説明

長方形フィルター真空プラズマ源及び真空プラズマ流の制御方法

本発明は、ターゲットの背後の長方形ターゲット(32)の短側面(32c,32d)に沿って配置される操縦導体(62,64,66,68)を含む操縦磁場源と、ターゲット(32)の対向する長側面(32a,32b)に生成された磁場間のプラズマ流を閉じ込めるターゲット(32)の長側面(32a,32b)に沿って配置された磁気焦点合わせシステムとを提供する。プラズマ焦点合わせシステムは、カソードの作用軸からプラズマ流を偏向させるのに用いられ得る。各操縦導体(62,64,66,68)は、独立して制御され得る。さらなる実施形態において、電気的に独立している操縦導体(62,64,66,68)は、カソード板(32)の対向する長側面(32a,32b)に沿って配置され、一つの導体を流れる電流を変化させることにより、アークスポットの経路を浸食溝を広げるようにシフトする。本発明は、複数の内部アノードも提供し、プラズマ流を偏向するための取り囲みアノードを任意的に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空における被膜を製造する装置に関する。特に、本発明は、長方形フィルターカソードあるいはマグネトロンアーク源を有し、アークスポット走査を改善する真空アーク被膜形成装置と、プラズマ焦点合わせ及びフィルターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の真空アーク被膜形成装置は、電気アークが真空チャンバー内のアノード及びカソード板間に形成されるカソードアーク源を利用する。アークは、カソード材料をチャンバー内に蒸発させるカソードスポットをカソードのターゲット面に生成する。カソード蒸発は、チャンバー内にプラズマとして拡散され、カソード材料と共に基板に金属やセラミックなどの被膜を形成する一つ以上の基板と接触する。そのようなアーク被膜形成装置の例は、参考文献として引用される1974年2月19日に発行された米国特許第3,793,179号(サブレフ)に記述される。
【0003】
このタイプのアーク被膜形成装置は、大きな容量の被膜形成チャンバー内に蒸発され得るカソードの大きな表面積のために、大きい基板及び複数の基板の被膜形成で用いるのに有利である。しかしながら、このタイプの大きな表面積カソードアーク被膜形成装置においては、ある物理法則に従うアークスポットの走査パターンのために、カソード板のターゲット蒸発面の大部分が利用されない。
1.アーク放電は、アーク回路における電圧降下を引き下げる方向に動く傾向にあり、従って、アークスポットは、アノード電流導体に最も接近するターゲット面の領域に移動する傾向にある。複数の電流導体がカソードを横切るところでは、アークスポットを望ましい蒸発ゾーンに後退移動させる操縦システムがないために十分な時間が残る導体間の領域にアークスポットがしばしば移動する。
2.金属カソードの場合、アークスポットは、「反対アンペア力」法則に従って長方形運動を行い、従って、アノード電流導体によって生成される同軸磁力線に引き付けられてしまう。
3.融解相を有しない材料で形成されるカソードの場合、例えば、焼結又はグラファイトカソードであれば、アークスポットは、「アンペア力」法則に従って移動し、アノード電流導体によって生成された同軸磁力線から反発されてしまう。
4.アークスポットは、横磁場の接線成分が最大となる領域に引き付けられてしまう。
5.アークスポットは、磁場線及びカソードターゲット面間の交差点で鋭角の頂部から離れて移動する傾向(「鋭角」規則)にある。
【0004】
これらの効果は、カソード板のターゲット面の利用可能な領域に対する浸食ゾーンを制限するという結果になり、カソードの寿命を引き下げると共に、不均一な濃度で被膜形成チャンバー内にカソード蒸発を分散させる。
【0005】
金属カソード板を用いる広領域カソードアーク被膜形成装置において、アークスポットの反アンペア運動及び最も低い電圧降下を探すアークの傾向は、アノード導体の近傍にアークスポットを大いに閉じ込め、アノード導体を取り囲むターゲット面の領域に浸食ゾーンを制限する。この結果、カソード蒸発が基板を均一に被膜形成するのに十分濃縮される膜形成チャンバー内の領域を非常に小さくする。しかしながら、カソード板を構成することは可能でないので、望ましい被膜形成が浸食ゾーンにのみ位置し、アークスポットは、ちょくちょく浸食ゾーンから外れるので、ターゲット面が選択された被膜材料から構成されないならば、望ましい浸食ゾーンから出たカソード蒸発は、基板上の被膜を汚染する。
【0006】
融解相を有しない材料で形成されるカソード板の場合、アノード導体の領域から離れてアンペア方向に移動するアークスポットの傾向は、もっとも低い電圧降下に向かって安定しようとするアーク放電の傾向によって妨害される。これらの場合、アークスポットは、カソードのターゲット面を越えて混然として移動する傾向にあり、カソード蒸発は、被膜形成チャンバー内のランダムな位置で且つ不均一な濃度で次第に分散する。このランダムな運動は、アークスポットがカソードのターゲット面から外れて移動することを引き起こし、例えば側面のエッジといったカソード板の非ターゲット部分の望ましくない浸食を引き起こす。
【0007】
参考文献として引用される1984年5月15日に発行された米国特許第4,448,659号(モーリソン)は、カソード蒸発を生成するための大きなターゲット面を備えた板の形でのカソードを提供するアーク被膜形成装置を記述する。磁気浸透可能な材料からなる制限リングは、ターゲット面にアークスポットを閉じ込めるためにカソードを取り囲む。そのようなプラズマ源は、大きく長い品物への被膜形成のためには用いられ得るが、以下の欠点がある。
1.カソードスポットが保護リングから消失してしまう初期の低い可能性にも関わらず、時間が経てば、カソード蒸発は、リングを被膜形成し、カソードスポットは、増大する頻度でリング上に引き起こされる。この結果、リング材料による被膜の汚染となり、最後は、リングの失敗作となる。
2.自己操縦カソードアーク源において、カソードのターゲット面近傍における外部磁場を用いることが不可能である。従って、そのような装置においては、焦点合わせ磁場の影響がカソードの作用面上のカソードスポット分布を不規則且つ不均一にするので、プラズマ焦点合わせ磁場を用いることができない。例えばアークプラズマ流の焦点合わせや偏向のためのどんな外部磁場も、カソード及びアノード電流導体によって生成される自己維持磁場を妨害し、カソードスポットの自己操縦特性を乱す。しかしながら、磁気焦点合わせがないと、基板の領域、その結果、基板被膜における中性要素(マクロ粒子、クラスター及び中性原子)の含有量が増加するため、被膜形成プロセスの効率が引き下げられ、基板被膜形成の質が悪くなる。
3.このタイプのプラズマ源のカソードは、蒸発分解のために急速に窪んだ状態となり、そのため、有効寿命が相対的に短くなる。さらには、カソードの蒸発面は、比較的短い時間で窪んだ状態となるので、事実上、そのような設計において高電圧パルススパーク点火器を用いることができず、作動信頼性及び安定性が低い機械的点火器を用いざるを得ない。
4.アークスポットがターゲット面から外れるのを制限リングが防止する一方、金属カソードの場合におけるアノード導体に向かってアークスポットが移動する傾向や、非金属カソードの場合におけるターゲット面を越えてアークスポットが混沌として移動する傾向に影響を及ぼさない。
【0008】
従って、自己操縦アークプラズマ源は、ターゲット面を非効率に使用する傾向となり、従って、カソードは、相対的に短い有効寿命となる。
【0009】
例えば、カソードスポットの走査パターンは、参考文献として引用される1988年2月9日に発行された米国特許第4,724,058号(モーリソン)に記述されるのと同じ方法で、カソードのターゲット面近傍に配置された閉ループ磁場源を提供することによって制御され得る。磁場源は、ターゲット面を越えて選択された方向に磁場を確立し、磁場の方向に対して実質的に垂直な方向でカソードスポットを方向付け、従って、ターゲット面のより効率的な蒸発を提供する。このアプローチは、アークスポット運動の法則に基づき、そのため、アークスポットは、横磁場の接線成分が最大となる領域に引き付けられる。
【0010】
しかしながら、これでもまだ、浸食のために利用可能なカソードのターゲット面の領域を大いに制限する。なぜならば、このタイプのアーク被膜形成装置は、磁場の接線成分が最大となる領域における停滞ゾーンを生成するためである。カソードスポットは、浸食ゾーンの長方形経路をトレースして、ターゲット面状の細い浸食溝を生成し、ついには停滞ゾーンに落ち着く。これは、基板上の被膜形成の均一性を制限すると共に、カソードの作用寿命を低減する。
【0011】
参考文献として引用される1999年10月7日に発行された米国特許第5,997,705号(ウェルティー)は、蒸発面がカソード板の垂直エッジに位置し、カソード板の対向面を越えて配置されるカソードシールドによってアークスポットが蒸発面に閉じ込められる長方形カソード板を教示する。カソード板に配置される偏向電極は、カソード板の面と平行な二つの方向でプラズマ流を方向付ける。
【0012】
この装置において、基板は、カソード板のエッジを取り囲み、カソード板は、装置内の空間の大半を示す。このように、基板に多くの被膜形成を行うため、カソード板及びその結果の装置自体は、カソード蒸発内に混入した小滴、マクロ粒子に直接的に晒される。
【0013】
参考文献として引用される1998年11月24日に発行された米国特許第5,840,163号(ウェルティー)に、偏向電極が記述される。この特許は、偏向電極がプラズマダクトの内側に取り付けられ、アノードに対して電気的に浮動であるか正にバイアスされているかのどちらかであることを教示する。しかしながら、この装置は、長方形源上のアークスポットがカソードの端に到達すると、カソードの他の側面にアークスポットを移動させるための、磁場の極性を切り替えるスイッチを必要とする。この結果、磁場がゼロとなる望ましくない期間が発生し、従って、アークは消滅し、この期間中は制御ができなくなる。その結果、この「疑似ランダム」操縦方法は、一貫して信頼性あるいは被膜形成再現性を生み出すことができない。
【0014】
米国特許第4,673,477号(ラマリンガム)は、磁場源が磁場線をシフトするよう移動され得ると共に、ターゲット面の利用効率を高めることを提唱する。しかしながら、そのようなシステムに要求される機械的適合は、装置を非常に複雑にし、実用されるには高価過ぎる。
【0015】
外部磁場があると、アークスポットは、アークスポットが磁場線とカソードターゲット面との間の交差点での鋭角の頂部から離れて移動する傾向にある「鋭角」ルールに従う。この基本法則は、完全に強い磁場(100ガウスのオーダー)における真空アークによって形成されるカソードスポットが、磁場の接線成分に対して垂直な反対(後退)方向で移動し、同時に、角の頂部から離れて置換される(例えば、「電気アークのプロセス」ケセルI.G.ナウカ著、1968年を参照)。この結果、ターゲット面を越えて出る磁場のアーチ形部分の頂部近傍にアークスポットが落ち着く。
【0016】
参考文献として引用される1996年10月24日に発行された米国特許第5,587,207号(ゴロコフスキー)は、閉ループタイプ直線アノード下でのカソードスポット制限が、そこでの図29,30によって示される方向で方向付けられる磁場線を備える閉ループ磁気コイルを形成するアノードを入れた導体によって強調され得るということを教示する。カソードの背後の閉ループ磁気操縦コイルと、ターゲット蒸発面の前の閉ループ直線アノード(封入磁気コイルを備えても備えなくてもよい)との両方の同時使用は、放電安定性、及びその結果のカソードスポット運動の相乗作用的改善という結果になる。アノードは、いろんな望ましいパターンで構成され、その構造がターゲット面の周囲によってのみ制限される。アークスポットは、横磁場の影響下でターゲット面を走査し、アノード導体を流れる電流によっても実質的に影響を受けない。
【0017】
このアプローチの欠点は、横磁場の強度が小さくなるカソードターゲット面の他の部分への選択された浸食ゾーンからアークスポットがちょくちょく移動し、望ましい浸食ゾーンへアークスポットを戻すことができる手段がなく、低い磁場領域に停滞する、ということである。カーボンベースのカソード板の場合、アークスポットの移動速度が十分に小さくなると、横磁場がゼロに閉じる停滞ゾーンにアークスポットが落ち着き、浸食ゾーンに戻らない。
【0018】
参考文献として引用される1995年7月25日に発行された米国特許第5,435,900号(ゴロコフスキー)は、平行プラズマガイドを取り囲み、偏向導体が基板ホルダーに向かってプラズマを向ける偏向磁気システムを開示する。しかしながら、この特許は、偏向磁場の存在における長方形カソード板の周囲のアークスポットを磁気的に操縦することの問題に注意を向けていない。
【0019】
従来の長方形マグネトロンスパッタリング源の場合、マグネトロンプラズマ放電は、閉ループマグネトロン磁場によってターゲット面の近傍に閉じ込められる。これは、磁場が最大となる磁極の外側及び中心間に画定される磁気溝に沿って位置する放電の閉ループ形を生成する。この従来の設計において、磁場は、外側及び中心の極間に均衡させられる。この設計は、低いターゲット利用率及び非効率なエネルギー消費の欠点を有する(「参考文献として引用される二重目的カソードアーク/マグネトロンスパッタリングシステム」P.ロビンソン,A.マテウス著、「表面及び被膜技術」、43/44(1990)288-298)。これは、二重目的アーク/マグネトロン真空プラズマ蒸着源のためにも用いられ得る。カソードターゲットが、アーク点火器はもちろん、マグネトロン高電圧低電流電源及び分離低電圧高電流アーク電源を備えるならば、マグネトロンスパッタリング及びアーク蒸発モードの両方でターゲットを運転することができる。これは、大きな長方形アーク/マグネトロンカソードターゲットの運転によって実証された(P.ロビンソン,A.マテウス著、「表面及び被膜技術」、43/44(1990)288-298)。このアプローチの後退は、アーチ形平面マグネトロンタイプ磁場の接線成分が最大となる領域の近傍での位置に落ち着くか留まる傾向にあるカソードアークスポットのためにアークモードで運転されるならば、ターゲットの利用率が極めて低いことである。
