説明

障害物検出装置

【課題】意匠性を低下させることなく、近距離の障害物も検出することができる障害物検出装置を提供する。
【解決手段】障害物検出装置100であって、送受信素子112と、送受信素子112を底面部113の内面に接触させて固定するとともに、底面部113の外面が、バンパ10に形成された貫通孔11を介して外部に露出する筐体111とを含む超音波センサ110と、バンパ10の内面13側に配置され、バンパ10の振動を検出する振動検出部120と、貫通孔11の内壁面と対向する筐体111との間に設けられ、両者間の振動伝達を抑制する振動抑制部130と、送受信素子112と振動検出部120の検出信号のうち、少なくとも送受信素子112の送信振動を受けて底面部113が振動している期間を含む所定期間においては、振動検出部120の検出信号を障害物による反射波を検出するための反射波検出信号とする選択手段140とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に取り付けられ、移動体周辺の障害物を検出する障害物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のバンパ等に取り付けられ、車両周辺の障害物を検出する障害物検出装置として、超音波センサを含むものが採用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示される超音波センサは、ハウジングの底面に貼り付けられた1つの圧電素子(送受信素子)によって超音波を送受信するよう構成されており、底面の外側表面(振動面)がバンパに形成された貫通孔を介して外部に露出するように、バンパに固定される。
【特許文献1】特開2004−159351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に示す超音波センサのように、1つの送受信素子で超音波の送信と障害物からの反射波の受信を行う構成の場合、超音波を送信するために送受信素子を振動させている間は反射波を受信しても区別することができない。また、送信(送受信素子の振動)を停止しても、しばらくの間は振動面が振動する(これを残響という)ので、この残響が生じている間も反射波を区別することができない。すなわち、送信開始から残響がなくなるまでの所定時間を経過してからでないと障害物を検出することができない(換言すれば、近距離の障害物を検出することができない)という問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1に示す構成の超音波センサを2つ用い、一方を送信用の超音波センサ、他方を受信用の超音波センサとすることも考えられる。しかしながら、バンパに形成される貫通孔の数が増加し、意匠性が低下する。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、意匠性を低下させることなく、近距離の障害物も検出することができる障害物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の発明は、移動体に取り付けられ、移動体周辺の障害物を検出する障害物検出装置であって、電気信号を送信振動に変換し、受信振動を電気信号に変換する送受信素子と、送受信素子を収容するものであって、当該送受信素子を底面部の内面に接触させて固定するとともに、底面部の外面が、移動体の被取り付け部に形成された貫通孔を介して外部に露出する筐体と、を含む超音波センサと、被取り付け部の内面側に配置され、被取り付け部の振動を検出する振動検出手段と、貫通孔の内壁面と当該内壁面に対向する超音波センサの筐体との間に設けられ、筐体と被取り付け部との間の振動伝達を抑制する振動抑制部と、送受信素子及び振動検出手段からの検出信号のうち、少なくとも送受信素子の送信振動を受けて底面部が振動している期間を含む所定期間においては、振動検出手段の検出信号を障害物による反射波を検出するための反射波検出信号とする選択手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】
このように本発明によれば、障害物による反射波を検出可能な要素として、超音波センサを構成する送受信素子とは別に、反射波による被取り付け部の振動を検出する振動検出手段を含んでいる。また、少なくとも送受信素子の送信振動を受けて底面部が振動している期間(残響を含む底面部の振動期間)を含む所定期間において、振動検出手段の検出信号を障害物による反射波を検出するための反射波検出信号とする選択手段を含んでいる。さらには、筐体と被取り付け部との間(送受信素子と振動検出手段との間)の振動伝達を抑制する振動抑制部を含んでいる。従って、遠距離だけでなく、近距離の障害物も検出することができる。
