説明

鋼管の寸法測定装置

【課題】鋼管の横断面内の複数箇所における外径や肉厚を簡易にかつ十分な測定精度で自動測定を行う。
【解決手段】外径、肉厚測定用の第1の外側、内側レーザ距離計1,1Aを第1の直線13上に、位置合わせ用の第2の外側レーザ距離計2を第1の直線13と直交する第2の直線14上に、かつこれらを同心円上に、配置して、枠体3で支持し、枠体3を枠体回転手段、枠体移動手段、および、前後進手段で、全てのレーザ距離計の同心回転、第2の直線14の方向、および、同心円の直交方向の移動を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管例えば継目無鋼管の外径、肉厚を測定するにあたっては、従来、作業者がマイクロメータやノギスを用いて人手により測定していたが、時間と人手がかかるため、自動的に鋼管の外径、肉厚を測定する装置が提案されている(特許文献1,2)。
特許文献1には、測定対象の管の外周側にて管の軸心を介して径方向に対向するように配され、各別に管の外周面までの距離を光学的に測定する一対の第1距離測定手段と、該第1距離測定手段の各々と管の径方向に所定距離を隔てて対向するように管の内周側に配され、各別に管の内周面までの距離を光学的に測定する一対の第2距離測定手段と、前記第1距離測定手段及び前記第2距離測定手段の測定結果に基づいて管の外径を求める手段と、前記第1距離測定手段及び前記第2距離測定手段の測定結果に基づいて管の肉厚を求める手段とを具備することを特徴とする管の外径・肉厚測定装置が記載されている。なお、管は固定されている。
【0003】
特許文献2には、回転あるいは直進搬送されてくる丸棒、管材等の材料外径あるいは肉厚をパルス反射法を用いて測定する装置において、この材料を中にしてその周囲側面に向かって互いに対向すべく少なくとも2個の超音波探触子を設け、加えてこれら超音波探触子を結ぶ軸線と直交する軸上には上記材料の周囲側面までの距離を測定するセンサを互いに対向すべく設けると共に、この距離測定用センサからの検知信号を受けて材料との距離情報の差を常に一定となる様に、上記超音波探触子の位置を一体に垂直及び水平方向に移動させてなる丸棒、管材等の外径及び肉厚測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−240621号公報
【特許文献2】実開昭59−162607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置は、マイクロメータと同程度の精度で測定可能であるが、該装置の中心位置と管の中心位置とを位置合せする手段が示されていないため、その位置合せ作業に多大な時間を要する。また、管の同一円周方向の複数箇所における外径や肉厚を測定する要求がある場合、第1距離測定手段と第2距離測定手段とを前記測定する箇所数と同じ個数ずつ配設する必要があり、装置が複雑となる。
【0006】
また、特許文献2に記載の装置は、超音波探触子を結ぶ軸線が材料中心位置を通るように位置合せする手段を有するが、管の横断面内の複数箇所における外径や肉厚を測定する手段は示されていない。さらに、超音波探触子の測定精度は、マイクロメータの測定精度よりも低くて不十分である。
上述のように、従来の技術では、鋼管の横断面内の複数箇所における外径や肉厚を簡易にかつ十分な測定精度で自動測定することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明は、以下のとおりである。
(1) レーザ距離計を用いて鋼管の横断面内の複数箇所における外径、肉厚を測定する装置であって、
鋼管の内径よりも径が小さい内円と、該内円の中心を通り該内円の径方向に延びる第1の直線との2つの交点のいずれか1つに1つ、または、これら2つの交点に1つずつ設けた、該交点から鋼管の内周面までの前記第1の直線方向の距離測定用の内側レーザ距離計と、
前記内円と同一平面内にあり前記内円と同心で鋼管の内径よりも径が大きい第1の外円と、前記第1の直線との2つの交点に1つずつ設けた、該交点から鋼管の外周面までの第1の直線方向の距離測定用の第1の外側レーザ距離計と、