【0020】
これらの設計は、均衡するマグネトロン磁場によって提供される高い閉じ込め度によるプラズマ真空流の低いイオン化率に苦しむ。アンバランズドマグネトロン磁気システム設計において、中心極は、弱められるかあるいは取り除かれ、ターゲットマグネトロン放電ゾーンの近傍から引き出され得るより高いイオン流を提供する(参考文献として引用される、B.ウィンドウ,N.サビッド著、「真空のサイエンスと技術A」、4(1986)P.196)。参考文献として引用される1992年10月3日に発行された米国特許第5,160,595号(ハウザー)は、好ましくはしっかり取り付けられた永久磁石の中心極に対する軸方向において磁石配列のエッジが置き換え可能であるので、カソードスパッタリング及び/又はアーク放電プロセスが端磁石配列及び中心極磁石の相対位置によるものと認識され得るアーク/マグネトロン装置を記述する。端磁石が取り除かれると、中心極磁石は、アーク蒸発モードにおけるアークスポットを操縦するための操縦磁場を提供し得る。この設計は、カソードターゲット材料のよりよい利用を許容するが、相対的に小さいアーク操縦領域にまだ苦しむ。また、それは、ターゲット面の上あるいは近傍のイオン化されたプラズマ流の大半を閉じ込め、真空プラズマ流のイオン化率を大きく引き下げ、被膜形成の密着性を引き下げる結果となる。
【0021】
参考文献として引用される2004年5月4日に発行された米国特許第6,730,196号(ワング)は、マグネトロンターゲット及び被膜形成されるべき基板間のプロセス領域に配置される磁気焦点合わせコイルが、マグネトロンスパッタリングプラズマ流の高いイオン化生産率のターゲット領域の近傍から追加的なプラズマ流を引き出すことができると教示する。この焦点合わせコイルの磁場は、マグネトロン磁場を重ねる。例えば、焦点合わせコイルによって生成される磁場の磁力線の方向は、マグネトロン磁石の端極及び中心極間に生成される磁力線の方向に合わされる。この設計の一つの欠点は、焦点合わせ3コイルがマグネトロンターゲットの形に適合されないということである。これは、長方形マグネトロンターゲットに適用されると、マグネトロンプラズマ流の高い不均一という結果を生む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上述したマグネトロン及びアーク/マグネトロンスパッタリング源は、マグネトロンプラズマ流からマクロ粒子を排除することを一切許容しない。これらのマクロ粒子は、ミクロアーク放電処理の結果としてのマグネトロンターゲットの表面に生成される。この結果、被膜形成の欠点が増え、相互連結する銅金属、磁気媒体の被膜形成、及び他の半導体及び光学的被膜形成としての正確な応用にとって極めて不利である。それは、切削工具の耐摩耗性の機能特性を引き下げ、低い摩擦応用のために示される被膜形成における摩擦係数を増加させ、装飾的及び保護的被膜の耐食性を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、ターゲット面の近傍に配置され、電気的に独立した閉ループ操縦導体を複数含む操縦磁場源を提供することによって、これらの欠点に打ち勝つ。好ましい実施形態において、各操縦導体は、他の操縦導体と独立して制御され得る。
【0024】
操縦導体は、カソード板のターゲット面の前あるいは背後に配置される。ターゲット面の前に配置されると、操縦磁場線は、鈍角でターゲット面と交わり、鋭角法則の運動制限効果を未然に防ぎ、アークスポットがターゲット面の大領域を越えて移動するのを許容し、従って、さらに浸食ゾーンのサイズが増加する。
【0025】
ターゲット面の前に配置される操縦導体は、プラズマを閉じ込め且つ基板方向に導く焦点合わせ導体としても提供され得る。これらの実施形態において、カソード板の長側面に沿って配置された対向する操縦/焦点合わせ導体は、プラズマが基板を向いて流れる磁気経路を生成する磁気尖端を生成する。追加的な焦点合わせ導体は、プラズマダクトの下流側に沿って配置され、好ましくは、プラズマダクトに沿って連続的な磁気壁を生成すべく、プラズマダクト内で重なる磁場を備える。
【0026】
一つの操縦導体を流れる電流の増加は、導体によって生成される磁場の、カソード板の反対側の側面に沿う操縦導体の磁場の強度に対する強度を増やし、カソード板の反対側の側面の横方向での磁場をシフトする。操縦導体の電流の選択的な不均衡は、焦点合わせ導体の磁気的影響を補正し得るし、望むなら、ターゲット面のより均一な浸食と、基板を均一に被膜形成するのに十分な濃度でカソード蒸発が分散される被膜形成チャンバー内の広領域とを提供するように、浸食ゾーンの有効な幅を増大させ得る。
【0027】
さらなる実施形態において、操縦導体のグループは、カソード板の対向する側面に沿って配置される。選択的に各グループの一つの導体に流れる電流を適用することにより、アークスポットの経路は、作動中の操縦導体によって画定される浸食溝へシフトする。
【0028】
本発明は、カソードスポットが、望ましい浸食ゾーンの外側のターゲット蒸発面の選択領域内に移動するのを抑制する手段をさらに提供する。本発明は、ターゲット蒸発面の一つ以上の選択領域を覆うように位置する浮動電位でのシールドであって、シールドされた領域内にアークスポットが形成あるいは移動するのを防止するシールドを提供することによって、これを達成する。一つの好ましい実施形態において、シールドは、アノードの近傍におけるターゲット面の領域の上であって、ターゲット面から離間した位置に直ちに位置決めされる。蒸発ゾーンは、シールドを取り囲むターゲット面の領域に抑制され、カソード蒸発の蒸着からアノードを保護し、被膜形成されるべき基板の上にカソード蒸発のより好ましい分布を提供し、その結果、より大きい被膜形成領域を覆う均一な被膜となる。
【0029】
シールドは、負導体がカソードを横切ってアノードに対する電圧降下が最も低くなるどんな領域からもアークスポットを離して維持するように用いられ得る。大きなアノードあるいは複数のアノードが提供されるところで、シールドは、アノード近傍に位置するカソードの領域にアークスポットが移動するのを抑制し、蒸発材料の多くは、基板に向かって流れるというよりもむしろ、アノードによって捕捉される。
【0030】
さらに、シールドの存在は、カソード板のターゲット蒸発面が、被膜材料と、他の材料、例えば、望ましい浸食ゾーンにおけるチタンやプラチナといった高価な材料や、浸食ゾーンの外側でのスチールといった安価な材料との合成から構成されるのを許容する。カソードスポットの形成及びそこでの運動を防止すると共に、被膜形成の汚染を防止して、高価な被膜材料の利用最適化を図るため、ターゲット面のスチール部分は、本発明の浮動シールドによってシールドされる。
【0031】
磁気操縦システムを利用するアーク被膜形成装置において、横磁界が低い領域は、それらの領域へのアークスポットの移動を排除し且つ望ましい浸食パターンを生成するために、同じ方法でシールドされ得る。本発明のこの実施形態において、ターゲットは、参考文献として引用される1988年2月9日に発行された米国特許第4,724,058号(モーリソン)において記述されるマグネトロンタイプ磁気システムの極の上に置かれる。ターゲットカソードの中心部分に位置する蒸発面の領域であって、磁場の接線成分がアークスポットを閉じ込めるのにはあまりにも弱い領域は、マグネトロンによって生成される磁場間に生成される停滞領域内にアークスポットが移動するのを防止する浮動シールドによってシールドされる。
【0032】
本発明は、被膜形成チャンバーの対向する側面に生成される磁場間にプラズマ流を閉じ込める磁気焦点合わせシステムもまた提供する。これは、速すぎる蒸着を回避するために、プラズマがハウジングの表面と接触するのを防止し、そして、基板ホルダーの近傍でのプラズマ濃度を増加させる。
【0033】
さらなる実施形態において、プラズマ焦点合わせシステムは、カソードの作用軸から離れてプラズマ流を偏向し、且つ汚染物質を構成するプラズマの中性要素を取り除くために、用いられ得る。この実施形態において、プラズマ焦点合わせコイルは、基板ホルダーに向かう曲線経路に沿ってプラズマ流を偏向すべく、カソードの作用軸に対して非対称に配置される。
【0034】
このように、本発明は、電源の陰極に接続された対向する長側面を有し、蒸発面あるいはスパッタリング面あるいはその両方を含むターゲット面を有する少なくとも一つの長方形カソード板と、ターゲット面に通じる被膜形成チャンバーと、被膜形成チャンバー内の基板ホルダーと、電源の陽極に接続された、ターゲット面から離間する少なくとも一つのアノードと、少なくとも一つのカソード板の対向する長側面に沿って配置された少なくとも第1及び第2の導体を含み、第1の導体が第2の導体における電流の方向と反対側の方向で電流を流し、第1及び第2の導体のそれぞれがターゲット面の前及び近傍に配置されて、生成される磁場がターゲット面からの真空プラズマ流を基板ホルダーに向けて焦点合わせし、第1の導体が第2の操縦導体と電気的に独立している磁気偏向システムとを含み、第1の導体を流れる電流のレベルを第2の導体に対して変化させることにより、真空プラズマ流が被膜形成チャンバーに向かってシフトするような真空アーク被膜形成装置を提供する。
【0035】
本発明は、電源の陰極に接続された対向する長側面を有する少なくとも一つの長方形カソード板であって、蒸発面あるいはスパッタリング面あるいはその両方を含むターゲット面を有するカソード板、及び少なくとも一つのカソード板の背後に配置された磁石セットを含み、前記ターゲット面の上に出る磁場線を有するアーチ形磁場を生成する少なくとも一つのマグネトロンアーク源と、アノードと、ターゲット面に通じる被膜形成チャンバー及びハウジングと、被膜形成チャンバー内の基板ホルダーと、少なくとも一つのカソード板及び被膜形成チャンバー間に配置され、カソード板が基板ホルダーとの光学配置の外方に位置するプラズマガイドと、プラズマをアーチ形マグネトロン磁場から引き出して被膜形成チャンバーに向かわせるよう、少なくとも一つのカソード板の長側面に沿ってターゲット面の前で集中する焦点合わせ磁場線の半尖端構造を生成するために、少なくとも一つのカソード板の長側面の前方であって且つ該カソード板の長側面と平行に配置される第1の焦点合わせ導体セットとを含む真空アーク被膜形成装置をさらに提供する。
【0036】
本発明は、電源の陰極に接続された対向する長側面を有する少なくとも一つの長方形カソード板であって、蒸発面あるいはスパッタリング面あるいはその両方を含むターゲット面を有するカソード板、及び少なくとも一つのカソード板の背後に配置された磁石セットを含み、前記ターゲット面の上に出る磁場線を有するアーチ形磁場を生成する少なくとも一つのマグネトロンアーク源と、アノードと、ターゲット面に通じる被膜形成チャンバーと、被膜形成チャンバー内の基板ホルダーと、少なくとも一つのカソード板及び被膜形成チャンバー間に配置されるプラズマガイドと、基板ホルダーとの光学配置の外方であって、少なくとも一つのマグネトロンアーク源と近接し、少なくとも一つのカソード板がプラズマガイド内に配置されるフィルターカソードアーク源であって、マグネトロン磁場のN極がフィルターアーク源の出口に位置すると共に、マグネトロン磁場のS極がマグネトロンに対して中心に位置し、あるいは、マグネトロン磁場のS極がフィルターアーク源の出口に位置すると共に、マグネトロン磁場のN極がマグネトロンに対して中心に位置し、それにより、磁場線がフィルターアーク源から出て蒸発面に到達する少なくとも一つのフィルターカソードアーク源と、マグネトロンアーク源をフィルターアーク源に磁気的に接続し、それにより、プラズマをマグネトロン及びフィルターカソードアーク源から引き出して被膜形成チャンバーに向かわせるよう、焦点合わせ磁場を生成するために、ターゲット面の長側面の前方であって且つ該ターゲット面の長側面と平行に配置される焦点合わせ導体セットとを含む真空アーク被膜形成装置をさらに提供する。
【0037】
本発明は、電源の陰極に接続された対向する長側面を有し、蒸発面あるいはスパッタリング面あるいはその両方を含むターゲット面を有する少なくとも一つのマグネトロンアーク源と、アノードと、基板ホルダーを含むターゲット面に通じる被膜形成チャンバーとを含む真空アーク被膜形成装置におけるプラズマ流の制御方法であって、a.プラズマを生成するためにターゲット面に少なくとも一つのカソードスポットを生成するステップ、
b.偏向磁場線を有する偏向磁場を生成し、前記少なくとも一つのマグネトロンアーク源によって生成されるマグネトロン磁場線を重ね、偏向磁場線及びマグネトロン磁場線が同じ横方向を有するステップを含むプラズマ流の制御方法をさらに提供する。
【0038】
本発明の方法のさらなる目的は、ターゲット面の対向する側面上の偏向導体を流れる電流が独立して制御されることである。
【0039】
