説明

金属部材接合方法及び放熱器の製造方法

【課題】金属部材同士を互いに重ね合わせて簡易かつ確実に接合する方法を提案する。
【解決手段】アルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて配置し、重ね合わせ部を銅部材2側から加熱及び加圧することにより、アルミニウム部材1と銅部材2とを接合する。加熱及び加圧は、円周方向に回転する円板状の接合ツール3の周面を、銅部材2の表面2aに押し込みつつ移動させることにより行われる。接合ツール3の周面には、回転方向に対して僅かに傾斜して連続する螺旋形の凹溝3cが形成されている。凹溝3c間のフラット部3dの幅w(mm)及び凹溝3cの幅w(mm)について、1≦w≦5、かつ、1≦w≦3、かつ、0.67≦w/w≦5.00が成立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材同士を互いに重ね合わせて接合する方法に関する。また本発明は、複数枚の金属製板材を金属製のベース板に立設させて接合する方法、さらに該方法を応用して、IC用放熱器、ペルチェ素子用放熱器、モーター用放熱器、電子制御部品用放熱器等の放熱器を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された従来の放熱器の製造方法は、図19(a)に示すように、銅合金からなるベース板102の表面102aに、アルミニウム合金からなる薄板を折り曲げて基端部104aと放熱面104bと先端部104cとで連続する凹凸断面形状に形成されたフィン104をその基端部104a,104a,…が面接触するように配置しておき、図19(b),(c)に示すように、円周方向に回転する円板状の接合ツール103のツール本体103aの周面を、フィン104の基端部104aの表面に押し込みつつ該基端部104aの表面に沿って移動させることにより、フィン104をベース板102に接合するものである。かかる接合方法は摩擦振動接合(Friction Acoustic Bonding)と呼ばれている。
【0003】
摩擦振動接合用の接合ツールとしては、ツール本体103aの周面が平坦な接合ツール103(図20(a))、ツール本体103aの周面に、ツール本体103aの厚み方向に平行な多数の細条103b,103b,…が形成された接合ツール103B(図20(b))、ツール本体103aの周面に、ツール本体103aの径方向に突出する多数の四角錘形状の突起103c,103c,…が千鳥状に配置形成された接合ツール103C(図20(c))、ツール本体103aの周面に、ツール本体103aの径方向に突出する多数の円弧形状の突起103d,103d,…が千鳥状に配置形成された接合ツール103D(図20(d))などを用いることができる。図20(b)〜(d)の接合ツール103B,103C,103Dは、図20(a)の接合ツール103に比べて、フィン104の基端部104aとの接触面積を大きくして、より効率よくフィン104とベース板102とを摩擦振動接合するためのものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−142639号公報([0015]−[0018],図2−3,5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の放熱器の製造方法には、以下のような問題がある。
(1)ベース板102を構成する銅合金よりも溶融点の低いアルミニウム合金からなるフィン104側から接合ツール103を押し込んで摩擦振動接合を行うので、フィン104との境界面近傍のベース板102が接合に必要な温度(共晶温度=548℃)に達する前にフィン104の基端部104aが高温化してその変形抵抗が小さくなってしまう。したがって、接合ツール103による押圧力をベース板102とフィン104の基端部104aとの境界面に充分に伝達できず、接合不良又は接合不能となることがある。さらに、フィン104の基端部104aが薄い(たとえば厚さ0.5mm以下の)場合には、フィン104の基端部104aが溶断されてしまう欠点がある。
【0006】
(2)フィン104側から接合ツール103を押し込むがゆえに、フィン104の構成として基端部104aを省略することができず、放熱器の形状や構造が限定されてしまう。
【0007】
(3)フィン104側から接合ツール103を押し込むがゆえに、放熱面104bの真下では基端部104aとベース板102とが未接合のまま残ってしまうので、放熱器の放熱性能やフィンの接合強度が不充分なことがある。
【0008】
(4)高速回転する接合ツール103を、間隔の小さなフィン104の放熱面104b,104b間から注意深く基端部104aに押し込む必要があり、しかも接合ツール103を放熱面104b,104bに接触しないように保持しながら移動させなければならないので、接合作業が煩雑かつ困難である。このことは特に、放熱器の放熱性能を高めるべくトング比(フィン高さ/フィン間隔)を大きくした場合(放熱面104b,104b,…の立設間隔を小さくしたり、放熱面104bの高さを大きくした場合)に顕著である。
【0009】
なお、以上の問題は、放熱器を製造する場合だけでなく、一般的に複数枚の金属製板材を金属製ベース板に立設させて接合する場合について広く当てはまる。さらに(1)〜(3)は、一般的に金属部材同士を互いに重ね合わせて接合する場合についても当てはまる。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、まず、金属部材同士を互いに重ね合わせて簡易かつ確実に接合する方法を提案するものである。また本発明は、複数枚の金属製板材を金属製ベース板に立設させて簡易かつ確実に接合する方法、さらには該方法を応用して、複数枚のフィンをベース板に強固に立設接合した放熱器を簡易に製造する方法も提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の金属部材を溶融点の高い順に互いに重ね合わせて配置し、重ね合わせ部を前記金属部材のうち最も溶融点の高い金属部材の表面側から加熱及び加圧することにより、前記複数の金属部材を互いに接合することを特徴とする金属部材接合方法である。
【0012】
かかる金属部材接合方法は、複数の金属部材を互いに重ね合わせて配置しておき、重ね合わせ部を最外側の金属部材側から加熱及び加圧することにより、重ね合わせ部における隙間をなくしつつ、境界面に存在する酸化皮膜を分断破壊するとともに、熱によって重ね合わせ部のメタルを高温化して塑性変形させることにより、金属部材同士の接触面積と拡散速度を増大させながら重ね合わせ部を接合する方法である。
ここで、複数の金属部材は溶融点の高い順に重ね合わせて配置され、最も溶融点の高い金属部材側から加熱及び加圧されるので、金属部材同士の重ね合わせ部が接合に必要な温度まで上昇したときに、加熱及び加圧される側の金属部材ほどその変形抵抗を高く保ってその圧力が境界面に対して効率よく伝達され、金属部材間に隙間のない高強度の接合が可能となる。たとえば、銅部材とアルミニウム部材とを重ね合わせたときには、銅部材側から重ね合わせ部を加熱及び加圧することになる。
【0013】
請求項1に係る発明は、互いに間隔をあけた複数枚の金属製の板材を、該板材よりも溶融点の高い金属からなるベース板の一方の面に立設させて接合する方法であって、互いに間隔をあけて並べられた複数枚の板材と、これらの板材の間にそれぞれ挟み込まれたスペーサと、一方の面に前記各板材が立設されたベース板と、を配置する部材配置工程と、前記ベース板の他方の面に、円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を押し込みつつこの他方の面に沿って移動させることにより、前記ベース板に前記各板材を接合する接合工程と、前記各スペーサを取り外すスペーサ離脱工程と、を含む金属部材接合方法であって、前記接合ツールには前記周面に沿うように螺旋形の凹溝が形成されていることを特徴とする金属部材接合方法である。
