ−テルコポリマ−やポリエ−テルブロックコポリマ−であってもよい。具体的には、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ルのようなポリエ−テルホモポリマ−のほかに、エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル、エチレングリコ−ル/ブチレングリコ−ルの2元コポリマ−、エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル/エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル/エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル、エチレングリコ−ル/ブチレングリコ−ル/エチレングリコ−ルなどの直鎖状の3元コポリマ−が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ブロックコポリマ−としては、ポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルポリブチレングリコ−ルのような2元ブロックコポリマ−、およびポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ルポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ルポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルポリブチレングリコ−ルポリエチレングリコ−ルなどの直鎖状の3元ブロックコポリマ−のようなポリエ−テルブロックコポリマ−が挙げられる。
【0012】
好ましい直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物は、ポリエチレングリコール構造及び/又はポリプロピレングリコール構造を含む化合物であり、分子量が150以上600以下であるものである。ポリエチレングリコール構造及び/又はポリプロピレングリコール構造を含む化合物は、容易に分解・焼失するので好ましい。また、分子量が上記範囲にあると、金属薄膜形成時の成膜性が極めて高く、分解・焼失性がさらに向上するので好ましい。分子量が150より小さいと、加熱処理して金属薄膜を形成するときの成膜性が低下する傾向があり、また、分子量が600を超えると、焼成して得られる金属薄膜の体積抵抗値が高くなる傾向がある。
【0013】
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物の末端の構造は、金属微粒子の分散性や分散媒への溶解性に悪影響を与えない限りにおいて特に制限は無いが、少なくとも一つの末端がアルキル基であると、焼成時におけるポリエーテル化合物の分解・焼失性が向上し、得られる金属薄膜の体積抵抗値が下がるので好ましい。アルキル基の長さが長すぎると焼失性が低下する傾向があるので、末端のアルキル基の長さは、炭素数1〜4が好ましい。
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物の特に好ましい構造は、一つの末端がアルキル基であり、もう一方の末端が水酸基である構造であり、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリプロピレングリコールメチルエーテル等を挙げることができる。
【0014】
金属微粒子を分散させる分散媒としては、粒子径が30nm以下の金属微粒子を均一に分散させることが可能なものであれば、特に制限はなく、有機化合物であっても水であってもよい。分散媒は、分散体中で金属微粒子を分散させる役割に加えて、分散体の粘度を調整する役割がある。有機分散媒の例として、アルコール、エーテル、エステル、アミド、スルホキシド等が挙げられる。液状の多価アルコールは、その沸点が適度に高いため揮発しにくく、印刷性に優れるので好ましく用いられる。多価アルコールを例示すると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等である。これらの分散媒は単独で用いてもかまわないし、混合して用いてもかまわない。また、上記ポリエーテル化合物の中で液状のものを、分散媒として使用することも可能である。
【0015】
本発明の金属微粒子分散体は、分散液の状態と、ずり応力や熱を加えることによって流動可能な固体状態のものがある。固体状態のものには、金属微粒子と分散媒及び/又はポリエーテル化合物が相互作用によってネットワークを形成したゲル状態のものも含まれる。
分散体中の金属微粒子の割合に制限はないが、分散体総量に対して、質量%で、好ましくは5%以上90%以下、より好ましくは20%以上80%以下である。金属微粒子の質量がこれらの範囲にある場合には、分散体中の金属微粒子の分散状態が良好であり、例えば、1回の塗布・加熱処理によって適度な厚さの金属薄膜が得られるので好ましい。
