説明

防災情報受信装置、防災情報受信方法

【課題】緊急地震速報が重畳される信号が有線で受信される場合にも、避難時に防災情報を受信するための装置として持ち出し可能な防災情報受信装置、防災情報受信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】緊急地震速報を受信するためのFSKチューナ140と、FMラジオ放送信号を選局するためのFMチューナ130と、緊急地震速報が重畳された信号が入力されるRF入力端子T1と、FMラジオ放送信号を受信する内蔵アンテナ190と、を有し、外部から供給される外部電源が遮断されると、電源を内蔵された電池230に切り替え、FMチューナ130に入力される信号をRF入力端子T1から入力される信号から、内蔵アンテナ190により受信されたFMラジオ放送信号に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急地震速報を受信する防災情報受信装置、防災情報受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、急速に発展しつつある地震工学技術、情報通信技術等を総合的に利用することで、地震波の発生を早期に捉え、地震の主要動が到達する前に地震情報を伝達する緊急地震速報技術が実用化されつつある。
【0003】
緊急地震速報技術の実用化の一例として、例えば緊急地震速報を受信して警告音等を出力し、地震の発生を警告する防災情報受信装置等が挙げられる。この防災情報受信装置の中には、例えば可搬型であり、地上デジタル放送信号やモバイル放送信号等に重畳された緊急地震速報を受信可能なものがある。
【0004】
例えば特許文献1には、受信場所が固定家屋内であるか、移動体内であるかにかかわらず、緊急地震速報を受信する防災情報受信装置が記載されている。
【特許文献1】特開2008−83811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の防災情報受信装置では、緊急地震速報が重畳された信号を無線で受信するため、例えば地震発生の警告後等に避難する際にもこの防災情報受信装置を携帯すれば、避難後も通常のラジオ放送等を受信することができ、防災情報を受信することができる。
【0006】
しかしながら、例えば緊急地震速報が重畳される信号がケーブルテレビジョン放送信号等の有線で受信される場合、避難時に緊急地震速報を受信する装置を携帯して防災情報を受信することができない。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべくなされたものであり、緊急地震速報が重畳される信号が有線で受信される場合にも、避難時に防災情報を受信するための装置として持ち出し可能な防災情報受信装置、防災情報受信方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。
【0009】
本発明は、外部から供給される外部電源が遮断されたときの電源となる内蔵電源(230)を有する防災情報受信装置(100)において、
有線通信により搬送される緊急地震速報が重畳された信号を受信する第一の受信手段(T1)と、
ラジオ放送信号を受信する第二の受信手段(190)と、
前記第一の受信手段(T1)により受信される信号又は前記第二の受信手段(190)により受信される信号の何れか一方を入力信号として選択する選択手段(200)と、
前記外部電源の遮断を検出して、当該防災情報受信装置(100)の電源を前記外部電源から前記内蔵電源(230)へ切り替える切替手段(220)と、を有し、
前記選択手段(200)は、
前記切替手段(220)により前記外部電源から前記内蔵電源(230)に切り替えられたとき、前記第二の受信手段(190)により受信された信号を入力信号として選択する構成とした。
【0010】
また本発明の防災情報受信装置は、前記第一の受信手段(T1)により受信された信号から前記緊急地震速報を検出する第一のチューナ(140)と、
前記第二の受信手段(190)により受信された前記ラジオ放送信号を選局する第二のチューナ(130)と、を有し、
前記切替手段(220)により前記外部電源から前記内蔵電源(230)へ切り替えられた後は、前記第二のチューナ(130)にのみ電源が供給される構成とした。
【0011】
また本発明の防災情報受信装置において、前記選択手段(200)は、スイッチング素子(M1)を有し、
前記スイッチング素子(M1)のゲートは、前記外部電源から供給される電源電圧を分圧する第一の抵抗(R1)と第二の抵抗(R2)との接続点と第三の抵抗(R3)を介して接続されており、
前記スイッチング素子(M1)のソースは接地されており、
前記スイッチング素子(M1)のドレインは第四の抵抗(R4)を介して定電圧源(V)と接続されており、
前記スイッチング素子(M1)のドレインと前記定電圧源(V)との接続点と出力端子(Tout)から前記入力信号を選択する選択信号が前記第二のチューナ(130)に対し出力される構成とした。
