説明

鉄道車両の構体材溶接接合方法とそれに用いる継手構造

【課題】構造を複雑化することなく、軽量化も特に損なわないで、十分な強度が長期に確保できるようにする。
【解決手段】アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対1、2の側縁1a、2a間において、内面板1c、2cどうしの突き合せ部と、外面板1b、2bどうしの突き合わせ部とを、溶接して接合し構体を形成するのに、外面板1b、2bどうしおよび内面板1c、2cどうしの突合せ部が形成する溶接のグルーブ17まわりにおける溶接後の強度弱点域30に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、突合せ部を溶接し接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルスキン構造を有した構体材を溶接接合して鉄道車両の台枠、側枠構体、屋根構体などを形成する構体材溶接接合方法とそれに用いる継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両、特に新幹線車両では昭和61年度国鉄技術課題から始り、高速性能性向上、ランニングコスト、製作コスト低減のために徹底した軽量化が必要であるとの認識から、アルミニウム合金大型中空押出形材を構体材として用い、従来構造の柱、梁、垂木、補強などの多数の内部骨組部材の全く無い車体が試作され、中空材とすることにより車体の内、外面から直接溶接するのみで、十分な溶接強度が確保され、熱影響による歪み発生もなく、前自動溶接、車体回転治具の採用も容易なものになったとされている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
前記溶接にはMIGのアーク溶接が一般的に採用され、溶接接合する構体材対は図7(a)(b)(非特許文献1の写真4−1−4)に示すように、一方の構体材aの側縁における外面板a1および内面板a2間に、他方の構体材bにおける外面板b1および内面板b2を嵌め合せる嵌合継手をなして突き合せ、外面板a1、b1間、内面板a2、b2間に形成した開先部cにてMIG溶接するようにしている。開先部cの角度θは一般に70°程度とされている。
【0004】
別に、同じような嵌合形式であるが、外面板どうし、内面板どうしをそれらの増厚した端部にてI型開先に突き合せ、FSW方式にて摩擦接合するようにしたものも知られている(例えば、特許文献1参照。)。一般に摩擦拡散接合などと称される溶接方法である。また、外面板どうしをI型開先に突き合せた部分を内面側から摩擦溶接することで、外面の後加工が不要になるようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。なお、外面板どうしの突き合せ部を摩擦溶接するために内面板間に形成していた開放部は蓋板を当てがい両側の内面板と突き合せた2箇所を摩擦溶接するようにしている。
【0005】
また、別に、摩擦接合には時間が掛かることから、外面板どうし、内面板どうしの一方を摩擦溶接し、他方をMIGまたはTIGのアーク溶接するようにした技術も知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
さらに、突き合せ構造ではないが、鉄道車両にレーザ溶接を適用する技術も知られている(例えば、特許文献4、5参照。)。
【非特許文献1】軽金属車両委員会報告書No.5 昭和59年―平成2年、平成3 年5月発行(軽金属車両委員会編集)41〜43頁
【特許文献1】特開2000−202650号公報
【特許文献2】特開2000−205218号公報
【特許文献3】特開2004−223587号公報
【特許文献4】特開2002−361454号公報
【特許文献5】特開平10−230845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、中空の押出し形材であるダブルスキン構造の構体材を溶接接合して形成した構体には、内外での圧力の変化や車体自体や乗客による荷重などによって溶接接合部に引っ張りや圧縮の応力が及ぶ。しかし、このような構体が形成する車体は、既述のように、従来構造の柱、梁、垂木、補強などの多数の内部骨組部材の全く無い車体とされる関係から、溶接接合部まわりに長期での強度不足が懸念され、溶接方式を問わず、また、既述した嵌合方式での溶接接合においても解消されていない。これを柱、梁、垂木、補強などの骨組部材によって補強するのでは、折角の軽量化、低コスト化が大きく阻害される。
【0008】
本発明者は、この点につき強度弱点域を特定し、従来構造の柱、梁、垂木、補強などの内部骨組部材によるのではなく、強度弱点域に対応した部分的で簡単な補強で対応できることを知見した。
【0009】
本発明の目的は、構造を複雑化することなく、軽量化も特に損なわないで、十分な強度が長期に確保できる鉄道車両の構体材溶接接合方法とそれに用いる継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を達成するために、本発明の鉄道車両の構体材溶接接合方法は、アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対の側縁間において、内面板どうしの突き合せ部と、外面板どうしの突き合わせ部とを、溶接して接合し構体を形成するのに、外面板どうしおよび内面板どうしの突合せ部が形成する溶接のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、前記突合せ部を溶接し接合することを1つの特徴としている。
