説明

金属薄膜の製造方法および半導体装置の製造方法

【課題】金属薄膜パターンの端部におけるバリ発生を確実に防止できる金属薄膜の製造方法および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、所定パターンの金属薄膜パターン8を形成するための方法であって、下地の上に、前記パターンのエッジに対応する位置近傍に壁面を有する段差パターン3を形成する工程と、段差パターン3を含む下地全体にレジスト4を塗布する工程と、塗布したレジスト4に対して、前記パターンの反転パターンとなるようにパターニングを施す工程と、レジスト4および段差パターン3を含む下地全体に金属薄膜5を形成する工程と、溶剤を塗布して、レジスト4および該レジスト4上に位置する金属薄膜5を除去する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフトオフ法を用いて金属薄膜パターンを形成するための金属薄膜の製造方法および、これを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1)通常のプラズマエッチングプロセスではパターン形成が困難であるAuなどの金属薄膜のパターンを形成する場合、2)プラズマエッチングプロセスでは基板にダメージが入る場合、あるいは、3)ウェットエッチングプロセスでは基板や下地の薄膜がエッチングされてしまう場合、一般に、リフトオフ法の適用が考えられる。
【0003】
リフトオフ法では、基板や下地の薄膜上にレジストパターンを形成して、その上にAuなどの金属薄膜を付着させ、その後、有機溶剤を用いてレジストを溶解することにより、レジストの上に付着している金属薄膜を剥離し、その結果、Auなどの金属薄膜パターンを形成することができる。このようなパターン形成方法では、金属薄膜の下のレジストを溶解させる必要があることから、レジストに有機溶剤を接触させる技術が必要である。
【0004】
例えば、特許文献1または2では、有機溶剤を用いてレジストを溶解させる前に、レジストや金属薄膜に温度変化を加え、レジストと金属薄膜の熱膨張率の違いに起因した応力を発生させ、これによりレジスト上の金属薄膜に亀裂を生じさせて、有機溶剤がレジスト中に入り込み易くしている。
【0005】
一方、リフトオフ法を用いて金属薄膜パターンを形成した場合、図8に示すようなバリ11が生ずることがある。これは、レジスト4の側面などに付着していた金属薄膜5がリフトオフでは剥離されずに、パターン端部に残ってしまう現象である。金属薄膜パターンの端部にバリが残ると、電気絶縁を要する箇所が短絡する不良や、外力によって破断したバリの破片が周囲の処理装置に付着して、次の試料にキズをつける不良などが起こる可能性が高くなる。
【0006】
こうしたバリ対策として、例えば、特許文献3では、レジストの断面形状をオーバーハング形状にすることにより、レジスト上の金属薄膜と、基板や下地の上に位置する金属薄膜とが連続して形成されないようにして、バリの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−103625号公報
【特許文献2】特開2003−85965号公報
【特許文献3】特開平7−168368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1または2のように、レジストに温度変化を加えて金属薄膜に小さな亀裂を発生させる方法では、亀裂が金属薄膜パターンとレジストとの境目に発生するとは限らず、バリが残る可能性は高い。
【0009】
また、スパッタ法や真空蒸着法などを用いて金属薄膜を形成する場合、金属粒子の速度成分は、基板に対して垂直な方向だけでなく、それ以外の斜め方向の成分を有している。そのため、特許文献3のようにレジストの断面形状をオーバーハング形状にしただけでは、斜め入射の金属粒子がレジストの側壁に付着する場合がある。例えば、金属薄膜パターンの幅が広く、オーバーハング形状のレジストパターンが孤立する場合、斜め入射の金属粒子がレジスト側面に付着するため、バリ抑制対策としては十分ではない。
【0010】
本発明の目的は、金属薄膜パターンの端部におけるバリ発生を抑制できる金属薄膜の製造方法および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、所定パターンの金属薄膜を形成するための方法であって、
下地の上に、前記パターンのエッジに対応する位置近傍に壁面を有する段差パターンを形成する工程と、
段差パターンを含む下地全体にレジストを塗布する工程と、
塗布したレジストに対して、前記パターンの反転パターンとなるようにパターニングを施す工程と、
レジストおよび段差パターンを含む下地全体に金属薄膜を形成する工程と、