【0012】
また本発明の防災情報受信装置において、前記緊急地震速報が重畳される信号は、ケーブルテレビジョン放送信号とした。
【0013】
また本発明の防災情報受信装置は、前記外部電源の供給の遮断が検出されたとき、
前記内蔵電源(230)により電源が供給される照明手段(250)を有する構成とした。
【0014】
本発明は、外部から供給される外部電源が遮断されたときの電源となる内蔵電源(230)を有する防災情報受信装置(100)による防災情報受信方法において、
有線通信により搬送される緊急地震速報が重畳された信号を受信する第一の受信手順(T1)と、
ラジオ放送信号を受信する第二の受信手順(190)と、
前記第一の受信手順(T1)により受信される信号又は前記第二の受信手順(190)により受信される信号の何れか一方を入力信号として選択する選択手順(200)と、
前記外部電源の遮断を検出して、当該防災情報受信装置(100)の電源を前記外部電源から前記内蔵電源(230)へ切り替える切替手順(220)と、を有し、
前記選択手順(200)は、
前記切替手順(220)により前記外部電源から前記内蔵電源(230)に切り替えられたとき、前記第二の受信手順(190)により受信された信号を入力信号として選択する方法とした。
【0015】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、緊急地震速報が重畳される信号が有線で受信される場合にも、避難時に防災情報を受信するための装置として持ち出し可能な防災情報受信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、緊急地震速報を受信するための第一のチューナと、FMラジオ放送信号を選局するための第二のチューナと、緊急地震速報が重畳された信号が入力されるRF入力端子と、FMラジオ放送信号を受信するアンテナと、を有し、外部から供給される外部電源が遮断されると、内蔵された電池から電源が供給され、第二のチューナに入力される信号が、RF入力端子から入力される信号からアンテナにより受信されたFMラジオ放送信号切り替えられる。
(実施形態)
以下に図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態の防災情報受信装置は、例えばケーブルテレビジョン等の有線で伝搬される放送信号を受信するセットトップボックスの近傍(例えばセットトップボックスの上等)に配置され、セットトップボックスに入力される放送信号が入力される。本実施形態の防災情報受信装置は、例えばケーブルテレビジョン用のセットトップボックスの近傍に配置され、ケーブルテレビジョン放送信号を用いて搬送される緊急地震速報を受信して、地震発生前に地震発生の警告を発する。
【0019】
図1は、本発明の防災情報受信装置100の外観の一例を示す斜視図である。
【0020】
防災装置100は、筐体110に設けられた表示パネル111、操作部材112、音声出力部(スピーカ)113、発光部114、ライト部250を有する。
【0021】
筐体110の内部には、防災装置100を機能させるための各種回路等が格納されている。表示パネル111は、例えば防災情報受信装置100により発せられる警告に関する情報等を表示する。操作部材112は、防災情報受信装置100の操作を行うための部材である。スピーカ113は、例えば防災情報受信装置100により発せられる警告を音声等にして発する際に使用される。発光部114は、例えばLED(Light Emitting Diode)等により構成されており、防災情報受信装置100により警告が発せられたときに点灯又は点滅する。ライト部250は、例えば避難の際に防災情報受信装置100が持ち出された場合に、懐中電灯として機能する。
【0022】
図2は、本発明の防災情報受信装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。防災情報受信装置100は、RF(Radio Frequency)入力端子T1、RF分配器120、FM(Frequency Modulation)チューナ130、FSK(Frequency Shift Keying)チューナ140、FSK検波回路150、ADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)デコーダ160、パワーアンプ170、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)180、内蔵アンテナ190、選択部200、電源ジャック受け210、電源切替部220、電池230、CPU(Central Processing Unit)240を有する。
【0023】
RF入力端子T1は、図示しないセットトップボックスに接続されるケーブルから分配された入力信号(RF信号)を受信し、RF分配器120へ入力する。RF分配器120は、RF入力端子T1から入力される入力信号を、FMチューナ130とFSKチューナ140とに分配する。尚FMチューナ130に入力される入力信号とFSKチューナ140に入力される入力信号とは同様の信号である。本実施形態では、セットトップボックスは、ケーブルテレビジョン放送を受信するものであり、RF入力端子T1により入力される入力信号はケーブルテレビジョン放送信号とした。