【0014】
かかる金属部材接合方法では、まず部材配置工程で板材、ベース板、スペーサを所定の位置にセットする。板材とベース板は金属製であり、ベース板の溶融点は板材の溶融点よりも高い。スペーサの材質は特に限定されない。スペーサの形状も特に限定されるものではなく、スペーサ同士が相互に連結されていてもよい。
このとき、各板材相互間にそれぞれスペーサを挟み込むので、板材相互の間隔を正確に保ちつつ簡単に位置決めすることができ、しかもスペーサによって板材が補強されるので、板材の厚さをかなり薄くすることも可能である。また、スペーサの厚さを変更するだけで板材の配置間隔を任意に変更でき、さらに板材の高さを併せて変更することによって、特に板厚が薄く高さの大きな複数枚の板材を、ベース板の一方の面に短ピッチで立設接合することができる。なお、本工程でベース板の一方の面に各板材を立設配置した状態では、各スペーサはベース板の該一方の面に当接していなくてもよいが、次工程で板材に曲げ応力が作用することを考慮すれば、スペーサによる板材の補強効果を高めるため、各スペーサもベース板の該一方の面に当接させることが望ましい。
また、続く接合工程では、ベース板の他方の面に、円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を押し込みつつこの他方の面に沿って移動させることにより、各板材とベース板とを接合する。
そして、本発明における前記接合ツールには前記周面に沿うように螺旋形の凹溝が形成されている。なお、ベース板と板材との接合強度を高めるためには、各板材の基端面全面をベース板の裏面(ベース板の他方の面)に接合することが望ましいが、接合コストの削減を重視するのであれば、各板材の基端面の一部だけをベース板に接合してもよい。また、ベース板と各板材とを接合するときにベース板と各スペーサとを接合してしまってもよいが、次工程でスペーサを取り外すことを考慮すれば、ベース板と各スペーサとが接合されないようにしておくことが望ましい。
【0015】
この金属部材接合方法は、円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を、最も溶融点の高い金属部材(ベース板)の表面に押し込みつつ該金属部材の表面に沿って移動させることにより、重ね合わせ部の加熱及び加圧を行うものであるから、簡易な装置により確実な接合が期待できる。
ここで、接合ツールの周面には凹溝が形成されているので、接合ツールの周面と金属部材(ベース板)の表面との接触面積がより大きくなり、効率よく摩擦熱を発生させて効率よく複数の金属部材を互いに接合することができる。
さらに、接合ツールの周面の凹溝は、回転方向に対して僅かに傾斜した向きで連続するように、つまり接合ツールの回転軸のまわりで接合ツールの周面に沿った螺旋形の軌跡を描くように形成されている。したがって、接合ツールの回転・移動に伴って、凹溝内部に溜まった可塑化したメタルが接合ツールの幅方向に順次送り出されるので、接合後に金属部材の表面に残る凹み量を最小限に抑えることができる。
【0016】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の金属部材接合方法において、前記凹溝間のフラット部の幅w(mm)及び前記凹溝の幅w(mm)について、1≦w≦5、かつ、1≦w≦3、かつ、0.67≦w/w≦5.00が成立することを特徴とする。
【0017】
この金属部材接合方法に関して、接合ツールの周面における凹溝間のフラット部の幅w(mm)及び凹溝の幅w(mm)並びに凹溝の幅wに対するフラット部の幅wの比率について発明者らが実験を繰り返したところ、w/wが小さすぎると、金属部材の表面を接合ツールで切削しているのに近い状況となるので、接合ツールによる摩擦熱の発生量を比較的大きくできるが、接合後に金属部材の表面に残る凹み量が大きくなってしまうこと、一方w/wが大きすぎると、周面がフラットな接合ツールによる接合に近い状況となるので、接合ツールによる摩擦熱の発生量が小さくなってしまって、金属部材の表面への接合ツールの押込量を大きくしなければならず、機械負荷も大きくなってしまうこと、そして、1≦w≦5、かつ、1≦w≦3、かつ、0.67≦w/w≦5.00が成立する場合には、金属部材の表面への接合ツールの押込量を抑えつつ、接合ツールによる摩擦熱の発生量を大きくして、効率的な接合が可能となることが判明した。
【0018】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の金属部材接合方法において、前記螺旋形の軌跡が前記接合ツールの回転方向に対して傾斜角0.5〜2.0°で傾斜しており、この螺旋形の凹溝が前記接合ツールの全周にわたって二本以上形成されていることを特徴とする。
【0019】
この金属部材接合方法に関して、接合ツールの周面における凹溝の傾斜角度について発明者らが実験を繰り返したところ、凹溝の傾斜角度が0.5°より小さい場合には、凹溝内部に溜まった可塑化したメタルが接合ツールの幅方向にうまく送り出されず、接合ツールの通過後に金属部材の表面にバリが残存すること、一方凹溝の傾斜角度が2.0°より大きい場合には、切粉の排出量が大きく金属部材の表面に残る凹みが大きくなるとともに、機械負荷も大きくなってしまうこと、そして、凹溝の傾斜角度が0.5〜2.0°の場合には、このような弊害がないことが判明した。なお、接合ツールの幅を考慮すると、凹溝は接合ツールの全周にわたって二本以上形成されていることが望ましい。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の金属部材接合方法において、前記凹溝の深さが0.3〜1.2mmであることを特徴とする。
【0021】
この金属部材接合方法に関して、接合ツールの周面における凹溝の深さについて発明者らが実験を繰り返したところ、凹溝の深さが0.3mmより小さい場合には、可塑化したメタルが凹溝内部に詰まってしまい、接合ツールによる摩擦熱の発生量が減少して充分な接合ができないこと、一方凹溝の深さが1.2mmより大きい場合には、金属部材の表面を接合ツールで切削しているのに近い状況となるので、接合ツールによる摩擦熱の発生量を大きくできるが、接合後に金属部材の表面に残る凹み量が大きくなってしまうこと、そして、凹溝の深さが0.3〜1.2mmである場合には、このような弊害がないことが判明した。
【0022】
そして、前記課題を解決する請求項5に係る発明は、互いに間隔をあけた複数個の金属製のフィン構成材を、該フィン構成材よりも溶融点の高い金属からなるベース板の一方の面に立設してなる放熱器を製造する方法であって、互いに間隔をあけて並べられ、それぞれが左右一対のフィンとこれらの端部を連結する基端部とで断面凹字形に形成された複数個のフィン構成材と、前記各フィン構成材相互間に挟み込まれたスペーサと、前記各フィン構成材の左右のフィンの間に挟み込まれたスペーサと、一方の面に前記各フィン構成材の基端部が当接するように該フィン構成材が立設されたベース板と、を配置する部材配置工程と、前記ベース板の他方の面に、円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を押し込みつつこの他方の面に沿って移動させることにより、前記ベース板に前記各フィン構成材の基端部を接合する接合工程と、前記各スペーサを取り外すスペーサ離脱工程と、を含む放熱器の製造方法であって、前記接合ツールには前記周面に沿うように螺旋形の凹溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
かかる放熱器の製造方法は、前記した金属部材接合方法を応用したものであり、板材として断面凹字形のフィン構成材を用いる。もちろん、フィン構成材相互間及びフィン構成材の左右のフィンの間には、同種又は別種のスペーサを挟み込む。このようにすれば、フィン構成材の左右のフィンの厚さがかなり薄い場合であっても、フィン構成材の基端部がベース板に重ね合わされた状態で接触するので、フィンをベース板に対して確実に接合することができる。フィン構成材とベース板との接合原理は、既に説明したとおりである。なお、フィン構成材は、一枚の薄い金属板の中央部にスペーサを挟んで断面凹字形に折り曲げることによって簡単に作成することができる。