【0009】
また、振動検出手段は、被取り付け部に貫通孔を設けることなく、被取り付け部の内面側に配置されている。従って、貫通孔の増加による意匠性の低下を防ぐことができる。
【0010】
選択手段は、上述の所定期間を除く期間において、振動検出手段からの検出信号を反射波検出信号とすることもできる。しかしながら、請求項2に記載のように、所定期間を除く期間においては、送受信素子からの検出信号を反射波検出信号とすると良い。所定期間を除く期間において、超音波センサの筐体底面部は振動していない。従って、被取り付け部の振動を検出する振動検出手段よりも、外面が被取り付け部の外部に露出した底面部の振動を検出する送受信素子からの検出信号のほうが感度的に有利である。
【0011】
振動抑制部として、例えば請求項3に記載のように、貫通孔の内壁面と当該内壁面に対向する超音波センサの筐体との間に設けた隙間を採用することができる。この場合、内壁面と筐体との間の隙間、すなわち空気層によって、筐体と被取り付け部との間を音響学的に分離し、筐体と被取り付け部との間における振動の伝達を抑制することができる。
【0012】
それ以外にも、請求項4に記載のように、貫通孔の内壁面と当該内壁面に対向する超音波センサの筐体との間に隙間を設け、隙間の少なくとも一部に振動吸収材を配置してなる構成を振動抑制部としても良い。この場合、少なくとも振動吸収材によって、筐体と被取り付け部との間における振動の伝達を抑制することができる。例えば請求項5に記載のように、隙間を全て埋めるように振動吸収材を配置した構成を採用しても良いし、請求項6に記載のように、貫通孔の外面側開口部位から深さ方向の途中の範囲までにおいて、対向する筐体との間の隙間を埋めるように振動吸収材を配置した構成を採用しても良い。いずれの場合も、被取り付け部の外面側から見て内壁面と筐体との間の隙間が無いので、意匠性を向上することができる。尚、請求項6に記載の構成のように隙間が残る場合には、この隙間(空気層)の効果によっても、筐体と被取り付け部との間における振動の伝達を抑制することができる。
【0013】
振動検出手段として、例えば請求項7に記載のように、被取り付け部の内面に固定され、被取り付け部の振動を電気信号に変換する受信素子を採用しても良い。この場合、振動検出手段の構成を簡素化することができる。
【0014】
また、振動検出手段として、請求項8に記載のように、超音波センサと同一構成であり、底面部の外面を接触面として被取り付け部の内面に固定された構成を採用しても良い。この場合、超音波センサと振動検出手段が同一であるので、部品点数を削減することができる。
【0015】
また、振動検出手段として、請求項9に記載のように、超音波センサと同一構成であり、音響インピーダンスが被取り付け部と筐体との間の材料からなるスペーサを介して、底面部の外面が被取り付け部の内面に固定された構成を採用しても良い。この場合、被取り付け部から振動検出手段の筐体に振動を直接伝達する構成と比べて、振動の伝達量を増加することができる。
【0016】
さらには、振動検出手段として、請求項10に記載のように、レーザ光を用いて被取り付け部の振動を検出する構成を採用しても良い。この場合、振動検出手段を被取り付け部に対して非接触で配置することもできる。
【0017】
なお、請求項1〜10いずれか1項に記載の発明は、請求項11に記載のように移動体は車両であり、被取り付け部はバンパ又はボディである構成に対して好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る障害物検出装置のうち、超音波センサと振動検出部の被取り付け部への取り付け構造の概略を示す図であり、(a)は断面図、(b)は被取り付け部の外面側から見た平面図である。図2は、障害物との距離が近い場合における超音波センサと振動検出部の検出信号を示す図である。図3は、障害物との距離が遠い場合における超音波センサと振動検出部の検出信号を示す図である。尚、図2,3においては、説明の都合上、駆動信号、送信波波形、反射波波形も並べて図示している。
【0019】
本実施形態に係る障害物検出装置は、移動体としての車両に取り付けられ、車両周辺の障害物を検出するように構成されている。先ず図1を用いて、障害物検出装置の要部について説明する。
【0020】