【0024】
FMチューナ130は、RF分配器120から分配された入力信号から、設定された周波数を選局し、選局された周波数の信号を受信する。本実施形態のFMチューナ130は、デジタル信号処理に特化したDSP(digital signal processor)により選局及び受信の処理を行う。
【0025】
FSKチューナ140は、RF分配器120から入力される入力信号を中間周波数に変換する。FSKチューナ140は、放送信号を受信し、デジタル信号に復調するスーパーヘテロダイン方式のチューナである。FSKチューナ140の詳細は後述する。
【0026】
FSK検波回路150は、FSKチューナ140で受信した信号の波形整形を行う。ADPCMデコーダ160は、音源をオーディオ信号に変換する。パワーアンプ170は、ADPCMデコーダ160で変換されたオーディオ信号を増幅して出力させる。EEPROM180には、防災情報受信装置100に関する各種設定情報等が格納されている。
【0027】
内蔵アンテナ190は、防災情報受信装置100に内蔵されたアンテナである。本実施形態では、内蔵アンテナ190は、例えばループアンテナ等であり、FMラジオ放送信号を受信する。選択部200は、FMチューナ130に対し、防災情報受信装置100の入力信号となる信号を選択させる選択信号を出力する。具体的には選択部200は、RF分配器120から入力されるケーブルテレビジョン放送信号又は内蔵アンテナ190で受信されたFMラジオ放送信号の何れか一方を入力信号として選択させるための選択信号を出力する。選択部200の詳細は後述する。
【0028】
電源ジャック受け210は、電源ジャックの差込口である。本実施形態の防災情報受信装置100では、電源ジャック受け210にDC(Direct Current)電源を供給する電源ジャックが差し込まれる。本実施形態の電源ジャック受け210は、電源切替部220を有する。電源切替部220は、外部電源の供給の遮断を検出し、災害装置100の電源を外部電源から電池230へ切り替える。電源切切替部230の詳細は後述する。
【0029】
CPU240は、防災情報受信装置100の制御を行う。具体的には、CPU240が行う制御は、例えばFMチューナ130、FSKチューナ140の制御、表示パネル111の表示の制御、操作部材112の操作による防災情報受信装置100の制御、後述する警告を発する際のスピーカ113からの音声の出力及び発光部114の点滅の制御等である。
【0030】
ライト部250は、電池230から電源が供給される。ライト部250の点灯、消灯は、操作部材112により操作される。
【0031】
次に、図3を参照して本実施形態の選択部200について説明する。図3は、防災情報受信装置100の有する選択部200を説明する図である。
【0032】
本実施形態の選択部200は、抵抗R1〜抵抗R4、スイッチング素子M1、定電圧源Vを有する。抵抗R1と抵抗R2は直列に接続されており、抵抗R1の一端が電源ジャック受け210へ接続されている。抵抗R2の一端は、接地されている。抵抗R1と抵抗R2の接続点は、抵抗R3の一端に接続されている。抵抗R3の他端は、スイッチング素子M1のゲートに接続されている。スイッチング素子M1のソースは接地されており、スイッチング素子Mのドレインは抵抗R4の一端に接続されている。抵抗R4の他端は、定電圧源Vと接続されている。
【0033】
スイッチング素子M1のドレインと抵抗R4の一端との接続点には、出力端子Toutが接続されている。出力端子Toutは、FMチューナ130へ接続されている。出力端子Toutから出力される信号は、FMチューナ130へ入力される入力信号を選択する選択信号である。尚本実施形態のスイッチング素子M1は、Nチャネル型MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等により実現される。
【0034】
選択部200において、電源ジャック受け210に電源ジャックが差し込まれ、外部電源が供給されている場合、スイッチング素子M1のゲートには外部電源から供給される電圧が印加されるため、オンとなる。よって出力端子Toutからは、ローレベル(以下、Lレベル)の選択信号が出力される。また選択部200において、電源ジャック受け210に差し込まれた電源ジャックが引き抜かれており、外部電源が供給されない場合、スイッチング素子M1のゲートには電圧が印加されず、オフとなる。よって出力端子Toutからはハイレベル(以下、Hレベル)の選択信号が出力される。
【0035】
尚本実施形態のFMチューナ130は、出力端子ToutからHレベの選択信号が出力されると、内蔵アンテナ190により受信される信号を入力信号として選択する。またFMチューナ130は、出力端子ToutからLレベルの選択信号が出力されると、RF入力端子T1から入力される信号を入力信号として選択する。