【0024】
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の放熱器の製造方法において、前記凹溝間のフラット部の幅w(mm)及び前記凹溝の幅w(mm)について、1≦w≦5、かつ、1≦w≦3、かつ、0.67≦w/w≦5.00が成立することを特徴とする。
【0025】
また、請求項7に係る発明は、請求項5又は請求項6に記載の放熱器の製造方法において、前記螺旋形の軌跡が前記接合ツールの回転方向に対して傾斜角0.5〜2.0°で傾斜しており、この螺旋形の凹溝が前記接合ツールの全周にわたって二本以上形成されていることを特徴とする。
【0026】
また、請求項8に係る発明は、請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の放熱器の製造方法において、前記凹溝の深さが0.3〜1.2mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る金属部材接合方法によれば、金属部材同士を互いに重ね合わせて簡易かつ確実に接合でき、また、複数枚の金属製板材を金属製ベース板に立設させて簡易かつ確実に接合できる。さらに本発明に係る放熱器の製造方法によれば、複数枚のフィンをベース板に強固に立設接合した放熱器を簡易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略するものとする。
【0029】
<金属部材接合方法−1>
本発明に係る金属部材接合方法の第一実施形態は、金属部材同士を重ね合わせて摩擦振動接合するものである。金属部材の摩擦振動接合とは、接合ツールの押圧力によって金属部材の重ね合わせ部における隙間をなくしつつ、回転する接合ツールと金属部材との接触により生ずる振動によって金属部材同士の境界面に存在する酸化皮膜を分断破壊するとともに、摩擦熱によって重ね合わせ部を高温化して塑性変形させることにより、金属部材同士の接触面積と拡散速度を増大させながら重ね合わせ部を接合する方法である。
そして特に、複数の金属部材を、溶融点の高い順に互いに重ね合わせて配置しておき、最も溶融点の高い金属部材側から接合ツールを押し当てつつ接合するようにすれば、金属部材同士の重ね合わせ部が接合に必要な温度まで上昇したときに、接合ツールに近い側の金属部材ほどその変形抵抗を高く保って接合ツールの押圧力を境界面に対して効率よく伝達できるので、金属部材間に隙間のない高強度の接合が可能となるのである。
【0030】
ここで、金属部材の一例としてアルミニウム部材とこれよりも溶融点の高い銅部材とを挙げ、より具体的に説明する。図1(a),(b)は、本発明に係る金属部材接合方法の第一実施形態としての、金属部材の摩擦振動接合の各手順を表す正面断面図であり、図1(c)は図1(b)の側面図である。本実施形態ではまず、図1(a)に示すようにアルミニウム部材1と銅部材2とが面接触するようにこれらを互いに重ね合わせて配置し、図示しない治具で固定する。
【0031】
次に、図1(b),(c)に示すように、回転軸3bを中心として円周方向に周速度Rで高速回転する接合ツール3のツール本体3aの周面を銅部材2の表面2aに垂直に押し当てつつ、接合ツール3を銅部材2の表面2aに沿って送り速度Vで移動させることによって、アルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて接合する。接合ツール3は回転軸3bの先端部に円板状のツール本体3aを固定してなるものであり、ツール本体3aはJIS:SKD61などの工具鋼からなる。ツール本体3aは、銅部材2の表面2aを押さえ込みつつ進行方向後方に送り込むような向きで回転軸3bのまわりに回転する。
【0032】
ツール本体3aは、図2(a)に示すように、その周面が銅部材2の表面2aに一定量αだけ押し込まれた状態で円周方向に高速回転しつつ、銅部材2の表面2aに沿って移動する。そして、このようなツール本体3aの銅部材2への押し込みによってアルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面(境界面)の隙間をなくしつつ、高速回転するツール本体3aと銅部材2との接触により生ずる振動によってアルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面(境界面)の酸化皮膜を分断破壊するとともに、図2(b)に示すように、ツール本体3aと接触する銅部材2の所定領域及びその近傍領域と、これらの領域に隣接するアルミニウム部材1の所定領域とを、ツール本体3aと銅部材2との摩擦接触により発生した熱で高温化し、それぞれ固相状態のまま可塑化(流動化)させる。その結果、銅部材2とアルミニウム部材1は、互いの境界面においても塑性流動し、それぞれ当初の表面から塑性変形する。
【0033】
接合ツール3のツール本体3aが通過した跡は、図2(c)に示すように、ツール本体3aの押圧力によって銅部材2の表面2aに一対の浅い段部2b,2bが形成される。また、アルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面(境界面)は、塑性変形したアルミニウム部材1及び銅部材2が互いに噛み合うように断面凹凸形で固化した接合面Sとなり、この接合面Sを介して銅部材2とアルミニウム部材1とが確実に接合される。
【0034】
ここで、接合ツール3をアルミニウム部材1側から押し当てることも考えられるが、アルミニウム部材1の溶融点は銅部材2の溶融点よりも低く、アルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面(境界面)が接合に必要な温度(共晶温度:548℃)以上に達したときにアルミニウム部材1の変形抵抗が比較的小さくなってしまうので、接合ツール3による押圧力がアルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面(境界面)に充分に伝達されず、接合不良となりやすい。一方、接合ツール3をアルミニウム部材1よりも溶融点の高い銅部材2側から押し当てるようにすれば、アルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面(境界面)が接合に必要な温度(共晶温度)以上に達したときに銅部材2の変形抵抗を比較的大きく保持して、接合ツール3の押圧力をアルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面(境界面)に充分に伝達できるので、両部材間の隙間をなくした高強度の接合を行うことができる。
【0035】
ところで、図3(a)に示すように、接合ツール3のツール本体3aの周面には回転方向に略沿った向きで凹溝3cが形成されている。したがって、接合ツール3の周面と銅部材2の表面2aとの接触面積がより大きくなり、効率よく摩擦熱を発生させて効率よく銅部材2とアルミニウム部材1とを接合することができる。
また、凹溝3cは、回転方向に対して僅かに傾斜して連続するように、つまり接合ツール3の回転軸3bのまわりでツール本体3aの周面に沿った螺旋形の軌跡を描くように形成されている。したがって、ツール本体3aの回転・移動に伴って、凹溝3cの内部に溜まった可塑化したメタルがツール本体3aの幅方向に順次送り出されるので、接合後に銅部材2の表面2aに残る凹み量(段部2bの高さ)を最小限に抑えることができる。
【0036】
ここで、接合ツール3のツール本体3aの周面の凹溝3c,3c間のフラット部3dの幅w(mm)及び凹溝3cの幅w(mm)は、1≦w≦5、かつ、1≦w≦3、かつ、0.67≦w/w≦5.00が成立するように設定されている。フラット部3d及び凹溝3cがこのように設定されていることにより、銅部材2の表面2aへの接合ツール3のツール本体3aの押込量を抑えつつ、接合ツール3のツール本体3aによる摩擦熱の発生量を大きくして、効率的な接合が可能となる。