さらに本発明の目的及び実施形態、及び本発明の方法を実施する装置は、以下の詳細な記述で明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は、参考文献として引用される米国特許第4,724,058号(モーリソン)に記述及び図示されるタイプである従来の広領域長方形カソード真空アークプラズマ源を示す。装置10は、透磁性材料からなる制限体16によって囲まれる蒸発面14を含むターゲット面を有するカソード板12を含む。参考文献として引用される1996年10月24日に発行された米国特許第5,587,207号(ゴロコフスキー)に記述されるように、金属あるいは非金属のコーティング材料からなるターゲット面14は、アノード15と対向配置される。
【0041】
カソード12及びアノード15間に供給される電流は、ターゲット面14にアークスポットを生成するアークを生成する。従来の装置において、カソードスポットの走査パターンは、カソード12の背後に配置された閉ループ磁場源18によって制御される。磁場源18は、式Vcs=−c[Ias(Bt)](Vcsは、アークスポットの速度、Iasは、アークスポット電流、Btは、横断する磁場強度、cは、ターゲット面14の材料係数)に従い、アークスポットを後退移動させるターゲット面14を超えて反対方向に磁場19a,19bを確立する。このように、アークスポットは、磁場源の長さに従うカソード板での後退経路をトレースする。
【0042】
磁場源18によって生成される静的な磁場内に捕らえられれば、カソードスポットは、磁場線20の頂部に向かって導かれ、磁場の接線成分が最大となる部分は、細い蒸発溝14aに沿ってターゲット面14に蒸発を引き起こす。さらには、反対側に位置する磁場線19a,19bは、カスケードスポットが長期間安定し且つ残る停滞ゾーン22を生成する。これらの両効果は、ターゲット面14の利用効率が低いという結果になる。従って、米国特許第4,724,058号に記述される装置において、磁場は、被膜形成中、断続的にのみ作用し、アークスポットは、おおよそランダムで走査される。カスケードスポットは、大部分が自己操縦となるので、磁場は、プラズマ焦点合わせのために使用不可である。
【0043】
図2は、本発明によるカソードスポット操縦システム60の好ましい実施形態を示す。図2に示される実施形態において、操縦システム60は、カスケード板32の背後(言い換えれば、ターゲット蒸発面34と反対側)に配置され、長側面32a,32bと短側面32c,32dを有する。操縦システム60は、図示の方向に供給される電流ILSを有するカソード板32の長側面32a,32bと平行に配置されるそれぞれ直線導体62,64と、図示の方向に供給される電流ISSを有するカソード板32の短側面32c,32dと平行に配置されるそれぞれ直線導体66,68とを含む。導体62,64は、ターゲット面34の近傍においてカソード板の背後に配置されるので、生成される磁場は、それによってターゲット面34を横切り、アークスポットの形成及び動きに影響を与える。操縦導体62,64,66,68は、以下に記述する図4〜6に示される実施形態と同様、選択的にカソード板の前に配置される。何れの場合にも、操縦磁場源60は、ターゲット面34に沿った浸食ゾーン70を画定する磁場を生成する。
【0044】
直線導体62,64,66,68によって生成される磁場の配置及び極性は、図2において磁場線によって示される。ターゲット面34の上に出る磁場線は、アーチ形であり、反対方向に位置するカソード32の反対側である。浸食ゾーン70内を移動するアークスポットは、アーチ形の磁場線の頂部に向かって引き付けられ、ターゲット面34の背後に出る磁場の接線成分が最大となる。向かい合う導体、例えば直線導体62,64に流れる電流が等しいか均衡している(即ち、I1=I2)と、アークスポットは、図2aに示されるように、カソード板32の長手中心で左右対称となる磁場線の頂部近傍の浸食ゾーン70を大部分閉じ込める細長い浸食溝に沿って移動する。
【0045】
本発明の一つの目的によれば、一つの操縦導体の、カソード板32の反対側の操縦導体における電流に対する、電流を増やすことによって、磁場は、不均衡となり、弱い磁場を備えるカソード32の側面の磁場線は、強い磁場を備えるカソード32の側面に向かってシフトする。好ましい実施形態において、各直線導体62,64,66,68は、このように独立しており、個別に制御され得る。
【0046】
例えば、図2bにおいて、操縦導体62における電流は、操縦導体64における電流に対して増加しており、I1<I2である。生成される磁場の強度が不均衡となる結果は、導体64によって生成される磁場を歪め、その磁場線を導体62に向かってシフトさせる。導体64によって生成され、横断する磁場の接線成分が最大となる磁場は、側面32aから離れてカソード32の中心に向かってシフトされ、従って、アークスポットは、カソード32の中心により近づく経路をトレースする。導体62,64における電流を不均衡とすることによって、導体64は、強い磁場及びI1>I2を生成し、図2cに示すように、アークスポットの経路は、側面32bから離れてカソードの中心に向かうようシフトする。
【0047】
不均衡の度合い、即ち、導体62,64間の電流相違は、磁場シフトの程度を決定する。選択される電流レベル及びアークスポットの動きと一致する適正な時間間隔で導体62,64を不均衡とすることによって、複数のアークスポット経路が生成される。これは、ターゲット面の利用効率を実質的に増加させる。
【0048】
導体66,68を流れる電流を不均衡とすることによって、似たような効果がカソード32の短側面32c,32dに沿って達成される。アークスポット経路は、弱い磁場を備える側面に沿ってカソード32の中心に向かってシフトする。しかしながら、導体62,64によって長側面32a,32bに沿って生成される磁場が相対的に接近するほどにカソード板32が幅狭であれば、短側面32c,32dに沿った導体66,68が不必要となることは理解できるであろう。アークスポットは、長磁場間の後方及び前方に移動する。あるいは、アークスポットが長側面32a又は32bの一つに沿う経路の終端に到達すると、磁場は、選択的に減少され得るか、側面に沿うようにして一時的に無くなり、アークスポットは、磁場が強くなる他の側面32b又は32aに移動する。
【0049】
ターゲット面34と平行であり且つそれぞれ各操縦導体62,64,66,68のための回路を完成させる閉鎖導体62a,64a,66a,68aが、カソード板32及びハウジング38から十分に離れて支持される。これは、閉鎖導体62b,64b,66b,68b,72a,72bによって生成される磁場がアークスポット形成やプラズマ流パターンに影響を与えないことを保証する。
【0050】
作動中、アノード及びカソード板間の電流が供給されることによりアークが生成されると、ターゲット面34上に生成されるアークスポットは、操縦導体62,64,66,68によって生成される操縦磁場内の浸食溝に収まる。アークスポットは、浸食ゾーン70に沿って後退移動を起こす。磁界は、コントロールスイッチ(不図示)により定期的に不均衡となり、生成される磁場の強度が増すように導体62を流れる電流を断続的に増し、アークスポット経路を側面32aから離れるようにシフトすると共に、生成される磁場の強度が増すように導体64を流れる電流を選択的に増し、アークスポット経路を側面34aから離れるようにシフトする。これは、ターゲット面の利用効率を高めるべく浸食ゾーン70を効果的に広げ、被膜形成の質及びカソード32の耐久性を改善する。
【0051】
この実施形態の変形例において、図3に示す如く、複数の操縦導体62b,62c,62d,64b,64c,64dがカソード板32の長側面に沿ってそれぞれ提供される。この変形例において、操縦導体62b,62c,62d,64b,64c,64dは、選択的に作動又は調整されるので、現在作動中の一方の側面の操縦導体62b,62c,62d及び他方の側面の操縦導体64b,64c,64dの上方に主として位置する浸食溝は、浸食ゾーン70の幅を広げるようカソード板32を越えて幅方向にシフトされ得る。
【0052】
図3の実施形態において、多くの操縦導体が提供されても、カソード板32のサイズは実際的に許容される。カソードスポットが捕らわれる停滞ゾーンを生成するのを避けるために、一つの操縦導体62b,62c,62d,64b,64c,64dが特定時間にカソード板32に各側面上で作動される。しかしながら、カソード32の各側面の導体が互いに接近していると、カソード32の各側面の同時に存在する一つ以上の導体は、より多くの浸食パターンが適切に制御されるのを許容し、さらにターゲット面34の利用効率を高めることが可能となる。
【0053】
この実施形態の作動中、アノード及びカソード板間に電流が供給されることによりアークが生成されると、ターゲット面34上に生成されるアークスポットは、作動中の操縦導体、例えば操縦導体62b,64bによって生成される操縦磁場内の浸食溝に収まる。磁場は、長側面32aの導体62b,62c,62d間電流と、短側面32bの導体64b,64c,64d間電流とを切り替えるコントロールスイッチ(不図示)によって定期的にシフトされ、アークスポット経路を作動中の操縦導体の近傍にシフトさせる。これは、ターゲット面の利用効率を高めるべく浸食ゾーン70を広げ、被膜形成の質及びカソード32の耐久性を改善する。
【0054】
これらの各実施形態において、浸食ゾーン70において望ましい浸食パターンを達成するために、作動中の操縦導体は、他の導体が作動中であれば、完全に作動停止される必要はなく、あるいは、他の導体が作動中であれば、十分に作動する必要がないことは理解できるであろう。電流は、同じ結果が得られるよう、各操縦導体間で適宜変更され得る。
【0055】
図4〜6は、アークスポット遮蔽を提供する本発明のさらなる実施形態を示す。アーク被膜形成装置30は、ターゲット蒸発面34と、該ターゲットホルダー34及びハウジング38によって画定される被膜形成チャンバー内のカソードホルダー42に取り付けられた支持板36とを含む長方形カソード板32が提供される。好ましい実施形態において、適切な金属あるいは非金属のコーティング材料からなるターゲット面14は、長側面32a,32bと短側面32c,32dとを有し、支持板36からカソードホルダー42を引き離す誘電スペーサ39であって、隙間40を以てハウジング38と離間する誘電スペーサ39によってハウジング38から電気的に絶縁される。ターゲット面34は、異なる材料、例えば、TiAlN、TiCrNといった被膜形成を行うための複合金属プラズマを生成するために浸食ゾーン70に沿ったモザイク方法で一体化されるチタン及びアルミニウム、あるいはチタン及びクロムから構成される。
【0056】
カソード板32は、水といったクーラントを循環させるためのクーラントチャンバー44を生成すべく、カソードホルダー42から離間しており、アーク電源(不図示)の陰極に接続される。旧来の高電圧パルス点火器が、ハウジング38の壁を横切る誘電スリーブを介して取り付けられる。
【0057】
取付アッセンブリ51によってハウジング38から吊り下げられるものは、カソード板32から離間されると共に、水といったクーラントの循環のためのクーラントチャンネル53が提供されるアノードホルダー52にそれぞれ取り付けられる複数の直線アノード50である。アノード50は、アーク電源46の陽極に接続される。好ましい実施形態において、アノード50は、有効なアノード表面積を増やすために、アノード本体50bに対して直交的に配置される一連のバッフルあるいはフィン50aをそれぞれ含む。アノード面への蒸発蒸着の機会を減らすと共に、拡散損失を低減するために、フィン50a及びアノード本体50bは、プラズマ流の方向と平行な方向、即ち、以下に記述されるように、アノード50の近傍における磁場を位置合わせする方向と平行な方向にそれぞれ適切に位置決めされる。
【0058】
アークスポット形成は、カソード板32の長側面32a,32bに沿ってそれぞれ配置される直線導体62,64と、カソード板32の短側面32c,32dに沿ってそれぞれ配置される直線導体66,68とを含む操縦磁場源60によって生成される操縦磁場によって閉じ込められる。この実施形態において、導体66,68は、これまでの実施形態と同様、カソード板32の背後に配置されるが、導体62,64は、カソード板32の前方に配置される。導体62,64は、ターゲット面34の近傍に配置されるので、生成される磁場は、アークスポットの形成及び動きに影響を与え、この実施形態における操縦システム60の作動は、図2の実施形態について説明したのと実質的に同じである。
【0059】
しかしながら、図4〜6の実施形態において、操縦磁場は、図2の実施形態のようにアークスポットを閉じ込められない。なぜならば、磁場線は、アーチ形ではなく、図5に示される磁場線によって明らかなように、一つの側面においてのみターゲット面34を横切るからである。このように、鋭角方式のアークスポットは、カソード板32の中心領域に向かい、磁場線がターゲット面34を横切る形成鋭角から離れるように導かれる。従って、アークスポットは、この実施形態において利用可能な広い移動範囲を有する。さらには、操縦導体がカソード板32の背後に位置され、ターゲット面34の上方に出る操縦磁場の部分が閉鎖される(即ち、両側面に沿ってターゲット面34を横切る)実施形態においては、磁場がアークスポットだけでなく、ターゲット面34が蒸発するように生成されるプラズマをも閉じ込める。図5に示す如く、ターゲット面34の前に導体62,64を配置することによって、カソード蒸発は、基板ホルダー6への開放経路を有する。
【0060】
