説明

銅含有膜の堆積のためのビス−ケトイミナート銅前駆体

プラズマ強化原子層堆積(PEALD)またはプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)による銅含有膜の堆積のためのビス−ケトイミナート銅前駆体の使用方法を開示している。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の定めにより、2009年7月10日に提出し、その内容全体が参照によりここに組み込まれている仮出願第61/224,752号の利益を請求する。
【0002】
背景
銅はアルミニウムに代わって高度論理デバイスのための標準的な配線形成工程(BEOL)メタライゼーション材料になった。アルミニウムに優る銅の論理のための利益は今日文書で十分に立証されている。その低い抵抗率は類似のシート抵抗を達成しながら配線の厚さを約3分の1に減じることを可能にする。
【0003】
化学気相堆積および原子層堆積(CVDおよびALD)による銅含有膜の形成は有望である。これらの用途のための銅前駆体の所望の性質は:i)高い揮発性;ii)取り扱いおよび配送中の分解を避けるのに十分な安定性、およびiii)適切な反応性である。産業的なプロセスの理由のために、銅の堆積は低温、150℃未満で実行すべきであり、これは銅の堆積を特に困難だがやりがいのあるものにする。
【0004】
PEALDおよびPECVDは高純度および高密度の金属薄膜を低い成長温度で製造するための有望な技術である。
【0005】
E. EisenbraunらのJ. Vac. Sci. Technol. B 25, 6, 2007およびEisenbraun E.のElectrochemical and Solid-State Letters, 11, 5, H107-H110, 2008には、Cu(acac)2および還元剤としての水素を使用するPEALDによる銅の堆積が記載されている。連続的で純粋な膜(95%の純度)が85ないし135℃の温度範囲でTaN、SiO2およびRu上に得られた。さらに、高いアスペクト比(5:1)構造上に共形堆積物が得られた。
【0006】
今日まで、PEALDおよびPECVDは、銅ビス−ケトイミナート前駆体を用いる純銅の堆積が可能であるとは決して考えられていなかった。
【0007】
概要
リアクタ内で銅含有膜を1枚以上の基板上に形成する方法を開示する。以下の式を有する銅含有前駆体をリアクタに導入する:
【化1】

【0008】
ここで:
1)MはCuであり;および
2)各R1、R2、R3、およびR4はH、C1−C5アルキル、アルキルアミノ基、およびSi(R')3(ここで、各R'はHおよびC1−C5アルキル基から独立して選択される)からなる群より独立して選択される。
【0009】
共反応剤をリアクタに導入する。この共反応剤をプラズマで処理してプラズマ処理共反応剤をつくる。前駆体とプラズマ処理共反応剤とが反応して、基板上に銅含有膜が形成する。開示する方法は以下の態様のうちの1つ以上を含むことができる:
・リアクタを約50℃ないし約600℃の温度に維持する:
・リアクタを約0.5mTorrないし約20Torrの圧力に維持する;
・約50Wないし約500Wの範囲のパワーでプラズマを発生させる;
・共反応剤をプラズマで処理することは、この共反応剤のリアクタへの導入の前に行われる;
・共反応剤はH2、NH3、SiH4、Si26、Si38、SiH2Me2、SiH2Et2、N(SiH33およびこれらの混合物からなる群より選択される;
・銅含有前駆体および共反応剤を逐次的にチャンバに導入する;
・共反応剤を銅含有前駆体の前に導入する;
・前駆体は以下からなる群より選択される:
ビス(4N−(アミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(メチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(イソプロピルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(n−プロピルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(n−ブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(イソブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(secブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、および
ビス(4N−(tertブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II);
・前駆体はビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)である;および
・銅含有膜を0.1ないし1.0オングストローム/サイクルの範囲にある速度で基板上に形成する。
【0010】
また、開示する方法の生成物を含む銅含有薄膜でコーティングされた基板を開示する。
【0011】