【0037】
また、接合ツール3のツール本体3aの周面の凹溝3cは、ツール本体3aの回転方向に対して傾斜して形成されており、傾斜角θは0.5〜2.0°に設定されている。図3(a)において、Xは回転方向に平行な線を示す。そして凹溝3cは、ツール本体3aの周面の全周にわたって幅方向に二本以上形成されている。凹溝3cの傾斜角θ及び本数がこのように設定されていることにより、接合ツール3のツール本体3aの回転・移動に伴って、凹溝3c内部に溜まった可塑化した銅部材2のメタルがツール本体3aの幅方向にうまく連続的に送り出され、ツール本体3aの通過後に銅部材2の表面2aにバリや凹みがほとんど残存しなくなり、機械負荷も小さくなる。
【0038】
さらに、接合ツール3のツール本体3aの周面の凹溝3cの深さは0.3〜1.2mmに設定されている。凹溝3cの深さがこのように設定されていることにより、可塑化した銅部材2のメタルが凹溝3cの内部に詰まらず、接合後に銅部材2の表面2aに残る凹み量も小さくなり、効率的な接合が可能となる。
【0039】
なお、このようにしてアルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて摩擦振動接合する場合には、接合時の接合ツール3(ツール本体3a)を、次式(A)で求められる周速度R(m/min)で回転させることが望ましい。
250≦R≦2000 … (A)
これは、接合時の接合ツール3の周速度が250m/minより小さいと、接合ツール3と銅部材2との摩擦接触によって発生する熱量が小さすぎて、銅部材2とアルミニウム部材1との重ね合わせ面(境界面)の温度が低く、接合不良となってしまい、一方、接合時の接合ツール3の周速度が2000m/minより大きいと、接合ツール3と銅部材2との摩擦接触によって発生する熱量が必要以上に大きくなって、接合ツール3の駆動エネルギーロスが大きいだけでなく、接合ツール3と接触している銅部材2の温度が局所的に大きくなりすぎて当該部分が塑性変形してしまい、接合ツール3の押圧力が重ね合わせ面(境界面)に充分に伝達されず、両部材間に隙間が生じてしまうおそれがあるからである。したがって、接合時の接合ツール3を周速度250〜2000m/minで回転させれば、接合ツール3と銅部材2との摩擦接触によって発生する熱量が適正な値となって、良好な接合を行うことができるのである。
【0040】
また、アルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて摩擦振動接合する場合には、接合時の接合ツール3(ツール本体3a)を、次式(B)で求められる押込量α(m)だけ銅部材2の表面2aに押し込むことが望ましい。
0.03×t≦α≦0.3×t … (B)
t:重ね合わせ部における銅部材の厚さ(m)
これは、接合時の接合ツール3の銅部材2の表面2aへの押込量αが0.03tよりも小さいと、銅部材2とアルミニウム部材1との重ね合わせ面(境界面)に隙間が残って接合不良となり、一方、押込量αが0.3tよりも大きいと、銅部材2とアルミニウム部材1との重ね合わせ面(境界面)に隙間は残らないが、接合ツール3の押し込み過大によって銅部材2表面に凹みが顕著に残ってしまい、部材ロスが発生するからである。したがって、接合時の接合ツール3の銅部材2の表面2aへの押込量αを0.03t以上0.3t以下とすれば、接合ツール3の押圧力が適正な値となって、銅部材2とアルミニウム部材1との重ね合わせ面(境界面)に隙間を発生させずに接合することができ、銅部材2の表面2aの凹みも小さくできるのである。
【0041】
さらに、アルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて摩擦振動接合する場合には、接合時の接合ツール3(ツール本体3a)を、次式(C)によって求められる送り速度V(m/min)で銅部材2の表面2aに沿って移動させることが望ましい。
0.1≦V≦R/(5.0×10×t) … (C)
R:接合時の接合ツールの周速度(m/min)
t:重ね合わせ部における銅部材の厚さ(m)
これは、接合時の接合ツール3の周速度が大きくなれば、接合ツール3と銅部材2との摩擦接触によって発生する熱量が大きくなるので、接合ツール3の送り速度Vを大きくしても、重ね合わせ部の温度を一定以上に保つことができるが、銅部材2の厚さが厚くなると、重ね合わせ面(境界面)が一定温度以上に達するまでの時間がかかるので、接合ツール3の送り速度を大きくしすぎると、重ね合わせ部が一定温度以上に達する前に接合ツール3が通過してしまい、接合不良となってしまうからである。つまり、良好な摩擦振動接合を行うには、接合ツール3の送り速度V、周速度R、銅部材の厚さtを相互に調節する必要があり、実験の結果、V≦R/(5.0×10×t)を満足するときに良好な接合が可能であることが確認されている。一方、接合ツール3の周速度Vが小さすぎると、接合効率が低下するという観点から、0.1≦Vを満足するときに接合効率がよいことも実験によって確認されている。
【0042】
なお、ツール本体3aが回転軸3bの先端部に固定された、いわゆる片持式の接合ツール3においては、ツール本体3aの幅は5〜25mmに設定されるが、これ以上ツール本体3aの幅を大きくする場合には、ツール本体3aが回転軸3bの中間部に固定された、いわゆる両持式の接合ツール3とすることが望ましい。ツール本体3aの幅が大きいと、接合ツール3に作用する圧力で回転軸3bが撓んでしまって、ツール本体3aの周面を銅部材2の表面2aに対して垂直に押し込むことが難しくなってくるからである。
【0043】
なお、金属部材の摩擦振動接合は、アルミニウム部材と銅部材との重ね合わせ接合に限定されるわけではなく、金属部材同士の重ね合わせ接合に広く適用することができる。そして、そのような金属部材の形状は、互いに重ね合わせて接合ツールを押し当てることができるものであればよい。さらに、金属部材の重ね合わせ数も二つに限定されるわけではなく、三つ以上としてもよい。
たとえば、図4では、三つの金属部材(5000系アルミニウム部材1、1000系アルミニウム部材1’、銅部材2)を互いに重ね合わせて配置し、三つの金属部材のうち最も溶融点の高い銅部材2側から接合ツール3のツール本体3aを押し当てて摩擦振動接合するものである。ここで、接合時に金属部材同士の重ね合わせ部が所定温度以上になることと、そのときの各金属部材の変形抵抗が金属部材同士の重ね合わせ面(境界面)への接合ツールによる押圧力の伝達効率に影響することを考慮すると、三つの金属部材を溶融点の高い順(ここでは銅部材2、1000系アルミニウム部材1’、5000系アルミニウム部材1の順)に重ね合わせて配置し、最も溶融点の高い金属部材(ここでは銅部材2)の表面から接合ツール3を押し当てて摩擦振動接合することが望ましい。この他、三つの金属部材を銅、アルミニウム、マグネシウムとした場合には、銅部材、アルミニウム部材、マグネシウム部材の順に重ね合わせ、銅部材側から接合ツールを押し当てて摩擦振動接合すればよい。
【0044】
<金属部材接合方法−2>
本発明に係る金属部材接合方法の第二実施形態は、複数枚の金属製板材を金属製のベース板に立設させて摩擦振動接合することにより、放熱器を製造するというものである。
図5及び図6は、本発明に係る金属部材接合方法の第二実施形態としての放熱器の製造方法を説明するための図であって、図5(a),(b)は部材配置工程を表す正面断面図、図6(a)は接合工程を表す正面断面図、図6(b)はスペーサ離脱工程を表す正面断面図である。また、図7は、放熱器製造用治具の一実施形態を表す分解斜視図である。
【0045】
本実施形態ではまず、図5(a)に示すように、アルミニウム製の板材であるフィン4,4,…と、鉄製の板状部材であるスペーサ5,5,…とを交互に並べながら、これらを放熱器製造用治具10の部材セット部12に立設配置する。