【0036】
よって本実施形態では、選択部200は、外部電源が供給されているか否かに基づき選択信号を出力し、FMチューナ130に防災情報受信装置100の入力信号となる信号を選択させることができる。
【0037】
尚本実施形態では、選択部200はFMチューナ130の外部に設けられ、選択信号をFMチューナ130へ出力する構成としたが、これに限定されない。選択部200は、例えばFMチューナ130を実現するIC(Integrated Circuit)の有する機能の一つとし、FMチューナ130と選択部200とをひとつのIC内に設けても良い。
【0038】
次に図4を参照して本実施形態の電源切替部220について説明する。図4は、防災情報受信装置100の有する電源切替部220を説明する図である。
【0039】
電源切替部220は、電源ジャック受け210内に設けられている。電源切替部220は、ピンP1、P2、P3を有する。ピンP1は、電池230の陽極と接続されている。ピンP2は電池230の負極と接続されている。ピンP3は、グランドと接続されている。
【0040】
電源切替部220では、電源ジャック受け210に電源ジャックが差し込まれると、ピンP2がオープンになり、電池230の負極がグランドと接続されない。よって防災情報受信装置100に電池230から電源が供給されることはない。また電源切替部220では、電源ジャック受け210から電源ジャックが引き抜かれると、ピンP2とピンP3とが導通し、電池230の負極がグランドと接続される。よって防災情報受信装置100には電池230から電源が供給される。このように本実施形態の電源切替部220では、電源ジャックが引き抜かれたとき、外部電源の供給の遮断を検出し、防災情報受信装置100を電池230による駆動に切り替えることができる。尚電源ジャックが引き抜かれるときとは、防災情報受信装置100が携帯される場合等である。
【0041】
以下に、本実施形態の防災情報受信装置100の動作を説明する。図5は、防災情報受信装置100の動作を説明する第一のフローチャートである。
【0042】
本実施形態の防災情報受信装置100は、ステップS51において、外部電源が供給されているか否かを検出する。具体的には防災情報受信装置100は、電源切替部220においてピンP2とピンP3とが導通しているか否かにより、外部電源が供給されているか否かを検出する。ピンP2とピンP3とが導通していない場合、つまり外部電源が供給されている場合、選択部200ではスイッチング素子M1がオンとなり、出力端子ToutからFMチューナ130に対しLレベルの選択信号が出力される。よってFMチューナ130は、RF入力端子T1から入力される信号を入力信号として選択する。
【0043】
ステップS51に続いてステップS52へ進み、RF入力端子T1から入力されたRF信号は、RF分配器120により分配されてFMチューナ130とFSKチューナ140とへ入力される。ステップS52に続いてステップS53へ進み、防災情報受信装置100は、FMチューナ130とFSKチューナ140とにより、緊急地震速報を受信する際の妨害波回避処理を行う。妨害波回避処理の詳細は後述する。ステップS53に続いてステップS54へ進み、妨害波回避処理が完了すると、FSKチューナ140による通常のRF信号の受信が開始される。
【0044】
FSKチューナ140による通常のRF信号の受信とは、例えばRF入力端子T1から入力されるRF信号(ケーブルテレビジョン放送信号)に含まれるFMラジオ放送信号等を受信することである。すなわち本実施形態の防災情報受信装置100は、通常時は緊急地震速報の受信が可能であり、且つFMラジオ放送等を受信することができる。
【0045】
ステップS51において、電源切替部220のピンP2とピンP3とが導通している場合、つまり外部電源の供給が遮断されている場合、電池230の負極がグランドに接続され、防災情報受信装置100は電池230による電池駆動に切り替わる。また外部電源が遮断されると、選択部200ではスイッチング素子M1がオフとなり、出力端子ToutからFMチューナ130に対しHレベルの選択信号が出力される。FMチューナ130は、この選択信号により、内蔵アンテナ190により受信される信号を入力信号として選択する。尚内蔵アンテナ190により受信される信号とは、例えばFMラジオ放送信号等である。よって本実施形態の防災情報受信装置100は、電池駆動になった場合にも、内蔵アンテナ190から受信されるFMラジオ放送信号を受信することができる。
【0046】
このように本実施形態の防災情報受信装置100では、例えば防災情報受信装置100から電源ジャックと、RF信号入力端子T1に接続されていたケーブルとが引き抜かれて戸外等へ持ち出された場合等に、自動的に電池駆動に切り替わる。また防災情報受信装置100の入力信号は、RF入力端子T1から入力される信号から、内蔵アンテナ190により受信された信号に切り替わる。
【0047】
