説明

金属膜作製装置及び金属膜作製方法

【課題】成膜速度が速く、コストを大幅に減少させて高品質なCu薄膜16を生成する。
【解決手段】チャンバ1の内部にノズル12から原料ガスを供給し、プラズマアンテナ9から電磁波をチャンバ1の内部に入射し、Cl2ガスプラズマ14により、銅板部材7にエッチング反応を生じさせて前駆体(CuxCly)15を生成し、銅板部材7よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる前駆体(CuxCly)15は還元反応によりCuイオンのみとされて基板3に当てられ、基板3の表面にCu薄膜16が生成され、成膜速度が速く、コストを大幅に減少させて高品質なCu薄膜16を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長法により基板の表面に金属膜を作製する金属膜作製装置及び金属膜作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気相成長法により金属膜、例えば、銅の薄膜を作製する場合、例えば、銅・ヘキサフロロアセチルアセトナト・トリメチルビニルシラン等の液体の有機金属錯体を原料として用い、固体状の原料を溶媒に溶かし、熱的な反応を利用して気化して基板に成膜を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−284285号公報
【特許文献2】国際公開第01/073159号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、熱的反応を利用した成膜のため、成膜速度の向上を図ることが困難であった。また、原料となる金属錯体が高価であり、しかも、銅に付随しているヘキサフロロアセチルアセトナト及びトリメチルビニルシランが銅の薄膜中に不純物として残留するため、膜質の向上を図ることが困難であった。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置及び金属膜作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の金属膜作製装置の構成は、基板が収容されるチャンバと、基板に対向する位置におけるチャンバに設けられる金属製の被エッチング部材と、基板と被エッチング部材との間におけるチャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、基板と被エッチング部材との間のチャンバの周囲に設けられチャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成するプラズマ発生手段と、基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くして前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させる温度制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するための本発明の金属膜作製装置の構成は、基板が一端面側に収容される円筒状のチャンバと、基板に対向する端面側におけるチャンバに設けられる絶縁部材製の蓋部材と、蓋部材に固定されチャンバの内部に突出して配される金属製の被エッチング部材と、チャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、チャンバの筒部の周囲に設けられチャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成するプラズマ発生手段と、基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くして前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させる温度制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の金属膜作製方法は、基板と金属製の被エッチング部材との間におけるチャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給し、チャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成し、基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くすることで前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金属膜作製装置は、基板が収容されるチャンバと、基板に対向する位置におけるチャンバに設けられる金属製の被エッチング部材と、基板と被エッチング部材との間におけるチャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、基板と被エッチング部材との間のチャンバの周囲に設けられチャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成するプラズマ発生手段と、基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くして前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させる温度制御手段とを備えたので、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜を成膜することができる金属膜作製装置とすることができる。
【0010】