【0016】
分散体中のポリエ−テル化合物の割合は、分散体総量に対して、質量%で、好ましくは0.1〜70%、より好ましくは1〜50%である。ポリエ−テル化合物の添加量が0.1%未満である場合には、金属薄膜中の金属粒子間の緻密性が低くなることがある。一方、ポリエ−テル化合物の添加量が70%を越えると、分散体の粘度が増加する場合がある。
金属微粒子に対するポリエーテル化合物の好ましい質量比は、用いる微粒子の種類とポリエーテル化合物の種類により異なるが、通常は0.01〜10の範囲が好ましい。この範囲にあると金属粒子間の緻密性が向上し、また、得られる金属薄膜の体積抵抗値が低下する。
【0017】
次に、金属微粒子分散体の製造方法について述べる。
金属微粒子と上記構成物を分散させる方法としては、粉体を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、金属微粒子と分散媒とポリエーテル化合物からなる混合物を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち、複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。金属微粒子以外の構成物が固体である場合には、これらを液状になる温度に加熱しながら金属微粒子を加え、上記操作を行うことが好ましい。分散体が流動可能な固体となる場合には、ずり応力を加えながら分散を行うことが好ましく、3本ロール法、ミキサー法等が好ましい。
【0018】
次に、本発明の金属微粒子分散体を用いて、基板上に金属薄膜を形成する方法を説明する。
液状の金属微粒子分散体を用いて、基板上に金属薄膜を形成するには、分散体を基板に塗布する場合に用いられる一般的な方法を用いることができる。例えばスクリーン印刷方法、ディップコーティング方法、スプレー塗布方法、スピンコーティング方法、インクジェット方法、コンタクトプリンティング方法等が挙げられる。分散体の粘度が高い場合には、スクリーン印刷法等が好ましく、また分散体の粘度が低い場合には、インクジェット法等が好ましい。
【0019】
金属微粒子分散体が流動可能な固体である場合には、分散体を別のキャリアフィルム上に塗布し、これを基板上に転写するという方法も用いることができる。
基板としては、無機及び有機基板いずれも使用可能である。無機基板としては、金属板、ガラス板、ITO(インジウム錫オキサイド)等のセラミック基板等を例示できる。有機基板としては、金属微粒子分散体の加熱処理温度において、熱的な損傷を受けない限りにおいて制限はなく、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、エポキシ等の基板を使用可能である。
【0020】
分散体を基板上に塗布あるいはフィルム上に塗布したものを基板上に転写した後に、基板を、金属微粒子を融着するに充分な温度で加熱処理することによって、基板上に金属薄膜を形成させる。
これらの加熱処理における、好ましい加熱処理温度は、80℃以上400℃以下、より好ましくは100℃以上300℃以下である。加熱処理温度が80℃未満では、金属微粒子分散体自体の保存安定性が悪くなる傾向がある。また400℃より高い場合には、多くの有機基材の耐熱性を超えてしまい、有機基材上の使用が不可能となる場合が多い。
【0021】
得られる金属薄膜が酸化されやすい場合には、非酸化性雰囲気中において加熱処理することが好ましい。非酸化性雰囲気とは、酸素等の酸化性ガスを含まない雰囲気であり、不活性雰囲気と還元性雰囲気がある。不活性雰囲気とは、例えばアルゴン、ヘリウム、ネオンや窒素等の不活性ガスで満たされた雰囲気である。また、還元性雰囲気とは、水素、一酸化炭素、アンモニア等の還元性ガスが存在する雰囲気を指す。これらのガス中には、得られる金属の酸化に寄与しない程度ならば、酸素を含んでいてもかまわない。その際の酸素濃度は、好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。これらのガスは、焼成炉中に充填して密閉系として焼成してもよいし、あるいは焼成炉を流通系にしてこれらのガスを流しながらしてもよい。
本発明の分散体は、大気圧下の加熱処理において、低抵抗の金属薄膜を得ることができるが、加熱雰囲気を減圧にして有機成分の分解・揮発を促進することで、より低温での加熱処理が可能になる場合もあるので、減圧雰囲気で加熱処理しても構わない。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例中で用いている測定方法については、次のとおりである。
(1)金属微粒子の一次粒径
カーボン蒸着された銅メッシュ上に、溶解・希釈した分散液を1滴たらし、減圧乾燥したサンプルを作成する。このサンプルを透過型電子顕微鏡(JEM-4000FX、(株)日立製作所製)を用いて観察し、視野の中から、一次粒径が比較的そろっている個所を3ヶ所選択し、被測定物の粒径測定に最も適した倍率(通常10万倍程度)で撮影する。おのおのの写真から、一番多数存在すると思われる一次粒子を3点選択し、その直径をものさしで測り一次粒径を算出する。これらの値の平均値を一次粒径とする。