このため本実施形態の防災情報受信装置100は、屋内でケーブルに接続されている場合には緊急地震速報を受信するための端末として使用でき、携帯用に持ち出された場合にはラジオ装置として使用することができる。さらに本実施形態の防災情報受信装置100は、電池230により駆動されるライト部250を有する。よって本実施形態の防災情報受信装置100では、携帯用に持ち出された場合には、懐中電灯としても使用することができる。
【0048】
また本実施形態の防災情報受信装置100では、電池駆動に切り替わった場合、防災情報受信装置100をラジオ装置として機能させるための必要となる部材にのみ電源が供給される。本実施形態では、電池駆動の際には、防災情報受信装置100の有する2つのチューナのうち、FSKチューナ140には電源は供給されず、FMチューナ130のみに電源が供給される。またFMチューナ130の他にも、防災情報受信装置100をラジオ装置として機能させるために必要となるCPU240等に電源が供給される。このように本実施形態の防災情報受信装置100では、電池駆動の際には必要最小限の部材にしか電源が供給されないため、全ての部材に電源を供給した場合に比べて長時間の電池駆動を実現することができる。
【0049】
次に、防災情報受信装置100による妨害波回避処理について説明する。
【0050】
本実施形態の防災情報受信装置100では、デジタル信号処理を行うFMチューナ130を妨害波の検出手段として使用することにより、簡単に且つ高精度に妨害波を検出することができる。さらに本実施形態の防災情報受信装置100では、妨害波となる信号が検出されたとき、FSKチューナ140の局部発振周波数を変更して中間周波数を変えることにより妨害波を回避し、妨害波に影響されない安定した通信を行うことができる。
【0051】
緊急地震速報は、ある特定周波数の信号として送信される。そこで本実施形態の防災情報受信装置100では、FMチューナ130により特定周波数の妨害波となる信号が存在するか否かを検出する。妨害波となる信号が存在した場合、防災情報受信装置100は、妨害波を回避するようにFSKチューナ140における局部発振周波数を変更する。
【0052】
本実施形態では、上記構成により、簡単に妨害波の検出でき、且つ妨害波の検出精度を向上させ、安定した通信を行うことが可能となる。
【0053】
以下に、本実施形態の防災情報受信装置100の有するFSKチューナ140についてさらに説明する。
【0054】
図6は、防災情報受信装置100の有するFSKチューナ140を説明する図である。FSKチューナ140は、局部発振回路141、高周波アンプ142、ミキサ143、中間周波アンプ144、検波回路145、信号レベルステータス146、クロック生成部147を有する。
【0055】
局部発振回路141は、クロック生成部147において生成されるクロック信号を分周カウンタ148で設定された分周比に分周することにより局部発振周波数を生成する。高周波アンプ142は、高周波であるRF信号を増幅する。ミキサ143は、入力信号と局部発振回路141で生成された局部発振周波数とを混合する。中間周波アンプ144は、ミキサ144による混合により入力信号から変換された中間周波数を増幅する。検波回路145は、アナログ方式の検波回路であり、中間周波数信号を検波する。信号レベルステータス146は、検波された信号のレベルを確認する。
【0056】
FSKチューナ140では、入力信号と、局部発振周波数とをミキサ143で混合することで、入力信号を所望の周波数を中間周波数に変換する。中間周波数は、検波回路145を通って信号として取り出される。
【0057】
FSKチューナ140では、局部発振回路141で生成される局部発振周波数を変更することにより、所望の周波数を選局することができ、選局された周波数の信号を受信することができる。本実施形態では、CPU240により分周カウンタ148における分周比の設定を変更することにより、所望の周波数を選局することができる。
【0058】
ここで本発明において問題とされている妨害波について説明する。
【0059】
例えば本実施形態において、緊急地震速報が送信される特定周波数を70.5MHzとし、局部発振周波数を70.125MHzとした場合、中間周波数は、375KHzとなる。
【0060】
例えばこの特定周波数と近い周波数でレベルの大きい信号が存在したとする。このとき特定周波数と近い周波数の整数倍と、局部発振周波数の整数倍との混合により得られる中間周波数が、特定周波数から得られる中間周波数と同じになる場合がある。すると、特定周波数と近い周波数が妨害波となり、特定周波数の信号を受信することができない。
【0061】
具体的には例えば、特定周波数が70.5MHzの場合に、70.0MHzのレベルの大きい信号が存在したとする。この場合、局部発振周波数70.125MHzの3倍と、70.0MHzの3倍とを混合して得られる中間周波数は375KHzとなる。よって特定周波数70.5MHzから得られる中間周波数と同様の周波数となり、特定周波数70.5MHzの信号を受信できなくなる。
【0062】