また、本発明の金属膜作製装置は、基板が一端面側に収容される円筒状のチャンバと、基板に対向する端面側におけるチャンバに設けられる絶縁部材製の蓋部材と、蓋部材に固定されチャンバの内部に突出して配される金属製の被エッチング部材と、チャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、チャンバの筒部の周囲に設けられチャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成するプラズマ発生手段と、基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くして前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させる温度制御手段とを備えたので、成膜速度が速く、安価な交換可能な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜を成膜することができる金属膜作製装置とすることができる。
【0011】
本発明の金属膜作製方法は、基板と金属製の被エッチング部材との間におけるチャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給し、チャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成し、基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くすることで前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させるようにしたので、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜を成膜することができる金属膜作製方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図2】図2には銅板の底面視図。
【図3】図2中のIII−III線矢視図。
【図4】本発明の第2実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図5】本発明の第3実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図6】成膜状況を表す基板表面の要部断面図。
【図7】本発明の第4実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図8】本発明の第5実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図9】本発明の第6実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を示す。
【実施例1】
【0014】
図1乃至図3に基づいて本発明の金属膜作製装置及び金属膜作製方法の第1実施形態例を説明する。図1には本発明の第1実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面、図2には銅板の底面視、図3には図2中のIII−III線矢視を示してある。
【0015】
図に示すように、円筒状に形成された、例えば、セラミックス製(絶縁材料製)のチャンバ1(絶縁材料製)の底部近傍には支持台2が設けられ、支持台2には基板3が載置される。支持台2にはヒータ4及び冷媒流通手段5を備えた温度制御手段6が設けられ、支持台2は温度制御手段6により所定温度(例えば、基板3が100℃乃至200℃に維持される温度)に制御される。
【0016】
チャンバ1の上面は開口部とされ、開口部は金属製の被エッチング部材としての銅板部材7によって塞がれている。銅板部材7によって塞がれたチャンバ1の内部は真空装置8により所定の圧力に維持される。銅板部材7のチャンバ1の内部側は、図2、図3に示すように、多数の溝18が網目状に形成され、表面が凹側に不連続な状態になっている。溝18が形成されることで、後述する原料ガスプラズマによりエッチングされて生成された前駆体から、銅板部材7のチャンバ1の内部側に銅が成長しても真下に成長することがない。尚、凹側に不連続な状態にする手段としては、多数の窪みや孔を形成することも可能である。銅板部材7に多数の孔を形成した場合、反応に関与しないガス及びエッチング生成物を排気するための孔としても使用することができる。
【0017】
チャンバ1の筒部の周囲にはコイル状のプラズマアンテナ9が設けられ、プラズマアンテナ9には整合器10及び電源11が接続されて給電が行われる。プラズマアンテナ9、整合器10及び電源11により第1プラズマ発生手段が構成されている。
【0018】
支持台2の上方におけるチャンバ1の筒部には、チャンバ1の内部にハロゲンとしての塩素を含有する原料ガス(He,Ar等で塩素濃度が≦50%、好ましくは10%程度に希釈されたCl2ガス)を供給するノズル12が接続されている。ノズル12は銅板部材7に向けて開口し、ノズル12には流量制御器13を介して原料ガスが送られる。原料ガスは、チャンバ1内で壁面側に沿って基板3側から銅板部材7側に送られる(第1原料ガス供給手段)。尚、原料ガスに含有されるハロゲンとしては、フッ素(F)、臭素(Br)及びヨウ素(I)等を適用することが可能である。
【0019】
上述した金属膜作製装置では、チャンバ1の内部にノズル12から原料ガスを供給し、プラズマアンテナ9から電磁波をチャンバ1の内部に入射することで、Cl2ガスがイオン化されてCl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)14が発生する。真空装置8により設定されるチャンバ1内の圧力は、Cl2ガスプラズマ14のプラズマ密度が、チャンバ1の内部で壁面側が高くなるように高圧状態に設定されている。尚、Cl2ガスプラズマ14のプラズマ密度を壁面側が高くなるようにする手段として、電源11側の周波数を高くすることも可能である。
【0020】
Cl2ガスプラズマ14により、銅板部材7にエッチング反応が生じ、前駆体(CuxCly)15が生成される。このとき、銅板部材7はCl2ガスプラズマ14により基板3の温度よりも高い所定温度(例えば、200℃乃至400℃)に維持されている。