溶剤を塗布して、レジストおよび該レジスト上に位置する金属薄膜を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、段差パターンの壁面とレジストのエッジとの間に急峻な隙間が存在するようになるため、この状態で金属薄膜を形成した場合、隙間は、金属薄膜の成膜が困難な、いわゆるカバレッジの悪い部分となる。その結果、隙間には金属薄膜が殆ど存在しなくなるため、リフトオフの際、溶剤がこの隙間を通ってレジスト中に入り込み易くなるとともに、バリの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る金属薄膜パターンを形成する工程の一例を示す平面図である。
【図2】図1中の点線に沿った部分断面図である。
【図3】段差パターンとレジストの間の隙間における金属薄膜の成膜状態を示す断面図である。
【図4】バリ発生率と隙間の幅との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る金属薄膜パターンを形成する工程の他の例を示す平面図である。
【図6】図5中の点線に沿った部分断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る段差パターンの他の形状を示す断面図である。
【図8】従来の方法におけるバリ発生の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、金属薄膜パターンを形成する工程の一例を示す平面図である。図2は、図1中の点線に沿った部分断面図である。ここでは、図1(e)に示すように、金属薄膜パターン8が矩形状となるようにパターニングを行う場合を例示するが、本発明は任意のパターン形状に適用可能である。
【0015】
まず、図1(a)と図2(a)に示すように、基板1の上に金属電極2を形成する。ここで、基板1は、例えば、Siなどの半導体基板であり、金属電極2は、例えば、Al合金やTi合金などの金属材料で形成される。基板1には、公知の半導体素子製造技術を用いて、トランジスタなどの半導体素子が予め形成されており、続いて、以下に説明する金属薄膜の製造方法を用いて基板1に金属配線を形成することによって、各種半導体装置の製造が可能である。
【0016】
次に、図1(b)と図2(b)に示すように、図1(e)の金属薄膜パターン8のエッジに対応する位置近傍に壁面を有する段差パターン3を形成する。ここでは、一例として、断面が台形状で、下底の幅が約3μm、高さが約2μmである段差パターン3を形成している。ここで、下地となる金属電極2が、真空蒸着法で成膜されたアルミ膜やCVD法で形成されたタングステン膜のように表面粗さが大きい膜の場合は、金属電極2の凹凸面の最も高い位置から更に2μm程度加算した高さを持つ段差パターン3を形成することが好ましい。
【0017】
段差パターン3は、電気特性の安定化のため、金属薄膜パターン8と同程度の導電性を有する膜であることが好ましいが、絶縁膜でも構わない。段差パターン3を形成する方法としては、金属薄膜もしくは絶縁膜を、上記所定の高さが得られる厚みで全面成膜した後、通常のフォトリソグラフィー技術を用いてレジストのパターニングを行う。その後、ドライエッチングもしくはウエットエッチングにより段差パターン3の形状に形成する。
【0018】
次に、段差パターン3を含む下地全体にレジストを塗布する。続いて、フォトリソグラフィー技術を用いて、塗布したレジストに対して図1(e)の金属薄膜パターン8の反転パターンとなるようにパターニングを施す。これにより図1(c)と図2(c)で示すように、金属薄膜パターン8の形成領域以外の領域全てがレジスト4によって被覆される。このレジスト4は、次に成膜する金属薄膜5に対するマスクとなる。レジスト4の厚さは、好ましくは約3μmである。
【0019】
次に、図1(d)と図2(d)に示すように、レジスト4および段差パターン3を含む下地全体に、スパッタ法または真空蒸着法を用いてAuやMoなどの金属薄膜5を成膜する。このとき段差パターン3の壁面とレジスト4のエッジは接近しており、両者間には急峻で深い隙間が存在するようになる。そのため、金属薄膜5を成膜する際、基板1に対して垂直以外の方向から入射する金属粒子に対して、レジスト4の側壁は段差パターン3の影になり、段差パターン3の側壁もレジスト4の影になり、その結果、レジスト4の側壁および段差パターン3の側壁に金属薄膜5が付着しにくくなる。
【0020】
図3は、段差パターン3とレジスト4の間の隙間6における金属薄膜5の成膜状態を示す断面図である。この隙間6は、金属薄膜5のカバレッジが悪くなり、レジスト4の側壁に金属薄膜5が成膜されない部分、即ち、不連続部分が発生する。
【0021】