本実施形態では、このような妨害波が存在する場合に、局部発振周波数を変更することにより、妨害波を回避して特定周波数の信号を受信することを可能にする。
【0063】
具体的には例えば、局部発振周波数を70.125MHzから70.083MHzに変更すると、特定周波数70.5MHzから得られる中間周波数は417KHzとなる。また妨害波となる70.0MHzから得られる中間周波数は249KHzとなる。よって妨害波を回避し、特定周波数の信号を受信することができる。
【0064】
尚上記の例において特定周波数の信号は、本来は中間周波数を375KHzとして受信されるのが最も好ましいが、中間周波数を417KHzとしても受信できる。本実施形態では、局部発振周波数は、特定周波数の信号を受信可能な範囲内で変更されることが好ましい。
【0065】
本実施形態の防災情報受信装置100では、上記の局部発振周波数の変更をCPU240により制御する。以下に図7を参照して本実施形態のCPU240の機能について説明する。図7は、防災情報受信装置100の有するCPU244の機能構成を説明する図である。
【0066】
CPU240は、FMチューナ選局部241、信号レベル判定部242、変更指示部243、地震情報検出部244、地震情報取得部245、警告情報生成部246、警告情報出力部247を有する。
【0067】
FMチューナ選局部241は、FMチューナ130で受信する周波数を選局する。尚本実施形態では、FMチューナ選局部241により選局される周波数は、予めEEPROM180に格納されている。本実施形態においてFMチューナ選局部241により選局される周波数は、妨害波となり得る周波数である。
【0068】
信号レベル判定部242は、FMチューナ130がFMチューナ選局部241で選局された周波数の信号を受信した際に、この信号レベルが所定値以上であるか否かを判定する。尚信号レベルの所定値は予めEEPROM180に格納されている。本実施形態の信号レベル判定部242は、EEPROM180を参照して信号レベルが所定値以上であるか否かを判定する。
【0069】
変更指示部243は、局部発振回路141で生成される局部発振周波数を変更する指示を行う。具体的には変更指示部243は、EEPROM180に格納されたテーブル60(後述する)を参照し、局部発振回路141の有する分周カウンタ148に対し、分周比を変更する指示を出す。
【0070】
地震情報検出部244は、緊急地震速報が送信される特定周波数を検出する。尚本実施形態の緊急地震速報とは、気象庁から発信される情報であり、例えば地震が発生した場所の緯度、経度、震源の深さ、マグニチュード等を含む情報である。地震情報取得部245は、特定周波数に含まれる緊急地震速報を取得する。
【0071】
警告情報生成部246は、取得した緊急地震速報から警告情報を生成する。具体的には警告情報生成部246は、緊急地震速報を用いて所定の演算により地震発生時刻までの時間を算出し、地震の発生を警告する情報を生成する。警告情報出力部247は、生成された警告情報を出力する。具体的には警告情報出力部247は、表示パネル111に地震発生時刻までの時間を表示させる、スピーカ113から地震発生を通知する音声メッセージを流す、発光部114を点灯又は点滅させる等の制御を行い、警告情報を出力する。尚本実施形態の地震発生時刻を算出するための演算は、気象庁により予め許可された方式に基づき行われる。
【0072】
次に、図8を参照して本実施形態の防災情報受信装置100の動作を説明する。図8は、防災情報受信装置100の動作を説明する第二のフローチャートである。図8では、防災情報受信装置100による妨害波の検出及び妨害波の回避について説明する。
【0073】
防災情報受信装置100が起動すると、ステップS81において、CPU240はEEPROM180に予め格納された妨害波となる周波数(以下、妨害周波数)のデータを読み込む。ステップS81に続いてステップS82へ進み、FMチューナ選局部241は、読み込んだ妨害周波数のデータに基づきFMチューナ130の選局を行う。
【0074】
ここで図9を参照してEEPROM180に格納された妨害周波数と、局部発振周波数とについて説明する。本実施形態のEEPROM180には、妨害周波数と、それを回避するための局部発振周波数とが対応付けられたテーブル60が格納されている。図9は、テーブル60の一例を示す図である。
【0075】
テーブル60に格納された妨害周波数は、通常使用する局部発振周波数の整数倍の周波数とミキサ143で混合した場合に、通常使用する局部発振周波数と入力信号から生成される中間周波数と同様の中間周波数を生成する周波数である。妨害周波数は、予め演算により算出されてテーブル60へ格納されている。妨害周波数を回避するための局部発振周波数は、妨害周波数等に基づき予め算出され、妨害周波数と対応付けられてテーブル60に格納されている。
【0076】