【0021】
チャンバ1の内部で生成された前駆体(CuxCly)15は、銅板部材7よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる。基板3に運ばれる前駆体(CuxCly)15は還元反応によりCuイオンのみとされて基板3に当てられ、基板3の表面にCu薄膜16が生成される。
【0022】
このときの反応は、次式で表すことができる。
2Cu+Cl2→2CuCl→2Cu↓+Cl2↑反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口17から排気される。
【0023】
尚、銅板部材7の材質は、銅(Cu)に限らず、ハロゲン化物形成金属、好ましくは塩化物形成金属であれば、Ag,Au,Pt,Ta,Ti,W等を用いることが可能である。この場合、前駆体はAg,Au,Pt,Ta,Ti,W等のハロゲン化物(塩化物)となり、基板3の表面に生成される薄膜はAg,Au,Pt,Ta,Ti,W等になる。
【0024】
上記構成の金属膜作製装置は、Cl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)14を用いているため、反応効率が大幅に向上して成膜速度が速くなる。また、原料ガスとしてCl2ガスを用いているため、コストを大幅に減少させることができる。また、温度制御手段6を用いて基板3を銅板部材7よりも低い温度に制御しているので、Cu薄膜16中に塩素等の不純物の残留を少なくすることができ、高品質なCu薄膜16を生成することが可能になる。
【0025】
また、Cl2ガスプラズマ14のプラズマ密度を壁面側が高くなるようにしているので、高密度のCl2ガスプラズマ14を生成することができ、成膜速度を大幅に速くすることができると共に、大型のチャンバ1を用いても、即ち、大きな基板3に対してもCu薄膜16を生成することが可能になる。
【0026】
尚、上述した実施形態例では、プラズマアンテナ9から電磁波をチャンバ1の内部に入射するようにしているが、整合器10及び電源11を銅板部材7に直接接続して給電を行ない、電磁波をチャンバ1の内部に入射して第1プラズマ発生手段とすることも可能である。
【0027】
図4に基づいて本発明の第2実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図4には発明の第2実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図1に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0028】
図4に示した第2実施形態例に係る金属膜作製装置は、図1に示した金属膜作製装置に対して、チャンバ1の下方のノズル12及び流量制御器13が設けられておらず、チャンバ1の上方にノズル21及び流量制御器22が設けられている。即ち、チャンバ1の銅板部材7の下側の筒部には、チャンバ1の内部に塩素を含有する原料ガス(He,Ar等で塩素濃度が≦50%、好ましくは10%程度に希釈されたCl2ガス)を供給するノズル21が接続されている。ノズル21は水平に開口し、ノズル21には流量制御器22を介して原料ガスが送られる。原料ガスは、チャンバ1内に銅板部材7側から供給される(第2原料ガス供給手段)。
【0029】
上述した金属膜作製装置では、チャンバ1の内部に上部のノズル21から原料ガスを供給し、プラズマアンテナ9から電磁波をチャンバ1の内部に入射することで、Cl2ガスがイオン化されてCl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)23が発生する。真空装置8により設定されるチャンバ1内の圧力は、Cl2ガスプラズマ23のプラズマ密度が、チャンバ1の内部で略均一になるように低圧状態に設定されている。尚、Cl2ガスプラズマ23のプラズマ密度をチャンバ1の内部で略均一になるようにする手段として、電源11側の周波数を低くすることも可能である。
【0030】
Cl2ガスプラズマ23により、銅板部材7にエッチング反応が生じ、前駆体(CuxCly)15が生成される。このとき、銅板部材7はCl2ガスプラズマ23により基板3の温度よりも高い所定温度(例えば、200℃乃至400℃)に維持されて、チャンバ1の内部で生成された前駆体(CuxCly)15は、銅板部材7よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる。基板3に運ばれる前駆体(CuxCly)15は還元反応によりCuイオンのみとされて基板3に当てられ、基板3の表面にCu薄膜16が生成される。
【0031】
上述した金属膜作製装置は、Cl2ガスプラズマ23のプラズマ密度をチャンバ1の内部で略均一になるようにしているので、均一な密度分布のCl2ガスプラズマ23を生成することができ、均一な成膜ができ成膜精度を向上させることができる。本実施形態例の場合、比較的小さなチャンバ1で成膜精度が要求される(例えば、溝等に確実に成膜する必要がある等)基板3の成膜に適用して好適である。
【0032】
尚、基板3が配されるチャンバ1を絶縁物の仕切部材で仕切り、仕切部材に多数の孔をあけて孔を介してエッチングにより生成された前駆体(CuxCly)15を基板3に運ぶようにすることも可能である。即ち、多数の孔があけられた仕切部材によってチャンバ1内をCl2ガスプラズマ23が発生する部位と基板3が設置される部位とに隔絶することも可能である。基板3をCl2ガスプラズマ23から隔絶することにより、基板3がCl2ガスプラズマ23に晒されることがなくなり、プラズマによる損傷が生じることがなくなる。
【0033】
図5、図6に基づいて本発明の第3実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図5には本発明の第3実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面、図6には成膜状況を表す基板表面の要部断面を示してある。尚、図1及び図4に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0034】
