説明

金属線を有する基板及びその製造方法

【課題】優れた導電性を有する基板を容易に製造できる製造方法を提供すること。
【解決手段】金属線14を有する基板10の製造方法であって、基板層12に金属層14aを積層する工程と、金属層14aの表面の少なくとも一部を樹脂層16で被覆する工程と、樹脂層16により被覆されていない金属層14aの部分をエッチングにより除去することで、基板層12上に金属線14を形成する工程と、を含む、基板10の製造方法とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属線を有する基板と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明導電膜の需要がディスプレイ等を中心に伸びている。透明導電膜の導電材料として、金属や黒鉛等が用いられる。金属は電気をよく通すが可視光を反射してしまい、黒鉛は電気を通すが可視光を吸収して透明性を示さないので、これらを用いた導電膜は、導電性を有するが、透明性が十分ではない。
【0003】
通常、透明導電膜を作製するためにワイドギャップ半導体を利用する。ワイドギャップ半導体は、エネルギーギャップが紫外域に対応するため可視光を吸収することがなく、透明かつ高導電性である。ワイドギャップ半導体の導電機構はキャリア電子の移動によるものであり、キャリア電子の密度が金属より低いため可視光を反射しない。
【0004】
これらの透明導電膜は、透明ヒーター、ノートパソコン及び携帯電話等の表示素子用電極、太陽電池用電極、プラズマディスプレイパネル用電極等に用いられ、今後さらなる需要増加が期待されている。
【0005】
透明導電膜の材料としては、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等が挙げられ、それらのなかでもITOが低抵抗な材料として用いられている。ITO透明導電膜は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法、ゾル・ゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD法等によってプラスチックやガラス上に製膜される。
【0006】
例えば、特許文献1には、酸化亜鉛を湿式めっき法により製膜する透明導電性酸化亜鉛皮膜が開示されている。
【0007】
特許文献2には、ポリイミド樹脂フィルムからなるプリント配線基板の片面もしくは両面に乾式製膜法で形成された金属層とその金属層上に電気めっきまたは無電解めっきで形成された導電性を有する第2の金属層とを有する金属皮膜ポリイミド樹脂フィルムからなるプリント配線にエッチングパターンを形成するプリント配線基板の製造方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、ナノインプリント技術を駆使した従来技術として、ガラス基板上にフッ素化ポリイミド薄膜と親水性薄膜と疎水性薄膜を順次積層して親水性薄膜側より型をプレスして型の溝形成突堤の微細パターンを疎水性薄膜に貫通し、親水性薄膜上までナノインプリントリソグラフィー技術を用いて転写し、親水性薄膜上にめっき法にて金属細線を成長させる、薄膜のワイヤーグリッド偏向子及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−11642号公報
【特許文献2】特開2006−310401号公報
【特許文献3】特開2005−70456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に開示されている金属酸化物の湿式めっきは、透明であるが湿式めっき時間が数時間という長時間を要し、製膜作業効率が悪い問題が残されている。
【0011】
また、特許文献2に開示されているプリント配線基板は、ポリイミド樹脂フィルムに乾式方法と湿式方法を併用して導電層である金属層を製膜しているが、乾式方法は、真空環境下で蒸着法やスパッタ法で金属層を製膜するため真空環境を作製し維持するための作業や装置構成が必要となる。また、乾式方法と湿式方法を併用しているために作業が煩雑になる。
【0012】
さらに、特許文献3に開示されている技術では、あらかじめガラス基板上にフッ素化ポリイミド薄膜、親水性薄膜及び疎水性薄膜を順次積層して親水性薄膜側より型をプレスして型の溝形成突堤の微細パターンを疎水性薄膜を貫通し、親水性薄膜上までナノインプリントリソグラフィー技術を用いて転写し、親水性薄膜上にめっき法にて金属細線を成長させているが、均一に親水性薄膜上に疎水性薄膜を形成することが困難であったり、的確にナノインプリントを親水性薄膜上に確実に転写することが困難であったりする。
【0013】
そして、透明導電膜は真空環境を用いて製膜するものが多く、真空環境の作製とその維持に様々な煩雑な作業が必要である。大きな透明導電膜を作製する場合は、大きな真空環境が必要であり、その大きな真空環境を安定して高真空条件を維持することは特に困難である。
【0014】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、導電性が高い基板を容易に製造できる、基板の製造方法及び基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、基板層に金属層を積層させ、基板層と反対側の金属層の表面の少なくとも一部を樹脂層で被覆し、被覆されていない金属層の部分をエッチングにより除去することによって、高い導電性の基板を容易に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]