放熱器製造用治具10は、図7に示すように、上面が開放した箱形の治具本体11と、この治具本体11の内部に形成された凹部である部材セット部12においてスライド可能に配置された押圧板13と、この押圧板13と直交する向きで治具本体11の壁体を貫通しつつ、先端部が押圧板13の背面に固着され頭部が治具本体11の壁体の外側に位置する締付ボルト14と、押圧板13に平行な向きで治具本体11の壁体上部に架け渡されるベース固定板15と、このベース固定板15の両端を治具本体11の壁体上部に螺着するための締付ボルト16と、で構成されている。
そして、ここでは、フィン4,4,…とスペーサ5,5,…とを、これらが交互に立設するように部材セット部12に並べた上で、締付ボルト14をねじ込んで押圧板13をこれらに押し付けることによってこれらを互いに密着した状態で拘束する。このとき、フィン4とスペーサ5は全て高さが等しいので、立設されたフィン4,4,…の上面(基端面)とスペーサ5,5,…の上面(基端面)とで水平面が形成されるようになっている。
【0046】
続いて、図5(b)に示すように、部材セット部12に立設配置されたフィン4,4,…及びスペーサ5,5,…の上面に、銅製の板材であるベース板6、さらにその上にベース固定板15を載せ、ベース固定板15の下面に形成されている切欠15aにフィン4,4,…及びスペーサ5,5,…の上部(基端部)を嵌め込むことによって、フィン4,4,…及びスペーサ5,5,…を長さ方向(紙面直交方向)に移動しないように拘束する。さらに、この状態でベース固定板15の両端のボルト孔15bから治具本体11の壁体上面のボルト孔11aに締付ボルト16をねじ込むことによって、ベース板6をフィン4及びスペーサ5の上部に固定する。また図示していないが、必要に応じて、ベース板6が幅方向(紙面左右方向)に移動しないように拘束する。これで、フィン4及びスペーサ5の基端面がベース板6の下面(一方の面)に当接するように、フィン4及びスペーサ5をベース板6に立設配置する工程が完了する。
なお、図5(a),(b)に示した部材配置工程は、必ずしもこのとおりでなくても、フィン4,4,…とスペーサ5,5,…とベース板6とが最終的に図5(b)のように所定の位置に配置されるのであれば、手順を問わない。したがって、たとえば、互いに間隔をあけてフィン4,4,…(又はスペーサ5,5,…)を配置しておき、それらの基端面にベース板6を固定した後、最後にフィン4,4,…(又はスペーサ5,5,…)の間にそれぞれスペーサ5,5,…(又はフィン4,4,…)を挿入するようにしてもよい。
【0047】
次に、図6(a)に示すように、回転軸3bを中心として円周方向に高速回転する接合ツール3のツール本体3aの周面をベース板6の他方の面の表面6aに垂直に押し当てつつ、接合ツール3をベース板6の表面6aに沿って移動させることによって、ベース板6にフィン4,4,…を接合する。ツール本体3aの周面には、第一実施形態と同様の凹溝3cが形成されている。
このとき、ベース板6を構成する銅の溶融点がフィン4を構成するアルミニウムの溶融点よりも高いので、フィン4とベース板6との境界面を両者の接合に必要な温度(共晶温度:548℃)まで上昇させたときにベース板6の変形抵抗を高く保つことができ、接合ツール3の押圧力を境界面に効率よく伝達しながらフィン4とベース板6の間に隙間のない高強度の接合を行うことができる。
また、スペーサ5を構成する鉄の溶融点がフィン4を構成するアルミニウム及びベース板6を構成する銅の溶融点よりも高いので、接合ツール3の周速度や送り速度を所定の範囲に設定することによって、スペーサ5がフィン4やベース板6に接合されないように、ベース板6とフィン4だけを容易に接合することができる。
【0048】
最後に、放熱器製造用治具10の締付ボルト16を緩めてベース固定板15を治具本体11から取り外すとともに、締付ボルト14を緩めて押圧板13によるフィン4及びスペーサ5の拘束を解除した上で、図6(b)に示すように、ベース板6を上に持ち上げる。すると、ベース板6に接合されたフィン4,4,…だけが一緒に持ち上がり、スペーサ5,5,…は放熱器製造用治具10の部材セット部12に取り残される。このようにしてスペーサ離脱工程において簡単にスペーサ5,5,…を取り外すことによって、図8に示すような、複数枚のアルミニウム製のフィン4,4,…が互いに間隔をあけて銅製のベース板6の一方の面に立設接合された放熱器Hを製造することができる。
【0049】
このような方法によれば、フィン4,4,…の間にそれぞれスペーサ5,5,…を挟み込むので、フィン4相互の間隔を正確に保ちつつ、互いに所定間隔をあけた状態でフィン4,4,…を並べて位置決めすることができる。また、スペーサ5によってフィン4が補強されるので、接合工程においてフィン4に曲げ応力が作用するにもかかわらず、フィン4の厚さをかなり薄くすることが可能である。また、スペーサ5の厚さを変更するだけでフィン4の配置間隔を任意に変更でき、さらにフィン4の高さを併せて変更することによって、特に板厚が薄く高さの大きなフィン4,4,…を、ベース板6の一方の面に短ピッチで立設接合して、ハイトング比の(たとえばトング比20を超える)放熱器Hを製造することができる。もちろん、スペーサ5は金属製に限定されるわけではなく、強度や加工性等を考慮してセラミックその他の任意の材質とすることができ、またスペーサ5の形状も適宜定めればよい。なお、部材配置工程でベース板6の一方の面にフィン4,4,…を立設配置したときに、スペーサ5,5,…の基端面はベース板6の該一方の面に当接していなくてもよいが、接合工程で接合ツール3の押圧力によってフィン4に曲げ応力が作用することを考慮すれば、スペーサ5によるフィン4の補強効果を高めるため、本実施形態のようにスペーサ5,5,…をフィン4,4,…と同じ高さに揃えることによって、スペーサ5,5,…の基端面をベース板6の該一方の面に当接させることが望ましい。
【0050】
なお、ベース板6とフィン4,4,…との接合強度を高めるとともに、放熱器Hの放熱性能を高めるためには、図9(a)に示すように、各フィン4の基端面全面を辿るようにベース板6の裏面(ベース板6の他方の面)において接合ツール3(ツール本体3a)を移動させることによって、フィン4,4,…をベース板6に完全に接合することが望ましい(図9において斜線を付した領域は、接合ツール3の移動跡を示している。)。一方、接合コストの削減を重視するのであれば、たとえば図9(b)に示すように、各フィン4の基端面の全面ではなく一部だけを辿るように接合ツール3を移動させればよい。また、ベース板6とフィン4,4,…とを接合するときに同時にベース板6とスペーサ5,5,…とを接合しておき、スペーサ離脱工程では何らかの方法によってベース板6やフィン4からスペーサ5,5,…を取り外すようにしてもよいが、接合ツール3のツール本体3aの幅をフィン4の厚さ以下としておき、図9(c)に示すようにベース板6とスペーサ5,5,…とが接合されないような軌跡で(図示の場合、フィン4,4,…の直上領域だけで)接合ツール3を移動させるか、又は、ベース板6にフィン4,4,…のみを当接させ、ベース板6とスペーサ5,5,…が当接しないように配置して接合するか、あるいは、上記実施形態のようにスペーサ5の溶融点をフィン4及びベース板6の溶融点よりも高くすることによって、接合ツール3の移動軌跡にかかわらずスペーサ5,5,…がベース板6やフィン4に接合されないようにしておけば、接合後もスペーサ5,5,…がベース板6やフィン4に接合されないので、スペーサ離脱工程での手間を省いて製造コストを削減することができる。また、接合ツール3の押込力によってベース板6の他方の面の表面6aに残った凹みが大きい場合には、ベース板6の表面6aを一定厚さで切削することによって、外観美麗な放熱部材Hとすることができる。
【0051】
また、接合工程を簡素化するために、接合ツール3に代えて、図10に示すように、回転軸3bのまわりに所定間隔でツール本体3a,3a,…が固定された接合ツール3’を用いて接合するようにしてもよい。この場合、一度に多数箇所を接合できるので、接合に要する時間を短縮でき、さらに接合効率が向上する。