【0011】
このような構成では、構体材対における側縁間の内面板どうしの突き合せ部と、外面板どうしの突き合わせ部とが形成する溶接のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておくことで、構体材どうしを突き合わせて溶接接合した構体における溶接後に特定位置に生じる強度弱点域を増強することができる。
【0012】
このような溶接接合方法には、側縁の内面板および外面板が、他の構体材の側縁の外面板および内面板との間で、前記溶接に供する表面に露出したグルーブをなす突き合せ部を形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚していることを特徴とする鉄道車両の構体材の継手構造を用いればよい。
【0013】
本発明の鉄道車両の構体材溶接接合方法は、また、アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対の側縁間において、内面板どうしの突き合せ部と、外面板どうしの突き合わせ部とを、溶接して接合し構体を形成するのに、一方の構体材の側縁の外面板および内面板と、他方の構体材の側縁の外面板および内面板とが上乗せにより重なる重なり域を有して外面板どうし、内面板どうしを突き合せて溶接のグルーブを形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、前記突合せ部を溶接し接合することを別の特徴としている。
【0014】
このような構成では、構体材対における側縁間の内面板どうし、外面板どうしの、一方に対し他方を上乗せする簡単な作業によって重なり域を持った突き合わせ部を得て、外面板および内面板の溶接のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておくことで、構体材どうしを重なり域を持った突き合わ部を溶接接合した接合強度により有利な形態での溶接後に特定位置に生じる強度弱点域を増強することができる。
【0015】
このような溶接接合方法には、側縁の外面板および内面板が、他の構体材の側縁の外面板および内面板との上乗せによる重なり状態で、前記溶接に供する表面に露出したグルーブをなす突き合せ部を形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚していることを特徴とする鉄道車両の構体材の継手構造を用いればよい。
【0016】
本発明の鉄道車両の構体材溶接接合方法は、また、アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対の側縁間において、内面板どうしの突き合せ部と、外面板どうしの突き合わせ部とを、溶接して接合し構体を形成するのに、一方の構体材の側縁の外面板および内面板と、他方の構体材の側縁の外面板および内面板とが、嵌合または上乗せにより重なる重なり域を有して外面板どうし、内面板どうしを突き合せて溶接のグルーブを形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、この増厚域の一部または全域が、前記重なりによってできる外面板および内面板の一方によるルートへの当て板部と他方による当て板部外面への重なり板部との重なり境界面のうち、重なり板部がなす重なり境界面に凸部をなし、当て板部がなす重なり境界面に形成しておいた凹部に前記重なり構造上嵌め合せて、前記突合せ部を溶接し接合することを他の特徴としている。
【0017】
このような構成では、1つの特徴の場合に加え、さらに、外面板どうし、内面板どうしの重なり域を構体材対の側縁間における一方の外面板および内面板と他方の外面板および内面板との、従来からの嵌合によって実現するし、新規な上乗せ方式にてより簡単に実現し、いずれの場合も前記重なり域に併せた増厚による強度弱点域の増強ができ長期的な強度不足を解消しやすいし、前記重なりによるルートへの当て板部外面に対する重なり板部がなす重なり境界面に凸部をなし、当て板部がなす境界面に設けている凹部と前記重なり時に嵌まり合わせて、構体材対を所定の位置関係に位置決めでき、ルートギャップが構体材の押出し成形時の波打ちによる通常以上に開くのを防止することができる。
【0018】
このような溶接接合方法には、側縁の外面板および内面板が他の構体材の側縁の外面板および内面板との、嵌合または上乗せによる重なり状態で、前記溶接に供する表面に露出したグルーブをなす突き合せ部を形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、この増厚域の一部または全域が、前記重なり時にできる外面板および内面板の一方によるルートへの当て板部と他方による当て板部外面への重なり板部との重なり境界面のうち、重なり板部がなす重なり境界面に凸部をなし、当て板部がなす重なり境界面に形成した凹部に前記重なり時に嵌まり合うようにしたことを特徴とする鉄道車両の構体材の継手構造を用いればよい。
