説明

除塵システム及び除塵ロボット

【課題】除塵作業後の被除塵物に粉塵が再付着するのを抑止する。
【解決手段】粉塵拭き取り用又は粉塵掃き取り用のワイプ部材4を備える除塵ロボット6を設け、搬送手段により搬送される被除塵物2をワイプ部材4で除塵する除塵用動作を除塵ロボット6に実行させる構成にするとともに、被除塵物2から離れた位置に設定した清掃域でワイプ部材4の清掃が実施可能なように、除塵用動作後のワイプ部材4を清掃域に移動させる清掃用動作を除塵ロボット6に実行させる構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の車体(被除塵物の一例)を塗装する塗装工場等において、上塗り工程の前に車体表面の粉塵を粉塵拭き取り用又は粉塵掃き取り用のワイプ部材で除去するのに用いられる除塵システム及び除塵ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の除塵システムとしては、搬送手段により順次に搬送される被除塵物の上面部を自動的に除塵する回転ワイプブラシ(ワイプ部材の一例)を左右一対の側柱間に移動不能な状態で装備した上面ワイプ装置(除塵ロボットの一例)を設けるとともに、回転ワイプブラシの上半部を覆うブラシハウジングに回転ワイプブラシに付着した粉塵を吸引除去する清掃装置(清掃手段の一例)を設けたものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
つまり、この除塵システムでは、搬送手段により搬送される被除塵物の上面部を被除塵物の直上域において横軸心周りで回転させるワイプ部材の下方部分で除塵する除塵用動作実行させるとともに、この除塵用動作に並行して、横軸心周りで回転中のワイプ部材の上方部分を清掃手段により清掃する動作を上面ワイプ装置に実行させる構成を採る。
【特許文献1】特開平5−169038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の除塵システムでは、ワイプ部材の清掃過程でワイプ部材から離れるものの清掃手段では清掃し切れずに残ってしまう一部の粉塵が除塵作業後の被除塵物に再付着し易い問題があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ワイプ部材の清掃方式の合理的な改良により、上記の如き問題点を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は除塵システムに係り、その特徴は、
粉塵拭き取り用又は粉塵掃き取り用のワイプ部材を備える除塵ロボットを設け、
搬送手段により搬送される被除塵物を前記ワイプ部材で除塵する除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にするとともに、
被除塵物から離れた位置に設定した清掃域で前記ワイプ部材の清掃が実施可能なように、除塵用動作後の前記ワイプ部材を前記清掃域に移動させる清掃用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にしてある点にある。
【0007】
上記構成によれば、前記除塵ロボットによる前記除塵用動作の実行により被除塵物を前記ワイプ部材で除塵することができながらも、除塵ロボットによる前記清掃用動作により被除塵物から離れた位置に設定した清掃域で前記ワイプ部材を清掃することが可能になる。
【0008】
したがって、ワイプ部材の清掃作業で一部の粉塵が清掃域に残存するとしても、被除塵物から離れた空域に残存することになって、これにより、被除塵物に粉塵が再付着する確率を大幅に低減することができて、除塵精度を大きく向上させることができる。
【0009】
なお、前記清掃域を被除塵物の直上域から離れた位置に設定すれば、ワイプ部材の清掃作業で一部の粉塵が清掃域に残存するとしても、被除塵物に再付着するには下方移動側への常時的な外力(重力、又は、この種システムに一般的な空間全域に亘る下向き空気流)とは無関係の横移動を要する空域に残存することになるから、被除塵物に粉塵が再付着する確率を更に低減することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記清掃用動作により前記清掃域に移動された前記ワイプ部材を清掃手段で清掃する構成にしてある点にある。