このように、アークスポットは、両側面32a,32bからカソード板32の中心領域に向かって案内される。カソード板32の中心領域における停滞ゾーンの生成を避けるため、浮動電位に維持され、絶縁され、ターゲット蒸発面34から離間され、カソード板12の中心領域におけるどんなカソードスポットの活動も不可能にする導電シールド54が各アノードホルダー52に取り付けられる。好ましくは、シールド54は、2〜6mmの間でターゲット面34から離間される。2mmよりも小さければ、シールド54を通ってアークが短絡を引き起こす可能性があり、6mmよりも大きければ、アークがシールド54のエッジにクリープを引き起こす可能性があるからである。このように、シールド54は、アノード50の陰を取り囲む浸食ゾーン70へのアークスポット形成を閉じ込めつつ、アノード50の陰になっているカソード32の蒸発を防止する。これは、カソード蒸発の蒸着からアノード50を保護し、基板ホルダー6に取り付けられる基板(不図示)上への被膜形成材料のより好ましい分布を提供する。
【0061】
少なくとも一つ以上の浮動シールド54は、アークスポットがシールドされた領域へ移動するのを防止するため、ターゲット蒸発面34の何れか選択された部分を越えて位置される。実施形態において、アノード50の近傍におけるターゲット面34の直上に位置するシールド54は、アークスポットがシールド54を取り囲むターゲット面34の領域に形成されたり、移動するのを防止する。これは、操縦導体がカソード板32の前に配置される実施形態での優位点である。しかしながら、浮動シールド54は、アークスポットがカソード板32の望ましい領域から離れるのを維持するために用いられ得る。例えば、浮動シールド54は、一つ以上の材料によって構成されるカソード板のターゲット蒸発面を許容し、この場合、タングステンやプラチナといった高価な被膜形成材料は、シールド54近傍の領域から除外され得るし、アークスポットは、その領域に形成されたり、移動しないので、被膜が汚されるおそれはない。
【0062】
作動中、電流がアノード50とカソード板32との間に供給され、点火器48に印加される高パルス電圧がカソード板32のターゲット蒸発面34上に真空アークを起こす。導体62,64によって生成される操縦磁場間に画定されると共に、導電シールド54の背後にターゲット面34がシールドされる浸食ゾーン70に、アークスポットが収められる。アークスポットは、ターゲット面34の一方の長側面32a,32bに沿った後退移動を続け、カソード板32の背後に配置された操縦導体66,68によって生成される磁場の頂部の近傍を進む他方の長側面32b,32aへ移動する。ターゲット面34が蒸発するので、プラズマは、図5の矢印に示すように、導体62,64によって生成される磁場間に案内されると共に、基板ホルダー6へ向かって流れる。
【0063】
本発明の好ましい実施形態は、磁気操縦システムを採用するため、基板ホルダー6に向かってカソード蒸発を案内するためのプラズマ焦点合わせシステムを使用することが可能である。磁場は、プラズマに対して大いに不透明なバリアを形成する。このように、磁場の焦点合わせは、磁場間のプラズマ流領域に対するプラズマを閉じ込めるべくハウジング38に生成され、そして、プラズマ流領域における基板ホルダー6の位置設定は、基板でのプラズマ濃度を高め、被膜形成の質を改善する。
【0064】
図4〜6の実施形態において、カソード板32の前に配置される導体62,64は、プラズマ焦点合わせシステム80における焦点合わせ導体としても供給することができる。プラズマ流経路は、図5の磁場線によって示されるように、導体62,64によって生成される磁場間に画定されるので、プラズマは、ハウジング38の中心領域に沿って基板ホルダー6に案内される。この実施形態において、長側面操縦導体62,64によって引き起こされる操縦磁場における歪みを補正し、浸食ゾーン70におけるアークスポットを適正に位置設定するために、それぞれ磁場の強度を独立して変化させることができる分離電源を備える短側面操縦導体66,68を提供することは、優位点である。
【0065】
図6bに示す実施形態において、操縦導体66,68の複数組が、複数のアノード50に対応して、一つのカソード板32の背後に提供される。この実施形態において、二つの中間導体6,68がアークスポットがカソード板32の中心を通って移動するのを防止するため、分離した浸食溝は、各アノード50に提供され、それぞれカソード板32の短側面と平行な操縦導体66,68の各組と関連付けられる。
【0066】
プラズマ流を焦点合わせするために、追加的な焦点合わせ導体がプラズマ流経路を長くするようにして直列で提供される。例えば、図7a〜7dは、複数の直線アノード50を有する本発明の実施形態であって、プラズマ焦点合わせ導体82,84及び導体92,94のグループがハウジング38の反対側であって、各グループ内に、次第にカソード32から離れるように配置される本発明の実施形態を示す。これは、ハウジング38の反対側に生成される磁場間にプラズマ閉じ込めゾーンを生成し、ターゲット面34と基板ホルダー6との間のプラズマ流経路を画定する。
【0067】
焦点合わせ導体82,84,92,94は、アークスポットの形成あるいは移動に影響を与えるよう、好ましくはカソード板32から十分離れて配置される。好ましくは、各グループ82,84あるいは92,94における焦点合わせ導体は、接近した状態での離間関係で配置されるので、それぞれ磁場は、プラズマ流を閉じ込め且つプラズマ流からハウジング38の壁を磁気的に隔離する連続的な磁気経路を生成する。他方、プラズマは、ハウジング38の壁に捕らえられる。操縦導体の場合のように、焦点合わせ導体82,84の閉鎖導体82a,84aと、焦点合わせ導体92,94の閉鎖導体92a,94aは、ハウジング38(プラズマダクト)の領域に生成される磁場の効果が解消されるのを排除するために、ハウジング38及びカソード板32から十分離れて維持される。この実施形態において、焦点合わせ導体92,94によって引き起こされる操縦磁場における歪みを補正するために、分離した電源を備える短側面操縦導体66,68を提供することは、優位点である。
【0068】
この実施形態の作動中、ターゲット面34が蒸発するので、プラズマは、焦点合わせ導体82,84,92,94によって生成される焦点合わせ磁場間に濃縮される。従って、プラズマは、ハウジング38に接触することなく基板ホルダー6に向かって流れる。
【0069】
焦点合わせ導体82,84,92,94は、好ましくは独立して電力供給されるので、各導体82,84,92,94によって生成される磁場の強度は、他と独立して変化させられ得る。閉ループ焦点合わせ導体は、ハウジング38の周りに配置され得るが、図7a,7bに示す好ましい実施形態においては、焦点合わせ導体82,92、焦点合わせ導体84,94のそれぞれ独立した組は、カソード32の長側面32a,32bと平行にして、ハウジング38の反対側に配置される。閉鎖導体82a,84a,92a,94aは、ハウジング38及びカソード板32から十分に離れて維持される。
【0070】
図8に示すさらなる実施形態において、対向する焦点合わせ導体82,92、焦点合わせ導体84,94は、カソード32の短側面32c,32dと平行に配置される閉鎖導体82a,92a、閉鎖導体84a,94aを備える、カソード32の長側面32a,32bと平行に配置される焦点合わせ導体82,92、焦点合わせ導体84,94を備える同じ閉ループ導体から形成される。
【0071】
焦点合わせ導体82,84,92,94を独立して電源に接続することにより、対向する焦点合わせ導体82,92及び/又は焦点合わせ導体84,94を流れる電流を変化させてプラズマ流をラスターすることも可能である。これは、プラズマをより均一に分布させ、且つより均一なプラズマ混合を生成するのに役立つ。被膜形成チャンバー内において、焦点合わせ導体82,84,92,94は、基板ホルダー6に向かってプラズマを偏向させるよう、独立に作動させることができる。
【0072】
図8は、閉鎖導体82a,92aと並んで配置されるが、反対向けに配置される閉ループコイルを含む中立化導体140を用いて閉鎖導体82a,92aの磁気的影響を低減するモードを示す。作動される場合、中立化導体140は、プラズマ流上の閉鎖導体82a,92aの影響を取り除く。中立化導体140は、ターゲット32の短側面32c,32dと平行なハウジング38の壁の近傍において僅かにプラズマ流をラスターすることもできる。
【0073】
全ての実施形態において、閉鎖導体82a,84a,92a,94aは、ハウジング38の領域(特に、ハウジング38のプラズマダクト領域)において生成される磁場の効果が無くならないよう、ハウジング38及びカソード板32から十分離れて維持される。
【0074】
本発明のプラズマ焦点合わせシステムは、図14a〜14dに示される、ターゲット面がスパッタリング面34である長方形マグネトロンスパッタ源によって生成される真空プラズマ流を制御するためにも用いられ得る。この実施形態において、ターゲット板32の長側面と平行な焦点合わせ導体62,64は、ターゲット板32の前に配置され、一方、閉鎖導体62a,64aは、図14aに示すようにターゲット32の近くに配置される。これは、ターゲット板32の前に濃縮される焦点合わせ磁場線の半尖端構造を生成する。閉ループマグネトロン放電は、電源430がスイッチ440により入れられると、ターゲット板32の作動面の近傍に生成される。放電電流は、概略的に図14c,14dに示される、カソードとして提供されるターゲット板32と取り囲みアノード150との間に導かれる。真空チャンバーは、任意的にアノードとして提供され得る。マグネトロン磁場は、端磁石403、中心磁石402及び終端磁石407の組によって、ターゲット板32のターゲット面34の近傍に生成される。全ての磁石は、可動なマグネット保持板401に適切に組み込まれる。
【0075】
図14a〜14dの実施形態の作動中、スパッタリングガスとしてのアルゴンがガス出口(不図示)を通って真空チャンバー内(好ましくは、マグネトロンターゲット32の近傍)に吹き込まれる。高電圧低電流電源430は、マグネトロンターゲット32に高負電圧を供給するように作動される。マグネトロンプラズマ放電は、0.5mtorr〜0.5torrの範囲の圧力で発生する。マグネトロンプラズマ放電は、図14bによく示されるように、端磁石の組403、中心磁石402及び終端磁石407間に形成される隙間に沿って長方形のプラズマリングを形成する、マグネトロンターゲットカソード板32の近傍におけるアーチ形のマグネトロン磁場によって大きく閉じ込められる。浸食ゾーンは、プラズマ濃度が最大となるマグネトロン閉ループ放電の経路に沿ったマグネトロンターゲット32の表面でのプラズマスパッタリングによって形成される。焦点合わせ導体62,64によって生成される焦点合わせ磁場は、マグネトロン放電から真空プラズマを引き出し且つ基板ホルダー6上の被膜形成されるべき基板に向かって焦点合わせさせる、マグネトロンターゲット32の前における集中半尖端磁場線を生成する。
【0076】
マグネトロンスパッタリング源は、その源がカソードアーク蒸発モードで用いられることを許容する高電流低電圧アーク電源435及びアーク点火器48を任意的に備え得る。ターゲット利用率を高めるため、マグネトロン磁石板401が、カソードターゲット32から離れて移動されるのを許容する可動シャフト410に取り付けられ得る。この場合、ターゲット32の長側面に沿って配列される電流導体64,62、ターゲット32の短側面に沿って配列される電流導体66,68は、カソードターゲット32の蒸発面上の浸食溝に沿ってアークスポットを操縦するために用いられる。
【0077】
本発明のプラズマ焦点合わせシステムは、焦点合わせ磁場によって影響を受けない中立要素(マクロ粒子、クラスター、中性原子)をプラズマから排除し且つさらに被膜形成の質を改善すべく、基板ホルダー6が図9の符号33で指示されるカソード板32の作用軸から隔てて配置されるのを許容するプラズマ偏向システム100としても用いられ得る。図9に示す如く、カソード板32の作用軸33に対して左右対称パターンとなる湾曲ハウジング38に沿って偏向導体86,87,88,96,97,98を配列することによって、プラズマは、基板ホルダー6に向かって偏向され、一方、プラズマの内部は、中立要素が偏向領域におけるプラズマから分離されるようにする。
【0078】
図9において、主真空プラズマ源は、(図9に示されるような)カソードアーク源、あるいはマグネトロン源であり得る。従って、この図9は、偏向導体86,96,88,98が如何にして真空プラズマ流を偏向し得るかを示す。
【0079】
従って、導体86,87,88,96,97,98は、偏向電磁気システムを形成する偏向導体のチェーンを生成する。先に述べた実施形態におけるように、閉鎖導体86a,87a,88a,96a,97a,98aは、ハウジング38(特に、プラズマダクト領域)及びカソード板32から十分離れて維持される。閉鎖導体86a,87a,88a,96a,97a,98aは、例えば、ハウジング38のレベルのかなり上あるいはかなり下で閉鎖導体86a,87a,88a,96a,97a,98aを配置することによって、偏向システムの偏向導体86,87,88,96,97,98と同様、ハウジング38の同じ側面に配置される。選択的に、閉鎖導体86a,87a,88a,96a,97a,98aは、ハウジング38の反対側、しかし、そこから隔てて配置され、その場合、ハウジング38の(横の)幅をHとすると、ハウジングの反対側に沿って配置される閉鎖導体及び焦点合わせ導体(例えば、焦点合わせ導体86,87,88及び閉鎖導体96a,97a,98a)間の距離Sは、1.5H〜3Hの範囲であるのが好ましい。
【0080】