また、以下の構造を有するビス−ケトイミナト銅前駆体を合成する方法を開示する:
【化2】

【0012】
ここでMはCuであり、R1、R2、R3、およびR4の各々はH、C1−C5アルキル、アルキルアミノ基、およびSi(R')3(ここで、各R'はHおよびC1−C5アルキル基から独立して選択される)からなる群より独立して選択される。この方法は、アルコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、およびトルエンからなる群より選択される溶媒中で、銅アルコキシド(Cu(OR52)(ここで、R5はメチル、エチルおよびイソプロピルからなる群より選択される)を二等量のケトイミン配位子(R4C(=O)C(R3)=C(NHR1)R2)に反応させることを含む。
【化3】

【0013】
開示する方法は以下の態様のうちの1つ以上を含むことができる:
・溶媒を除去すること;
・アルカン溶媒を添加して溶液をつくること;
・溶液をろ過すること;
・アルカン溶媒を除去してビス−ケトイミナト銅前駆体をつくること;および
・ビス−ケトイミナト銅前駆体を蒸留すること。
【0014】
表記法および命名法
以下の説明および特許請求の範囲を通じて、種々の部材および成分を表すのにいくつかの用語を使用している。
【0015】
ここで使用する限りにおいて、用語「アルキル基」は炭素原子および水素原子のみを含む飽和官能基を表す。さらに、用語「アルキル基」は線状、分枝または環式のアルキル基を表しうる。線状アルキル基の例としては、限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。分枝アルキル基の例としては、限定されないが、イソプロピル基、t−ブチル基などが挙げられる。環式アルキル基の例としては、限定されないが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0016】
ここで使用する限りにおいて、略語「Me」はメチル基を表し;略語「Et」はエチル基を表し;略語「iPr」はイソプロピル基を表し;略語「t−Bu」は三級ブチル基を表す。
【0017】
元素の周期表からの元素の標準的な略語をここでは使用する。元素がこれらの略語によって表される場合があることを理解されたい(たとえば、Cuは銅を表し、Niはニッケルを表し、Pdはパラジウムを表し、Coはコバルトを表すなど)。
【0018】
ここで使用する限りにおいて、用語「独立して」は、R基を説明する文脈で使用される場合、当該R基が、同じまたは異なる上付きまたは下付きをもつ他のR基に対して独立して選択されるだけでなく、同じR基の任意の追加の種に対しても独立して選択されることを意味することを理解されたい。たとえば、xが2または3である式MR1x(NR23(4-x)において、2つまたは3つのR1基は、必要ではないが、互いに同じでもよいし、またはR2もしくはR3と同じでもよい。さらに、特別に述べない限り、R基の価数は、異なる式において使用される場合、互いに独立していることを理解されたい。
【0019】
本発明の性質および対象をさらに理解するために、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、大気圧条件および減圧条件下での開放熱重量分析(TGA)中の、温度の関数としてのビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)の残留質量パーセントのグラフである。
【図2】図2は、大気圧下での等温蒸発によって測定した、温度の関数としてのビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)の蒸気圧のグラフである。
【図3】図3は、大気圧下での4時間の期間にわたる120℃でのビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)の残留質量パーセントの等温蒸発グラフである。
【図4】図4は、ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)前駆体のパルス時間の関数としての、60℃での750サイクルの堆積によって得られたPEALD Cu厚のグラフである。
【図5】図5は、ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)を使用して60℃で成長したPEALD Cu膜の表面微視構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】図6は、(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)を用いて堆積させた〜40nm厚のPEALD Cu膜の共形性を示す断面SEM写真である。
【0021】
好ましい実施形態の説明
半導体、光電池、LCD−TFT、またはフラットパネルタイプデバイスの製造で使用できる方法、装置、および化合物についての非限定的な実施形態をここに開示する。より詳細には、ビス−ケトイミナート銅前駆体およびそれを利用する方法を開示する。
【0022】
ビス−ケトイミナート銅前駆体と同じ意味で言及される開示する銅含有前駆体は以下の一般式を有する:
【化4】

【0023】
ここでMはCuであり、各R1、R2、R3、およびR4はH、C1−C5アルキル基、アルキルアミノ基、およびSi(R')3(ここで、各R'はHおよびC1−C5アルキル基から独立して選択される)から独立して選択される。好ましくは、R1=Etであり、R2およびR4=Meであり、R3=Hである。
【0024】
ビス−ケトイミナート銅前駆体の例としては、ビス(4N−(アミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、ビス(4N−(メチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、ビス(4N−(イソプロピルアミノ)ペンタ−3−エン−オナト)銅(II)、ビス(4N−(n−プロピルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、ビス(4N−(n−ブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、ビス(4N−(イソブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、ビス(4N−(secブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、およびビス(4N−(tertブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)が挙げられる。
【0025】
ビス(4N−(アミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)は、文献(P.A. Stabnikov, J. Structural Chemistry 2003, 44, 6, 1054-1061)に記載されているように、アルコール水溶液中において過剰のアンモニアの存在下で酢酸銅(Cu(OAc)2)をケトイミン配位子に反応させることによって調製できる。他の銅前駆体、ビス(4N−(R−アミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)は、テトラヒドロフラン中でCuCl2もしくはCuBr2を二等量のR−ケトイミン配位子のリチウム塩に反応させることによって、またはアルコール(MeOHもしくはEtOH)中でCu(OMe)2もしくはCu(OEt)2を二等量のR−ケトイミン配位子に反応させることによって調製できる。
【0026】
このビス−ケトイミナート銅前駆体を使用して、純銅、珪酸銅(CukSil)、酸化銅(Cunm)または酸窒化銅(Cuxyz)の膜を堆積させることができる(ここでk、l、m、n、x、y、およびzは包括的に1ないし6の範囲にある整数である)。これらの種類の膜は抵抗変化型メモリ(ReRAM)タイプの用途において有用でありうる。いくつかの典型的な膜の種類としては銅膜およびCuO膜が挙げられる。開示する前駆体および方法を使用して、銅含有膜を0.1ないし1.0オングストローム/サイクルの範囲にある速度で基板上に形成する。
【0027】
当業者に知られている任意のプラズマ強化堆積方法を使用して、開示する前駆体から薄膜を堆積させることができる。好適な堆積方法の例としては、限定されないが、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)、パルスPECVD、プラズマ強化原子層堆積(PE−ALD)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。プラズマプロセスは直接プラズマ源を利用してもよいし、リモートプラズマ源を利用してもよい。
【0028】
これらのプラズマプロセスの使用は、銅などの薄くて連続的な膜の堆積に重要なより高い密度を有する膜の低温での堆積を可能にする。加えて、核生成プロセスおよび得られる膜の微細構造は、基板表面の条件に対する敏感さが、熱ALDプロセスよりも遥かに低い。言い換えると、プラズマプロセスは、以前熱ALDを使用した場合に非効率であった基板上への堆積を可能にしうる。最後に、このプラズマプロセスは、堆積速度の増加を提供することができ、熱ALDによって製造されるそれよりも純粋な膜を形成できる。
【0029】
ビス−ケトイミナート銅前駆体は、純粋な状態でまたは好適な溶媒、たとえばエチルベンゼン、キシレン、メシチレン、デカン、ドデカンなどとのブレンドとしてのいずれかで供給できる。ビス−ケトイミナート銅前駆体は種々の濃度で溶媒中に存在できる。
【0030】
純粋なまたはブレンドしたビス−ケトイミナート銅前駆体を蒸気の状態でリアクタに導入する。蒸気の状態にある前駆体は、純粋なまたはブレンドした前駆体溶液を通常の気化工程、たとえば直接気化、蒸留、またはバブリングによって蒸発させることで製造できる。純粋またはブレンドしたビス−ケトイミナート銅前駆体を液体の状態で気化器に供給し、ここでそれをリアクタに導入する前にそれを気化させてもよい。あるいは、ビス−ケトイミナート銅前駆体を容れた容器にキャリアガスを通すことによって、またはキャリアガスをビスケトイミナート銅前駆体にバブリングすることによって、純粋またはブレンドしたビス−ケトイミナート銅前駆体を気化させてもよい。キャリアガスとしては、限定されないが、Ar、He、N2、およびこれらの混合物を挙げることができる。キャリアガスによるバブリングによって、純粋なまたはブレンドした前駆体溶液中に存在する溶存酸素を除去することもできる。このようにして、キャリアガスおよびビス−ケトイミナート銅前駆体を蒸気としてリアクタに導入する。