【0011】
上記構成によれば、除塵用動作後の前記ワイプ部材を前記清掃域に移動させる構成を採りながらも、前記清掃用動作後の清掃手段による清掃によってワイプ部材の清掃を無人状態で行うことが可能になる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
複数の被除塵物が搬送手段により順次に搬送される構成にするとともに、
除塵対象の被除塵物に対する前記除塵用動作の実行後において次に除塵対象とした被除塵物に対する前記除塵用動作の実行前に前記清掃用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にしてある点にある。
【0013】
上記構成によれば、複数の被除塵物が搬送手段により順次に搬送されることに対し、新たな被除塵物に対する前記除塵用動作を清掃済みのワイプ部材でもって除塵ロボットに実行させるから、先の除塵用動作で付着した粉塵が新たな被除塵物に付着することを抑止することができて、除塵精度を一層向上させることができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ワイプ部材を装備した状態で又はワイプ部材と粉塵吹き飛ばし用又は粉塵吸引用のエアノズル部材の両部材を装備した状態で或いは両部材を装備した状態からエアノズル部材を離脱した状態で被除塵物をワイプ部材で除塵する除塵用動作と、
前記ワイプ部材に代えて前記エアノズル部材を装備した状態で又はワイプ部材とエアノズル部材の両部材を装備した状態で或いは両部材を装備した状態からワイプ部材を離脱した状態で被除塵物をエアノズル部材で除塵する第2の除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にしてある点にある。
【0015】
上記構成によれば、被除塵物を前記ワイプ部材で除塵する除塵用動作と被除塵物を前記エアノズル部材で除塵する第2の除塵用動作という少なくとも二つの除塵用動作を1台の除塵ロボットに実行させるから、例えば、夫々の除塵作業専用の複数台の除塵ロボットを設ける場合に比べ、システムの簡素化と効率化を図ることができる。
【0016】
本発明の第5特徴構成は、第2又は第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記除塵ロボットによる着脱操作が可能な状態で前記ワイプ部材を除塵ロボットに装着する装着手段を設けるとともに、粉塵吹き飛ばし用又は粉塵吸引用のエアノズル部材を前記除塵ロボットに更に設け、
前記清掃用動作において前記清掃域で前記ワイプ部材を離脱する動作を前記除塵ロボットに実行させ、且つ、清掃域にあるワイプ部材を前記清掃手段で清掃するのに並行して被除塵物を前記エアノズル部材で除塵する第2の除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にしてある点にある。
【0017】
上記構成によれば、前記除塵用動作の実行後に前記ワイプ部材を清掃域で清掃する時間を利用して前記第2除塵用動作を実行するから、異なる除塵方法を採るワイプ部材とエアノズル部材との夫々で除塵することにより高い除塵精度を得ることができながらも、除塵作業に要する時間を極力短縮することができる。
【0018】
また、除塵用動作後のワイプ部材を清掃域で離脱させた状態で第2除塵用動作を実行するから、第2除塵用動作の過程で被除塵物の近傍域にワイプ部材から粉塵が飛散するのを抑止することができて、除塵精度を更に向上させることができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、第4又は第5特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ワイプ部材での除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させるワイプ部材用作業空間と、前記エアノズル部材での第2除塵用動作を除塵ロボットに実行させるエアノズル部材用作業空間とを分けて形成し、