【0019】
増厚域が、グルーブ周辺の疲労強度弱点域に対応している、さらなる構成では、
グルーブまわりの溶接接合後の疲労強度弱点域を、外面板および内面板が増厚しているだけで十分に増強することができる。
【0020】
それには、増厚域が、グルーブ周辺の疲労強度弱点域に対応している、さらなる構成の鉄道車両の構体材の継手構造を用いればよい。
【0021】
増厚域が、グルーブ周辺の疲労強度弱点域および熱強化アルミニウム系構体材対における静強度弱点域に対応している、さらなる構成では、
グルーブ直近の疲労破壊域と、これよりも遠くに生じる熱強化アルミニウム系構体材での静強度弱点域とを、外面板および内面板が増厚しているだけで増強することができる。しかも、疲労強度弱点域および静強度弱点域双方に対応した増厚は個別にも行えるが、連続して行うことにより突合せ部の開先からの重なり境界面をストレートにして、開先から溶加材が進入するのを防止しやすい。
【0022】
それには、増厚域が、グルーブ周辺の疲労強度弱点域および熱強化アルミニウム系構体材対における静強度弱点域に対応している、さらなる構成の鉄道車両の構体材の継手構造を用いればよい。
【0023】
増厚は、通常値よりも3割以上とする、さらなる構成では、
A6N01−T5の熱処理アルミ系を採用した継手構造において、JIS E 4050が継手効率70%を許容限界とされているところを、3割以上の増厚による増強によってJIS基準での継手効率を100%以上とすることができる。
【0024】
それには、増厚が、通常値よりも3割以上である、さらなる構成の鉄道車両の構体材の継手構造を用いればよい。
【0025】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ単独で、あるいは可能な限りにおいて種々な組合せで複合して用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の鉄道車両の構体材溶接接合方法の1つの特徴によれば、構体材対における側縁間の外面板どうし、内面板どうしの突き合わせ部が形成するグルーブまわりの溶接後に生じる強度弱点域を、それに対応する部分の増厚だけで、構造が複雑になることなく、また軽量化も特に損なわれずに増強して長期的な強度不足を解消することができる。
【0027】
本発明の鉄道車両の構体材溶接接合方法の別の特徴によれば、1つの特徴の場合に加え、さらに、増厚によって増強を図る突合せ部に、構体材対に簡単な上乗せによる重なり域を得て、前記増厚に協働して、構造が複雑になることなく、また軽量化も特に損なわれずに、より有利に増強し長期的な強度不足を解消しやすい。
【0028】
本発明の鉄道車両の構体材溶接接合方法の他の特徴によれば、1つの特徴の場合に加え、さらに、増厚によって増強を図る突合せ部に、構体材対に嵌合または簡単な上乗せによる重なり域を得て、前記増厚に協働して、構造が複雑になることなく、また軽量化も特に損なわれずに、より有利に増強し長期的な強度不足を解消しやすいし、前記増厚域が突き合せ部の重なり板部がなす重なり境界面で凸部をなし、当て板部がなす境界面の凹部との嵌まり合いにより構体材対間を位置決めしてルートギャップが通常以上に開くのを防止するので、ルートギャップの開きが溶接に影響しやすい狭開先での溶接に特に有利となる。
【0029】
グルーブまわりの溶接接合後の疲労強度弱点域を、外面板および内面板の増厚だけで十分に増強することができる。
【0030】
グルーブ直近の疲労破壊域と、これよりも遠くに生じる熱強化アルミニウム系構体材での静強度弱点域とを、外面板および内面板が増厚しているだけで増強することができる。
【0031】
A6N01−T5の熱処理アルミ系を採用した継手構造において、JIS E 4050が継手効率70%を許容限界とされているところを、3割以上の増厚による増強によってJIS基準での継手効率を100%以上とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の鉄道車両の構体材溶接接合方法とそれに用いる継手構造に係る実施の形態につき、図1〜図6を参照しながら具体的に説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載を限定するものではない。
【0033】
本実施の形態の鉄道車両の構体材溶接接合方法は、アルミニウム系の押出し形材よりなり図1(a)、図3の例、図6(a)の例に示すようなダブルスキン構造を有した構体材対1、2の側縁1a、2a間において、外面板1b、2bどうしの突き合せ部と、内面板1c、2cどうしの突き合わせ部とを、溶接接合して図3に示すような屋根構体11などの種々な構体を形成する。この溶接には、例えば、図3に示すような各種の溶接方式に適合した溶接ヘッド6を自走式の溶接ロボット7に搭載し、屋根構体11などの構体形状に合わせて設計し、あるいは調節した図示しない支持部を有する作業治具8上に載置し、寄せ合わせクランプ12、押さえクランプ13の組合せで屋根構体11などの形状に位置決めした必要数の構体材1、2の隣合うものどうしにつき、それらの外面板1b、2b間、内面板1c、2c間の表面に露出しているグルーブ17にて自動的に溶接し接合する。基本的には高速性、高性能の面から自動溶接とするが、溶接の作業方式を特に問うものではない。