図5に示した第3実施形態例に係る金属膜作製装置は、図1に示したチャンバ1の下方のノズル12及び流量制御器13(第1原料ガス供給手段)と、図4に示したチャンバ1の上方のノズル21及び流量制御器22(第2原料ガス供給手段)とを備えている。そして、流量制御器13及び流量制御器22と真空装置8が制御手段25により制御される。即ち、制御手段25により真空装置8が制御されてチャンバ1の内部のプラズマの発生状況が調整されると共に(プラズマ状況制御手段)、制御手段25により流量制御器13及び流量制御器22が制御されてノズル12及びノズル21から供給される原料ガスの流量が調整される(原料ガス流量制御手段)。
【0035】
即ち、チャンバ1の内部を低圧力に制御して内部のプラズマ密度が略均一になるようにチャンバ1の内部をプラズマ化した際に、ノズル21から原料ガスを供給してチャンバ1内で銅板部材7側から水平に原料ガスを送り、チャンバ1の内部を高圧力に制御して壁面側のプラズマ密度が高くなるようにチャンバ1の内部をプラズマ化した際に、ノズル12から原料ガスを供給してチャンバ1内で壁面側に沿って基板3側から銅板部材7側に原料ガスを送る。
【0036】
上述した金属膜作製装置での成膜方法の一例を図6を参照して説明する。図6に示すように、本実施例の金属膜作製装置で成膜される基板3の表面には配線等に適用される凹部3aが設けられている。
【0037】
制御手段25により、チャンバ1の内部に上部のノズル21から原料ガスを供給し、プラズマアンテナ9から電磁波をチャンバ1の内部に入射することで、Cl2ガスがイオン化されてCl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)23が発生する。制御手段25により真空装置8で設定されるチャンバ1内の圧力は、Cl2ガスプラズマ23のプラズマ密度が、チャンバ1の内部で略均一になるように低圧状態に制御されている。
【0038】
Cl2ガスプラズマ23により、銅板部材7にエッチング反応が生じ、前駆体(CuxCly)15が生成される。このとき、銅板部材7はCl2ガスプラズマ23により基板3の温度よりも高い所定温度(例えば、200℃乃至400℃)に維持されて、チャンバ1の内部で生成された前駆体(CuxCly)15は、銅板部材7よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる。基板3に運ばれる前駆体(CuxCly)15は還元反応によりCuイオンのみとされて基板3に当てられ、凹部3aの内部を含む基板3の表面にCu薄膜16a(図6中点線で示してある)が低速で生成される。即ち、凹部3aの底面部にもCu薄膜16aが精度よく低速で生成される(第1工程)。
【0039】
第1工程が終了した後、制御手段25により、チャンバ1の内部に下部のノズル12から原料ガスを供給し、プラズマアンテナ9から電磁波をチャンバ1の内部に入射することで、Cl2ガスがイオン化されてCl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)14が発生する。制御手段25により、真空装置8で設定されるチャンバ1内の圧力は、Cl2ガスプラズマ14のプラズマ密度が、チャンバ1の内部で壁面側が高くなるように高圧状態に制御されている。
【0040】
Cl2ガスプラズマ14により、銅板部材7にエッチング反応が生じ、前駆体(CuxCly)15が生成される。このとき、銅板部材7はCl2ガスプラズマ14により基板3の温度よりも高い所定温度(例えば、200℃乃至400℃)に維持されて、チャンバ1の内部で生成された前駆体(CuxCly)15は、銅板部材7よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる。基板3に運ばれる前駆体(CuxCly)15は還元反応によりCuイオンのみとされて基板3に当てられ、基板3のCu薄膜16aの表面にCu薄膜16b(図6中実線で示してある)が高速で生成される。即ち、基板3の表面に短時間にCu薄膜16bが生成される(第2工程)。
【0041】
上述した金属膜作製装置における金属膜作製方法では、第1工程で、Cl2ガスプラズマ23のプラズマ密度をチャンバ1の内部で略均一になるようにしているので、均一な密度分布のCl2ガスプラズマ23を生成することができ、均一な成膜ができ成膜精度を向上させることができると共に、第2工程で、Cl2ガスプラズマ14のプラズマ密度を壁面側が高くなるようにしているので、高密度のCl2ガスプラズマ14を生成することができ、成膜速度を大幅に速くして成膜能率を向上させることができる。従って、成膜精度と成膜能率の両立が可能になる。
【0042】
図7に基づいて本発明の第4実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図7には本発明の第4実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図1に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0043】
図7に示した第4実施形態例に係る金属膜作製装置は、図1に示した金属膜作製装置に対して、銅板部材7が設けられておらず、チャンバ1の上部開口には絶縁材(セラミックス等)の天井板27が固定されている。天井板27の中心部には取付穴28が形成され、取付穴28には被エッチング部材としての円錐状の銅円錐29が頂部をチャンバ1内に突出させて設けられている。そして、銅円錐29の内部にはヒータ30が設けられ、温度制御されるようになっている。尚、銅円錐29として、完全な円錐型ではなくチャンバ1内にむかい漸次細くなる円筒状等の形状にすることも可能である。
【0044】
