間葉幹細胞およびその使用方法
本発明は、初代幹細胞の生存度を増強し、かつ、哺乳動物レシピエントに移植された幹細胞の移植を増強する、組成物および方法を提供する。従って、本発明は、アポトーシス耐性の単離された成体間葉幹細胞を含む組成物と組織を接触させることによって間葉由来組織を再生する方法を含む。間葉幹細胞は成体骨髄から得られる成体細胞である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府により資金援助された研究に関する言及
本発明は米国国立衛生研究所助成金の下で米国政府の支援を伴ってなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、改変された間葉幹細胞および損傷または疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
患者の死亡率および罹患率は、急性および慢性の損傷または疾患(例えば心筋梗塞、心不全、脳卒中、退化性神経疾患、脊椎損傷、筋骨格疾患、高血圧、および糖尿病など)から生じる細胞/組織の損傷または死によって増大する。新しい細胞がこの損傷を予防、減少、および/または修復することができる方法を決定することは、非常に重要である。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、初代幹細胞の生存度を増強し、かつ移植された幹細胞の哺乳動物レシピエントへの移植を増強する組成物および方法を提供する。従って、本発明は、単離された成体間葉幹細胞を含む組成物を組織を接触させることによって、間葉幹細胞由来組織を再生する方法を含む。間葉幹細胞は、成体骨髄から得られた成体細胞である。この細胞は、akt遺伝子をコードする外因性核酸を含む。好ましくは、この核酸は細胞に導入され、例えば、エキソビボでこの遺伝子を含むレトロウイルスベクターを用いて形質導入される。細胞へのakt遺伝子の導入後、組換え幹細胞の集団は哺乳動物レシピエントに導入または再導入される。
【0005】
間葉由来組織は、中胚葉における胚起源によって特徴付けられるものである。間葉は結合組織、血管、心臓組織、およびリンパ組織が由来する中胚葉の一部である。間葉細胞は結合組織、上皮組織、神経組織、および筋肉組織に分化する。例えば、標的組織は心筋組織、脳、脊髄、骨、軟骨、肝臓、筋肉、肺、血管、および脂肪組織からなる群から選択され、移植された幹細胞は移植後に標的組織の組織型に分化する。筋肉組織は骨格筋または平滑筋(例えば、血管平滑筋細胞)であり、本発明の方法は、急性または慢性の変性疾患(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィーのような筋ジストロフィー)に罹患しているか、またはそのリスクを有する患者における筋肉組織を再生するために使用される。上皮組織は、皮膚、腸、または他の組織特異的上皮細胞を含む。神経細胞組織には、脳、脊髄組織が含まれる;本発明の方法は、脳卒中後に損傷した神経組織(例えば脳組織)を再生する際に、または外傷性事象(例えば外科手術)の前に神経組織に対する損傷を最小化する際に有用である。
【0006】
標的組織への幹細胞の移動は、さらなる遺伝的改変、例えばホーミング分子をコードする外因性核酸の細胞への導入によって増強される。ホーミング分子の例には、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、エストロゲン受容体、およびインテグリン受容体が挙げられる。細胞は、細胞のエンドクリン作用を増大する遺伝子産物をコードする核酸(例えばホルモンをコードする遺伝子)、または細胞のパラクリン作用を増大する遺伝子産物をコードする核酸を含んでもよい。例えば、幹細胞は、骨形成因子をコードする外因性核酸を含むように遺伝的に改変され、そして、骨、軟骨、または例えば歯周病を治療するために歯組織に移植される。細胞はまた、他の生物学的に活性なまたは治療的なタンパク質またはポリペプチド(例えば、血管形成因子、細胞外マトリクスタンパク質、サイトカイン、または増殖因子)をコードする核酸を含んでもよい。例えば、膵臓組織に移植された細胞はインスリンまたはインスリン前駆体分子をコードする核酸を含む。この細胞はまた、移植拒絶を減少させる遺伝子産物(例えば、CTLA4Ig、CD40リガンド)、または移植動脈硬化症の発症を減少させる遺伝子産物(例えば、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS))をコードする核酸を含んでもよい。
【0007】
本発明はまた、アポトーシス耐性初代幹細胞(例えば、成体骨髄由来間葉細胞)を含む。幹細胞はまた、遺伝的に改変されて、外因性akt遺伝子を含む。このような遺伝的に改変された初代幹細胞のアポトーシスは、akt遺伝子を欠く初代間葉幹細胞と比較して少なくとも10%減少する。好ましくは、アポトーシスは、akt遺伝子を欠く初代間葉幹細胞と比較して、少なくとも50%、少なくとも1/2、少なくとも1/5、および少なくとも1/10以下まで減少する。好ましくは、幹細胞は非腫瘍形成性である。外因性akt遺伝子配列が導入された細胞は増加量のAkt遺伝子産物を産生するが、Aktタンパク質は酸素正常状態下で不活性である。Aktタンパク質は低酸素への曝露の際に活性化される。
【0008】
本発明にはまた、移植された幹細胞の生存度を増大させ、かつ移植を増強する方法が含まれる。移植される幹細胞は、成体被験体の骨髄組織から得られ、エキソビボで遺伝的に改変され、次いで同じかまたは異なるレシピエントに移植される。好ましくは、ドナーおよびレシピエントは同じ種であり、より好ましくは、ドナーおよびレシピエントは主要組織適合性遺伝子座において遺伝的に類似(または同一)である。例えば、自系移植(骨髄由来間葉幹細胞の自己ドナー)、同系移植(同一の双子ドナー)、同種異系移植(関連性のあるドナー、関連性のないドナー、または「ミスマッチ」ドナー)が実行される。Akt改変された細胞を移植することは移植組織における細胞の生存度の延長をもたらす。例えば、細胞は2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、またはそれ以上の日数の間、生存可能に維持され、増殖および分化を継続するのに対して、akt配列を欠く幹細胞は移植期間近く(例えば、移植後24時間以内)に死滅する。
【0009】
本発明の組成物および方法は、組織(例えば、虚血または再灌流関連損傷に起因するアポトーシスを受けている心筋細胞;骨、靱帯、腱、もしくは軟骨に対する外傷的損傷後の軟骨細胞;またはアルコール誘導性肝硬変の肝臓中の肝細胞) を修復または再生する際に使用される移植された幹細胞の生存を増強するために有用である。
【0010】
疾患または変性を通して損傷された横紋心筋に移植されたときに、増大した移植後生存を有するように遺伝的に増強されている組換え間葉幹細胞(rMSC)が開示される。好ましいrMSCは発現の際に抗アポトーシス効果を有する産物をコードする遺伝子についての組換え体である。例としては、セリン-スレオニンプロテインキナーゼAkt(すなわち、プロテインキナーゼB、RAC-γプロテインキナーゼ)遺伝子(例えば、Akt-1、Akt-2、Akt-3)、ヘムオキシゲナーゼ(HO)遺伝子(例えば、HO-1、HO-2)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ecSOD)、および/またはインターフェロン誘導性dsRNA-活性化プロテインキナーゼ(PKR)によってコードされるポリペプチドが含まれる。好ましい遺伝子は単離された哺乳動物遺伝子であり、より好ましくはヒト遺伝子である。アポトーシスは、機能的アポトーシス経路の阻害を通して直接阻害され得るか、または虚血もしくは低酸素条件下でのrMSCの生存性を増大させることによって間接的に阻害され得る。
【0011】
rMSCは心筋細胞に分化し、死滅したかまたは損傷した細胞の機能を置き換えるためにレシピエントの健常組織と統合され、それによって全体として心筋を再生する。
【0012】
いくつかの態様において、移植に際して生存度を増強するようなポリペプチドをコードする、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはそれ以上の遺伝子を発現するように、rMSCが遺伝子操作される。
【0013】
細胞保護ポリペプチド、ポリペプチドの発現を調節する1つまたは複数の酸素感受性調節エレメント、および細胞標的化発現エレメントをコードする核酸を含む組成物もまた開示される。代替として、本発明の組成物は、2、3、5、7、または10個の酸素感受性調節エレメントを含む。好ましくは、この組成物は、心臓的事象のような虚血的事象(例えば、心筋梗塞、脳卒中、高血圧、うっ血性心不全、拡張型心筋症、または再狭窄)による損傷を修復するために投与される。
【0014】
レシピエント被験体は、酸化ストレス誘導性細胞死(例えば、アポトーシス性細胞死)または虚血もしくは再灌流関連損傷のような異常な細胞損傷によって特徴付けられる状態に罹患しているか、またはそのリスクを有する可能性がある。ある状態に罹患しているか、またはそのリスクを有する被験体は、公知のリスク因子、例えば、性別、年齢、高血圧、肥満、糖尿病、以前の喫煙の履歴、ストレス、特定の疾患の原因である遺伝的もしくは家族の素因、または以前の心臓的な事象(例えば心筋梗塞または脳卒中)の検出によって同定される。
【0015】
異常な細胞死によって特徴付けられる状態には、脳卒中、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血(chronic coronary ischemia)、動脈硬化症、うっ血性心不全、拡張型心筋症、再狭窄、冠状動脈疾患、心不全、不整脈、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腎不全、腎虚血、または心筋肥大のような、心臓疾患(急性または慢性)が挙げられる。
【0016】
誘発用の(triggering)薬剤または条件は、内因性または外因性である。必要なのは、薬剤または条件が細胞保護ポリペプチドの発現を誘導することだけである。好ましくは、誘導は一時的である。ポリペプチドの発現の誘導は、翻訳前(例えば、エンハンサー、プロモーター、応答エレメント(例えば低酸素または抗酸化応答エレメント)を介して)または翻訳後である。例えば、条件は、低酸素症、酸化ストレス、活性酸素種(例えば過酸化水素、スーパーオキシド、またはヒドロキシルラジカル)のような生理学的刺激である。薬剤は抗生物質(例えばテトラサイクリン);免疫抑制剤(例えばラパマイシン);ステロイドホルモン(例えばエクジソン);またはホルモン受容体アンタゴニスト(例えばミフェプリストン)である。代替として、誘発用の薬剤は二成分の遺伝子発現系(例えばテトラサイクリン応答性発現系またはエクジソン応答性発現系)のメンバーである。
【0017】
酸素感受性調節エレメントは、低酸素症または酸化ストレスによって改変されるエレメントであり、細胞保護ポリペプチドの発現を調節する(例えば、オンにするかオフにする)ことができる。例えば、酸素感受性調節エレメントは低酸素応答性エレメント(HRE)、抗酸化応答エレメント(ARE)、または酸化ストレス応答エレメント(例えばペルオキシダーゼプロモーターまたは核因子κB(NF-κB)など)である。
【0018】
細胞標的化エレメントは、細胞保護ポリペプチドの発現を、関心対象の細胞型(例えば心臓組織または腎臓組織)に制限することができるエレメントである。例えば、細胞標的化エレメントは細胞特異的プロモーター(例えば、α-MHC、ミオシン軽鎖-2、またはトロポニンT)である。
【0019】
本発明の組成物が酸化ストレス誘導性細胞死を阻害するか否かを決定するために、この組成物は、初代細胞または不死化細胞(例えば心筋細胞など)とこの組成物をインキュベートすることによって試験される。細胞の酸化ストレスの状態は誘導され(例えば、過酸化水素すなわちH2O2とそれをインキュベートすることによって)、そして細胞生存度は標準的な方法を使用して測定される。対照として、細胞は本発明の組成物の非存在下でインキュベートされ、次いで酸化ストレスの状態が誘導される。化合物処理された試料中の細胞死の減少(または生存細胞数の増加)は、この組成物が酸化ストレス誘導性の細胞死を阻害することを示す。代替として、化合物処理された試料中の細胞死の増加(または生存細胞数の減少)は、この組成物が酸化ストレス誘導性の細胞死を阻害しないことを示す。この試験は、この組成物が酸化ストレス誘導性の細胞死を阻害するように阻害する用量範囲を決定するために、異なる用量の組成物を使用して反復される。
【0020】
いくつかの態様において、核酸組成物はベクター中で製剤化される。ベクターには、例えば、アデノ関連ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターが挙げられる。好ましくは、ベクターはアデノ関連ウイルスベクターである。好ましくは、核酸は、ヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターのようなプロモーターに機能的に連結される。ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルのような発現制御エレメントは、細胞保護ポリペプチドのコード領域に機能的に連結される。好ましい態様において、本発明の核酸は、必要とされる複製およびパッケージングシグナルをコードするアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している。核酸組成物は、当技術分野において公知である任意の適切な方法を通してMSCに挿入される。
【0021】
本発明はさらに、セリンスレオニンキナーゼAKTポリペプチドまたはその生物学的に活性なその断片をコードするヌクレオチドを発現するrMSC組成物を用いて、被験体における心臓疾患を治療する方法を特徴とする。天然に存在するポリペプチド断片とは、少なくとも10アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも200アミノ酸、少なくとも300アミノ酸、少なくとも400アミノ酸、少なくとも500アミノ酸、少なくとも550アミノ酸であり、その対応する全長ポリペプチドよりも1アミノ酸少ない断片である。AKTポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドは天然に存在するAKTポリペプチドのそれよりも少ないアミノ酸配列を有し、これはアポトーシス媒介性の心筋細胞死を阻害する。被験体は、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大のような心臓疾患のリスクを有し得る。
【0022】
本発明はさらに、ヒトヘムオキシゲナーゼポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチドを発現するrMSC組成物を哺乳動物に投与することによって、急性または慢性の心臓疾患に罹患しているかまたはそれを発症するリスクを有する哺乳動物における急性または慢性の心臓疾患を治療する方法を特徴とする。HOの生物学的に活性なポリペプチドは、天然に存在するHOポリペプチドのそれよりも少ないアミノ酸配列を有し、これは酸化ストレス誘導性の心筋細胞死を阻害する。慢性心臓疾患は、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大のような疾患を含む。
【0023】
本発明はさらに、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ecSOD)ポリペプチドまたはその生物学的に活性なその断片をコードするヌクレオチドを発現するrMSC組成物を用いて被験体における心臓疾患を治療する方法を特徴とする。ecSODポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドは天然に存在するecSODポリペプチドのそれよりも少ないアミノ酸配列を有し、これは酸化ストレス誘導性の心筋細胞死を阻害する。被験体は、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大のような心臓疾患のリスクを有し得る。
【0024】
本発明によって、組換えアデノ関連ウイルスベクター、およびサイトメガロウイルス最初期プロモーターに機能的に連結されたヒトヘムオキシゲナーゼ-1ポリペプチドまたはヒト細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチドまたはヒトAKTポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む、心臓保護物質(cardioprotective agent)を発現するrMSCもまた提供される。好ましくは、心臓保護物質はウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。より好ましくは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルはアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している。
【0025】
組換えMSC心筋治療は、例えば、以下の順番で行われる:MSC含有組織の収集、MSCの単離および/または拡大、少なくとも1つの抗アポトーシス遺伝子を用いたMSCのトランスフェクション、損傷心臓への少なくとも1つのrMSCの移植、ならびに心筋のインサイチュー形成。このアプローチは、未分化rMSCが移植されて、その最終形態に分化できるという点で伝統的な組織工学とは異なる。宿主環境からの生物学的、生体電気的、および/または生体力学的な誘発は十分であり得、または特定の環境下では、十分に統合されかつ機能的な組織を樹立するための治療計画の一部として増強され得る。
【0026】
従って、本発明の1つの局面において、その必要がある個体において心筋細胞を産生するための方法であって、十分な量の組換え間葉幹細胞を該個体に投与する段階を含む方法が提供されるが、これにより細胞を心筋に分化することができ、したがって損傷心臓組織が修復される。
【0027】
間葉幹細胞は特定の細胞表面マーカーによって同定され得る。これらの単離されたMSC集団の表面マーカーは、コネキシン-43、c-kit(CD117)、およびCD90に対して99%陽性であり、かつCD34、CD45、MHC、MLC、CTn1、αSA、およびMEF-2に対して100%陰性であると特徴付けられる。初代骨髄からMSCが富化された集団の単離のための非限定的な方法には、例えば、実施例において記載されているような、CD34細胞表面マーカーに対して陽性である細胞に対する陰性選択技術が含まれる。
【0028】
いくつかの態様において、rMSCは、サイトカインカクテルを宿主被験体に投与することによって、骨髄から虚血心臓まで移動するようにインビボで誘導される。他の態様において、rMSCは、疾患を有する心臓または周囲の血管に直接移植または注入される。細胞の投与は、種々の手順によって心臓に方向付けられ得る。局在化投与が好ましい。間葉幹細胞は多様な供給源 (好ましい順番に、自系、同系、同種異系、または異種を含む) 由来であり得る。
【0029】
1つの態様において、MSCは注射のための薬学的に許容される培地中に細胞懸濁物として投与される。注射は局所的、すなわち、心筋の損傷した部分に直接的であり得るか、または全身的に、すなわち、周辺の循環系に注射され得る。ここでも、局所的投与が好ましい。
【0030】
別の態様において、rMSCはさらに、横紋筋細胞の分化および/または維持のために重要なタンパク質を発現する遺伝子を含むように改変または操作される。血管形成および血管再生を刺激する因子をコードする遺伝子もまた、意図される。DNAを導入するための公知の方法のいずれかが適切であるが、しかし現在は、エレクトロポレーション、レトロウイルスベクター、およびアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターが好ましい。
【0031】
本発明はまた、インビトロ法を使用して、MSCを心筋細胞表現型に部分的に分化させる可能性に関する。この技術は、特定の環境下で、MSCを測定の分化経路に傾かせることによって、心臓系統へのMSCの転換を最適化し得る。これにより、細胞が投与されてから、完全に分化するまでに必要な時間を短縮できる可能性がある。
【0032】
心筋組織などの損傷組織への細胞の移動、ホーミング、接着、または移植を増強する方法もまた、本発明の範囲内である。心臓の損傷または疾患として、心筋梗塞、うっ血性心臓疾患または心不全が挙げられる。ホーミングとは、損傷組織、例えば損傷心臓組織に由来する組成物の同化を意味し、これにより骨髄または循環系から細胞が補充される。接着とは、1つの細胞の別の細胞への結合、または細胞外マトリクスへの細胞の結合を意味する。接着には、細胞の移動、例えば血管中でのローリングが含まれる。接着分子は、細胞-細胞の、および細胞-細胞外マトリクスの、接着、認識、活性化、および移動に関与する、多様なファミリーの細胞外糖タンパク質(例えばラミニン)および細胞表面糖タンパク質(例えばNCAM)である。細胞移植とは、細胞(例えば幹細胞)が分化した組織に取り込まれるようになり、かつその組織の一部になるプロセスをいう。例えば、幹細胞は心筋細胞に結合し、機能的心筋細胞に分化し、および心筋に存在するようになる。
【0033】
本方法は、細胞(例えば幹細胞)の表面上のポリペプチドの量を増加させることによって実行される。本発明の方法は、外因性幹細胞関連ポリペプチドまたはこのようなポリペプチドをコードする核酸の非存在下での損傷組織の領域における幹細胞の数と比較して、この領域における幹細胞の数を増加させる。受容体は、CXCR4、IL-6RA、IL-6ST、CCR2、Selel、Itgal/b2、Itgam/b2、Itga4/b1、Itga8/b1、Itga6/b1、およびItga9/b1からなる群より選択される。好ましくは、細胞は、骨髄由来幹細胞のような幹細胞である。より好ましくは、細胞は、間葉幹細胞である。細胞の表面上の受容体の量は、細胞をタンパク質と接触させること、または遺伝子の転写および翻訳を可能にする条件下で該受容体をコードする核酸を細胞に導入することによって増加される。この遺伝子産物は、幹細胞の表面上で発現される。幹細胞受容体は、損傷組織(例えば梗塞心臓組織)中で発現されるリガンドに結合する。
【0034】
損傷組織への細胞(例えば幹細胞)の移動、ホーミング、接着、または移植を増強する方法は、損傷組織において、損傷関連ポリペプチド(例えばサイトカインまたは接着タンパク質)の量を増加させることによって実行される。この方法は、外因性幹細胞関連ポリペプチドまたはこのようなポリペプチドをコードする核酸の非存在下での損傷組織の領域における幹細胞の数と比較して、この領域における幹細胞の数を増加させる。損傷関連ポリペプチド(例えば増殖因子)の同定により、心臓における修復(例えば心臓前駆細胞の増殖および分化)の内因性機構が活性化される。例えば、損傷関連ポリペプチドは、SDF1、IL-6、CCL2、Sele、ICAM-1、VCAM-1、FN、LN、およびTncからなる群より選択される。損傷組織は心臓組織、例えば虚血性心筋組織である。損傷組織は、標的タンパク質をコードする核酸またはタンパク質それ自体(例えばサイトカインまたは接着タンパク質)と接触される。例えば、標的タンパク質またはそのタンパク質をコードする核酸は、心筋に直接投与される。代替として、標的タンパク質をコードする内因性核酸分子を発現する細胞(例えば線維芽細胞)は損傷部位に導入される。上記に列挙された遺伝子/遺伝子産物の核酸配列/アミノ酸配列は公知であり、公的に利用可能である(例えば、GENBANK(商標)より)。
【0035】
本発明はまた、患者由来の試料における、心臓疾患の際に差次的に発現される2つもしくはそれ以上の遺伝子(またはそれによってコードされるポリペプチド)のレベルを決定することによって、心臓疾患に罹患しているかまたはそれを発症するリスクを有する哺乳動物における心臓疾患を診断する方法に関し、ここで、正常な対照(すなわち、心臓疾患を有さない哺乳動物)のレベルと比較したこれらの細胞のレベルの増加または減少により、哺乳動物が心臓疾患に罹患しているかまたはそれを発症するリスクを有することが示される。試料は、心臓組織、血液、血漿、または血清に由来する。
【0036】
他に定義しない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと同じかまたは類似の方法および材料を、本発明の実践および試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書中に言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はそれらの全体が参照として本明細書に組み入れられる。対立する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみであって、限定を意図したものではない。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかである。
【0038】
詳細な説明
間葉幹細胞(MSC)は、複数の型の細胞系統に細胞分化するための広範な可能性を有すること、および非自系宿主に移植されたときに免疫系媒介性拒絶の発生の減少が知られている前駆細胞である。MSCは心筋細胞、血管内皮、および結合組織に分化する実証された能力を有する。例えば、Pittenger et al., 1999 Science 284: 143-147; 米国特許第6387369、6214369、5906934、5827735、5591625、5486359、および5197985を参照されたい。
【0039】
成体動物の骨髄は間葉幹細胞(MSC)の貯蔵所である。これらの細胞は自己再生性であり、非造血組織のクローン性前駆体である。これらは多能性である。MSCは骨芽細胞、軟骨細胞、グリア細胞、星状細胞、神経細胞、および骨格筋に分化することができる。骨髄から単離された細胞は血管および毛細血管に分化することができる。例えば、骨髄由来単核球(BM-MNC)は、心筋虚血組織および骨格筋虚血組織に移植された場合、新規な血管を形成し、該標的組織中の血管形成を増大させる。PCT公開WO 02/08389を参照されたい。骨髄由来幹細胞は心筋に分化することができ、心臓機能の回復のために有用である。
【0040】
酸化ストレスは、損傷した心筋に移植された細胞の主要な死因であることが示されてきた。Wang et al., 2001, J Thorac Cardiovasc Surg 122: 699-705; Zhang et al., 2001, J Mol Cell Cardiol 33: 907-921。セリン-スレオニンプロテインキナーゼAkt(プロテインキナーゼB)およびヘムオキシゲナーゼ(HO)のような細胞保護遺伝子についての組換え体であるトランスジェニック細胞は、梗塞心筋瘢痕組織に移植されたときに、虚血性損傷に対して細胞を保護し、移植片細胞の生存を増大させる。
【0041】
細胞保護ポリペプチドは、酸化ストレス誘導性細胞死のような細胞損傷を阻害することができるポリペプチドである。適切な組織保護ポリペプチドには、非限定的な例として、抗酸化酵素タンパク質、熱ショックタンパク質、抗炎症タンパク質、生存タンパク質、抗アポトーシスタンパク質、冠状血管緊張タンパク質(coronary vessel tone protein)、血管形成促進タンパク質(pro-angiogenic protein)、収縮性タンパク質、プラーク安定化タンパク質、血栓保護タンパク質(thromboprotection protein)、血圧タンパク質、および血管細胞増殖タンパク質が挙げられる。好ましくは、細胞保護ポリペプチドはヒトAktポリペプチド(例えば、Akt-1、Akt-2、またはAkt-3)、ヒトヘムオキシゲナーゼポリペプチド(例えば、HO-1またはHO-2)、ヒトインターフェロン誘導性二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ(すなわち、PKR;真核生物翻訳開始因子2αプロテインキナーゼ2;Pl/eIF-2Aプロテインキナーゼ)ポリペプチドまたはヒト細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(すなわち、ecSOD)、またはいずれかのこのようなポリペプチドの生物学的に活性な断片である。例示的なヒトAkt-1ポリペプチドには、例えば、GenBankアクセッション番号NP_005154およびAAH00479が挙げられる。例示的なヒトAkt-2ポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号P31751およびNP_001617が挙げられる。例示的なAkt-3ポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号Q9Y243およびNP_005456が挙げられる。例示的なヒトヘムオキシゲナーゼ-1ポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号P09601およびCAA32886が挙げられる。例示的なヒトヘムオキシゲナーゼ-2ポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号P030519およびAAH02396が挙げられる。例示的なヒト細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号Q07449およびP08294が挙げられる。例示的なヒトPKRポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号P19525、JC5225、およびNP_002750が挙げられる。
【0042】
他の細胞保護遺伝子は表Iに提供される。
【0043】
間葉骨髄細胞
骨髄由来間葉幹細胞は、心筋細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、星状細胞、肺細胞、および神経細胞を含む種々の細胞に分化する。全身投与されたMSCは、特定の器官(例えば、脳)に向かってホーミングおよび移動し、そこでそれらは星状細胞型移植片を形成するように脳に移植され、かつ脳に移動し、神経細胞特異的マーカーNeuNおよびMAP-2およびGFAPの発現を伴う神経細胞表現型を獲得し、そして機能的結果を改善する。さらに、骨髄由来細胞は骨格筋衛星細胞および成熟骨格筋(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィーの動物モデルにおける)に分化し、ならびにブレオマイシン誘導性肺損傷を維持したレシピエントにおいてI型肺細胞に分化する。MSCはまた、心筋梗塞の領域中の心筋細胞に分化する。
【0044】
移植前に公知の方法を使用して、エキソビボ遺伝子操作を実行する。MSCは自系または同系である。代替として、MSCは同種異系である。同種異系rMSCは、ドナーからのいかなる免疫応答も妨害または減少するために任意に改変される。
【0045】
Aktを用いた遺伝子改変による、移植周辺間葉幹細胞の生存の増強
本発明以前には、再生能力は移植周辺期間における細胞死によって制限されていた。移植周辺後細胞死の主要な原因は栄養および酸素を欠く虚血環境への細胞の配置であると考えられていたが、炎症、マトリクス接着または細胞-細胞相互作用からの生存シグナルの損失、および移植の実際の力学はすべて、アポトーシスの増加に貢献する。本明細書中に記載される方法は、遺伝子操作を通して移植された細胞の生存度を増強する。Aktは、低酸素、酸化ストレス、流体剪断、炎症性サイトカイン(例えばTNF-α)、ならびに種々の他の増殖因子およびサイトカインによって活性化される。Aktは生存シグナルの一般的なメディエーターであり、細胞生存のために必要かつ十分である。これは、このことを、アポトーシスファミリーメンバーCed-9/Bcl-2およびCed-3/カスパーゼ、フォークヘッド転写因子、IKK-αおよびIKK-βを標的化することによって達成し、例えば、グルコース輸送を増加させることによって、細胞内グルコース代謝を調節する際に役割を果たす。Aktは、インビトロと、初期の移植後期間においての両方でMSC生存度を促進する。構成的には発現されなかったが、必要とされるときに活性化された野生型Aktの使用は、構成的に発現されるAkt発現の潜在的に有害な効果を回避しながら、細胞をアポトーシスから保護した。結果として、Aktを過剰発現するために遺伝的に増強されたMSCの心臓内保持、移植、および分化は、対照MSC(例えば、レポーター遺伝子単独を発現するもの)よりも優れていた。
【0046】
心臓移植モデルにおいて、虚血心筋における寿命/生存度の増加により保持されるMSCの数が大きくなるほど、3週間後に再生された心筋の体積はより大きくなり、収縮期および拡張期の心臓機能は正常化され、再構築が妨害された。
【0047】
Akt遺伝子産物をコードする核酸はレトロウイルス形質導入によって細胞に導入された。培養中のMSCが高力価のレトロウイルス上清に、10日目〜15日目の間に曝露された後、かつ、GEPまたはLacZのいずれかを発現するレトロウイルスを使用する造血画分からの分離の前に、80%を上回る形質導入効率が観察された。細胞は培養物中で増殖し続け、遺伝子操作後幹細胞マーカーc-kitを発現し続けた。Clontechからのマウス幹細胞ウイルス(pMSCV)を使用し、それによって、移植後のレトロウイルスサイレンシングに伴う潜在的な問題を回避した。レトロウイルスベクターは、安定な、高レベル遺伝子発現を達成した。遺伝子発現は、本発明者らの実験の期間、観察された(インビトロで8週間、インビボで3週間)。
【0048】