図1(a),(b)に示すように、障害物検出装置100は、超音波を車両周辺に送信し、障害物による反射波を受信する超音波センサ110と、超音波センサ110が取り付けられた被取り付け部としてのバンパ10の振動を検出する振動検出手段としての振動検出部120と、超音波センサ110と被取り付け部10との間の振動の伝達を抑制する振動抑制部130と、を含んでいる。
【0021】
超音波センサ110は、筐体111と、当該筐体111に収容され、電気信号(駆動信号)を超音波を送信する送信振動に変換する機能と、振動を電気信号に変換する機能を有する送受信素子112と、を少なくとも含むものである。
【0022】
筐体111は、合成樹脂や金属などを構成材料として有底筒状に成形されている。そして、底面部113の内面に送受信素子112が例えば接着固定されている。本実施形態においては、送受信素子112として、PZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスを焼結体とした圧電振動子を採用している。送受信素子112の電極114は、リード115を介して、図示されない処理回路部と電気的に接続されている。本実施形態においては、合成樹脂からなる筐体111の内面に導電材料からなる薄膜が形成されており、一方のリード115は、一方の電極(図示略)が接触する筐体111の内面に接続されている。また、筐体111内には、図示しない吸音材、振動吸収体等が配置されている。
【0023】
このように構成される超音波センサ110は、底面部113の外面がバンパ10に形成された貫通孔11を介してバンパ10の外面12側(車両外部)に露出するように、バンパ10に位置決め固定されている。バンパ10への位置決め固定方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。本実施形態に係る超音波センサ110は、その一例として、一部がバンパ10の内面13に固定されたホルダ116によって位置決め固定されている。具体的には、ホルダ116に超音波センサ110を底面部113からホルダ116を弾性変形させつつ挿入し、ホルダ116に設けた嵌合穴117に筐体111に設けられた突起部118を嵌合させた状態で、底面部113の外面がバンパ10の外面12と略面一となり、ホルダ116によって筐体111の筒部側面が挟持されるように構成されている。
【0024】
振動検出部120は、バンパ10の内面13側に配置が可能であり、超音波センサ110の近傍においてバンパ10の振動を検出することができるものであれば採用が可能である。本実施形態に係る振動検出部120は、超音波センサ110を構成する送受信素子112同様、PZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスを焼結体とした圧電振動子を振動検出素子121として含んでいる。また、バンパ10の内面13に固定するので、飛び石等により傷つく恐れがない。従って、振動検出素子121を、表面に設けられた電極122の一方を介して、バンパ10の内面13に直接固定している。すなわち、簡素な構成を採用している。また、電極122は、それぞれリード123を介して、図示されない処理回路部と電気的に接続されている。
【0025】
振動抑制部130は、貫通孔11の内壁面と当該内壁面に対向する超音波センサ110の筐体111との間に設けられ、筐体111とバンパ10との間における振動伝達を抑制するものであれば採用が可能である。これにより、例えば送受信素子112の送信振動を振動検出素子121が検出し、反射波として誤検出されるのを防ぐことができる。本実施形態においては、上述した超音波センサ110の位置決め固定状態で、貫通孔11の内壁面と当該内壁面に対向する超音波センサ110の筐体111との間に隙間131が設けられ、この隙間131を全て埋めるように振動吸収材132を配置して振動抑制部130を構成している。すなわち、筐体111と貫通孔11の内壁面(バンパ10)とは直接接触しない構成となっている。尚、振動吸収材132としては、例えば樹脂からなる筐体111との音響インピーダンスが大きく異なる材料や、樹脂からなるバンパ10との音響インピーダンスが大きく異なる材料を採用することができる。本実施形態においては、ゴムを採用している。
【0026】
このように本実施形態に係る障害物検出装置100においては、送受信素子112によって送信波(超音波)を車両外部に送信し、障害物による反射波を2つの素子(送受信素子112と振動検出素子121)によって受信可能に構成されている。
【0027】
ここで、図2に示すように、送受信素子112を送信振動させる駆動信号が入力されると、送受信素子112は送信振動し、筐体111の底面部113を介して車両外部に送信波が出力される。駆動信号を停止(すなわち送受信素子112の送信振動を停止)しても、しばらくの間は振動面(底面部113)が振動する。これを残響といい、図2に示すように送信波の出力は駆動信号に対して残響時間分長くなる。