【0052】
なお、このようにして製造された放熱器Hのフィン4,4,…の先端面にさらに別のベース板6’を接合することにより、図11に示すような、互いに間隔をあけたフィン4,4,…の両端面にそれぞれベース板6,6’を接合した放熱器H’を製造するようにしてもよい。
【0053】
同図に示した放熱器H’の製造手順の第一パターンは、図12(a)に示すように、互いに間隔をあけたフィン4,4,…の間にそれぞれスペーサ5,5,…を挟み込み、フィン4,4,…の両端(図示上下端)にそれぞれベース板6,6’を配置した上で、ベース板6の背面(図示上面)及びベース板6’の背面(図示下面)から接合ツール3,3を押し当てて同時に接合する。そして最後に、スペーサ5,5,…を側方から(紙面直交方向に)抜き取る。
放熱器H’の製造手順の第二パターンは、図12(b)に示すように、互いに間隔をあけたフィン4,4,…の間にそれぞれスペーサ5,5,…を挟み込み、フィン4,4,…の両端(図示上下端)にそれぞれベース板6,6’を配置した上で、一方のベース板6の背面(図示上面)から接合ツール3を下向きに押し当てて接合する。その後、各部材の配置関係を保持したままフィン4、スペーサ5、ベース板6,6’を上下反転した上で、図12(c)に示すように、他方のベース板6’の背面(図示上面)から接合ツール3を下向きに押し当てて接合する。そして最後に、スペーサ5,5,…を側方から(紙面直交方向に)抜き取る。
【0054】
放熱器H’の製造手順の第三パターンは、図13(a)に示すように、互いに間隔をあけたフィン4,4,…の間にそれぞれスペーサ5,5,…を挟み込み、フィン4,4,…の一端(図示上端)だけにベース板6を配置した上で、ベース板6の背面(図示上面)から接合ツール3を下向きに押し当てて接合する。その後、各部材の配置関係を保持したままフィン4、スペーサ5、ベース板6を上下反転した上で、図13(b)に示すように、フィン4,4,…の他端(図示上端)にベース板6’を配置し、さらに図13(c)に示すように、ベース板6’の背面(図示上面)から接合ツール3を下向きに押し当てて接合する。そして最後に、スペーサ5,5,…を側方から(紙面直交方向に)抜き取る。
放熱器H’の製造手順の第四パターンは、図13(d)に示すように、互いに間隔をあけたフィン4,4,…の間にそれぞれスペーサ5,5,…を挟み込み、フィン4,4,…の一端(図示上端)だけにベース板6を配置した上で、ベース板6の背面(図示上面)から接合ツール3を下向きに押し当てて接合する。次に、図13(e)に示すように、ベース板6及びフィン4を上に持ち上げる等してスペーサ5を取り外し、一旦放熱器Hを完成させる。その後、放熱器Hを上下反転した上で、図13(f)に示すように、フィン4,4,…の間にそれぞれスペーサ5,5,…を挟み込み、フィン4,4,…の他端(図示上端)にベース板6’を配置する。さらに、図13(g)に示すように、ベース板6’の背面(図示上面)から接合ツール3を下向きに押し当てて接合する。そして最後に、スペーサ5,5,…を側方から(紙面直交方向に)抜き取る。
【0055】
<金属部材接合方法−3>
本発明に係る金属部材接合方法の第三実施形態は、上記第二実施形態と略同様であるが、放熱器製造用治具10を使用せず、これに代えてスペーサ治具20を使用する点において異なる。
スペーサ治具20は、図14(a)に示すように、スペーサ5,5,…の先端部(図示下端部)が相互に連結された断面櫛形状の治具である。そして、部材配置工程では、このスペーサ治具20のスペーサ5,5,…を上に向けて固定した後で、図14(b)に示すように、スペーサ5,5,…の間にそれぞれフィン4,4,…を挿入し、さらに図14(c)に示すように、フィン4,4,…の上面(基端面)にベース板6の下面(一方の面)が当接するように、ベース板6を固定する。なお、図14(b),(c)の手順を逆にすること、つまりスペーサ治具20の上面にベース板6を固定した後で、側方(紙面直交方向)からスペーサ5,5,…を挿入することも可能である。
続く接合工程では、図14(d)に示すように、ベース板6の上面(他方の面)から接合ツール3を押し当てつつ、ベース板6にフィン4,4,…を接合する。
最後のスペーサ離脱工程では、図14(e)に示すように、ベース板6及びこれに接合されたフィン4,4,…を持ち上げることにより、スペーサ治具20を取り外す。
本実施形態のようにスペーサ治具20を用いれば、放熱器製造用治具10が不要となり、しかもスペーサ5,5,…の配置の手間も省けるという利点がある。
【0056】
<金属部材接合方法−4>
本発明に係る金属部材接合方法の第四実施形態は、上記第二実施形態と略同様であるが、部材配置工程がフィン配置工程とその後のベース板配置工程とに分かれている。
そして、最初のフィン配置工程では、図15(a)に示すように、フィン4,4,…とスペーサ5,5,…とを交互に並べながら、これらを放熱器製造用治具10の部材セット部12に立設配置する。このとき、スペーサ5,5,…の高さはスペーサ5の厚さの範囲内でフィン4,4,…の高さよりも小さくなっており、スペーサ5,5,…の基端面(図示上端面)がフィン4,4,…の基端面(図示上端面)よりもスペーサ5の厚さ以内で埋没している。換言すれば、フィン4,4,…の高さはスペーサ5の厚さの範囲内でスペーサ5,5,…の高さよりも大きくなっており、フィン4,4,…の基端面がスペーサ5,5,…の基端面よりもスペーサ5の厚さ以内で突出している。
【0057】
続くベース板配置工程では、図15(b)に示すように、部材セット部12に立設配置されたフィン4,4,…の基端面(上面)にベース板6を載せる。そして、図15(c),(d)に示すように、フィン4に向かう下向きの押圧力をベース板6に作用させることによって、フィン4,4,…の基端部(スペーサ5,5,…よりも突出している部分)4aを折り曲げ、フィン4,4,…を断面L字形に形成した状態で固定する。このとき、フィン4の基端部4aの高さはスペーサ5の厚さ以内であるので、折り曲げられたフィン4の基端部4aは相互に重複せず、ベース板6の一方の面(図示下面)に沿う面を形成する。
【0058】
次に、図16(a)に示すように、回転軸3bを中心として円周方向に高速回転する接合ツール3のツール本体3aの周面をベース板6の他方の面の表面6aに垂直に押し当てつつ、接合ツール3をベース板6の表面6aに沿って移動させることによって、ベース板6にフィン4,4,…の基端部4aを接合する。
このとき、直角に折り曲げられたフィン4の基端部4aがベース板6の一方の面に沿う面を形成しているので、第二実施形態に比べてベース板6とフィン4との接触面積が大きくなっており、両者を確実に接合することができる。つまり、本実施形態によれば、フィン4の厚さがかなり薄い場合であっても、ベース板6にフィン4,4,…が確実に立設接合された放熱器Hを製造することができる。
【0059】
最後に、図16(b)に示すように、ベース板6を上に持ち上げれば、ベース板6に接合されたフィン4,4,…だけが一緒に持ち上がり、スペーサ5,5,…は放熱器製造用治具10の部材セット部12に取り残されるので、複数枚のフィン4,4,…がそれぞれの折り曲げられた基端部4aを介してベース板6の一方の面に立設接合された放熱器Hを製造することができる。
【0060】
<放熱器の製造方法>
次に、本発明に係る放熱器の製造方法の実施形態について説明する。本実施形態は、上記金属部材接合方法の第二実施形態と略同様であるが、フィン4に代えて断面凹字形のフィン構成材30を用いる。
まず、最初の部材配置工程では、図17(a)に示すように、全体が逆T字形になるように、一枚の薄いアルミニウム合金製の板材31の中央部にスペーサ5を直交配置し、図17(b)に示すように、断面凹字形のフィン構成材作成治具40の中央部の溝内に、板材31を折り曲げつつその中央部を押し込みながらスペーサ5を挿入していくことによって、図17(c)に示すような、中央部の溝にスペーサ5が挟み込まれた断面凹字形のフィン構成材30を作成する。フィン構成材30は、左右一対のフィン4,4とこれらの端部を連結する基端部4aとで断面凹字形に形成されている。