この実施形態の作動中、ターゲット面34が蒸発すると、プラズマは、導体62,64によって生成される磁場間に濃縮され、偏向導体86,87,88,96,97,98によって生成される磁場間で画定される偏向領域内に流れる。従って、プラズマは、偏向導体86,87,88,96,97,98の左右対称パターンと一致する流れ経路に沿って偏向され、ハウジング38と接触することなく基板ホルダー6に向かって流れる。プラズマは、磁場間に閉じ込められて残り、その結果、カソード板32の作用軸33から離れて偏向される。中立要素は、真っ直ぐな方向での移動を続け、カソード板32の作用軸33の近傍におけるハウジング38の内壁に収まり、一方、プラズマは、被膜形成チャンバー内のプラズマダクトに沿って基板ホルダー6への移動を続ける。
【0081】
図10aは、ハウジング38の対向端でカソードチャンバー内に配置されるカソード板32の組を提供し、平行なプラズマダクト31を通って基板ホルダー6と連絡を取り合う、本発明によるアーク被膜形成装置の好ましい実施形態を示す。上述の如く構成される内部直線アノード50は、各ターゲット面34の上に吊り下げられ、シールド54によって離間される。アノード50は、カソード板32及び基板ホルダー6間に画定されるプラズマダクト内に配置されるので、ここでは「内部」と定めている。
【0082】
さらなる内部アノードである、バッファ124を有する直線板122を含む偏向電極120は、二つのカソード板32間のほぼ中央にてプラズマダクト31に沿って配置される。バッファは、陰極表面積を増大し、効果的に内部アノードのチェーンとして機能し、アークスポットのよりよい安定性及び操縦を提供する。それらは、蒸発面34から出るマクロ粒子を捕捉するのにも提供される。先に述べた実施形態において、バッファ124は、拡散損失を低減すべく、磁場の方向とできるだけ平行に位置決めされる。この「分割」アノード120は、イオンを反発するのにも提供され、従って、基板ホルダー6に向かうプラズマ流を偏向する。
【0083】
この実施形態において、焦点合わせ導体82,84,92,94は、カソード板32の前の領域と、被膜形成チャンバーにおけるプラズマダクト31の出口との両方で、カソード板の長側面32a,32bと平行に配置される。焦点合わせ導体82,92,84,94間において、偏向導体86,96は、基板ホルダー6に向かってプラズマを偏向するために、プラズマダクト31が基板ホルダー6の軸に向かって折り返すハウジング38の部分、即ち、カソード板12を含むハウジング38の部分に近接して配置され、カソードチャンバーの軸に垂直に向く対向する磁気尖端を生成する。実施形態において示される閉鎖導体82a,84a,86a,92a,94a,96aは、カソード板32が焦点合わせ及び偏向導体82,84,86,92,94,96によって生成される磁気尖端内にのみ配置されることを保証するために、プラズマダクト31から隔てて配置されなければならず、そこで、陰極蒸発は、プラズマダクト31内に引き込まれ、ハウジング38の背壁に向かわない。選択的に、図9の実施形態におけるように、閉鎖導体82a,84a,86a,92a,94a,96aは、ハウジング38の反対側、しかしそれから隔てて配置される。
【0084】
図10aの実施形態は、基板ホルダー6の周囲に一つ以上の外部アノード130も提供する。アノード130は、プラズマダクト31の外側に配置されるので、ここでは、「外部」と定める。このように、外部アノード130は、プラズマを偏向しないが、その代わりに、ハウジング38の壁での拡散損失を防止すると共に、被膜形成効率を改善すべくコーティング材料のイオン化を引き延ばすために、イオンを反発する。そのような外部アノード130は、ハウジング38の望ましい部分に提供され得る。追加的に、被膜形成チャンバーそのもの、あるいはそれのある部分は、アノードとして提供されるよう、接地される。
【0085】
さらに、ハウジング38は、誘電スペーサ39によってカソード板32から絶縁されるので、ハウジング38は、図に示されるように浮動電位のままである。選択的に、アークがカソード32とハウジングとの間の隙間に移動するのを防止すべく、カソード32とハウジング38との間に浮動電位スクリーンやシールド(不図示)を提供することは、外部あるいは取り囲みアノード内にハウジング38を効果的に向ける。
【0086】
内部アノード32,120及び外部アノード130は、好ましくは電気的に絶縁されており、それぞれは、独立した機能のよりよい制御を許容する独立した電源が提供される。
【0087】
被膜形成チャンバーを介して基板ホルダー6を取り囲む補助アノード130へ自由に電流が流れるのを許容しつつ、プラズマダクト内でプラズマの金属蒸発要素を捕捉するように焦点合わせ導体82,84,92,94を個別に作動させることも可能である。この作動モードは、「プラズマ浸漬」モードであり、金属カソードアークプラズマ被膜形成の蒸着なしで、被膜形成チャンバーにおける高い程度のイオン化及びガスプラズマ環境の作動を提供する。プラズマ浸漬モードは、高速イオン洗浄、イオン窒素、イオン着床、アークプラズマ低圧CVD被膜形成プロセスといった、種々の異なるタイプのプラズマ処理をサポートする。例えば、特定の被膜形成プロセスの第1ステージは、イオン洗浄を要求する。カソードアーク源34は、カソードから基板ホルダー6を取り囲む外部アノード130に電流を引き出すため、強力なエミッタとして用いられ、高速イオン洗浄のためのプラズマ浸漬環境を提供する。効果的なイオンボンバードのために基板ホルダーで自己バイアス電位を提供するRFジェネレータと関連して、アルゴン、窒素、メタンなどがプラズマ生成ガスとして供給される。
【0088】
マグネトロンスパッタリングプラズマ源400は、図10bに示す如く、本発明の広領域フィルタープラズマ源の実施形態における主真空プラズマ源としても用いられ得る。この実施形態において、マグネトロン磁場は、カソードターゲット板32の背後に配置される磁石保持板401に取り付けられるマグネトロン磁石402,403の組によって生成される。マグネトロン磁場は、オーバーラップしなければならず、磁気導体82,84,92,94によって生成される焦点合わせ磁場と同じ方向で方向付けなければならない。これは、マグネトロン放電領域から電磁気真空プラズマフィルターチャンバー500のプラズマガイド部に向かって多量のマグネトロン金属スパッタリングプラズマを増加させるように引き出すことを許容する。混合真空ガスプラズマ流は、焦点合わせ導体82,84,92,94及び偏向導体86,96によって生成される曲線磁場に閉じ込められる。この実施形態において、マグネトロンターゲット32は、磁力線が分割アノード120に向かって濃縮されるプラズマガイドチャンバー500の側方で磁性半尖端領域に位置決めさえっる。これは、マグネトロン放電から引き出される全ての真空ガスプラズマが焦点合わせされ、基板ホルダー6の被膜されるべき基板に向かって方向付けられ、一方、小滴やマクロ粒子がプラズマ流から取り除かれ、バッファ124によって捕捉されることを保証する。
【0089】
補助アークカソード(不図示)は、被膜形成装置のどこかであって、マグネトロンターゲット32からの光学配列の外に組み込まれる。例えば、図10cは、補助カソード510とマグネトロンアノード150との間に補助アーク放電を確立するための、被膜形成チャンバーに組み込まれた熱イオン中空カソード510を示す。これは、マグネトロン放電プラズマのイオン化率を高めるという結果になる一方、被膜形成チャンバーにおけるプラズマ環境のガス要素のイオン化率をも高める。これは、低い作動圧力でのマグネトロンスパッタリングを提供し、イオン化及び真空ガスプラズマ環境の作動を増加させることによって被膜形成の質を改善し、一方、金属ガス真空プラズマ流から小滴、マクロ粒子及び中性クラスタを排除する。
【0090】
フィルター真空プラズマの実施形態は、任意的に、図10bに示す如く、主真空プラズマ源としてのマグネトロン源400及びカソードアーク源34を有し得る。この実施形態において、ターゲット32は、スイッチ445及びアーク点火器46を介してカソードターゲット板32に接続される高電流低電圧電源46を追加的に備える。マグネトロンの各側方で、高電圧低電流電源430がスイッチ440を介してターゲット板32に接続される。マグネトロン磁石セットは、好ましくは、磁石保持板401に取り付けられるシャフト410を用いることによってターゲット32から離れて移動され得る。
【0091】
この実施形態の作動中、フィルターマグネトロンスパッタリングモードにおいて、スパッタリングガスとしてのアルゴンが、フィルタープラズマアーク源装置の対向側で組み込まれる両マグネトロンターゲット板32の近傍におけるアルゴン吸気口(不図示)を通して供給される。サーメット被膜形成(TiN、TiC、TiCNなど)の蒸着のため、反応性ガス(窒素、アセチレン)が任意的に被膜形成チャンバー内に供給される。スイッチ445は、切断され、アーク電源46は、スイッチが切られる。スイッチ440は、マグネトロン電源430をターゲット板32に接続するために作動される。マグネトロンプラズマ放電は、マグネトロンターゲットカソード板32の近傍におけるアーチ形のマグネトロン磁場によって閉じ込められ、端磁石セット403、中心磁石セット402及び終端磁石(図10b、10cには図示しない)間の隙間に沿った概して長方形のプラズマリングを形成する。浸食ゾーンは、プラズマ濃度が最大となるマグネトロン閉ループ放電の経路に沿ってマグネトロンターゲット32の蒸発面をプラズマスパッタリングすることにより形成される。焦点合わせ導体82,84,92,94によって生成される焦点合わせ磁場は、マグネトロンターゲット32の前、即ちターゲット面の上に集中磁場線を生成し、マグネトロン放電から真空プラズマ流を引き出し、それを電磁気真空プラズマフィルターチャンバー500のプラズマガイド部に向かって焦点合わせする。この真空プラズマ流は、さらに集中半尖端磁場内に閉じ込められ、それを、被膜形成されるべき基板が基板ホルダー6に組み込まれる被膜形成チャンバーに向かって偏向する。プラズマガイドの出口に組み込まれる焦点合わせ導体82,84,92,94は、被膜形成されるべき基板に向かって真空プラズマを焦点合わせする。分割アノード122は、被膜形成チャンバーに向かうイオン軌道に効果的に変換しつつ、金属イオンを反発する。マクロ粒子及び中性真空原子は、バッファ124に捕捉され、分割アノード板120で取り込まれる。補助アーク放電が熱イオンカソード510とマグネトロンアノード150との間で作動すれば、イオン化率は、マグネトロンターゲット32の近傍にて増大する。それは、マグネトロンスパッタリングの生産性を高めると共に、マグネトロン放電の作動圧力を引き下げる。本発明の電磁気フィルターは、イオンと他の原子粒子との間の衝突の引き下げられた頻度による低圧力で高いコンダクタンスを有する。この結果、フィルター出口でのイオン流が高くなり、従って、フィルターマグネトロンスパッタリングプロセスの生産性が高くなる。
【0092】
フィルターカソードアーク蒸発モードにおいて、スイッチ440は、マグネトロン電源430との接続を絶つために開放され、その代わりに、カソードターゲット板32にアーク電源46を接続するスイッチ445が閉じられる。アーク電源46が入れられると、アーク点火器47がカソードターゲット板32の蒸発面でカソードアーク放電を起こさせる。反応性ガスは、蒸着サーメット被膜形成のために任意的に被膜形成チャンバーに供給され得る。マグネトロン磁石402,403は、磁石保持板401を支持するシャフト410によってターゲット板32の領域から離れるように移動される。カソードアークスポットは、ターゲット32の長端面と平行な磁気導体82,84,92,94によって操縦され、且つターゲット32の短側面と平行なコイル66,68によって独立的に操縦される。これは、最大限のターゲット利用率と、ターゲット板32の蒸発面の広浸食溝領域へのアークスポットの閉じ込めとを提供する。同時に、操縦/焦点合わせ導体82,84,92,94は、偏向導体86,96によって生成される半尖端磁場に向かってアーク真空プラズマを焦点合わせする。偏向されたプラズマ流は、プラズマガイドチャンバーの出口に組み込まれる焦点合わせ導体82,84,92,94によって、基板ホルダー6に組み込まれる被膜形成されるべき基板に向かい、さらに焦点合わせされる。補助アノード130は、真空ガス流のガス要素のイオン化及び作動率を改善するために用いられ得る。図7c、7dは、本発明のさらなる実施形態を示し、図7a、7bと類似はするが、一つの長方形カソードアーク源ユニットに組み込まれた複数の長方形カソードターゲットを提供する。ハウジング38は、水冷ターゲットホルダー及び真空アーク点火器170からなる二つの長方形カソードアッセンブリを含む。各カソードターゲットアッセンブリは、カソードアークスポットがカソードアッセンブリの側面に向かって移動するのを防止する絶縁シールド140によって取り囲まれる。中央アノード50は、カソードターゲット板32の前に任意的に組み込まれ得る。絶縁シールド54は、板面34に接する操縦磁場要素が浸食溝200内にアークスポットを閉じ込めるのに十分でないターゲットの中央領域に向かってカソードアークスポットが移動するのを防止すべく、ターゲット板32の中央領域に組み込まれ得る。焦点合わせ磁石コイル84と62の二つの組は、ターゲット32の長側面に沿ってカソードアークスポットを操縦するために用いられ、一方、同時に、主真空チャンバーに組み込まれた基板ホルダー6に向かってプラズマ流を焦点合わせする。磁石コイル66,68の他の組は、各カソードアッセンブリの後方に配置される。直線導体66,68は、カソードターゲット32の短側面32c,32dと平行であり、ターゲット面34の短側面に沿ったカソードアークスポットの操縦を提供する。導体66,68は、対向極性で組み込まれるべきであり、浸食溝200に沿ってカソードアークスポットを操縦する近接の焦点合わせ導体62,84と同じ方向で、カソードアークスポットの操縦を提供する。取り囲みアノード150は、任意的に区分けあるいは分割され得て、ターゲット板32の短側面32c,32d(図7dに示す実施形態のアノード組151,151a)と、カソードターゲット32の長側面32a,32b(図7dに示す実施形態のアノード組152,152a)との両近傍に位置するカソードアークスポットのための独立したアノード電流回路を提供する。これは、また、カソードアークスポットがターゲット面34の短側面又は長側面の近傍で停滞するのを許容する。カソードアークスポットがts〜ls/vs(lsは、カソードターゲット板34の短側面又は長側面の長さ、vsは、操縦磁場の影響下でのカソードアークスポットの移動速度)よりも長い時間、ターゲット面34の短側面又は長側面のどちらか近傍に位置決めされるやいなや、点火器170によるアークの再発生によって続けられるアークスポットを排除すべく、アーク電流は止められ得る。周囲151,152及び中央50の両方を含む、アノードの区分けあるいは分割は、最適な分布アノード電流が浸食溝200の内側のアークスポットの最大限の操縦信頼性を提供することを許容する。