レトロウイルスによって形質導入されたMSCは、生存促進セリン-スレオニンキナーゼAktで形質導入された。37℃および21%周囲O2の基底条件では、Akt活性は両方の群において等価であった。無血清培地中24時間の無酸素後、Akt活性はAkt-MSC群において28.5倍増加し、無血清培地中hypozinにおいて6.6倍増加し、Akt活性はAkt-MSC群において28.5倍増加し、GFP-MSC群において6.6倍増加し、MSCアポトーシスが79%減少し、DNAラダー化を減少した。Aktの保護効果は、c-kit+およびTUNELまたはアネキシンVについての左心室切片の二重染色によってインビボで評価された。この方法は、心筋において保持されるc-kit+の数、およびアポトーシス性であったc-kit+細胞のパーセントの決定を可能にした。虚血性心筋への5×106LacZ-MSCの移植の24時間後、高倍率視野(hpf)あたり33±1.53 LacZ-MSCSの68%がアポトーシス性であった。対照的に、5×106Akt-MSCの移植24時間後、hpfあたり82±6.7 Akt-MSCの19%のみがアポトーシス性であった(p<0.001)。さらに48時間後、hpfあたり22.7±9.8 LacZ-MSCの31%がアポトーシス性であった;それに対して、hpfあたり66±3.5 Akt-MSCの17%がアポトーシス性であった(p<0.001)。3週間後、心筋中にはc-kit+細胞は存在しなかった。これらの観察は、Aktがインビトロで低酸素および血清飢餓状態に曝されたMSC中で、ならびに虚血性心筋への移植後に活性化されること、ならびにAkt活性が移植直後の期間、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、7日、および移植後数週間、MSCアポトーシスを妨害することを示す。
【0049】
外因性ポリペプチドの発現
MSCは1種または複数の細胞表面受容体をコードする外因性核酸を発現するように遺伝子改変される。これらの受容体には、CxCケモカイン受容体(例えば、CxCr1-6)、CCケモカイン受容体(例えば、CC12、CC16、CC17およびCC19);インターロイキン受容体;trk受容体;エストロゲン受容体;インテグリン受容体;腫瘍壊死因子(TNF)受容体;他のケモカイン受容体(例えば、fekL;Fek-1);血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGF-R、例えば、Flt-1、Flk1);エフリン受容体(EPH)、IgG受容体(例えば、IgGa4およびIgGb1);および血小板由来増殖因子受容体が挙げられる。
【0050】
本発明はまた、1種または複数の接着分子を発現するrMSCを提供する。これらの接着分子には、P-セレクチン、E-セレクチン、血管細胞接着分子(VCAM)、細胞内接着分子(ICAM)、血小板内皮細胞接着分子(PECAM)、およびLF-1が挙げられる。
【0051】
本発明はまた、任意に細胞外マトリクスタンパク質の1種または複数の修飾因子を組み合わせて、細胞表面上に1つまたは複数の細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を発現するrMSCを提供する。例示的な細胞外マトリクスタンパク質には、インテグリン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、テネイシンC、ビトロネクチンCSPG、およびトロンボスポンジンが挙げられる。例示的なECM修飾タンパク質には、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)、MT-MMP、メタロプロテアーゼの組織阻害因子(inhibitor)(TIMP)、ディスパーゼ、コラゲナーゼ、およびEMMPRINが挙げられる。
【0052】
本発明はまた、1つまたは複数の増殖因子またはサイトカインを発現するrMSCを提供し、これには、SDF-1、インターフェロン、インターロイキン、ヘパリン、組織プラスミノーゲン活性化因子(activator)、TNF、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血小板因子(例えば、PF-4)、インスリン様増殖因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、エリスロポエチン、エフリン、およびコロニー刺激因子(CSF)が挙げられる。
【0053】
上記に記載されるタンパク質に加えて、MSCは、1種または複数の抗酸化タンパク質を発現する外因性核酸を含む。例示的な抗酸化剤には、スーパーオキシドジスムターゼ、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)、ATX-1、ATOX-1、およびAhpDが挙げられる。
【0054】
血管形成および脈管形成の1種または複数の誘導因子をコードする遺伝子は、同様に任意に細胞に形質導入される。このような誘導因子には、VEGF、線維芽細胞増殖因子(FGF)、PDGF、エフリン、および低酸素誘導性因子(HIF)が挙げられる。
【0055】
rMSC分化
rMSCは、選択された標的組織中で特定の細胞型に分化する。心筋においては、rMSCは、例えば、心筋細胞に分化する。脳または脊柱においては、rMSCは神経細胞および/または星状細胞に分化する。骨においては、rMSCは骨芽細胞、破骨細胞、または骨細胞に分化する。軟骨においては、rMSCは軟骨細胞に分化する。脂肪組織においては、rMSCは脂肪細胞に分化する。骨格筋においては、rMSCは筋細胞または衛星細胞に分化する。肝臓においては、rMSCは肝細胞に分化する。肺においては、rMSCは肺細胞に分化する。血管においては、rMSCは内皮細胞、平滑筋細胞、または周皮細胞に分化する。
【0056】
組織特異的送達系
MSCは多数の細胞型に分化できる。本発明は、rMSCが全身的または局所的に投与されて選択された型の組織、例えば損傷組織に定着する送達系を含む。例えば、rMSCは標的組織に直接注射される。注射の部位は損傷部位であるか、または損傷組織の近傍である。代替として、特定の組換えリガンドまたは受容体を発現するrMSCは被験体に導入され、次いでその細胞は、標的組織中の同族結合パートナーの発現を誘導することによって望ましい標的組織に標的化される。
【0057】
MSCは、特定の組織中で抗アポトーシスタンパク質(Akt)を産生するためのみに改変される。非限定的な例として、Akt遺伝子を含む外因性核酸は、組織特異的プロモーターの制御下に配置される。代替として、Akt発現は光感受性プロモーターの制御下に配置され、それによって、Akt遺伝子は、制御された様式で、照射された組織またはその領域中でのみ発現される。
【0058】
rMSCとの損傷前接触による、虚血-再灌流損傷の予防
虚血-再灌流によって引き起こされる細胞死および組織損傷が、特定の外科的手順の結果として起こることが合理的に予測され得る状況が、臨床的設定において発生する。虚血-再灌流損傷を生じ得る心臓用の手順としては、バルーン血管形成、冠動脈バイパス形成手術、心臓移植、および弁置換術が挙げられる。同様の損傷は、腎臓、肝臓、および血流の減少または停止から生じる他の器官において起こる。全身性または多器官の虚血-再灌流損傷はまた、低体温、感染、および他の原因から生じ得る。本発明は、損傷の前および/または損傷と同時に、rMSCで被験体を処置することによって虚血-再灌流による細胞死および組織損傷を予防または減少する方法を含む。
【0059】
2種またはそれ以上の外因性遺伝子配列を含むrMSC
本発明は、2種またはそれ以上の外因性遺伝子配列を含むrMSCを提供する。これらの遺伝子配列は、単一のプロモーター、または2つのプロモーターに機能的に連結され得、同じ核酸中に含まれ得るか(シス)、または別個の核酸上に含まれ得る(トランス)。本明細書中で使用される遺伝子配列には、タンパク質のオープンリーディングフレーム(open-reading frame)、またはオープンリーディングフレームの一部が含まれ、その結果、翻訳されたポリペプチドは、完全なオープンリーディングフレームから翻訳されたポリペプチドのそれと同様の生物学的活性を有する。遺伝子配列にはまた、プロモーター、エンハンサー、およびサイレンシングエレメントが含まれる。
【0060】
この2種またはそれ以上の遺伝子配列は、抗アポトーシス遺伝子(例えば、Akt)および細胞表面受容体(例えばホーミング分子); 抗アポトーシス遺伝子および接着分子;抗アポトーシス遺伝子および増殖因子;抗アポトーシス遺伝子および抗酸化;抗アポトーシス遺伝子および血管形成/脈管形成誘導因子;または抗アポトーシス遺伝子および細胞外マトリクスタンパク質もしくはECM修飾因子である。
【0061】
サイトカインおよび接着受容体に媒介される、損傷組織へのMSCの輸送、ホーミング、および移植
特定のサイトカインおよび接着受容体は、損傷組織(例えば虚血-再灌流によって損傷した心筋など)へのMSCのホーミングおよび付着において決定的な役割を果たす。本発明は、MSCの富化またはこれらのサイトカインおよび接着受容体の外因性レベルを発現するrMSCの生成および使用を提供する。非限定的な例として、細胞表面受容体およびリガンドの特異的コレクションを発現するMSCが細胞ソーティングを使用して富化され、および高効率レトロウイルス遺伝子移入ストラテジーを使用して、遺伝子改変されたこれらのMSCおよび任意に、富化していないMSCである。これらのrMSCは、虚血性心臓から生成したサイトカインに対する応答性が増大しており、かつ虚血性心筋への接着が増大しており、次には、移植を増大させる。例えば、rMSCへのIL-8受容体の導入はホーミングのために有用であり、α-インテグリン4は接着のために有用である。
【0062】
MSCの細胞マーカー特徴付け
単離されたMSCはマーカー(例えば細胞表面ポリペプチド)の存在に基づいて他の細胞型から区別される。これらのマーカーの検出は、免疫組織化学、FACSソーティング、およびRT-PCRを使用して実行され得る。MSC型の有用なマーカーには以下が挙げられる。
a. 増殖因子受容体:CD121(IL-1R)、CD25(IL-2R)、CD123(IL-3R)、CD71(トランスフェリン受容体)、CDI17(SCF-R)、CD114(3-CSF-R)、PDGF-R、およびEGF-R
b. 造血マーカー:CD1a、CD11b、CD14、CD34、CD45、CD133
c. 接着受容体:CD166(ALCAM)、CD54(ICAM-1)、CD102(ICAM-2)、CD50(ICAM-3)、CD62L(L-セレクチン)、CD62e(E-セレクチン)、CD31(PECAM)、CD44(ヒアルロン酸受容体)
d. インテグリン:CD49a(VLA-α1)、CD49b(VLA-α2)、CD49c(VLA-α3)、CD49d(VLA-α4)、CD49e(VLA-α5)、CD29(VLA-β)、CD 104(β4-インテグリン)
e. その他のマーカー:D90(Thyl)、CD105(エンドグリン)、SH-3、SH-4、CD80(B7-1)、およびCD8(B7-2)
【0063】
MSCマーカーの特定のコレクション(または「用法指示(signature)」)が提供され、これは、特定の細胞型に分化することができるrMSCの生成を可能にする。非限定的な例として、心筋細胞に発達する最も大きな能力を有するMSCの亜集団が心筋用法指示を使用して単離され得る。本発明のMSCの免疫細胞化学的特徴付けは図17A〜図17Hにおいて提供される。
【0064】
冠状血管疾患
多くの患者が種々の型の心不全(心筋梗塞、症候性もしくは症候性でない左心室機能疾患、またはうっ血性心不全(CHF)を含む)のリスクを有するか、またはそれに罹患している。現在、約490万人と見積もられる米国人がCHFであると診断されており、年間40万人の新患が加えられている。本年は30万人を超える米国人がうっ血性心不全で死亡すると考えられる。心筋は通常修復能力を有しない。弱くなった心筋を増強するための能力は心筋症および心不全の治療における主要な進歩である。心不全の医学的治療における進歩に関わらず、この疾患に起因する死亡率は高いままであり、ここでは大部分の患者が診断後1年から5年以内に死亡する。
【0065】
冠状血管疾患は少なくとも2つの群に分類され得る。急性冠状血管疾患には、心筋梗塞が含まれ、そして慢性冠状血管疾患には、冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大が含まれる。他の冠状血管疾患には、脳卒中、心筋梗塞、拡張型心筋症、再狭窄、冠状動脈疾患、心不全、不整脈、アンギナ、または高血圧が含まれる。
【0066】
急性冠状血管疾患は、心臓への血液供給の突然の遮断を生じ、これは心臓組織に酸素および栄養を欠乏させ、心臓組織の損傷および死を生じる。対照的に、慢性冠状血管疾患は、時間をかけて心臓組織への酸素および血液の供給を徐々に減少することによって特徴付けられ、進行性の損傷および心臓組織の最終的な死を引き起こす。
【0067】
組織保護ポリペプチド
表Iは本発明の組成物および方法において有用である組織保護ポリペプチドのリストである。
【0068】
(表I)先天的および後天的な心臓疾患のための遺伝子に基づく治療についての標的
略号:AAV、アデノ関連ウイルス;AS-ODN、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド;CAD、冠状動脈疾患;DCM、拡張型心筋症;HF、心不全;LV、レンチウイルス;MI、心筋梗塞;α-MHC、αミオシン重鎖;RV、レトロウイルス;HO-1、ヘムオキシゲナーゼ-1;SOD、スーパーオキシドジスムターゼ;GPx、グルタチオンペルオキシダーゼ;HSP70、70kD熱ショックタンパク質; HSP90、90kD熱ショックタンパク質; HSP27、27kD熱ショックタンパク質;I-CAM、細胞内接着分子;V-CAM、血管接着分子;NF-κB、核因子κB;TNF-α、腫瘍壊死因子α;eNOS、内皮一酸化窒素シンターゼ;VEGF、血管内皮増殖因子;FGF、線維芽細胞増殖因子;HGF、造血増殖因子;SERCA 2A、筋形質/小胞体Ca-2+ ATPase;V1受容体、バソプレッシン-1受容体;bARK、β-アドレナリン受容体キナーゼ;PAI-1、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1;TPA、組織プラスミノーゲン活性化因子;COX-1、シクロオキシゲナーゼ-1;PGI2シンターゼ、プロスタサイクリンシンターゼ;ANP、心房性ナトリウム利尿ペプチド;ACE、アンギオテンシン変換酵素;AGT、アンギオテンシノーゲン;AT1、1型アンギオテンシンII;NOS、一酸化窒素シンターゼ;PCNA、増殖細胞核抗原;SCN5A、心臓ナトリウムチャンネル5A。
【0069】
調節可能な遺伝子発現
最適な発現レベルを達成するため、および、構成的遺伝子発現に付随する副作用を減少させるために、遺伝子発現が調節されることが、効果的な遺伝子治療には必要である。導入遺伝子の構成的発現から生じる最小限の潜在的な副作用を伴う虚血/再灌流損傷に対する心筋保護のための理想的なストラテジーは、調節可能な発現系である。ある態様において、遺伝子発現をオンにすることは、虚血(低酸素)の発生とともに起こり、その結果、遺伝子産物が再灌流の間にすでに存在している。
【0070】
多くの転写因子は、低酸素および酸化ストレスによって修飾される。低酸素への分子的応答の研究は、低酸素誘導可能な遺伝子発現の主制御因子としてHIF-1を同定した。低酸素症下では、HIF-1はその標的遺伝子のエンハンサー領域中の低酸素応答性エレメント(HRE)に結合し、遺伝子転写をオンにする。さらに、虚血後の再灌流または再酸素供給は、NF-κBのトランス活性化能力を増大させる。NF-κBによって調節される遺伝子にはサイトカインおよび接着分子が含まれ、これらは炎症性応答を促進することによって細胞死に寄与する。いくつかの研究は、低酸素および高酸素環境が、HREおよび活性化NF-κBのシス作用性コンセンサス配列によってそれぞれ駆動される異種遺伝子発現を活性化するために使用され得ることを示す。従って、本発明の1つの局面において、少なくとも1つのHREが導入遺伝子発現を駆動するためにエンハンサーとして利用される。再灌流時間の間に心筋保護を達成するために導入遺伝子発現の十分な時間を保証するために、酸化ストレスによって活性化される第2の調節エレメント(例えばNF-κB応答性エレメント)が特定の態様において利用される。
【0071】
細胞特異的遺伝子発現
現在、効率的な細胞特異的標的化ベクターが存在しないことによって、遺伝子治療の潜在的な応用が制限されている。標的細胞中で治療的であるタンパク質もまた、通常の組織に対しては有害であり得るため、この組織特異性の欠如は、遺伝子治療にとっては根本的な問題である。このように、導入遺伝子の細胞非特異的発現は、長期間にわたって病変を生じ得る代謝的かつ生理学的機構を誘導する可能性がある。局在化した注射は、標的化ベクターの局在化発現をある程度提供し得るが、しかし、他の細胞および器官に影響を与える循環への溢出がなお存在し得る。この問題を回避するための1つの方法は、組織特異的(例えば、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖)プロモーターの使用によって主として標的細胞に治療タンパク質の発現を制限し得る転写標的化ベクターを使用することである。特に再灌流損傷する傾向がある心筋における細胞は心筋細胞および微小血管細胞である。細胞特異的ストラテジーは、いずれの細胞型も保護するように指向され得る。
【0072】
HO-1、Akt、またはecSOD遺伝子発現を用いる心筋保護
治療剤としてのHO-1の選択は、この酵素がヘムの潜在的な酸化剤促進活性を中和すること、およびその複数の触媒的副産物ビリルビン、一酸化炭素(CO)、および遊離の鉄が一緒に、強力な多能性細胞保護効果を発揮することの証拠に基づいてなされた。ビリルビンはペルオキシラジカルを除去し、膜脂質およびタンパク質の過酸化を減少させる強力な内因性抗酸化剤である。COは血管拡張剤であり、強力な抗炎症性かつ抗アポトーシス剤である。遊離の鉄は鉄結合タンパク質フェリチンの合成を刺激し、これは、フリーラジカルのイオン媒介性形成を減少させ、いくつかの鍵となる細胞保護遺伝子をアップレギュレートする。
【0073】
心臓組織に対する組換え細胞治療
遺伝子治療とは、特定の核酸の被験体への投与によって実行される治療をいう。核酸は標的細胞に送達され、次には治療的効果(例えば、低酸素関連損傷後の心筋細胞の細胞死のような細胞損傷の阻害)を発揮する遺伝子産物を産生する。当技術分野において公知である標準的な遺伝子治療方法が本発明の実施において使用され得る。例えば、Goldspiel, et al., 1993. Clin Pharm 12: 488-505を参照されたい。組換え細胞治療とは、遺伝子改変した自系細胞または異種細胞を被験体へ投与することによって実行される治療をいう。
【0074】
本発明の治療組成物は、プロモーターに機能的に連結された抗アポトーシス性ポリペプチドをコ−ドする組換え核酸を発現する、少なくとも1つのMSCを含む。MSCへの核酸の挿入は、当業者に公知の任意の適切なベクターを用いて行われ得る。1つの型のベクターは「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが連結され得る、線状または環状の二本鎖DNAループをいう。別の型のベクターはウイルスベクターであり、ここでさらなるDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る。特定のベクターはそれらが導入される宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、細菌ベクターは細菌複製起点およびエピソーム哺乳動物ベクターを有する)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクターは、それらが機能的に連結される遺伝子の発現を指向することができる。このようなベクターは、本明細書中では「発現ベクター」といわれる。一般的に、組換えDNA技術における有用性のある発現ベクターはしばしばプラスミドの形態である。適切な発現ベクターにはウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)が挙げられる。さらに、あるウイルスベクターは、特定の細胞型を特異的または非特異的に標的化することができる。
【0075】
組換え発現ベクターは、標的細胞(例えば、心筋細胞)における発現のために適切な形態の核酸を含む。組換え発現ベクターには、発現される核酸に機能的に連結された1つまたは複数の調節配列が含まれる。例えば、このベクターには、血管中で核酸の発現を優先的に指向するプロモーター配列および/またはエンハンサー配列(例えば、心臓に制限されたアンキリン反復タンパク質プロモーター)が含まれる。機能的に連結されるとは、関心対象のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で、調節配列に連結されることを意味する(例えば、ベクターが宿主細胞に導入される場合、インビトロ転写/翻訳系において、または宿主系において)。「調節配列」という用語には、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。このような調節配列は当技術分野において公知である。Goeddel;GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)を参照されたい。
【0076】
プロモーターは誘導的または構成的であり得、および任意に、組織特異的であり得る。プロモーターは、例えばウイルスまたは哺乳動物起源であり得る。好ましくは、プロモーターはヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターである。核酸分子組成物は、細胞保護ポリペプチド(例えば、hHO-1ポリペプチドまたはecSODポリペプチド)のコード領域に機能的に連結された発現制御エレメントを含む。ある態様において、発現制御エレメントはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである。特定の態様において、ポリペプチドをコードする核酸分子および調節配列は、ゲノム中の所望の部位での相同組換えを促進する領域に隣接し、それゆえに核酸の染色体内発現を提供する。例えば、核酸分子は、必要とされる複製およびパッケージングシグナルをコードするアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している。例えば、Koler and Smithies, 1989. Proc Natl Acad Sci USA 86: 8932-8935を参照されたい。代替として、核酸はエピソーム性のままであり、内因性遺伝子(例えば内因性HO遺伝子)を誘導する。
【0077】
患者の心臓へのrMSCの送達は、直接的(すなわち、患者の心筋組織へのrMSCのインビボ注射)または間接的(すなわち、患者の末梢血管へのrMSCの灌流であり、その後、損傷心臓組織へのrMSCのホーミングを行う)のいずれかであり得る。核酸は、ウイルスベクターによって(例えば、欠損性または弱毒化されたレトロウイルスベクターまたは他のウイルスベクターを使用する感染によって;米国特許第4,980,286を参照されたい);裸のDNAを直接注射することによって;微粒子ボンバードメント(例えば、「Gene Gun(登録商標)」Biolistic, Dupont)を使用することによって;脂質で核酸をコートすることによって;細胞表面受容体/トランスフェクト剤を同時投与することによって;リポソーム、微粒子、もしくはマイクロカプセル中に核酸をカプセル化することによって;または核に入ることが知られているペプチドに組成物を連結することによって、MSC細胞に送達され得る。特定の態様において、核酸は、連結されたリガンドの受容体を特異的に発現する細胞型を「標的化」するために、受容体媒介エンドサイトーシスを容易にするリガンド(例えば、Wu and Wu, 1987. J Biol Chem 262: 4429-4432を参照されたい)に結合される。
【0078】
rMSCについての遺伝子治療ベクター
得られる組換え細胞のインビボ投与の前に、核酸が当技術分野において公知の任意の方法によって細胞に導入され、その方法には以下が含まれるがこれらに限定されない:トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、関心対象の核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターを用いる感染、細胞融合、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、染色体媒介遺伝子移入、マイクロセル媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合、および必要なレシピエント細胞の発生的機能および生理学的機能が移入によって破壊されないことを保証する同様の方法論。例えば、Loeffler and Behr, 1993. Meth Enzymol 217: 599-618を参照されたい。ある態様において、移入の方法論には、細胞への選択マーカーの同時移入が含まれる。次いで、細胞は、移入された遺伝子を取り込んで、かつそれを発現している細胞の単離を容易にするために選択圧の下に置かれる(例えば、抗生物質耐性)。この遺伝子移入方法は、細胞への核酸の安定な移入をもたらす;すなわち、移入された核酸は細胞子孫によって遺伝可能かつ発現可能である。次いで、これらの細胞は患者に送達される。
【0079】
得られる組換え細胞は当技術分野において公知の種々の方法によって患者に送達され、その方法には、トランスフェクトされた細胞の注射(例えば、皮下に)、または心臓組織への直接的な注射が含まれるがこれらに限定されない。例えば、HO核酸構築物は、自系または組織適合性上皮細胞に導入され、組換え皮膚細胞が皮膚移植片として患者に適用される。ある態様において、5×106rMSCが治療部位に注射される。治療部位あたりに注射されるrMSCの数は、少なくとも1×104細胞、少なくとも2.5×104細胞、少なくとも5×104細胞、少なくとも7.5×104細胞、少なくとも1×105細胞、少なくとも2.5×105細胞、少なくとも5×105細胞、少なくとも7.5×105細胞、少なくとも1×106細胞、少なくとも2.5×106細胞、少なくとも5×106細胞、少なくとも7.5×106細胞、少なくとも1×107細胞、少なくとも2.5×107細胞、少なくとも5×107細胞、少なくとも7.5×107細胞、または少なくとも1×108細胞であり得る。
【0080】
単位体積あたりの細胞の濃度は、キャリア媒体が液体または固体であるかに関わらず、実質的に同じ範囲内にある。送達されるMSCの量は、通常、個体の「パッチ」型適用が公開手順の間になされる場合により多いが、注射による追跡治療は本明細書中に記載されるようなものである。しかし、治療の頻度および期間は組織の関与の程度(パーセンテージ)に依存して変化する(例えば、左心室重量の5〜40%)。
【0081】
組織関与の5-10%範囲に含まれる場合において、rMSC注射調製物の単回投与と同程度に少なく用いて処置することが可能である。注射媒体は任意の薬学的に許容される等張性液体であり得る。例としては、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、DMEMのような培養培地(好ましくは無血清)、生理食塩水または水中5%デキストロースが挙げられる。20%組織関与の重症度レベル周辺の範囲より多くを有する場合において、rMSCの複数注射が想定される。追跡治療はさらなる投薬計画を含み得る。非常に重篤な場合において、例えば、40%組織関与の重症度レベル周辺の範囲において、長期間の(数ヶ月まで)維持用量アフターケアを伴う、より延長された期間の複数の等価な用量が示され得る。
【0082】
使用のために想定される細胞の総量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者によって決定され得る。任意の1人の患者のための投薬量は多くの因子に依存し、これには、患者のサイズ、身体の表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、一般的健康、ならびに同時に投与される他の薬物が含まれる。
【0083】
遺伝子治療の目的のために核酸が導入され得る細胞は、任意の所望の利用可能な細胞型を含み、異種、異種遺伝子型、同系、または自己であり得る。細胞型には、上皮細胞、内皮細胞、心筋細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、または種々の幹細胞もしくは前駆細胞、特に胚性心臓血管細胞、肝幹細胞(国際特許公開WO 94/08598)などのような分化された細胞が含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、遺伝子治療のために利用される細胞は患者に対して自系である。
【0084】
アポトーシス耐性rMSC
その産物がアポトーシスまたは炎症を阻害する遺伝子を発現する、レトロウイルスによって形質導入された組換え間葉幹細胞(rMSC)が特に本発明において提供される。損傷心臓の梗塞領域に直接注射された場合、これらの新規な組換えMSC(rMSC)は、低酸素症で生存するそれらの能力に少なくとも部分的に依存して、移植期間周辺で即時的に細胞死に抵抗する。好ましい抗アポトーシス遺伝子は酸化的損傷に対して耐性であり、かつ抗炎症性である。特に意図される抗アポトーシス候補遺伝子には、細胞保護ヘムオキシゲナーゼ(HO)遺伝子、セリン-スレオニンキナーゼAkt(プロテインキナーゼB)遺伝子および細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ecSOD)ポリペプチド;またはそれらの生物学的に活性な断片、誘導体、アナログ、もしくはホモログが含まれる。細胞生存タンパク質をコードするさらなる組換え核酸分子は当技術分野において公知であり、非限定的な例として、HIFA(低酸素誘導性因子)、DEL-1(発生胚遺伝子座-1)、NOS(一酸化炭素シンターゼ)、BMP(骨形態形成タンパク質)、P2-アドレナリン作動性受容体、およびSERCA2a(筋小胞体カルシウムATPアーゼ)が含まれる。ある態様において、rMSCは損傷組織部位または疾患を有する組織部位へのインビボでの遺伝子送達のためのベクターとして使用される。移植されたrMSCは心筋細胞に分化することができ、梗塞体積の減少、毛細血管密度の機能の増大、およびより少ない全体的瘢痕を含む治療的に意味のある改善を心臓機能に与える。移植されたrMSCは損傷後組織再構成を妨害し、梗塞後の標準化された心臓機能(収縮期および拡張期)を回復させる。
【0085】
心臓損傷は、移植されたrMSCを使用する筋形成を増強する組織応答を促進する。従って、rMSCは瘢痕形成の程度を減少させるため、および心室機能を増強するために梗塞領域に導入される。新しい筋肉は、それによって、梗塞心筋セグメント中に作製される。組換えMSCは梗塞組織の領域に直接浸潤される。これらの細胞の組み込みおよび引き続く分化は、本明細書中に記載されるように特徴付けされる。介入のタイミングは、臨床的設定を模倣するように設計され、ここでは急性心筋梗塞患者が最初に医療監視を受け、初回の治療を受け、続いて安定化し、次いで、必要な場合、心筋置換治療を用いる介入を受ける。
【0086】
治療される心筋梗塞の重篤度、すなわち、関与する左心室の筋肉奇異量のパーセンテージは約5パーセントから約40パーセントの範囲であり得る。これは、1つの連続的な虚血またはより小さな虚血性損傷(例えば、約2cm2から約6cm2までの水平方向の罹患した領域、および1〜2mmから1〜1.5cmの厚さを有する)である罹患した組織を含む。梗塞の重篤度は、どの血管が関与するか、および治療介入が始まる前にどれくらいの時間が経過したかによって有意に影響される。
【0087】
本発明に従って使用される遺伝子操作された間葉幹細胞は、好ましい順番に、自系、同種異系または異種であり、選択は、治療の必要の緊急度に大部分依存し得る。免疫的に生命を脅かす条件を提示する患者は、十分な数の自系MSCが培養されるか、または初期治療が自系MSC以外を使用して提供され得る間、心臓/肺マシン上で維持される。
【0088】
適切な環境刺激がrMSCを心筋細胞に転換する。rMSCの心臓系統への分化は、心臓環境に存在する因子によって制御される。刺激された心臓環境へのrMSCの露出は、これらの細胞を、特定の心筋系統マーカーの発現によって検出されるような心臓分化に方向付ける。局所的、化学的、電気的、および機械的な環境の影響が多能性rMSCを変化させ、心臓に移植された細胞を心臓系統に転換する。
【0089】
抗アポトーシス遺伝子または細胞保護遺伝子の発現を誘導するためにMSCに適用可能な一連の特異的処理は本明細書中に開示される。MSCのための増殖条件には、実施例2において提供されるものおよび、当技術分野において公知のもの(例えば、米国特許第6,387,369に記載)が含まれる。
【0090】
本発明のrMSC治療は、以下を含むいくつかの投与の経路によって提供され得る。第1に、開心手順の必要を回避する心臓内筋肉注射が、rMSCが注射可能な液体懸濁調製物中にある場合、またはrMSCが液体型で注射可能な生体適合性媒体中にあり、かつ損傷した心筋の部位で半固体になる場合に使用され得る。伝統的な心臓内シリンジまたは制御可能な関節鏡送達デバイスが、針の管腔または内径が十分な直径であって(例えば、30ゲージまたはそれ以上)、剪断力がrMSCを損傷しない限り使用され得る。注射可能な液体懸濁物rMSC調製物はまた、連続ドリップによってまたはボーラスとしてのいずれかで、静脈内投与され得る。心臓への直接的な物理的接近を含む開心手術手順の間、すべての記載された型のrMSC送達調製物が利用可能なオプションである。
【0091】
心筋におけるrMSCの移植
それによって間葉幹細胞が単離され得、かつ培養中で迅速に拡大され得るような、ストラテジーが開発された。一旦、培養物中で適切な細胞数に達すると、これらの細胞は、これらを生じた患者に投与されて戻され得る。この自系移動の技術は免疫抑制プロトコールの必要性を防ぐ。さらに、それによって90%を超える細胞が選択した遺伝子で形質導入されるような、これらの細胞の高度に効率的な遺伝子操作のための技術が開発された。抗アポトーシス遺伝子を発現するようなMSCの遺伝子操作は本発明に先立って記載されたことはなかった。この重要な改変の利点とは、移植時間周辺で即時的に細胞死の制限を克服することを可能にすることであった(今回の一連の実験において)。心筋における移植の最初の24時間での細胞死は、以前には克服できない問題であった。Reineckeらは、ほぼすべてのドナー成体ラット心筋細胞が凍結損傷した成体ラット心臓への移植後24時間で失われることを実証した。ZhangらおよびMuller-Ehmsenらは、30-60%のラット新生仔心筋細胞が、凍結損傷心臓または損傷していない心臓への移植でそれぞれ生存しないことを示し、および胎仔心筋細胞が梗塞心臓への移植で生存しないことが十分に認められている。
