説明

長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法

【課題】添加剤の均一分散性、機械特性に優れた長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂ペレットと、少なくとも1種の添加剤を、それぞれ独立した供給機構を有する別個の供給ラインを用い、各ラインごとに別個に設定された50g〜9.95kgの範囲内の量を、500〜5000g/minの供給速度の範囲内で、±3g/回以内の精度で混合槽へ供給し、該混合槽で混合した1〜10kgの配合物とした後、これを押出機に供給し、該押出機で溶融混合した熱可塑性樹脂組成物の溶融物を連続して供給される強化繊維束上に定量付与し、該熱可塑性樹脂組成物を冷却固化した後、切断することを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂と強化繊維からなる長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法に関する。さらに詳しくは、導電性付与剤、難燃剤など種々の添加剤を熱可塑性樹脂に均一に分散させた長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、その成形品が優れた機械的性質を有することから、産業界で広く射出成形品に利用されている。また、その機械的特性をさらに向上させるために、ガラス繊維、炭素繊維などを使用した材料が提案されており、中でもペレットと実質的に同一長さの繊維を少なくとも含む長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、その繊維長から種々の機械特性等にさらに優れた特性を示し、より好ましく使用されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の特性をさらに高めるために例えば導電性付与剤、難燃剤など種々の添加剤を付加することも知られている。添加剤を熱可塑性樹脂に配合する方法としては、事前に溶融混練する方法が一般的であった(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平10−138379号公報
【特許文献2】特開2001−81318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
添加剤を熱可塑性樹脂に配合する場合に、事前に溶融混練する方法で熱可塑性樹脂と添加剤を配合したときには、同方法で添加剤を配合しない場合に対し、機械特性の低下が生じることがあった。また、2段階で溶融混合を行うことから、作業に要する工数が大きいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく添加剤配合時の熱可塑性樹脂の機械特性の低下について、2段階で溶融混合を行うことによる熱劣化が原因ではないかという仮説の下、従来2段階で溶融混合を行っていた理由である熱可塑性樹脂と添加剤の均一なドライブレンドができなかった点に着目し、特定の計量手段を適用することにより均一分散できる方法を見いだし、これにより、一挙に、上記問題を解決したものである。すなわち、
(1)熱可塑性樹脂ペレットと、少なくとも1種の添加剤を、それぞれ独立した供給機構を有する別個の供給ラインを用い、各ラインごとに別個に設定された50g〜9.95kgの範囲内の量を、500〜5000g/minの供給速度の範囲内で、±3g/回以内の精度で混合槽へ供給し、該混合槽で混合した1〜10kgの配合物とした後、これを押出機に供給し、該押出機で溶融混合した熱可塑性樹脂組成物の溶融物を連続して供給される強化繊維束上に定量付与し、該熱可塑性樹脂組成物を冷却固化した後、切断することを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
(2)供給ラインへの振動の付与と停止により、熱可塑性樹脂ペレットや添加剤の供給を制御する前記(1)記載の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
(3)強化繊維が炭素繊維であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
(4) 添加剤が導電性付与剤であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
(5) 熱可塑性樹脂ペレットとして、ポリアミド、ポリカーボネート、スチレン系重合体から選ばれる1種または2種以上のペレットを使用する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、添加剤の均一分散性、機械特性に優れた長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法では、熱可塑性樹脂ペレットと少なくとも1種の添加剤を均一にドライブレンドする必要がある。そのためには、各々の供給精度が重要となる。具体的には±3g/回以内の精度で供給する必要がある。さらに好ましい供給精度としては、±1g/回以内である。供給精度が±3g/回より大きい場合は、添加剤の熱可塑性樹脂に対する配合が不均一になり、本発明の効果が十分に得られない。また、熱可塑性樹脂と添加剤を各々供給し、一度に計量混合する配合物のバッチ容量としては1〜10kgの範囲にある必要がある。