説明

金属端子をインサートした樹脂複合成形体及びその製造方法

【課題】従来の製造工程のまま、電子回路内部を腐食させる水分や湿気等の外的影響物質の浸入を防ぎ得る、充分な気密性を有する樹脂複合成形体を安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】予め金属端子1の板幅側の端部に、樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状9を少なくとも1箇所設け、この溝形状9が金属端子1の板幅側端面との交点になす角が、90°より小さい鋭角形状を少なくとも1つ有する形態とすることにより、樹脂2が凝固する際の体積変化の現象を利用して、金属端子1と樹脂2とを溝形状9の内部で部分的に密着させ、気密性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属端子をインサートし、その一部が樹脂の筐体より突き出し電気的接続部を有する樹脂複合成形体であり、且つ、実用上必要とされる規定量の気密性を有する成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属端子をインサートし、その一部が樹脂の筐体より突き出し電気的接続部を有する樹脂複合成形体は、センサー部品等、各種電気的な接続を目的とした電子回路を有する多くの産業分野において使用されている。なかでも自動車部品の分野では、過酷な環境条件下で使用される事から、筐体である樹脂部の耐久性は基より、水分や湿気等の電子回路内部を腐食させる外的影響物質の浸入を防ぐ気密性を確保する必要がある。
【0003】
しかしながら、従来の金属端子のインサート成形法では、成形品の凝固過程や環境温度の変化により、金属端子と樹脂とが接する界面には微小な隙間が生じてしまい、充分な気密性を確保することが困難であった。このため、金属端子の表面をケミカルエッチングにより粗面化する方法や、金属端子の周囲に予め接着剤を塗布する方法、あるいは成形後2次的に金属端子が露出する部位に接着剤を塗布、固化させ気密性を確保する方法が採られていた。
【0004】
特許文献1には、金属部品がインサートされ、金属部品が樹脂部分より突出している樹脂複合成形品を製造する方法であって、予め銅,銅合金,アルミニウム,アルミニウム合金の何れかからなる金属部品表面をケミカルエッチングし、次にこの金属部品を射出成形機の金型にインサートしてポリアセタール樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂,ポリブチレンテレフタレート樹脂,ポリフェニレンサルファイド樹脂,ポリアミド樹脂,液晶性ポリエステル樹脂,ポリイミド樹脂,シンジオタクチックポリスチレン樹脂及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂からなる群の中から選ばれた少なくとも1種以上の樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂材料を用いて射出成形することを特徴とする、金属部品が樹脂部分より突出している樹脂/金属界面が、気密性を有する金属インサート樹脂複合成形品の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、電極の少なくとも一部分を樹脂中に埋め込んでなる電極固定構造において、前記電極と前記樹脂との間に、これら双方に対して密着性の良い別の樹脂層が介在せしめられていることを特徴とする電極固定構造や、電極の少なくとも一部分を樹脂中に埋め込んでなる電極固定構造の形成方法において、前記電極と前記樹脂との双方に対して密着性の良い樹脂を前記電極表面の所定箇所に塗布し、次いで前記電極の周囲に電極固定用の樹脂を注入して硬化させることを特徴とする電極固定構造の形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3467471号公報
【特許文献2】特開昭62−134232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気回路装置の一部をなす樹脂複合成形体には、デザインのコンパクト化が求められる事から、これに用いる金属端子は自ずとその形状が複雑になり、また端子の電気的接点部分には平滑面が求められる。したがって、金属端子の表面を粗面化して気密性を向上させるエッチング法では、粗面化するエリアを限定する必要がある。したがって、部分的な粗面化の為にはマスキング処理等の工程が必要となる。また成形品を2次的に接着剤により封止する方法では、接着剤を塗布,硬化させる工程が必要である。つまり、ケミカルエッチングによる粗面化や、2次的な接着剤封止の周知技術により、目的とする気密性の確保は実現可能であるが、製造工程が煩雑になりコスト高に繋がる。
【0008】