前記内円と同一平面内にあり前記内円と同心で鋼管の外径よりも径が大きい第2の外円と、該第2の外円の径方向に延び前記第1の直線と前記中心にて直交する第2の直線との2つの交点に1つずつ設けた、該交点から鋼管の外周面までの前記第2の直線方向の距離測定用の第2の外側レーザ距離計と、
前記第1の外側レーザ距離計および前記第2の外側レーザ距離計を支持する外枠部と、前記第内側レーザ距離計を支持する内枠部とが一体化されてなる枠体と、
前記枠体を、前記内円、前記第1の外円、前記第2の外円を含む平面と直交する方向を回転軸として回転させる枠体回転手段と、
前記枠体を、少なくとも前記第2の直線の方向に移動させることが可能な枠体移動手段と、
前記枠体を前記平面に垂直な方向に前後進させる前後進手段とを有することを特徴とする、鋼管の寸法測定装置。
(2) 2つの前記第2の外側レーザ距離計による測定値の差が0となるように前記枠体移動手段を制御する位置合わせ手段をさらに有することを特徴とする前項(1)に記載の鋼管の寸法測定装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鋼管の横断面内の複数箇所における外径や肉厚を簡易にかつ十分な測定精度で自動測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1例を示す側面図
【図2】図1のA−A矢視図
【図3】図1の例を用いた寸法測定手順を説明する図
【図4】図1の例を用いた別の寸法測定手順を説明する図
【図5】図1の例を用いたさらに別の寸法測定手順を説明する図
【図6】本発明の別の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
例えば図1〜図2に示すように、本発明に係る鋼管の寸法測定装置(略して本発明装置)は、第1の外側レーザ距離計1、内側レーザ距離計1A、第2の外側レーザ距離計2、枠体3、枠体回転手段4、枠体移動手段7、前後進手段5、位置合わせ手段8、寸法演算器6を具備する。
内側レーザ距離計1Aは、被測定対象物である鋼管10の外径よりも径が小さい内円12と、該内円12の中心Oを通り該内円12の径方向に延びる第1の直線13との2つの交点に1つずつ設けられている。内側レーザ距離計1Aは、鋼管10の内面までの距離を測定するものであり、それぞれ、第1の直線13に沿う方向で、内円13の外側向きに距離を測定可能としてある。なお、図中の例では、2つの交点の1つずつ設けられているが、これらのうちいずれか1つを省略することもできる。
【0011】
第1の外側レーザ距離計1は、前記内円12と同一平面内にあり前記内円12と同心で鋼管の内径よりも径が大きい第1の外円11Aと、前記第1の直線13との2つの交点に1つずつ設けられている。第1の外側レーザ距離計1は、鋼管10の外面までの距離を測定するものであり、それぞれ、第1の直線13に沿う方向で、第1の外円11Aの内側向きに距離を測定可能としてある。
【0012】
第2の外側レーザ距離計2は、前記内円12と同一平面内にあり前記内円12と同心で鋼管の外径よりも径が大きい第2の外円11Bと、該第2の外円11Bの径方向に延び前記第1の直線13と前記中心Oにて直交する第2の直線14との2つの交点に1つずつ設けられている。第2の外側レーザ距離計2は、鋼管の外面までの距離を測定するものであり、それぞれ、第2の直線14に沿う方向で、第2の外円11Bの内側向きに距離を測定可能としてある。
【0013】
枠体3は、前記第1の外側レーザ距離計1および第2の外側レーザ距離計2を支持する外枠部3Aと、前記内側レーザ距離計1Aを支持するうち内枠部3Bとを一体化した構造のものとする。
枠体回転手段4は、前記内円、前記第1の外円、前記第2の外円を含む平面と直交する方向を回転軸として回転させるものである。図1、2に示した例では、前記枠体3の内枠部3Bを回転軸4Aで軸支して回転させるようにしてあり。回転軸4Aは、内円12、第1の外円11A、第2の外円11Bを含む面に直交する方向を向く軸である。回転軸4Aの回転中心は、前記内円12の中心Oと同じ位置とされており、また、回転軸はその軸方向が、内円13、第1の外円11A,第2の外円11Bを含む面と直交する。したがって、枠体回転手段4により枠体3を回転させると、内側レーザ距離計1Aは内円12に沿って、第1の外側レーザ距離計1は第1の外円11Aに沿って、第2の外側レーザ距離計2は第2の外円11Bに沿って周回する。