【0092】
非組換え骨髄由来細胞はなお、移植細胞死周辺に対して感受性である。Tomaらは、損傷していないヌードマウス心臓への移植後4日でヒト骨髄由来細胞の99.56%が死滅すると見積もっている。移植の前にラット骨格筋芽細胞を熱ショックに供することによってドナー細胞の損失を防ぐ初期の試みは、非常に限られた成功しかもたらさなかった。開示されたデータは、細胞死に抵抗する幹細胞の遺伝的改変が、梗塞後に失われる心筋細胞を完全に再生し得、およびそうすることによって、本発明者らは、梗塞後の心臓機能(収縮期および拡張期)を完全に正常化し得、その結果、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の心臓機能が回復される。同様に、損傷組織中の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の心筋細胞が再生される。
【0093】
このような発見が関連する市場とは、心筋梗塞後に症候性の(または症候性でない)左心室機能不全を有する患者、およびうっ血性心不全を有する患者に対する、迅速に拡大している市場である。これは急速に成長している市場である。うっ血性心不全(CHF)単独についての入院患者数は、1979年の377,000から1999年の978,000に増加しており;およびCHF単独に起因する死亡は、前の期間から157%に増加している。この疾患は、米国の保健システムに大きな犠牲を強要している。約490万人のCHFの診断を現在有し、年間に400,000例の新規症例が発生していると見積もられている。財政学的な見地からすれば、心不全に関連するコストは、年間で直接的なコストで203億ドル、間接的なコストで22億ドル、合計で年間225億ドルが含まれる。
【0094】
移植前に幹細胞を遺伝子改変することは、「抗死亡」ストラテジーのためのこれらの細胞の操作に限定されないが、以下のために遺伝子操作することが含まれる:(i)血管形成増殖因子を分泌するため;(ii)免疫学的な差異を克服するため;(iii)MSC増殖を制御するため;(iv)虚血性心筋へのMSCホーミングを増強するため;(v)虚血性心筋におけるMSC移植を増強するため;および(vi)移植後の収縮性機能を増強するため。
【0095】
本発明はさらに以下の実施例によって例証されるが、限定されるものではない。
【0096】
実施例
実施例1-精製した骨髄由来間葉幹細胞
心筋血流の妨害の延長により、心筋細胞の細胞死に至る事象が開始される。内因性修復メカニズム(例えば心筋細胞肥大および過形成など);ならびに血管形成および筋形成の目的のための心筋への骨髄由来細胞の輸送は、失われた心筋体積の非常に小さい部分のみを回復することができるが、機能的な影響をほとんど有さない。例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の全身性投与を使用して、実験的な心筋梗塞の前、その間、およびその後に骨髄由来幹細胞を動員することによって、治療目的のためにこれらの修復メカニズムを促進する試みは、失われた心筋体積を完全に回復すること、または心筋梗塞を正常化することに失敗した。他のグループにより、虚血性心筋注射用の骨髄由来細胞が収集され、この結果が、血管形成および筋形成の両方において、失われた心筋の不完全な置換、中程度の機能的改善を有することを実証した。現在、独占的な血管形成能力が骨髄から移動して虚血性心筋に存在し、そこでこれらは脈管形成および血管形成を誘導することが知られているので、上記の研究において報告されたどの程度の機能的改善が天然心筋細胞に対する血管形成の保護効果に起因するのか、およびどの程度が真の筋形成に起因するのかが明らかでない。さらに、筋形成が可能である適切な数の純粋な細胞の集団を単離することが技術的に困難であることがわかったので、今日まで報告されたストラテジーが意味のある臨床的な説明を見い出す可能性は低い。
【0097】
間葉幹細胞は、非造血組織の、自己再生性、クローン性前駆体である。これらは培養中で拡大可能であり、多能性であり、ならびに、骨芽細胞、軟骨細胞、星状細胞、神経細胞、および骨格筋に分化できる。Osiris Therapeuticsのグループは、C090ならびに独自のマーカーSH-2およびSH-3を発現するが、CD177(c-kit)を発現しない骨髄由来の推定のMSCがインビボで心筋に分化できることを報告した。しかし、梗塞ブタ心臓への6×107の同程度の多さのMSCの移植は心筋機能の改善を生じなかった。なぜなら、>99%と見積もられるヒト骨髄由来のMSCが、損傷していないヌードマウス心臓への移植後4日で死滅するからである。
【0098】
概念的には魅力的であるが、失われた心筋を置換するための細胞移植ストラテジーは、虚血性心筋への活発な(pert)移植の死滅に抵抗する多数の細胞を送達できないことによって制限される。Reineckeらは、ほぼすべてのドナー成体ラット心筋細胞が凍結損傷された成体ラット心臓への移植24時間後に失われることを実証した。ZhangらおよびMuller-Ehmsenらは、ラット新生仔心筋細胞が凍結損傷心臓または損傷していない心臓への移植でそれぞれ生存しないこと;および胎仔心筋細胞が梗塞心臓への移植で生存しないことを実証した。ドナー細胞死を防ぐ初期の試みは、限られた成功までしか達していない。
【0099】
従って、成体ラット骨髄由来MSCの純粋な集団を単離し、特帳付けし、および拡大した。次いで、細胞を試験して、これらがインビボで心筋細胞に分化するか否か、および虚血性ラット心臓への移植後心臓修復に関与するか否かを決定した。再生能力は、移植周辺期間中に細胞死によって制限されるので、本発明者らは、移植前にAktを過剰発現させるようにMSCを操作した。このセリン-スレオニンキナーゼは、多くの系において強力な生存シグナルであり、少なくとも部分的には、Badおよびカスパーゼ-9の不活性化により、ならびに生存促進分子Bcl-2およびIKKの活性化によって、その抗アポトーシス効果を発揮する。このストラテジーを使用して、虚血性心筋へのMSCのより多くの数の保持が3週間後の再生された心筋のより大きな体積、収縮期および拡張期の心臓機能の正常化、ならびに再構築の妨害に変換される。
【0100】
本研究におけるストラテジーは、高度に精製された骨髄由来間葉幹細胞(MSC)の集団を単離すること、およびこれらの細胞をアポトーシスに耐性にするように遺伝子操作を利用することであった。成体Sprague-Dawleyラットからの全体の骨髄の単核画分を単離し、MSCを単離および精製した。これらのc-kit+CD34-細胞は造血系統の細胞に分化しなかった。細胞はAktタンパク質を過剰発現するように安定に形質導入され、このAktタンパク質は、低酸素および血清飢餓の存在下で活性化され、インビトロでMSCをアポトーシスから保護した。虚血性心筋への移植に際して、500万個のAkt-MSCが移植周辺期間にアポトーシスに対して耐性であり、インビボで心筋細胞に分化した。実験的梗塞の3週間後、再生された心筋の細胞体積の移植は、同等な数のGFP形質移入MSC(5×10e6)が移植されたときよりも3倍から4倍高かった。これらの違いは、単離されたランゲンドルフ調製物に対する収縮期および拡張期の有意な機能的改善に変換された。結論として、心筋形成できる骨髄由来MSCが単離され得、精製され得、および培養中で拡大され得る。MSCのAkt遺伝子移入は、細胞死の有意な減少、再生された心筋の体積の増大、および心筋機能の改善を生じた。このようなカスタマイズ可能な細胞に基づく遺伝子治療ストラテジーは、心筋の疾患のための細胞治療の効果的かつ安全なヒトへの変換を妨害する拡張性の問題に対する可能性を提供する。
【0101】
いくつかのグループにより、心臓修復のための、分画されていないか、または細胞選別されていない骨髄由来細胞の使用が報告されている。これらの細胞の特徴付け、拡大、および分化のための条件は、さらなる定義を必要とする。CD34-/c-kit+成体ラット骨髄由来MSCの純粋な亜集団を単離し、特徴付けし、および増殖させた。このCD34-/c-kit+間葉幹細胞の亜集団は心筋細胞に分化し得、レポーター分子を安定に発現するように形質導入される。これらの細胞は、虚血性傷害によって損傷した心筋に移植されるときに心筋機能の増大を誘導し得る。
【0102】
成体Sprague Dawleyラットからの全体の骨髄の単核画分を密度遠心分離によって分離した。骨髄間質細胞は、コートされていないプラスチック表面に優先的に結合し、および標準的な条件下で造血細胞(HC)との混合培養中で増殖した。MSCは、80%を超える形質導入効率で、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはLac Zでレトロウイルス形質導入した。MSCは、コネキシン43およびc-kit(CD117)を発現するが、造血マーカーCD34、CD45、CD11bを発現しない;またはこの段階では成熟心臓マーカー(トロポニン、ミオシン重鎖、もしくはデスミン)を発現しない。MSCは陰性免疫-磁気ビーズ選別によってHCから分離され得るが、細胞分別の後で増殖を停止する。雄性ドナーラットからの形質導入されたLac Zを、雌性ラットLADの結紮60分後、虚血性心筋の境界領域に注射した。2週間後、左心室の自由壁および先端がβガラクトシダーゼ染色によって広範な青色染色を示し、このことは、Lac-Z発現細胞の存在を示した。導入遺伝子および染色体が、成熟心筋細胞、ミオシン重鎖およびミオシン軽鎖、α筋節アクチン、ならびに心臓トロポニンとともに同時局在した。心エコー分析は、対照と比較して、短縮分画において統計学的に有意な54%の増加を示し、および放出分画において34%の増加を示した。
【0103】
本明細書中で報告されたデータは、骨髄由来MSCがエキソビボで十分な規模まで拡大できることを示し、および損傷した心筋の機能を首尾よく回復するために遺伝試走される得ることそ示す。
【0104】
本方法は、臨床的に有用な量に到達するための幹細胞のエキソビボ拡大、自系移入、および患者に戻す移入の前に増強するための自系幹細胞の遺伝子改変のために有用である。それゆえに、本発明は、実施例2において記載されるように単離される、骨髄由来間葉幹細胞および間葉幹細胞のマーカーの単離、培養、精製の方法を含む。レポーター遺伝子および治療遺伝子の移入のための技術、ならびにこの様式で単離されたMSCが心筋細胞に分化することの実証のための技術もまた含まれる。治療遺伝子移入が終点で有意な改善を生じることの証拠には、間葉幹細胞移植単独と比較した場合の、rMSCの生存の増加、再生した心筋の体積の増加、および心臓機能の増大が含まれる。
【0105】
実施例2-rMSCの単離、遺伝子操作、および機能の増大
1. 骨髄由来間葉幹細胞の単離、培養、および精製
成体雄性Sprague-Dawleyラット(200グラム)をHarlan Laboratories(Indianapolis, IN)から購入した。動物を12:12の明期:暗期サイクル、24℃の大気温度、および60%湿度に維持した。食餌および水を自由に与えた。動物を、腹腔内ケタミン(70mg/kg)およびキシラジン(4mg/kg)を使用して麻酔した。両方の下肢の脛骨および大腿骨を滅菌外科的技術を使用して収集し、次いで21ゲージ針を用いて骨端板でカニューレ挿入した。骨髄腔に30mLの完全培地を3回流した。13mLのFicoll 1.077溶液(Pharmacia, Peapack, NJ)を細胞懸濁液の下に重層し、室温で20分間遠心分離した。バフィーコートを収集し、リン酸緩衝化生理食塩水で2回洗浄し、次いで標準的なヘマトサイトメーターを使用して計数した。全体で約5×107細胞を各動物から収集した。これらのうち、55cm2ポリスチレン細胞培養プレート(Corning)上にcmあたり1×106細胞をプレートした。これはコラーゲン、レトロネクチン、またはポリ-D-リジンでコートしたプレートと比較したときに、ポリスチレン表面に優先的に結合した。フロー図を図1に提供する。
【0106】
細胞を、ロット選択した20%ウシ胎仔血清(Invitrogen, Carlsbad, CA)、抗生物質および抗糸状菌溶液(Invitrogen, Carlsbad, CA)、および2mM グルタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)を補充したAlpha Minimal Essential Medium(Invitrogen, Carlsbad, CA)からなる完全培地中で、37℃で、5% CO2中で培養した。1回目の培地交換を3日目に実行した。細胞を、HBSS(Clonetics, Walkersville, MD)中0.025%トリプシン/0.01% EDTAで軽く処理することによって継代し、3日目から48日目まで、3日毎に計数した。細胞は、右側のグラフに示されるように培養中で迅速に増殖し、培養の9日目までに2.5×105細胞、15日目までに5×105細胞を生じた。成体雄性ラットの骨髄からのMSCはコートされていないプラスチック表面に結合した。造血細胞は結合できず、培地交換で除去された。培養中に増殖した単離されたMSCの増殖特性を図2に提供する。
【0107】
2. 上記に記載した技術によって単離された間葉幹細胞のマーカー
MSCを、造血幹細胞から区別される幹細胞マーカーの発現について試験した。免疫組織化学において、99%を超えるMSCがコネキシン-43、c-kit(CD117)、およびCD90を発現し、60%がKi67を発現し、そして15%がNkx2.5およびGATA-4を発現した。MSCは、CD34、CD45、ミオシン重鎖(MHC)、ミオシン軽鎖(MLC)、心臓トロポニンI(CTnI)、α-筋節アクチン(α-SA)、または心臓特異的転写因子MEF-2を発現しなかった。図3を参照されたい。これらの観察はRT-PCRによって確認した。図4を参照されたい。細胞表面マーカー発現は、他のグループ(例えば、Osiris Therapeutics)によって記載されたものとは全く異なることが見い出された。例えば、Osiris Therapeuticsは、MSCによるCD117の発現を報告していないが、CD90ならびに固有のマーカーSH-2およびSH-3の発現を報告している。発現マーカーを決定することは、>99.9%純粋なMSC集団を得るためにCD34を標的化する陰性常磁性ビーズ選別法の開発を可能にした。これを実行するために、アビジンコートされた磁気ビーズ(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を、ビオチン化された(Sigma. St. Louis, MO)ラットCD34に対するモノクローナル抗体(BD Pharmingen, Franklin Lakes, NJ)に4℃で連結した。次いで、この調製物を室温で30分間、30% FBS中に懸濁した細胞とインキュベートし、次いで20分間磁石に曝した。清澄な上清を収集し、この手順を1回反復した。次いで、細胞を収集し、完全培地中に再懸濁した。
【0108】
公開されたプロトコールによって、MSCを巨核球および赤血球系細胞に分化させることを誘導する試みがなされた。これが不可能であることにより、これらの細胞が確かに造血幹細胞から明確に区別されたことが示唆される。巨核球への分化を実証するために、標準的な方法を使用して完全培地を100 IU/mLトロンボポエチン+80 IU/mL IL-3+80 IU/mL GM-CSF+2 IU/mL c-kitリガンドで補充し、MSCを14日間培養中に維持した。次いで、巨核球マーカーCD61およびCD42aについての染色を実行した。赤血球エレメントへの分化を実証するために、完全培地を2 IU/mL エリスロポエチン+100 IU/mLトロンボポエチン+80 IU/mL IL-3+80 IU/mL GM-CSF+2 IU/mL c-kitリガンドで補充した。次いで、赤血球マーカーTR-1119についての染色を、以前に報告されたように実行した。予測されたように、これらの試みは不成功であった。このことは、MSCが造血系統の細胞から明確に区別されることを示す。公開されたプロトコールによって、様々な濃度の5-アザシチジンを使用してインビトロでMSCを心筋細胞に分化させるように遊動する試みもまたなされたが、これもまた不成功であった。
【0109】
3. レトロウイルス形質導入を使用する間葉幹細胞の遺伝子改変
マウス幹細胞ウイルスベクター(Clontech, Palo Alto, CA)を入手し、XhoIおよびBam HIで消化した。次いで、IRES-GFPをこれらの部位にクローニングした。図5を参照されたい。構成的に活性なマウスAktをコードするcDNAをマウス幹細胞ウイルスベクターにクローニングした。Aktをプライマー
を使用して増幅し、Bgl IIおよびBamHIを使用してクローニングした。核局在化LacZ(nLacZ)および高力価VSV-G偽型レトロウイルスを発現するプラスミドを、293T細胞の3成分トランスフェクションによって別々に生成し、超遠心分離によって濃縮した。感染した3T3細胞上のサザンブロット分析は1mLあたり約5×108ウイルス粒子の力価を生じた。次いで、レトロウイルス上清をアリコートとし、-80℃で保存した。MSCを1×108粒子まで6μg/mLポリブレン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)に6時間曝露し、その後培地を交換した。18時間後、形質導入を反復した。3サイクルを収集後7日から9日後に実行した。最初の継代細胞を、最後の形質導入の4-5日後の心筋内注射のために使用した。形質導入効率を、GFPについては紫外線試験および免疫組織化学によって、nLacZ遺伝子移入についてはX-gal染色、およびAktについてはウェスタンブロットによって評価した。
【0110】
4. 虚血性心臓への移植後の、上記のように単離されたMSCの心筋細胞への分化
成体雄性Sprague-Dawleyラット(300グラム〜350グラム)をHarlan Laboratories(Indianapolis, IN)から購入し、以前に記載したように維持した。麻酔の誘導後、動物に挿管し機械的に人工呼吸する(Harvard Rodent Ventilator, Harvard, MA)。左開胸術を4分の1の空間で実行し、心臓を露出する。近位の左前下行枝(LAD)動脈を同定し、7-0プロレン縫合糸(Ethicon, Somerville, NJ)を使用して結紮した。動物を開胸して麻酔の外科的平面に60分間維持した。250μLの通常生理食塩水中に懸濁した種々の量の形質移入したMSC(n=6)、または生理食塩水、または対照動物(GFPについてn=6、LacZについてn=6)についての対照細胞を、心外膜下に、角度のついた27ゲージ針を用いて、左心室の前方および後方の5つの部位の、虚血性心筋と正常心筋との間の境界領域に注射した。この境界領域は肉眼で明白であった。注射後、心臓を数分間観察した。正常洞調律および止血が得られたら、3-0ナイロンおよび4-0ナイロン(Ethicon, Somerville, NJ)を用いて層状に胸部を閉じて、動物を回復させる。心臓を、注射の24時間後、72時間後、および3週間後に切除した。リスクを有する領域を、Evansブルー逆方向灌流によって見積もり、任意単位で表現した。左心室を、先端から基部まで等しい厚さの8つの横断切片にスライスした。1群の厚い切片をグルタルアルデヒド中に固定し、β-ガラクトシダーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)で染色し、OCT化合物中で凍結し、そして5μmに切断した。他のすべての厚い切片はホルムアルデヒド中で固定し、5μmに切断した。ヘマトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン(H&E)ならびにマッソン三色染料染色を行った。左心室体積を、重量を密度(1.06gm/mL)で除算することによって計算した。マッソン三色染料染色では、表面領域の青色対非白色比を、各厚い切片からの20の5μm切片について計算し、全体の左心室の厚さを乗算して、梗塞の体積を計算した。生存可能な心筋の体積を、全体のLV体積から梗塞体積を減算することによって計算した。再生された心筋の体積を、対照動物の生存可能な心筋の体積を、他のすべての実験群におけるその体積から減算することによって計算した。コラーゲン領域画分および心筋細胞表面領域を、以前に記載されたように評価した。別々に、切片を、c-kit、GFP、Ki-67、心臓トロポニン、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、N-カドヘリン、およびコネキシン-43(Sigma-Aldrich)に対する一次mAbとインキュベートした。適切な蛍光色素結合二次抗体を使用して、スライドを可視化した。蛍光インサイチューハイブリダイゼーションを、緑色蛍光Y染色体列挙ハイブリダイゼーションプローブを、市販のキット(Vysis, Downers Grove, IL)とともに使用して実行した。切片をHoechst 33258を用いて対比染色した。
【0111】
梗塞およびMSC染色の後の心筋梗塞のH&E染色の際に、残渣の瘢痕が、組織化された心筋細胞の指状の伸長によって浸透した。5×105 LacZ-MSCを注射した全体の心臓の厚い切片のβ-ガラクトシダーゼ染色の際に、本発明者らは、梗塞周辺領域において強烈な青色の着色を観察し、これは心筋細胞の表現型を有した細胞の青色の核染色に起因した。図6〜図9を参照されたい。GFP-MSCを注射された虚血性心臓がGFPで染色された場合、天然心筋細胞と同じ方向に配向している、大きな多核性合胞体(syncitiae)が境界領域において観察された。図6〜図9を参照されたい。導入遺伝子を発現している細胞が心臓特異的マーカーもまた発現したことを確認するための実験を実行した。図10を参照されたい。切片をGFPおよび心臓特異的タンパク質について二重染色した。GFPは、MHC、MLC、CTnI、デスミン、およびα-SAと同時局在した。再生された心筋細胞は、天然心筋細胞との接触点においてコネキシン-43およびN-カドヘリンを発現した。このことは、電気-機械的カップリングの能力を示す。再生された心筋細胞のドナー起源を、Y染色体の蛍光インサイチューハイブリダイゼーションによって確認し、これは、上記に言及した心臓特異的タンパク質と同時局在した。導入遺伝子および/またはY染色体を発現する心筋細胞は、移植3週間後でc-kitまたはCD90を発現しなかった。導入遺伝子を発現している心筋細胞は、損傷していない心筋へのMSCの注射後に同定されなかった。導入遺伝子は、虚血性心臓中で内皮、平滑筋、または造血性エレメントにおいて同定されなかった。境界領域への注射後、導入遺伝子を発現している心筋は心臓の離れた領域(例えば右心室または心房)において見い出されなかった。虚血性心筋へのc-kit/CD34+の注射後に導入遺伝子を発現している心筋細胞は同定されなかった。MSC注射後に心筋中で異所性の組織または腫瘍は同定されなかった。
【0112】
5. MSCへのAktの治療的遺伝子移入が、終点において意味のある改善をもたらすことの実証-rMSC生存、再生される心筋の体積、および心臓機能
MSCへのAkt遺伝子移入がインビトロで生存を増強したか否かを試験するために、一連の刺激された低酸素-再酸素化プロトコールを生成した。レトロウイルス遺伝子移入の成功、および心筋細胞への分化の誘導の14日後、細胞を刺激された低酸素-再酸素化プロトコールに供した。完全培地を無血清培地に置き換え、および細胞を、1%大気酸素を用い、37℃で0、6、12、18、および24時間、低酸素チャンバー(Coy Laboratory Prooducts, Grass Lake, MI)中に配置した。次いで、細胞を21%大気酸素、37℃に移し、培地を完全培地に置き換えた。10分間「再酸素化相」に入れ、タンパク質をAktアッセイのために抽出した。このアッセイは、溶解物から免疫沈降したAktが1マイクログラムのGSK-3融合タンパク質をリン酸化する能力を試験した。「再酸素化」24時間後、ラダーのためにDNAを収集し、RT-PCRのためにRNAを収集し、そしてアポトーシスを評価するためにTUNELアッセイを実行した。図11〜図12を参照されたい。
【0113】
Akt活性の増加は、インビトロおよびインビボでMSCアポトーシスに対して保護された。37℃および21%周囲三度の基底条件で、Akt活性は両方の群で等価であった。無血清培地中の低酸素症の24時間後、Akt活性はAkt-MSC群において28.5倍増加し、およびGFP-MSC群において6.6倍増加し、MSCアポトーシスを79%減少させ、DNAラダー化を減少させた。インビボでの保護効果を、c-kitおよびTUNELについての左心室切片の二重染色によって評価し、これは、心筋において保持されているc-kit+細胞の数、およびアポトーシス性であったc-kit+のパーセントの決定を可能にする。虚血性心筋への5×105 LacZ-MSCSの移植の24時間後、高倍率視野(hpf)あたり33±1.53 LacZ-MSCの68%がアポトーシス性であった。対照的に、5×105Akt-MSCの移植24時間後、hpfあたり82±6.7 Akt-MSCの19%のみがアポトーシス性であった(p<0.001)。さらなる48時間後、hpfあたり22.7±9.8 LacZ-MSCの31%がアポトーシス性であった;それに対して、hpfあたり66±3.5 Akt-MSCの17%がアポトーシス性であった(p<0.001)。3週間後、心筋中にはc-kit+細胞は存在しなかった。これらの観察は、インビトロで低酸素および血清飢餓状態に曝されたMSC中で、および、虚血性心筋への移植後に、Aktが活性化されたこと、ならびに、増大されたAkt活性が、移植直後の期間にMSCアポトーシスを妨害したことを示す。図11〜図12を参照されたい。
【0114】
心筋内rMSC注射による梗塞体積の減少
手術周辺の死亡率はタンポン充填に起因してすべての群において約12.5%であった。いかなる群においても遅延性の死亡は存在しなかった。冠状動脈結紮後にリスクを有する領域はすべての群において等価であった。結紮の3週間後、左心室の梗塞の体積(V梗塞)は注射した細胞の型および数に基づいて変化した。V梗塞は生理食塩水注射および対照c-kit/CD34+細胞の注射の後で最大であった。V梗塞はMSC注射後に用量依存的な様式で減少した。2.5×105 LacZ-MSCの注射はV梗塞の9.8%の減少を生じ、5×106 LacZ-MSCの注射は12.9%のV梗塞の減少を生じた。Aktを用いる遺伝子改変はV梗塞により強力な効果を発揮し、2.5×106 Akt-MSCの注射後にV梗塞は44.8%減少した。5×106 Akt-MSCの注射を用いて、大量の開始細胞数をAkt改変と組み合わせることは、ほぼ完全なV梗塞の除去を生じた。図13〜図15を参照されたい。この減少は、ほぼ完全に、再生した心筋(V再生)の体積の増加に起因する。5×106 Akt-MSCの心筋内注射は失われた心筋の84.7%の再生を生じた。2.5×105 Akt-MSCの投与は、LacZ-MSCよりも20倍多い投与よりも2.5倍多い(V再生)を生じた。移植期間周辺で増強されたMSC生存度はより高い(V再生)を生じ、それゆえに、より小さなV梗塞が観察された。境界領域における毛細血管密度は、偽試料操作された動物、ならびに細胞移植を受容したすべての群において同様であったが、対照群のそれを超えていた。図13〜図15を参照されたい。
【0115】
Akt-MSC移植による心臓機能の正常化
心臓機能を評価するために、ラットの心臓を単離し、ランゲンドルフ様式で逆方向に灌流した。等容性収縮期能力を、データ収集システムに接続されたポリビニルクロライドバルーンを左心室に配置することによって、飽和濃度のドブタミンの存在下で基底で測定し、およびドブタミンを洗い流した後で、以前に記載されているように、左心室の収縮末期圧(LVESP)および拡張末期圧(LVEDP)、左心室発生圧力(LVDP)、速度圧力積(RPP)、ならびに収縮および弛緩の速度(±dP/dT)を測定した。図16を参照されたい。心エコーを以前に記載されたように実行した。2.5×105 LacZ-MSCまたは5×106 LacZ-MSCの移植は、対照細胞または生理食塩水注射と比較して、左心室収縮期能力を改善しなかった。2.5×105 Akt-MSCの移植は、基底LVESPにおいて統計学的に有意な37%増加を生じた。用量依存的な様式で、5×106 Akt-MSCの移植は基底LVESPにおいて50%増加を生じ、これは偽試料操作された動物のLVESPと区別がつかなかった。これらの違いはドブタミンチャレンジの間に持続し、左心室で発生した圧力、速度圧力積、および+dP/dTについて見られた違いと同様であった。ドブタミンチャレンジ後、弛緩の速度(-dP/dT)は、対照梗塞および対照細胞を注射した動物において最も遅かった。2.5×105 LacZ-MSCまたは5×106 LacZ-MSCの注射は、-dP/dTにおいて、統計学的に有意でない8%および18%の増加をそれぞれ生じた。しかし、2.5×105 Akt-MSCの注射は、-dP/dTにおいて有意な22%増加を生じ、5×106 Akt-MSCの注射は、-dP/dTにおいて50%増加を生じ、これは偽試料操作された動物におけるそれと同等であった。放出画分の正常化および心エコー評価に対する画分の短縮化が、5×106 Akt-MSCの注射後の鎮静した、意識のある動物において観察された。図16を参照されたい。
【0116】
Akt-MSC移植による再構築の妨害
5×106 Akt-MSCの移植は心臓CD45+細胞の浸潤を67%(偽試料操作された動物において見られるレベルまで)減少した。同様に、5×106 Akt-MSCの移植は、全体のコラーゲン領域画分を89.6%減少し、天然心筋細胞表面積を81%減少した。3つすべてのパラメーターは、偽試料操作された動物において観察されたレベルと同等のものであった。5×106 LacZ-MSCの移植はこのような減少の強度を達成しなかったが、対照動物と比較した場合に統計学的に有意ではなかった。これらの観察はすべて、移植周辺期間におけるMSCの改善された保持が、本明細書中に記載されたような引き続く高レベルの移植および分化を伴って、心臓再構成にたいして強力な保護効果を発揮することを示す。
【0117】
実施例3 一般的方法
データは、以下の試薬および方法を使用して生成した。
【0118】
プラスミドおよびhHO-1ベクターの構築
オープンリーディングフレームを含むhHO-1の986bp断片をKpnI-PstI部位でpBS KS(-)クローニングベクターから切り出し、pUC18プラスミドの対応する部位にサブクローニングした。挿入物をEcoRI部位で切断し、必要とされる複製およびパッケージングシグナルをコードするAAV逆方向末端反復に隣接したヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む、アデノ関連ウイルス骨格(pAAVCMV-HO-1)の対応する部位にクローニングした。AAVウイルス粒子のパッケージング、増殖、および精製を標準的な手順を使用して実行した。
【0119】
rAAV産生および感染:
組換えAAV(rAAV)を、tHREeプラスミド同時トランスフェクション系を使用することによって本発明者らのViral Core Facilityにおいて産生した。手短に述べると、HEK293細胞を10%FBSを含むMEM中で増殖させた。AAVウイルスを生成するために、細胞を、ディッシュあたり17μgの導入遺伝子プラスミドで、ディッシュあたり17pgのプラスミドpHLPI9および17pgのプラスミドpLadeno5とともに同時トランスフェクトした。PHLP19はAAV rep遺伝子およびcap遺伝子を有し、これらはrAAVのトランス機能を提供する。Adeno5は、rAAV複製を媒介するアデノウイルスVA、E2A、およびE4領域を有する。培地を、16時間後に完全MEMに交換した。さらなる24時間後、細胞を収集し、3回の凍結-融解サイクルによって溶解した。ウイルス上清を、5分間、10,000gの遠心分離によって生成し、CsCl-密度超遠心分離によってさらに精製した;各rAAVについての力価をドットブロットアッセイによって決定した。このアッセイは、単位容量あたりの粒子の総数の力価を提供する。rAAVを含む上清をアリコートにて-80℃で保存し、各実験の使用直前に使用のために融解した。
【0120】
X-galインサイチュー染色
試料を0.2%グルタルアルデヒドおよび3%パラホルムアルデヒド中で5分間固定し、PBSで2回洗浄した。試料を、100mM リン酸ナトリウム(pH 7.3)、1.3mM MgCl2、3mM K3Fe(CN)6、3mM K4Fe(CN)6、および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド(X-gal、1mg/ml)を含む染色溶液中に浸漬し、37℃で18時間インキュベートした。染色した試料をPBSで2回洗浄し、そして試験した。
【0121】
左心室機能の心エコー測定
左心室範囲の心エコー画像化を、8-12MHzの血管トランスデューサーを装着したHewlett Packard Sonos 5500を使用して実行した。測定を、盲験様式で、左心室の中部乳頭レベルで実行した。拡張終期直径(EDD)、収縮終期直径(ESD)、前部壁厚(AWT)、および後部壁厚(PWT)を、American Society for echocardiography leading-edge法のガイドラインに従って、Mモード心エコー画像を得た。各測定について、少なくとも3つの連続した心臓サイクルからのデータを平均した。収縮終期(ESA)および拡張終期(EDA)を、乳頭筋肉レベルでの左心室の短軸視野から決定し、LV放出画分(EF)を評価した。左心室画分短縮(FS)およびEFを以下の式に従って計算した:LV FS(%)=[(EDD-ESD)/EDD]×100;およびLV EF(%)=[(EDA-ESA)/EDA]×100。
【0122】
組織学および免疫組織化学的分析
再灌流の24時間後、心臓にインサイチューでPBS(pH 7.4)を流し、50mlの10%リン酸緩衝化ホルマリンで逆方向に灌流した。心臓を収集し、PBS中で洗浄し、10%ホルマリン中で、4℃で一晩、後固定した。試料を加工し、包埋し、および5μmの厚さに切片化した。免疫組織化学染色を実行した。
【0123】
ヘムオキシゲナーゼ活性の測定:
全ヘムオキシゲナーゼを、左心室ホモジネートから単離したミクロソーム画分中で測定した。プロテアーゼ阻害因子カクテル(Sigma)を含む氷冷したホモジナイゼーション緩衝液(30mM Tris-HCl(pH 7.5)、0.25Mショ糖、0.15M NaCl)中で、組織をホモジナイズした(g組織あたり〜3ml)。ホモジネートを10,000gで15分間遠心分離した。上清画分を100,000×gで1時間遠心分離した。ミクロソームペレットを50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.4)に再懸濁し、氷上で5秒間超音波処理した。ヘムオキシゲナーゼ活性を、分光光度法によって、ビリルビンの出現の速度として測定した。
【0124】
酸化ストレスおよび酸化的損傷の評価:
酸化的損傷は、供給業者によって提供された指示書に従ってOxyBlotキット(Intergen, New York, NY)を使用して、左心室ホモジネート中で酸化修飾されたタンパク質カルボニル基を検出することによって、および市販のキット(Calbiochem, Darmstadt, Germany)を使用する全脂質過酸化物(マロンジアルデヒドおよび4-ヒドロキシノニール)の定量によって評価した。ポリクローナル抗体MAL-2(抗マロンジアルデヒド-リジン;J. Witztum, La Jolla, CAより恵与)を用いる、ホルマリン固定した心室切片の免疫染色を、以前に記載されたように(Melo et al, 2002)、酸化特異的脂質-タンパク質付加物のインサイチュー検出のために使用した。各レーンにおける修飾タンパク質に対応するすべてのバンドの積算された密度を、フラットベッドスキャナーおよびNIH Image 1.52プログラムを使用してタンパク質酸化の定量のために使用した。
【0125】
アポトーシスの測定:
アポトーシスを、Apoptotic DNA ladder kit(Roche, Indianapolis, IN)を使用するゲノムDNAのヌクレオソーム内断片化の検出によって、およびIn Situ Cell Death detection anti fluorescein-dUTP peroxidase kit(Roche, Indianapolis, IN)を使用して、パラフィン包埋された切片中の末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ媒介dUTPニック末端標識(TUNEL)によって測定した。DNAラダー化によるアポトーシスの定量のために、ゲノムDNAを、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Roche, Indianapolis, IN)を使用して、37℃で1時間、32P-dUTP(NEN, Cambridge, MA)で標識した。ゲルをHyperfilmに増感スクリーンとともに-80℃で72時間露出させた。レーン中のすべてのバンドの集積した密度をアポトーシスの定量のために使用した。
【0126】
動物の外科手術:
外科手術の準備のために、動物を、20%ハロタン:80 ミネラルオイル混合物の吸入によって最初に軽く麻酔した。麻酔を、滅菌0.9%NaCl中のケタミン:キシラジン(150:200mg/kg BW)の混合物の腹腔内注射によって誘導し、必要な場合、補充用量の麻酔混合物で維持した。動物を手術台にあおむけに寝かせ、Harvard small rodent ventilator(Harvard Instruments, South Natick, MA)に接続された先の尖っていない17ゲージ針を挿管した。換気体積および換気速度を、すべての開胸手順の間、2.5mlおよび60/mmにそれぞれ設定した。連続的実験のために、動物飼育施設に戻す前に、少なくとも3時間の間、100W加熱ランプの下のそれらのケージの中で回復させた。動物を手術後24時間〜48時間モニタリングし、苦痛があると見なされた場合には18時間間隔でブプレノルフィン(0.2mg/kg)を投与した。
【0127】
統計学的分析
すべての結果を平均±SEで表した。Bonferroni多重比較検定と連関した1元ANOVAを使用して群間の違いを比較した。p<0.05が統計学的に有意な違いを示すとみなされた。
【0128】
梗塞サイズの形態計測的測定
再灌流の24時間後、LADを再結紮して、0.3-0.4mlのPBS(pH 7.4)中1% Evans Blueをカテーテルを介して心臓に逆方向に注入し、非梗塞領域の輪郭を明らかにした。心臓を切除し、氷冷PBSですすいだ。心房組織および大血管を取り出し、同様の厚さの5-6の両室切片を、心臓の長軸に対して垂直に作製した。これらの切片をPBS(pH 7.4)中の1% テトラゾリウムクロライド(TTC、Sigma Chemicals)中で、37℃、15分間インキュベートし、両方の側を写真撮影した。約10倍の拡大率でスライドを投射し、Quad 10上で1"グラフ用紙にトレースした。リスクを有する領域および梗塞領域の輪郭を描き、切片の両方の側で計算した。各心臓のすべての切片の累積領域を比較のために使用した、梗塞サイズを、リスクを有する領域に対する梗塞領域の比として表した。
【0129】
実施例4:低酸素応答エレメント構築物を使用する、インビトロでの調節可能な遺伝子発現
特異的病理生理学的刺激によって誘導される治療遺伝子の調節可能な発現を発生するために、いくつかの低酸素誘導性ベクターを構築し、インビトロ低酸素の間に遺伝子発現を誘導するこれらのベクターの効率を試験した。これらのベクターは、エリスロポエチン遺伝子(Epo HRE)からの低酸素応答性エレメントのタンデムリピートを複数含み、これらは最小限のCMVプロモーター、続いてルシフェラーゼ遺伝子の上流に配置された。さらに、全長および最小限のCMVプロモーター単独を含む対照ベクターを構築した。
【0130】
低酸素媒介遺伝子発現を誘導する低酸素応答エレメントの効率を試験するために、HEK293細胞を、以下のベクターを用いてトランスフェクトした:pGL3-4EpoHRE-mCMV-luc、pGL3-mCMV-luc、およびpGL3-fCMV-luc。基底条件下では、pGL3-fCMVでトランスフェクトされた細胞が、mCMVプロモーターを含むベクターでトランスフェクトされた細胞と比較した場合に、ルシフェラーゼ活性によって測定されるように、10倍高い発現のレベルを示した。しかし、低酸素条件下では、pGL3-mCMV -4Epo-HREでトランスフェクトした細胞が、相対的光単位(RLU)によって測定されるようなルシフェラーゼ活性の10倍高い誘導を示した。対照的に、pGL3-fCMVまたはmCMV単独を含むベクターはいずれも低酸素に応答しなかった。
【0131】
これらの結果は、最小限のCMVプロモーターを含むpGL3-4EpoHRE構築物が、低い基底レベルの遺伝子発現を生じ、次いでこれが、低酸素条件下よりも10倍下を誘導したことを示す。反対に、HREを有さないmCMVプロモーターのみを含むベクターは、非常に低い基底を与え、ルシフェラーゼ活性の誘導を示さなかった。本発明者らはまた、エリスロポエチン遺伝子からの低酸素応答エレメントの5つまでのタンデムリピート、最小限のCMVプロモーター、およびレポーター遺伝子としてのGFPを有するAAVベクターを構築し、低酸素下でGFP発現を誘導するそれらの効率を試験した。予備的な結果は、5×EpoHREが低酸素に応答して、さらに増加したGFP発現を生じたことを示した。
【0132】
実施例5:心臓疾患における差次的な遺伝子発現の同定
急性心筋修復に根拠を与える分子メカニズムを、急性の心臓疾患、心筋虚血のマウスモデルを使用して研究した。マウス心筋梗塞を、左前下行動脈の永続的な結紮によって作製し、梗塞領域および境界領域を含む組織を1時間、8時間、または24時間後に単離した;偽試料操作した同腹子を対照として用いた。RNAを、梗塞領域および境界領域から抽出し、AFFYMETRIX(商標)Mouse Set 430マイクロアレイ上で分析した。逆転写PCR(RT-PCR)を使用して、差次的に発現した遺伝子を確認した。細胞接着、ケモカイン、サイトカイン、および走化性に関係する462遺伝子のサブセットを同定した。表1は、正常な、損傷を有さない心臓組織と比較して、損傷心臓組織において有意にアップレギュレートされた遺伝子を列挙する。表2は、正常な心臓組織と比較して、損傷心臓組織においてダウンレギュレートされる遺伝子を列挙する。表4および表5は、8時間および24時間で、それぞれ損傷組織において差次的に発現される遺伝子を列挙する。
【0133】
梗塞後1時間から、MIと偽試料動物の心臓の間で差次的に発現して遺伝子の数が漸次的に増加した。いくつかのケモカイン、サイトカイン、および細胞接着分子の発現の有意な増加が損傷24時間後に見られた。アップレギュレートされた遺伝子には、間質由来因子-1(SDF1)、血管細胞接着分子-1(VCAM1)、およびフィブロネクチン-1(FN1)が含まれた。これらのリガンドは、BMSC上のそれらの受容体との相互作用を通して、幹細胞輸送のために重要である。
【0134】
BMSCにおけるSDF1、VCAM1、FN1、IL-6、CCL2/CCL7/CCL8/CCL13、およびICAM-1に対応する受容体の発現のレベルを分析した。マウスBMSCを単離し、3-6継代の間培養した。RNAを単離し、リガンドに対応する受容体の発現についてRT-PCRによって分析した。図19A〜図19Bに示されるように、CXCR4(SDF1について)およびインテグリンα4β1(VCAM1およびFN1について)がBMSCにおいて発現する。これらのリガンド-受容体相互作用(表3)は、BMSCのホーミングおよび移動に影響を与えることによって心臓修復において重要な役割を果たす。
【0135】
実施例6:診断、予後診断、およびスクリーニングの方法
差次的に発現された遺伝子の1種または複数の発現のレベルを、日常的な方法(例えば、PCR、ノーザンブロッティング、またはチップアレイ)を使用して、患者由来の試料から直接決定する。代替として、差次的に発現された遺伝子によってコードされるポリペプチドを測定する。ポリペプチドを、免疫特異的抗体を使用して測定する。患者由来の試料は、患者から(例えば、生検からの心臓組織) から単離された組織、または体液(例えば、血液、血清、または血漿など)であり得る。代替として、関心対象の遺伝子および/またはポリペプチドのレベルをインサイチューで測定する。
【0136】
本発明はまた、哺乳動物における心臓疾患の発症または進行を調節する治療薬剤をスクリーニングするために有用である。本明細書中で使用される場合、「調節」とは、心臓疾患の発症および/または進行の予防または阻害、ならびに、心臓疾患の1つまたは複数の徴候の緩和を含む。候補薬剤は、被験体を候補薬剤と接触させる段階、接触後の被験体由来の試料中で、表1〜表5に列挙される遺伝子の1つまたは複数の試験レベルを決定する段階、およびその遺伝子の参照レベルと試験レベルを比較する段階によって、スクリーニングされる。参照レベルは、心臓疾患を有さない被験体由来の試料中で関心対象の遺伝子のレベルを測定することによって決定される。参照レベルに対する試験レベルの増加または減少は、その試験薬剤が心臓疾患の発症または進行を調節することを示す。代替として、遺伝子によってコードされるポリペプチドのレベルが被験体中で決定され、そのポリペプチドの参照レベルと比較される。
【0137】
(表1)
【0138】
(表2)
【0139】
(表3)受容体リガンド
【0140】
(表4)
【0141】
(表5)
【0142】
他の態様
特定の態様が本明細書中で詳細に開示されてきたが、これは例示のみを目的とした実施例によるものであって、添付の特許請求の範囲に関して限定を意図するものではない。特に、本発明者らによって、種々の置換、変更、および改変が、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に対してなされ得ることが意図される。核酸開始材料、関心対象のクローン、またはライブラリーの型の選択は、本明細書中に記載された態様の知見に鑑みて、当業者にはルーチンであると考えられる。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあると見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】骨髄由来間葉幹細胞の単離法の模式図である。
【図2】骨髄間質細胞の増殖特性のグラフ図である。
【図3】単離された間葉幹細胞の表面マーカーの免疫組織化学分析を示す。
【図4】間葉幹細胞における表面マーカー発現を確証するRT-PCR結果のゲル分析である。
【図5】図5A〜図5Dは、間葉幹細胞における使用のための高効率レトロウイルス遺伝子移入ベクターの概略図、および、各ベクターについてのトランスフェクション効率を表す。
【図6】間葉幹細胞または対照を注射された、5μm厚の心臓組織切片を示す。
【図7】nLacZトランスフェクト間葉幹細胞または対照ビヒクルを注射された2mm厚心臓組織切片のX-gal染色を示す。
【図8】nLacZトランスフェクト間葉幹細胞または対照ビヒクルを観察するためにX-galで染色された、5μm厚の心臓組織切片の10倍拡大図である。
【図9】緑色蛍光タンパク質(GFP)トランスフェクト間葉幹細胞または対照ビヒクルを観察するためにGFPで染色された、5μm厚の心臓組織切片の40倍拡大図である。
【図10】図10A〜図10Fは、トランスフェクション3週間後に、移植されたGFPトランスフェクト間葉幹細胞の染色の、および心筋細胞特異的細胞マーカーの共局在を示す。
【図11】図11A〜図11Dは、異所的にAktを発現する移植された組換え間葉幹細胞に供給されたアポトーシスに対する保護の程度を決定する、TUNELおよび細胞特徴付けの結果を示す。
【図12】図12AはGFPおよびAktを同時発現するrMSCについてのTUNEL結果を示す。図12BはTUNEL結果のヒストグラム図である。
【図13】図13Aおよび図13Bは、例えば、Akt、LacZ、c-kitを発現する種々の量の組換え間葉幹細胞、または生理食塩水対照の注射後の、治療された心臓におけるリスクを有する領域、および梗塞心筋の残りの体積のヒストグラム図である。
【図14】偽試料処理された対照と比較した、図13Aおよび図13Bに示されるように注射された、梗塞心臓の断面図である。
【図15】図13Aおよび図13Bにおいて示されるように処理された、梗塞心臓において再生された心筋の体積のヒストグラム図である。
【図16】図16Aおよび図16Bは、図13Aおよび図13Bにおいて示されるように処理された心臓における、左心室収縮末期圧基底および弛緩の速度それぞれのヒストグラム図である。
【図17】図17A〜図17Hは、本発明のMSCの免疫組織化学的特徴付けを実証する一連の写真画像である。
【図18】図18Aおよび図18Bは、心筋梗塞後に差次的に発現される遺伝子を示す棒グラフである。遺伝子発現は、24時間における偽試料と比較して、梗塞組織(MI)におけるRT-PCRによって決定された。
【図19】図19A〜図19BはBMSC(P1、継代1;P6、継代6)、末梢血単核球(PBMC)、傍糸球体細胞(JGC)、および血管平滑筋細胞(VSMC)における受容体/リガンドのRT-PCR分析の結果を示す写真である。図19Aにおける略号には以下が含まれる:SDF1、間質由来因子1;CXCR4、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体;IL6、インターロイキン-6;IL6RA、インターロイキン-6受容体α;IL6ST、IL6シグナル誘導因子、CC、ケモカイン(C-Cモチーフ);CXC、ケモカイン(C-X-Cモチーフ);CCR、CC受容体。図19Bにおける略号には、SDF1、間質由来因子1が含まれる。図19Bは、の写真である。
【技術分野】
【0001】
政府により資金援助された研究に関する言及
本発明は米国国立衛生研究所助成金の下で米国政府の支援を伴ってなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、改変された間葉幹細胞および損傷または疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
患者の死亡率および罹患率は、急性および慢性の損傷または疾患(例えば心筋梗塞、心不全、脳卒中、退化性神経疾患、脊椎損傷、筋骨格疾患、高血圧、および糖尿病など)から生じる細胞/組織の損傷または死によって増大する。新しい細胞がこの損傷を予防、減少、および/または修復することができる方法を決定することは、非常に重要である。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、初代幹細胞の生存度を増強し、かつ移植された幹細胞の哺乳動物レシピエントへの移植を増強する組成物および方法を提供する。従って、本発明は、単離された成体間葉幹細胞を含む組成物を組織を接触させることによって、間葉幹細胞由来組織を再生する方法を含む。間葉幹細胞は、成体骨髄から得られた成体細胞である。この細胞は、akt遺伝子をコードする外因性核酸を含む。好ましくは、この核酸は細胞に導入され、例えば、エキソビボでこの遺伝子を含むレトロウイルスベクターを用いて形質導入される。細胞へのakt遺伝子の導入後、組換え幹細胞の集団は哺乳動物レシピエントに導入または再導入される。
【0005】
間葉由来組織は、中胚葉における胚起源によって特徴付けられるものである。間葉は結合組織、血管、心臓組織、およびリンパ組織が由来する中胚葉の一部である。間葉細胞は結合組織、上皮組織、神経組織、および筋肉組織に分化する。例えば、標的組織は心筋組織、脳、脊髄、骨、軟骨、肝臓、筋肉、肺、血管、および脂肪組織からなる群から選択され、移植された幹細胞は移植後に標的組織の組織型に分化する。筋肉組織は骨格筋または平滑筋(例えば、血管平滑筋細胞)であり、本発明の方法は、急性または慢性の変性疾患(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィーのような筋ジストロフィー)に罹患しているか、またはそのリスクを有する患者における筋肉組織を再生するために使用される。上皮組織は、皮膚、腸、または他の組織特異的上皮細胞を含む。神経細胞組織には、脳、脊髄組織が含まれる;本発明の方法は、脳卒中後に損傷した神経組織(例えば脳組織)を再生する際に、または外傷性事象(例えば外科手術)の前に神経組織に対する損傷を最小化する際に有用である。
【0006】
標的組織への幹細胞の移動は、さらなる遺伝的改変、例えばホーミング分子をコードする外因性核酸の細胞への導入によって増強される。ホーミング分子の例には、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、エストロゲン受容体、およびインテグリン受容体が挙げられる。細胞は、細胞のエンドクリン作用を増大する遺伝子産物をコードする核酸(例えばホルモンをコードする遺伝子)、または細胞のパラクリン作用を増大する遺伝子産物をコードする核酸を含んでもよい。例えば、幹細胞は、骨形成因子をコードする外因性核酸を含むように遺伝的に改変され、そして、骨、軟骨、または例えば歯周病を治療するために歯組織に移植される。細胞はまた、他の生物学的に活性なまたは治療的なタンパク質またはポリペプチド(例えば、血管形成因子、細胞外マトリクスタンパク質、サイトカイン、または増殖因子)をコードする核酸を含んでもよい。例えば、膵臓組織に移植された細胞はインスリンまたはインスリン前駆体分子をコードする核酸を含む。この細胞はまた、移植拒絶を減少させる遺伝子産物(例えば、CTLA4Ig、CD40リガンド)、または移植動脈硬化症の発症を減少させる遺伝子産物(例えば、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS))をコードする核酸を含んでもよい。
【0007】
本発明はまた、アポトーシス耐性初代幹細胞(例えば、成体骨髄由来間葉細胞)を含む。幹細胞はまた、遺伝的に改変されて、外因性akt遺伝子を含む。このような遺伝的に改変された初代幹細胞のアポトーシスは、akt遺伝子を欠く初代間葉幹細胞と比較して少なくとも10%減少する。好ましくは、アポトーシスは、akt遺伝子を欠く初代間葉幹細胞と比較して、少なくとも50%、少なくとも1/2、少なくとも1/5、および少なくとも1/10以下まで減少する。好ましくは、幹細胞は非腫瘍形成性である。外因性akt遺伝子配列が導入された細胞は増加量のAkt遺伝子産物を産生するが、Aktタンパク質は酸素正常状態下で不活性である。Aktタンパク質は低酸素への曝露の際に活性化される。
【0008】
本発明にはまた、移植された幹細胞の生存度を増大させ、かつ移植を増強する方法が含まれる。移植される幹細胞は、成体被験体の骨髄組織から得られ、エキソビボで遺伝的に改変され、次いで同じかまたは異なるレシピエントに移植される。好ましくは、ドナーおよびレシピエントは同じ種であり、より好ましくは、ドナーおよびレシピエントは主要組織適合性遺伝子座において遺伝的に類似(または同一)である。例えば、自系移植(骨髄由来間葉幹細胞の自己ドナー)、同系移植(同一の双子ドナー)、同種異系移植(関連性のあるドナー、関連性のないドナー、または「ミスマッチ」ドナー)が実行される。Akt改変された細胞を移植することは移植組織における細胞の生存度の延長をもたらす。例えば、細胞は2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、またはそれ以上の日数の間、生存可能に維持され、増殖および分化を継続するのに対して、akt配列を欠く幹細胞は移植期間近く(例えば、移植後24時間以内)に死滅する。
【0009】
本発明の組成物および方法は、組織(例えば、虚血または再灌流関連損傷に起因するアポトーシスを受けている心筋細胞;骨、靱帯、腱、もしくは軟骨に対する外傷的損傷後の軟骨細胞;またはアルコール誘導性肝硬変の肝臓中の肝細胞) を修復または再生する際に使用される移植された幹細胞の生存を増強するために有用である。
【0010】
疾患または変性を通して損傷された横紋心筋に移植されたときに、増大した移植後生存を有するように遺伝的に増強されている組換え間葉幹細胞(rMSC)が開示される。好ましいrMSCは発現の際に抗アポトーシス効果を有する産物をコードする遺伝子についての組換え体である。例としては、セリン-スレオニンプロテインキナーゼAkt(すなわち、プロテインキナーゼB、RAC-γプロテインキナーゼ)遺伝子(例えば、Akt-1、Akt-2、Akt-3)、ヘムオキシゲナーゼ(HO)遺伝子(例えば、HO-1、HO-2)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ecSOD)、および/またはインターフェロン誘導性dsRNA-活性化プロテインキナーゼ(PKR)によってコードされるポリペプチドが含まれる。好ましい遺伝子は単離された哺乳動物遺伝子であり、より好ましくはヒト遺伝子である。アポトーシスは、機能的アポトーシス経路の阻害を通して直接阻害され得るか、または虚血もしくは低酸素条件下でのrMSCの生存性を増大させることによって間接的に阻害され得る。
【0011】
rMSCは心筋細胞に分化し、死滅したかまたは損傷した細胞の機能を置き換えるためにレシピエントの健常組織と統合され、それによって全体として心筋を再生する。
【0012】
いくつかの態様において、移植に際して生存度を増強するようなポリペプチドをコードする、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはそれ以上の遺伝子を発現するように、rMSCが遺伝子操作される。
【0013】
細胞保護ポリペプチド、ポリペプチドの発現を調節する1つまたは複数の酸素感受性調節エレメント、および細胞標的化発現エレメントをコードする核酸を含む組成物もまた開示される。代替として、本発明の組成物は、2、3、5、7、または10個の酸素感受性調節エレメントを含む。好ましくは、この組成物は、心臓的事象のような虚血的事象(例えば、心筋梗塞、脳卒中、高血圧、うっ血性心不全、拡張型心筋症、または再狭窄)による損傷を修復するために投与される。
【0014】
レシピエント被験体は、酸化ストレス誘導性細胞死(例えば、アポトーシス性細胞死)または虚血もしくは再灌流関連損傷のような異常な細胞損傷によって特徴付けられる状態に罹患しているか、またはそのリスクを有する可能性がある。ある状態に罹患しているか、またはそのリスクを有する被験体は、公知のリスク因子、例えば、性別、年齢、高血圧、肥満、糖尿病、以前の喫煙の履歴、ストレス、特定の疾患の原因である遺伝的もしくは家族の素因、または以前の心臓的な事象(例えば心筋梗塞または脳卒中)の検出によって同定される。
【0015】
異常な細胞死によって特徴付けられる状態には、脳卒中、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血(chronic coronary ischemia)、動脈硬化症、うっ血性心不全、拡張型心筋症、再狭窄、冠状動脈疾患、心不全、不整脈、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腎不全、腎虚血、または心筋肥大のような、心臓疾患(急性または慢性)が挙げられる。
【0016】
誘発用の(triggering)薬剤または条件は、内因性または外因性である。必要なのは、薬剤または条件が細胞保護ポリペプチドの発現を誘導することだけである。好ましくは、誘導は一時的である。ポリペプチドの発現の誘導は、翻訳前(例えば、エンハンサー、プロモーター、応答エレメント(例えば低酸素または抗酸化応答エレメント)を介して)または翻訳後である。例えば、条件は、低酸素症、酸化ストレス、活性酸素種(例えば過酸化水素、スーパーオキシド、またはヒドロキシルラジカル)のような生理学的刺激である。薬剤は抗生物質(例えばテトラサイクリン);免疫抑制剤(例えばラパマイシン);ステロイドホルモン(例えばエクジソン);またはホルモン受容体アンタゴニスト(例えばミフェプリストン)である。代替として、誘発用の薬剤は二成分の遺伝子発現系(例えばテトラサイクリン応答性発現系またはエクジソン応答性発現系)のメンバーである。
【0017】
酸素感受性調節エレメントは、低酸素症または酸化ストレスによって改変されるエレメントであり、細胞保護ポリペプチドの発現を調節する(例えば、オンにするかオフにする)ことができる。例えば、酸素感受性調節エレメントは低酸素応答性エレメント(HRE)、抗酸化応答エレメント(ARE)、または酸化ストレス応答エレメント(例えばペルオキシダーゼプロモーターまたは核因子κB(NF-κB)など)である。
【0018】
細胞標的化エレメントは、細胞保護ポリペプチドの発現を、関心対象の細胞型(例えば心臓組織または腎臓組織)に制限することができるエレメントである。例えば、細胞標的化エレメントは細胞特異的プロモーター(例えば、α-MHC、ミオシン軽鎖-2、またはトロポニンT)である。
【0019】
本発明の組成物が酸化ストレス誘導性細胞死を阻害するか否かを決定するために、この組成物は、初代細胞または不死化細胞(例えば心筋細胞など)とこの組成物をインキュベートすることによって試験される。細胞の酸化ストレスの状態は誘導され(例えば、過酸化水素すなわちH2O2とそれをインキュベートすることによって)、そして細胞生存度は標準的な方法を使用して測定される。対照として、細胞は本発明の組成物の非存在下でインキュベートされ、次いで酸化ストレスの状態が誘導される。化合物処理された試料中の細胞死の減少(または生存細胞数の増加)は、この組成物が酸化ストレス誘導性の細胞死を阻害することを示す。代替として、化合物処理された試料中の細胞死の増加(または生存細胞数の減少)は、この組成物が酸化ストレス誘導性の細胞死を阻害しないことを示す。この試験は、この組成物が酸化ストレス誘導性の細胞死を阻害するように阻害する用量範囲を決定するために、異なる用量の組成物を使用して反復される。
【0020】
いくつかの態様において、核酸組成物はベクター中で製剤化される。ベクターには、例えば、アデノ関連ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターが挙げられる。好ましくは、ベクターはアデノ関連ウイルスベクターである。好ましくは、核酸は、ヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターのようなプロモーターに機能的に連結される。ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルのような発現制御エレメントは、細胞保護ポリペプチドのコード領域に機能的に連結される。好ましい態様において、本発明の核酸は、必要とされる複製およびパッケージングシグナルをコードするアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している。核酸組成物は、当技術分野において公知である任意の適切な方法を通してMSCに挿入される。
【0021】
本発明はさらに、セリンスレオニンキナーゼAKTポリペプチドまたはその生物学的に活性なその断片をコードするヌクレオチドを発現するrMSC組成物を用いて、被験体における心臓疾患を治療する方法を特徴とする。天然に存在するポリペプチド断片とは、少なくとも10アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも200アミノ酸、少なくとも300アミノ酸、少なくとも400アミノ酸、少なくとも500アミノ酸、少なくとも550アミノ酸であり、その対応する全長ポリペプチドよりも1アミノ酸少ない断片である。AKTポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドは天然に存在するAKTポリペプチドのそれよりも少ないアミノ酸配列を有し、これはアポトーシス媒介性の心筋細胞死を阻害する。被験体は、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大のような心臓疾患のリスクを有し得る。
【0022】
本発明はさらに、ヒトヘムオキシゲナーゼポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチドを発現するrMSC組成物を哺乳動物に投与することによって、急性または慢性の心臓疾患に罹患しているかまたはそれを発症するリスクを有する哺乳動物における急性または慢性の心臓疾患を治療する方法を特徴とする。HOの生物学的に活性なポリペプチドは、天然に存在するHOポリペプチドのそれよりも少ないアミノ酸配列を有し、これは酸化ストレス誘導性の心筋細胞死を阻害する。慢性心臓疾患は、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大のような疾患を含む。
【0023】
本発明はさらに、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ecSOD)ポリペプチドまたはその生物学的に活性なその断片をコードするヌクレオチドを発現するrMSC組成物を用いて被験体における心臓疾患を治療する方法を特徴とする。ecSODポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドは天然に存在するecSODポリペプチドのそれよりも少ないアミノ酸配列を有し、これは酸化ストレス誘導性の心筋細胞死を阻害する。被験体は、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大のような心臓疾患のリスクを有し得る。
【0024】
本発明によって、組換えアデノ関連ウイルスベクター、およびサイトメガロウイルス最初期プロモーターに機能的に連結されたヒトヘムオキシゲナーゼ-1ポリペプチドまたはヒト細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチドまたはヒトAKTポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む、心臓保護物質(cardioprotective agent)を発現するrMSCもまた提供される。好ましくは、心臓保護物質はウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。より好ましくは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルはアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している。
【0025】
組換えMSC心筋治療は、例えば、以下の順番で行われる:MSC含有組織の収集、MSCの単離および/または拡大、少なくとも1つの抗アポトーシス遺伝子を用いたMSCのトランスフェクション、損傷心臓への少なくとも1つのrMSCの移植、ならびに心筋のインサイチュー形成。このアプローチは、未分化rMSCが移植されて、その最終形態に分化できるという点で伝統的な組織工学とは異なる。宿主環境からの生物学的、生体電気的、および/または生体力学的な誘発は十分であり得、または特定の環境下では、十分に統合されかつ機能的な組織を樹立するための治療計画の一部として増強され得る。
【0026】
従って、本発明の1つの局面において、その必要がある個体において心筋細胞を産生するための方法であって、十分な量の組換え間葉幹細胞を該個体に投与する段階を含む方法が提供されるが、これにより細胞を心筋に分化することができ、したがって損傷心臓組織が修復される。
【0027】
間葉幹細胞は特定の細胞表面マーカーによって同定され得る。これらの単離されたMSC集団の表面マーカーは、コネキシン-43、c-kit(CD117)、およびCD90に対して99%陽性であり、かつCD34、CD45、MHC、MLC、CTn1、αSA、およびMEF-2に対して100%陰性であると特徴付けられる。初代骨髄からMSCが富化された集団の単離のための非限定的な方法には、例えば、実施例において記載されているような、CD34細胞表面マーカーに対して陽性である細胞に対する陰性選択技術が含まれる。
【0028】
いくつかの態様において、rMSCは、サイトカインカクテルを宿主被験体に投与することによって、骨髄から虚血心臓まで移動するようにインビボで誘導される。他の態様において、rMSCは、疾患を有する心臓または周囲の血管に直接移植または注入される。細胞の投与は、種々の手順によって心臓に方向付けられ得る。局在化投与が好ましい。間葉幹細胞は多様な供給源 (好ましい順番に、自系、同系、同種異系、または異種を含む) 由来であり得る。
【0029】