係る問題点を鑑み、本発明の目的は、電子回路内部を腐食させる水分や湿気等の外的影響物質の浸入を防ぎ得る、充分な気密性を有する樹脂複合成形体を、製造工程を煩雑にすることなく安価に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
金属端子をインサートし、その一部が樹脂の筐体より突き出し電気的接続部を有する樹脂複合成形体は、金属端子を成形金型内にインサート位置決めし、樹脂を射出成形することにより製造する。または、金属端子が予め樹脂成形された1次成形品を成形金型内にインサート位置決めし、2次成形する方法により製造する。これら何れの製造方法であっても、成形金型内で溶融樹脂が凝固する際には前記樹脂の収縮に伴う体積変化が起こり、インサートされた金属端子と該樹脂の接する界面には微小な隙間が生じる。
【0010】
本発明では、予め金属端子の板幅側の端部に、樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状を少なくとも1箇所設け、この溝形状が金属端子の板幅側端面との交点になす角が、90°より小さい鋭角形状を少なくとも1つ有する形態とすることにより、樹脂が凝固する際の体積変化の現象を利用して、金属端子と樹脂とを溝形状の内部で部分的に密着させ、気密性を向上させる。
【0011】
金属端子に設ける溝形状は、金属端子のプレス加工の際に容易に成形可能な形状であり、従来の製造工程のままである。したがって、製造コストの増加が生じず気密性の確保が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係わる金属端子をインサートし、その一部が樹脂の筐体より突き出し電気的接続部を有する樹脂複合成形体の製造方法により、製造コストの増加が生じず、電子回路内部を腐食させる水分や湿気等の外的影響物質の浸入を防ぎ得る、充分な気密性を有する樹脂複合成形体を、製造工程を煩雑にすることなく安価に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係わる樹脂の収縮、体積変化を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるセンサカバー樹脂モールド品の外観図である。
【図3】本発明の実施形態に係わるセンサカバー樹脂モールド品の詳細図である。
【図4】本発明の実施形態に係わるセンサカバー樹脂モールド品コネクタ部の半裁断面図である。
【図5】センサカバー樹脂モールド品コネクタ部の半裁断面図であり、本発明の実施形態に係わる形状を示した図である。
【図6】本発明の実施形態に係わる樹脂の収縮,体積変化を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係わる気密性評価に用いた試験装置の概略半裁断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係わるセンサカバー樹脂モールド品の気密性評価試験結果である。
【図9】本発明の実施形態に係わるセンサカバー樹脂モールド品のヒートサイクル試験後の気密性評価試験結果である。
【図10】本発明の実施形態に係わる金属端子の板幅側の端部に設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状である。
【図11】本発明の実施形態に係わる金属端子の板幅側の端部に設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状である。
【図12】本発明の実施形態に係わる金属端子の板幅側の端部に設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状である。
【図13】本発明の実施形態に係わる金属端子の板幅側の端部に設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係わる樹脂複合成形体の実施形態を、図面に基づき説明する。
【0015】
図2は、本発明の1実施形態であるセンサカバー樹脂モールド品の外観、及びコネクタ部を半裁断面した図である。
【0016】
図2において、センサカバー樹脂モールド品100は、電気的接続を目的に、インサート成形された銅系合金材からなる複数本の金属端子1を有しており、金属端子1の一端3が、熱可塑性樹脂PBT(ポリブチレンテレフタレート)により形成される筐体樹脂部2の外部空間であって、筐体樹脂部2が形成するコネクタ内の空間に露出し、もう一方の端部4が、筐体樹脂部2が形成するカバー内部の空間に突き出し露出した形態をなしている。
【0017】
筐体樹脂部2が形成するカバー内部空間には、電子回路基板5を搭載しており、図3に示す通り、金属端子1がカバー内部の空間に突き出し露出する端部4と、電子回路基板5上の接合突起部5aは導体6により溶接接合され、外部機器との電気信号を伝達処理する電子回路を構成している。
【0018】