【0093】
選択的に、シールド(カソード板32の周囲のシールド140、蒸発面34の前の停滞ゾーンを覆うシールド54のどちらか)の代わりに、非常に低いカソードアークスポット維持性を有する材料によってカソード板32が取り囲まれ得るか、この材料がアークスポットが停滞するカソード板32の領域に挿入され得る。例えば、タングステン、モリブデン、窒化ホウ素ベースのセラミックなどが、アークスポットが蒸発面34の望ましくない領域を移動するのを防止するのに用いられ得る。
【0094】
図11〜13は、カソード板32の一つの長側面32aと他の長側面32bとの間にアークスポットを案内するための局所矯正磁石200,210を提供し且つ異なるアノード配列を提供する本発明のさらなる実施形態を示す。
【0095】
短側面矯正磁石200は、好ましくは、電磁気コイル204を取り囲む少なくとも一つの磁石コイル202をそれぞれ含み、それぞれは、カソード板32の短側面32c,32dに沿って配置される。コア204は、コイル202によって生成される磁場を集中するので、コイル202が作動すると、アークスポットは、カソード板32の短側面32c,32dの上に伸びるアーチ形磁場線に沿って移動するのを拘束される。
【0096】
この実施形態において、長側面矯正磁石210もまた、各短側面32c,32d近傍のアークスポットと同じアークスポットの動きを拘束するために、短側面32c,32d近傍の、カソード板32の両長側面32a,32bに沿って提供される。長側面矯正磁石120は、同じく好ましくは、コイル212によって生成される磁場を集中する電磁気コア214を取り囲む少なくとも一つの磁気コイル212を含むので、コイル212が作動すると、アークスポットは、長側面32a,32bの端を越えて伸びるアーチ形磁場線を横切る方向で磁場線を横切るように移動するのを拘束される。
【0097】
矯正磁石200,210によって生成される磁場線の方向は、操縦導体66,68(図11に示す)によって決定されるように長側面32a,32bに沿ってアークスポットの動きに対応すべきである。矯正磁石200,210は、カソード板32の連続した操縦パターンを維持すべく、カソード板32の短側面32c,32に近づいて横切るようにのみアークスポットの上で作用する。矯正磁石200,210によって生成される磁場の強度は、コイル202,212を流れる電流を変化することによって変化され得るし、コア204,214の上の追加的な磁場を重ねるように選択的に作動され得るコア204,214を取り囲む追加的なコイル(不図示)を提供することによって変化され得る。
【0098】
この実施形態において、直線内部アノード220は、一連のアノードブロック222,230を含む。内部アノードブロック222は、アノード板224に対応して直交して配置されるアノード板224及びバッフル226を提供する。先に述べた実施形態におけるように、アノード板224及びバッフル226は、それぞれプラズマ流の方向と平行な方向に定められる。アノード220は、好ましくはしっかりした水冷ブロックを含む端アノードブロック230をさらに含み、カソード板32の短側面32c,32dから浸食されるカソード蒸発からアノード220の内部領域を隔離するように提供する。分離「ブロック」の使用は、アーク電流をよりよく分布させるのに役立ち、単一のアノード本体の上の信頼を引き下げる。
【0099】
好ましくは、水冷アノード管229を介して配置され、取り付けられ、絶縁スペーサ228によってハウジング(不図示)から絶縁される分離電源227によって、アノードブロック222,230は独立的に制御される。アノードブロック222,230を流れる電流の強度は、アークスポットの存在、不存在を決定し、従って、浸食ゾーン70のアークスポットの動きと関連してアノード220内でのブロック222,230を通ってラスターあるいはスキャンされるように適切なソフトウェアが採用され得る。この配置は、アークスポットがカソード板32の一つの長側面から他方へ通過するインターバルを小さくするのに役立つ。さらには、アークスポットが浸食ゾーン70に沿った地点で停滞するならば、近傍のアノードブロック222,230への電源は、作動停止され、あるいは引き下げられ得るか、及び/又は、隔たったアノードブロック222,230への電源は、アークスポットが移動中であるのを維持すべく、作動され、あるいは増加され得る。
【0100】
図12に示される直線焦点合わせ導体82,84(部分的にフランジ250によって隠される)は、それぞれカソード板32の長側面32a,32bに沿って蒸発面の前に配置される。焦点合わせ導体82,84は、カソード板32の長側面32a,32bに沿ってアークスポットを操縦する(引き込む)正弦磁場を生成する。それらは、蒸発面34の前に配置されるので、焦点合わせ導体82,84は、被膜形成チャンバー38に向かう磁気尖端を生成する(図5の矢印によって指示されるのと同様)。尖端構造は、カソード板32の中心に向かうアークスポットを案内しようとし、アークスポットがアノード220の陰に移動するのを防止するに当たって、この実施形態におけるシールド54の特別な優位点(磁場線は、蒸発面34に対して垂直であり、カソード32の中心領域における停滞ゾーンを生成するシールド54を伴わない)を引き出す。
【0101】
この実施形態において、閉鎖導体82a,84aは、蒸発面34の上のアーチ形を有する磁場を生成するカソード板32の長側面32a,32bに沿って蒸発面34の背後に配置され、焦点合わせ導体82,84によって生成されるとがった尖端形状磁場線を均衡させると共に、浸食ゾーン70の周りの同じ方向でアークスポットを案内すべく、カソード板32の短側面32c,32dに沿ってアークスポットを案内する矯正磁石200,210に沿ってそれぞれ配置される操縦導体66,68と関連して作動する。
【0102】
このように、ターゲット蒸発面34から離間する導電シールドであって、カソード板32の周囲に配置される導電シールド54は、望ましい浸食ゾーン70の外側のカソードスポット動作性を除外する。実施形態において、示される内部シールド57は、シールド54の近傍に提供され、アノード220の陰におけるカソードスポット動作性を防止するように提供される。
【0103】
図11〜13の実施形態において、取り囲みアノード240は、蒸発面23の周りに(主として直交するように)提供される。蒸発面34の前に配置される取り囲みアノード240は、プラズマ流に対する電流障害を改善し且つ主アノード220を取り囲む、より安定したアーク電流を提供するプラズマ浸漬アノードとなる。本発明の装置は、「内部」アノード220あるいは取り囲みアノード240のどちらかを作動させ、しかしながら、装置の作動は、同時に両アノード220,240を採用することによって改善される。
【0104】
図14a〜14dは、本発明の磁気操縦、焦点合わせ及び偏向を有するアークマグネトロン被膜形成装置の実施形態を示す。
【0105】
図15は、それぞれ二重長方形フィルターアーク源34を時期的に組み込む四つのマグネトロン400を有する本発明の実施形態を示す。実施形態において示される四つの二重長方形フィルターアーク源34は、それぞれアンバランスド長方形マグネトロン400と磁気的に結び付けられる。この実施形態において、マグネトロン源400は、旧来の被膜形成プロセスと同様、基板ホルダー6の基板と光学的配置にある。各二重フィルターアーク源は、フィルターアークプラズマガイドチャンバーの対向フランジに組み込まれた少なくとも二つの長方形主アーク源34を有する。アノードセパレータ122は、プラズマガイドチャンバーを分割し、主カソードアーク源によって生成されるマクロ粒子、小滴及び中性原子及びクラスターを捕捉するためのバッフルセット124を提供する。各長方形カソードアーク源は、カソードターゲットの長側面と平行に組み込まれた焦点合わせ/操縦コイルと、ターゲット32の端の近傍でターゲット32の短側面と平行に組み込まれたバックコイルとを有する。この実施形態において、焦点合わせ導体82,84,92,94は、上述したフィルターアーク源34からのプラズマ流を焦点合わせし、プラズマガイド31の出口近傍の導体86は、フィルターアーク源34とマグネトロン源400の両方に近接し、従って、マグネトロンアーク源400及びフィルターアーク源34の両方からのプラズマ流を被膜形成チャンバーに向かわせるように同時に偏向すべく、近接するフィルターアーク源34とマグネトロン源400を磁気的に結び付ける。図15の磁場線によって示されるように、マグネトロンアーク源は、プラズマを基板ホルダー6に向かって焦点合わせ且つ偏向する焦点合わせ導体86によってフィルターアーク源と磁気的に結び付けられる。基板ホルダー6は、複数の二重回転ステーションを備える中央基板プラットフォームを含み、フィルターアーク源34及びマグネトロン源400の両方からの真空プラズマ流に対する等しいアクセスを有し、被膜形成の構成及び構造の制御を簡素化する。
【0106】
カソード34の各側面の焦点合わせ導体84,94を流れる電流を独立的に変化させる能力は、長方形カソード板がフィルターアーク配置、即ち、基板ホルダー6の光学配列の外方での配置で用いられるのを許容する。プラズマダクト31と対向するカソード34の側面での導体84,94に対するプラズマダクト31と近接するカソード34の側面での導体84,94を流れる電流を増やすことにより、プラズマは、プラズマダクト31に向かって偏向され、その結果、基板ホルダー6に向かって偏向される。中性粒子は、偏向されず、その結果、アノード仕切り122のバッフル124に捕捉される。
【0107】
例えば、図17aは、プラズマがマグネトロン400によって生成される閉ループ磁場線600下で捕捉されるようになる方法を示す。プラズマは、マグネトロンの閉磁気ループ600の磁場線を横切る拡散率が非常に低く、しかし、磁場線600に沿った拡散率は非常に高い。磁場線600は、プラズマ流(破線矢印として示され、磁場線600によって非効率となる中性粒子とは異なるもの)を閉じ込める「軌跡」のように効果的になる。従って、偏向導体84によって生成され、マグネトロン400によって生成される磁場線600と同じ横方向を有する磁場線602は、ターゲット面から離れてプラズマ流を引き込み、基板ホルダー6に向かってそれを偏向する。
【0108】
図17bに示されるように、偏向導体84がカソード板32の前に直ちに配置されるならば、導体84の前の磁場線602は、マグネトロン磁場線600と重なり、マグネトロン400の中心から離れると共に、分散方法で基板ホルダー6に向かって引き込まれる。この配置は、偏向磁場線602が両源からのプラズマを同時に引き込み、被膜形成チャンバーに向かってそれを偏向するため、フィルターアーク源34とマグネトロン400を結び付けるのに最もふさわしい。
【0109】
図17cに示すように、偏向導体84がカソード板32の前に配置されるが、ターゲット面から離間するならば、導体84の後方の磁場線604は、マグネトロン磁場線と重なり、より多くの閉じ込め直線流においてではあるが、マグネトロン400の中心及び基板ホルダー6に向かって引き込まれる。この配置は、フィルターの実施形態における基板ホルダー6に向かう、より焦点合わせされた偏向を提供するが、プラズマの直線流は、基板形状に直ちに閉じ込めない(例えば、基板の内面は、この実施形態においては、被膜形成されておらず、より分散されて磁気的に偏向された図17bのプラズマは、広範囲且つ均一に被膜形成する)。
【0110】
偏向導体84を流れる電流を独立的に制御する能力は、これらの実施形態における非常によい優位点である。それは、プラズマ流のよりよい制御を許容し、そして、対向する偏向導体34を流れる電流のレベルを選択的に変化させることによって、基板の上に均一な被膜形成をすることを保証すべく、プラズマが基板ホルダー6の上の後方及び前方にラスターされるのを許容する。これは、異なる金属蒸気構成を有する混合プラズマ、例えば、直ちに制御可能な方法での、フィルターカソードアーク源34からの金属蒸気の一つのタイプや、近接するマグネトロン源400からの金属蒸気の他のタイプ、を許容する。これは、構成材料の蒸着にとって必要である。
【0111】
