説明

防振ゴムの劣化モニタリング装置および方法

【課題】防振ゴムのゴム質の具体的な劣化を、直接的に速かに、しかも正確に検出することができる防振ゴムの劣化モニタリング装置を提供する。
【解決手段】受動タイプの防振ゴム3の、振動源側および振動伝達側のそれぞれにセンサー4a,4bを設けるとともに、それぞれのセンサー4a,4bの検知結果から、振動源側から振動伝達側への振動伝達率を求める演算手段5を設け、この振動伝達率の経時変化を監視して、防振ゴムの劣化を判定する判定手段6を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受動ダイプの防振ゴム、すなわち、能動タイプの振動ゴムのようなアクティブ制御を行わない防振ゴムについての、とくにはゴム質の劣化モニタリング装置および、その装置を用いたモニタリング方法に関するものであり、とくには、防振ゴムの性能低下、故障等の発生を速かに検出して、防振ゴムを用いる装置それ自体の振動トラブル、損傷等を未然に防止する技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の装置に適用されて、発生された振動の、他の装置構成部材への伝達を防止するべく機能するこの種の防振ゴムは一般に、所定の使用時間を単位とする交換部品としては取り扱われておらず、それが適用される装置本体の寿命と同等の耐久性を有するものとして取り扱われていた。
【0003】
しかるに、ゴム物性を必須の構成要素とする防振ゴムは、それの使用に当って、ゴム質がおかれる環境的要因、物理的要因等によって想定外の、早期の劣化を受けることがあるため、特定の防振ゴムの意図しない破損等によって、装置それ自体が損傷を受けて使用不能となる等のおそれもあった。
【0004】
このようなゴム質の劣化に関連して、特許文献1および2のそれぞれには、ゴム質の劣化に伴う信号の大きさが閾値を越えた場合に、駆動手段の作用下で、防振ゴムに、所要の制振機能を発揮するに必要な機能修正を施す、いわゆるアクティブマウントが開示されている。
【特許文献1】特開平8−270723号公報
【特許文献2】特開2006−57753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、これらの従来技術では、振動の発生源側、すなわち、振動源側、および、振動伝達側の両者に、振動の変位、速度、加速度、力等を検知できるセンサーが配設されていないことから、振動源側から振動伝達側に伝わる具体的な振動伝達率、ひいては、ゴム質の具体的な劣化程度を直接的に求めることができず、従って、振動伝達率の経時変化を監視することもできないことから、防振ゴムのゴム質の劣化を速かに、かつ正確に検出することができない問題があった。
【0006】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、防振ゴムのゴム質の具体的な劣化を、直接的に速かに、しかも正確に検出することができる防振ゴムの劣化モニタリング装置および、その装置を用いたモニタリング方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の、防振ゴムの劣化モニタリング装置は、受動タイプの防振ゴムの、振動源側および振動伝達側のそれぞれに、好ましくは、防振ゴム内をも含んで、それに十分近接させて、センサー、たとえば、荷重、加速度、速度もしくは変位等のセンサーを設けるとともに、それぞれのセンサーの検知結果から、振動源側から振動伝達側への振動伝達率を求める演算手段を設け、また、その振動伝達率の経時変化を監視して、防振ゴム、なかでも、防振ゴムのゴム質の劣化を、新品時の振動伝達率、または、許容伝達率等対する、振動伝達率の変化量に応じて判定する判定手段を設けてなるものである。
【0008】
ここで「振動伝達率」とは、センサーとして、振動の加速度センサを用いたときは、伝達側加速度の、振動源側加速度に対する比の百分率を、速度センサーを用いたときは、伝達側速度の、振動源側速度に対する比の百分率を、また、変位センサーを用いたときは、伝達側変位の、振動源側変位に対する比の百分率をそれぞれいうものとし、そして、荷重センサーを用いたときは、伝達側入力の、振動源側入力に対する比の百分率をいうものとする。
【0009】
また、ここにおけるセンサーとしての、振動の加速度センサーは、ばね定数の増加に伴う、振動伝達側の振動増加を検知するに有利であり、変位センサーは、ばね定数の低下に伴う、振動源側と、振動伝達側との相対変位量の増加を検知するに有利であり、そして、荷重センサーは、ばね定数の増加に伴って、振動伝達側に伝わる防振ゴム反力の増加を検知するに有利である。