センサカバー樹脂モールド品100は、相手側部品に取り付ける筐体樹脂部2の端部に、電子回路内部を腐食させる水分や湿気等の外的影響物質の浸入を防ぐ事を目的としてゴムシール部品7を搭載しており、カバー内部空間の気密性を確保している。しかしながら金属端子1の端部3、及び端部4の様に筐体樹脂部2の内部と外部に突き出し露出した部位がある場合、金属端子1が筐体樹脂部2中に埋設される範囲において、金属端子1と筐体樹脂部2が接する界面に隙間が生じた際、必要とされる内部と外部間における充分な気密性を確保する事ができない。
【0019】
図4は、筐体樹脂部2のコネクタ部を半裁断面した図である。また、図4のA部を丸囲みした部位において、金属端子1の周囲を被う筐体樹脂部2が、横方向を支配的として収縮、体積変化した状態を示した図がA部詳細図である。
【0020】
高温・高圧で金型内に射出された樹脂は、一旦金属端子1に沿い隙間が無い状態で充填される。その後金型内での樹脂の冷却凝固に伴い、金属端子1の周囲を被う樹脂が収縮、体積変化することから、金属端子1と筐体樹脂部2の界面に隙間8が生じる。そしてその量は、成形条件及び樹脂の組成が一定の基では、金属端子1周囲の樹脂体積に比例する。
【0021】
しかしながら、金属端子1の周囲を被う樹脂の収縮は、周囲の樹脂体積が均一でない場合や、繊維状の充填材を含む樹脂材料による収縮の異方性などにより、その支配的な方向性をコントロールする事は非常に困難である。
【0022】
係る状況に鑑み、樹脂が凝固する際の体積変化の現象を利用し、予め金属端子の板幅側の端部に、少なくとも1箇所設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状を設け、本溝形状が金属端子1の板幅側端面との交点になす角が、90°より小さい鋭角形状を少なくとも1つ有する形態にすることにより、金属端子1と樹脂を部分的に密着させ、気密性を向上させた本発明の実施形態例を図5に示す。
【0023】
複数本の金属端子1には、予め金属端子1の板幅側の端部に、少なくとも1箇所設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状9を有している。つまり、B部詳細図に示す通り、本溝形状9が金属端子1の板幅側端面との交点になす角10が、90°より小さい鋭角形状11を少なくとも1つ有する形態である。この形態によれば、溝形状9の深さ方向において、溝形状9の入口側端部に対して、深さ方向奥側が金属端子の長手方向に溝形状を広げるように、溝形状9が形成されている。或いは、深さ方向奥側の側壁面に対して入口側の側壁面が溝の内側に向けて突き出すように、言い換えれば、入口側の側壁面に対して深さ方向奥側の側壁面が凹部を形成するように窪んだ形状に、溝形状9が形成されている。また、溝形状端部(板幅側端面と溝形状との交点、或いは板幅側端面と溝形状との交線上)には、溝形状内部に充填した樹脂の幅狭部に生じる引張り応力を、R形状で分散させることを目的としたコーナーR12を有しており、プレス加工で容易に成形が可能な形状である。本溝加工を施した金属端子1を成形金型内にインサートし、射出成形した際の樹脂の収縮変化を図1に示す。
【0024】
図1左側は、金属端子1の周囲を被う左側の筐体樹脂部2aに、左方向を支配的とした収縮変化が生じた際の状態を示しており、図1右側は、金属端子1の周囲を被う右側の筐体樹脂部2bに、下方向を支配的とした収縮変化が生じた際の状態を示している。高温・高圧で金型内に射出された樹脂は、一旦金属端子1に沿い隙間が無い状態で充填される。その後金型内での樹脂の冷却凝固に伴い、金属端子1の周囲を被う樹脂が収縮、体積変化することから、金属端子1と筐体樹脂部2の界面に隙間8が生じる。しかしながら、金属端子1に設けた鋭角形状11を形成する溝形状9の内部に囲まれ充填された樹脂においては、何れの場合も金属端子1に設けた鋭角形状11の少なくとも1面において、樹脂の収縮挙動が鋭角形状11面に垂直方向の圧縮応力を生み出す方向に作用する事から、界面隙間8を部分的に遮断するシール部13を形成することになる。従って、金属端子1の板幅方向両側面からの気密漏れが無くなり、気密性が向上する。
【0025】
更に、溝形状9がもたらす効果として、板厚方向側の気密漏れが低減することが挙げられる。つまり、溝形状9を設けることにより、金属端子1の板幅14から溝形状9の奥行き寸法15の領域分だけ発生する界面隙間の長さが減じられ、もって板厚側の気密漏れが可能な界面断面積16が減少し、漏れ流体の圧力損失が増加するからである。したがって、溝形状9の奥行き寸法15はより大きな事が望ましいが、金属端子1の剛性、及びプレス加工の加工限界を考慮すると、金属端子1の板幅14から板厚17の値を減じた値よりも小さい値が望ましい。
【0026】