【0028】
従って、障害物との距離が近い場合(例えば50cm以下)、送受信素子112においては、反射波の振動が送信波の振動(送信振動及び残響の少なくとも一方)と重なり、反射波を区別して検出することが困難である。これに対し、振動検出素子121においては、受信機能のみを持たせているので、障害物との距離に関係なく、反射波を検出することができる。
【0029】
また、障害物との距離が長い場合、図3に示すように、送受信素子112においては、反射波の振動が送信波の振動(送信振動及び残響の少なくとも一方)と重なることは無いので、反射波を区別して検出することができる。また、振動検出素子121においても、近距離同様反射波を検出することができる。しかしながら、振動検出素子121は、バンパ10を介して反射波による振動を検出するように構成されており、また障害物との距離も遠いので、検出信号の信号レベルは送受信素子112と比べて若干劣る。
【0030】
そこで、本実施形態に係る障害物検出装置100においては、少なくとも送受信素子112の送信振動(すなわち駆動信号が出力されている間)を受けて筐体111の底面部113(振動面)が振動している期間(すなわち送信振動の期間に残響を含めた期間)を含む所定期間においては、振動検出素子121の検出信号を障害物による反射波を検出するための反射波検出信号とするように構成されている。また、上述の所定期間を除く期間においては、送受信素子112の検出信号を反射波検出信号とするように構成されている。そして、反射波検出信号に基づいて反射波の有無を比較判定し、有の場合には障害物との距離を算出してその結果を報知する。
【0031】
このような動作を実現するための具体的な構成例を図4に示す。図4は、障害物検出装置100の概略構成を示すブロック図である。また、図5は動作を説明するためのフローチャートである。
【0032】
図4に示すように、本実施形態に係る障害物検出装置100は、障害物を検出する構成として、上述した超音波センサ110の送受信素子112及び振動検出部120の振動検出素子121以外にも、ECU(Electric Control Unit)140、駆動信号生成部150、第1検出信号処理部160、スイッチ170、第2検出信号処理部180、及び報知部190を含んでいる。
【0033】
ECU140は、通常のコンピュータであり、図示されないROM、RAM、CPU、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。障害物20を検出する際には、駆動信号生成部150に対して、所定のタイミングで駆動信号を送受信素子112に与え、車両外部に送信波を送信するように指示する。また、反射波を受信可能な2つの素子(送受信素子112と振動検出素子121)の検出信号のうち、送信指示を出してから所定時間以内においては振動検出素子121の検出信号を反射波検出信号として選択し、所定時間を経過後においては送受信素子112の検出信号を反射波検出信号として選択する。そして、予め設定されている閾値と反射波検出信号を比較し、振幅が閾値よりも大きいときには選択された検出信号が障害物20からの反射波であると判定する。そして、検出信号が閾値を超えたときの時間と、送信指示したときの時間との時間差から、障害物20との距離を算出する。そして、その算出結果を報知部190が報知するように報知部190の出力を制御する。このように、本実施形態に係るECU140は、記憶、選択、判定、演算、制御の各機能を有している。すなわち、本実施形態において、ECU140が特許請求範囲に示す選択手段に相当する。
【0034】
駆動信号生成部150は、発振回路151と駆動回路152を含んでいる。発振回路151は、ECU140からの送信指示を受けて、予め設定された所定周波数のパルス信号を駆動回路152に送信する。そして、駆動回路部152は、超音波センサ110に入力される電源電圧の供給を受けて駆動し、発振回路151からのパルス信号(駆動信号)により送受信素子112を駆動させる。これにより、送受信素子112が送信振動し、筐体111の底面部113を介して車両外部に送信波(超音波)が送信される。従って、パルス信号が与えられる間は、送受信素子112が送信振動する。
【0035】