【0014】
枠体移動手段7は、枠体3を第2の直線14の方向に移動させることが可能としてある。図中の例は、枠体移動手段7が、枠体3を内円13、第1の外円11A、第2の外円11Bを含む平面と平行な面内で少なくとも前記第2の直線の方向に移動させるものである。この例では、枠体3を内円13、第1の外円11A、第2の外円11Bを含む平面が、上下方向および左右方向を含む面であるので、この平面内で互いに直交する2つの方向として上下方向、左右方向を採用し、これら方向に枠体3を移動させる枠体移動手段7として上下移動手段7Aと左右移動手段7Bとを有している。上下移動手段7Aが枠体回転手段4を上下動可能に支持し、左右移動手段7Bが上下移動手段7Aを左右に移動可能に支持している。よって、これら2つの移動手段を組み合わせれば、枠体3を回転させて第2の直線が傾いていたとしても、第2の直線の方向に枠体3を移動させることが可能である。
【0015】
前後進手段5は、枠体3を内円13、第1の外円11A、第2の外円11Bを含む平面と垂直な方向に前後進させるものであり、左右移動手段7Bを該平面と垂直な方向に前後進可能に支持している。被測定物である鋼管10の管軸方向を、前後進手段5の前後進方向と一致させ、枠体3の鋼管10の一端に対向配置し、この状態で前後進手段5により枠体3を鋼管10側へと前進させることにより、内枠部3Bを鋼管10の内側に挿入し、かつ、外枠部3Aを鋼管の外周の外側に位置させる。この枠体の前進移動により、内側レーザ距離計1Aを鋼管10の内周面に対向配置させ、第1の外側レーザ距離計1および第2の外側レーザ距離計2を鋼管10の外周面に対向配置させることができる。
【0016】
なお、枠体回転手段4、枠体移動手段7、および、前後進手段5は、通常よく用いられているアクチュエータ(シリンダ、モータなど)と簡単な自動制御系とを組み合わせることで容易に構成できる。
位置合わせ手段8は、鋼管の外径、および、肉厚を測定するのに用いる第1の外側レーザ距離計および内側レーザ距離計が鋼管10に対して測定可能位置となるように、枠体移動手段7および回転手段4を制御するものであり、第2の外側レーザ距離計の測定値L21、L22、あるいはさらに、第1の外側レーザ距離計の測定値L11、L12または内側レーザ距離計の測定値L1A1、L1A2のうちの少なくともいずれかが入力され、これら測定値にもとづいて枠体移動手段7を動作させる。
【0017】
寸法演算器6は、第1の外側レーザ距離計の測定値L11、L12、および、内側レーザ距離計の測定値L1A1、L1A2が入力され、これら測定値にもとづいて鋼管10の外径および肉厚を演算するものである。
位置合わせ手段8と寸法演算器6とで、寸法測定装置の制御装置20を構成している。
以上説明した、本実施形態に係る装置にて、鋼管10の外径および肉厚を、鋼管の横断面における周方向の複数点について測定する方法を説明する。
【0018】
図3は、本発明の鋼管の寸法測定装置を用いた寸法測定手順の概略を示す図であり、図1のA−A矢視図に相当するものである。なお、図3(b)〜(f)では、外枠部3A、内枠部3Bについては省略した図としている。
先ず、鋼管10の一端を枠体3に対向配置させる。なお、前後進手段5による前後進方向が鋼管の管軸方向となるよう、測定装置は予め固定されている。そして、前後進手段5により枠体3を前進させ、内枠部3Bを鋼管10の内側に挿入し、かつ、外枠部3Aを鋼管の外周の外側に位置させる。この状態で寸法装置の鋼管10へのセットが完了である。なお、枠体3は初期状態において、第1の直線が上下方向、第2の直線が水平方向となるようにしてあり、また、セット完了状態においては、鋼管10の中心Pは第1のレーザ距離計の測定方向である第1の直線13上にはない(図3(a)参照)。
【0019】