【0034】
ところで、既述したように、中空の押出し形材であるダブルスキン構造の構体材1、2を溶接接合して形成した屋根構体11などには、内外での圧力の変化や車体自体や乗客による荷重などによって溶接接合部に引っ張りや圧縮の応力が及ぶが、従来構造の柱、梁、垂木、補強などの多数の内部骨組部材の全く無い車体とされる関係から、溶接接合部まわりに長期での強度不足が懸念される。この強度不足は溶接接合する突き合せ部における図1(b)(c)(d)、図6(a)(b)に示すような強度弱点域30として位置が特定している。具体的には、外面板1b、2bおよび内面板1c、2cにおけるグルーブ17のまわりであり、特に、グルーブ17の直近、つまり図1(b)、図6(b)に示すような開先に沿ったいわゆる疲労強度弱点域31と、グルーブ17から疲労強度弱点域31よりも遠い図1(c)(d)に示すような静強度弱点域32とであり、この静強度弱点域32はA6N01−T5の熱処理アルミ系を採用した継手構造において、特有のもので、前記突き合せ部の溶接による熱影響にて熱処理による強化効果が低減することによるものである。
【0035】
このようなことに対応して、本実施の形態では、図1(a)(b)に示す例、図1(c)に示す例、図1(d)に示す例、図6(a)(b)に示す例のように、構体材対1、2の側縁1a、2a間において、外面板1b、1bどうしの突き合せ部と、内面板1c、2cどうしの突き合わせ部とを、溶接して接合し図3に示すような屋根構体11などを形成するのに、外面板1b、2bどうしおよび内面板1c、2cどうしの突合せ部が形成する溶接のグルーブ17まわりにおける溶接後の強度弱点域30に対応する部分を各種形態をなして通常値よりも増厚しておき、前記突合せ部を溶接し接合する。
【0036】
このように、構体材対1、2における側縁1a、2a間の外面板1b、1bどうしの突き合せ部と、内面板1c、1cどうしの突き合わせ部とが形成する溶接のグルーブ17まわりにおける溶接後の強度弱点域30に対応する部分を通常値よりも増厚しておくことで、構体材1、2どうしを突き合わせて溶接接合した屋根構体11などにおける溶接後の特定位置に生じる強度弱点域30を増強することができる。この結果、構体材対1、2における側縁1a、2a間の外面板1b、1bどうし、内面板1c、1cどうしの突き合わせ部が形成するグルーブ17まわりの溶接後の強度弱点域30を、それに対応する部分の増厚だけで、構造が複雑になることなく、また軽量化も特に損なわれずに増強して長期的な強度不足を解消することができる。従って、コストが特に上昇することもない。
【0037】
このような溶接接合方法には、図1(a)(b)に示す例、図1(c)に示す例、図1(d)に示す例、図6(a)(b)に示す例のような、側縁1aの外面板1bおよび内面板1cが、他の構体材2の側縁2aの外面板2bおよび内面板2cとの間で、前記溶接に供する表面に露出したグルーブ17をなす突き合せ部を形成し、図1(b)(c)(d)、図6(a)(b)に示す例のような、外面板1a、2aおよび内面板1c、2cのグルーブ17まわりにおける溶接後の強度弱点域30に対応する部分を通常値よりも増厚している鉄道車両の構体材の継手構造を用いることになる。
【0038】
また、この場合、図1(a)(b)に示す例、図1(c)に示す例、図1(d)に示す例、図6(a)(b)に示す例のように、一方の構体材1の側縁1aの外面板1bおよび内面板1cと、他方の構体材2の側縁2aの外面板2bおよび内面板2cとが、図1(a)〜(d)に示すような一方の構体材1に対する他方の構体材2の上乗せによって、あるいは、図6(a)(b)に示すような嵌合によって、互いに重なる重なり域を有して外面板1b、2bどうし、内面板1c、2cどうしを突き合せて溶接のグルーブ17を形成し、外面板1b、2bおよび内面板1c、2cのグルーブ17まわりにおける溶接後の強度弱点域30に対応する部分を通常値よりも増厚しておけば、構体材対1、2における側縁1a、2a間の外面板1b、2bどうし、内面板1c、2cどうしの、一方に対し他方を上乗せする簡単な作業により、あるいは材料の弾性を利用した上乗せよりもやや力の要る構体材対1、2における側縁1a、2a間の外面板1b、2bどうし、内面板1c、2cどうしを嵌合作業により、前記のような重なり域を持った突き合わせ部を得て、外面板1b、2bおよび内面板1c、2cの溶接のグルーブ17まわりにおける溶接後の強度弱点域30に対応する部分を通常値よりも増厚しておくことで、構体材1、2どうしを重なり域を持った突き合わ部を溶接接合した接合強度により有利な形態で、溶接後に特定位置に生じる強度弱点域を増強することができ、構造が複雑になることなく、また軽量化も特に損なわれずに、より有利に増強し長期的な強度不足を解消しやすい。
【0039】