イオン化空気の発生により空間内部を除電する空間除電手段を両作業空間のうちで前記エアノズル部材用作業空間だけに設けてある点にある。
【0020】
上記構成によれば、前記ワイプ部材での除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させるワイプ部材用作業空間については空間内部を除電しない又はほぼ除電しない状態で、前記エアノズル部材での第2除塵用動作を実行させるエアノズル部材用作業空間の空間内部を除電することができるから、ワイプ部材用作業空間では静電付着作用を利用してワイプ部材による除塵作業を効率的に行うことができ、一方、エアノズル部材用作業空間ではイオン化空気により粉塵と被除塵物との静電付着力が低下した又は不存となった状況下でエアノズル部材による除塵作業を効率的に行うことができるとともに、イオン化空気による浮遊粉塵どうしの帯電吸着作用により浮遊粉塵を落下除去することもでき、これにより、除塵精度を更に向上させることができる。
【0021】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記除塵ロボットのアームに前記ワイプ部材を除塵ロボットによる着脱操作が可能な状態で装着するとともに、
前記着脱操作により前記アームから離脱した前記ワイプ部材を前記清掃域に保持可能なワイプ部材保持部を、前記アームを動作自在な状態に保持する前記除塵ロボットの基台部又は除塵ロボットの走行部に設けてある点にある。
【0022】
上記構成によれば、前記除塵ロボットによる着脱操作が可能な状態で前記ワイプ部材をアームに装着してあるから、ワイプ部材を使用しない動作を除塵ロボットに実行させるときには、ワイプ部材の離脱させた状態で実行させることが可能になり、これにより、ワイプ部材を使用しない動作の過程で被除塵物の近傍域にワイプ部材から粉塵が飛散するのを抑止することができて、除塵精度を更に向上させることができる。
【0023】
しかも、前記着脱操作により前記アームから離脱したワイプ部材を清掃域に保持可能なワイプ部材保持部を前記除塵ロボットの基台部又は除塵ロボットの走行部に設けてあるから、例えば、ワイプ部材保持部を除塵ロボットから離れた位置に設ける場合に比べ、ワイプ部材の着脱操作に要する時間の平均化と短縮化を図ることが可能になる。なお、移動動作を可能にする走行部を備えた除塵ロボットを用いる場合に当該構成を採用するのが特に効果的である。
【0024】
本発明の第8特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記除塵ロボットによる着脱操作が可能な状態で前記ワイプ部材を除塵ロボットに装着する装着手段を設けてある点にある。
【0025】
上記構成によれば、前記除塵ロボットによる前記ワイプ部材の着脱操作が可能であるから、ワイプ部材を使用しない動作を除塵ロボットに実行させるときには、ワイプ部材の離脱させた状態で実行させることが可能になり、これにより、ワイプ部材を使用しない動作の過程で被除塵物の近傍域にワイプ部材から粉塵が飛散するのを抑止することができて、除塵精度を更に向上させることができる。
【0026】
本発明の第9特徴構成は、第4〜第8特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ワイプ部材を前記除塵ロボットに装着した状態でのワイプ部材に対する一定の外力によりワイプ部材が除塵ロボットから脱落する構成にしてある点にある。
【0027】
つまり、例えば、被除塵物が設計位置から位置ズレしている場合等では、前記除塵用動作による前記ワイプ部材の動作中にワイプ部材が被除塵物に干渉し、その干渉圧力により被除塵物が破損する虞がある。
【0028】
これに対し、ワイプ部材に対する一定の外力によりワイプ部材が装着ロボットから脱落する構成にしてある上記構成によれば、前記除塵用動作によるワイプ部材の動作中にワイプ部材が被除塵物に干渉した場合でも、ワイプ部材に対する外力がある一定の外力に達するとワイプ部材が脱落するから、被除塵物に対する干渉圧力がそれ以上増大するのを自動的に防止することができ、これにより、ワイプ部材との干渉で被除塵物が破損する不具合を効果的に抑止することができる。