上述した金属膜作製装置では、チャンバ1の内部にノズル12から原料ガスを供給し、プラズマアンテナ9から電磁波をチャンバ1の内部に入射することで、Cl2ガスがイオン化されてCl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)14が発生する。真空装置8により設定されるチャンバ1内の圧力は、Cl2ガスプラズマ14のプラズマ密度が、チャンバ1の内部で壁面側が高くなるように高圧状態に設定されている。
【0045】
Cl2ガスプラズマ14により、銅円錐29にエッチング反応が生じ、銅円錐29の周囲に前駆体(CuxCly)15が生成される。このとき、銅円錐29はCl2ガスプラズマ14及びヒータ30により基板3の温度よりも高い所定温度(例えば、200℃乃至400℃)に維持されている。チャンバ1の内部で生成された前駆体(CuxCly)15は、銅円錐29よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる。基板3に運ばれる前駆体(CuxCly)15は還元反応によりCuイオンのみとされて基板3に当てられ、基板3の表面にCu薄膜16が生成される。
【0046】
尚、図4に示した金属膜作製装置と銅円錐29とを組み合わせ、略均一なCl2ガスプラズマを発生させるようにすることも可能である。
【0047】
上述した金属膜作製装置は、銅円錐29の形状に自由度があるため、ガスプラズマの発生状況に応じてエッチングに最適な形状とすることができる。このため、チャンバ1の形状やプラズマアンテナ9の形状に制約がなく、広範囲な形状の装置として適用することができる。また、銅円錐29の内部にヒータ30を設けているので、被エッチング部材の温度制御を行う手段として特別な設置スペースを必要としない。また、銅円錐29は天井板29の取付穴28に固定されているので、外部からの交換が可能となっている。
【0048】
図8に基づいて本発明の第5実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図8には本発明の第5実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図1に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0049】
図8に示した第5実施形態例に係る金属膜作製装置は、図1に示した金属膜作製装置に対して、銅板部材7が設けられておらず、チャンバ1の上部開口には絶縁材(セラミックス等)の天板31が固定されている。天板31のチャンバ1の内部側には被エッチング部材として複数の銅棒32の一端が固定され、銅棒32の他端はチャンバ1内に突出している。複数の銅棒32は、円周状態に配置されている。
【0050】
上述した金属膜作製装置では、チャンバ1の内部にノズル12から原料ガスを供給し、プラズマアンテナ9から電磁波をチャンバ1の内部に入射することで、Cl2ガスがイオン化されてCl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)14が発生する。真空装置8により設定されるチャンバ1内の圧力は、Cl2ガスプラズマ14のプラズマ密度が、チャンバ1の内部で壁面側が高くなるように高圧状態に設定されている。
【0051】
Cl2ガスプラズマ14により、銅棒32にエッチング反応が生じ、銅円錐29の周囲に前駆体(CuxCly)15が生成される。このとき、銅棒32はCl2ガスプラズマ14により基板3の温度よりも高い所定温度(例えば、200℃乃至400℃)に維持されている。チャンバ1の内部で生成された前駆体(CuxCly)15は、銅棒32よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる。基板3に運ばれる前駆体(CuxCly)15は還元反応によりCuイオンのみとされて基板3に当てられ、基板3の表面にCu薄膜16が生成される。
【0052】
尚、図4に示した金属膜作製装置と銅棒32とを組み合わせ、略均一なCl2ガスプラズマを発生させるようにすることも可能である。
【0053】
この場合、円周状態に配置された銅棒32の内側にプラズマ密度の高いCl2ガスプラズマ14を発生させることになる。プラズマアンテナ9を流れる電気はスパイラル状となり、円周状態に配置された銅棒32のプラズマアンテナ9側に対向部に逆向きの誘導電流が流れる。銅棒32はプラズマアンテナ9を流れる電気の流れ方向で不連続となっているため、それぞれの銅棒32の周囲を誘導電流が流れ、円周状態に配置された銅棒32の内側からみた誘導電流の流れはプラズマアンテナ9を流れる電気の流れと同方向となる。
【0054】
このため、プラズマアンテナ9に対向して導電体である銅棒32が存在していても、円周状態に配置された銅棒32の内側にCl2ガスプラズマ14を発生させることができる。従って、銅棒32を天板31の外周部のプラズマアンテナ9寄りに配置しても、所望のCl2ガスプラズマ14を発生させることができ、銅棒32の本数を増加させることが可能となる。
【0055】
上述した金属膜作製装置は、複数の銅棒32により被エッチング部材が構成されているため、定期的に場所を移動させたり、エッチングにより交換が必要となった銅棒32のみを交換することができる。このため、被エッチング部材を無駄なく使用することが可能となり、更にコストを低減することができる。
【0056】
図9に基づいて本発明の第6実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図9には本発明の第6実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図4に示した第2実施形態例の部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0057】