金属線を有する基板の製造方法であって、
基板層に金属層を積層する工程と、
金属層の表面の少なくとも一部を樹脂層で被覆する工程と、
樹脂層により被覆されていない金属層の部分をエッチングにより除去することで、基板層上に金属線を形成する工程と、
を含む、基板の製造方法。
[2]
樹脂層に凹凸形状を形成することにより、金属層の表面の少なくとも一部を樹脂層で被覆する、[1]に記載の基板の製造方法。
[3]
樹脂層に凹凸形状を形成した後に、樹脂層の凹部に残存する樹脂を除去する工程を更に含む、[2]に記載の基板の製造方法。
[4]
めっき法により基板層に金属層を積層させる、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[5]
金属層が、白金、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[6]
無電解めっき法により基板層に金属層を積層させる、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[7]
基板層が、ガラス、プラスチック及びシリコンウェハからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[8]
基板層が透明である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[9]
樹脂層が、ポリメチルメタクリレート、環状ポリオレフィン及びポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含む、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[10]
熱エンボスにより樹脂層に凹凸形状を形成することで、金属層の表面の一部を樹脂層で被覆する、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[11]
金属線が電気的配線である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[12]
集電電極又は集電波電極を更に備える、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
[13]
基板層と、
基板層に金属層を積層し、金属層の表面の少なくとも一部を樹脂層で被覆し、被覆されていない金属層の部分をエッチングにより除去することによって、基板層上に形成された金属線と、
を備える基板。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い導電性を有する基板を容易に製造できる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る基板の一実施形態の概略側面図である。
【図2】本実施形態に係る基板の製造方法を説明する概念図である。
【図3】本実施形態に係る基板の製造方法の一工程を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
本実施形態に係る基板は、基板層上に金属線を有する基板であり、基板層と、この基板層に金属層を積層し、金属層の表面の少なくとも一部を樹脂層で被覆し、樹脂層により被覆されていない金属層の部分をエッチングにより除去することによって、基板層上に形成された金属線と、を含む基板である。
【0021】
図1は、本実施形態に係る基板の一実施形態の概略側面図である。基板10は、基板層12と、この基板層12に設けられた金属線14、14、14を備えている。
【0022】
<基板>
本実施形態の基板10は金属線14を備えている。金属線14は、基板層12上に金属層14aを積層し(図2の(A))、更に金属層14a表面の少なくとも一部を樹脂層16で被覆し(図2の(B))、被覆されていない金属層14aの部分をエッチングにより除去し(図2の(C))、更に樹脂層16を除去することにより形成された金属線である(図2の(D))。
【0023】
<基板層>
本実施形態に用いられる基板層12は、基材として機能することができればよく、その種類は特に限定されず、例えば、ガラス、プラスチック、シリコンウェハやこれらの複合材等が挙げられる。
【0024】
ガラスとしては、主成分となる二酸化珪素と副成分となる種々の金属化合物を粉末として混合し、高温で溶融して液体状態としたものを急冷することで製造されるものであり、白板ガラス、青板ガラス、耐熱ガラス等々が挙げられる。
【0025】
プラスチックとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂;高密度、中密度、低密度等の各種ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、環状ポリオレフィン (COP) 等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
複合材としては、公知のものを用いることができ、例えば、ガラス繊維をエポキシ樹脂で固めたものや、ベークライトを積層した複合材等が挙げられる。
【0026】