バッチ容量が10kgを超える場合は、計量後の混合が難しく、均一に混合するのに時間を要すること、あるいは混合後に分級が起こり易いこと等操作上注意を要することから本発明の効果が十分に得られない。1kgに満たない場合は、得られた配合物の配合比バラツキが大きくなり、さらにはサイクル時間の面で生産性が悪くなるため好ましくない。より好ましいバッチ容量としては3〜6kgである。供給精度と同様に生産性を考えた場合は、供給速度も重要となる。具体的には500〜5000g/minが好ましい。供給速度が小さすぎると精度は得られても現実的な生産には適さない場合があり、大きすぎると所要の精度を得るのが難しい場合がある。より好ましくは1500〜3000g/minである。また、高精度で供給するためには、供給速度を段階的に変更することも好ましい。具体的には供給完了目標値に対して、残り50〜500gになった時点で速度を通常供給時の1/10〜1/2の供給速度に下げることで速度を保ちながら供給精度を向上させることも可能である。
【0008】
このような供給を行う装置としては、特に限定されるものではないが、供給ラインへの振動の付与と停止により、粉体やペレット等の供給を制御する振動方式、螺旋状のスクリューの回転により粉体やペレット等を送るスクリュー方式等の供給機が適している。中でも本発明には、高精度な供給が可能な点でトラフ状可動部への微細な振動の付与と停止により、ペレットや添加剤の供給を制御することができる振動式供給機が最も適している。仕様としては上記の供給精度、供給速度を満足しているものが好ましく、さらに段階的に振幅を変更できるもの、供給実績値をフィードバックして、次供給設定を制御するものがなお好ましい。なお、トラフとは、凹み形状を有した受け皿型のものの総称であり、この部分に溜まった熱可塑性樹脂、添加剤を微細な振動によって、落下させて供給するものである。また、主剤として始めに熱可塑性樹脂ペレットの計量を行った後、その計量値を基準にして添加剤の供給目標値を設定する機構を有する方式も精度を向上させる上で好ましい。
【0009】
このような高精度な供給方法を採ったことにより、均一なドライブレンドが可能となり、従来行われてきた事前の溶融混合を行う必要がなくなった。
【0010】
本発明に使用する押出機としては、特に限定されるものではないが、一般的な単軸の押出機が、熱可塑性樹脂の劣化を引き起こしにくい点、長繊維ペレットの製造において安定した溶融混合樹脂を供給できる点で好ましい。スクリューのタイプについてもミキシングパーツの無いものが好ましく、圧縮比も比較的小さいものを使用した方が良い。一方、2軸タイプの押出機であっても、スクリューデザインを最適化することで、熱可塑性樹脂の劣化をより抑えることが可能であり、本発明に使用することは可能である。
【0011】
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法で製造する長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料はペレットと実質的に同一長さの強化繊維と熱可塑性樹脂を含むものであり、長繊維を含有することで射出成形品にしたときの機械特性、難燃性を向上させることができる。
【0012】
ペレットの形態は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂が強化繊維の周囲を被覆するように配置されてなるペレットであることが好ましい。このようなペレットを得る手段としては、強化繊維の束を押出機の先端に取り付けた電線被覆用のコーティグダイの中に通し、熱可塑性樹脂を押出被覆させ電線状のガットを得る方法が一般的である。このガットをストランドカッターで所定の長さにカットすることで、強化繊維長がペレットの長さと実質的に同一の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料が得られる。
【0013】
その形状は、特に限定されるものではないが、直径1〜5mm、ペレット長3〜15mmの円柱形状であることが好ましい。直径がこれより小さすぎると製造が困難であり、大きすぎると射出成形時に成形機へのカミコミが難しく供給が困難なる場合がある。ペレット長は強化繊維長でもあるため、短かすぎると成形体の機械特性が十分に得られない場合があり、長すぎるとやはり成形機への供給性が悪化することが考えられる。
【0014】
長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料中の強化繊維含有率は、5〜45重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。含有率が少なすぎると強化繊維による機械特性等の向上効果が小さく、多すぎると製造が困難であることに加え、射出成形材料として流動性が悪い点が問題となる場合がある。
【0015】
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法に適用する強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、あるいは金属繊維等があり、適宜所望の目的に応じて用いることができる。
【0016】
中でも、射出成形品の機械特性を考慮した場合、ガラス繊維あるいは炭素繊維が好ましく、さらに耐衝撃特性や導電性付与による電磁波シールド性も期待できるので炭素繊維はより好ましく使用される。
【0017】
また、炭素繊維を用いる場合、該炭素繊維の密度は、1.65〜1.95のものが好ましく、さらには1.70〜1.85のものがより好ましい。また炭素繊維の太さ(直径)は、一本当たり5〜8μmのものが好ましく、さらには6.5〜7.5μmのものが最も好ましい。