【0010】
ところで、この発明の対象となる防振ゴムは、取付部を除いて、それの全体がゴム質からなる総ゴムタイプのもの、液入りタイプのもの、コイルばね等のばね部材を内蔵したタイプのもの等とすることができる。
【0011】
ここで好ましくは、判定手段による異常の判定、すなわち、防振ゴムのゴム質に、許容限界を越える劣化が生じたとの判定に基いて警報を発する報知手段を設ける。
この場合の警報は、音、色、におい等とすることができ、警報の発生時期は、リアルタイムとする他、車体点検時等とすることもできる。そして警報の発生場所は、車体のインジケータ、車体管理業者、販売会社、メーカー等とすることができる。
【0012】
また好ましくは、振動源側と、振動伝達側との間に複数の防振ゴムを配設するとともに、各防振ゴムに対応させて、より好ましくは、各防振ゴムに可能な限り近接させて少なくとも一対のセンサーを配設する。
【0013】
そしてまた好ましくは、内筒および外筒と、それらの両者を連結するゴム弾性体とを具え、そして、内部に液体を封入してなる、液入りタイプの防振ゴムにあっては、内筒および外筒のそれぞれにセンサーを設ける。
【0014】
この発明の、防振ゴムの劣化モニタリング方法は、受動タイプの防振ゴムの、振動源側および振動伝達側のそれぞれに配設したセンサーの検知結果から、振動源側から振動伝達側への振動伝達率を算出するとともに、この振動伝達率の経時変化を監視して、その振動伝達率が許容限界値を越えたか否かに基いて防振ゴムの劣化度合を判定するにある。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る装置では、受動タイプの防振ゴムの振動源側および振動伝達側のそれぞれに、たとえば、振動加速度センサーをそれぞれ設け、それらのセンサーの検知結果から、
(伝達側加速度/振動源側加速度)×100%
によって求めることができる振動伝達率を、演算手段をもって算出し、そして、かかる振動伝達率を経時的に監視して、その振動伝達率が、たとえば、予め定めた許容限界値を越えた否かを判定手段によって判定することで、防振ゴムが液入りタイプであると否とにかかわらず、防振ゴムのゴム質の具体的な劣化を、直接的かつ速かに、しかも高い精度で検出することができ、また、防振ゴムの寿命を予測することができる。
従って、大きなトラブル等の発生を未然に防止することができる。
【0016】
ところで、ゴム質の劣化は、防振ゴムの使用環境を原因として発生するものの他、使用条件を原因として発生するもの等があり、たとえば、ゴム質の酸化劣化、熱硬化、へたり等によっては、ばね定数が増加して変形量が減るという現象が、一方、ゴム質の、油による膨潤、溶剤によるゴム質の剥離、繰返し入力もしくは過大入力によるゴム質への亀裂の発生等によっては、ばね定数が低下して変形量が増えるという現象が生じることになるので、上述したような劣化の判定に当っては、基準となる振動伝達率に対し、振動伝達率の増加側および減少側のそれぞれの側に許容限界値を設定することが必要になる。
【0017】
なおこの場合、振動源の主な振動方向が解かっている場合は、防振ゴムの配設姿勢の選択下で、その振動方向での振動伝達率を求めることがとくに好ましく、また、基準となる振動伝達率は、たとえば、防振ゴムの新品時の伝達率となることができる他、防振領域の境界である100%等とすることもでき、そして、上記の許容限界値は、ゴム質の劣化の程度との関連の下で、たとえば、防振ゴムの新品時の伝達率の±30%の範囲、上記防振領域の境界の100%未満等とすることができる。
【0018】
ここで、上述のようにして防振ゴムの劣化を判定するに当っては、防振ゴムによる防振対象物がエンジンであるときは、停車した状態のアイドリング時の振動周波数の下で振動伝達率の演算を行うことが、走行振動、作業振動等の影響を取り除く上で好ましい。
【0019】
以上に述べたところにおいて、防振ゴムのゴム質に、許容限界を越える劣化が生じた場合の、判定手段による異常の判定に基いて警報を発する報知手段を設けたときは、判定手段の常時の監視なしに、報知手段によって発生される、光、音その他の警報をもって、ゴム質の劣化をより確実に認識することができ、大きなトラブル等の発生をより簡易に防止することができる。
なお、この場合の警報は、リアルタイムで発生させ得ることはもちろんであるが、データの保存下で、車体の点検時に発生させることもでき、また、警報の発生対象者としては、オペレータ、車体管理業者、販売会社、メーカー等が考えられる。
そして、このときのデータの保存先は、車体、中継サーバー、メーカーのメインサーバー等とすることができる。