セットを完了した後に、制御装置20に測定開始指令を与えると、まず、制御装置20の位置合わせ手段8が位置合わせを開始する。図3(a)〜図3(b)に示すように、2つの第2のレーザ距離計2のそれぞれで鋼管内面までの距離を測定しながら、枠体移動手段7を動作させ、測定値L21、L22の差が0となる位置に枠体3を移動させる。図3(a)の例では、初期状態において第1の直線13が上下方向、第2の直線14が水平方向となっており、測定値L21、L22の差が0となるためには、枠体3を水平方向に移動させる必要があり、よって、左右移動手段7Bを用いて枠体3を移動させている。
【0020】
次に、制御手段の寸法演算器が1番目の寸法測定を行う。測定値L21、L22の差が0となった状態(図3(b)の状態)では、第1の直線13上に鋼管10の中心Pがあるから、第1の直線13と鋼管の外周との2つの交点間の距離が鋼管の外径であり、第1の直線13と鋼管の内周との2つの交点間の距離が鋼管の内径である。よって、図3(c)に示すように第1の直線13に沿って鋼管外面までの距離を測定する第1のレーザ距離計を用いて鋼管外面までの距離を測定して測定値L11,L12を得て、第1の直線13に沿って鋼管内面までの距離を測定する内側レーザ距離計を用いて鋼管内面までの距離を測定して測定値L1A1、L1A2を得れば、鋼管の外径D、鋼管の肉厚t1、t2は以下の演算式で求めることができる。
D=第1の外円の直径−(L11+L12
1=第1の外円の半径−内円の半径−(L11+L1A1
2=第1の外円の半径−内縁の半径−(L12+L1A2
1番目の寸法演算が完了すると、1番目の外径演算結果D1および2つの肉厚演算結果t11、t21を記録した後、位置合わせ手段が、2番目の寸法測定位置への枠体3の回転を行う。枠体の回転は、図3(d)に示すように、枠体回転手段4を用いて、枠体3を所定角度θだけ回転させる。所定角度θは、鋼管の周方向に何点の外径、肉厚測定を行うかにより決まる角度である。管円周上の複数の点(便宜上、等角度間隔で2×N箇所の肉厚、N箇所の外径を測定するとする)を測定対象としたとき、回転角度θ=180°/Nの小回転を行う。この角度θについては予め位置合わせ手段8に入力し設定しておく。
【0021】
次に、位置合わせ手段8は、第2のレーザ距離計2を用いて鋼管外面までの距離を測定して測定値L21、L22を得つつ、図3(e)に示すように、測定値L21、L22の差が0となるように枠体移動手段7を用いて枠体3を第2の直線14の方向へ移動させる。第2の直線14の方向へ移動させるには、n番目の測定である場合には、左右移動手段7Bの移動量xに対して、上下移動手段7の移動量をx・tan[(n−1)・θ)]とすればよい。このように位置合わせをした後、図3(f)に示すように、第1の外側レーザ距離計1および内側レーザ距離計1Aを用いて測定を行い、寸法演算器6が得られた測定値L11,L12、L1A1、L1A2から上述の演算式により鋼管の外径および肉厚を求め、2番目の外径演算結果D2、および肉厚演算結果t12、t22を記録する。
【0022】
この作業を繰り返し、合計でN回の第1のレーザ距離計による測定を行うことで、鋼管の周方向にN箇所についての鋼管の外径、2×N箇所についての鋼管の肉厚を測定することができる。
なお、図3(c)の状態から図3(d)の状態へ至る枠体3を回転させる動作と、図3(d)の状態から図3(e)の状態へ至る、枠体回転後の枠体3の位置合わせ動作とは、同時に行うようにしてもよい。この場合、位置合わせ手段8は枠体回転手段3を作動させるとともに、第2の外側レーザ距離計による測定を行い、その測定値L21、L22との差が0を維持できるように、左右移動手段および上下移動手段を作動させる。第2の直線14の方向に枠体を移動させるには、回転角度θの変化にともない、上下移動手段と左右移動手段との移動量の関係を変えて行けばよい。
【0023】