【0018】
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法で使用される熱可塑性樹脂ペレットは特に限定されず、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、EVA樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアニルエーテエルニトリル樹脂、ポリベンゾイミダール樹脂などの樹脂ペレットを使用することができる。
【0019】
中でも、射出成形品の各種機械特性を考慮した場合、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などからなる樹脂ペレットが好ましく、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系重合体からなる樹脂ペレットであれば、より好ましい。 これら熱可塑性樹脂ペレットは、単独の樹脂であっても良く、あるいは混合物でも、また共重合体であっても良い。
【0020】
また、本発明は熱可塑性樹脂に少なくとも1種の添加剤を配合するものである。添加剤を配合することで、機械特性、電気特性、難燃性などの性能面の向上、射出成形時の成形特性ならびに製品外観をより良好にすることが可能となる。
【0021】
このような添加剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウムのような無定形フィラー、タルク、マイカ、ガラスフレークなどの板状フィラー、ワラステナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウムなどの針状フィラー、ビーズ、バルーンなどの球状フィラー、金属粉、金属フレーク、カーボンブラックなどの導電性付与剤などが適宜好ましく用いられる。
【0022】
中でも炭素繊維と導電性付与剤の組み合わせは、その電気特性や電磁波シールド性を向上させるのに好ましく、導電性付与剤の中でもカーボンブラックはコスト、比重、扱い易さの点でより好ましい。
【0023】
また、難燃剤も電気電子機器向けの射出成形材料の添加剤として好ましく用いられる。具体的には、水和金属化合物、金属酸化物等の無機系難燃剤、臭素系に代表されるハロゲン系難燃剤、赤燐、燐酸エステル等の燐系難燃剤、その他シリコン系難燃剤等が使用できる。これらの難燃剤は単独で使用しても良いし2種以上組み合わせて使用しても良い。ハロゲン系難燃剤はダイオキシン発生の問題があるため、避けることが好ましく非ハロゲン系難燃剤、中でも赤燐、燐酸エステルが好ましく使用される。
【0024】
これらの添加剤は、単独もしくは複数の組み合わせで使用しても良いし、その表面に炭素被覆またはシランカップリング処理などを施したものを単独もしくは複数組合せて使用してもよい。
【0025】
これらの添加剤の配合方法としては、粉末状、顆粒状など入手形態そのままの状態で配合しても良いが、添加剤の取扱性を向上させるために熱可塑性樹脂との混合物としてマスターペレット化して使用することも可能である。マスターペレット化して使用する場合には、マスターペレット中の添加剤の含有率としては、20〜60重量%であることが必要である。マスターペレット中の添加剤含有率が60重量%を超える場合は、一般にマスターペレットの製造が困難であり、20重量%に満たない場合には、マスターペレットに含まれる熱可塑性樹脂が、マスターペレット製造の際の熱履歴により劣化するため、成形品の機械特性に悪影響を及ぼす場合がある。かかる点から、マスターペレット中の添加剤の含有率が30〜50重量%であれば、より好ましい。
【0026】
本発明の製造方法で製造される長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、主に射出成形によって必要な形状の成形品とすることができる。使用される射出成形機は、特に限定されるものではなく、インライン式、プリプラ式いずれでも良く、スクリュータイプにおいても汎用スクリューであっても特殊なミキシングピースを備えたものであってもよい。さらには、射出圧縮機構や種々の付帯機構を備えたものであっても良い。
【0027】
本発明の成形品用途としては、強度、剛性、耐衝撃性に加えて薄肉成形性が求められる電子・電気機器用部品、特に携帯用の電子・電気機器のハウジング、ケーシングなどに好ましく用いることができる。
【0028】
より具体的には、ノート型パソコン、携帯用電話機、PHS(ピー・エイチ・エス)、PDA(ピー・ディー・エー)、ビデオカメラ、デジタルカメラなどのハウジング、ケーシングなどに特に好適に用いられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
熱可塑性樹脂ペレットとしてナイロン6樹脂(東レ製CM1017)、添加剤としてカーボンブラック(三菱化成#20B)の含有率が40重量%の同ナイロン6樹脂マスターペレットを用意した。両材料の目標供給値をそれぞれ2532g、468g(合計3000g)とし、振動式フィーダーにて、2000g/minの速度で混合層へ供給を行った。供給精度は、±2g/回であった。混合後に得られた配合物を速やかに260℃に加熱したφ50mm単軸押出機に供給し、押出機の吐出部にクロスヘッド方式で供給された炭素繊維(東レ製T700S)が20重量%の比率で含まれるように一体化した上で引取り、冷却固化した後、最終的に7mmにカッティングした長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを得た。