上記のような上乗せは、一方の構体材1を図3に示すように作業治具8の上に載置しておき、その側縁1aの外面板1bと内面板1cとの上に、他方の構体材2の側縁2aの外面板2bと内面板2cを上乗せするのに、他方の構体材2を作業治具上にある一方の構体材1の横に載置する動きの最終段階で作業治具8上へ前記重なりの横移動成分を持った斜め方向の動きを伴い載置しさえすれば、そのときの重なりによって外面板1b、2bどうし、内面板1c、2cどうしの各一方がグルーブ17への当て板部1d、2dとなる開先を持った突き合わせを終えて、グルーブ17をなす開先部での溶接接合を達成することができる。これにより、一方の構体材1を作業治具の上に載置しておき、他方の構体材2をその横に寄せながら上乗せするだけで、そのときの重なりによって外面板1b、2bどうし、内面板1c、2cどうしの各一方がグルーブ17部の当て板部1d、2dとなる開先を持った突き合わせを終え、グルーブ17の開先部での溶接接合を達成し、従来の嵌合方式に比し作業性を高められ、これも製造コスト低減に貢献する。しかし、図6に示すような嵌合による重なり構造でも、図示するように嵌合し合う構体材対1、2の側縁1a、2aにおける外面板1b、2b、や内面板1c、2cの嵌合し合う少なくとも一方の張り出し量を大きくとって弾性変形しやすくすることで、嵌合作業は容易になる。
【0040】
このような重なり部を有して行う溶接接合方法には、図1(a)(b)に示す例、図1(c)に示す例、図1(d)に示す例、図6(a)(b)に示す例のような、側縁1aの外面板1bおよび内面板1cが、他の構体材2の側縁2aの外面板2bおよび内面板2cとの上乗せないしは嵌合による重なり状態で、前記溶接に供する表面に露出したグルーブ17をなす突き合せ部を形成し、外面板1b、2bおよび内面板1c、2cのグルーブ17まわりにおける溶接後の強度弱点域30に対応する部分を通常値よりも増厚している鉄道車両の構体材1に見られる継手構造を用いればよい。
【0041】
さらに、図1(a)(b)の例、図6(a)(b)の例では、増厚域Xが、グルーブ17周辺の疲労強度弱点域31に対応している。これにより、グルーブ17まわりの溶接接合後の疲労強度弱点域31を、外面板1b、2bおよび内面板1c、2cが増厚しているだけで十分に増強することができる。また、図1(c)の例、図1(d)の例のように、増厚域Xが、グルーブ17周辺の疲労強度弱点域31および熱強化アルミニウム系構体材対1、2における静強度弱点域32に対応している。これにより、グルーブ17直近の疲労強度弱点域31と、これよりも遠くに生じる熱強化アルミニウム系構体材1、2での静強度弱点域32とを、外面板1b、2bおよび内面板1c、2cが増厚しているだけで増強することができる。しかも、疲労強度弱点域31および静強度弱点域32双方に対応した増厚は図1(a)(b)に示す疲労強度弱点域31に対応した凸部22のような個別にも行えるが、図1(c)の例、図1(d)の例に示すように連続して行うことにより突合せ部の開先からの重なり境界面1f、2fをストレートにして、開先から溶加材が進入するのを防止しやすい。
【0042】
このような増厚は、通常値よりも3割以上とするのが好適であり、A6N01−T5の熱処理アルミ系を採用した継手構造において、JIS E 4050が継手効率70%を許容限界とされているところを、3割以上の増厚による増強によってJIS基準での継手効率を100%以上とすることができる。
【0043】
また、前記各種の強度弱点域30に対応して設ける増厚域Xが、図1(a)(b)、図6(a)(b)に示すように、外面板1b、2bどうしや内面板1c、2cどうしの突き合せ部での重なり構造上、グルーブ17のルート17aへの当て板部1dおよびその上面、つまり外面への重なり板部1g、2gにおける重なり板部1g、2gがなす重なり境界面1f、2fで凸部22をなし、当て板部1d、2dがなす重なり境界面1f、2fに形成した凹部21と嵌まり合うようにすることで、構体材対1、2間を位置決めしてルートギャップが押出し成形時に許容される波打ちによる通常の場合以上に開くのを防止することができ、ルートギャップの開きが溶接に影響しやすい本実施の形態で例示し後述する狭開先での溶接に特に有利となる。
【0044】
具体的には、外面板1b、2bどうし、内面板1c、2cどうしの重なり境界面1f、2fにある凹凸部21、22の嵌り合いにより、特別な動作なく双方の構体材1、2を所定の位置関係に位置決めができ、ルートギャップが構体材1、2の押出し成形時の波打ちによる通常以上に開くのを防止し、板厚に応じた最小限度の開先角度θでの溶接性能を保証することができる。また、外面板1b、2bどうしまたは内面板1c、2cどうしの一方を溶接接合したときの角折れ現象で非溶接接合部側が開くのを前記凹凸部21、22の嵌め合い部の引っ掛かりによって阻止し、ルートギャップが通常以上に開くのを防止し、板厚に応じた最小限度の開先角度での溶接性能を保証することができる。このことは、図2(b)に例示する従来の広い開先でのグルーブ17が左側のギャップ0からギャップΔGに拡大した場合の、ΔG/グルーブ開口幅G0の比に対し、図2(a)に示すように本実施の形態のように狭開先でのグルーブ17が左側のギャップ0からギャップΔGに同じだけ拡大した場合の、ΔG/グルーブ開口幅Gの比の方が大きく、開き量ΔGでも溶接への影響度が大きいので、この開き量ΔGを通常の変化範囲に抑えられる意味は、狭開先の本実施の形態において特に重要であるし、構体材1、2どうしを強く押し付けあう必要がないので溶接設備も簡単で小型な低コストなものでよくなる利点もある。
【0045】