本実施形態では、基板層12に耐熱性や偏光性等の機能を付与できるため、基板12を複数層からなる積層構造としてもよい。例えば、寸法安定性を向上させるために、ナイロンとポリフェニレン樹脂とが積層された基板層とすることができる。このように、本実施形態では、基板層12について所望する物性に応じて、異なる材料からなる積層構造とすることができる。
【0027】
<金属線>
本実施形態の基板10の金属線14について説明する。金属線14は、電気的配線や電磁気的配線(アンテナ等)として用いることができる。本実施形態では、基板層12上に積層された金属層14aを所望の形状にエッチングすることで金属線14を形成させる。
【0028】
本実施形態において、金属線14の形状や大きさは、限定されず、必要に応じた形状や大きさとすることができる。また、金属線14間のピッチ幅も制限を受けない。本実施形態では、金属線14をエッチングによって形成させるため、微細な形状であっても、高い精度で基板層12上に形成させることができる。従って、本実施形態では、所望する抵抗値等に応じて、金属線14の幅、高さ、表面積、あるいは金属線14間のピッチ幅等を設計できる。
【0029】
金属線14の形成について図2、図3を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係る基板10の製造方法を説明する概念図であり、図3は、本実施形態に係る基板10の製造方法の一工程を説明する概念図である。
【0030】
まず、基板層12に金属層14aを積層させる(図2の(A)参照)。基板層12上に金属層14aを形成する方法は特に限定されず、公知の方法によることができる。例えば、スパッタ、蒸着等の乾式めっきや通常の溶液を使用した湿式めっき等が挙げられる。コストや膜の均一性の観点から、金属層14aをめっき法によって形成することが好ましい。めっき法によることで、基板層12に導電性が低い材料であっても、金属層14aを形成できるため好ましい。めっき法を用いることで、基板層12の材料が、導電性が低い材料であっても、金属線14を基板層12の上に形成できる。
【0031】
本実施形態で用いられるめっき法は、基板層12の種類等によって、電解めっき法、置換めっき法、無電解めっき法等を適宜に選択できる。それらの中でも、無電解めっき法を使用することがより好ましい。特に、基板層12が低い導電性である材料である場合、無電解めっきを用いることが好ましい。具体的には、基板層12が樹脂である場合、無電解めっきによって金属層14aを基板層12上に形成することができる。無電解めっきとは、錫やパラジウム等のめっき成長させる核を基板層12上に付着させ、その核を成長核としてめっきする金属を成長させる方法である。
【0032】
金属層14aに用いられる元素種は、金属であっても、金属酸化物であってもよく、導電性を示すものであれば特に限定されない。好ましくは導電性の観点より金属元素がよく、例えば、白金、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、錫、クロム及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。更に好ましくは、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である。
【0033】
例えば、低抵抗を必要とする配線基板として基板10を用いる場合、金、銀、銅等といった抵抗が低い金属を使用できる。また、硬さを必要とする配線基板として基板10を用いる場合、クロム等の金属を使用できる。本実施形態では、基板10に所望する物性に応じて金属種を種々選択できる。
【0034】
金属層14aのめっきの厚さは、特に限定されず、導電性の観点及び平滑性の観点より、30nm〜10μmが好ましい。40nm〜8μmがより好ましく、50nm〜5μmが更に好ましい。本実施形態では、所望する金属線14の厚さに応じてめっきの厚さを選択できる。
【0035】
本実施形態において、金属線14を垂直断面視した際に幅が狭く背の高い状態となるように、金属線14のアスペクト比をより高くしたい場合は、電解めっき等によってこの金属層14aの表面に同種や異種の金属を更に積層してもよい。例えば、無電解めっきにより幅が狭く高さが高い配線を形成する場合は、無電解めっきにより形成した金属層14aの上に、電解めっきにより異なる金属を更に積層させること等が挙げられる。
【0036】
次に、金属層14a表面の一部を樹脂層16で被覆する(図2の(B)参照)。樹脂層16は後述するエッチング処理時に金属層14aを保護する機能を有する。
本実施形態において、金属層14a表面の一部を樹脂層16で被覆する方法は限定されず、公知の方法によって行うことができる。樹脂層16を金属層14a表面の全面に塗布せずに、金属層14aの一部領域のみに塗布しているが、金属層14a表面の全面に樹脂層16を形成しておいて、樹脂層16の不要な部分を除去する方法も採用しうる。この点、後述する。
【0037】
即ち、本実施形態において樹脂層16の形成方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、樹脂を溶媒に溶解して溶液状態にして、金属層14a上に塗布して乾燥させることによって樹脂層16を形成することができる。あるいは、溶融状態の樹脂を直接金属層14a上に塗布することによって形成してもよい。塗布方法は溶媒に溶解して溶液状態にした場合、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、バーコート等の公知の方法を用いて塗布すればよい。そして、公知のパターニング方法により、所望のパターン形状に形成することができる。