第1検出信号処理部160は、増幅回路161と、振動を電気信号に変換する送受信素子112から出力された信号のうち、所定の周波数域のみを選択的に出力するフィルタ回路162とを含んでいる。従って、増幅され、フィルタリングされた信号が、ECU140に入力される。尚、スイッチ170は、送受信素子112に対する、送信用の処理回路部(駆動信号生成部150)と受信用の処理回路部(第1検出信号処理部)との接続を切り替えるスイッチであり、ECU140からの指示により接続先を切替可能に構成されている。スイッチ170は、ECU140から駆動信号生成部150に対して送信指示が出されている間は、送信用の処理回路部に接続され、送信支持が出されていない間は、受信用の処理回路部に接続される。
【0036】
第2検出信号処理部180は、増幅回路181と、バンパ10の振動を電気信号に変換する振動検出素子121から出力された信号のうち、所定の周波数域のみを選択的に出力するフィルタ回路182とを含んでいる。従って、増幅され、フィルタリングされた信号が、ECU140に入力される。
【0037】
報知部190は、上述したように、反射波検出信号に基づくECU140の演算結果を報知するものである。例えば車両のインパネに取り付けられた表示装置や、音声出力装置等を採用することができる。
【0038】
次に、図5を用いて障害物を検出するための動作を説明する。例えば車両が走行状態(バンパ10がリアバンパの場合、シフト位置がR)において、所定間隔ごとに繰り返し実行される。
【0039】
先ず、ECU140は、駆動信号生成部150の発振回路151に送信を指示する。これにより、上述したように駆動信号生成部150は駆動信号を送受信素子112に出力し、それを受けて送受信素子112が送信振動する。すなわち、筐体111の底面部113を介して車両外部に送信波(超音波)が送信される。また、送信指示と同時に、ECU140は、送信指示からの経過時間をカウントするタイマをスタートさせる(S10)。
【0040】
次に、ECU140は、送信指示からの経過時間が予めメモリに記憶された所定時間(本実施形態においては、送信振動の期間に残響を含めた期間)以内かどうかチェックする(S20)。所定時間以内の場合、ECU140は近距離モードに設定する。すなわち、反射波を検出するための反射波検出信号として、振動検出素子121の検出信号を採用する(S30)。そして、選択された反射波検出信号を予めメモリに記憶された閾値と比較し、信号レベルが閾値を超えているか否かを判定する(S40)。
【0041】
また、所定時間を超える場合、ECU140は遠距離モードに設定する。すなわち、反射波を検出するための反射波検出信号として、送受信素子112の検出信号を採用する(S31)。そして、選択された反射波検出信号を予めメモリに記憶された閾値と比較し、信号レベルが閾値を超えているか否かを判定する(S41)。
【0042】
比較判定ステップであるS40,41において、反射波検出信号が閾値を超えていると判定した場合、ECU140は、閾値を超えたときの時間と、送信指示したときの時間との時間差をタイマから算出し、障害物20との距離を算出する(S50)。尚、S40,41において、反射波検出信号が閾値を超えていないと判定した場合、S20からの動作に戻って順次処理がなされる。
【0043】
S50における距離算出後、ECU140は報知部190に報知指示を出し、報知部190が例えば乗員に対して障害物を検知した旨を報知する。尚、本実施形態においては、障害物までの距離に応じてブザーの鳴動を変化させて乗員に知らせるようにしている。
【0044】
このように本実施形態に係る障害物検出装置100によれば、障害物による反射波を検出可能な要素として、超音波センサ110を構成する送受信素子112とは別に、反射波によるバンパ10の振動を検出する振動検出素子121を含んでいる。また、少なくとも送受信素子112の送信振動を受けて筐体111の底面部113が振動している期間(残響を含む底面部113の振動期間)を含む所定期間において、振動検出素子121の検出信号を障害物による反射波を検出するための反射波検出信号とする選択手段としての機能を有するECU140を含んでいる。従って、遠距離だけでなく、近距離の障害物も検出することができる。
【0045】
また、筐体111とバンパ10との間(送受信素子112と振動検出素子121との間)の振動伝達を抑制する振動抑制部130を設けているので、反射波以外の振動による誤検出を防ぐことができる。尚、バンパ10の外面側から見て、貫通孔11の内壁面と筐体111との間の隙間131を無くすように振動吸収材132を配置しているので、意匠性を向上することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、振動検出部120を、超音波センサ110のようにバンパ10に貫通孔11を設けることなく、バンパ10の内面13側に配置している。従って、貫通孔11の増加による意匠性の低下を防ぐことができる。