【0020】
またここで、振動源側と、振動伝達側との間に複数の防振ゴムを配設するとともに、各防振ゴムに対応させて少なくとも一対のセンサーを、より好適には、各防振ゴム内を含んで、それにできるだけ接近させて配設したときは、振動源側の振動および、振動伝達側の振動をより高精度に検知して、各個の防振ゴムにつき、振動伝達率のより正確な演算を可能とすることができる。
そしてこのことは、各防振ゴムに対応させて複数対のセンサーを配設した場合により顕著である。
【0021】
ここにおいて、たとえば、振動源側の、加速度センサーとすることができるセンサーを、防振ゴムから離隔させて、振動源の回動中心に対応させて配設したときは、防振ゴムの、振動源側への連結個所には振動が生じているにもかかわらず、センサーそれ自体は振動を検知し得ない不都合が生じることになり、また、センサーを薄板に設置した場合には、薄板の固有振動数等の影響によって実際の振動を正確に検知することができない等の不都合が生じることになるので、センサーは、防振ゴム内をも含み、それに十分に近づけて配設することが好ましく、また、防振ゴムの構成部材をも含めて十分な剛性を有する部位に配設することが好ましい。
【0022】
かかるモニタリング装置において、防振ゴムを、内筒および外筒と、それらの両者を連絡するゴム弾性体とを具え、液体を封入した内部液室を、制限通路を介して連通される二つの分割液室としてなる構成とした場合は、内筒および外筒のそれぞれに、所要のセンサーを予め配設することが、センサーの取付個所等に起因する、上述したような問題の発生を防止して、振動伝達率の算出精度を十分に高めることができ、これがため、防振ゴムのゴム質の具体的な劣化度合を、直接的に、かつ正確に検出することができる。
【0023】
そして、この発明に係るモニタリング方法によれば、防振ゴムのゴム質の劣化の判定を十分正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1はこの発明に係る装置の実施の形態を示す概念図であり、図中1は、たとえばエンジン等とすることができる振動源側部材を、2は、車体フレーム等とすることができる振動伝達側部材を、そして3は、それらの両部材1,2間に、図示しないブラケットを介して固定配置した、受動タイプの各防振ゴムをそれぞれ示す。
なお、ここにおける防振ゴム3は、振動源側部材1の主な振動方向の制振に十分有効に機能し得る姿勢で配置してなる。
【0025】
そして、この図に示すところでは、各防振ゴム3の、両部材1,2へのそれぞれの高剛性取付部3a,3bそれ自体に、振動源側および振動伝達側のそれぞれの所要のセンサー4a,4b、たとえば加速度センサーを固定もしくは固着して配設する。
【0026】
またここでは、振動源側および振動伝達側のそれぞれのセンサー4a,4bを演算手段5に信号接続し、この演算手段5で、振動源側部材1から振動伝達側部2への振動伝達率を求める。
加速度センサー4a,4bを用いたこの振動伝達率は、具体的には、
(伝達側加速度/振動源側加速度)×100%
によって算出することができ、この振動伝達率が100%未満の場合には、通常は、総ゴムタイプのもの、液入りタイプのもの、ばね部材内蔵タイプのもの等とすることができる各防振ゴム3は、制振機能を発揮していることになる。
【0027】
そして、演算手段5で、このようにして算出された振動伝達率を、その後、判定手段6に入力し、この判定手段6で、振動伝達率の経時変化を監視する。
判定手段6によるこの監視は、振動伝達率が、たとえば、予め定めた上限側の閾値を越えたか否か、下限側の閾値を下回ったか否かによって防振ゴム3、とくにはそれのゴム質の劣化を判定することにより行う。
【0028】
なおこの場合の、上限側および下限側のそれぞれの閾値は、たとえば、防振ゴムの新品時の伝達率を基準として、その基準値の上方側および下方側のそれぞれに30%の変化許容域を設定することで特定することができ、判定手段6に入力された振動伝達率が、閾値の上限値を越えたときは、ゴム質の劣化によるばね定数の増加が、そして閾値の下限値を下回ったときは、ゴム質の劣化によるばね定数の低下がそれぞれ発生していると判定することができ、ゴム質の劣化の原因を予測することができる。
【0029】
判定手段6によるこのような劣化判定の結果は、たとえばそれを、車体インジケータ、車体管理業者、メーカー等へ伝えることで防振ゴムの劣化の程度を知らせることができる。
【0030】