図9に示すように、テーブル60には、妨害周波数として、70.0MHzと71.0MHzとが格納されている。よってステップS81では、CPU240は、始めにテーブル60に格納された妨害周波数70.0MHzを読み出す。そしてステップS82においてFMチューナ選局部241は読み出された妨害周波数を選局する。
【0077】
例えばステップS81において妨害周波数70.0MHzが読み込まれると、ステップS82においてFMチューナ選局部241は、FMチューナ130を70.0MHzに選局する。
【0078】
図8に戻って、FMチューナ130が選局されると、ステップS83へ進み、信号レベル判定部242はFMチューナ130で受信された信号のレベルをEEPROM180等に一時的に記憶する。ステップS83に続いてステップS84へ進み、テーブル60に格納されている妨害周波数の数と同回数ステップS81からステップS83の処理を繰り返す。テーブル60の例では、2つの妨害周波数が格納されているので、ステップS81からステップS83の処理を2回繰り返す。
【0079】
全ての妨害周波数の信号レベルがEEPROM180に記憶されると、ステップS85へ進み、信号レベル判定部242は、EEPROM180に記憶された全ての妨害周波数の信号レベルから最も信号レベルの高い妨害周波数を検出する。ステップS85に続いてステップS86へ進み、信号レベル判定部243は、ステップS85で検出された妨害周波数の信号レベルが所定値以上であるか否かを判定する。
【0080】
妨害周波数の信号レベルが所定値以上であった場合、信号レベル判定部242は、FMチューナ130により妨害周波数の信号を受信したものと判定し、その旨を変更指示部243へ通知する。
【0081】
ステップS86に続いてステップS87へ進み、変更指示部243は、信号レベル判定部242からの通知を受けて、局部発振周波数の変更を指示する。具体的には変更指示部243は、EEPROM180に格納されたテーブル60を参照し、局部発振周波数が検出された妨害周波数に対応する局部発振周波数となるように、局部発振回路141の分周カウンタ148の分周比の設定の変更を指示する。局部発振周波数は、変更された分周比にしたがって、妨害周波数を回避する局部発振周波数へ変更される。
【0082】
またステップS86において妨害周波数の信号レベルが所定値未満であった場合、信号レベル判定部242は妨害周波数の信号を受信していないと判定する。よってステップS86に続いてステップS88へ進み、局部発振周波数は、初期設定値のままとされる。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態では、デジタル信号処理を行うFMチューナ130を妨害波の検出手段として利用し、アナログ方式の検波を行わずに妨害波の検出を行う。このため本実施形態では、検波回路等を構成する素子のばらつきによる誤差等による妨害波の検出精度の低下を防止し、簡単に高精度の妨害波検出を行うことができる。
【0084】
次に、本実施形態の防災情報受信装置100が緊急地震速報を受信した場合の動作について説明する。図10は、防災情報受信装置100の動作を説明する第三のフローチャートである。
【0085】
防災情報受信装置100では、ステップS101において、地震情報検出部244がFSKチューナ140における特定周波数の信号の受信を検出すると、ステップS102に進み、地震情報取得部245により特定周波数の信号に含まれる緊急地震速報を取得する。
【0086】
ステップS102に続いてステップS103へ進み、警告情報生成部246は、警告情報を生成する。具体的には警告情報生成部246は、取得した緊急地震速報を用いて所定の演算を行い、地震発生時刻までの時間を算出する。そして警告情報生成部246は、算出された時間と、表示パネル111に表示させる表示情報、スピーカ113から出力させる音声情報、発光部114の点灯パターン等の情報とを警告情報として生成する。尚本実施形態の音声情報は、防災情報受信装置100の有する図示しない音源をADPCMデコーダ160によりオーディオ信号に変換して出力されるものであっても良い。
【0087】
ステップS103に続いてステップS104へ進み、警告情報取得部247は、生成した警告情報に基づき、表示パネル111、スピーカ113、発光部114等から警告情報を出力する。
【0088】
以上に説明したように、本実施形態では、特定周波数の信号として送信される緊急地震速報に基づき地震発生時刻を予測し、地震発生前に地震発生の警告を発することができる。また本実施形態では、上記した方法により妨害波を高精度に検出し、これを回避することができるため、安定して緊急地震速報を受信することができる。よって本実施形態によれば、地震発生の際に正確な警告を発することができる。
【0089】
尚、以上の説明では、本実施形態の防災情報受信装置100により受信する特定周波数を、緊急地震速報が含まれる周波数としたが、これに限定されない。例えば告知放送等の周波数を特定周波数としても良い。また本実施形態で説明した妨害波の回避の手法は、防災情報受信装置100以外にも適用することができる。本実施形態で説明した妨害波の回避の手法は、FSK方式により特定周波数を受信する装置であれば、適用することができる。