【0047】
尚、本実施形態においては、所定期間を除く期間(遠距離モード)において、ECU140が送受信素子112の検出信号を反射波検出信号とする例を示した。バンパ10の振動を検出する振動検出素子121よりも、外面がバンパ10の外部に露出した底面部113の振動を検出する送受信素子112の検出信号のほうが感度的に有利である。しかしながら、振動検出素子121の検出信号を反射波検出信号とすることも可能である。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図6に基づいて説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る障害物検出装置のうち、超音波センサと振動検出部の被取り付け部への取り付け構造の概略を示す図であり、(a)は断面図、(b)は被取り付け部の外面側から見た平面図である。
【0049】
第2実施形態に係る障害物検出装置100は、第1実施形態に示した障害物検出装置100と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0050】
第1実施形態においては、振動抑制部130が、貫通孔11の内壁面と当該内壁面に対向する超音波センサ110の筐体111との間に隙間131が設けられ、この隙間131を全て埋めるように振動吸収材132を配置してなる例を示した。これに対し、本実施形態においては、図6(a),(b)に示すように、貫通孔11の内壁面と当該内壁面に対向する超音波センサ110の筐体111との間に設けた隙間131に振動吸収材132を配置せず、空気層131aとして振動抑制部130を構成している。
【0051】
このように、隙間131を空気層131aとすることによっても、筐体111とバンパ10との間を音響学的に分離し、筐体111とバンパ10との間における振動の伝達を抑制することができる。すなわち、第1実施形態に記載の障害物検出装置100と同様の効果を期待することができる。
【0052】
尚、本実施形態においては、隙間131が全て空気層131aである例を示した。しかしながら、第1実施形態に示した振動吸収材132と組み合わせることで、振動抑制部130を構成しても良い。例えば図7に示すように、バンパ10の平面方向において、隙間131の一部にのみ振動吸収材132を配置し、残りの部分を空気層131aとしても良い。
【0053】
また、バンパ10の厚さ方向(貫通孔11の貫通方向)において、隙間131の一部にのみ振動吸収材132を配置し、残りの部分を空気層131aとしても良い。例えば図8に示すように、貫通方向において、貫通孔11の外面側開口部位から深さ方向の途中の範囲までにおいて、対向する筐体111との間の隙間131を埋めるように振動吸収材132を配置した構成を採用することもできる。この場合、バンパ10の外面12側から見て貫通孔11の内壁面と筐体111との間の隙間131が振動吸収材132によって埋められているので、意匠性を向上することができる。また、空気層131aの効果によっても、筐体111とバンパ10との間における振動の伝達を抑制することができる。尚、図7は変形例を示す被取り付け部の外面側から見た平面図、図8は、変形例を示す断面図である。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、図9に基づいて説明する。図9は、本発明の第3実施形態に係る障害物検出装置100の要部の概略構成を示す断面図である。
【0055】
第3実施形態に係る障害物検出装置100は、第1実施形態に示した障害物検出装置100と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0056】
第1実施形態においては、振動検出部120が、振動検出素子121を電極122を介してバンパ10の内面13に直接固定してなる例を示した。これに対し、本実施形態においては、振動検出部120として、第1実施形態に示した超音波センサ110と同一の構成を採用している。
【0057】
図9に示すように、振動検出部120は、超音波センサ110と同一の構成を有している。振動検出素子121は、筐体124の底面部125の内面に固定されている。また、筐体124は、底面部125の外面がバンパ10の内面13に接触した状態で、第1実施形態と同一構成のホルダ126によって位置決め固定されている。尚、符号127は嵌合穴であり、符号128は突起部である。