【0061】
そして、このように左右一対のフィン4,4の間にスペーサ5が挟み込まれたフィン構成材30を複数個用意し、これらのフィン構成材30,30,…とスペーサ5’,5’,…とを交互に並べながら、図17(d)に示すように、これらを放熱器製造用治具10の部材セット部12に立設配置する。このときフィン構成材30は、左右一対のフィン4,4の間にスペーサ5を挟み込んだ状態で、かつ、基端部4aを上に向けた状態とする。また、フィン構成材30,30,…相互間に挟み込まれるように配置されたスペーサ5’,5’,…の高さを、フィン構成材30の左右一対のフィン4,4の間に挟み込まれたスペーサ5の高さよりも、フィン構成材30の基端部4aの厚さ分だけ大きくすることによって、フィン構成材30の基端部4aとスペーサ5’の基端部とで水平な上面を形成することが望ましい。
【0062】
その後、図17(e)に示すように、部材セット部12に立設配置されたフィン構成材30,30,…及びスペーサ5’,5’,…の上面にベース板6を載せて固定する。これで、ベース板6の一方の面(図示下面)にフィン構成材30の基端部4a及びスペーサ5’の基端面が当接した状態となって、部材配置工程が完了する。
なお、図17(a)〜(e)に示した部材配置工程は、必ずしもこのとおりでなくても、フィン構成材30,30,…とスペーサ5,5,…とスペーサ5’,5’,…とが最終的に図17(e)のように所定の位置に配置されるのであれば、手順を問わない。したがって、たとえば、予め断面凹字形に形成したフィン構成材30,30,…を互いに間隔をあけて並べておき、各フィン構成材30の左右一対のフィン4,4の間にそれぞれスペーサ5,5,…を挿入するとともに、フィン構成材30,30,…相互間にスペーサ5’,5’,…を挿入し、最後にベース板6を配置するようにしてもよいし、あるいは、予め断面凹字形に形成したフィン構成材30,30,…を互いに間隔をあけて並べておき、次にベース板6を配置し、最後に、各フィン構成材30の左右一対のフィン4,4の間にそれぞれスペーサ5,5,…を挿入するとともに、フィン構成材30,30,…相互間にスペーサ5’,5’,…を挿入するようにしてもよい。
【0063】
続く接合工程では、図18(a)に示すように、回転軸3bを中心として円周方向に高速回転する接合ツール3のツール本体3aの周面をベース板6の他方の面の表面6aに垂直に押し当てつつ、接合ツール3をベース板6の表面6aに沿って移動させることによって、ベース板6にフィン構成材30,30,…の基端部4aを接合する。
このとき、フィン構成材30の基端部4aがベース板6の一方の面に沿う面を形成しているので、第一実施形態に比べてベース板6とフィン4との接触面積が大きくなっており、両者を確実に接合することができる。つまり、本実施形態によれば、フィン4の厚さがかなり薄い場合であっても、ベース板6にフィン4,4,…が確実に立設接合された放熱器Hを製造することができる。
【0064】
最後に、図18(b)に示すように、ベース板6を上に持ち上げれば、ベース板6に接合されたフィン構成材30,30,…だけが一緒に持ち上がり、スペーサ5’,5’,…及びスペーサ5,5,…は放熱器製造用治具10の部材セット部12に取り残されるので、複数枚のフィン4,4,…がフィン構成材30の基端部4aを介してベース板6の一方の面に立設接合された放熱器Hを製造することができる。
【0065】
<その他>
なお、以上の実施形態では、接合ツール3を用いたいわゆる摩擦振動接合を例示してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。たとえば、加熱及び加圧の方法としては、回転する接合ツール3を溶融点の高い金属部材側に押し込んで、これにより発生する摩擦熱と押圧力を金属部材間の境界面に伝達するような接触方式に限定されるものではなく、電磁誘導を利用して溶融点の高い金属部材側から金属部材間の境界面を加熱及び加圧するような非接触方式でもよい。
【実施例】
【0066】
図1、図2に示すように、銅製の板材(銅板)とアルミニウム合金(A1050)製の板材(アルミ板)とを重ね合わせて、高速回転する接合ツールの周面を銅板の表面に押し当てつつ移動させる摩擦振動接合を実際に行った。銅板は板厚4mm、幅70mm、長さ100mmとし、アルミ板は板厚0.5mm、幅70mm、長さ100mmとした。接合ツールは直径120mm、幅24mmとし、接合ツールの回転数は2000rpm(周速度≒1507m/min)、送り速度は0.75m/minとした。
【0067】
<実施例1>
接合ツールの周面のフラット部の幅w(mm)、溝幅w(mm)、溝幅に対するフラット部の幅の比率w/wを様々に設定して、接合品質、外観、機械負荷について調べた結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から、w/wが小さすぎると(比較例1−2)、銅板の表面を接合ツールで切削しているのに近い状況となるので、接合ツールによる摩擦熱の発生量を比較的大きくでき機械負荷は小さくなるものの、接合後に銅板の表面に残る凹み量が大きくなって外観が悪く、接合品質も悪かった。一方、w/wが大きすぎると(比較例1−1)、周面がフラットな接合ツールによる接合に近い状況となって、接合ツールによる摩擦熱の発生量が小さいので、銅板表面への接合ツールの押込量を大きくしなければならず外観が悪くなり、機械負荷も過大であった。
そして、1≦w≦5、かつ、1≦w≦3、かつ、0.67≦w/w≦5.00が成立する場合(実施例1−1〜1−7)には、銅板表面への接合ツールの押込量を抑えつつ、接合ツールによる摩擦熱の発生量を大きく機械負荷を小さくして、効率的な接合が可能となることが判明した。
【0070】
<実施例2>
接合ツールの周面の溝の回転方向に対する傾斜角度と溝数を様々に設定して、接合品質、外観、機械負荷について調べた結果を表2に示す。なお、比較例2−2の場合だけ、接合ツールの幅を10mmに設定した。
【0071】
【表2】

【0072】
表2から、凹溝の傾斜角度が0.5°より小さい場合(比較例2−2)には、機械負荷は小さいものの、凹溝内部に溜まった可塑化したメタルが接合ツールの幅方向にうまく送り出されないため、接合ツールの通過後に銅板の表面にバリが残存し、外観不良となった。一方、凹溝の傾斜角度が2.0°より大きい場合(比較例2−1)には、切粉の排出量が大きく外観不良であるとともに、金属部材の表面に残る凹みが大きく機械負荷が過大であった。
そして、凹溝の傾斜角度が0.5〜2.0°の場合(実施例2−1〜2−3)には、このような弊害がなく、良好な接合が可能であった。
なお、接合ツールの幅を考慮すると、接合ツールの全周にわたって形成されている凹溝の本数は幅方向に二以上である。比較例2−2において、溝数が0本となっているのは、接合ツールの回転方向に傾斜した凹溝がないということを示している。
【0073】
<実施例3>
接合ツールの周面の溝の深さを様々に設定して、接合品質、外観、機械負荷について調べた結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3から、凹溝の深さが0.3mmより小さい場合(比較例3−1)には、可塑化したメタルが凹溝内部に詰まってしまい、接合ツールによる摩擦熱の発生量が減少して充分な接合ができなかった。一方、凹溝の深さが1.2mmより大きい場合(比較例3−2)には、銅板の表面を接合ツールで切削しているのに近い状況となるので、接合ツールによる摩擦熱の発生量を大きくでき機械負荷が小さいが、接合ツールの押込量が大きくなってしまい、その結果、外観不良であった。さらに、溝が全くない場合(比較例3−3)には、接合ツールによる摩擦熱の発生量が小さいので、銅板表面への接合ツールの押込量を大きくしなければならず外観が悪くなり、機械負荷も過大であった。