【0029】
本発明の第10特徴構成は、第9特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ワイプ部材を磁力により前記除塵ロボットに装着する構成にしてある点にある。
【0030】
上記構成によれば、前述の如くワイプ部材との干渉で被除塵物が破損する不具合をワイプ部材の脱落により抑止する効果を、磁石等の磁力を発生する手段を主とするシンプルな構造でもって確実に得ることができる。
【0031】
本発明の第11特徴構成は、第4〜第10特徴構成のいずれかの実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ワイプ部材が前記除塵ロボットに装着されているか否かを検知する検知手段を設けてある点にある。
【0032】
上記構成によれば、前記ワイプ部材が装着されていない状態で前記除塵ロボットが除塵動作を実行して除塵精度が低下することや、ワイプ部材が装着された状態でワイプ部材を使用しない動作を実行して除塵精度が低下するのを抑止し易くすることができる。
【0033】
本発明の第12特徴構成は除塵ロボットに係り、その特徴は、
粉塵拭き取り用又は粉塵掃き取り用のワイプ部材をアームに備え、
前記ワイプ部材を清掃する清掃装置を、前記アームを動作自在な状態に保持する基台部又は走行部に設けるとともに、
被除塵物を前記ワイプ部材で除塵する除塵用動作を実行可能で、且つ、前記アームの動作により前記ワイプ部材を前記清掃装置の清掃部に移動させる清掃用動作を実行可能な構成にしてある点にある。
【0034】
上記構成によれば、無人状態で被除塵物の上面部を前記ワイプ部材で除塵し、且つ、被除塵物から離れた位置でワイプ部材を清掃し得る除塵精度が高くて無人化された除塵システムを容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1、図2は本発明の除塵システムを採用した除塵設備の一部を示し、1はトンネル状の除塵ブース、2は被除塵物(本実施形態では、上塗り塗装前のトラックボディ)であり、この除塵ブース1内には、コンベア等の搬送装置3(搬送手段の一例)により所定間隔で連続的に搬送される複数の被除塵物2を粉塵拭き取り用のワイプ部材4と粉塵吹き飛ばし用のエアノズル部材5とでもって順次に除塵する複数の除塵ロボット6を設けてある。
【0036】
前記除塵ブース1は、ブース内の全域において下方に向かう空気流が生じるように、通気性を有する構造からなる天井面部1Aのほぼ全面からブース内に清浄空気A1を供給する構成にするとともに、通気性を有する構造からなる床面部1Bのほぼ全面からブース内空気を排出する構成にしてある。
【0037】
また、除塵ブース1内には、ワイプ部材4での第1除塵用動作を除塵ロボット6に実行させるワイプ部材用作業空間7と、このワイプ部材用作業空間7よりも被除塵物2の搬送方向(図1中のX方向)の下手側においてエアノズル部材5での第2除塵用動作を除塵ロボット6に実行させるエアノズル部材用作業空間8とをブース内全域で生じる下向きの空気流によって空間相互の空気流通を抑止する状態で分けて形成してある。そして、この両空間7、8のうち、前記エアノズル部材用作業空間8の天井側には、正負両方のイオン化空気A2を発生して空間内部を除電する空間除電装置9(空間除電手段の一例)を設けてある。
【0038】
前記除塵ロボット6は、図3〜図6に示すように、除塵ブース1の床面部1Bに敷設したレール10上を被除塵物2の搬送方向に沿って移動自在な走行台車11(走行部の一例)を備える基台部12と、この基台部12に動作自在な状態で連結保持される多関節式のアーム13とを主要構成として備える。
【0039】
前記アーム13の先端部には、前記ワイプ部材4を着脱操作可能な状態で装着可能なワイプ部材装着部14と前記エアノズル部材5とを設けてある。
【0040】