1つの態様において、MSCは注射のための薬学的に許容される培地中に細胞懸濁物として投与される。注射は局所的、すなわち、心筋の損傷した部分に直接的であり得るか、または全身的に、すなわち、周辺の循環系に注射され得る。ここでも、局所的投与が好ましい。
【0030】
別の態様において、rMSCはさらに、横紋筋細胞の分化および/または維持のために重要なタンパク質を発現する遺伝子を含むように改変または操作される。血管形成および血管再生を刺激する因子をコードする遺伝子もまた、意図される。DNAを導入するための公知の方法のいずれかが適切であるが、しかし現在は、エレクトロポレーション、レトロウイルスベクター、およびアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターが好ましい。
【0031】
本発明はまた、インビトロ法を使用して、MSCを心筋細胞表現型に部分的に分化させる可能性に関する。この技術は、特定の環境下で、MSCを測定の分化経路に傾かせることによって、心臓系統へのMSCの転換を最適化し得る。これにより、細胞が投与されてから、完全に分化するまでに必要な時間を短縮できる可能性がある。
【0032】
心筋組織などの損傷組織への細胞の移動、ホーミング、接着、または移植を増強する方法もまた、本発明の範囲内である。心臓の損傷または疾患として、心筋梗塞、うっ血性心臓疾患または心不全が挙げられる。ホーミングとは、損傷組織、例えば損傷心臓組織に由来する組成物の同化を意味し、これにより骨髄または循環系から細胞が補充される。接着とは、1つの細胞の別の細胞への結合、または細胞外マトリクスへの細胞の結合を意味する。接着には、細胞の移動、例えば血管中でのローリングが含まれる。接着分子は、細胞-細胞の、および細胞-細胞外マトリクスの、接着、認識、活性化、および移動に関与する、多様なファミリーの細胞外糖タンパク質(例えばラミニン)および細胞表面糖タンパク質(例えばNCAM)である。細胞移植とは、細胞(例えば幹細胞)が分化した組織に取り込まれるようになり、かつその組織の一部になるプロセスをいう。例えば、幹細胞は心筋細胞に結合し、機能的心筋細胞に分化し、および心筋に存在するようになる。
【0033】
本方法は、細胞(例えば幹細胞)の表面上のポリペプチドの量を増加させることによって実行される。本発明の方法は、外因性幹細胞関連ポリペプチドまたはこのようなポリペプチドをコードする核酸の非存在下での損傷組織の領域における幹細胞の数と比較して、この領域における幹細胞の数を増加させる。受容体は、CXCR4、IL-6RA、IL-6ST、CCR2、Selel、Itgal/b2、Itgam/b2、Itga4/b1、Itga8/b1、Itga6/b1、およびItga9/b1からなる群より選択される。好ましくは、細胞は、骨髄由来幹細胞のような幹細胞である。より好ましくは、細胞は、間葉幹細胞である。細胞の表面上の受容体の量は、細胞をタンパク質と接触させること、または遺伝子の転写および翻訳を可能にする条件下で該受容体をコードする核酸を細胞に導入することによって増加される。この遺伝子産物は、幹細胞の表面上で発現される。幹細胞受容体は、損傷組織(例えば梗塞心臓組織)中で発現されるリガンドに結合する。
【0034】
損傷組織への細胞(例えば幹細胞)の移動、ホーミング、接着、または移植を増強する方法は、損傷組織において、損傷関連ポリペプチド(例えばサイトカインまたは接着タンパク質)の量を増加させることによって実行される。この方法は、外因性幹細胞関連ポリペプチドまたはこのようなポリペプチドをコードする核酸の非存在下での損傷組織の領域における幹細胞の数と比較して、この領域における幹細胞の数を増加させる。損傷関連ポリペプチド(例えば増殖因子)の同定により、心臓における修復(例えば心臓前駆細胞の増殖および分化)の内因性機構が活性化される。例えば、損傷関連ポリペプチドは、SDF1、IL-6、CCL2、Sele、ICAM-1、VCAM-1、FN、LN、およびTncからなる群より選択される。損傷組織は心臓組織、例えば虚血性心筋組織である。損傷組織は、標的タンパク質をコードする核酸またはタンパク質それ自体(例えばサイトカインまたは接着タンパク質)と接触される。例えば、標的タンパク質またはそのタンパク質をコードする核酸は、心筋に直接投与される。代替として、標的タンパク質をコードする内因性核酸分子を発現する細胞(例えば線維芽細胞)は損傷部位に導入される。上記に列挙された遺伝子/遺伝子産物の核酸配列/アミノ酸配列は公知であり、公的に利用可能である(例えば、GENBANK(商標)より)。
【0035】
本発明はまた、患者由来の試料における、心臓疾患の際に差次的に発現される2つもしくはそれ以上の遺伝子(またはそれによってコードされるポリペプチド)のレベルを決定することによって、心臓疾患に罹患しているかまたはそれを発症するリスクを有する哺乳動物における心臓疾患を診断する方法に関し、ここで、正常な対照(すなわち、心臓疾患を有さない哺乳動物)のレベルと比較したこれらの細胞のレベルの増加または減少により、哺乳動物が心臓疾患に罹患しているかまたはそれを発症するリスクを有することが示される。試料は、心臓組織、血液、血漿、または血清に由来する。
【0036】
他に定義しない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと同じかまたは類似の方法および材料を、本発明の実践および試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書中に言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はそれらの全体が参照として本明細書に組み入れられる。対立する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみであって、限定を意図したものではない。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかである。
【0038】
詳細な説明
間葉幹細胞(MSC)は、複数の型の細胞系統に細胞分化するための広範な可能性を有すること、および非自系宿主に移植されたときに免疫系媒介性拒絶の発生の減少が知られている前駆細胞である。MSCは心筋細胞、血管内皮、および結合組織に分化する実証された能力を有する。例えば、Pittenger et al., 1999 Science 284: 143-147; 米国特許第6387369、6214369、5906934、5827735、5591625、5486359、および5197985を参照されたい。
【0039】
成体動物の骨髄は間葉幹細胞(MSC)の貯蔵所である。これらの細胞は自己再生性であり、非造血組織のクローン性前駆体である。これらは多能性である。MSCは骨芽細胞、軟骨細胞、グリア細胞、星状細胞、神経細胞、および骨格筋に分化することができる。骨髄から単離された細胞は血管および毛細血管に分化することができる。例えば、骨髄由来単核球(BM-MNC)は、心筋虚血組織および骨格筋虚血組織に移植された場合、新規な血管を形成し、該標的組織中の血管形成を増大させる。PCT公開WO 02/08389を参照されたい。骨髄由来幹細胞は心筋に分化することができ、心臓機能の回復のために有用である。
【0040】
酸化ストレスは、損傷した心筋に移植された細胞の主要な死因であることが示されてきた。Wang et al., 2001, J Thorac Cardiovasc Surg 122: 699-705; Zhang et al., 2001, J Mol Cell Cardiol 33: 907-921。セリン-スレオニンプロテインキナーゼAkt(プロテインキナーゼB)およびヘムオキシゲナーゼ(HO)のような細胞保護遺伝子についての組換え体であるトランスジェニック細胞は、梗塞心筋瘢痕組織に移植されたときに、虚血性損傷に対して細胞を保護し、移植片細胞の生存を増大させる。
【0041】
細胞保護ポリペプチドは、酸化ストレス誘導性細胞死のような細胞損傷を阻害することができるポリペプチドである。適切な組織保護ポリペプチドには、非限定的な例として、抗酸化酵素タンパク質、熱ショックタンパク質、抗炎症タンパク質、生存タンパク質、抗アポトーシスタンパク質、冠状血管緊張タンパク質(coronary vessel tone protein)、血管形成促進タンパク質(pro-angiogenic protein)、収縮性タンパク質、プラーク安定化タンパク質、血栓保護タンパク質(thromboprotection protein)、血圧タンパク質、および血管細胞増殖タンパク質が挙げられる。好ましくは、細胞保護ポリペプチドはヒトAktポリペプチド(例えば、Akt-1、Akt-2、またはAkt-3)、ヒトヘムオキシゲナーゼポリペプチド(例えば、HO-1またはHO-2)、ヒトインターフェロン誘導性二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ(すなわち、PKR;真核生物翻訳開始因子2αプロテインキナーゼ2;Pl/eIF-2Aプロテインキナーゼ)ポリペプチドまたはヒト細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(すなわち、ecSOD)、またはいずれかのこのようなポリペプチドの生物学的に活性な断片である。例示的なヒトAkt-1ポリペプチドには、例えば、GenBankアクセッション番号NP_005154およびAAH00479が挙げられる。例示的なヒトAkt-2ポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号P31751およびNP_001617が挙げられる。例示的なAkt-3ポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号Q9Y243およびNP_005456が挙げられる。例示的なヒトヘムオキシゲナーゼ-1ポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号P09601およびCAA32886が挙げられる。例示的なヒトヘムオキシゲナーゼ-2ポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号P030519およびAAH02396が挙げられる。例示的なヒト細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号Q07449およびP08294が挙げられる。例示的なヒトPKRポリペプチドには、例えばGenBankアクセッション番号P19525、JC5225、およびNP_002750が挙げられる。
【0042】
他の細胞保護遺伝子は表Iに提供される。
【0043】
間葉骨髄細胞
骨髄由来間葉幹細胞は、心筋細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、星状細胞、肺細胞、および神経細胞を含む種々の細胞に分化する。全身投与されたMSCは、特定の器官(例えば、脳)に向かってホーミングおよび移動し、そこでそれらは星状細胞型移植片を形成するように脳に移植され、かつ脳に移動し、神経細胞特異的マーカーNeuNおよびMAP-2およびGFAPの発現を伴う神経細胞表現型を獲得し、そして機能的結果を改善する。さらに、骨髄由来細胞は骨格筋衛星細胞および成熟骨格筋(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィーの動物モデルにおける)に分化し、ならびにブレオマイシン誘導性肺損傷を維持したレシピエントにおいてI型肺細胞に分化する。MSCはまた、心筋梗塞の領域中の心筋細胞に分化する。
【0044】
移植前に公知の方法を使用して、エキソビボ遺伝子操作を実行する。MSCは自系または同系である。代替として、MSCは同種異系である。同種異系rMSCは、ドナーからのいかなる免疫応答も妨害または減少するために任意に改変される。
【0045】
Aktを用いた遺伝子改変による、移植周辺間葉幹細胞の生存の増強
本発明以前には、再生能力は移植周辺期間における細胞死によって制限されていた。移植周辺後細胞死の主要な原因は栄養および酸素を欠く虚血環境への細胞の配置であると考えられていたが、炎症、マトリクス接着または細胞-細胞相互作用からの生存シグナルの損失、および移植の実際の力学はすべて、アポトーシスの増加に貢献する。本明細書中に記載される方法は、遺伝子操作を通して移植された細胞の生存度を増強する。Aktは、低酸素、酸化ストレス、流体剪断、炎症性サイトカイン(例えばTNF-α)、ならびに種々の他の増殖因子およびサイトカインによって活性化される。Aktは生存シグナルの一般的なメディエーターであり、細胞生存のために必要かつ十分である。これは、このことを、アポトーシスファミリーメンバーCed-9/Bcl-2およびCed-3/カスパーゼ、フォークヘッド転写因子、IKK-αおよびIKK-βを標的化することによって達成し、例えば、グルコース輸送を増加させることによって、細胞内グルコース代謝を調節する際に役割を果たす。Aktは、インビトロと、初期の移植後期間においての両方でMSC生存度を促進する。構成的には発現されなかったが、必要とされるときに活性化された野生型Aktの使用は、構成的に発現されるAkt発現の潜在的に有害な効果を回避しながら、細胞をアポトーシスから保護した。結果として、Aktを過剰発現するために遺伝的に増強されたMSCの心臓内保持、移植、および分化は、対照MSC(例えば、レポーター遺伝子単独を発現するもの)よりも優れていた。
【0046】
心臓移植モデルにおいて、虚血心筋における寿命/生存度の増加により保持されるMSCの数が大きくなるほど、3週間後に再生された心筋の体積はより大きくなり、収縮期および拡張期の心臓機能は正常化され、再構築が妨害された。
【0047】
Akt遺伝子産物をコードする核酸はレトロウイルス形質導入によって細胞に導入された。培養中のMSCが高力価のレトロウイルス上清に、10日目〜15日目の間に曝露された後、かつ、GEPまたはLacZのいずれかを発現するレトロウイルスを使用する造血画分からの分離の前に、80%を上回る形質導入効率が観察された。細胞は培養物中で増殖し続け、遺伝子操作後幹細胞マーカーc-kitを発現し続けた。Clontechからのマウス幹細胞ウイルス(pMSCV)を使用し、それによって、移植後のレトロウイルスサイレンシングに伴う潜在的な問題を回避した。レトロウイルスベクターは、安定な、高レベル遺伝子発現を達成した。遺伝子発現は、本発明者らの実験の期間、観察された(インビトロで8週間、インビボで3週間)。
【0048】
レトロウイルスによって形質導入されたMSCは、生存促進セリン-スレオニンキナーゼAktで形質導入された。37℃および21%周囲O2の基底条件では、Akt活性は両方の群において等価であった。無血清培地中24時間の無酸素後、Akt活性はAkt-MSC群において28.5倍増加し、無血清培地中hypozinにおいて6.6倍増加し、Akt活性はAkt-MSC群において28.5倍増加し、GFP-MSC群において6.6倍増加し、MSCアポトーシスが79%減少し、DNAラダー化を減少した。Aktの保護効果は、c-kit+およびTUNELまたはアネキシンVについての左心室切片の二重染色によってインビボで評価された。この方法は、心筋において保持されるc-kit+の数、およびアポトーシス性であったc-kit+細胞のパーセントの決定を可能にした。虚血性心筋への5×106LacZ-MSCの移植の24時間後、高倍率視野(hpf)あたり33±1.53 LacZ-MSCSの68%がアポトーシス性であった。対照的に、5×106Akt-MSCの移植24時間後、hpfあたり82±6.7 Akt-MSCの19%のみがアポトーシス性であった(p<0.001)。さらに48時間後、hpfあたり22.7±9.8 LacZ-MSCの31%がアポトーシス性であった;それに対して、hpfあたり66±3.5 Akt-MSCの17%がアポトーシス性であった(p<0.001)。3週間後、心筋中にはc-kit+細胞は存在しなかった。これらの観察は、Aktがインビトロで低酸素および血清飢餓状態に曝されたMSC中で、ならびに虚血性心筋への移植後に活性化されること、ならびにAkt活性が移植直後の期間、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、7日、および移植後数週間、MSCアポトーシスを妨害することを示す。
【0049】
外因性ポリペプチドの発現
MSCは1種または複数の細胞表面受容体をコードする外因性核酸を発現するように遺伝子改変される。これらの受容体には、CxCケモカイン受容体(例えば、CxCr1-6)、CCケモカイン受容体(例えば、CC12、CC16、CC17およびCC19);インターロイキン受容体;trk受容体;エストロゲン受容体;インテグリン受容体;腫瘍壊死因子(TNF)受容体;他のケモカイン受容体(例えば、fekL;Fek-1);血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGF-R、例えば、Flt-1、Flk1);エフリン受容体(EPH)、IgG受容体(例えば、IgGa4およびIgGb1);および血小板由来増殖因子受容体が挙げられる。
【0050】
本発明はまた、1種または複数の接着分子を発現するrMSCを提供する。これらの接着分子には、P-セレクチン、E-セレクチン、血管細胞接着分子(VCAM)、細胞内接着分子(ICAM)、血小板内皮細胞接着分子(PECAM)、およびLF-1が挙げられる。
【0051】
本発明はまた、任意に細胞外マトリクスタンパク質の1種または複数の修飾因子を組み合わせて、細胞表面上に1つまたは複数の細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を発現するrMSCを提供する。例示的な細胞外マトリクスタンパク質には、インテグリン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、テネイシンC、ビトロネクチンCSPG、およびトロンボスポンジンが挙げられる。例示的なECM修飾タンパク質には、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)、MT-MMP、メタロプロテアーゼの組織阻害因子(inhibitor)(TIMP)、ディスパーゼ、コラゲナーゼ、およびEMMPRINが挙げられる。
【0052】
本発明はまた、1つまたは複数の増殖因子またはサイトカインを発現するrMSCを提供し、これには、SDF-1、インターフェロン、インターロイキン、ヘパリン、組織プラスミノーゲン活性化因子(activator)、TNF、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血小板因子(例えば、PF-4)、インスリン様増殖因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、エリスロポエチン、エフリン、およびコロニー刺激因子(CSF)が挙げられる。
【0053】
上記に記載されるタンパク質に加えて、MSCは、1種または複数の抗酸化タンパク質を発現する外因性核酸を含む。例示的な抗酸化剤には、スーパーオキシドジスムターゼ、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)、ATX-1、ATOX-1、およびAhpDが挙げられる。
【0054】
血管形成および脈管形成の1種または複数の誘導因子をコードする遺伝子は、同様に任意に細胞に形質導入される。このような誘導因子には、VEGF、線維芽細胞増殖因子(FGF)、PDGF、エフリン、および低酸素誘導性因子(HIF)が挙げられる。
【0055】
rMSC分化
rMSCは、選択された標的組織中で特定の細胞型に分化する。心筋においては、rMSCは、例えば、心筋細胞に分化する。脳または脊柱においては、rMSCは神経細胞および/または星状細胞に分化する。骨においては、rMSCは骨芽細胞、破骨細胞、または骨細胞に分化する。軟骨においては、rMSCは軟骨細胞に分化する。脂肪組織においては、rMSCは脂肪細胞に分化する。骨格筋においては、rMSCは筋細胞または衛星細胞に分化する。肝臓においては、rMSCは肝細胞に分化する。肺においては、rMSCは肺細胞に分化する。血管においては、rMSCは内皮細胞、平滑筋細胞、または周皮細胞に分化する。
【0056】
組織特異的送達系
MSCは多数の細胞型に分化できる。本発明は、rMSCが全身的または局所的に投与されて選択された型の組織、例えば損傷組織に定着する送達系を含む。例えば、rMSCは標的組織に直接注射される。注射の部位は損傷部位であるか、または損傷組織の近傍である。代替として、特定の組換えリガンドまたは受容体を発現するrMSCは被験体に導入され、次いでその細胞は、標的組織中の同族結合パートナーの発現を誘導することによって望ましい標的組織に標的化される。
【0057】
MSCは、特定の組織中で抗アポトーシスタンパク質(Akt)を産生するためのみに改変される。非限定的な例として、Akt遺伝子を含む外因性核酸は、組織特異的プロモーターの制御下に配置される。代替として、Akt発現は光感受性プロモーターの制御下に配置され、それによって、Akt遺伝子は、制御された様式で、照射された組織またはその領域中でのみ発現される。
【0058】
rMSCとの損傷前接触による、虚血-再灌流損傷の予防
虚血-再灌流によって引き起こされる細胞死および組織損傷が、特定の外科的手順の結果として起こることが合理的に予測され得る状況が、臨床的設定において発生する。虚血-再灌流損傷を生じ得る心臓用の手順としては、バルーン血管形成、冠動脈バイパス形成手術、心臓移植、および弁置換術が挙げられる。同様の損傷は、腎臓、肝臓、および血流の減少または停止から生じる他の器官において起こる。全身性または多器官の虚血-再灌流損傷はまた、低体温、感染、および他の原因から生じ得る。本発明は、損傷の前および/または損傷と同時に、rMSCで被験体を処置することによって虚血-再灌流による細胞死および組織損傷を予防または減少する方法を含む。
【0059】
2種またはそれ以上の外因性遺伝子配列を含むrMSC
本発明は、2種またはそれ以上の外因性遺伝子配列を含むrMSCを提供する。これらの遺伝子配列は、単一のプロモーター、または2つのプロモーターに機能的に連結され得、同じ核酸中に含まれ得るか(シス)、または別個の核酸上に含まれ得る(トランス)。本明細書中で使用される遺伝子配列には、タンパク質のオープンリーディングフレーム(open-reading frame)、またはオープンリーディングフレームの一部が含まれ、その結果、翻訳されたポリペプチドは、完全なオープンリーディングフレームから翻訳されたポリペプチドのそれと同様の生物学的活性を有する。遺伝子配列にはまた、プロモーター、エンハンサー、およびサイレンシングエレメントが含まれる。
【0060】
この2種またはそれ以上の遺伝子配列は、抗アポトーシス遺伝子(例えば、Akt)および細胞表面受容体(例えばホーミング分子); 抗アポトーシス遺伝子および接着分子;抗アポトーシス遺伝子および増殖因子;抗アポトーシス遺伝子および抗酸化;抗アポトーシス遺伝子および血管形成/脈管形成誘導因子;または抗アポトーシス遺伝子および細胞外マトリクスタンパク質もしくはECM修飾因子である。
【0061】
サイトカインおよび接着受容体に媒介される、損傷組織へのMSCの輸送、ホーミング、および移植
特定のサイトカインおよび接着受容体は、損傷組織(例えば虚血-再灌流によって損傷した心筋など)へのMSCのホーミングおよび付着において決定的な役割を果たす。本発明は、MSCの富化またはこれらのサイトカインおよび接着受容体の外因性レベルを発現するrMSCの生成および使用を提供する。非限定的な例として、細胞表面受容体およびリガンドの特異的コレクションを発現するMSCが細胞ソーティングを使用して富化され、および高効率レトロウイルス遺伝子移入ストラテジーを使用して、遺伝子改変されたこれらのMSCおよび任意に、富化していないMSCである。これらのrMSCは、虚血性心臓から生成したサイトカインに対する応答性が増大しており、かつ虚血性心筋への接着が増大しており、次には、移植を増大させる。例えば、rMSCへのIL-8受容体の導入はホーミングのために有用であり、α-インテグリン4は接着のために有用である。
【0062】
MSCの細胞マーカー特徴付け
単離されたMSCはマーカー(例えば細胞表面ポリペプチド)の存在に基づいて他の細胞型から区別される。これらのマーカーの検出は、免疫組織化学、FACSソーティング、およびRT-PCRを使用して実行され得る。MSC型の有用なマーカーには以下が挙げられる。
a. 増殖因子受容体:CD121(IL-1R)、CD25(IL-2R)、CD123(IL-3R)、CD71(トランスフェリン受容体)、CDI17(SCF-R)、CD114(3-CSF-R)、PDGF-R、およびEGF-R
b. 造血マーカー:CD1a、CD11b、CD14、CD34、CD45、CD133
c. 接着受容体:CD166(ALCAM)、CD54(ICAM-1)、CD102(ICAM-2)、CD50(ICAM-3)、CD62L(L-セレクチン)、CD62e(E-セレクチン)、CD31(PECAM)、CD44(ヒアルロン酸受容体)
d. インテグリン:CD49a(VLA-α1)、CD49b(VLA-α2)、CD49c(VLA-α3)、CD49d(VLA-α4)、CD49e(VLA-α5)、CD29(VLA-β)、CD 104(β4-インテグリン)
e. その他のマーカー:D90(Thyl)、CD105(エンドグリン)、SH-3、SH-4、CD80(B7-1)、およびCD8(B7-2)
【0063】
MSCマーカーの特定のコレクション(または「用法指示(signature)」)が提供され、これは、特定の細胞型に分化することができるrMSCの生成を可能にする。非限定的な例として、心筋細胞に発達する最も大きな能力を有するMSCの亜集団が心筋用法指示を使用して単離され得る。本発明のMSCの免疫細胞化学的特徴付けは図17A〜図17Hにおいて提供される。
【0064】
冠状血管疾患
多くの患者が種々の型の心不全(心筋梗塞、症候性もしくは症候性でない左心室機能疾患、またはうっ血性心不全(CHF)を含む)のリスクを有するか、またはそれに罹患している。現在、約490万人と見積もられる米国人がCHFであると診断されており、年間40万人の新患が加えられている。本年は30万人を超える米国人がうっ血性心不全で死亡すると考えられる。心筋は通常修復能力を有しない。弱くなった心筋を増強するための能力は心筋症および心不全の治療における主要な進歩である。心不全の医学的治療における進歩に関わらず、この疾患に起因する死亡率は高いままであり、ここでは大部分の患者が診断後1年から5年以内に死亡する。
【0065】
冠状血管疾患は少なくとも2つの群に分類され得る。急性冠状血管疾患には、心筋梗塞が含まれ、そして慢性冠状血管疾患には、冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大が含まれる。他の冠状血管疾患には、脳卒中、心筋梗塞、拡張型心筋症、再狭窄、冠状動脈疾患、心不全、不整脈、アンギナ、または高血圧が含まれる。
【0066】
急性冠状血管疾患は、心臓への血液供給の突然の遮断を生じ、これは心臓組織に酸素および栄養を欠乏させ、心臓組織の損傷および死を生じる。対照的に、慢性冠状血管疾患は、時間をかけて心臓組織への酸素および血液の供給を徐々に減少することによって特徴付けられ、進行性の損傷および心臓組織の最終的な死を引き起こす。
【0067】
組織保護ポリペプチド
表Iは本発明の組成物および方法において有用である組織保護ポリペプチドのリストである。
【0068】
(表I)先天的および後天的な心臓疾患のための遺伝子に基づく治療についての標的
略号:AAV、アデノ関連ウイルス;AS-ODN、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド;CAD、冠状動脈疾患;DCM、拡張型心筋症;HF、心不全;LV、レンチウイルス;MI、心筋梗塞;α-MHC、αミオシン重鎖;RV、レトロウイルス;HO-1、ヘムオキシゲナーゼ-1;SOD、スーパーオキシドジスムターゼ;GPx、グルタチオンペルオキシダーゼ;HSP70、70kD熱ショックタンパク質; HSP90、90kD熱ショックタンパク質; HSP27、27kD熱ショックタンパク質;I-CAM、細胞内接着分子;V-CAM、血管接着分子;NF-κB、核因子κB;TNF-α、腫瘍壊死因子α;eNOS、内皮一酸化窒素シンターゼ;VEGF、血管内皮増殖因子;FGF、線維芽細胞増殖因子;HGF、造血増殖因子;SERCA 2A、筋形質/小胞体Ca-2+ ATPase;V1受容体、バソプレッシン-1受容体;bARK、β-アドレナリン受容体キナーゼ;PAI-1、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1;TPA、組織プラスミノーゲン活性化因子;COX-1、シクロオキシゲナーゼ-1;PGI2シンターゼ、プロスタサイクリンシンターゼ;ANP、心房性ナトリウム利尿ペプチド;ACE、アンギオテンシン変換酵素;AGT、アンギオテンシノーゲン;AT1、1型アンギオテンシンII;NOS、一酸化窒素シンターゼ;PCNA、増殖細胞核抗原;SCN5A、心臓ナトリウムチャンネル5A。
【0069】
調節可能な遺伝子発現
最適な発現レベルを達成するため、および、構成的遺伝子発現に付随する副作用を減少させるために、遺伝子発現が調節されることが、効果的な遺伝子治療には必要である。導入遺伝子の構成的発現から生じる最小限の潜在的な副作用を伴う虚血/再灌流損傷に対する心筋保護のための理想的なストラテジーは、調節可能な発現系である。ある態様において、遺伝子発現をオンにすることは、虚血(低酸素)の発生とともに起こり、その結果、遺伝子産物が再灌流の間にすでに存在している。
【0070】
多くの転写因子は、低酸素および酸化ストレスによって修飾される。低酸素への分子的応答の研究は、低酸素誘導可能な遺伝子発現の主制御因子としてHIF-1を同定した。低酸素症下では、HIF-1はその標的遺伝子のエンハンサー領域中の低酸素応答性エレメント(HRE)に結合し、遺伝子転写をオンにする。さらに、虚血後の再灌流または再酸素供給は、NF-κBのトランス活性化能力を増大させる。NF-κBによって調節される遺伝子にはサイトカインおよび接着分子が含まれ、これらは炎症性応答を促進することによって細胞死に寄与する。いくつかの研究は、低酸素および高酸素環境が、HREおよび活性化NF-κBのシス作用性コンセンサス配列によってそれぞれ駆動される異種遺伝子発現を活性化するために使用され得ることを示す。従って、本発明の1つの局面において、少なくとも1つのHREが導入遺伝子発現を駆動するためにエンハンサーとして利用される。再灌流時間の間に心筋保護を達成するために導入遺伝子発現の十分な時間を保証するために、酸化ストレスによって活性化される第2の調節エレメント(例えばNF-κB応答性エレメント)が特定の態様において利用される。
【0071】
細胞特異的遺伝子発現
現在、効率的な細胞特異的標的化ベクターが存在しないことによって、遺伝子治療の潜在的な応用が制限されている。標的細胞中で治療的であるタンパク質もまた、通常の組織に対しては有害であり得るため、この組織特異性の欠如は、遺伝子治療にとっては根本的な問題である。このように、導入遺伝子の細胞非特異的発現は、長期間にわたって病変を生じ得る代謝的かつ生理学的機構を誘導する可能性がある。局在化した注射は、標的化ベクターの局在化発現をある程度提供し得るが、しかし、他の細胞および器官に影響を与える循環への溢出がなお存在し得る。この問題を回避するための1つの方法は、組織特異的(例えば、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖)プロモーターの使用によって主として標的細胞に治療タンパク質の発現を制限し得る転写標的化ベクターを使用することである。特に再灌流損傷する傾向がある心筋における細胞は心筋細胞および微小血管細胞である。細胞特異的ストラテジーは、いずれの細胞型も保護するように指向され得る。
【0072】
HO-1、Akt、またはecSOD遺伝子発現を用いる心筋保護
治療剤としてのHO-1の選択は、この酵素がヘムの潜在的な酸化剤促進活性を中和すること、およびその複数の触媒的副産物ビリルビン、一酸化炭素(CO)、および遊離の鉄が一緒に、強力な多能性細胞保護効果を発揮することの証拠に基づいてなされた。ビリルビンはペルオキシラジカルを除去し、膜脂質およびタンパク質の過酸化を減少させる強力な内因性抗酸化剤である。COは血管拡張剤であり、強力な抗炎症性かつ抗アポトーシス剤である。遊離の鉄は鉄結合タンパク質フェリチンの合成を刺激し、これは、フリーラジカルのイオン媒介性形成を減少させ、いくつかの鍵となる細胞保護遺伝子をアップレギュレートする。
【0073】
心臓組織に対する組換え細胞治療
遺伝子治療とは、特定の核酸の被験体への投与によって実行される治療をいう。核酸は標的細胞に送達され、次には治療的効果(例えば、低酸素関連損傷後の心筋細胞の細胞死のような細胞損傷の阻害)を発揮する遺伝子産物を産生する。当技術分野において公知である標準的な遺伝子治療方法が本発明の実施において使用され得る。例えば、Goldspiel, et al., 1993. Clin Pharm 12: 488-505を参照されたい。組換え細胞治療とは、遺伝子改変した自系細胞または異種細胞を被験体へ投与することによって実行される治療をいう。
【0074】
本発明の治療組成物は、プロモーターに機能的に連結された抗アポトーシス性ポリペプチドをコ−ドする組換え核酸を発現する、少なくとも1つのMSCを含む。MSCへの核酸の挿入は、当業者に公知の任意の適切なベクターを用いて行われ得る。1つの型のベクターは「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが連結され得る、線状または環状の二本鎖DNAループをいう。別の型のベクターはウイルスベクターであり、ここでさらなるDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る。特定のベクターはそれらが導入される宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、細菌ベクターは細菌複製起点およびエピソーム哺乳動物ベクターを有する)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクターは、それらが機能的に連結される遺伝子の発現を指向することができる。このようなベクターは、本明細書中では「発現ベクター」といわれる。一般的に、組換えDNA技術における有用性のある発現ベクターはしばしばプラスミドの形態である。適切な発現ベクターにはウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)が挙げられる。さらに、あるウイルスベクターは、特定の細胞型を特異的または非特異的に標的化することができる。