図9に示した第6実施形態例に係る金属膜作製装置は、図4に示した金属膜作製装置に対し、チャンバ1の筒部の周囲にはプラズマアンテナ9が設けられておらず、銅板部材7に整合器10及び電源11が接続されて銅板部材7に給電が行なわれる(プラズマ発生手段)。
【0058】
上述した金属膜作製装置では、チャンバ1の内部にノズル21から原料ガスを供給し、銅板部材7から電磁波をチャンバ1の内部に入射することで、Cl2ガスがイオン化されてCl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)14が発生する。Cl2ガスプラズマ14により、銅板部材7にエッチング反応が生じ、前駆体(CuxCly)15が生成される。このとき、銅板部材7は図示しない温度制御手段により基板3の温度よりも高い所定温度(例えば、200℃乃至400℃)に維持されている。
【0059】
チャンバ1の内部で生成された前駆体(CuxCly)15は、銅板部材7よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる。基板3に運ばれる前駆体(CuxCly)15は還元反応によりCuイオンのみとされて基板3に当てられ、基板3の表面にCu薄膜16が生成される。反応に寄与しないガス及びエッチング生成物は排気口17から排気される。
【0060】
上記構成の金属膜作製装置では、第1実施形態例乃至第5実施形態例と同様に、プラズマにより前駆体を生じさせてCu薄膜16を作製しているので、均一にしかも薄膜状にCu薄膜16を作製することが可能になる。このため、基板3に設けられる、例えば、数百nm幅程度の小さな凹部に対しても内部にまで精度よく成膜され、埋め込み性に優れ、極めて薄い状態で高速にCu薄膜16を成膜することが可能になる。
【0061】
そして、銅板部材7自身をプラズマ発生用の電極として適用しているので、チャンバ1の筒部の周囲にプラズマアンテナ等の部材が不要となり、周囲の構成の自由度を増すことができる。
【0062】
尚、上述した実施形態例では、チャンバの天井側に被エッチング部材を配置し下側に基板を配置した例を挙げて説明したが、被エッチング部材と基板の上下関係は逆でもよく、場合によっては、左右に被エッチング部材と基板を配置することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 チャンバ
2 支持台
3 基板
4 ヒータ
5 冷媒流通手段
6 温度制御手段
7 銅板部材
8 真空装置
9 プラズマアンテナ
10 整合器
11 電源
12,21 ノズル
13,22 流量制御器
14,23 Cl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)
15 前駆体(CuxCly)
16 Cu薄膜
17 排気口
18 溝
25 制御手段
27 天井板
28 取付穴
29 銅円錐
30 ヒータ
31 天板
32 銅棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が収容されるチャンバと、
基板に対向する位置におけるチャンバに設けられる金属製の被エッチング部材と、
基板と被エッチング部材との間におけるチャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
基板と被エッチング部材との間のチャンバの周囲に設けられチャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成するプラズマ発生手段と、
基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くして前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させる温度制御手段とを備えたことを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項2】
基板が一端面側に収容される円筒状のチャンバと、
基板に対向する端面側におけるチャンバに設けられる絶縁部材製の蓋部材と、
蓋部材に固定されチャンバの内部に突出して配される金属製の被エッチング部材と、
チャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
チャンバの筒部の周囲に設けられチャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成するプラズマ発生手段と、
基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くして前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させる温度制御手段とを備えたことを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項3】
基板と金属製の被エッチング部材との間におけるチャンバ内にハロゲンと希ガスからなる原料ガスを供給し、
チャンバの内部をプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分と原料ガスとの前駆体を生成し、
基板側の温度を被エッチング部材側の温度よりも低くすることで前駆体の金属成分をハロゲンの還元により基板に成膜させることを特徴とする金属膜作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−174057(P2009−174057A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68350(P2009−68350)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【分割の表示】特願2005−133961(P2005−133961)の分割
【原出願日】平成14年3月14日(2002.3.14)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】