前記ワイプ部材4としては、合成繊維の集合体からなる毬藻状のワイプ体15を金属製の棒状体16の先端側に取り付けたものを採用している。当該ワイプ体15は、除塵対象とする粉塵の帯電列とは正負逆位相のものから構成するのが高い静電付着作用を得るのに好ましく、本例では、被除塵物2に主として付着する粉塵(例えば、レーヨンやナイロンや毛等)の帯電列がプラス寄りであることに対し、帯電列がマイナス寄りの素材の一例であるポリプロピレン繊維から構成してある。
【0041】
また、前記エアノズル部材5としては、アーム13の軸心に直交する方向に沿うスリット状の噴出口を備えたものを採用している。当該エアノズル部材5は、アーム13内を通して供給される除塵用空気A3をスリット状噴出口から噴出可能な状態でアーム13に設けてあり、このスリット状噴出口からの噴出空気A3により被除塵物2に付着した粉塵を吹き飛ばし可能に構成されている。
【0042】
前記ワイプ部材装着部14(装着手段の一例)は、作業アーム13の先端部に凹設された装着凹部から構成してある。当該ワイプ部材装着部14の底部は、ワイプ部材4の基端側の被装着部17が嵌り込んだ状態で被装着部17を磁力で保持可能な永久磁石18(磁力を発生する手段の一例)を設けてある。
【0043】
前記永久磁石18は、被除塵物2の位置ズレ等に原因してワイプ部材4で被除塵物2が破損するのを抑止するように、被除塵物2とワイプ部材4との干渉時を基準に設定した一定の外力によりワイプ部材4が除塵ロボット6から脱落する強さの磁力のものを用いている。
【0044】
また、除塵ロボット6には、前記ワイプ部材4の装着がされているか否かを検知する検知部(検知手段の一例)を内蔵してある。当該検知部は、ワイプ部材装着部14の底部の中央部に形成した貫通孔19に対しアーム13の内部から連通させた検知用空気供給路の空気供給圧力の変化(具体的には、空気漏れ)の検出によりワイプ部材14が装着されているか否か検知する。
【0045】
前記基台部12には、ワイプ部材4を内挿した状態でワイプ部材4を清掃する清掃装置20(清掃手段の一例)と、この清掃装置20に対する内挿姿勢でワイプ部材4を保持するワイプ部材保持装置21(ワイプ部材保持部の一例)とを設けてある。
【0046】
前記清掃装置20は、図5に示すように、金属製等の直管状の筒状部材22と、これの一端側に装備された環状の清掃用空気噴出部材23から構成してある。前記筒状部材22の内周面には、筒状部材22に内挿されたワイプ部材4との接触により筒状部材22からの粉塵の離脱を促すための段部を形成する複数の環状の壁部24が形成されている。
【0047】
前記清掃用空気噴出部材23の内周面には、外部から供給された清浄用空気A4を筒状部材22内の他方側に向けてやや収斂する状態で噴出する円環状の空気噴出口25を設けてある。つまり、当該清掃装置20は、空気噴出口25からの噴出空気A4とこの空気噴出に伴うブース内からの誘引空気(つまり、イオン化空気A2を含む空気)とにより形成される空気流によって、内挿状態にあるワイプ部材4に付着した粉塵をイオン化空気A2により静電付着力を中和しながら効率的に除去する。
【0048】
また、筒状部材22の他端側には、筒状部材22内の空気流を除塵ブース1の床面部1Bに向かう方向に案内するエルボ部材26を装着してあり、筒状部材22の内部でワイプ部材4から除去された粉塵が除塵ブース1から即座に排出される構成にしてある。
【0049】
前記ワイプ部材保持装置21は、図6に示すように、除塵ロボット6の基台部12に備えられた基板部27と、この基板部27に装備したエアシリンダ28(駆動手段の一例)によって基板部27の表面に沿って上下動する一対の保持部材29とからなり、ワイプ部材4の被装着部17を保持部材29で挟持する形態でワイプ部材4を保持可能に構成されている。
【0050】
なお、ワイプ部材4の被装着部17の外周面にワイプ部材4の先端側に向かって拡径する環状のテーパー面部17aを形成することに対し、前記保持部材29の先端部にも、ワイプ部材4の先端側に向かって拡径するテーパー面部29aを形成することにより、前記保持部材29の挟持動作(図6(a)の状態から(図6(b)の状態に移る動作)でワイプ部材4の被装着部17を先端側に移動させる形態でワイプ部材の被装着部17とアーム13のワイプ部材装着部14から離脱させる構成にしてある。
【0051】