図4は、バリ発生率と隙間6の幅との関係を示すグラフである。このグラフは、実験的に得られたものである。隙間6の幅が下地表面において10μmよりも大きい場合、段差パターン3およびレジスト4は、相対する側壁への金属粒子付着に対して防護壁として機能しなくなり、金属薄膜5に対するカバレッジ悪化の効果が発揮できない。一方、隙間6の幅が1μmより小さい場合、段差パターン3の上部および側壁に成膜された金属薄膜5と、レジスト4上部および側壁に成膜された金属薄膜5とが互いに繋がってしまい、リフトオフ後のバリ発生率が増加してしまう。従って、隙間6の幅は、下地表面において1〜10μmであることが好ましい。
【0022】
次に、図1(e)と図2(e)に示すように、ノズル9から基板1に向けてレジスト4を溶解する溶剤、例えば、有機溶剤を塗布する。レジスト4は、有機溶剤によって溶解するとともに、レジスト4の上部に付着した金属薄膜5も基板1から剥離する。このとき、レジスト4に金属薄膜5が成膜されていない箇所、即ち、レジスト4と段差パターン3との間に位置する隙間6を通って有機溶剤がレジスト4中に入り込むことができ、有機溶剤とレジスト4との接触が容易になる。
【0023】
このように段差パターン3によってレジスト4との間に急峻な隙間を形成することにより、段差パターン3とレジスト4との間に成膜される金属薄膜5のカバレッジを悪化させることが可能になり、金属薄膜5に、亀裂などの不連続部分を発生させることができる。そのため、有機溶剤を用いたリフトオフの際、有機溶剤が亀裂から容易にレジスト4に染み込むことが可能となり、バリ発生が抑制された金属薄膜パターン8を形成することが可能になる。
【0024】
なお、本実施形態では、基板1上に形成された金属電極2を下地として金属薄膜パターン8を形成する場合を例示したが、本発明は、基板1上に直接に金属薄膜のパターニングを行う場合、あるいは基板1上に複数の各種層を形成したものを下地として金属薄膜のパターニングを行う場合にも適用可能である。
【0025】
実施の形態2.
図5は、金属薄膜パターンを形成する工程の他の例を示す平面図である。図6は、図5中の点線に沿った部分断面図である。ここでは、図5(e)に示すように、金属薄膜パターン8が矩形状となるようにパターニングを行う場合を例示するが、本発明は任意のパターン形状に適用可能である。
【0026】
まず、図5(a)と図6(a)に示すように、基板1の上に金属電極2を形成する。ここで、基板1は、例えば、Siなどの半導体基板であり、金属電極2は、例えば、Al合金やTi合金などの金属材料で形成される。基板1には、公知の半導体素子製造技術を用いて、トランジスタなどの半導体素子が予め形成されており、続いて、以下に説明する金属薄膜の製造方法を用いて基板1に金属配線を形成することによって、各種半導体装置の製造が可能である。
【0027】
次に、図5(b)と図6(b)に示すように、図1(e)の金属薄膜パターン8のエッジに対応する位置近傍に壁面を有する段差パターン3を形成する。ここでは、一例として、断面が台形状で、下底の幅が約3μm、高さが約2μmである段差パターン3を形成している。ここで、下地となる金属電極2が、真空蒸着法で成膜されたアルミ膜やCVD法で形成されたタングステン膜のように表面粗さが大きい膜の場合は、金属電極2の凹凸面の最も高い位置から更に2μm程度加算した高さを持つ段差パターン3を形成することが好ましい。
【0028】
本実施形態では、段差パターン3は絶縁性膜であって、段差パターン3の形成と同時に段差パターン3と同質の絶縁膜10を形成している。絶縁膜10は、金属配線間の絶縁や電極間の絶縁など、半導体素子の機能に必要な膜であり、SiN、SiO、ポリイミドなどで形成される。こうした絶縁膜は、例えば、半導体素子の電気特性の安定性や信頼性を向上させることを目的として、半導体素子の外周部に形成する場合が多い。
【0029】
段差パターン3および絶縁膜10を形成する方法としては、絶縁材料を全面成膜した後、通常のフォトリソグラフィー技術を用いてレジストのパターニングを行う。その後、ドライエッチングもしくはウエットエッチングにより、段差パターン3および絶縁膜10の形状に形成する。
【0030】
次に、段差パターン3および絶縁膜10を含む下地全体にレジストを塗布する。続いて、フォトリソグラフィー技術を用いて、塗布したレジストに対して図5(e)の金属薄膜パターン8の反転パターンとなるようにパターニングを施す。これにより図5(c)と図6(c)で示すように、金属薄膜パターン8の形成領域以外の領域全てがレジスト4によって被覆される。このレジスト4は、次に成膜する金属薄膜5に対するマスクとなる。レジスト4の厚さは、好ましくは約3μmである。
【0031】