図4は、図1に示した本発明の装置を用いた別の測定法を説明する図である。なお、以下の説明においても、位置合わせが位置合わせ手段8が、鋼管の外径、肉厚の演算は寸法演算器6が行うものである。図4(a)〜(d)までは、鋼管10への測定装置のセットから2番目の測定位置への枠体3の回転までの行程であり、図3(a)〜(d)と同様の方法であるので説明は省略する。この例では、枠体3を所定角度θ回転させた後の、枠体移動手段による位置合わせ法が図3の例とは異なっている。すなわち、図4(e)に示すように、測定値L21、L22の差が0となるように枠体移動手段7を用いて枠体3を移動させるが、図4(d)〜(e)に至る例では、上下移動手段7Aを用いて枠体を下方へ移動させることにより、測定値L21、L22の差が0となるようにしている。その後に、図4(f)に示すように、第1のレーザ距離計1および内側レーザ距離計1Aによる測定を行い、第1のレーザ距離計と鋼管外面との間の距離の測定値L11,L12、および、内側レーザ距離計と鋼管内面との間の距離の測定値L1A1、L1A2を得て、上述の演算式により、鋼管の外径D、鋼管の肉厚t1、t2を求める。
【0024】
図4の例では、図4(a)から図4(b)の状態への枠体3の移動では、水平方向に枠体3を移動させて上下方向に沿って存在する第1の直線13上に鋼管10の中心Pを位置させている。さらに、図4(d)の状態へ枠体3を回転させるが、この状態においては枠体3の回転中心の真下に鋼管10の中心10が位置しているので、この状態から上下方向(最初の移動方向と直交する方向)に枠体3を移動させて、第1の直線13上に鋼管10の中心Pを位置させると、回転軸4Aの中心と鋼管10の中心Pとが一致する。したがって、以後は、枠体3を回転させても、常に、測定値L21、L22の差が0となるので、3回目の測定以降は枠体移動手段7による位置合わせを省略してもよいこととなる。
【0025】
また、第1回目の第1のレーザ距離計による測定を行う前に、第2のレーザ距離計2による測定値L21、L22の差が0となるようにだけでなく、内側レーザ距離計1Aによっても測定を行い測定値L1A1、L1A2の差が0となるように、あるいは、第1の外側レーザ距離計1によっても測定を行い測定値L11,L12の差が0となるように枠体3を移動させるようにしてもよい。上下移動手段7Aと左右移動手段7Bとを用いて、図5(a)、(b)に示すように、水平移動と上下移動の両方を行うことにより、L21、L22の差が0という条件と、L1A1、L1A2の差が0あるいはL11,L12の差が0のいずれかの条件をともに満足させれば、枠体3の回転中心と鋼管10の中心とが一致する状態となるので、以後は枠体3を回転させる都度、枠体移動手段7による位置合わせを行う必要はなくなる。
【0026】
また、内側レーザ距離計による測定値L1A1、L1A2の差が0となるように、あるいは、第1のレーザ距離計による測定値L11,L12の差が0となるように枠体3を移動させる代わりに、第2の外側レーザ距離計の測定値L21、L22の和が所定値以下となるようにしてもよい。すなわち、図5に示すように、鋼管10の中心Pが第2の直線14上にある場合には、
21+L22=第2の外円の直径−鋼管の外径
となるが、中心Pが第2の直線14から離れるにつれて、L21+L22の値は大きくなる。したがって、鋼管の外径として公称外径の値を与えておき、測定値L21、L22が次式の条件を満たすように枠体3を移動させることによっても、鋼管10の中心Pを枠体3の回転中心にほぼ一致させることが可能である。
【0027】
21+L22 ≦ 第2の外円の直径−鋼管の公称外径+α
ここで、αは、実際の鋼管の外径が公称外径に比べて小さかった場合の余裕代
以上説明した、第2の外側レーザ距離計による測定値、あるいはさらに、第1の外側レーザ距離計、内側レーザ距離計による測定値を用いた枠体3の位置合わせは、位置合わせ手段8が自動で行い、また、第1の外側レーザ距離計、内側レーザ距離計による測定値からの外径および肉厚の演算については、寸法演算器6が自動で行うようにしているが、各レーザ距離計による測定値を計測しながら、手動で枠体移動手段7を運転して位置合わせを行うようにしてもよいし、また、第1の外側レーザ距離計、内側レーザ距離計による測定値からの外径および肉厚の演算についても、測定者が計算を行って求め、記録するようにしてもよい。
【0028】
なお、上記の実施形態における寸法測定装置では、第1の外円11Aと第2の外円11Bとが異なる径となっており、これら異なる外円上に第1の外側レーザ距離計と第2の外側レーザ距離計とが配置していたが、第1の外円11Aと第2の外円11Bとを同一径としてひとつの外円上に第1の外側レーザ距離計と第2のレーザ距離計とを配置してもよい。