そして、本システムでは、上述の如く構成された除塵ロボット6に、少なくとも前記ワイプ部材4で被除塵物2を除塵する第1除塵用動作と、第1除塵用動作後のワイプ部材4を被除塵物2の直上域30及び被除塵物2の搬送経路の直上域31から外れた位置(被除塵物2から離れた位置の一例)に設定した清掃域(本例では被除塵物2の搬送経路の側方域、更に詳しくは側方域の下方部分)に移動させる清掃用動作と、前記エアノズル部材5で被除塵物2を除塵する第2除塵用動作とを制御盤からの動作指令により実行させる構成にしてある。
【0052】
具体的には、前記第1除塵動作では、前記除塵ロボット6は、搬送手段3により除塵ブース1内に搬送された被除塵物2に対し、被除塵物2の搬送方向の上手側に位置するワイプ部材用作業空間7において、ワイプ部材4を装着した状態でのアーム動作によりワイプ部材4で被除塵物2の外面部のほぼ全域を拭く動作(図3を参照)を実行する。
【0053】
前記清掃用動作では、前記除塵ロボット6は、第1除塵用動作後の使用済みのワイプ部材4をアーム動作により、運転中の清掃装置20の筒状部材22の内部(清掃部の一例)に差し込み移動させる動作を実行する。そして、ワイプ部材保持装置21の保持部材29の挟持動作の実行によりワイプ部材4がアーム13から離脱してワイプ部材保持装置21に保持される。離脱状態にあるワイプ部材4は、清掃装置20の筒状部材22内で清掃用の空気流に晒される状態で徐々に清掃される。
【0054】
前記第2除塵用動作では、前記除塵ロボット6は、ワイプ部材保持装置21にワイプ部材4を保持させた状態(すなわち、ワイプ部材4が清掃装置20で清掃されている状態)で搬送方向の下手側のエアノズル部材用作業空間8に移動し、エアノズル部材用作業空間8において、ワイプ部材を装着していない状態でのアーム動作により被除塵物2の外面部のうちのある程度平坦な部位(被除塵物2の上面部や前面部や側面部の下方部分)を除く部位(被除塵物2の背面部や側面部の上方部分や板金どうしの継ぎ目等)の粉塵をエアノズル部材5からの空気噴出で吹き飛ばす動作(図4を参照)を実行する。
【0055】
また、第2除塵用動作と第1除塵用動作との間の動作として、前記除塵ロボット6は、アーム動作によりアーム13のワイプ部材装着部14をワイプ部材保持装置21に対する所定位置に移動させるワイプ部材装着用動作を実行し、この動作に続くワイプ部材保持装置21によるワイプ部材4の離脱動作の実行により、ワイプ部材4の保持状態が解除されると同時に永久磁石18の磁力によりワイプ部材4がアーム13の側に引き寄せられてワイプ部材4が除塵ロボット6のワイプ部材装着部14に装着される。
【0056】
そして、除塵ロボット6は、ワイプ部材4が装着されたことを検出すると、ワイプ部材4の清掃の仕上げとして、筒状部材22の内周面に形成した壁部24に除塵作用させるように、筒状部材22の内部で筒状部材22の軸心方向に沿ってワイプ部材4を複数回(本例では、2〜3回)往復動作(図7(a)を参照)させたのち、筒状部材22からワイプ部材4を引き抜いてワイプ部材4を上下方向に素早く振る起毛用動作(図7(b)を参照)を実行して遠心力によりワイプ部材4を起毛させる。その後、ワイプ部材用作業空間7に移動して再び第1除塵用動作を実行する。
【0057】
前記除塵ロボット6による除塵作業を完了した被除塵物2は、搬送手段による搬送により、除塵ブース1における搬送方向の下手側に設置した門の字状の除塵ゲート32を通過して除塵ゲート32による上方及び両側方からの空気噴出で更に除塵されたのち、除塵工程を終えて除塵ブース1から退出移動される。
【0058】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
前述の実施形態では、ワイプ部材4として粉塵を拭き取るタイプのものを例に示したが、粉塵を掃き取るブラシタイプのものであってもよい。
【0059】
前述の実施形態では、第1除塵用動作と清掃用動作と第2除塵用動作を除塵ロボット6に実行させる場合を例に示したが、第2除塵用動作を実行させなくともよい。
【0060】
前述の実施形態では、前記清掃用動作により清掃域に移動されたワイプ部材4を清掃する清掃手段として清掃装置20を例に示したが、例えば、除塵ロボット6のアーム動作(上下方向の素早い振り動作等)による遠心力でワイプ部材4を清掃する構成であってもよい。この場合、除塵ロボット6のア−ム13が清掃手段を構成する。