(2)金属薄膜の体積抵抗率
低抵抗率計「ロレスタ−(登録商標)」GP(三菱化学(株)製)を用いて測定した。
【0023】
[実施例]
無水酢酸銅(和光純薬工業(株)製)のヒドラジン還元によって得られた平均1次粒径8nmの酸化第一銅微粒子0.5gに、ジエチレングリコール0.2gとポリエチレングリコールメチルエーテル(平均分子量350、日本油脂(株)製)0.5gを加え、超音波分散を施して、酸化第一銅分散体を調整した。同分散体を、オートクレーブ中50℃で4MPaの水素圧力で水素還元し、平均1次粒径10nmの銅微粒子を含む銅微粒子分散体を得た。酸素を含まないグローブボックス中で、スライドガラス上に、長さ5cm、幅1cm、厚み50μmになるように上記銅分散体を塗布した後、焼成炉で窒素ガスを0.1リットル/分の流量で流した。焼成炉の温度を室温から350℃まで1時間かけて昇温し、350℃に到達後、この温度でさらに1時間加熱処理した。冷却後、厚み3μm、体積抵抗率は、5×10−6Ωcmの銅被膜を得た。
【0024】
[比較例1]
平均粒子径30nmのCuOナノ粒子(シーアイ化成(株)製)1gに、ジエチレングリコール50gとポリエチレングリコールメチルエーテル(平均分子量350、日本油脂(株)製)0.5gを加え、超音波分散機により分散処理を行った。得られた分散液をオートクレーブに入れ、70℃、4MPaの水素圧力で水素還元を行って、平均1次粒径40nmの銅微粒子を含む分散体を得た。本分散体を実施例と同様の方法で加熱処理したところ、得られた銅被膜の体積抵抗率は4×10−5Ωcmと、実施例に比べて一桁高かった。
【0025】
[比較例2]
実施例で得られた銅微粒子分散体からポリエチレングリコールメチルエーテルを取り除き、銅微粒子とジエチレングリコールのみを含む分散体を得た。本分散体を実施例と同様の方法で加熱処理したところ、銅被膜は得られず、得られたものは銅の造粒体であった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明により、大気圧下、不活性雰囲気において、比較的低温での処理で、基板上に抵抗値の低い金属薄膜を形成することが可能である。基板上に塗布・積層する金属微粒子分散体の厚みを制御することによって、得られる金属層の膜厚を任意に制御することが可能である。特に微細回路を形成する際に必要となる極薄の金属層を容易に形成できるという利点を有する。得られた基板−金属薄膜積層体は、実装分野における樹脂付き金属箔や電磁シールドフィルム等の用途に好適に用いられる。
本発明の金属微粒子分散体が、特に好適に用いられるのは配線直描用途である。これはあらかじめ電気回路の形態に金属微粒子分散体を印刷・塗布し焼成することで、基板上に電気配線を直描することが可能であり、微細配線基板を安価に作れるという利点がある。配線直描の例としては、プラズマディスプレイパネルや液晶パネル等のフラットパネルディスプレイ製造におけるガラス基板上へのバス電極、アドレス電極の形成や、ポリイミド基板等の樹脂基板への配線回路形成等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子径が30nm以下の金属微粒子及び分散媒からなる金属微粒子分散体であって、分散媒が直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有する金属微粒子分散体。
【請求項2】
直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物は、ポリエチレングリコール構造及び/又はポリプロピレングリコール構造を含む化合物であり、分子量が150以上600以下である請求項1に記載の金属微粒子分散体。
【請求項3】
直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の少なくとも一方の末端に、炭素数1〜4のアルキル基を有する、請求項1又は2に記載の金属微粒子分散体。
【請求項4】
金属微粒子は、銅、ニッケル、コバルト、銀、白金、金、モリブデン及びチタンから選ばれる少なくとも1つである請求項1又は2に記載の金属微粒子分散体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属微粒子分散体を基板に塗布した後、加熱処理して金属薄膜を形成させることからなる金属薄膜の製造方法。
【請求項6】
加熱処理温度は、80℃以上400℃以下である請求項5に記載の金属薄膜の製造方法。

【公開番号】特開2006−9120(P2006−9120A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190914(P2004−190914)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】