図1に示す筐体樹脂部2の収縮変化に伴いシール部13には、金属端子1に外的な力が作用しない限り、筐体樹脂部2の成形収縮率相当分の圧縮応力が加わることになり、更に環境温度の変化に伴い、その値が変動する事が予測される。つまり、常温下では成形収縮率相当分のひずみがシール部13の樹脂部に生じており、環境温度の変化に伴いその値が変化する。しかしながら、金属と樹脂との熱膨張差を考慮すると、樹脂側の膨張率が大きく、シール部13が開口し隙間を生じる方向には変化しないことから、目的とする気密性は確保される。
【0027】
一方、本発明においては樹脂特有のクリープ破壊に対する配慮が必要である。つまり、図5B部詳細に示す通り、予め金属端子の板幅側の端部に少なくとも1箇所設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状9は、本溝形状が金属端子の板幅側端面との交点になす角が、90°より小さい鋭角形状11を少なくとも1つ有する形態であることに加え、溝形状端部には、溝形状9内部に充填した樹脂の幅狭部に生じる引張り応力を、R形状で分散させることを目的としたコーナーR12を施すこと、及び金属端子1の板幅端面側の溝幅18(図6参照)は、図1断面C−Cに示す金属端子1の厚さ寸法17より大きく(好ましくは1.5倍以上)設定することにより、溝内部に充填した樹脂の幅狭部に生じる引張り応力を樹脂断面積で分散させることが肝要である。
【0028】
尚、図6に示す通り金属端子1に設ける溝幅の端部の値(溝幅)18は、金属端子1の周囲を被う樹脂の形態を考慮した上で設定する必要がある。つまり、溝形状9内部に充填した樹脂の長手方向収縮中心19に向けた収縮が支配的となる場合、溝形状9の内面全周に界面隙間8が形成されるため、これを避け得る体積バランスで寸法を設定することが肝要であり、使用する金属端子1の厚さ寸法17、及び使用する樹脂材料の特性も考慮して調整することが望ましい。
【0029】
以上の実施例において、成形条件一定の基、本発明に係る溝形状を設けた金属端子、及び溝無し金属端子のセンサカバー樹脂モールド品を製作し、図7に示す試験装置を用い気密性を評価した結果を以下に述べる。
【0030】
センサカバー樹脂モールド品100を、試験装置上に固定された治具20に位置決めセットし、センサカバー樹脂モールド品100の内部空間上端面21に全周が密着する形に形成され、シール性を持たせたゴム部品22を装着固定した治具23を、120Nの圧着力で加圧固定する。その後、センサカバー樹脂モールド品100の内部空間24を70kPaの圧力で減圧,安定化させた後、内部圧力の測定を開始し、その変化量と内部空間24の容積により規定時間あたりの漏れ量を評価した。
【0031】
その結果、図8に示す試験結果の通り、溝形状の無い金属端子を用いたセンサカバー樹脂モールド品(n=3)の漏れ量アベレージを1とした場合、本発明に係る溝形状9を設けた金属端子を用いたセンサカバー樹脂モールド品では、35%〜45%の漏れ量低減を確認した。
【0032】
次に同じセンサカバー樹脂モールド品を用い、耐ヒートサイクル試験を実施した結果を図9に示す。評価条件は−58℃(1hr)⇔150℃(1hr)を1サイクル(1サイクル=4hr)とし、42サイクル毎に樹脂複合成形体を槽内から取り出し400サイクル時までを、上記の気密性試験を行った。その結果、評価品全数において漏れ量の増加は生じておらず、本発明の製造方法により得られる樹脂複合成形体は、過酷な環境下においても優れた気密性を保持し得る事を確認した。
【0033】
以上の実施例であるセンサカバー樹脂モールド品は、銅系合金材を用いた金属端子をインサートし、樹脂筐体部にPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂を用いているが、使用できる金属端子、及び樹脂材はこれに限定されるものではなく、任意に選定することができる。また、本発明の主旨を逸脱しない限り、予め金属端子の板幅側の端部に少なくとも1箇所設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状9の形態は、これに限定されるものではなく、図10に示す様に金属端子の板幅寸法が比較的広く、溝形状9の奥行き寸法15と板厚さ17との関係において、プレス加工が許容されるものについては、金属端子両側端部の相対する位置に溝形状9を配置しても良い。また、図11に示す様に、溝形状9を形成する鋭角形状11と金属端子の板幅側端面との交点になす角10が、90°より小さい鋭角形状は少なくとも1つ有していればよく、もう片側の溝形状9がなす角は直角か、図12に示す様に90°より大きな鈍角形状であっても良い。また、1本の金属端子に設ける溝形状9の数は、図13に示す通り複数個あっても良い。
【0034】
上記各実施例によれば、プレス加工で成形する金属端子の形状を変えるだけでよいので、従来の製造工程のままで新たに工程を追加する必要が無く、電子回路内部を腐食させる水分や湿気等の外的影響物質の浸入を防ぎ得る、充分な気密性を有する樹脂複合成形体を安価に製造することができる。