【0075】
組換え発現ベクターは、標的細胞(例えば、心筋細胞)における発現のために適切な形態の核酸を含む。組換え発現ベクターには、発現される核酸に機能的に連結された1つまたは複数の調節配列が含まれる。例えば、このベクターには、血管中で核酸の発現を優先的に指向するプロモーター配列および/またはエンハンサー配列(例えば、心臓に制限されたアンキリン反復タンパク質プロモーター)が含まれる。機能的に連結されるとは、関心対象のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で、調節配列に連結されることを意味する(例えば、ベクターが宿主細胞に導入される場合、インビトロ転写/翻訳系において、または宿主系において)。「調節配列」という用語には、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。このような調節配列は当技術分野において公知である。Goeddel;GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)を参照されたい。
【0076】
プロモーターは誘導的または構成的であり得、および任意に、組織特異的であり得る。プロモーターは、例えばウイルスまたは哺乳動物起源であり得る。好ましくは、プロモーターはヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターである。核酸分子組成物は、細胞保護ポリペプチド(例えば、hHO-1ポリペプチドまたはecSODポリペプチド)のコード領域に機能的に連結された発現制御エレメントを含む。ある態様において、発現制御エレメントはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである。特定の態様において、ポリペプチドをコードする核酸分子および調節配列は、ゲノム中の所望の部位での相同組換えを促進する領域に隣接し、それゆえに核酸の染色体内発現を提供する。例えば、核酸分子は、必要とされる複製およびパッケージングシグナルをコードするアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している。例えば、Koler and Smithies, 1989. Proc Natl Acad Sci USA 86: 8932-8935を参照されたい。代替として、核酸はエピソーム性のままであり、内因性遺伝子(例えば内因性HO遺伝子)を誘導する。
【0077】
患者の心臓へのrMSCの送達は、直接的(すなわち、患者の心筋組織へのrMSCのインビボ注射)または間接的(すなわち、患者の末梢血管へのrMSCの灌流であり、その後、損傷心臓組織へのrMSCのホーミングを行う)のいずれかであり得る。核酸は、ウイルスベクターによって(例えば、欠損性または弱毒化されたレトロウイルスベクターまたは他のウイルスベクターを使用する感染によって;米国特許第4,980,286を参照されたい);裸のDNAを直接注射することによって;微粒子ボンバードメント(例えば、「Gene Gun(登録商標)」Biolistic, Dupont)を使用することによって;脂質で核酸をコートすることによって;細胞表面受容体/トランスフェクト剤を同時投与することによって;リポソーム、微粒子、もしくはマイクロカプセル中に核酸をカプセル化することによって;または核に入ることが知られているペプチドに組成物を連結することによって、MSC細胞に送達され得る。特定の態様において、核酸は、連結されたリガンドの受容体を特異的に発現する細胞型を「標的化」するために、受容体媒介エンドサイトーシスを容易にするリガンド(例えば、Wu and Wu, 1987. J Biol Chem 262: 4429-4432を参照されたい)に結合される。
【0078】
rMSCについての遺伝子治療ベクター
得られる組換え細胞のインビボ投与の前に、核酸が当技術分野において公知の任意の方法によって細胞に導入され、その方法には以下が含まれるがこれらに限定されない:トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、関心対象の核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターを用いる感染、細胞融合、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、染色体媒介遺伝子移入、マイクロセル媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合、および必要なレシピエント細胞の発生的機能および生理学的機能が移入によって破壊されないことを保証する同様の方法論。例えば、Loeffler and Behr, 1993. Meth Enzymol 217: 599-618を参照されたい。ある態様において、移入の方法論には、細胞への選択マーカーの同時移入が含まれる。次いで、細胞は、移入された遺伝子を取り込んで、かつそれを発現している細胞の単離を容易にするために選択圧の下に置かれる(例えば、抗生物質耐性)。この遺伝子移入方法は、細胞への核酸の安定な移入をもたらす;すなわち、移入された核酸は細胞子孫によって遺伝可能かつ発現可能である。次いで、これらの細胞は患者に送達される。
【0079】
得られる組換え細胞は当技術分野において公知の種々の方法によって患者に送達され、その方法には、トランスフェクトされた細胞の注射(例えば、皮下に)、または心臓組織への直接的な注射が含まれるがこれらに限定されない。例えば、HO核酸構築物は、自系または組織適合性上皮細胞に導入され、組換え皮膚細胞が皮膚移植片として患者に適用される。ある態様において、5×106rMSCが治療部位に注射される。治療部位あたりに注射されるrMSCの数は、少なくとも1×104細胞、少なくとも2.5×104細胞、少なくとも5×104細胞、少なくとも7.5×104細胞、少なくとも1×105細胞、少なくとも2.5×105細胞、少なくとも5×105細胞、少なくとも7.5×105細胞、少なくとも1×106細胞、少なくとも2.5×106細胞、少なくとも5×106細胞、少なくとも7.5×106細胞、少なくとも1×107細胞、少なくとも2.5×107細胞、少なくとも5×107細胞、少なくとも7.5×107細胞、または少なくとも1×108細胞であり得る。
【0080】
単位体積あたりの細胞の濃度は、キャリア媒体が液体または固体であるかに関わらず、実質的に同じ範囲内にある。送達されるMSCの量は、通常、個体の「パッチ」型適用が公開手順の間になされる場合により多いが、注射による追跡治療は本明細書中に記載されるようなものである。しかし、治療の頻度および期間は組織の関与の程度(パーセンテージ)に依存して変化する(例えば、左心室重量の5〜40%)。
【0081】
組織関与の5-10%範囲に含まれる場合において、rMSC注射調製物の単回投与と同程度に少なく用いて処置することが可能である。注射媒体は任意の薬学的に許容される等張性液体であり得る。例としては、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、DMEMのような培養培地(好ましくは無血清)、生理食塩水または水中5%デキストロースが挙げられる。20%組織関与の重症度レベル周辺の範囲より多くを有する場合において、rMSCの複数注射が想定される。追跡治療はさらなる投薬計画を含み得る。非常に重篤な場合において、例えば、40%組織関与の重症度レベル周辺の範囲において、長期間の(数ヶ月まで)維持用量アフターケアを伴う、より延長された期間の複数の等価な用量が示され得る。
【0082】
使用のために想定される細胞の総量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者によって決定され得る。任意の1人の患者のための投薬量は多くの因子に依存し、これには、患者のサイズ、身体の表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、一般的健康、ならびに同時に投与される他の薬物が含まれる。
【0083】
遺伝子治療の目的のために核酸が導入され得る細胞は、任意の所望の利用可能な細胞型を含み、異種、異種遺伝子型、同系、または自己であり得る。細胞型には、上皮細胞、内皮細胞、心筋細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、または種々の幹細胞もしくは前駆細胞、特に胚性心臓血管細胞、肝幹細胞(国際特許公開WO 94/08598)などのような分化された細胞が含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、遺伝子治療のために利用される細胞は患者に対して自系である。
【0084】
アポトーシス耐性rMSC
その産物がアポトーシスまたは炎症を阻害する遺伝子を発現する、レトロウイルスによって形質導入された組換え間葉幹細胞(rMSC)が特に本発明において提供される。損傷心臓の梗塞領域に直接注射された場合、これらの新規な組換えMSC(rMSC)は、低酸素症で生存するそれらの能力に少なくとも部分的に依存して、移植期間周辺で即時的に細胞死に抵抗する。好ましい抗アポトーシス遺伝子は酸化的損傷に対して耐性であり、かつ抗炎症性である。特に意図される抗アポトーシス候補遺伝子には、細胞保護ヘムオキシゲナーゼ(HO)遺伝子、セリン-スレオニンキナーゼAkt(プロテインキナーゼB)遺伝子および細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ecSOD)ポリペプチド;またはそれらの生物学的に活性な断片、誘導体、アナログ、もしくはホモログが含まれる。細胞生存タンパク質をコードするさらなる組換え核酸分子は当技術分野において公知であり、非限定的な例として、HIFA(低酸素誘導性因子)、DEL-1(発生胚遺伝子座-1)、NOS(一酸化炭素シンターゼ)、BMP(骨形態形成タンパク質)、P2-アドレナリン作動性受容体、およびSERCA2a(筋小胞体カルシウムATPアーゼ)が含まれる。ある態様において、rMSCは損傷組織部位または疾患を有する組織部位へのインビボでの遺伝子送達のためのベクターとして使用される。移植されたrMSCは心筋細胞に分化することができ、梗塞体積の減少、毛細血管密度の機能の増大、およびより少ない全体的瘢痕を含む治療的に意味のある改善を心臓機能に与える。移植されたrMSCは損傷後組織再構成を妨害し、梗塞後の標準化された心臓機能(収縮期および拡張期)を回復させる。
【0085】
心臓損傷は、移植されたrMSCを使用する筋形成を増強する組織応答を促進する。従って、rMSCは瘢痕形成の程度を減少させるため、および心室機能を増強するために梗塞領域に導入される。新しい筋肉は、それによって、梗塞心筋セグメント中に作製される。組換えMSCは梗塞組織の領域に直接浸潤される。これらの細胞の組み込みおよび引き続く分化は、本明細書中に記載されるように特徴付けされる。介入のタイミングは、臨床的設定を模倣するように設計され、ここでは急性心筋梗塞患者が最初に医療監視を受け、初回の治療を受け、続いて安定化し、次いで、必要な場合、心筋置換治療を用いる介入を受ける。
【0086】
治療される心筋梗塞の重篤度、すなわち、関与する左心室の筋肉奇異量のパーセンテージは約5パーセントから約40パーセントの範囲であり得る。これは、1つの連続的な虚血またはより小さな虚血性損傷(例えば、約2cm2から約6cm2までの水平方向の罹患した領域、および1〜2mmから1〜1.5cmの厚さを有する)である罹患した組織を含む。梗塞の重篤度は、どの血管が関与するか、および治療介入が始まる前にどれくらいの時間が経過したかによって有意に影響される。
【0087】
本発明に従って使用される遺伝子操作された間葉幹細胞は、好ましい順番に、自系、同種異系または異種であり、選択は、治療の必要の緊急度に大部分依存し得る。免疫的に生命を脅かす条件を提示する患者は、十分な数の自系MSCが培養されるか、または初期治療が自系MSC以外を使用して提供され得る間、心臓/肺マシン上で維持される。
【0088】
適切な環境刺激がrMSCを心筋細胞に転換する。rMSCの心臓系統への分化は、心臓環境に存在する因子によって制御される。刺激された心臓環境へのrMSCの露出は、これらの細胞を、特定の心筋系統マーカーの発現によって検出されるような心臓分化に方向付ける。局所的、化学的、電気的、および機械的な環境の影響が多能性rMSCを変化させ、心臓に移植された細胞を心臓系統に転換する。
【0089】
抗アポトーシス遺伝子または細胞保護遺伝子の発現を誘導するためにMSCに適用可能な一連の特異的処理は本明細書中に開示される。MSCのための増殖条件には、実施例2において提供されるものおよび、当技術分野において公知のもの(例えば、米国特許第6,387,369に記載)が含まれる。
【0090】
本発明のrMSC治療は、以下を含むいくつかの投与の経路によって提供され得る。第1に、開心手順の必要を回避する心臓内筋肉注射が、rMSCが注射可能な液体懸濁調製物中にある場合、またはrMSCが液体型で注射可能な生体適合性媒体中にあり、かつ損傷した心筋の部位で半固体になる場合に使用され得る。伝統的な心臓内シリンジまたは制御可能な関節鏡送達デバイスが、針の管腔または内径が十分な直径であって(例えば、30ゲージまたはそれ以上)、剪断力がrMSCを損傷しない限り使用され得る。注射可能な液体懸濁物rMSC調製物はまた、連続ドリップによってまたはボーラスとしてのいずれかで、静脈内投与され得る。心臓への直接的な物理的接近を含む開心手術手順の間、すべての記載された型のrMSC送達調製物が利用可能なオプションである。
【0091】
心筋におけるrMSCの移植
それによって間葉幹細胞が単離され得、かつ培養中で迅速に拡大され得るような、ストラテジーが開発された。一旦、培養物中で適切な細胞数に達すると、これらの細胞は、これらを生じた患者に投与されて戻され得る。この自系移動の技術は免疫抑制プロトコールの必要性を防ぐ。さらに、それによって90%を超える細胞が選択した遺伝子で形質導入されるような、これらの細胞の高度に効率的な遺伝子操作のための技術が開発された。抗アポトーシス遺伝子を発現するようなMSCの遺伝子操作は本発明に先立って記載されたことはなかった。この重要な改変の利点とは、移植時間周辺で即時的に細胞死の制限を克服することを可能にすることであった(今回の一連の実験において)。心筋における移植の最初の24時間での細胞死は、以前には克服できない問題であった。Reineckeらは、ほぼすべてのドナー成体ラット心筋細胞が凍結損傷した成体ラット心臓への移植後24時間で失われることを実証した。ZhangらおよびMuller-Ehmsenらは、30-60%のラット新生仔心筋細胞が、凍結損傷心臓または損傷していない心臓への移植でそれぞれ生存しないことを示し、および胎仔心筋細胞が梗塞心臓への移植で生存しないことが十分に認められている。
【0092】
非組換え骨髄由来細胞はなお、移植細胞死周辺に対して感受性である。Tomaらは、損傷していないヌードマウス心臓への移植後4日でヒト骨髄由来細胞の99.56%が死滅すると見積もっている。移植の前にラット骨格筋芽細胞を熱ショックに供することによってドナー細胞の損失を防ぐ初期の試みは、非常に限られた成功しかもたらさなかった。開示されたデータは、細胞死に抵抗する幹細胞の遺伝的改変が、梗塞後に失われる心筋細胞を完全に再生し得、およびそうすることによって、本発明者らは、梗塞後の心臓機能(収縮期および拡張期)を完全に正常化し得、その結果、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の心臓機能が回復される。同様に、損傷組織中の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の心筋細胞が再生される。
【0093】
このような発見が関連する市場とは、心筋梗塞後に症候性の(または症候性でない)左心室機能不全を有する患者、およびうっ血性心不全を有する患者に対する、迅速に拡大している市場である。これは急速に成長している市場である。うっ血性心不全(CHF)単独についての入院患者数は、1979年の377,000から1999年の978,000に増加しており;およびCHF単独に起因する死亡は、前の期間から157%に増加している。この疾患は、米国の保健システムに大きな犠牲を強要している。約490万人のCHFの診断を現在有し、年間に400,000例の新規症例が発生していると見積もられている。財政学的な見地からすれば、心不全に関連するコストは、年間で直接的なコストで203億ドル、間接的なコストで22億ドル、合計で年間225億ドルが含まれる。
【0094】
移植前に幹細胞を遺伝子改変することは、「抗死亡」ストラテジーのためのこれらの細胞の操作に限定されないが、以下のために遺伝子操作することが含まれる:(i)血管形成増殖因子を分泌するため;(ii)免疫学的な差異を克服するため;(iii)MSC増殖を制御するため;(iv)虚血性心筋へのMSCホーミングを増強するため;(v)虚血性心筋におけるMSC移植を増強するため;および(vi)移植後の収縮性機能を増強するため。
【0095】
本発明はさらに以下の実施例によって例証されるが、限定されるものではない。
【0096】
実施例
実施例1-精製した骨髄由来間葉幹細胞
心筋血流の妨害の延長により、心筋細胞の細胞死に至る事象が開始される。内因性修復メカニズム(例えば心筋細胞肥大および過形成など);ならびに血管形成および筋形成の目的のための心筋への骨髄由来細胞の輸送は、失われた心筋体積の非常に小さい部分のみを回復することができるが、機能的な影響をほとんど有さない。例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の全身性投与を使用して、実験的な心筋梗塞の前、その間、およびその後に骨髄由来幹細胞を動員することによって、治療目的のためにこれらの修復メカニズムを促進する試みは、失われた心筋体積を完全に回復すること、または心筋梗塞を正常化することに失敗した。他のグループにより、虚血性心筋注射用の骨髄由来細胞が収集され、この結果が、血管形成および筋形成の両方において、失われた心筋の不完全な置換、中程度の機能的改善を有することを実証した。現在、独占的な血管形成能力が骨髄から移動して虚血性心筋に存在し、そこでこれらは脈管形成および血管形成を誘導することが知られているので、上記の研究において報告されたどの程度の機能的改善が天然心筋細胞に対する血管形成の保護効果に起因するのか、およびどの程度が真の筋形成に起因するのかが明らかでない。さらに、筋形成が可能である適切な数の純粋な細胞の集団を単離することが技術的に困難であることがわかったので、今日まで報告されたストラテジーが意味のある臨床的な説明を見い出す可能性は低い。
【0097】
間葉幹細胞は、非造血組織の、自己再生性、クローン性前駆体である。これらは培養中で拡大可能であり、多能性であり、ならびに、骨芽細胞、軟骨細胞、星状細胞、神経細胞、および骨格筋に分化できる。Osiris Therapeuticsのグループは、C090ならびに独自のマーカーSH-2およびSH-3を発現するが、CD177(c-kit)を発現しない骨髄由来の推定のMSCがインビボで心筋に分化できることを報告した。しかし、梗塞ブタ心臓への6×107の同程度の多さのMSCの移植は心筋機能の改善を生じなかった。なぜなら、>99%と見積もられるヒト骨髄由来のMSCが、損傷していないヌードマウス心臓への移植後4日で死滅するからである。
【0098】
概念的には魅力的であるが、失われた心筋を置換するための細胞移植ストラテジーは、虚血性心筋への活発な(pert)移植の死滅に抵抗する多数の細胞を送達できないことによって制限される。Reineckeらは、ほぼすべてのドナー成体ラット心筋細胞が凍結損傷された成体ラット心臓への移植24時間後に失われることを実証した。ZhangらおよびMuller-Ehmsenらは、ラット新生仔心筋細胞が凍結損傷心臓または損傷していない心臓への移植でそれぞれ生存しないこと;および胎仔心筋細胞が梗塞心臓への移植で生存しないことを実証した。ドナー細胞死を防ぐ初期の試みは、限られた成功までしか達していない。
【0099】
従って、成体ラット骨髄由来MSCの純粋な集団を単離し、特帳付けし、および拡大した。次いで、細胞を試験して、これらがインビボで心筋細胞に分化するか否か、および虚血性ラット心臓への移植後心臓修復に関与するか否かを決定した。再生能力は、移植周辺期間中に細胞死によって制限されるので、本発明者らは、移植前にAktを過剰発現させるようにMSCを操作した。このセリン-スレオニンキナーゼは、多くの系において強力な生存シグナルであり、少なくとも部分的には、Badおよびカスパーゼ-9の不活性化により、ならびに生存促進分子Bcl-2およびIKKの活性化によって、その抗アポトーシス効果を発揮する。このストラテジーを使用して、虚血性心筋へのMSCのより多くの数の保持が3週間後の再生された心筋のより大きな体積、収縮期および拡張期の心臓機能の正常化、ならびに再構築の妨害に変換される。
【0100】
本研究におけるストラテジーは、高度に精製された骨髄由来間葉幹細胞(MSC)の集団を単離すること、およびこれらの細胞をアポトーシスに耐性にするように遺伝子操作を利用することであった。成体Sprague-Dawleyラットからの全体の骨髄の単核画分を単離し、MSCを単離および精製した。これらのc-kit+CD34-細胞は造血系統の細胞に分化しなかった。細胞はAktタンパク質を過剰発現するように安定に形質導入され、このAktタンパク質は、低酸素および血清飢餓の存在下で活性化され、インビトロでMSCをアポトーシスから保護した。虚血性心筋への移植に際して、500万個のAkt-MSCが移植周辺期間にアポトーシスに対して耐性であり、インビボで心筋細胞に分化した。実験的梗塞の3週間後、再生された心筋の細胞体積の移植は、同等な数のGFP形質移入MSC(5×10e6)が移植されたときよりも3倍から4倍高かった。これらの違いは、単離されたランゲンドルフ調製物に対する収縮期および拡張期の有意な機能的改善に変換された。結論として、心筋形成できる骨髄由来MSCが単離され得、精製され得、および培養中で拡大され得る。MSCのAkt遺伝子移入は、細胞死の有意な減少、再生された心筋の体積の増大、および心筋機能の改善を生じた。このようなカスタマイズ可能な細胞に基づく遺伝子治療ストラテジーは、心筋の疾患のための細胞治療の効果的かつ安全なヒトへの変換を妨害する拡張性の問題に対する可能性を提供する。
【0101】
いくつかのグループにより、心臓修復のための、分画されていないか、または細胞選別されていない骨髄由来細胞の使用が報告されている。これらの細胞の特徴付け、拡大、および分化のための条件は、さらなる定義を必要とする。CD34-/c-kit+成体ラット骨髄由来MSCの純粋な亜集団を単離し、特徴付けし、および増殖させた。このCD34-/c-kit+間葉幹細胞の亜集団は心筋細胞に分化し得、レポーター分子を安定に発現するように形質導入される。これらの細胞は、虚血性傷害によって損傷した心筋に移植されるときに心筋機能の増大を誘導し得る。
【0102】
成体Sprague Dawleyラットからの全体の骨髄の単核画分を密度遠心分離によって分離した。骨髄間質細胞は、コートされていないプラスチック表面に優先的に結合し、および標準的な条件下で造血細胞(HC)との混合培養中で増殖した。MSCは、80%を超える形質導入効率で、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはLac Zでレトロウイルス形質導入した。MSCは、コネキシン43およびc-kit(CD117)を発現するが、造血マーカーCD34、CD45、CD11bを発現しない;またはこの段階では成熟心臓マーカー(トロポニン、ミオシン重鎖、もしくはデスミン)を発現しない。MSCは陰性免疫-磁気ビーズ選別によってHCから分離され得るが、細胞分別の後で増殖を停止する。雄性ドナーラットからの形質導入されたLac Zを、雌性ラットLADの結紮60分後、虚血性心筋の境界領域に注射した。2週間後、左心室の自由壁および先端がβガラクトシダーゼ染色によって広範な青色染色を示し、このことは、Lac-Z発現細胞の存在を示した。導入遺伝子および染色体が、成熟心筋細胞、ミオシン重鎖およびミオシン軽鎖、α筋節アクチン、ならびに心臓トロポニンとともに同時局在した。心エコー分析は、対照と比較して、短縮分画において統計学的に有意な54%の増加を示し、および放出分画において34%の増加を示した。
【0103】
本明細書中で報告されたデータは、骨髄由来MSCがエキソビボで十分な規模まで拡大できることを示し、および損傷した心筋の機能を首尾よく回復するために遺伝試走される得ることそ示す。
【0104】
本方法は、臨床的に有用な量に到達するための幹細胞のエキソビボ拡大、自系移入、および患者に戻す移入の前に増強するための自系幹細胞の遺伝子改変のために有用である。それゆえに、本発明は、実施例2において記載されるように単離される、骨髄由来間葉幹細胞および間葉幹細胞のマーカーの単離、培養、精製の方法を含む。レポーター遺伝子および治療遺伝子の移入のための技術、ならびにこの様式で単離されたMSCが心筋細胞に分化することの実証のための技術もまた含まれる。治療遺伝子移入が終点で有意な改善を生じることの証拠には、間葉幹細胞移植単独と比較した場合の、rMSCの生存の増加、再生した心筋の体積の増加、および心臓機能の増大が含まれる。
【0105】
実施例2-rMSCの単離、遺伝子操作、および機能の増大
1. 骨髄由来間葉幹細胞の単離、培養、および精製
成体雄性Sprague-Dawleyラット(200グラム)をHarlan Laboratories(Indianapolis, IN)から購入した。動物を12:12の明期:暗期サイクル、24℃の大気温度、および60%湿度に維持した。食餌および水を自由に与えた。動物を、腹腔内ケタミン(70mg/kg)およびキシラジン(4mg/kg)を使用して麻酔した。両方の下肢の脛骨および大腿骨を滅菌外科的技術を使用して収集し、次いで21ゲージ針を用いて骨端板でカニューレ挿入した。骨髄腔に30mLの完全培地を3回流した。13mLのFicoll 1.077溶液(Pharmacia, Peapack, NJ)を細胞懸濁液の下に重層し、室温で20分間遠心分離した。バフィーコートを収集し、リン酸緩衝化生理食塩水で2回洗浄し、次いで標準的なヘマトサイトメーターを使用して計数した。全体で約5×107細胞を各動物から収集した。これらのうち、55cm2ポリスチレン細胞培養プレート(Corning)上にcmあたり1×106細胞をプレートした。これはコラーゲン、レトロネクチン、またはポリ-D-リジンでコートしたプレートと比較したときに、ポリスチレン表面に優先的に結合した。フロー図を図1に提供する。
【0106】
細胞を、ロット選択した20%ウシ胎仔血清(Invitrogen, Carlsbad, CA)、抗生物質および抗糸状菌溶液(Invitrogen, Carlsbad, CA)、および2mM グルタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)を補充したAlpha Minimal Essential Medium(Invitrogen, Carlsbad, CA)からなる完全培地中で、37℃で、5% CO2中で培養した。1回目の培地交換を3日目に実行した。細胞を、HBSS(Clonetics, Walkersville, MD)中0.025%トリプシン/0.01% EDTAで軽く処理することによって継代し、3日目から48日目まで、3日毎に計数した。細胞は、右側のグラフに示されるように培養中で迅速に増殖し、培養の9日目までに2.5×105細胞、15日目までに5×105細胞を生じた。成体雄性ラットの骨髄からのMSCはコートされていないプラスチック表面に結合した。造血細胞は結合できず、培地交換で除去された。培養中に増殖した単離されたMSCの増殖特性を図2に提供する。
【0107】
2. 上記に記載した技術によって単離された間葉幹細胞のマーカー
MSCを、造血幹細胞から区別される幹細胞マーカーの発現について試験した。免疫組織化学において、99%を超えるMSCがコネキシン-43、c-kit(CD117)、およびCD90を発現し、60%がKi67を発現し、そして15%がNkx2.5およびGATA-4を発現した。MSCは、CD34、CD45、ミオシン重鎖(MHC)、ミオシン軽鎖(MLC)、心臓トロポニンI(CTnI)、α-筋節アクチン(α-SA)、または心臓特異的転写因子MEF-2を発現しなかった。図3を参照されたい。これらの観察はRT-PCRによって確認した。図4を参照されたい。細胞表面マーカー発現は、他のグループ(例えば、Osiris Therapeutics)によって記載されたものとは全く異なることが見い出された。例えば、Osiris Therapeuticsは、MSCによるCD117の発現を報告していないが、CD90ならびに固有のマーカーSH-2およびSH-3の発現を報告している。発現マーカーを決定することは、>99.9%純粋なMSC集団を得るためにCD34を標的化する陰性常磁性ビーズ選別法の開発を可能にした。これを実行するために、アビジンコートされた磁気ビーズ(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を、ビオチン化された(Sigma. St. Louis, MO)ラットCD34に対するモノクローナル抗体(BD Pharmingen, Franklin Lakes, NJ)に4℃で連結した。次いで、この調製物を室温で30分間、30% FBS中に懸濁した細胞とインキュベートし、次いで20分間磁石に曝した。清澄な上清を収集し、この手順を1回反復した。次いで、細胞を収集し、完全培地中に再懸濁した。
【0108】
公開されたプロトコールによって、MSCを巨核球および赤血球系細胞に分化させることを誘導する試みがなされた。これが不可能であることにより、これらの細胞が確かに造血幹細胞から明確に区別されたことが示唆される。巨核球への分化を実証するために、標準的な方法を使用して完全培地を100 IU/mLトロンボポエチン+80 IU/mL IL-3+80 IU/mL GM-CSF+2 IU/mL c-kitリガンドで補充し、MSCを14日間培養中に維持した。次いで、巨核球マーカーCD61およびCD42aについての染色を実行した。赤血球エレメントへの分化を実証するために、完全培地を2 IU/mL エリスロポエチン+100 IU/mLトロンボポエチン+80 IU/mL IL-3+80 IU/mL GM-CSF+2 IU/mL c-kitリガンドで補充した。次いで、赤血球マーカーTR-1119についての染色を、以前に報告されたように実行した。予測されたように、これらの試みは不成功であった。このことは、MSCが造血系統の細胞から明確に区別されることを示す。公開されたプロトコールによって、様々な濃度の5-アザシチジンを使用してインビトロでMSCを心筋細胞に分化させるように遊動する試みもまたなされたが、これもまた不成功であった。
【0109】
3. レトロウイルス形質導入を使用する間葉幹細胞の遺伝子改変
マウス幹細胞ウイルスベクター(Clontech, Palo Alto, CA)を入手し、XhoIおよびBam HIで消化した。次いで、IRES-GFPをこれらの部位にクローニングした。図5を参照されたい。構成的に活性なマウスAktをコードするcDNAをマウス幹細胞ウイルスベクターにクローニングした。Aktをプライマー
を使用して増幅し、Bgl IIおよびBamHIを使用してクローニングした。核局在化LacZ(nLacZ)および高力価VSV-G偽型レトロウイルスを発現するプラスミドを、293T細胞の3成分トランスフェクションによって別々に生成し、超遠心分離によって濃縮した。感染した3T3細胞上のサザンブロット分析は1mLあたり約5×108ウイルス粒子の力価を生じた。次いで、レトロウイルス上清をアリコートとし、-80℃で保存した。MSCを1×108粒子まで6μg/mLポリブレン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)に6時間曝露し、その後培地を交換した。18時間後、形質導入を反復した。3サイクルを収集後7日から9日後に実行した。最初の継代細胞を、最後の形質導入の4-5日後の心筋内注射のために使用した。形質導入効率を、GFPについては紫外線試験および免疫組織化学によって、nLacZ遺伝子移入についてはX-gal染色、およびAktについてはウェスタンブロットによって評価した。
【0110】
4. 虚血性心臓への移植後の、上記のように単離されたMSCの心筋細胞への分化