なお、本発明者は、鉄道車両のアルミニウム製でシングルスキン構造またはダブルスキン構造の構体材どうしを溶接接合して構体などを形成するのに、溶接の、特に、速度、歪み、ルートギャップの許容度の関係を最善にすべく研究、開発をするなか、既述した従来の溶接方法ではそれぞれに一長一短があり、現状の問題を回避するのは困難であることを知見している。
【0046】
例えば、MIG溶接は、図5の2)に示すように溶け込み幅が大きく、溶接強度、ルートギャップの許容度、継手の自由度は高いが、溶接速度を上げにくく、溶接歪みが大きくなってしまう。また、太く高いビードができるので溶接部の仕上げで削除する部分が多い。レーザ溶接では、図5の3)に示すように溶け込み幅が小さく、溶接速度が速く、溶接歪みが少なく、溶接強度も高いし、溶接部の仕上げの研削量が少なくなるのに、ルートギャップに対する許容度が低い。鉄道車両の構体を形成するための押出し形材は長尺であるため、波打ちなどがどうしても生じ、それが規格内であるにしても構体材どうしを突き合せた場合双方の既述した波打ちが相乗しルートギャップが部分的に大きくなるような部分のギャップにはレーザ溶接では対応できないことがある。従って、部分的な溶接不良を生じることがある。これらの面からも継手の自由度が低い。FSW溶接では、溶接歪みや溶接強度の面では問題はないが、既述した溶接速度が遅いことのほか、特許文献1、3に記載の摩擦溶接部は仕上げに手間が掛かる。特許文献2に記載の外面は図5の4)に下向きに示すように熱拡散の影響がなく仕上げが要らなくても、内面側は2箇所摩擦溶接しなければならない不便がある。また、ルートギャップに対する許容度はレーザ溶接の場合と同様の問題がある。波打ちによるルートギャップに対する問題は構体材どうしの各部を強く押し付けて位置決めすることで幾分対応することはできるが、手間が掛かるし装置が大型で高価なものとなる。
【0047】
そこで、主として速度、歪み、ルートギャップ許容度の関係を良好にできるよう、本実施の形態では、アルミニウム系の押出し形材よりなり図1(a)、図3に示すようなダブルスキン構造を有した構体材対1、2の側縁1a、2a間において、外面板1b、2bどうしの突き合せ部と、内面板1c、2cどうしの突き合わせ部とを、図3、図4に示すようにレーザ・MIGハイブリッド溶接により溶接して溶接接合し、図3に示すような屋根構体11を始めとする各種の構体を形成する。この溶接には例えば、図3に示すようなレーザビームヘッド3、MIG溶接トーチ4、位置決めセンサ5を持った溶接ヘッド6を用いる。レーザビーム14の照射位置とアーク15の放電位置とは近接しているのがよく、通常は2〜3mm程度に設定される。これは先行するレーザ溶接により形成される図4に示すような細く深い溶け込みを呈するいわゆるキーホール16の存在を必要な溶け込み幅Bが得られるアーク溶接に活かしたレーザ・MIGハイブリッド溶接特有の条件である。レーザは半導体レーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザなど種々なものを採用することができる。
【0048】
上記のような溶接接合によると、図3、図4に示すグルーブ17におけるルート17a部の母材部に対し先行するレーザ溶接により高速で細く深い図4に示すようなキーホール16をなす溶け込みを図りながら、その直後のグルーブ17をMIG溶接により追随することでルートギャップの許容度を持った溶け込み幅Bと所定の溶け込み深さHでのブルーブ17における高速な溶け込みを実現し、しかも、先行するレーザ溶接により昇温し、また溶融している母材部部分からMIG溶接トーチ4側に飛翔してくる電子によるアーク15の誘導と、このアーク15を誘導する電子の飛翔域つまり誘導域をグルーブ17の図1、図2に例示するような断面形状によって制限できることとで、アーク15の図4に示す放電域18をルートギャップの許容に対する必要最小限に見合う溶け込み幅域に制御することができる。
【0049】
このような、先行するレーザ溶接と、追随するMIG溶接との組合せの結果、ルートギャップの許容度を持った溶け込み幅Bで所定の溶け込み深さHの高速な溶け込みを実現して、高速度溶接とそれによる構体製造コストの低減、入熱量減少による歪みの低減、十分な溶接強度を確保し、かつ、レーザ溶接による昇温、溶融環境で飛翔電子がアーク15を誘導する誘導域をグルーブ17の断面形状で制限しアーク15の放電域18、従って溶け込み幅Bをルートギャップを許容する必要最小限に制御し、溶け込み幅Bが徒に大きくなって前記溶接の品質が低下するのを防止しやすい。また、溶接強度保証には溶接後の図3、図4に示すようにビード17bが盛り上がる程度の溶加材の供与が不可欠であっても、溶け込み幅Bを制限する分だけ溶接後の仕上げ研削量が少なく仕上げ作業が楽になる。
【0050】