図16に示す実施形態において、被膜形成されるべき基板は、非常に大きな径のベアリングレースである。レースの内面を被膜形成するために、レースは、二重フィルターアーク源の後方フランジ全体に亘って装着され、レースドライブタンク付属体に組み込まれたレースドライブセットとガイドアイドラー(不図示)を用いて自身の軸周りに回転する。この実施形態は、図15の実施形態と同じ方法で作動する。フィルターアーク源34は、基板ホルダー6の光学配列の外方であり、小滴(中性であり、そのため、焦点合わせ及び偏向磁気コイル84,94によって影響を受けない)を排除し、小滴は、プラズマガイドチャンバー内及びアノードセパレータで組み込まれるバッフル(不図示)によって捕捉される。フィルターアーク源34は、磁気的にマグネトロン400と結び付けられる。従って、磁場のN極がフィルターアーク源の出口に位置決めされると、マグネトロン磁気システムの中心極は、(頂部の尖端で)Sとなる。この場合、フィルターアーク源34から出る磁場線は、マグネトロンターゲット32の面で終わる。同じ理由で、フィルターアーク源の焦点合わせ(出口)電流導体における電流の方向は、近接するマグネトロンの近接する焦点合わせ導体における電流の方向と同じである。
【0112】
また、この実施形態において、被膜形成されるべき基板は、大きなリングであり、この被膜形成されるべきリングのID面及びOD面の両方である。従って、被膜形成チャンバー内に基板を装着し且つ被膜形成チャンバーに同軸で基板プラットフォームを組み込む代わりに、基板は、垂直配置で、フィルターアーク源のプラズマガイドチャンバーの後方ブラケットを介して装着される。このように、両側面の主カソードアーク源34から、及び両側面のマグネトロン源400から、フィルターアーク源開口の前に位置するリングの部分のみが被膜形成蒸着に支配される。プラズマガイドチャンバーの内側に配置されるリングの残りは、シールドされ、被膜形成プロセスで露出されない。基板ベアリングレースは、自身の軸周りに回転し、ID面の均一なフィルターアークマグネトロン被膜形成を提供する。OD面を被膜形成するため、リングは、対向するフィルターアークマグネトロンステーションに向かって前方に移動され、対向フィルターアークマグネトロン源からであるが、同じ方法でその位置に被膜形成が進行する。
【0113】
<例1>
蒸着ゾーンが500mm高さ×300mm幅である図10の二重長方形プラズマガイドチャンバー内に取り付けられる二つの長方形アーク源を用いた、メス、カミソリ、紙をカットするナイフといったナイフセットへのダイヤモンド様被膜(DLC)の蒸着。ナイフの配置は、蒸着ゾーンの全領域を覆うフィルターアーク源と面する約10〜20rpmの一定した回転速度での回転基板プラットフォームに組み込まれた。グラファイトの長方形板蒸発ターゲットがカソード板アッセンブリに取り付けられた。垂直の操縦導体における電流は、2000Aにセットされ、水平の操縦導体における電流は、1300Aにセットされた。カソードと主(内部)アノード板との間のアーク電流は、300Aにセットされた。衝撃高電圧点火器でアークを発生させた後、アークスポットは、20〜30cm/sの範囲の平均速度で浸食溝に沿って移動を開始した。約3〜5のカソードアークスポットがターゲット面に同時に現れた。偏向コイルの電流は、それぞれ1500Aにセットされた。
【0114】
プロセスの第1ステージは、イオン洗浄を含めた。このステージで、カソードアーク源は、強力な電子エミッタとして用いられた。偏向導体は、止められ、電子電流は、高速イオン洗浄のためのプラズマ浸漬環境を提供しつつ、カソードから基板プラットフォームを取り囲む補助(外部)アノードに引き出された。約4×10-2Paの圧力でプラズマ生成ガスとしてのアルゴンが供給されると共に、効果的なイオンボンバードのための基板プラットフォームでの自己バイアス電位400VがRFジェネレータに提供された。
【0115】
蒸着ステージの間、真空チャンバーにおける圧力は、10-3Paにセットされた。13.56MHzの周波数を有するRFジェネレータは、蒸着中、40〜60Vの範囲での自己バイアス電位が提供された。偏向コイルは、被膜のオーバーヒートを防止すべく、蒸着中、20秒間ON/5秒間OFFの負荷サイクルで連続的に止められた。蒸着の時間は20分であった。被膜の厚みは、マイクロ断面で計測して0.3〜0.35mkmの範囲であり、±10%の均一性で約1mkm/hrの蒸着率に対応している。
【0116】
<例2>
回転基板プラットフォーム上に垂直に組み込まれた400mm高さ×200mm幅×3mm厚みの長方形モリブデンガラスを用いた、フラットパネルディスプレイのための基板として用いたモリブデンガラスへのグラファイト被膜の蒸着。各ガラスは、金属板ホルダーに取り付けられ、13.56MHzの周波数を備えるRFジェネレータを用いて約150Vの自己バイアスが基板プラットフォームに適用された。図10の二重フィルターカソードアーク源は、一つのアルミニウムターゲット蒸発面と、一つのグラファイト蒸発面とが提供された。被膜蒸着の間の圧力は、約10-3Paに維持された。グラファイト被膜の蒸着中の温度は、約400度であり、放射電気ヒーターの配列によって提供された。
【0117】
第1ステージにおいて、アークは、約50mmの厚みのアルミニウム副層を提供することによって、アルミニウムターゲットの上で発生した。第2ステージにおいて、約150mmの厚みのグラファイト被膜が、30分の被膜形成間隔中、アルミニウム層の上に配置された。
【0118】
<例3>
金属押し型及びエンドミルの配列でのTiAlN被膜の蒸着。金属押し型及びエンドミルの配列は、蒸着ゾーンの全領域を覆うフィルターアーク源出口と面する基板プラットフォームに組み込まれた。基板は、プラットフォーム回転12rpmでの二つの(衛星)回転を有する。図10の二重長方形フィルターアーク源は、TiAlN被膜の蒸着のために、一つのカソードに取り付けられたアルミニウムターゲット蒸発面と、第二のカソードに取り付けられたチタンターゲット蒸発面とが提供された。チタンターゲットへの電流は、約150Aにセットされる一方、アルミニウムターゲットへの電流は、約60Aにセットされた。
【0119】
第1ステージにおいて、高速イオン洗浄及び被膜蒸着の両方における間、高濃度ガスプラズマ浸漬環境を提供しつつ、補助(外部)アノードの電流は、約70Aにセットされた。基板プラットフォームの自己バイアス電位は、アルゴンのイオン洗浄中、約400Vで維持されたRF13.56MHzジェネレータによって提供された。イオン洗浄の時間は、5分であり、蒸着時間は、約2時間であった。イオン洗浄の間のアルゴン圧力は、アルゴンが約6×10-2Paにセットされ、蒸着ステージの間、窒素が約2×10-2Paにセットされた。二つの回転する金属押し型及びエンドミルのためのTiAlN被膜の蒸着率は、約1〜1.5μm/hrであることがわかった。
【0120】
<例4>
ダイ及び型上への複層被膜の蒸着。厚さ0.05μmのTiと0.3μmのTiNの複層Ti/TiNの蒸着のために、鍛造のダイ及び押出成型の型の配列が、図10の二重長方形フィルターアーク源におけるフィルターアーク源出口と面する一定回転速度20rpmの基板プラットフォームへ組み込まれた。被膜蒸着の前に、高速イオン洗浄及びアークプラズマ浸漬イオン窒化が、被膜部のバルク材料及び被膜層間の変移部分における表面層近傍の硬度を徐々に高めるべく実施された。窒化層は、約40μmであり、補助(外部)アノードの電流が約90Aにセットされ且つ窒素圧力が約6×10-2Paにセットされた補助アーク放電によって提供された。約500Aの両チタンターゲットでの最大電流を提供しつつ、蒸着ステージの間の補助アノードの電流は、約120Aにセットされた。イオン洗浄/イオン窒化ステージの間のDCバイアスは、約200Vにセットされ、蒸着ステージでの電圧は、40Vに引き下げられた。真空プラズマ処理サイクルの全てのステージの間、基板は、約400度に維持された。
【0121】
<例5>
立方晶窒化ホウ素(cBN)被膜のフィルターマグネトロン蒸着。図10cに示す被膜形成システムは、広く立方晶窒化ホウ素の蒸着のために用いられた。マグネトロンターゲットは、cBN被膜蒸着のために用いられるB4Cからなった。長方形マグネトロン浸食領域は、320×80mm2であった。カーバイトインサートが基板ホルダー6に組み込まれた。イオン洗浄ステージの間にイオン化してプラズマ環境を作動すべく、熱イオンカソードイオナイザー510が作動された。高電流低電圧熱イオン補助アーク電源46が、被膜形成チャンバーに組み込まれた熱イオン中空カソード510と、マグネトロンアノード150との間に接続された。これは、マグネトロンプラズマ放電のイオン化率を高めると共に、マグネトロン作動圧力を引き下げることを許容する。熱イオンアーク電流は、各マグネトロンアノード150毎に80Aにセットされた。被膜形成チャンバーにおけるアルゴン圧力は、イオン洗浄ステージの間、1mtorrにセットされた。バイアス電圧は、イオン洗浄ステージの間、250Vにセットされた。基板温度が200度である間、イオン洗浄ステージは、30分続いた。イオン洗浄の間、フィルタープラズマ源の偏向及び焦点合わせ磁場は、作動しなかった。マグネトロン放電は、マグネトロンスイッチ440を閉じ、マグネトロン電源430を入れることによって作動された。マグネトロン電流は、2〜4Aの範囲であった。全ガス圧は、アルゴンにおける20%からなるガス構成で、2mtorrに高められた。マグネトロン放電電圧は、この圧力範囲で600Vであった。イオン洗浄ステージの後、フィルタープラズマ源の偏向及び焦点合わせコイルが作動され、バイアス電圧は、80Vに引き下げられ、蒸着プロセスが約10時間続いた。cBN被膜の厚みは、CALOテストで計測した。cBN被膜の硬度は、Knoopマイクロ硬度計で、1g負荷であった。cBN被膜の厚みは、2±0.3μmであることがわかった。被膜のKnoopマイクロ硬度は、55±5GPaであることがわかった。
【0122】
<例6>
TiN/TiBC2セグメント複層複合被膜。図15に示す被膜形成システムが、スチールリング基板のID面及びOD面への2セグメントTiN−TiBC複層複合被膜の蒸着のために用いられた。基板に接する被膜の第1セグメントは、チタンターゲットを備える主長方形カソードアーク源を両方有する長方形フィルターアーク源によって配置されるTiN/Ti被膜からなる。TiBCサーメット要素からなる上位セグメントは、フィルターアーク源からのチタンと、B4Cターゲットを有する両マグネトロン源からのホウ素との相蒸着によって形成された。リングのID面を被膜形成するため、基板スチールリングが長方形フィルターアーク源の後方フランジを介して装着され、そのようなわけで、フィルターアーク源出口の前に位置するリングの部分のみがプラズマ流に晒された。リングの残り部分は、シールドされるが、被膜形成プロセスには晒されなかった。リングは、全ID面の均一な範囲を提供しつつ、その軸周りに回転した。複層TiN/Tiセグメントの蒸着のために、350度の予備加熱と、250Vバイアス及び0.1Paでのアルゴンイオン洗浄の後に、基板バイアスは、1000Vに引き上げられ、高密着性を保証すべく、基板は、5分間、チタンイオンボンバード処理された。このステージの後、アルゴン圧力は、3×10-2Paに引き下げられ、バイアス電圧は、40Vに引き下げられ、Tiボンド層が5分間蒸着された。このステージの後、アルゴンは、窒素に置換され、TiN層が25分間蒸着された。10のTiN/Ti二重層が同じ方法で5時間蒸着された。次のステージで、第二の反応性ガスとしてのメタンが徐々に40%濃度でガス混合された。窒化チタン中間層がさらに1時間続いた。次のステージで、スパッタリングガスとしてのアルゴンがマグネトロン源の近傍に供給された。マグネトロン源は、止められ、アルゴン圧力が2×10-1Paにセットされ、550〜600Vの範囲でのマグネトロン電圧が供給された。マグネトロン電流は、出力密度が〜5.4W/cm2となるよう、それぞれ3Aにセットされた。ヒーター配列によって提供される基板温度は、200度に引き下げられ、反応性ガスとしての5%のアセチレンガスがアルゴンに加えられた。5時間のTiBC上位セグメント要素被膜の蒸着のために、長方形フィルターアーク源が、マグネトロンと関連して作動するよう続けられた。結果の二重要素TiN/TiBC被膜は、高い密着性(上方限界荷重>80N)であり、高速度スチールに対する摩擦係数が0.3よりも小さいことがわかった。高い浸食抵抗を有するこの被膜の種類のバリエーションは、長方形フィルターアーク源の主カソードアーク源のためのターゲットとしてのTiCrやTiZr合金を用いることによって得られた。リングのOD面を被膜形成するため、基板リングは、対向フィルターアークマグネトロン被膜形成ステーションに向かって移動し、リングのOD面の被膜蒸着は、上記したとおり、ID面のための同じ被膜形成プロセスを用いて達成された。
【0123】
このように、本発明の好ましい実施形態が例によって記述され、当業者にとって修正及び適合は明らかであろう。本発明は、特許請求の範囲内でそのような全ての修正及び適合を含む。
【0124】
以下の図面は、本発明の好ましい実施形態としての例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】カソード板の背後に配置された磁気操縦システムを有する従来の広領域カソード真空アークプラズマ源の概略横断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による磁気操縦システムによって生成される磁場線の分布を示す部分斜視図である。
【図2a】図2の磁気操縦システムによって生成される、安定した磁場線を示す概略正面図である。
【図2b】図2の磁気操縦システムによって生成される、第1方向に不均衡な浸食溝を示す概略正面図である。
【図2c】図2の磁気操縦システムによって生成される、第2方向に不均衡な浸食溝を示す概略正面図である。
【図3】複数の操縦導体がカソード板の長手に沿って配置される、図2の実施形態の変形例を示す概略正面図である。