そして、凹溝の深さが0.3〜1.2mmである場合には、このような弊害がなく、良好な接合が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a),(b)は本発明に係る金属部材接合方法の第一実施形態の各手順を表す正面断面図であり、(c)は(b)の側面図である。
【図2】図1におけるアルミニウム部材と銅部材との重ね合わせ面の塑性変形の様子を時系列的に表す断面図である。
【図3】(a)は図1の接合ツールの部分拡大図であり、(b)〜(d)は接合ツールの周面の凹溝の別例を表す部分断面図である。
【図4】金属部材の摩擦振動接合の別の例を表す正面断面図である。
【図5】本発明に係る金属部材接合方法の第二実施形態を説明するための図であって、(a),(b)は部材配置工程を表す正面断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための図であって、(a)は接合工程を表す正面断面図、(b)はスペーサ離脱工程を表す正面断面図である。
【図7】放熱器製造用治具の一実施形態を表す分解斜視図である。
【図8】放熱器の一実施形態を表す斜視図である。
【図9】図6(a)に示した接合工程における接合ツールの移動軌跡の各例を表す斜視図である。
【図10】図6(a)に示した摩擦振動接合工程の他の例を表す正面断面図である。
【図11】放熱器の他の実施形態を表す正面断面図である。
【図12】図11に示した放熱器を製造する手順を説明するための正面断面図であって、(a)が第一のパターン、(b),(c)が第二のパターンを表す。
【図13】図11に示した放熱器を製造する手順を説明するための正面断面図であって、(a)〜(c)が第三のパターン、(d)〜(g)が第四のパターンを表す。
【図14】本発明に係る金属部材接合方法の第三実施形態を説明するための図であって、(a)〜(c)は部材配置工程を表す正面断面図、(d)は接合工程を表す正面断面図、(e)はスペーサ離脱工程を表す正面断面図である。
【図15】本発明に係る部材接合方法の第四実施形態を説明するための図であって、(a)はフィン配置工程を表す正面断面図、(b),(c)はベース板配置工程を表す正面断面図、(d)は(c)の部分拡大図である。
【図16】図15に続く工程を説明するための図であって、(a)は接合工程を表す正面断面図、(b)はスペーサ離脱工程を表す正面断面図である。
【図17】本発明に係る放熱器の製造方法の第一実施形態を説明するための図であって、(a)〜(e)は部材配置工程を表す正面断面図である。
【図18】図17に続く工程を説明するための図であって、(a)は接合工程を表す正面断面図、(b)はスペーサ離脱工程を表す正面断面図である。
【図19】(a),(b)は特許文献1に開示された摩擦振動接合の手順を表す正面断面図であり、(c)は(b)の側面図である。
【図20】(a)〜(d)はそれぞれ、特許文献1に開示された接合ツールの部分斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 … アルミニウム部材
2 … 銅部材
2a … 表面
2b … 段部
3 … 接合ツール
3a … ツール本体
3b … 回転軸
3c … 凹溝
3d … フラット部
4 … フィン
4a … 基端部
5 … スペーサ
6 … ベース板
6a … 表面
7 … 反応層
10 … 放熱器製造用治具
11 … 治具本体
11a… ボルト孔
12 … 部材セット部
13 … 押圧板
14 … 締付ボルト
15 … ベース固定板
15a… 切欠
15b… ボルト孔
16 … 締付ボルト
20 … スペーサ治具
30 … フィン構成材
31 … 板材
40 … フィン構成材作成治具
H … 放熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけた複数枚の金属製の板材を、該板材よりも溶融点の高い金属からなるベース板の一方の面に立設させて接合する方法であって、
互いに間隔をあけて並べられた複数枚の板材と、これらの板材の間にそれぞれ挟み込まれたスペーサと、一方の面に前記各板材が立設されたベース板と、を配置する部材配置工程と、
前記ベース板の他方の面に、円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を押し込みつつこの他方の面に沿って移動させることにより、前記ベース板に前記各板材を接合する接合工程と、
前記各スペーサを取り外すスペーサ離脱工程と、
を含む金属部材接合方法であって、
前記接合ツールには前記周面に沿うように螺旋形の凹溝が形成されていることを特徴とする金属部材接合方法。
【請求項2】
前記凹溝間のフラット部の幅w(mm)及び前記凹溝の幅w(mm)について、1≦w≦5、かつ、1≦w≦3、かつ、0.67≦w/w≦5.00が成立することを特徴とする請求項1に記載の金属部材接合方法。
【請求項3】
前記螺旋形の軌跡が前記接合ツールの回転方向に対して傾斜角0.5〜2.0°で傾斜しており、この螺旋形の凹溝が前記接合ツールの全周にわたって二本以上形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属部材接合方法。
【請求項4】
前記凹溝の深さが0.3〜1.2mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の金属部材接合方法。
【請求項5】
互いに間隔をあけた複数個の金属製のフィン構成材を、該フィン構成材よりも溶融点の高い金属からなるベース板の一方の面に立設してなる放熱器を製造する方法であって、
互いに間隔をあけて並べられ、それぞれが左右一対のフィンとこれらの端部を連結する基端部とで断面凹字形に形成された複数個のフィン構成材と、前記各フィン構成材相互間に挟み込まれたスペーサと、前記各フィン構成材の左右のフィンの間に挟み込まれたスペーサと、一方の面に前記各フィン構成材の基端部が当接するように該フィン構成材が立設されたベース板と、を配置する部材配置工程と、
前記ベース板の他方の面に、円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を押し込みつつこの他方の面に沿って移動させることにより、前記ベース板に前記各フィン構成材の基端部を接合する接合工程と、
前記各スペーサを取り外すスペーサ離脱工程と、
を含む放熱器の製造方法であって、
前記接合ツールには前記周面に沿うように螺旋形の凹溝が形成されていることを特徴とする放熱器の製造方法。
【請求項6】
前記凹溝間のフラット部の幅w(mm)及び前記凹溝の幅w(mm)について、1≦w≦5、かつ、1≦w≦3、かつ、0.67≦w/w≦5.00が成立することを特徴とする請求項5に記載の放熱器の製造方法。
【請求項7】
前記螺旋形の軌跡が前記接合ツールの回転方向に対して傾斜角0.5〜2.0°で傾斜しており、この螺旋形の凹溝が前記接合ツールの全周にわたって二本以上形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の放熱器の製造方法。
【請求項8】
前記凹溝の深さが0.3〜1.2mmであることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の放熱器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−221339(P2008−221339A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122135(P2008−122135)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【分割の表示】特願2003−150205(P2003−150205)の分割
【原出願日】平成15年5月28日(2003.5.28)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】