【0031】
必要な場合には、ビス−ケトイミナート銅前駆体の容器を、ビス−ケトイミナート銅前駆体がその液相であることおよび十分な蒸気圧を有することを可能にする温度まで加熱してもよい。容器はたとえば約0℃ないし約150℃の範囲にある温度に維持できる。当業者であれば、容器の温度を周知の方法で調節して、気化させるビス−ケトイミナート銅前駆体の量を制御できることが分かる。
【0032】
リアクタは、中で堆積方法が実行されるデバイスの内部の任意の閉鎖容器またはチャンバでよく、たとえば、限定されないが、前駆体を反応させて層を形成するのに好適な条件下での、平行板タイプリアクタ、コールドウォールタイプリアクタ、ホットウォールタイプリアクタ、枚様式リアクタ、マルチウェハリアクタ、または他のタイプの堆積システムでありうる。
【0033】
リアクタは、薄膜を堆積させる1枚以上の基板を収容する。この1枚以上の基板は、半導体、光電池、フラットパネルまたはLCD−TFTデバイス製造において使用される任意の好適な基板でありうる。好適な基板の例としてはたとえば、限定されないが、シリコン基板、シリカ基板、窒化珪素基板、酸窒化珪素基板、タングステン基板、窒化チタン、窒化タンタル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。加えて、タングステンまたは貴金属(たとえば、白金、パラジウム、ロジウム、または金)を含む基板を使用してもよい。また、基板は、前の製造工程から既にその上に堆積している異なる材料の1つ以上の層を有してもよい。
【0034】
リアクタ内の温度および圧力は、PE−ALD、PECVD、またはパルスPECVDの堆積に好適な条件に保持する。たとえば、リアクタ内の圧力は、堆積パラメータによって必要とされるのに応じて、約0.5mTorrないし約20Torr、好ましくは約0.2mTorrないし10Torr、およびより好ましくは約1mTorrないし10Torrに保持してもよい。同様に、リアクタ内の温度は、約50℃ないし約600℃、好ましくは約50℃ないし約250℃、およびより好ましくは約50℃ないし約100℃に保持してもよい。
【0035】
ビス−ケトイミナート銅前駆体に加えて、共反応剤をリアクタに導入する。共反応剤は酸化性ガス、たとえば酸素、オゾン、水、過酸化水素、酸化窒素、二酸化窒素、およびこれらのうちの任意の2種以上の混合物でありうる。あるいは、共反応剤は、還元性ガス、たとえば水素、アンモニア、シラン(たとえばSiH4、Si26、Si38)、Si−H結合を含むアルキルシラン(たとえばSiH2Me2、SiH2Et2)、N(SiH33、およびこれらのうちの任意の2種以上の混合物でありうる。好ましくは、共反応剤はH2またはNH3である。
【0036】
共反応剤を分解してそのラジカルの状態にするために、共反応剤をプラズマで処理する。たとえば、プラズマは約50Wないし約500W、好ましくは約100Wないし約200Wの範囲にあるパワーで発生させうる。プラズマはリアクタ自体の中で発生させてもよいしまたはそこに存在してもよい。あるいは、プラズマは一般に反応チャンバから離れた場所、たとえば、遠隔設置プラズマシステムにあってもよい。この選択肢では、リアクタへの導入前に共反応剤をプラズマで処理する。当業者であればこのプラズマ処理に好適な方法および装置が分かるであろう。
【0037】
ビス−ケトイミナート銅前駆体とプラズマ処理共反応剤とが反応して、基板上に銅含有膜を形成する。出願人は、共反応剤をプラズマ処理することにより、低温でビス−ケトイミナート銅前駆体と反応するのに必要なエネルギーを有する共反応剤が提供されることを信じている。
【0038】
どの種類の膜を堆積させようとするかに依存するが、第2の前駆体をリアクタに導入することもできる。第2の前駆体は異種金属、たとえばマンガン、ルテニウム、チタン、タンタル、ビスマス、ジルコニウム、ハフニウム、鉛、ニオブ、マグネシウム、アルミニウム、ランタニド、またはこれらの混合物でありうる。第2の金属含有前駆体を利用する場合、基板上に堆積して得られた膜は少なくとも2種類の異なる金属種を含有しうる。
【0039】
ビス−ケトイミナート銅前駆体、共反応剤、および任意の前駆体は、リアクタに同時に導入してもよいし(PECVD)、逐次的に導入してもよいし(PE−ALD)、または他の組み合わせで導入してもよい。前駆体および共反応剤を互いに混合して共反応剤/前駆体混合物をつくり、それにより混合物の状態でリアクタに導入してもよい。あるいは、前駆体および共反応剤を逐次的に反応チャンバに導入し、前駆体の導入と共反応剤の導入との間で不活性ガスによるパージを行ってもよい。たとえば、ビス−ケトイミナート銅前駆体を1つのパルスで導入し、2種の追加金属供給源を合わせて別のパルスで導入してもよい[改良PE−ALD]。あるいは、リアクタがビス−ケトイミナート銅前駆体の導入の前に既に共反応種を容れていてもよく、ビス−ケトイミナート銅前駆体に続けて任意に共反応剤種の第2の導入を行ってもよい。もう1つの選択肢では、ビス−ケトイミナート銅前駆体を、他の金属供給源をパルスによって導入している間に連続的に反応チャンバに導入してもよい(パルスPECVD)。各例において、1回のパルスの後に、導入した過剰量の成分を除去するためのパージまたは排気工程を続けてもよい。各例において、パルスは約0.01秒ないし約10秒、あるいは約0.3秒ないし約5秒、あるいは約0.5秒ないし約2秒の範囲内にある期間にわたって持続させることができる。