【0090】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の防災情報受信装置100の外観の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の防災情報受信装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】防災情報受信装置100の有する選択部200を説明する図である。
【図4】防災情報受信装置100の有する電源切替部220を説明する図である。
【図5】防災情報受信装置100の動作を説明する第一のフローチャートである。
【図6】防災情報受信装置100の有するFSKチューナ140を説明する図である。
【図7】防災情報受信装置100の有するCPU240の機能構成を説明する図である。
【図8】防災情報受信装置100の動作を説明する第二のフローチャートである。
【図9】テーブル60の一例を示す図である。
【図10】防災情報受信装置100の動作を説明する第三のフローチャートである。
【符号の説明】
【0092】
100 端末装置
110 筐体
111 表示パネル
112 操作部材
113 スピーカ
114 発光部
130 FMチューナ
140 FSKチューナ
141 局部発振回路
142 高周波アンプ
143 ミキサ
144 中間周波アンプ
145 検波回路
147 クロック生成部
148 分周カウンタ
180 EEPROM
190 内蔵アンテナ
200 選択部
210 電源ジャック受け
220 電源切替部
230 電池
240 CPU
250 ライト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される外部電源が遮断されたときの電源となる内蔵電源を有する防災情報受信装置において、
有線通信により搬送される緊急地震速報が重畳された信号を受信する第一の受信手段と、
ラジオ放送信号を受信する第二の受信手段と、
前記第一の受信手段により受信される信号又は前記第二の受信手段により受信される信号の何れか一方を入力信号として選択する選択手段と、
前記外部電源の遮断を検出して、当該防災情報受信装置の電源を前記外部電源から前記内蔵電源へ切り替える切替手段と、を有し、
前記選択手段は、
前記切替手段により前記外部電源から前記内蔵電源に切り替えられたとき、前記第二の受信手段により受信された信号を入力信号として選択する防災情報受信装置。
【請求項2】
前記第一の受信手段により受信された信号から前記緊急地震速報を検出する第一のチューナと、
前記第二の受信手段により受信された前記ラジオ放送信号を選局する第二のチューナと、を有し、
前記切替手段により前記外部電源から前記内蔵電源へ切り替えられた後は、前記第二のチューナにのみ電源が供給される請求項1記載の防災情報受信装置。
【請求項3】
前記選択手段は、スイッチング素子を有し、
前記スイッチング素子のゲートは、前記外部電源から供給される電源電圧を分圧する第一の抵抗と第二の抵抗との接続点と第三の抵抗を介して接続されており、
前記スイッチング素子のソースは接地されており、
前記スイッチング素子のドレインは第四の抵抗を介して定電圧源と接続されており、
前記スイッチング素子のドレインと前記定電圧源との接続点と出力端子から前記入力信号を選択する選択信号が前記第二のチューナに対し出力される請求項2記載の防災情報受信装置。
【請求項4】
前記緊急地震速報が重畳される信号は、ケーブルテレビジョン放送信号である請求項1乃至3の何れか一項に記載の防災情報受信装置。
【請求項5】
前記外部電源の供給の遮断が検出されたとき、
前記内蔵電源により電源が供給される照明手段を有する請求項1乃至4の何れか一項に記載の防災情報受信装置。
【請求項6】
外部から供給される外部電源が遮断されたときの電源となる内蔵電源を有する防災情報受信装置による防災情報受信方法において、
有線通信により搬送される緊急地震速報が重畳された信号を受信する第一の受信手順と、
ラジオ放送信号を受信する第二の受信手順と、
前記第一の受信手順により受信される信号又は前記第二の受信手順により受信される信号の何れか一方を入力信号として選択する選択手順と、
前記外部電源の遮断を検出して、当該防災情報受信装置の電源を前記外部電源から前記内蔵電源へ切り替える切替手順と、を有し、
前記選択手順は、
前記切替手順により前記外部電源から前記内蔵電源に切り替えられたとき、前記第二の受信手順により受信された信号を入力信号として選択する防災情報受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−282711(P2009−282711A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133552(P2008−133552)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】