【0038】
本実施形態において、薄い金属層14aに樹脂層16を塗布して保護する場合、溶媒に樹脂を溶解させた溶液状態の樹脂を塗布することが好ましい。樹脂層16の厚さは、後述するエッチング溶液から金属層14aを保護できればよく、その厚さは限定されない。金属層14aの保護能力の観点及び樹脂層16を除去する際の容易さの観点より、0.3〜3μmが好ましく、0.4〜2.5μmがより好ましく、0.4〜2.3μmが更に好ましい。
【0039】
樹脂層16として用いられる樹脂としては、エッチング溶液から金属層14aを保護できればよく、その種類は限定されない。耐溶剤適合性と熱による樹脂の流動性の観点から、好ましくは、ポリメチルメタクリレート、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0040】
樹脂層16を形成する方法としては、特に限定されず、熱エンボス法が好ましい。熱エンボス法を用いることで、大面積化を容易に実現できる。例えば、ロール・ツー・ロール方式を用いることで大面積化を効率よく実現できる。
【0041】
以下、モールドを用いて樹脂層16を形成する方法の一例について、図3を併用して説明する。ニッケル電鋳等のモールドPに所望の金属線形状を作製しておき、樹脂層16にナノインプリントすることで、金属線14の形状を転写できる。この場合、金属線14として残す部分(保護領域)のモールド形状を凹形状とし、エッチングする部分を凸形状とする。これによって、樹脂層16に金属線14として残す部分が凸形状となり、エッチングする部分が凹形状となる(図3の(B))。本実施形態では、モールドPの形状を適宜に設計することで、凹凸形状として任意のパターンを樹脂層16に作製できる。
【0042】
光ナノインプリントの場合、モールドPを所望の形状にしておき、金属層14aに感光性樹脂等を塗布した後、モールドPを押し付けながら光照射することで感光性樹脂を露光させ、硬化させることによって樹脂層16を形成できる。一方、熱ナノインプリントの場合、樹脂層16を塗布法等によって形成し、樹脂層16にモールドを加熱及び/又は加圧して樹脂層16に凹凸形状を形成する。
【0043】
樹脂層16の凹部(エッチングをする部分)に残存する樹脂を除去する工程を行うことが好ましい。この工程を行うことで、より高い精度でのエッチングが可能となり、微細な形状の金属線14を基板層12上に形成できる。樹脂層16の凹部に微量の樹脂が残膜として残る場合、その樹脂をUV/オゾン等でごく薄い樹脂残膜を分解除去する等の方法により、確実にエッチングをする部分を露出できる。さらに、残膜を除去してめっき層が露出している部分に、めっき層を形成する金属種が溶解可能な溶液で浸漬することで、金属を溶解させて基板層12からエッチングできる。
【0044】
樹脂層16に保護されてない金属層14aの部分をエッチングにより除去することで、基板層12上に金属線14を形成する(図2の(C)参照)。樹脂層16によって被覆されている部分(保護領域)はエッチング溶液から保護され、樹脂層16によって被覆されていない部分はエッチングされることによって、所望の形状である金属線14を形成させることができる。本実施形態では、このエッチングによって金属線14を配線形成することができる。
【0045】
本実施形態において行うエッチングの方法については、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、酸やアルカリ物質による化学的エッチングやレーザーやメカニカル手法による物理的エッチング等が挙げられる。
【0046】
また、一般に用いられうる金属であれば、酸又はアルカリ性の溶液で金属種を溶解除去できるが、金属層14aを形成する金属種が金や白金である場合、硝酸、塩酸を混合して使用することで金属層14aをエッチングしてもよい。
【0047】
本実施形態の金属線14は、このようにして基板層12上に所望の形状に形成することができ、作製した金属線14を電気的導電体として、電気的配線や電磁気的配線を得ることができる。
【0048】
本実施形態においてエッチングにより形成された金属線14を被覆する樹脂層16は除去してもよいし、除去しなくてもよい。本実施形態の基板10を電気的配線として使用する場合は、部分的又は全面的に樹脂層16を溶解等によって除去して、他の部品や配線と結線してもよい。あるいは樹脂層16をそのまま配線被覆層として使用してもよい。
【0049】
本実施形態の基板10を集電電極として使用する場合、電気を集める面積を多くするため、樹脂層16を完全に除去することが好ましい。さらにアンテナとする際は樹脂層16を除去する必要はなく、そのまま電磁気的配線となり、集電波電極とすることができる。
【0050】
基板層12が透明である場合、あるいは基板層12が厚さ10mm程度で透過率50%以上の透明性を有する場合は、湿式めっき法を用いて金属層14aを基板層12に形成することが好ましい。このようにすることで、透明でありながら導電性を有する配線基板を得ることができる。この様にして得られた配線基板は透明導電膜付基板としても好適に使用できる。
【0051】
本実施形態において、基板層12は透明であることが好ましい。
本実施形態で得ることができる透明導電膜付基板は光を透過する部分と導電性を示す配線部分が別々にあるため、透過する光の波長分布を変えることない。そのため、ワイドギャップ半導体を用いた透明導電膜では困難であった近赤外領域での高い透過率を示すことができる。