【0035】
尚、板圧方向はプレス加工において打ち抜かれる方向であり、板幅方向は板圧方向に略垂直な方向である。
【符号の説明】
【0036】
1 金属端子
2 筐体樹脂部
3,4 金属端子の一端
5 電子回路基板
5a 接合突起
6 導体
7 ゴムシール部品
8 界面隙間
9 溝形状
10 溝形状が金属端子の板幅側端面との交点になす角
11 鋭角形状
12 コーナーR
13 シール部
14 金属端子の板幅寸法
15 溝形状9の端面からの奥行き寸法
16 界面断面積
17 金属端子の板厚さ寸法
18 端部溝幅寸法
19 長手方向収縮中心
20,23 試験治具
21 内部空間上端面
22 ゴム部品
24 内部空間
100 センサカバー樹脂モールド品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属端子をインサートし、その一部が樹脂の筐体より突き出して電気的接続部を形成する金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法において、
予め金属端子の板幅側の端部に樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状を少なくとも1箇所設け、該溝形状が前記金属端子の板幅側端面との交点になす角が、90°より小さい鋭角形状を少なくとも1つ有する形態とし、溶融樹脂が凝固する際の体積変化の現象を利用して前記金属端子と前記樹脂とを前記溝形状の内部で部分的に密着させることを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法において、
前記金属端子の板幅側端面と溝形状との交点にR形状を形成し、溝形状内部に充填した樹脂の幅狭部に生じる引張り応力を前記R形状で分散させることを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法において、
前記金属端子の板幅端面側の溝幅が金属端子板厚さより大きく設定され、溝内部に充填した樹脂の幅狭部に生じる引張り応力を樹脂断面積で分散させることを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法において、
前記金属端子の板幅端面側からの溝形状の奥行き寸法が、前記金属端子の板幅から板厚の値を減じた値よりも小さい値であることを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法において、
前記溝形状が、前記金属端子の板厚さ側の気密漏れが可能な界面断面積を減少させる形態であることを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体の製造方法。
【請求項6】
金属端子をインサートし、その一部が樹脂の筐体より突き出して電気的接続部を形成する樹脂複合成形体において、
金属端子の板幅側の端部に、少なくとも1箇所設けた樹脂の圧縮応力を生み出す溝形状を有し、該溝形状が金属端子の板幅側端面との交点になす角が、90°より小さい鋭角形状を少なくとも1つ有する形態であることを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体。
【請求項7】
請求項6に記載の金属端子をインサートした樹脂複合成形体において、
前記金属端子の板幅側端面と溝形状との交点にR形状を形成したことを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体。
【請求項8】
請求項6に記載の金属端子をインサートした樹脂複合成形体において、
前記金属端子の板幅端面側の溝幅が金属端子板厚さより大きく設定されたことを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体。
【請求項9】
請求項6に記載の金属端子をインサートした樹脂複合成形体において、
前記金属端子の板幅端面側からの溝形状の奥行き寸法が、前記金属端子の板幅から板厚の値を減じた値よりも小さい値であることを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体。
【請求項10】
請求項6に記載の金属端子をインサートした樹脂複合成形体において、
前記溝形状が、前記金属端子の板厚さ側の気密漏れが可能な界面断面積を減少させる形態であることを特徴とする金属端子をインサートした樹脂複合成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−101394(P2012−101394A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250388(P2010−250388)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】