【0061】
前述の実施形態では、前記清掃用動作により清掃域に移動されたワイプ部材4を清掃する清掃手段を設ける場合を例に示したが、例えば、清掃域に移動されたワイプ部材4を作業員等の人員に清掃させてもよい。
【0062】
前述の実施形態では、第1除塵用動作を1回実行する毎に除塵ロボット6に清掃用動作を実行させる場合を例に示したが、第1除塵用動作を複数回実行する毎、或いは、検出手段等でワイプ部材4の汚れ状態を検出したときに清掃用動作を実行させる構成にしてもよい。
【0063】
前述の実施形態では、空気を噴出するタイプのエアノズル部材5を例に示したが、空気を吸引するタイプのエアノズル部材であってもよい。
【0064】
前述の実施形態では、前記ワイプ部材4を清掃域に保持可能なワイプ部材保持部として、機械的にワイプ部材4を保持可能なワイプ部材保持装置21を例に示したが、ワイプ部材4を単に受け止め支持するものであってもよい。
【0065】
前記装着手段は、前述の実施形態で示した如き磁力により脱着可能に構成したものに限らず、係合部と被係合部からなる係合手段等の形状により脱着可能に構成したもの等であってもよい。
【0066】
前述の実施形態では、前記清掃域を設定する被除塵物2から離れた位置として、搬送経路の側方域の下方部分を例に示したが、搬送経路の下方域や被除塵物2どうしの間の空域又は被除塵物2の上方域等であってもよく、要するに、被除塵物2を除塵する位置から離れた位置(換言すれば、被除塵物2を除塵可能な位置から離脱移動を要する位置)であれば何処なる位置であってもよい。
【0067】
前述の実施形態では、前記ワイプ部材4を前記装着手段で除塵ロボット6に装着するとともに、前記エアノズル部材5を除塵ロボット6に固定状態で設ける構成を例に示したが、例えば、ワイプ部材4を前記装着手段で除塵ロボット6に装着するとともに、エアノズル部材5をワイプ部材4に代えて前記装着手段で除塵ロボット6に装着する構成(略言すれば、ワイプ部材4とエアノズル部材5を交換装着する構成)であってもよい。
【0068】
また、例えば、エアノズル部材5を前記装着手段で除塵ロボット6に装着するとともに、ワイプ部材4を除塵ロボット6に固定状態で設ける構成や、ワイプ部材4とエアノズル部材5の両方を前記装着手段で個別に除塵ロボット6に装着する構成、或いは、ワイプ部材4とエアノズル部材6の両方を除塵ロボット6に固定状態で設ける構成等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】除塵設備の構成図(平面図)
【図2】除塵設備の構成図(側面図)
【図3】除塵ロボットを示す斜視図
【図4】除塵ロボットを示す斜視図
【図5】清掃装置を示す側面断面図
【図6】ワイプ部材保持装置を示す側面断面図
【図7】除塵ロボットの動作を示す説明図
【符号の説明】
【0070】
2 被除塵物
3 搬送手段
4 ワイプ部材
5 エアノズル部材
6 除塵ロボット
7 ワイプ部材用作業空間
8 エアノズル部材用作業空間
9 空間除電手段
12 基台部
13 アーム
14 装着手段(ワイプ部材装着部)
20 清掃手段(清掃装置)
21 ワイプ部材保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵拭き取り用又は粉塵掃き取り用のワイプ部材を備える除塵ロボットを設け、
搬送手段により搬送される被除塵物を前記ワイプ部材で除塵する除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にするとともに、
被除塵物から離れた位置に設定した清掃域で前記ワイプ部材の清掃が実施可能なように、除塵用動作後の前記ワイプ部材を前記清掃域に移動させる清掃用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にしてある除塵システム。
【請求項2】
前記清掃用動作により前記清掃域に移動された前記ワイプ部材を清掃手段で清掃する構成にしてある請求項1記載の除塵システム。
【請求項3】