成体雄性Sprague-Dawleyラット(300グラム〜350グラム)をHarlan Laboratories(Indianapolis, IN)から購入し、以前に記載したように維持した。麻酔の誘導後、動物に挿管し機械的に人工呼吸する(Harvard Rodent Ventilator, Harvard, MA)。左開胸術を4分の1の空間で実行し、心臓を露出する。近位の左前下行枝(LAD)動脈を同定し、7-0プロレン縫合糸(Ethicon, Somerville, NJ)を使用して結紮した。動物を開胸して麻酔の外科的平面に60分間維持した。250μLの通常生理食塩水中に懸濁した種々の量の形質移入したMSC(n=6)、または生理食塩水、または対照動物(GFPについてn=6、LacZについてn=6)についての対照細胞を、心外膜下に、角度のついた27ゲージ針を用いて、左心室の前方および後方の5つの部位の、虚血性心筋と正常心筋との間の境界領域に注射した。この境界領域は肉眼で明白であった。注射後、心臓を数分間観察した。正常洞調律および止血が得られたら、3-0ナイロンおよび4-0ナイロン(Ethicon, Somerville, NJ)を用いて層状に胸部を閉じて、動物を回復させる。心臓を、注射の24時間後、72時間後、および3週間後に切除した。リスクを有する領域を、Evansブルー逆方向灌流によって見積もり、任意単位で表現した。左心室を、先端から基部まで等しい厚さの8つの横断切片にスライスした。1群の厚い切片をグルタルアルデヒド中に固定し、β-ガラクトシダーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)で染色し、OCT化合物中で凍結し、そして5μmに切断した。他のすべての厚い切片はホルムアルデヒド中で固定し、5μmに切断した。ヘマトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン(H&E)ならびにマッソン三色染料染色を行った。左心室体積を、重量を密度(1.06gm/mL)で除算することによって計算した。マッソン三色染料染色では、表面領域の青色対非白色比を、各厚い切片からの20の5μm切片について計算し、全体の左心室の厚さを乗算して、梗塞の体積を計算した。生存可能な心筋の体積を、全体のLV体積から梗塞体積を減算することによって計算した。再生された心筋の体積を、対照動物の生存可能な心筋の体積を、他のすべての実験群におけるその体積から減算することによって計算した。コラーゲン領域画分および心筋細胞表面領域を、以前に記載されたように評価した。別々に、切片を、c-kit、GFP、Ki-67、心臓トロポニン、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、N-カドヘリン、およびコネキシン-43(Sigma-Aldrich)に対する一次mAbとインキュベートした。適切な蛍光色素結合二次抗体を使用して、スライドを可視化した。蛍光インサイチューハイブリダイゼーションを、緑色蛍光Y染色体列挙ハイブリダイゼーションプローブを、市販のキット(Vysis, Downers Grove, IL)とともに使用して実行した。切片をHoechst 33258を用いて対比染色した。
【0111】
梗塞およびMSC染色の後の心筋梗塞のH&E染色の際に、残渣の瘢痕が、組織化された心筋細胞の指状の伸長によって浸透した。5×105 LacZ-MSCを注射した全体の心臓の厚い切片のβ-ガラクトシダーゼ染色の際に、本発明者らは、梗塞周辺領域において強烈な青色の着色を観察し、これは心筋細胞の表現型を有した細胞の青色の核染色に起因した。図6〜図9を参照されたい。GFP-MSCを注射された虚血性心臓がGFPで染色された場合、天然心筋細胞と同じ方向に配向している、大きな多核性合胞体(syncitiae)が境界領域において観察された。図6〜図9を参照されたい。導入遺伝子を発現している細胞が心臓特異的マーカーもまた発現したことを確認するための実験を実行した。図10を参照されたい。切片をGFPおよび心臓特異的タンパク質について二重染色した。GFPは、MHC、MLC、CTnI、デスミン、およびα-SAと同時局在した。再生された心筋細胞は、天然心筋細胞との接触点においてコネキシン-43およびN-カドヘリンを発現した。このことは、電気-機械的カップリングの能力を示す。再生された心筋細胞のドナー起源を、Y染色体の蛍光インサイチューハイブリダイゼーションによって確認し、これは、上記に言及した心臓特異的タンパク質と同時局在した。導入遺伝子および/またはY染色体を発現する心筋細胞は、移植3週間後でc-kitまたはCD90を発現しなかった。導入遺伝子を発現している心筋細胞は、損傷していない心筋へのMSCの注射後に同定されなかった。導入遺伝子は、虚血性心臓中で内皮、平滑筋、または造血性エレメントにおいて同定されなかった。境界領域への注射後、導入遺伝子を発現している心筋は心臓の離れた領域(例えば右心室または心房)において見い出されなかった。虚血性心筋へのc-kit/CD34+の注射後に導入遺伝子を発現している心筋細胞は同定されなかった。MSC注射後に心筋中で異所性の組織または腫瘍は同定されなかった。
【0112】
5. MSCへのAktの治療的遺伝子移入が、終点において意味のある改善をもたらすことの実証-rMSC生存、再生される心筋の体積、および心臓機能
MSCへのAkt遺伝子移入がインビトロで生存を増強したか否かを試験するために、一連の刺激された低酸素-再酸素化プロトコールを生成した。レトロウイルス遺伝子移入の成功、および心筋細胞への分化の誘導の14日後、細胞を刺激された低酸素-再酸素化プロトコールに供した。完全培地を無血清培地に置き換え、および細胞を、1%大気酸素を用い、37℃で0、6、12、18、および24時間、低酸素チャンバー(Coy Laboratory Prooducts, Grass Lake, MI)中に配置した。次いで、細胞を21%大気酸素、37℃に移し、培地を完全培地に置き換えた。10分間「再酸素化相」に入れ、タンパク質をAktアッセイのために抽出した。このアッセイは、溶解物から免疫沈降したAktが1マイクログラムのGSK-3融合タンパク質をリン酸化する能力を試験した。「再酸素化」24時間後、ラダーのためにDNAを収集し、RT-PCRのためにRNAを収集し、そしてアポトーシスを評価するためにTUNELアッセイを実行した。図11〜図12を参照されたい。
【0113】
Akt活性の増加は、インビトロおよびインビボでMSCアポトーシスに対して保護された。37℃および21%周囲三度の基底条件で、Akt活性は両方の群で等価であった。無血清培地中の低酸素症の24時間後、Akt活性はAkt-MSC群において28.5倍増加し、およびGFP-MSC群において6.6倍増加し、MSCアポトーシスを79%減少させ、DNAラダー化を減少させた。インビボでの保護効果を、c-kitおよびTUNELについての左心室切片の二重染色によって評価し、これは、心筋において保持されているc-kit+細胞の数、およびアポトーシス性であったc-kit+のパーセントの決定を可能にする。虚血性心筋への5×105 LacZ-MSCSの移植の24時間後、高倍率視野(hpf)あたり33±1.53 LacZ-MSCの68%がアポトーシス性であった。対照的に、5×105Akt-MSCの移植24時間後、hpfあたり82±6.7 Akt-MSCの19%のみがアポトーシス性であった(p<0.001)。さらなる48時間後、hpfあたり22.7±9.8 LacZ-MSCの31%がアポトーシス性であった;それに対して、hpfあたり66±3.5 Akt-MSCの17%がアポトーシス性であった(p<0.001)。3週間後、心筋中にはc-kit+細胞は存在しなかった。これらの観察は、インビトロで低酸素および血清飢餓状態に曝されたMSC中で、および、虚血性心筋への移植後に、Aktが活性化されたこと、ならびに、増大されたAkt活性が、移植直後の期間にMSCアポトーシスを妨害したことを示す。図11〜図12を参照されたい。
【0114】
心筋内rMSC注射による梗塞体積の減少
手術周辺の死亡率はタンポン充填に起因してすべての群において約12.5%であった。いかなる群においても遅延性の死亡は存在しなかった。冠状動脈結紮後にリスクを有する領域はすべての群において等価であった。結紮の3週間後、左心室の梗塞の体積(V梗塞)は注射した細胞の型および数に基づいて変化した。V梗塞は生理食塩水注射および対照c-kit/CD34+細胞の注射の後で最大であった。V梗塞はMSC注射後に用量依存的な様式で減少した。2.5×105 LacZ-MSCの注射はV梗塞の9.8%の減少を生じ、5×106 LacZ-MSCの注射は12.9%のV梗塞の減少を生じた。Aktを用いる遺伝子改変はV梗塞により強力な効果を発揮し、2.5×106 Akt-MSCの注射後にV梗塞は44.8%減少した。5×106 Akt-MSCの注射を用いて、大量の開始細胞数をAkt改変と組み合わせることは、ほぼ完全なV梗塞の除去を生じた。図13〜図15を参照されたい。この減少は、ほぼ完全に、再生した心筋(V再生)の体積の増加に起因する。5×106 Akt-MSCの心筋内注射は失われた心筋の84.7%の再生を生じた。2.5×105 Akt-MSCの投与は、LacZ-MSCよりも20倍多い投与よりも2.5倍多い(V再生)を生じた。移植期間周辺で増強されたMSC生存度はより高い(V再生)を生じ、それゆえに、より小さなV梗塞が観察された。境界領域における毛細血管密度は、偽試料操作された動物、ならびに細胞移植を受容したすべての群において同様であったが、対照群のそれを超えていた。図13〜図15を参照されたい。
【0115】
Akt-MSC移植による心臓機能の正常化
心臓機能を評価するために、ラットの心臓を単離し、ランゲンドルフ様式で逆方向に灌流した。等容性収縮期能力を、データ収集システムに接続されたポリビニルクロライドバルーンを左心室に配置することによって、飽和濃度のドブタミンの存在下で基底で測定し、およびドブタミンを洗い流した後で、以前に記載されているように、左心室の収縮末期圧(LVESP)および拡張末期圧(LVEDP)、左心室発生圧力(LVDP)、速度圧力積(RPP)、ならびに収縮および弛緩の速度(±dP/dT)を測定した。図16を参照されたい。心エコーを以前に記載されたように実行した。2.5×105 LacZ-MSCまたは5×106 LacZ-MSCの移植は、対照細胞または生理食塩水注射と比較して、左心室収縮期能力を改善しなかった。2.5×105 Akt-MSCの移植は、基底LVESPにおいて統計学的に有意な37%増加を生じた。用量依存的な様式で、5×106 Akt-MSCの移植は基底LVESPにおいて50%増加を生じ、これは偽試料操作された動物のLVESPと区別がつかなかった。これらの違いはドブタミンチャレンジの間に持続し、左心室で発生した圧力、速度圧力積、および+dP/dTについて見られた違いと同様であった。ドブタミンチャレンジ後、弛緩の速度(-dP/dT)は、対照梗塞および対照細胞を注射した動物において最も遅かった。2.5×105 LacZ-MSCまたは5×106 LacZ-MSCの注射は、-dP/dTにおいて、統計学的に有意でない8%および18%の増加をそれぞれ生じた。しかし、2.5×105 Akt-MSCの注射は、-dP/dTにおいて有意な22%増加を生じ、5×106 Akt-MSCの注射は、-dP/dTにおいて50%増加を生じ、これは偽試料操作された動物におけるそれと同等であった。放出画分の正常化および心エコー評価に対する画分の短縮化が、5×106 Akt-MSCの注射後の鎮静した、意識のある動物において観察された。図16を参照されたい。
【0116】
Akt-MSC移植による再構築の妨害
5×106 Akt-MSCの移植は心臓CD45+細胞の浸潤を67%(偽試料操作された動物において見られるレベルまで)減少した。同様に、5×106 Akt-MSCの移植は、全体のコラーゲン領域画分を89.6%減少し、天然心筋細胞表面積を81%減少した。3つすべてのパラメーターは、偽試料操作された動物において観察されたレベルと同等のものであった。5×106 LacZ-MSCの移植はこのような減少の強度を達成しなかったが、対照動物と比較した場合に統計学的に有意ではなかった。これらの観察はすべて、移植周辺期間におけるMSCの改善された保持が、本明細書中に記載されたような引き続く高レベルの移植および分化を伴って、心臓再構成にたいして強力な保護効果を発揮することを示す。
【0117】
実施例3 一般的方法
データは、以下の試薬および方法を使用して生成した。
【0118】
プラスミドおよびhHO-1ベクターの構築
オープンリーディングフレームを含むhHO-1の986bp断片をKpnI-PstI部位でpBS KS(-)クローニングベクターから切り出し、pUC18プラスミドの対応する部位にサブクローニングした。挿入物をEcoRI部位で切断し、必要とされる複製およびパッケージングシグナルをコードするAAV逆方向末端反復に隣接したヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む、アデノ関連ウイルス骨格(pAAVCMV-HO-1)の対応する部位にクローニングした。AAVウイルス粒子のパッケージング、増殖、および精製を標準的な手順を使用して実行した。
【0119】
rAAV産生および感染:
組換えAAV(rAAV)を、tHREeプラスミド同時トランスフェクション系を使用することによって本発明者らのViral Core Facilityにおいて産生した。手短に述べると、HEK293細胞を10%FBSを含むMEM中で増殖させた。AAVウイルスを生成するために、細胞を、ディッシュあたり17μgの導入遺伝子プラスミドで、ディッシュあたり17pgのプラスミドpHLPI9および17pgのプラスミドpLadeno5とともに同時トランスフェクトした。PHLP19はAAV rep遺伝子およびcap遺伝子を有し、これらはrAAVのトランス機能を提供する。Adeno5は、rAAV複製を媒介するアデノウイルスVA、E2A、およびE4領域を有する。培地を、16時間後に完全MEMに交換した。さらなる24時間後、細胞を収集し、3回の凍結-融解サイクルによって溶解した。ウイルス上清を、5分間、10,000gの遠心分離によって生成し、CsCl-密度超遠心分離によってさらに精製した;各rAAVについての力価をドットブロットアッセイによって決定した。このアッセイは、単位容量あたりの粒子の総数の力価を提供する。rAAVを含む上清をアリコートにて-80℃で保存し、各実験の使用直前に使用のために融解した。
【0120】
X-galインサイチュー染色
試料を0.2%グルタルアルデヒドおよび3%パラホルムアルデヒド中で5分間固定し、PBSで2回洗浄した。試料を、100mM リン酸ナトリウム(pH 7.3)、1.3mM MgCl2、3mM K3Fe(CN)6、3mM K4Fe(CN)6、および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド(X-gal、1mg/ml)を含む染色溶液中に浸漬し、37℃で18時間インキュベートした。染色した試料をPBSで2回洗浄し、そして試験した。
【0121】
左心室機能の心エコー測定
左心室範囲の心エコー画像化を、8-12MHzの血管トランスデューサーを装着したHewlett Packard Sonos 5500を使用して実行した。測定を、盲験様式で、左心室の中部乳頭レベルで実行した。拡張終期直径(EDD)、収縮終期直径(ESD)、前部壁厚(AWT)、および後部壁厚(PWT)を、American Society for echocardiography leading-edge法のガイドラインに従って、Mモード心エコー画像を得た。各測定について、少なくとも3つの連続した心臓サイクルからのデータを平均した。収縮終期(ESA)および拡張終期(EDA)を、乳頭筋肉レベルでの左心室の短軸視野から決定し、LV放出画分(EF)を評価した。左心室画分短縮(FS)およびEFを以下の式に従って計算した:LV FS(%)=[(EDD-ESD)/EDD]×100;およびLV EF(%)=[(EDA-ESA)/EDA]×100。
【0122】
組織学および免疫組織化学的分析
再灌流の24時間後、心臓にインサイチューでPBS(pH 7.4)を流し、50mlの10%リン酸緩衝化ホルマリンで逆方向に灌流した。心臓を収集し、PBS中で洗浄し、10%ホルマリン中で、4℃で一晩、後固定した。試料を加工し、包埋し、および5μmの厚さに切片化した。免疫組織化学染色を実行した。
【0123】
ヘムオキシゲナーゼ活性の測定:
全ヘムオキシゲナーゼを、左心室ホモジネートから単離したミクロソーム画分中で測定した。プロテアーゼ阻害因子カクテル(Sigma)を含む氷冷したホモジナイゼーション緩衝液(30mM Tris-HCl(pH 7.5)、0.25Mショ糖、0.15M NaCl)中で、組織をホモジナイズした(g組織あたり〜3ml)。ホモジネートを10,000gで15分間遠心分離した。上清画分を100,000×gで1時間遠心分離した。ミクロソームペレットを50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.4)に再懸濁し、氷上で5秒間超音波処理した。ヘムオキシゲナーゼ活性を、分光光度法によって、ビリルビンの出現の速度として測定した。
【0124】
酸化ストレスおよび酸化的損傷の評価:
酸化的損傷は、供給業者によって提供された指示書に従ってOxyBlotキット(Intergen, New York, NY)を使用して、左心室ホモジネート中で酸化修飾されたタンパク質カルボニル基を検出することによって、および市販のキット(Calbiochem, Darmstadt, Germany)を使用する全脂質過酸化物(マロンジアルデヒドおよび4-ヒドロキシノニール)の定量によって評価した。ポリクローナル抗体MAL-2(抗マロンジアルデヒド-リジン;J. Witztum, La Jolla, CAより恵与)を用いる、ホルマリン固定した心室切片の免疫染色を、以前に記載されたように(Melo et al, 2002)、酸化特異的脂質-タンパク質付加物のインサイチュー検出のために使用した。各レーンにおける修飾タンパク質に対応するすべてのバンドの積算された密度を、フラットベッドスキャナーおよびNIH Image 1.52プログラムを使用してタンパク質酸化の定量のために使用した。
【0125】
アポトーシスの測定:
アポトーシスを、Apoptotic DNA ladder kit(Roche, Indianapolis, IN)を使用するゲノムDNAのヌクレオソーム内断片化の検出によって、およびIn Situ Cell Death detection anti fluorescein-dUTP peroxidase kit(Roche, Indianapolis, IN)を使用して、パラフィン包埋された切片中の末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ媒介dUTPニック末端標識(TUNEL)によって測定した。DNAラダー化によるアポトーシスの定量のために、ゲノムDNAを、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Roche, Indianapolis, IN)を使用して、37℃で1時間、32P-dUTP(NEN, Cambridge, MA)で標識した。ゲルをHyperfilmに増感スクリーンとともに-80℃で72時間露出させた。レーン中のすべてのバンドの集積した密度をアポトーシスの定量のために使用した。
【0126】
動物の外科手術:
外科手術の準備のために、動物を、20%ハロタン:80 ミネラルオイル混合物の吸入によって最初に軽く麻酔した。麻酔を、滅菌0.9%NaCl中のケタミン:キシラジン(150:200mg/kg BW)の混合物の腹腔内注射によって誘導し、必要な場合、補充用量の麻酔混合物で維持した。動物を手術台にあおむけに寝かせ、Harvard small rodent ventilator(Harvard Instruments, South Natick, MA)に接続された先の尖っていない17ゲージ針を挿管した。換気体積および換気速度を、すべての開胸手順の間、2.5mlおよび60/mmにそれぞれ設定した。連続的実験のために、動物飼育施設に戻す前に、少なくとも3時間の間、100W加熱ランプの下のそれらのケージの中で回復させた。動物を手術後24時間〜48時間モニタリングし、苦痛があると見なされた場合には18時間間隔でブプレノルフィン(0.2mg/kg)を投与した。
【0127】
統計学的分析
すべての結果を平均±SEで表した。Bonferroni多重比較検定と連関した1元ANOVAを使用して群間の違いを比較した。p<0.05が統計学的に有意な違いを示すとみなされた。
【0128】
梗塞サイズの形態計測的測定
再灌流の24時間後、LADを再結紮して、0.3-0.4mlのPBS(pH 7.4)中1% Evans Blueをカテーテルを介して心臓に逆方向に注入し、非梗塞領域の輪郭を明らかにした。心臓を切除し、氷冷PBSですすいだ。心房組織および大血管を取り出し、同様の厚さの5-6の両室切片を、心臓の長軸に対して垂直に作製した。これらの切片をPBS(pH 7.4)中の1% テトラゾリウムクロライド(TTC、Sigma Chemicals)中で、37℃、15分間インキュベートし、両方の側を写真撮影した。約10倍の拡大率でスライドを投射し、Quad 10上で1"グラフ用紙にトレースした。リスクを有する領域および梗塞領域の輪郭を描き、切片の両方の側で計算した。各心臓のすべての切片の累積領域を比較のために使用した、梗塞サイズを、リスクを有する領域に対する梗塞領域の比として表した。
【0129】
実施例4:低酸素応答エレメント構築物を使用する、インビトロでの調節可能な遺伝子発現
特異的病理生理学的刺激によって誘導される治療遺伝子の調節可能な発現を発生するために、いくつかの低酸素誘導性ベクターを構築し、インビトロ低酸素の間に遺伝子発現を誘導するこれらのベクターの効率を試験した。これらのベクターは、エリスロポエチン遺伝子(Epo HRE)からの低酸素応答性エレメントのタンデムリピートを複数含み、これらは最小限のCMVプロモーター、続いてルシフェラーゼ遺伝子の上流に配置された。さらに、全長および最小限のCMVプロモーター単独を含む対照ベクターを構築した。
【0130】
低酸素媒介遺伝子発現を誘導する低酸素応答エレメントの効率を試験するために、HEK293細胞を、以下のベクターを用いてトランスフェクトした:pGL3-4EpoHRE-mCMV-luc、pGL3-mCMV-luc、およびpGL3-fCMV-luc。基底条件下では、pGL3-fCMVでトランスフェクトされた細胞が、mCMVプロモーターを含むベクターでトランスフェクトされた細胞と比較した場合に、ルシフェラーゼ活性によって測定されるように、10倍高い発現のレベルを示した。しかし、低酸素条件下では、pGL3-mCMV -4Epo-HREでトランスフェクトした細胞が、相対的光単位(RLU)によって測定されるようなルシフェラーゼ活性の10倍高い誘導を示した。対照的に、pGL3-fCMVまたはmCMV単独を含むベクターはいずれも低酸素に応答しなかった。
【0131】
これらの結果は、最小限のCMVプロモーターを含むpGL3-4EpoHRE構築物が、低い基底レベルの遺伝子発現を生じ、次いでこれが、低酸素条件下よりも10倍下を誘導したことを示す。反対に、HREを有さないmCMVプロモーターのみを含むベクターは、非常に低い基底を与え、ルシフェラーゼ活性の誘導を示さなかった。本発明者らはまた、エリスロポエチン遺伝子からの低酸素応答エレメントの5つまでのタンデムリピート、最小限のCMVプロモーター、およびレポーター遺伝子としてのGFPを有するAAVベクターを構築し、低酸素下でGFP発現を誘導するそれらの効率を試験した。予備的な結果は、5×EpoHREが低酸素に応答して、さらに増加したGFP発現を生じたことを示した。
【0132】
実施例5:心臓疾患における差次的な遺伝子発現の同定
急性心筋修復に根拠を与える分子メカニズムを、急性の心臓疾患、心筋虚血のマウスモデルを使用して研究した。マウス心筋梗塞を、左前下行動脈の永続的な結紮によって作製し、梗塞領域および境界領域を含む組織を1時間、8時間、または24時間後に単離した;偽試料操作した同腹子を対照として用いた。RNAを、梗塞領域および境界領域から抽出し、AFFYMETRIX(商標)Mouse Set 430マイクロアレイ上で分析した。逆転写PCR(RT-PCR)を使用して、差次的に発現した遺伝子を確認した。細胞接着、ケモカイン、サイトカイン、および走化性に関係する462遺伝子のサブセットを同定した。表1は、正常な、損傷を有さない心臓組織と比較して、損傷心臓組織において有意にアップレギュレートされた遺伝子を列挙する。表2は、正常な心臓組織と比較して、損傷心臓組織においてダウンレギュレートされる遺伝子を列挙する。表4および表5は、8時間および24時間で、それぞれ損傷組織において差次的に発現される遺伝子を列挙する。
【0133】
梗塞後1時間から、MIと偽試料動物の心臓の間で差次的に発現して遺伝子の数が漸次的に増加した。いくつかのケモカイン、サイトカイン、および細胞接着分子の発現の有意な増加が損傷24時間後に見られた。アップレギュレートされた遺伝子には、間質由来因子-1(SDF1)、血管細胞接着分子-1(VCAM1)、およびフィブロネクチン-1(FN1)が含まれた。これらのリガンドは、BMSC上のそれらの受容体との相互作用を通して、幹細胞輸送のために重要である。
【0134】
BMSCにおけるSDF1、VCAM1、FN1、IL-6、CCL2/CCL7/CCL8/CCL13、およびICAM-1に対応する受容体の発現のレベルを分析した。マウスBMSCを単離し、3-6継代の間培養した。RNAを単離し、リガンドに対応する受容体の発現についてRT-PCRによって分析した。図19A〜図19Bに示されるように、CXCR4(SDF1について)およびインテグリンα4β1(VCAM1およびFN1について)がBMSCにおいて発現する。これらのリガンド-受容体相互作用(表3)は、BMSCのホーミングおよび移動に影響を与えることによって心臓修復において重要な役割を果たす。
【0135】
実施例6:診断、予後診断、およびスクリーニングの方法
差次的に発現された遺伝子の1種または複数の発現のレベルを、日常的な方法(例えば、PCR、ノーザンブロッティング、またはチップアレイ)を使用して、患者由来の試料から直接決定する。代替として、差次的に発現された遺伝子によってコードされるポリペプチドを測定する。ポリペプチドを、免疫特異的抗体を使用して測定する。患者由来の試料は、患者から(例えば、生検からの心臓組織) から単離された組織、または体液(例えば、血液、血清、または血漿など)であり得る。代替として、関心対象の遺伝子および/またはポリペプチドのレベルをインサイチューで測定する。
【0136】
本発明はまた、哺乳動物における心臓疾患の発症または進行を調節する治療薬剤をスクリーニングするために有用である。本明細書中で使用される場合、「調節」とは、心臓疾患の発症および/または進行の予防または阻害、ならびに、心臓疾患の1つまたは複数の徴候の緩和を含む。候補薬剤は、被験体を候補薬剤と接触させる段階、接触後の被験体由来の試料中で、表1〜表5に列挙される遺伝子の1つまたは複数の試験レベルを決定する段階、およびその遺伝子の参照レベルと試験レベルを比較する段階によって、スクリーニングされる。参照レベルは、心臓疾患を有さない被験体由来の試料中で関心対象の遺伝子のレベルを測定することによって決定される。参照レベルに対する試験レベルの増加または減少は、その試験薬剤が心臓疾患の発症または進行を調節することを示す。代替として、遺伝子によってコードされるポリペプチドのレベルが被験体中で決定され、そのポリペプチドの参照レベルと比較される。
【0137】
(表1)
【0138】
(表2)
【0139】
(表3)受容体リガンド
【0140】
(表4)
【0141】
(表5)
【0142】
他の態様
特定の態様が本明細書中で詳細に開示されてきたが、これは例示のみを目的とした実施例によるものであって、添付の特許請求の範囲に関して限定を意図するものではない。特に、本発明者らによって、種々の置換、変更、および改変が、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に対してなされ得ることが意図される。核酸開始材料、関心対象のクローン、またはライブラリーの型の選択は、本明細書中に記載された態様の知見に鑑みて、当業者にはルーチンであると考えられる。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあると見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】骨髄由来間葉幹細胞の単離法の模式図である。
【図2】骨髄間質細胞の増殖特性のグラフ図である。
【図3】単離された間葉幹細胞の表面マーカーの免疫組織化学分析を示す。
【図4】間葉幹細胞における表面マーカー発現を確証するRT-PCR結果のゲル分析である。
【図5】図5A〜図5Dは、間葉幹細胞における使用のための高効率レトロウイルス遺伝子移入ベクターの概略図、および、各ベクターについてのトランスフェクション効率を表す。
【図6】間葉幹細胞または対照を注射された、5μm厚の心臓組織切片を示す。
【図7】nLacZトランスフェクト間葉幹細胞または対照ビヒクルを注射された2mm厚心臓組織切片のX-gal染色を示す。
【図8】nLacZトランスフェクト間葉幹細胞または対照ビヒクルを観察するためにX-galで染色された、5μm厚の心臓組織切片の10倍拡大図である。
【図9】緑色蛍光タンパク質(GFP)トランスフェクト間葉幹細胞または対照ビヒクルを観察するためにGFPで染色された、5μm厚の心臓組織切片の40倍拡大図である。
【図10】図10A〜図10Fは、トランスフェクション3週間後に、移植されたGFPトランスフェクト間葉幹細胞の染色の、および心筋細胞特異的細胞マーカーの共局在を示す。
【図11】図11A〜図11Dは、異所的にAktを発現する移植された組換え間葉幹細胞に供給されたアポトーシスに対する保護の程度を決定する、TUNELおよび細胞特徴付けの結果を示す。
【図12】図12AはGFPおよびAktを同時発現するrMSCについてのTUNEL結果を示す。図12BはTUNEL結果のヒストグラム図である。
【図13】図13Aおよび図13Bは、例えば、Akt、LacZ、c-kitを発現する種々の量の組換え間葉幹細胞、または生理食塩水対照の注射後の、治療された心臓におけるリスクを有する領域、および梗塞心筋の残りの体積のヒストグラム図である。
【図14】偽試料処理された対照と比較した、図13Aおよび図13Bに示されるように注射された、梗塞心臓の断面図である。
【図15】図13Aおよび図13Bにおいて示されるように処理された、梗塞心臓において再生された心筋の体積のヒストグラム図である。
【図16】図16Aおよび図16Bは、図13Aおよび図13Bにおいて示されるように処理された心臓における、左心室収縮末期圧基底および弛緩の速度それぞれのヒストグラム図である。
【図17】図17A〜図17Hは、本発明のMSCの免疫組織化学的特徴付けを実証する一連の写真画像である。
【図18】図18Aおよび図18Bは、心筋梗塞後に差次的に発現される遺伝子を示す棒グラフである。遺伝子発現は、24時間における偽試料と比較して、梗塞組織(MI)におけるRT-PCRによって決定された。
【図19】図19A〜図19BはBMSC(P1、継代1;P6、継代6)、末梢血単核球(PBMC)、傍糸球体細胞(JGC)、および血管平滑筋細胞(VSMC)における受容体/リガンドのRT-PCR分析の結果を示す写真である。図19Aにおける略号には以下が含まれる:SDF1、間質由来因子1;CXCR4、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体;IL6、インターロイキン-6;IL6RA、インターロイキン-6受容体α;IL6ST、IL6シグナル誘導因子、CC、ケモカイン(C-Cモチーフ);CXC、ケモカイン(C-X-Cモチーフ);CCR、CC受容体。図19Bにおける略号には、SDF1、間質由来因子1が含まれる。図19Bは、の写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された成体間葉幹細胞を含む組成物と間葉由来組織を接触させる段階を含む、間葉由来組織を再生する方法であって、該間葉幹細胞が、akt遺伝子をコードする外因性核酸を含む、方法。
【請求項2】
組織が結合組織、上皮組織、神経組織、および筋肉組織からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組織が心筋、脳、脊髄、骨、軟骨、肝臓、筋肉、肺、血管、および脂肪細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
筋肉組織が骨格筋を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
筋肉組織が平滑筋を含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
間葉幹細胞がホーミング分子をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ホーミング分子がケモカイン受容体、インターロイキン受容体、エストロゲン受容体、インテグリン受容体からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
間葉幹細胞が、ホルモンをコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
間葉幹細胞が、血管形成因子をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
間葉幹細胞が、骨形成因子タンパク質をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
間葉幹細胞が、細胞外マトリクスタンパク質をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
間葉幹細胞が、サイトカインまたは増殖因子をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
アポトーシス耐性初代幹細胞を含む組成物であって、該幹細胞が、外因性akt遺伝子を含み、該細胞のアポトーシスが、該akt遺伝子を欠く初代間葉幹細胞と比較して少なくとも10%減少している、組成物。
【請求項14】
幹細胞が成体骨髄由来の間葉細胞である、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
アポトーシスが少なくとも50%減少している、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
アポトーシスが少なくとも1/2に減少している、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
アポトーシスが少なくとも1/5に減少している、請求項13記載の組成物。
【請求項18】
アポトーシスが少なくとも1/10に減少している、請求項13記載の組成物。
【請求項19】
幹細胞が腫瘍形成性でない、請求項13記載の組成物。
【請求項20】
幹細胞がホーミング受容体をさらに含む、請求項13記載の組成物。
【請求項21】
単離された成体組換え間葉幹細胞(rMSC)を含む組成物と、損傷した心筋組織を接触させる段階を含む、損傷した心筋組織を再生する方法であって、該rMSCが、プロモーターに機能的に連結された外因性核酸を含み、該核酸が、治療的有効量の抗アポトーシス遺伝子を発現する、方法。
【請求項22】
疾患により損傷した心筋を再生または修復するために、間葉幹細胞が個体に投与される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