【0040】
特定のプロセスパラメータに応じて、種々の長さの時間にわたって堆積を行うことができる。一般に、必要な性質を有する膜を製造するのに望まれるまたはそれに必要なだけ長く堆積を継続させることができる。典型的な膜厚は、具体的な堆積プロセスに応じて、数百オングストロームないし数百ミクロンでありうる。また、所望の膜を得るのに必要な回数だけ堆積プロセスを行うこともできる。
【0041】
1つの非限定的な例のPE−ALDタイププロセスでは、ビス−ケトイミナート銅前駆体の蒸気相をリアクタに導入し、ここでそれを好適な基板に接触させる。次に、過剰なビス−ケトイミナート銅前駆体は、リアクタをパージおよび/または排気することによってリアクタから除去できる。還元性ガス(たとえば、H2)をプラズマの出力下でリアクタに導入し、ここでそれを吸収されたビス−ケトイミナート銅前駆体と自己停止方式で反応させる。過剰な還元性ガスは、リアクタをパージおよび/または排気することによってリアクタから除去する。所望の膜が銅膜である場合、この2工程プロセスは所望の膜厚を提供する場合もあるし、または必要な厚さを有する膜が得られるまでこのプロセスを繰り返すことができる。
【0042】
あるいは、所望の膜が2種金属からなる膜である場合、上述の2工程プロセスに続いて、ある金属含有前駆体の蒸気をリアクタに導入することができる。この金属含有前駆体は、堆積させる2種金属からなる膜の性質に応じて選択されるであろう。リアクタへの導入後、金属含有前駆体が基板に接触する。過剰な金属含有前駆体は、リアクタをパージおよび/または排気することによってリアクタから除去する。先と同じように、還元性ガスをリアクタに導入して金属含有前駆体と反応させることもできる。過剰な還元性ガスは、リアクタをパージおよび/または排気することによってリアクタから除去する。所望の膜厚が得られたら、プロセスを終わらせることができる。しかしながら、より厚い膜を望む場合には、4工程プロセスの全てを繰り返してもよい。ビス−ケトイミナート銅前駆体、金属含有前駆体、および共反応剤を交互に供給することによって、所望の組成および厚さの膜を堆積させることができる。
【0043】
上で説明したプロセスから得られる銅含有膜または銅含有層としては純銅、珪酸銅(CukSil)、酸化銅(Cunm)または酸窒化銅(Cuxyz)(ここでk、l、m、n、x、y、およびzは包括的に1ないし6の範囲にある整数である)の膜を挙げることができる。好ましくは、銅含有膜は銅膜およびCuO膜から選択される。当業者であれば、適切なビス−ケトイミナート銅前駆体、任意の金属含有前駆体、および共反応剤種の公平な選択によって、所望の膜組成を得ることができるが分かるであろう。
【0044】

本発明の実施形態をさらに説明するために、以下の非限定的な例を提供する。しかしながら、この例は包括的であることを意図したものではないし、発明の範囲をここで説明するものに限定することを意図したものではない。
【0045】
例1:銅−ビス(エチルアミノ−3−ペンテン−2−オナート)の合成
【化5】

【0046】
8.3gのエチル−エナミノケトン(65.1mmol)を、50mLのMeOHおよび5.0gのCu(OEt)2(32.5mmol)と共に100mLのシュレンクフラスコに室温で導入した。色は直ちに暗くなった。混合物を一夜室温で攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。ペンタン(〜40mL)を添加した。溶液をセライト上でろ過した。ペンテンを減圧下で除去し、暗い液体を得た。次にそれを次に蒸留した:未反応混合物の最初の留分を除去した。bp:〜30℃/30mTorr、無色液体。2番目の留分は暗い液体であった。bp〜105ないし110℃/45mTorr、5.49g/17.4mmol/53%。
【0047】
熱重量分析(TGA)において、滑らかな質量減少および変曲点のない一段階の変遷が認められる(図1を参照のこと)。大気圧条件下では比較的高い残留物レベル(〜23%)が高温(>250℃)で認められる一方、減圧実験は検出可能な残留物なしの完全な蒸発を示す。
【0048】
ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)は優れた揮発性を示し、〜145℃で1Torrの蒸気圧を達成し(図2を参照のこと)、これはそれを気相堆積プロセスでの使用に好適なものにする。さらに、その室温での液体の状態は前駆体に製造用途における追加の利点を与える。
【0049】
ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)の熱安定性を、その蒸発を120℃の一定温度において大気圧TGA条件においてモニタすることによって評価した(図3を参照のこと)。目立った分解のなしの完全な蒸発を示す〜4時間にわたる残留物なしの直線的な質量減少が認められた。
【0050】
例2:ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)を使用するPEALD:
ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)を使用して、PEALD試験を行った。ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)を配送容器中で100℃まで加熱し、40sccmの流量のヘリウムキャリアガスと共にリアクタチャンバに導入した。リアクタの圧力は1.7ないし2.3torrの範囲内にあった。プラズマのパワーを80ないし160Wの範囲内に設定し、リアクタの温度を60ないし100℃の範囲内に設定した。PEALDサイクルは、5秒の前駆体パルスと、続けての5秒のパージと、続けての10秒の水素プラズマパルス(300sccmの水素流)と、5秒のパージとから構成されていた。ルテニウム、窒化タンタル、窒化チタンおよび酸化珪素の基板上に、約0.2ないし約0.8オングストローム/サイクルの範囲にある速度で、純銅膜が堆積した。
【0051】
120Wプラズマおよび60℃リアクタ温度の試験パラメータを使用して基板表面上での完全前駆体飽和を評価するために、2ないし10秒で変化させた前駆体パルスを使用して酸化珪素基板上に銅膜を堆積させた。図4は、前駆体パルス時間の関数としての、750サイクルから得られた銅膜の厚さのグラフである。全ての前駆体パルスについて、0.20Å/サイクルよりも高い堆積速度が60℃で得られた。3秒の前駆体パルス時間で、完全な表面飽和が達成された。
【0052】
120Wプラズマ、60℃リアクタ温度、および5秒前駆体パルスを使用した上で説明したPEALDプロセスから製造された銅膜のオージェ電子分光法(AES)は、膜への炭素および窒素の混合がなかったことを示した。この銅膜の表面微細構造の走査型電子顕微鏡(SEM)は、均一で滑らかな粒子を有し、優れた連続性を有する表面(〜17nm厚)を示した(図5を参照のこと)。
【0053】
様々な基板(Si、Ta、Ru)または8程度の高さのアスペクト比を有するバイアスもしくはトレンチなどの構造上に連続的な純銅膜を堆積させることに成功した。図6は断面SEM像であり、〜40nm厚のPEALD Cu膜の共形性を示している。垂直な緑色の線が銅膜と基板との間の境界を示している。
【0054】
抵抗率は膜の共形性および純度の目安であり、高い抵抗率は乏しい共形性を示す。上で説明した方法によって20nm厚の銅膜を製造した場合、〜20ないし25μΩ.cm程度の低さの抵抗率が得られた。
【0055】
比較例:ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)を使用するALD
ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)を使用して、ALD試験を行った。ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)を配送容器中で90℃まで加熱し、1sccmの流量の窒素キャリアガスと共にリアクタチャンバに導入した。リアクタの圧力は約1torrであった。ALDサイクルは、5秒の前駆体パルスと、続けての5秒の窒素パージと、続けての5秒の水素パルス(20sccmの水素流)と、5秒の窒素パージとからこの順で構成されていた。リアクタの温度を100℃に設定した。これら条件では、パラジウム、窒化タンタル、珪素および酸化珪素の基板上に膜は堆積しなかった。
【0056】
本発明を実施するための好ましいプロセスおよび装置について説明してきた。本発明の精神および範囲から外れることなしに、上で説明した実施形態に対して多くの変更および修正を行うことができることは理解されるであろうし当業者に明らかである。以上は単に説明的なものであって、統合されたプロセスおよび装置の他の実施形態も、以下の特許請求の範囲で定義する本発明の実際の範囲から逸れることなしに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅含有膜を基板上に形成する方法であって、以下の工程:
a)リアクタおよびその中に配置した少なくとも1枚の基板を用意する工程と;
b)前記リアクタに以下の式:
【化1】

(ここで:
1)MはCuであり;および
2)各R1、R2、R3、およびR4はH、C1−C5アルキル、アルキルアミノ基、およびSi(R')3(ここで、各R'はHおよびC1−C5アルキル基から独立して選択される)からなる群より独立して選択される)
を有する銅含有前駆体を導入する工程と;
c)共反応剤を前記リアクタに導入する工程と;
d)前記共反応剤をプラズマで処理して、プラズマ処理共反応剤をつくる工程と;