【0052】
<配線用基板>
本実施形態の基板10は、その一方の面に金属層14aを備えてもよいし、両面に金属層14aを備えてもよい。また、配線を自由に描画するために金属層14aを基板層12の表面全域に積層させることが好ましい。
【0053】
本実施形態の基板は、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、帯電防止膜、電磁波シールド材などに好適に用いることができる。
【0054】
<基板の製造方法>
続いて、本実施形態に係る基板10の製造方法について説明するが、基板10について既に述べた事項については重複するため省略する。
本実施形態に係る基板10の製造方法は、金属線14を有する基板12の製造方法であって、基板層12に金属層14aを積層する工程と、金属層14a表面の少なくとも一部を樹脂層16で被覆する工程と、樹脂層16に被覆されていない金属層14aの部分をエッチングにより除去することで、基板層12上に金属線14を形成する工程と、を含む製造方法である。
【0055】
本実施形態に係る製造方法では、樹脂層16に凹凸形状を形成することにより、金属層14aの表面の少なくとも一部を被覆し、さらに、樹脂層16の凹部に残存する樹脂を除去する工程を行うことが更に好ましい。これによって、より微細な形状の金属線14であっても高い精度で形成することができる。
【0056】
本実施形態の製造方法は、めっき等によって金属層14aを基板層12に直接形成するため製造工程を大幅に削減できる。さらに、大掛かりな真空装置等を必要としないので、製造装置の装置構成も簡略化できる。
【0057】
さらに、従来では金属線をめっき成長によって形成させたりしているが、本実施形態では金属線14をエッチングにより形成させるため、大幅に製膜時間を短縮できる。金属線をめっき成長させる場合、通常、親水性薄膜や疎水性薄膜を併用しなければならず、基板の構成についても制限を受けるが、本実施形態では基板層12上に金属層14aを形成するだけでよいので、基板の構成について制限を受けず、かつ単純な基板構成とすることができる。
【0058】
本実施形態では、基板層12としてガラスやプラスチック等の透明な部材を選択することで、透明な配線基板等とすることができる。そして、金属線14として種々の金属種が選択できるため、抵抗値及び溶融温度等の金属種由来の様々な性能を必要に応じて基板10に付与できる。
【0059】
本実施形態の製造方法は、金属線14が微細な形状であっても高い精度で基板層12上に形成できるため、所定面積の基板層12内において微細な金属線14を多数配列させることが可能である。その結果、金属線14の表面積を増大させることができるため、本実施形態の基板10をデバイス等の回路構成等に用いることでデバイスのコンパクト化にも寄与できる。
【実施例】
【0060】
以下の実施例に基づき、本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施形態で用いる評価方法は下記の通りである。
【0061】
<実施例1>
無電解めっきによる金属層の作製
ポリエチレンテレフタレート(帝人デュポン社製、厚さ125μm)、ポリエチレンナフタレート(帝人デュポン社製、厚さ125μm)を用いて、以下の手法を用いて湿式無電解銀めっきを行った。
奥野製薬工業株式会社社製「エースクリーンA−220」(建浴濃度50g/L、温度50℃、浸漬時間5分)を用いて脱脂洗浄を行った。水洗後、水酸化ナトリウム(濃度200g/L、温度70〜75℃)及び奥野製薬工業株式会社社製「PBTエンチャントTR」(濃度200mL/L、浸漬時間20分)を用いてエッチングを行った。
【0062】
その後、温度60℃、浸漬時間3分で湯洗後、濃塩酸(濃度100mL/L、室温)及び奥野製薬工業社製「TMP中和用添加剤」(濃度20mL/L、浸漬時間2分)にて中和し、奥野製薬工業社製「キャタリストC」(濃度40mL/L、室温)及び濃塩酸(濃度150mL/L、浸漬時間5分)で核付けしたのち、奥野製薬工業社製「ムデンシルバーMGS」(MGS−1:100mL/L、MGS−2:400mL/L、MGS−3:10mL/L 室温で10分)で無電解銀めっきをポリエチレンテレフタレート上に施した。無電解銀めっきの厚さは600nmであった。
【0063】
<実施例2〜11>
実施例2〜11として、金属層と基板層について表1、2に示す条件で基板をそれぞれ作製した。無電解めっきは、めっき溶液製造会社が推奨する、各金属種に応じためっき溶液の最適な条件で行った。そして、電解めっきを行い、各基板層に金属層を形成した。電解めっきについても無電解めっきと同様に、各めっき溶液に最適なめっき溶液製造会社の推奨条件で行った。
【0064】
<導電性評価>
エッチング前の金属層の導電性評価として四端子四探針方式ロレスタGP(ダイヤインストロメンツ社製)を用いてJIS K−7194に準拠して測定した。
【0065】
<樹脂層形成>
実施例1〜11の各樹脂を20質量%の濃度となるように各溶媒溶解して、バーコーターにて塗布した。乾燥後の膜厚は1μmに調製した。
【0066】
<熱エンボス加工>
ニッケル電鋳で作製したライン・アンド・スペース形状(凹部:300μm幅、凸部300μm:ニッケル電鋳の大きさ10mm角)を用いて熱エンボス加工した。
【0067】
<樹脂層の除去>