複数の被除塵物が搬送手段により順次に搬送される構成にするとともに、
除塵対象の被除塵物に対する前記除塵用動作の実行後において次に除塵対象とした被除塵物に対する前記除塵用動作の実行前に前記清掃用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にしてある請求項2記載の除塵システム。
【請求項4】
前記ワイプ部材を装備した状態で又はワイプ部材と粉塵吹き飛ばし用又は粉塵吸引用のエアノズル部材の両部材を装備した状態で或いは両部材を装備した状態からエアノズル部材を離脱した状態で被除塵物をワイプ部材で除塵する除塵用動作と、
前記ワイプ部材に代えて前記エアノズル部材を装備した状態で又はワイプ部材とエアノズル部材の両部材を装備した状態で或いは両部材を装備した状態からワイプ部材を離脱した状態で被除塵物をエアノズル部材で除塵する第2の除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の除塵システム。
【請求項5】
前記除塵ロボットによる着脱操作が可能な状態で前記ワイプ部材を除塵ロボットに装着する装着手段を設けるとともに、粉塵吹き飛ばし用又は粉塵吸引用のエアノズル部材を前記除塵ロボットに更に設け、
前記清掃用動作において前記清掃域で前記ワイプ部材を離脱する動作を前記除塵ロボットに実行させ、且つ、清掃域にあるワイプ部材を前記清掃手段で清掃するのに並行して被除塵物を前記エアノズル部材で除塵する第2の除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させる構成にしてある請求項2又は3記載の除塵システム。
【請求項6】
前記ワイプ部材での除塵用動作を前記除塵ロボットに実行させるワイプ部材用作業空間と、前記エアノズル部材での第2除塵用動作を除塵ロボットに実行させるエアノズル部材用作業空間とを分けて形成し、
イオン化空気の発生により空間内部を除電する空間除電手段を両作業空間のうちで前記エアノズル部材用作業空間だけに設けてある請求項4又は5記載の除塵システム。
【請求項7】
前記除塵ロボットのアームに前記ワイプ部材を除塵ロボットによる着脱操作が可能な状態で装着するとともに、
前記着脱操作により前記アームから離脱した前記ワイプ部材を前記清掃域に保持可能なワイプ部材保持部を、前記アームを動作自在な状態に保持する前記除塵ロボットの基台部又は除塵ロボットの走行部に設けてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の除塵システム。
【請求項8】
前記除塵ロボットによる着脱操作が可能な状態で前記ワイプ部材を除塵ロボットに装着する装着手段を設けてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の除塵システム。
【請求項9】
前記ワイプ部材を前記除塵ロボットに装着した状態でのワイプ部材に対する一定の外力によりワイプ部材が除塵ロボットから脱落する構成にしてある請求項4〜8のいずれか1項に記載の除塵システム。
【請求項10】
前記ワイプ部材を磁力により前記除塵ロボットに装着する構成にしてある請求項9記載の除塵システム。
【請求項11】
前記ワイプ部材が前記除塵ロボットに装着されているか否かを検知する検知手段を設けてある請求項4〜10のいずれか1項に記載の除塵システム。
【請求項12】
粉塵拭き取り用又は粉塵掃き取り用のワイプ部材をアームに備え、
前記ワイプ部材を清掃する清掃装置を、前記アームを動作自在な状態に保持する基台部又は走行部に設けるとともに、
被除塵物を前記ワイプ部材で除塵する除塵用動作を実行可能で、且つ、前記アームの動作により前記ワイプ部材を前記清掃装置の清掃部に移動させる清掃用動作を実行可能な構成にしてある除塵ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−89010(P2010−89010A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261506(P2008−261506)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】