【0029】
また、上記の実施形態における寸法測定装置は、枠体移動手段7が上下移動手段7Aと左右移動手段7Bとから構成されているが、図3を用いて説明した例では、枠体3の位置合わせにおける枠体3の移動は、第2の直線14の方向にのみ移動できればよいので、例えば、図6に示すように、回転軸4Aに回転体40を軸支させておき、この回転体40に枠体3を第2の直線14の方向へスライド可能に取り付けておくとともに、枠体移動手段7は回転体40に対して枠体3をスライドさせる枠体スライド手段7Cを設けておくようにしてもよい。図6の例では、回転体40に第2の直線14と平行な軌道41を設けてあり、枠体スライド手段7Cはこの軌道41に沿って枠体3をスライドさせることを可能としてある。
【0030】
さらに、本発明の装置においては、枠体の長さ十分に長くし、また、前後進手段による前後進可能範囲も十分に長くとれば、鋼管の長手方向についても複数の外径および肉厚の測定を行うことができる。
以上説明したとおり、本発明の鋼管の寸法測定装置によれば、管内側と管外側の寸法測定用のレーザ距離計(第1の外側レーザ距離計および内側レーザ距離計)を、管の横断面を含む面内で回転させる機能を持たせ、また、寸法測定用のレーザ距離計を配置した第1の直線とは上記面内で直交する第2の直線上に、位置合わせ用のレーザ距離計(第2のレーザ距離計)を配置し、さらに、第2の直線方向にレーザ距離計を移動させる移動手段(枠体移動手段)を設けてあるので、鋼管の横断面内の複数箇所における外径、肉厚の測定が可能となった。
【符号の説明】
【0031】
1 第1の外側レーザ距離計
1A 内側レーザ距離計
2 第2の外側レーザ距離計
3 枠体
3A 外枠部
3B 内枠部
4 枠体回転手段
4A 回転軸
5 前後進手段
6 寸法演算器
7 枠体移動手段
8 位置合わせ手段
10 鋼管
11 外円
12 内円
13 第1の直線
14 第2の直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ距離計を用いて鋼管の横断面内の複数箇所における外径、肉厚を測定する装置であって、
鋼管の内径よりも径が小さい内円と、該内円の中心を通り該内円の径方向に延びる第1の直線との2つの交点のいずれか1つに1つ、または、これら2つの交点に1つずつ設けた、該交点から鋼管の内周面までの前記第1の直線方向の距離測定用の内側レーザ距離計と、
前記内円と同一平面内にあり前記内円と同心で鋼管の内径よりも径が大きい第1の外円と、前記第1の直線との2つの交点に1つずつ設けた、該交点から鋼管の外周面までの第1の直線方向の距離測定用の第1の外側レーザ距離計と、
前記内円と同一平面内にあり前記内円と同心で鋼管の外径よりも径が大きい第2の外円と、該第2の外円の径方向に延び前記第1の直線と前記中心にて直交する第2の直線との2つの交点に1つずつ設けた、該交点から鋼管の外周面までの前記第2の直線方向の距離測定用の第2の外側レーザ距離計と、
前記第1の外側レーザ距離計および前記第2の外側レーザ距離計を支持する外枠部と、前記第内側レーザ距離計を支持する内枠部とが一体化されてなる枠体と、
前記枠体を、前記内円、前記第1の外円、前記第2の外円を含む平面と直交する方向を回転軸として回転させる枠体回転手段と、
前記枠体を、少なくとも前記第2の直線の方向に移動させることが可能な枠体移動手段と、
前記枠体を前記平面に垂直な方向に前後進させる前後進手段とを有することを特徴とする、鋼管の寸法測定装置。
【請求項2】
2つの前記第2の外側レーザ距離計による測定値の差が0となるように前記枠体移動手段を制御する位置合わせ手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の鋼管の寸法測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−7587(P2011−7587A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150520(P2009−150520)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】