【図4】本発明の広領域カソードアーク源のさらに好ましい実施形態の平面図である。
【図5】5−5線に沿った図4の装置の横断面図である。
【図6a】6−6線に沿った図4の装置の横断面図である。
【図6b】複数組の操縦導体を有する図4の装置のさらなる実施形態の横断面正面図である。
【図7a】複数の直線アノード及び一つのカソードターゲットを有する本発明によるプラズマ焦点合わせシステムを具体化するアーク被膜形成装置の平面図である。
【図7b】図7aのアーク被膜形成装置の側面図である。
【図7c】同一のハウジングに導入された複数のカソードターゲットを備える図7aのアーク被膜形成装置の側面図である。
【図7d】図7cのアーク被膜形成装置の平面図である。
【図8】操縦導体及び焦点合わせ導体を調節するための中立化導体を提供する図7aのアーク被膜形成装置の変形例の平面図である。
【図9】カソード板の作用軸から離れて配置される基板ホルダーにカソード蒸発を案内するための本発明による偏向電磁気システムを具体化するアーク被膜形成装置の平面図である。
【図10a】本発明の磁気操縦、焦点合わせ及び偏向を具体化するアーク被膜形成装置の平面図である。
【図10b】本発明の磁気操縦、焦点合わせ及び偏向を具体化する二重アーク被膜形成装置の平面図である。
【図10c】本発明の磁気操縦、焦点合わせ、偏向及び補助アークイオン化を具体化する二重マグネトロン被膜形成装置の平面図である。
【図11】本発明によるアーク被膜形成装置のさらなる実施形態の横断面側面図である。
【図12】図11のアーク被膜形成装置の部分断面前面図である。
【図13】図11のアーク被膜形成装置の背面図である。
【図14a】本発明の磁気操縦、焦点合わせ及び偏向を具体化するアーク−マグネトロン被膜形成装置の部分斜視図である。
【図14b】図14aのアーク−マグネトロン被膜形成装置の部分断面前面図である。
【図14c】マグネトロンターゲットの長手中心に沿った図14aのアーク−マグネトロン被膜形成装置の横断面側面図である。
【図14d】マグネトロンターゲットの横手中心に沿った図14aのアーク−マグネトロン被膜形成装置の横断面側面図である。
【図15】二重フィルターアーク源構造に連結された四つのマグネトロンを有する本発明の実施形態の概略平面図である。
【図16】垂直回転配列で大きな耐荷重を備える対向長方形フィルターアーク−マグネトロン被膜形成ステーションを複数組有するプロセスチャンバーの概略横断面平面図である。
【図17a】マグネトロン及び偏向導体によって生成される磁場線の影響を示すマグネトロンの概略正面図である。
【図17b】マグネトロン及び偏向導体によって生成される磁場線の影響を示すマグネトロンの概略正面図である。
【図17c】マグネトロン及び偏向導体によって生成される磁場線の影響を示すマグネトロンの概略正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の陰極に接続された対向する長側面を有し、蒸発面あるいはスパッタリング面あるいはその両方を含むターゲット面を有する少なくとも一つの長方形カソード板と、
ターゲット面に通じる被膜形成チャンバーと、
被膜形成チャンバー内の基板ホルダーと、
電源の陽極に接続された、ターゲット面から離間する少なくとも一つのアノードと、
少なくとも一つのカソード板の対向する長側面に沿って配置された少なくとも第1及び第2の導体を含み、第1の導体が第2の導体における電流の方向と反対側の方向で電流を流し、第1及び第2の導体のそれぞれがターゲット面の前及び近傍に配置されて、生成される磁場がターゲット面からの真空プラズマ流を基板ホルダーに向けて焦点合わせし、第1の導体が第2の操縦導体と電気的に独立している磁気偏向システムと
を含み、
第1の導体を流れる電流のレベルを第2の導体に対して変化させることにより、真空プラズマ流が被膜形成チャンバーに向かってシフトする
真空アーク被膜形成装置。
【請求項2】
少なくとも一つのカソードとアノードとの間にアークを発生させ、且つターゲット面の上に少なくとも一つのアークスポットを生成するためのアーク点火器をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1及び第2の導体は、少なくとも一つのカソード板の長側面と実質的に平行な方向に向けられる請求項1に記載の装置。
【請求項4】
操縦導体が少なくとも一つのカソード板のそれぞれの短側面に沿って提供される請求項3に記載の装置。
【請求項5】
カソード板は、アーク源の一部である請求項1に記載の装置。
【請求項6】
カソード板は、マグネトロン源の一部である請求項5に記載の装置。
【請求項7】
カソード板は、基板ホルダーとの光学配列の外方に配置される請求項6に記載の装置。
【請求項8】
プラズマ流をイオン化するためのイオナイザーをさらに含む請求項7に記載の装置。
【請求項9】
焦点合わせ導体は、プラズマ流をカソード板から基板ホルダーに偏向すべく、カソード板の長側面に沿って提供される請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つのカソード板の端にて少なくとも一つのカソード板のそれぞれの長側面に向かってアークスポットをシフトすべく、前記少なくとも一つのカソード板のそれぞれに近接して、前記少なくとも一つのカソード板のそれぞれの短側面と平行で且つ対向する極性を有する操縦導体の組が複数提供される請求項4に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つのアノードのそれぞれは、アークスポットが停滞しような少なくとも一つのカソードの領域を覆う対応シールドを有する請求項1に記載の装置。
【請求項12】
基板ホルダーを取り囲む少なくとも一つのアノードをさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項13】
被膜形成チャンバーあるいはその一部は、アノードを形成すべく接地される請求項12に記載の装置。
【請求項14】
電源の陰極に接続された対向する長側面を有する少なくとも一つの長方形カソード板であって、蒸発面あるいはスパッタリング面あるいはその両方を含むターゲット面を有するカソード板、及び少なくとも一つのカソード板の背後に配置された磁石セットを含み、前記ターゲット面の上に出る磁場線を有するアーチ形磁場を生成する少なくとも一つのマグネトロンアーク源と、
アノードと、
ターゲット面に通じる被膜形成チャンバー及びハウジングと、
被膜形成チャンバー内の基板ホルダーと、
少なくとも一つのカソード板及び被膜形成チャンバー間に配置され、カソード板が基板ホルダーとの光学配置の外方に位置するプラズマガイドと、
プラズマをアーチ形マグネトロン磁場から引き出して被膜形成チャンバーに向かわせるよう、少なくとも一つのカソード板の長側面に沿ってターゲット面の前で集中する焦点合わせ磁場線の半尖端構造を生成するために、少なくとも一つのカソード板の長側面の前方であって且つ該カソード板の長側面と平行に配置される第1の焦点合わせ導体セットと
を含む真空アーク被膜形成装置。
【請求項15】
少なくとも一つのカソード板の短側面の背後であって且つ該カソード板の短側面と平行に配置される操縦導体をさらに含む請求項14に記載の装置。
【請求項16】
磁石セットが少なくとも一つのカソード板から離れて可動である請求項15に記載の装置。
【請求項17】
磁石セットが、可動シャフトに取り付けられた磁石板に取り付けられる請求項16に記載の装置。
【請求項18】
カソードアーク蒸発モードでの装置の使用に用いられる、少なくとも一つのカソード板に負電圧を供給するための高電流低電圧アーク電源と、アーク点火器とをさらに含む請求項14に記載の装置。
【請求項19】
プラズマをイオン化すべく、アノードとの光学配置の外方におけるカソードイオナイザーをさらに含む請求項14に記載の装置。
【請求項20】
カソードイオナイザーは、被膜形成チャンバー内に配置されるアーク源及びマグネトロン源を含むカソードチャンバー内に含まれる請求項19に記載の装置。
【請求項21】
カソードイオナイザーは、被膜形成チャンバー内に含まれ、マグネトロン源は、カソードチャンバー内に配置される請求項19に記載の装置。
【請求項22】
複数のカソード板を含み、マグネトロンアーク源は、各カソード板と関連する請求項14に記載の装置。
【請求項23】
電源の陰極に接続された対向する長側面を有する少なくとも一つの長方形カソード板であって、蒸発面あるいはスパッタリング面あるいはその両方を含むターゲット面を有するカソード板、及び少なくとも一つのカソード板の背後に配置された磁石セットを含み、前記ターゲット面の上に出る磁場線を有するアーチ形磁場を生成する少なくとも一つのマグネトロンアーク源と、
アノードと、
ターゲット面に通じる被膜形成チャンバーと、
被膜形成チャンバー内の基板ホルダーと、
少なくとも一つのカソード板及び被膜形成チャンバー間に配置されるプラズマガイドと、
基板ホルダーとの光学配置の外方であって、少なくとも一つのマグネトロンアーク源と近接し、少なくとも一つのカソード板がプラズマガイド内に配置されるフィルターカソードアーク源であって、マグネトロン磁場のN極がフィルターアーク源の出口に位置すると共に、マグネトロン磁場のS極がマグネトロンに対して中心に位置し、あるいは、マグネトロン磁場のS極がフィルターアーク源の出口に位置すると共に、マグネトロン磁場のN極がマグネトロンに対して中心に位置し、それにより、磁場線がフィルターアーク源から出て蒸発面に到達する少なくとも一つのフィルターカソードアーク源と、
マグネトロンアーク源をフィルターアーク源に磁気的に接続し、それにより、プラズマをマグネトロン及びフィルターカソードアーク源から引き出して被膜形成チャンバーに向かわせるよう、焦点合わせ磁場を生成するために、ターゲット面の長側面の前方であって且つ該ターゲット面の長側面と平行に配置される焦点合わせ導体セットと
を含む真空アーク被膜形成装置。
【請求項24】
前記少なくとも一つのマグネトロンアーク源の両側面のフィルターアーク源を含む請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記少なくとも一つのカソード板の短側面の背後であって且つ該カソード板の短側面と平行に配置される操縦導体をさらに含む請求項23に記載の装置。
【請求項26】
少なくとも一つのマグネトロンアーク源は、少なくとも一つのカソード板の端に近接して配置される終端磁石、少なくとも一つのカソード板の側面に近接して配置される端磁石、少なくとも一つのカソード板の中心に近接して配置される中心磁石を含み、端磁石、中心磁石及び終端磁石間の長方形プラズマリングを形成し、マグネトロンプラズマ放電が少なくとも一つのカソード板の近傍でのアーチ形マグネトロン磁場によって実質的に閉じ込められる請求項23に記載の装置。
【請求項27】
蒸発面にアークスポットを生成すべく、少なくとも一つのカソード板及び少なくとも一つのアノード間にアークを発生させるアーク点火器をさらに含む請求項23に記載の装置。
【請求項28】
プラズマをイオン化すべく、アノードとの光学配置の外方におけるカソードイオナイザーをさらに含む請求項23に記載の装置。
【請求項29】
カソードイオナイザーは、被膜形成チャンバー内に配置されるアーク源及びマグネトロン源を含むカソードチャンバー内に含まれる請求項28に記載の装置。
【請求項30】
カソードイオナイザーは、被膜形成チャンバー内に含まれ、マグネトロン源は、カソードチャンバー内に配置される請求項28に記載の装置。
【請求項31】
カソードイオナイザーは、熱イオンカソードを含む請求項28に記載の装置。
【請求項32】
カソードイオナイザーは、中空カソードを含む請求項28に記載の装置。
【請求項33】
カソードイオナイザーは、低温真空アークカソードを含む請求項28に記載の装置。
【請求項34】
被膜形成チャンバーあるいはその一部は、アノードを形成するために接地される請求項23に記載の装置。
【請求項35】
電源の陰極に接続された対向する長側面を有し、蒸発面あるいはスパッタリング面あるいはその両方を含むターゲット面を有する少なくとも一つのマグネトロンアーク源と、アノードと、基板ホルダーを含むターゲット面に通じる被膜形成チャンバーとを含む真空アーク被膜形成装置におけるプラズマ流の制御方法であって、
a.プラズマを生成するためにターゲット面に少なくとも一つのカソードスポットを生成するステップ、
b.偏向磁場線を有する偏向磁場を生成し、前記少なくとも一つのマグネトロンアーク源によって生成されるマグネトロン磁場線を重ね、偏向磁場線及びマグネトロン磁場線が同じ横方向を有するステップ
を含むプラズマ流の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図17c】
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【公表番号】特表2007−505997(P2007−505997A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527084(P2006−527084)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030603
【国際公開番号】WO2005/040451
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506094367)
【氏名又は名称原語表記】GOROKHOVSKY, Vladimir, I.
【住所又は居所原語表記】3626 Fieldstone Drive, Bozeman, MT 59715 (US)
【Fターム(参考)】