ところで、上述のような判定手段6をさらに、報知手段7に接続して、判定手段6による異常の判定が行われた場合、すなわち、振動伝達率が、上限側もしくは下限側の閾値を越えたとの、判定手段6による判定が行われた場合に、報知手段7を作動させて、それから、音、光、におい等とすることができる警報を発することが、防振ゴムへの劣化の発生を、より広く、かつ確実に認識させる上で好ましい。
【0031】
なお、図示のように、振動源側と振動伝達側との間に複数の防振ゴム3を配設した場合は、各防振ゴム3に対応させて一対以上のセンサー4a,4bを配設することが、各個の防振ゴム3に対する劣化判定精度を高める上で好ましい。
そして、各防振ゴム3に一対以上のセンサー4a、4bを配設し、振動伝達率の算出に当って、それぞれの側のセンサーの検知結果の平均値を用いる場合は、その防振ゴム3の振動伝達率を、センサーの取付位置等の影響を十分小さく抑えて、より高い精度で算出することができる。
【0032】
なお、図1に示すところでは、防振ゴム3の、振動源側部材1および振動伝達側部材2のそれぞれに固定される高剛性取付部3a,3b、すなわち、防振ゴムそれ自体にセンサー4a,4bを配設する場合について述べたが、それらのセンサー4a,4bは、振動源側部材1および、振動伝達側部材2のそれぞれに突出形成等される図示しないブラケットに配設することも可能であり、また、いずれか一方のセンサーだけをブラケットに配設し、他方のセンサーを防振ゴムそれ自体に配設することもできる。
【0033】
図2はセンサーの他の配設例をその一部について示す概念図であり、これは、振動源側部材1としてのエンジンと、振動伝達側部材2としての車体フレームとの間に介装した、防振ゴム3としてのエンジンマウントにセンサーを配設した例を示し、ここでは、エンジン側の加速度センサー4aを、エンジンを支持するエンジンフット1aの、エンジンマウント近傍位置に配設するとともに、車体フレーム側の加速度センサー4bを、振動伝達側部材2としての車体フレームそれ自体の、エンジンマウント近傍位置に配設したものであり、センサー4a,4bのこのような配設態様においてもまた、センサー4a,4bの配設部材がともに十分な剛性を有することを条件に、振動伝達率
(伝達側加速度/振動側加速度)×100%
を十分高い精度で求めることができる。
【0034】
図3は、液入りタイプの防振ゴム3への、それぞれの加速度センサー4a,4bの配設例を示す略線縦断面図である。
ここでは、内筒8と、たとえばこの内筒8と同心の外筒9と、これらの内外筒8,9を液密に連結するゴム弾性体10とを設けるとともに、外筒9の内側で、内筒8およびゴム弾性体10の下方側に区画して、下端を可撓膜体11で閉止し、そして、内部に液体を封入してなる内部液室12を、内筒8に固定した仕切部材13によって、上下二つの分割液室12a,12bに区分し、そして、それらの両分割液室12a,12bを、仕切部材13と外筒9との間のクリアランスによって形成される制限通路14により相互に連通させることによって防振ゴム3を構成し、かかる防振ゴム3の内筒8および外筒9のそれぞれに、それぞれの加速度センサー4a,4bを配設する。
【0035】
このように配設したそれぞれの加速度センサー4a,4bは、たとえば、内筒8を振動源側部材に、そして、外筒9を振動伝達側部材に取り付けることで、または、これとは逆に取り付けることで、各部材の振動加速度を高い精度で検知することができる。
【0036】
ところで、図3に示すこの防振ゴム3は、たとえば、内筒8への、図の下向きの振動入力の作用に際しては、ゴム弾性体10の、外筒9に対する下向きの変形によって制振機能を発揮することができ、併せて、ゴム弾性体10のこの変形、および内筒8の下降変位に伴って、仕切部材13を下降変位させて下側の分割液室12bの容積を減少させる一方で、上側の分割液室12aの容積を増加させて、分割液室12b内の液体を、制限通路14を経て分割液室12a内へ流入させることによって振動減衰機能を発揮することもできる。
【0037】
図4は、このように構成してなり、上述したようにして加速度センサー4a,4bを配設した防振ゴム3の、土木作業車両、建設作業車両等への、キャビンマウントとしての適用例を示す略線図であり、ここでは、たとえば、振動源側部材1としてのキャビンに、内筒8を、図3に一点鎖線で例示するようにして取付け、そして、振動伝達側部材2としての車体フレームに、外筒9を、図3に二点鎖線で示すように取付けることにより、各部の振動加速度を、上述したように高い精度で検知することができる。
【0038】