また、グルーブ17をなす開先は、MIG溶接による図7に示すような従来開先に比し角度θが小さい図1、図2、図6に例示するような狭開先としてレーザ・MIGハイブリッド溶接することにより、グルーブ17の母材部に対しそのグルーブ17の従来よりも狭開先なのを活かしながら先行するレーザ溶接により高速で細く深い溶け込みを図りながら、その直後をMIG溶接により追随することでルートギャップの許容度を持った溶け込み幅と所定の溶け込み深さでの高速な溶け込みと溶加材充填を実現し、しかも、先行するレーザ溶接により昇温し、また溶融している母材部部分からMIG溶接トーチ4側に飛翔してくる電子によるアーク15の誘導と、このアーク15を誘導する電子の飛翔域つまり誘導域をグルーブ17の従来よりも狭開先とした断面形状によって電子のアーク誘導域に対する制限度を高め、アーク15の放電域18がルートギャップの許容範囲以上になるのを確実に防止し、溶接速度の向上と入熱量の減少を限度一杯まで図れる。
【0051】
特に、グルーブ17の開先を、JISが50°以上とするのよりも小さい、50°未
満またはグルーブ開口幅/板厚<0.9の狭開先とすれば、先行するレーザ溶接により高速で細く深い溶け込みを図りながら、その直後をMIG溶接により追随することで必要なルートギャップの許容度を持った溶け込み幅Bと所定の溶け込み深さHでの高速な溶け込みと溶加材充填を実現し、しかも、先行するレーザ溶接により昇温し、また溶融している母材部部分からMIG溶接トーチ4側に飛翔してくる電子によるアーク15の誘導と、このアーク15を誘導する電子の飛翔域つまり誘導域をグルーブ17の50°未満またはグルーブ開口幅/板厚<0.9の狭開先とした断面形状によって十分に制限し、アーク15の放電域18をルートギャップの許容に必要な範囲に見合う溶け込み幅域に制御することができる。要するに、開先が狭くなった分だけ、アーク15の放電域18がルートギャップの許容範囲以上になるのを、板厚によって溶接強度上許容される、より狭く、あるいは開先0度にも対応して、溶接速度の向上と入熱量の減少を限度一杯まで図れる。本発明者の実験ではA6N01−T5の熱処理したアルミニウム合金よりなる板厚が3mmの構体材1、2を用いた場合、開先0°のI型として、図5の1)に例示する溶接状態が得られ、図5の3)に示すレーザ溶接の場合に比し、溶け込み幅Bは少し大きい程度で、溶け込み深さH全体の溶け込み幅Bの差が小さくなる良好な溶接状態が得られ、溶接強度に問題なく溶け込み幅Bを最小として高速溶接性、ひずみの大幅な低減が図れる。同時に仕上げの手間も低減するし、継手の自由度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は鉄道車両のアルミニウム系ダブルスキン構体材どうしを溶接にて接合して必要な大きさの構体を得るのに実用でき、溶接後に生じる特定の長期的な強度弱点域を簡単に増強して長期的に必要強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態における溶接後の強度弱点域の増強を図る継手構造を有した構体材の1つの例を示し、(a)は凸部により増強した1つの例での上乗せによる重なり状態に突き合せた構体材対の端面図、(b)は突合せ部の拡大図、(c)は強度弱点域を増厚により増強した1つの例を示す突合せ部の一部拡大図、(d)は強度弱点域を増厚により増強した別の例を示す突合せ部の一部拡大図である。
【図2】本実施の形態での溶接を行うグルーブにおける開先の広狭によるギャップが開いたときの影響を示す説明図であり、(a)は広開先の場合、(b)は狭開先の場合の説明図である。
【図3】図1(a)の構体材対を必要数並べて自動溶接する様子を示す概略斜視図である。
【図4】本実施の形態におけるレーザ・MIGハイブリッド溶接の状態を模式的に示す説明図である。
【図5】本実施の形態におけるレーザ・MIGハイブリッド溶接を含む各種溶接での溶け込み状態の違いを示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における溶接後の強度弱点域の増強を図る継手構造を有した構体材の別の例を示し、(a)は凸部により増強した1つの例での嵌合による重なり状態に突き合せた構体材対の端面図、(b)は突合せ部の拡大図である。
【図7】従来のMIG溶接に用いていた継手構造を有した構体材の例を示し、(a)は溶接できる状態に突き合せた構体材対の端面図、(b)は突合せ部の拡大端面図である。
【符号の説明】
【0054】
1、2 構体材
1a、2a 側縁
1b、2b 外面板
1c、2c 内面板
1d、2d 当て板部
1f、2f 重なり境界面
1g、2g 重なり板部
6 溶接ヘッド
7 溶接ロボット
11 屋根構体
12 寄せ合わせクランプ
13 押さえクランプ
14 レーザビーム
15 アーク
16 キーホール
17 グルーブ
18 放電域
21 凹部
22 凸部
30 強度弱点域
31 疲労強度弱点域
32 静強度弱点域
41 増厚部
B 溶け込み幅
H 溶け込み深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対の側縁間において、内面板どうしの突き合せ部と、外面板どうしの突き合わせ部とを、溶接して接合し構体を形成するのに、外面板どうしおよび内面板どうしの突合せ部が形成する溶接のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、前記突合せ部を溶接し接合することを特徴とする鉄道車両の構体材溶接接合方法。
【請求項2】
アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対の側縁間において、内面板どうしの突き合せ部と、外面板どうしの突き合わせ部とを、溶接して接合し構体を形成するのに、一方の構体材の側縁の外面板および内面板と、他方の構体材の側縁の外面板および内面板とが上乗せにより重なる重なり域を有して外面板どうし、内面板どうしを突き合せて溶接のグルーブを形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、前記突合せ部を溶接し接合することを特徴とする鉄道車両の構体材溶接接合方法。
【請求項3】
アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対の側縁間において、内面板どうしの突き合せ部と、外面板どうしの突き合わせ部とを、溶接して接合し構体を形成するのに、一方の構体材の側縁の外面板および内面板と、他方の構体材の側縁の外面板および内面板とが、嵌合または上乗せにより重なる重なり域を有して外面板どうし、内面板どうしを突き合せて溶接のグルーブを形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、この増厚域の一部または全域が、前記重なりによってできる外面板および内面板の一方によるルートへの当て板部と他方による当て板部外面への重なり板部との重なり境界面のうち、重なり板部がなす重なり境界面に凸部をなし、当て板部がなす重なり境界面に形成しておいた凹部に前記重なり構造上嵌め合せて、前記突合せ部を溶接し接合することを特徴とする鉄道車両の構体材溶接接合方法。
【請求項4】
増厚域は、グルーブ周辺の疲労強度弱点域に対応している請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材溶接接合方法。
【請求項5】
増厚域は、グルーブ周辺の疲労強度弱点域および熱強化アルミニウム系構体材対における静強度弱点域に対応している請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材溶接接合方法。
【請求項6】
増厚は、通常値よりも3割以上とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材溶接接合方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材溶接接合方法によって溶接接合される構体材であって、側縁の内面板および外面板が、他の構体材の側縁の外面板および内面板との間で、前記溶接に供する表面に露出したグルーブをなす突き合せ部を形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚していることを特徴とする鉄道車両の構体材の継手構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材溶接接合方法によって溶接接合される構体材であって、側縁の外面板および内面板が、他の構体材の側縁の外面板および内面板との上乗せにより重なる重なり状態で、前記溶接に供する表面に露出したグルーブをなす突き合せ部を形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚していることを特徴とする鉄道車両の構体材の継手構造。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材溶接接合方法によって溶接接合される構体材であって、側縁の外面板および内面板が他の構体材の側縁の外面板および内面板との、嵌合または上乗せによる重なり状態で、前記溶接に供する表面に露出したグルーブをなす突き合せ部を形成し、外面板および内面板のグルーブまわりにおける溶接後の強度弱点域に対応する部分を通常値よりも増厚しておき、この増厚域の一部または全域が、前記重なり時にできる外面板および内面板の一方によるルートへの当て板部と他方による当て板部外面への重なり板部との重なり境界面のうち、重なり板部がなす重なり境界面に凸部をなし、当て板部がなす重なり境界面に形成した凹部に前記重なり時に嵌まり合うようにしたことを特徴とする鉄道車両の構体材の継手構造。
【請求項10】
増厚域は、グルーブ周辺の疲労強度弱点域に対応している請求項7〜9のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材の継手構造。
【請求項11】
増厚域は、グルーブ周辺の疲労強度弱点域および熱強化アルミニウム系構体材対における静強度弱点域に対応している請求項7〜9のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材の継手構造。
【請求項12】
増厚は、通常値よりも3割以上である請求項7〜11のいずれか1項に記載の鉄道車両の構体材の継手構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−167924(P2007−167924A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371624(P2005−371624)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000163372)近畿車輌株式会社 (108)
【Fターム(参考)】