【0030】
得られたペレットを射出成形(成形機 名機50t、成形温度280℃、金型温度50℃)し、抵抗値測定用のダンベル型試験片(ASTM D-638規定 1/8“)、 アイゾット衝撃試験用試験片(ASTM D256規定 1/8”)を得た。
【0031】
導電性は、抵抗値測定用試験片の2ヶ所(間隔=181mm)にドリルにてφ5mmの孔をあけ、タップによりφ6mmのネジを電極としてねじ込み、この電極間の抵抗値をテスターにて測定した。
【0032】
衝撃強度は、上記アイゾット試験片を使用し、ASTM D-256に規定された方法で測定した(装置:TOYOSEIKI製 ハンマー容量:3ft・lb 振り上げ角:127度)
(実施例2)
供給速度を段階的に変更し、供給完了値の10g前に速度を2000g/minから500g/min落とした。それ以外は実施例1と同様の方法で長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを得、同様の方法で評価を行った。供給精度は±1g/回であった。
(実施例3)
供給方法としてスクリュー式フィーダーを使用した以外は、実施例2と同様の方法で長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを得、同様の方法で評価を行った。供給精度は±3g/回であった。
(比較例1)
供給方法としてダンパー式フィーダーを使用した以外は実施例1と同様の方法で長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを得、同様の方法で評価を行った。供給精度は±30g/回であった。
(比較例2)
実施例1同様の熱可塑性樹脂とカーボンブラックマスターを準備し。その混合を、260℃に加熱したφ45mmの2軸押出機を使用して行い、溶融混合した添加剤配合ペレットを得た。得られたペレットを単軸押出機に供給し、実施例1と同様の方法で長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを得、同様の方法で評価を実施した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1より、本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法により製造した実施例1〜3の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、いずれも導電性のバラツキが小さく、かつ、衝撃特性にも優れることが明らかである。
【0035】
比較例2では、従来の事前に溶融混合する方法を使用したところ、添加剤が十分に分散されているために導電性のバラツキは小さいが、熱劣化に起因すると考えられる衝撃特性が悪くなった。比較例1では、比較例2において衝撃特性が悪化の原因と考えられる熱履歴を避けるために従来式の供給装置を使用した結果、衝撃特性は良好な物が得られたが、添加剤の配合比率のムラに起因すると考えられる混合ムラに起因すると考えられる導電性のバラツキが顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造法を用いれば、衝撃強度により優れ、導電性等の添加剤効果が安定して得られる成形材料を得ることができ、その結果、機械特性等の特性に優れた成形品が得られ、パソコン、OA機器、AV機器、家電製品、玩具用品などの電気・電子機器の部品や筐体に広く利用することができるが、その応用範囲は、これらに限られるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂ペレットと、少なくとも1種の添加剤を、それぞれ独立した供給機構を有する別個の供給ラインを用い、各ラインごとに別個に設定された50g〜9.95kgの範囲内の量を、500〜5000g/minの供給速度の範囲内で、±3g/回以内の精度で混合槽へ供給し、該混合槽で混合した1〜10kgの配合物とした後、これを押出機に供給し、該押出機で溶融混合した熱可塑性樹脂組成物の溶融物を連続して供給される強化繊維束上に定量付与し、該熱可塑性樹脂組成物を冷却固化した後、切断することを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項2】
供給ラインへの振動の付与と停止により、熱可塑性樹脂ペレットや添加剤の供給を制御する請求項1記載の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項3】
強化繊維が炭素繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項4】
添加剤が導電性付与剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂ペレットとして、ポリアミド、ポリカーボネート、スチレン系重合体から選ばれる1種または2種以上のペレットを使用する請求項1〜4のいずれかに記載の長繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法。

【公開番号】特開2007−261229(P2007−261229A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93102(P2006−93102)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】