次に、図5(d)と図6(d)に示すように、レジスト4、段差パターン3および絶縁膜10を含む下地全体に、スパッタ法または真空蒸着法を用いてAuやMoなどの金属薄膜5を成膜する。このとき段差パターン3の壁面とレジスト4のエッジは接近しており、両者間には急峻で深い隙間が存在するようになる。そのため、金属薄膜5を成膜する際、基板1に対して垂直以外の方向から入射する金属粒子に対して、レジスト4の側壁は段差パターン3の影になり、段差パターン3の側壁もレジスト4の影になり、その結果、レジスト4の側壁および段差パターン3の側壁に金属薄膜5が付着しにくくなる。
【0032】
隙間の幅は、実施の形態1と同様な理由により、下地表面において1〜10μmであることが好ましい。
【0033】
次に、図5(e)と図6(e)に示すように、ノズル9から基板1に向けてレジスト4を溶解する溶剤、例えば、有機溶剤を塗布する。レジスト4は、有機溶剤によって溶解するとともに、レジスト4の上部に付着した金属薄膜5も基板1から剥離する。このとき、レジスト4に金属薄膜5が成膜されていない箇所、即ち、レジスト4と段差パターン3との間に位置する隙間を通って有機溶剤がレジスト4中に入り込むことができ、有機溶剤とレジスト4との接触が容易になる。
【0034】
このように本実施形態では、段差パターン3の形成と絶縁膜10の形成を同一工程で行うことによって、工程数の増加を抑制できるため、半導体素子を低コストで製造できる。
【0035】
実施の形態3.
図7は、段差パターン3の他の形状を示す断面図である。段差パターン3は、実施の形態1,2における台形とは異なって、逆台形の断面形状、即ち、下地側にある下底より上底が長い逆テーパーの断面形状であることが好ましい。さらに、実施の形態2のように、段差パターン3と同質の絶縁膜10を同時に形成する場合、絶縁膜10についても段差パターン3と同様に逆テーパーの断面形状であることが好ましい。
【0036】
こうした断面形状の場合、レジスト4と段差パターン3との間に位置する隙間の断面形状は、下地側の幅が大きいテーパー状になる。そのため、隙間に対する金属薄膜5のカバレッジがより悪化するようになり、隙間における金属薄膜5の付着がより妨げられる。その結果、リフトオフの際、有機溶剤がより容易に染み込むようになり、有機溶剤の使用量を低減できる。しかも、隙間における金属薄膜5の付着量が減少するため、バリの発生量をより低減できる。
【符号の説明】
【0037】
1 基板、 2 金属電極、 3 段差パターン、 4 レジスト、 5 金属薄膜、
6 隙間、 8 金属薄膜パターン、 9 ノズル、 10 絶縁膜、 11 バリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定パターンの金属薄膜を形成するための方法であって、
下地の上に、前記パターンのエッジに対応する位置近傍に壁面を有する段差パターンを形成する工程と、
段差パターンを含む下地全体にレジストを塗布する工程と、
塗布したレジストに対して、前記パターンの反転パターンとなるようにパターニングを施す工程と、
レジストおよび段差パターンを含む下地全体に金属薄膜を形成する工程と、
溶剤を塗布して、レジストおよび該レジスト上に位置する金属薄膜を除去する工程とを含むことを特徴とする金属薄膜の製造方法。
【請求項2】
段差パターンは、導電性膜であることを特徴とする請求項1記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項3】
段差パターンは、絶縁性膜であって、
段差パターン形成工程において、段差パターンとともに、半導体素子に必要な絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項4】
段差パターンは、逆テーパーの断面形状を有することを特徴とする請求項1記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項5】
レジストパターニング工程において、レジストのエッジと段差パターンとの隙間が1〜10μmとなるようにパターニングを行うことを特徴とする請求項1記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項6】
半導体基板に、半導体素子を形成する工程と、
請求項1〜5のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法を用いて、半導体基板に金属配線を形成する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−258336(P2010−258336A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108937(P2009−108937)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】