e)前記前駆体を前記プラズマ処理共反応剤に反応させて、銅含有膜を前記基板上に形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記リアクタを約50℃ないし約600℃の温度に維持することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リアクタを約0.5mTorrないし約20Torrの圧力に維持することをさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
約50Wないし約500Wの範囲のパワーで前記プラズマを発生させることをさらに含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記共反応剤を前記プラズマで処理する工程を、前記共反応剤を前記リアクタに導入する工程の前に行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記共反応剤はH2、NH3、SiH4、Si26、Si38、SiH2Me2、SiH2Et2、N(SiH33およびこれらの混合物からなる群より選択される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記銅含有前駆体および前記共反応剤を逐次的にチャンバに導入する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記共反応剤を前記銅含有前駆体の前に導入する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記前駆体は以下からなる群より選択される請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法:
ビス(4N−(アミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(メチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(イソプロピルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(n−プロピルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(n−ブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(イソブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、
ビス(4N−(secブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)、および
ビス(4N−(tertブチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)。
【請求項10】
前記前駆体はビス(4N−(エチルアミノ)ペンタ−3−エン−2−オナト)銅(II)である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記銅含有膜を0.1ないし1.0オングストローム/サイクルの範囲にある速度で前記基板上に形成する請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法の生成物を含む銅含有薄膜でコーティングされた基板。
【請求項13】
以下の構造:
【化2】

(ここでMはCuであり、R1、R2、R3、およびR4の各々はH、C1−C5アルキル、アルキルアミノ基、およびSi(R')3(ここで、各R'はHおよびC1−C5アルキル基から独立して選択される)からなる群より独立して選択される)
を有するビス−ケトイミナト銅前駆体を合成する方法であって、
アルコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、およびトルエンからなる群より選択される溶媒中で、銅アルコキシド(Cu(OR52)(ここで、R5はメチル、エチルおよびイソプロピルからなる群より選択される)を二等量のケトイミン配位子(R4C(=O)C(R3)=C(NHR1)R2)に反応させることを含む方法。
【化3】

【請求項14】
溶媒を除去することと;
アルカン溶媒を添加して溶液をつくることと;
前記溶液をろ過することと;
前記アルカン溶媒を除去してビス−ケトイミナト銅前駆体をつくることと
をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ビス−ケトイミナト銅前駆体を蒸留することをさらに含む請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532993(P2012−532993A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519751(P2012−519751)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/041471
【国際公開番号】WO2011/006035
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】