熱エンボスにて作製した凹部の樹脂層を、UV・オゾンのドライエッチングによって除去した。
【0068】
<露出した金属層エッチング>
露出した金属層は10%塩酸水溶液によって金属層をウェットエッチングして除去した。
【0069】
<透明性評価>
透明性評価は全光線透過率をASTM D−1003に準拠して測定した。
プラスチック及びガラス等の透明基板層の場合は500nmで測定し、シリコンウェハの場合は3600nmで測定した。
【0070】
実施例1〜11の成分及び物性の評価を表1及び表2に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
実施例1〜11の結果から、抵抗が低い金属層が種々の基板層上に作製され、300μm隔のライン・アンド・スペース形状を有する基板を作製することができた。
実施例1〜11の導電性評価は0.2〜0.4Ω/□であった。透過性評価は47〜51%であり、実施例1〜11の全光透過率はいずれも高かった。実施例1〜11の全光線透過率は、基板の開口領域(金属線により被覆されていない領域)とほぼ同じ値を示し、開口表面が多ければ透明性がより高いことが示唆された。透過性はライン部分(金属線)の遮光率とほぼ一致した値であった。
以上より、本実施例によれば、基板層に金属層を積層させ、基板層と反対側の金属層の表面の少なくとも一部を樹脂層で被覆し、被覆されていない金属層の部分をエッチングにより除去することによって、基板層上に形成された金属線を備える基板とすることで、製造が容易でありながら、優れた導電性を有し、更には高い透明性を有する基板とできることが示された。
即ち、本実施形態の基板は、ライン・アンド・スペースの間隔や形状に応じて、配線、集電電極、偏向板及びアンテナ等の部品として応用できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る基板は、優れた導電性を有する基板であり、かつ製造が容易であるので、配線用基板や配線基板等として幅広い分野で用いることができ、特に基板が透明である場合には、LCD等のフラットパネルディスプレイ、太陽電池、各種タッチパネル等に用いうる透明電極や、帯電防止膜、電磁波シールド材等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線を有する基板の製造方法であって、
基板層に金属層を積層する工程と、
前記金属層の表面の少なくとも一部を樹脂層で被覆する工程と、
前記樹脂層により被覆されていない前記金属層の部分をエッチングにより除去することで、前記基板層上に金属線を形成する工程と、
を含む、基板の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層に凹凸形状を形成することにより、前記金属層の表面の少なくとも一部を前記樹脂層で被覆する、請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層に前記凹凸形状を形成した後に、前記樹脂層の凹部に残存する樹脂を除去する工程を更に含む、請求項2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
めっき法により前記基板層に前記金属層を積層させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記金属層が、白金、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
無電解めっき法により前記基板層に前記金属層を積層させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記基板層が、ガラス、プラスチック及びシリコンウェハからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項8】
前記基板層が透明である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂層が、ポリメチルメタクリレート、環状ポリオレフィン及びポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項10】
熱エンボスにより前記樹脂層に前記凹凸形状を形成することで、前記金属層の表面の一部を前記樹脂層で被覆する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項11】
前記金属線が電気的配線である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項12】
集電電極又は集電波電極を更に有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項13】
基板層と、
前記基板層に金属層を積層し、前記金属層の表面の少なくとも一部を樹脂層で被覆し、被覆されていない金属層の部分をエッチングにより除去することによって、前記基板層上に形成された金属線と、
を備える基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−182791(P2010−182791A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23671(P2009−23671)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】