このようにして検知されるそれぞれの側の振動加速度から振動伝達率を算出することは前述したところと同様であるが、いずれの場合にあっても、たとえば、振動源側の加速度センサー4aによって検知された加速度の時間変化が図5(a)に例示するようになり、そして、振動伝達例の加速度センサー4bによる検知結果が図5(b)に例示するようになったとし、そして、それぞれの検知結果の周波数解析が図5(c),(d)に例示するものであったとすると、防振対象周波数P(Hz)の振動を制御するべく予めチューイングされた防振ゴム3の、当該周波数P(Hz)の振動伝達率は図5(e)に例示するようになり、周波数P(Hz)のこのときの振動伝達率が、基準となる値に対し、上限側および下限側の両許容範囲内に収まるときは、防振ゴム3が、所要の制振機能を十分に発揮しているということができ、その場合は、判定手段6は、ゴム質の劣化判定は行わない。
【0039】
この一方で、判定手段6による、振動伝達率の経時的な監視中において、周波数P(Hz)の振動伝達率が、上限側もしくは下限側のいずれかの許容範囲を越えた場合は、判定手段6は、ゴム質が、異常な程度にまで劣化しているとの判定を行う。
【0040】
そしてこのような場合、判定手段6に報知手段7が接続されているときは、その報知手段7から、音、光、におい等の警報が発せられることになる。
【0041】
以上図3,4に示すところとの関連において、加速度センサー4a,4bのそれぞれを、防振ゴム3の内筒8および外筒9のそれぞれに配設する場合について説明したが、一方の加速度センサー4aは、防振ゴム3の近傍位置で、振動源側部材1としてのキャビンに配設することもでき、他方の加速度センサー4bは、これも防振ゴム3の近傍位置で、振動伝達側部材2としての車体フレームに配設することもできる。
【0042】
以上、センサーとして加速度センサーを配設する場合について説明したが、加速度センサーに代えて、荷重センサー、速度センサーまたは変位センサー等を用いることもでき、これらのいずれにあっても、振動伝達率は、
(伝達側検知値/振動側検知値)×100%
として算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明に係る装置の実施形態を示す概念図である。
【図2】センサーの他の配置例をその一部について示す概念図である。
【図3】液入りタイプの防振ゴムの、内外筒へのセンサーの配設例を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す防振ゴムの適用例を示す略線図である。
【図5】防振ゴムの制振機能についての説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 振動源側部材
2 振動伝達側部材
3 防振ゴム
3a,3b 取付部
4a,4b センサー
5 演算手段
6 判定手段
7 報知手段
8 内筒
9 外筒
10 ゴム弾性体
11 可撓膜体
12 内部液室
12a,12b 分割液室
13 仕切部材
14 制限通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動タイプの防振ゴムの、振動源側および振動伝達側のそれぞれにセンサーを設けるとともに、それぞれのセンサーの検知結果から、振動源側から振動伝達側への振動伝達率を求める演算手段を設け、この振動伝達率の経時変化を監視して、防振ゴムの劣化を判定する判定手段を設けてなる防振ゴムの劣化モニタリング装置。
【請求項2】
判定手段による異常の判定に基いて警報を発する報知手段を設けてなる請求項1に記載の防振ゴムの劣化モニタリング装置。
【請求項3】
振動源側と、振動伝達側との間に複数の防振ゴムを配設するとともに、各防振ゴムに対応させて少なくとも一対のセンサを配設してなる請求項1もしくは2に記載の防振ゴムの劣化モニタリング装置。
【請求項4】
内筒および外筒と、それらの両者を連結するゴム弾性体とを具え、内部に液体を封入してなる防振ゴムの、内筒および外筒のそれぞれにセンサーを設けてなる請求項1〜3のいずれかに記載の防振ゴムの劣化モニタリング装置。
【請求項5】
受動タイプの防振ゴムの、防振源側および振動伝達側のそれぞれに配設したセンサーの検知結果から、振動源側から振動伝達側への振動伝達率を算出するとともに、この振動伝達率の経時変化を監視して、その振動伝達率が許容値を越えたか否かに基いて防振ゴムの劣化度合を判定する防振ゴムの劣化モニタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85099(P2010−85099A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250987(P2008−250987)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】