間葉幹細胞が、心筋梗塞に罹患している個体に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
間葉幹細胞が心臓に直接投与される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
間葉幹細胞が全身的に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
間葉幹細胞が注射によって投与される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
間葉幹細胞がヒトである、請求項22記載の方法。
【請求項28】
間葉幹細胞が、心筋梗塞に罹患している個体に投与される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
間葉幹細胞が心臓に直接投与される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
間葉幹細胞が全身的に投与される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
単離された成体組換え間葉幹細胞(rMSC)を含む組成物と、心筋組織を接触させる段階を含む、心筋組織を再生する方法であって、該rMSCが、プロモーターに機能的に連結された外因性核酸を含み、該核酸が、治療的有効量の細胞保護ポリペプチドを発現し、該ポリペプチドの発現が、誘発用の(triggering)薬剤または条件によって誘導される、方法。
【請求項32】
条件が低酸素症または酸化ストレスである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
薬剤が抗生物質である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
抗生物質がテトラサイクリンである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
薬剤が免疫抑制剤である、請求項31記載の方法。
【請求項36】
免疫抑制剤がラパマイシンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
薬剤がホルモン受容体アンタゴニストである、請求項31記載の方法。
【請求項38】
ホルモン受容体アンタゴニストがミフェプリストンである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
細胞保護ポリペプチドが、抗酸化酵素タンパク質、熱ショックタンパク質、抗炎症タンパク質、生存タンパク質、抗アポトーシスタンパク質、冠状血管緊張タンパク質(coronary vessel tone protein)、血管形成促進タンパク質(pro-angiogenic protein)、収縮性タンパク質、プラーク安定化タンパク質、血栓保護タンパク質(thromboprotection protein)、血圧タンパク質、および血管細胞増殖タンパク質からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項40】
被験体が、異常な細胞損傷によって特徴付けられる状態を生じるリスクを有する、請求項31記載の方法。
【請求項41】
異常な細胞損傷がアポトーシス細胞死である、請求項31記載の方法。
【請求項42】
被験体が、脳卒中、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血(chronic coronary ischemia)、動脈硬化症、うっ血性心不全、拡張型心筋症、再狭窄、冠状動脈疾患、心不全、不整脈、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腎不全、腎虚血、または心筋肥大を発症するリスクを有する、請求項31記載の方法。
【請求項43】
損傷した心筋組織の少なくとも20%が再生される、請求項21記載の方法。
【請求項44】
組織保護ポリペプチド、酸素感受性調節エレメント、および細胞標的化エレメントをコードする外因性核酸を含む単離された間葉幹細胞を含む組成物であって、該ポリペプチドの発現が該調節エレメントによって調節される、組成物。
【請求項45】
酸素感受性調節エレメントが低酸素応答エレメントである、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
酸素感受性調節エレメントが酸化ストレス応答エレメントである、請求項44記載の組成物。
【請求項47】
酸化ストレス応答エレメントがペルオキシダーゼプロモーターである、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
細胞標的化エレメントがα-MHC、ミオシン軽鎖-2、トロポニンTからなる群より選択される、請求項44記載の組成物。
【請求項49】
組成物がアデノ関連ウイルスベクター、レンチウイルスベクターレトロウイルスベクターからなる群より選択されるベクターを含む、請求項44記載の組成物。
【請求項50】
組成物がアデノ関連ウイルスベクターを含む、請求項44記載の組成物。
【請求項51】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド、ヘムオキシゲナーゼポリペプチド、およびAktポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする外因性核酸を含む単離された間葉幹細胞を含む組成物を該哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物において移植された細胞のアポトーシスを阻害する方法であって、該哺乳動物が心臓疾患に罹患しているか、または心臓疾患のリスクを有する、方法。
【請求項52】
心臓疾患が、慢性冠状血管虚血、動脈硬化、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大からなる群より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
組成物がアデノ関連ウイルスベクターを含む、請求項51記載の方法。
【請求項54】
ヒトヘムオキシゲナーゼ-1核酸がプロモーターに機能的に連結されている、請求項51記載の方法。
【請求項55】
プロモーターがヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
ヒトヘムオキシゲナーゼ-1核酸が、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルに機能的に連結されている、請求項51記載の方法。
【請求項57】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが、アデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している、請求項56記載の方法。
【請求項58】
組成物が、移植された間葉幹細胞の酸化ストレス誘導性心筋細胞細胞死の生存を増大するのに十分な用量で投与される、請求項51記載の方法。
【請求項59】
哺乳動物における移植細胞の移植後生存を増大させる方法であって、細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド、ヘムオキシゲナーゼポリペプチド、およびAktポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする外因性核酸を含む単離された間葉幹細胞を含む組成物を該哺乳動物に投与し、それによって移植細胞の生存を増大させる段階を含む、方法。
【請求項60】
哺乳動物が、心臓疾患のリスクを有する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
心臓疾患が、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大からなる群より選択される、請求項59記載の方法。
【請求項62】
組成物がアデノ関連ウイルスベクターを含む、請求項59記載の方法。
【請求項63】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼ核酸が、プロモーターに機能的に連結されている、請求項59記載の方法。
【請求項64】
プロモーターがヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターである、請求項63記載の方法。
【請求項65】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド核酸がウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルに機能的に連結されている、請求項59記載の方法。
【請求項66】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルがアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している、請求項65記載の方法。
【請求項67】
組成物が酸化ストレス誘導性心筋細胞細胞死を阻害するのに十分な用量で投与される、請求項59記載の方法。
【請求項68】
心臓疾患を治療する方法であって、該方法は、該疾患に罹患しているかまたは該疾患を発症するリスクを有する哺乳動物を同定する段階、ならびに、細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド、ヘムオキシゲナーゼポリペプチド、およびAktポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドの治療的有効量を発現する外因性核酸を含む単離された間葉幹細胞を含む組成物を該哺乳動物に投与する段階を含む、方法。
【請求項69】
組成物がアデノ関連ウイルスベクターを含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド核酸がプロモーターに機能的に連結されている、請求項69記載の方法。
【請求項71】
プロモーターがヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターである、請求項70記載の方法。
【請求項72】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼ核酸がウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルに機能的に連結されている、請求項68記載の方法。
【請求項73】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルがアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している、請求項72記載の方法。
【請求項74】
心臓疾患が、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、拡張型心筋症、再狭窄、冠状動脈疾患、心不全、不整脈、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腎不全、腎虚血または心筋肥大、および脳卒中からなる群より選択される、請求項68記載の方法。
【請求項75】
ヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターに機能的に連結された、細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む組換えアデノ関連ウイルスベクターを含む、心臓保護物質(cardioprotective agent)。
【請求項76】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルをさらに含む、請求項75記載の心臓保護物質。
【請求項77】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルがアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している、請求項76記載の心臓保護物質。
【請求項78】
単離された成体組換え間葉幹細胞(rMSC)を含む組成物と梗塞心臓組織を接触させる段階を含む、梗塞心臓組織における瘢痕形成を減少させるための方法であって、該rMSCが、プロモーターに機能的に連結された外因性核酸を含み、該核酸が、治療的有効量の抗アポトーシス遺伝子を発現する、方法。
【請求項79】
単離された成体組換え間葉幹細胞(rMSC)を含む組成物であって、該rMSCが、プロモーターに機能的に連結された外因性核酸を含み、該核酸が、治療的有効量の抗アポトーシス遺伝子を発現する、組成物。
【請求項80】
抗アポトーシス遺伝子が、Akt遺伝子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ecSOD)ポリペプチドおよびヘムオキシゲナーゼ遺伝子からなる群より選択される、請求項79記載の組成物。
【請求項81】
幹細胞表面の幹細胞ポリペプチドの量を増加させる段階を含む、損傷組織への幹細胞の移動を増強する方法であって、該幹細胞ポリペプチドが、CXCR4、IL-6RA、IL-6ST、CCR2、Selel、Itgal/b2、Itgam/b2、Itga4/b1、Itga8/b1、Itga6/b1およびItga9/b1からなる群より選択される、方法。
【請求項82】
細胞が骨髄由来幹細胞である、請求項81記載の方法。
【請求項83】
細胞が間葉幹細胞である、請求項81記載の方法。
【請求項84】
受容体をコードする核酸を幹細胞に導入する段階を含む、請求項81記載の方法。
【請求項85】
損傷組織における損傷関連ポリペプチドの量を増大させる段階を含む、損傷組織への幹細胞の移植を増強する方法であって、該損傷関連ポリペプチドが、SDF1、IL-6、CCL2、Sele、ICAM-1、VCAM-1、FN、LN、およびTncからなる群より選択される、方法。
【請求項86】
損傷組織が心臓組織である、請求項85記載の方法。
【請求項87】
損傷組織が虚血性心筋組織である、請求項85記載の方法。
【請求項88】
損傷関連ポリペプチドをコードする核酸と損傷組織を接触させる段階を含む、請求項85記載の方法。
【請求項89】
損傷関連ポリペプチドと損傷組織を接触させる段階を含む、請求項85記載の方法。
【請求項90】
損傷関連ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を心筋に直接注射する段階を含む、請求項85記載の方法。
【請求項1】
単離された成体間葉幹細胞を含む組成物と間葉由来組織を接触させる段階を含む、間葉由来組織を再生する方法であって、該間葉幹細胞が、akt遺伝子をコードする外因性核酸を含む、方法。
【請求項2】
組織が結合組織、上皮組織、神経組織、および筋肉組織からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組織が心筋、脳、脊髄、骨、軟骨、肝臓、筋肉、肺、血管、および脂肪細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
筋肉組織が骨格筋を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
筋肉組織が平滑筋を含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
間葉幹細胞がホーミング分子をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ホーミング分子がケモカイン受容体、インターロイキン受容体、エストロゲン受容体、インテグリン受容体からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
間葉幹細胞が、ホルモンをコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
間葉幹細胞が、血管形成因子をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
間葉幹細胞が、骨形成因子タンパク質をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
間葉幹細胞が、細胞外マトリクスタンパク質をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
間葉幹細胞が、サイトカインまたは増殖因子をコードする外因性核酸をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
アポトーシス耐性初代幹細胞を含む組成物であって、該幹細胞が、外因性akt遺伝子を含み、該細胞のアポトーシスが、該akt遺伝子を欠く初代間葉幹細胞と比較して少なくとも10%減少している、組成物。
【請求項14】
幹細胞が成体骨髄由来の間葉細胞である、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
アポトーシスが少なくとも50%減少している、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
アポトーシスが少なくとも1/2に減少している、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
アポトーシスが少なくとも1/5に減少している、請求項13記載の組成物。
【請求項18】
アポトーシスが少なくとも1/10に減少している、請求項13記載の組成物。
【請求項19】
幹細胞が腫瘍形成性でない、請求項13記載の組成物。
【請求項20】
幹細胞がホーミング受容体をさらに含む、請求項13記載の組成物。
【請求項21】
単離された成体組換え間葉幹細胞(rMSC)を含む組成物と、損傷した心筋組織を接触させる段階を含む、損傷した心筋組織を再生する方法であって、該rMSCが、プロモーターに機能的に連結された外因性核酸を含み、該核酸が、治療的有効量の抗アポトーシス遺伝子を発現する、方法。
【請求項22】
疾患により損傷した心筋を再生または修復するために、間葉幹細胞が個体に投与される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
間葉幹細胞が、心筋梗塞に罹患している個体に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
間葉幹細胞が心臓に直接投与される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
間葉幹細胞が全身的に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
間葉幹細胞が注射によって投与される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
間葉幹細胞がヒトである、請求項22記載の方法。
【請求項28】
間葉幹細胞が、心筋梗塞に罹患している個体に投与される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
間葉幹細胞が心臓に直接投与される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
間葉幹細胞が全身的に投与される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
単離された成体組換え間葉幹細胞(rMSC)を含む組成物と、心筋組織を接触させる段階を含む、心筋組織を再生する方法であって、該rMSCが、プロモーターに機能的に連結された外因性核酸を含み、該核酸が、治療的有効量の細胞保護ポリペプチドを発現し、該ポリペプチドの発現が、誘発用の(triggering)薬剤または条件によって誘導される、方法。
【請求項32】
条件が低酸素症または酸化ストレスである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
薬剤が抗生物質である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
抗生物質がテトラサイクリンである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
薬剤が免疫抑制剤である、請求項31記載の方法。
【請求項36】
免疫抑制剤がラパマイシンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
薬剤がホルモン受容体アンタゴニストである、請求項31記載の方法。
【請求項38】
ホルモン受容体アンタゴニストがミフェプリストンである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
細胞保護ポリペプチドが、抗酸化酵素タンパク質、熱ショックタンパク質、抗炎症タンパク質、生存タンパク質、抗アポトーシスタンパク質、冠状血管緊張タンパク質(coronary vessel tone protein)、血管形成促進タンパク質(pro-angiogenic protein)、収縮性タンパク質、プラーク安定化タンパク質、血栓保護タンパク質(thromboprotection protein)、血圧タンパク質、および血管細胞増殖タンパク質からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項40】
被験体が、異常な細胞損傷によって特徴付けられる状態を生じるリスクを有する、請求項31記載の方法。
【請求項41】
異常な細胞損傷がアポトーシス細胞死である、請求項31記載の方法。
【請求項42】
被験体が、脳卒中、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血(chronic coronary ischemia)、動脈硬化症、うっ血性心不全、拡張型心筋症、再狭窄、冠状動脈疾患、心不全、不整脈、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腎不全、腎虚血、または心筋肥大を発症するリスクを有する、請求項31記載の方法。
【請求項43】
損傷した心筋組織の少なくとも20%が再生される、請求項21記載の方法。
【請求項44】
組織保護ポリペプチド、酸素感受性調節エレメント、および細胞標的化エレメントをコードする外因性核酸を含む単離された間葉幹細胞を含む組成物であって、該ポリペプチドの発現が該調節エレメントによって調節される、組成物。
【請求項45】
酸素感受性調節エレメントが低酸素応答エレメントである、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
酸素感受性調節エレメントが酸化ストレス応答エレメントである、請求項44記載の組成物。
【請求項47】
酸化ストレス応答エレメントがペルオキシダーゼプロモーターである、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
細胞標的化エレメントがα-MHC、ミオシン軽鎖-2、トロポニンTからなる群より選択される、請求項44記載の組成物。
【請求項49】
組成物がアデノ関連ウイルスベクター、レンチウイルスベクターレトロウイルスベクターからなる群より選択されるベクターを含む、請求項44記載の組成物。
【請求項50】
組成物がアデノ関連ウイルスベクターを含む、請求項44記載の組成物。
【請求項51】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド、ヘムオキシゲナーゼポリペプチド、およびAktポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする外因性核酸を含む単離された間葉幹細胞を含む組成物を該哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物において移植された細胞のアポトーシスを阻害する方法であって、該哺乳動物が心臓疾患に罹患しているか、または心臓疾患のリスクを有する、方法。
【請求項52】
心臓疾患が、慢性冠状血管虚血、動脈硬化、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大からなる群より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
組成物がアデノ関連ウイルスベクターを含む、請求項51記載の方法。
【請求項54】
ヒトヘムオキシゲナーゼ-1核酸がプロモーターに機能的に連結されている、請求項51記載の方法。
【請求項55】
プロモーターがヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
ヒトヘムオキシゲナーゼ-1核酸が、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルに機能的に連結されている、請求項51記載の方法。
【請求項57】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが、アデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している、請求項56記載の方法。
【請求項58】
組成物が、移植された間葉幹細胞の酸化ストレス誘導性心筋細胞細胞死の生存を増大するのに十分な用量で投与される、請求項51記載の方法。
【請求項59】
哺乳動物における移植細胞の移植後生存を増大させる方法であって、細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド、ヘムオキシゲナーゼポリペプチド、およびAktポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする外因性核酸を含む単離された間葉幹細胞を含む組成物を該哺乳動物に投与し、それによって移植細胞の生存を増大させる段階を含む、方法。
【請求項60】
哺乳動物が、心臓疾患のリスクを有する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
心臓疾患が、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、および心筋肥大からなる群より選択される、請求項59記載の方法。
【請求項62】
組成物がアデノ関連ウイルスベクターを含む、請求項59記載の方法。
【請求項63】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼ核酸が、プロモーターに機能的に連結されている、請求項59記載の方法。
【請求項64】
プロモーターがヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターである、請求項63記載の方法。
【請求項65】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド核酸がウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルに機能的に連結されている、請求項59記載の方法。
【請求項66】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルがアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している、請求項65記載の方法。
【請求項67】
組成物が酸化ストレス誘導性心筋細胞細胞死を阻害するのに十分な用量で投与される、請求項59記載の方法。
【請求項68】
心臓疾患を治療する方法であって、該方法は、該疾患に罹患しているかまたは該疾患を発症するリスクを有する哺乳動物を同定する段階、ならびに、細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド、ヘムオキシゲナーゼポリペプチド、およびAktポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドの治療的有効量を発現する外因性核酸を含む単離された間葉幹細胞を含む組成物を該哺乳動物に投与する段階を含む、方法。
【請求項69】
組成物がアデノ関連ウイルスベクターを含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチド核酸がプロモーターに機能的に連結されている、請求項69記載の方法。
【請求項71】
プロモーターがヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターである、請求項70記載の方法。
【請求項72】
細胞外スーパーオキシドジスムターゼ核酸がウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルに機能的に連結されている、請求項68記載の方法。
【請求項73】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルがアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している、請求項72記載の方法。
【請求項74】
心臓疾患が、心筋梗塞、慢性冠状血管虚血、動脈硬化症、うっ血性心不全、拡張型心筋症、再狭窄、冠状動脈疾患、心不全、不整脈、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腎不全、腎虚血または心筋肥大、および脳卒中からなる群より選択される、請求項68記載の方法。
【請求項75】
ヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターに機能的に連結された、細胞外スーパーオキシドジスムターゼポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む組換えアデノ関連ウイルスベクターを含む、心臓保護物質(cardioprotective agent)。
【請求項76】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルをさらに含む、請求項75記載の心臓保護物質。
【請求項77】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルがアデノ関連ウイルス逆方向末端反復に隣接している、請求項76記載の心臓保護物質。
【請求項78】
単離された成体組換え間葉幹細胞(rMSC)を含む組成物と梗塞心臓組織を接触させる段階を含む、梗塞心臓組織における瘢痕形成を減少させるための方法であって、該rMSCが、プロモーターに機能的に連結された外因性核酸を含み、該核酸が、治療的有効量の抗アポトーシス遺伝子を発現する、方法。
【請求項79】
単離された成体組換え間葉幹細胞(rMSC)を含む組成物であって、該rMSCが、プロモーターに機能的に連結された外因性核酸を含み、該核酸が、治療的有効量の抗アポトーシス遺伝子を発現する、組成物。
【請求項80】
抗アポトーシス遺伝子が、Akt遺伝子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ecSOD)ポリペプチドおよびヘムオキシゲナーゼ遺伝子からなる群より選択される、請求項79記載の組成物。
【請求項81】
幹細胞表面の幹細胞ポリペプチドの量を増加させる段階を含む、損傷組織への幹細胞の移動を増強する方法であって、該幹細胞ポリペプチドが、CXCR4、IL-6RA、IL-6ST、CCR2、Selel、Itgal/b2、Itgam/b2、Itga4/b1、Itga8/b1、Itga6/b1およびItga9/b1からなる群より選択される、方法。
【請求項82】
細胞が骨髄由来幹細胞である、請求項81記載の方法。
【請求項83】
細胞が間葉幹細胞である、請求項81記載の方法。
【請求項84】
受容体をコードする核酸を幹細胞に導入する段階を含む、請求項81記載の方法。
【請求項85】
損傷組織における損傷関連ポリペプチドの量を増大させる段階を含む、損傷組織への幹細胞の移植を増強する方法であって、該損傷関連ポリペプチドが、SDF1、IL-6、CCL2、Sele、ICAM-1、VCAM-1、FN、LN、およびTncからなる群より選択される、方法。
【請求項86】
損傷組織が心臓組織である、請求項85記載の方法。
【請求項87】
損傷組織が虚血性心筋組織である、請求項85記載の方法。
【請求項88】
損傷関連ポリペプチドをコードする核酸と損傷組織を接触させる段階を含む、請求項85記載の方法。
【請求項89】
損傷関連ポリペプチドと損傷組織を接触させる段階を含む、請求項85記載の方法。
【請求項90】
損傷関連ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を心筋に直接注射する段階を含む、請求項85記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【公表番号】特表2006−505380(P2006−505380A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507090(P2005−507090)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/035111
【国際公開番号】WO2004/044142
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(503146324)ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/035111
【国際公開番号】WO2004/044142
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(503146324)ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
【Fターム(参考)】
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