【0058】
このように超音波センサ110と振動検出部120を同一構成としても、第1実施形態に記載の障害物検出装置100と同様の効果を期待することができる。また、部品点数を削減することができる。
【0059】
尚、本実施形態においては、筐体124の底面部125の外面をバンパ10の内面13に直接接触させて固定する例を示した。しかしながら、筐体124の底面部125とバンパ10の内面13とが離間した構成とすることも可能である。例えば図10に示すように、筐体124の底面部125とバンパ10の内面13との間に、音響インピーダンスがバンパ10と筐体124との間の材料からなるスペーサ129を配置すると良い。この場合、バンパ10から振動検出部120の筐体124に振動を直接伝達する構成と比べて、振動の伝達量を増加することができる。尚、図10は、変形例を示す断面図である。
【0060】
また、本実施形態に示す構成を第2実施形態に示す構成と組み合わせることも可能である。
【0061】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を、図11に基づいて説明する。図11は、本発明の第4実施形態に係る障害物検出装置100の要部の概略構成を示す断面図である。
【0062】
第4実施形態に係る障害物検出装置100は、第1実施形態に示した障害物検出装置100と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0063】
第1実施形態においては、振動検出部120が、振動検出素子121の圧電効果によってバンパ10の振動を検出する例を示した。これに対し、本実施形態においては、振動検出部120として、レーザ光を用いてバンパ10の振動を検出するように構成した点を特徴とする。
【0064】
例えば図11に示すように、バンパ10の内面側にレーザ変位計201を設置し、当該レーザ変位計201によってバンパ10の振動を検出するようにしても良い。尚、レーザ変位計201から出力されるレーザ光の照射位置を含むバンパ10の内面13の所定範囲に、図11に示すようにレーザ光を反射する反射部材202を設けると、感度を向上することができる。尚、反射部材202は例えば蒸着等によってバンパ10の内面に金属薄膜を形成することにより構成が可能である。また、レーザ変位計201は例えばボディに固定すれば良い。
【0065】
このように振動検出部120として、レーザ光を用いてバンパ10の振動を検出する構成を採用しても、第1実施形態に記載の障害物検出装置100と同様の効果を期待することができる。また、振動検出部120をバンパ10に対して非接触で配置することもできる。また、バンパ10の振動を非接触で検出することもできる。
【0066】
尚、本実施形態に示す構成を第2実施形態に示す構成と組み合わせることも可能である。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0068】
本実施形態においては、被取り付け部が車両のバンパ10である例を示した。しかしながら、移動体を構成する部材であれば特に限定されるものではない。例えば車両であっても、ボディを被取り付け部とすることができる。
【0069】
本実施形態においては、障害物検出装置100として、記憶、選択、判定、演算、制御の各機能を有するECU140を含む例を示した。しかしながら、各機能を別個に構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る障害物検出装置のうち、超音波センサと振動検出部の被取り付け部への取り付け構造の概略を示す図であり、(a)は断面図、(b)は被取り付け部の外面側から見た平面図である。
【図2】障害物との距離が近い場合における超音波センサと振動検出部の検出信号を示す図である。
【図3】障害物との距離が遠い場合における超音波センサと振動検出部の検出信号を示す図である。
【図4】障害物検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る障害物検出装置のうち、超音波センサと振動検出部の被取り付け部への取り付け構造の概略を示す図であり、(a)は断面図、(b)は被取り付け部の外面側から見た平面図である。
【図7】変形例を示す被取り付け部の外面側から見た平面図である。
【図8】変形例を示す断面図である。
【図9】第3実施形態に係る障害物検出装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図10】変形例を示す断面図である。
【図11】第4実施形態に係る障害物検出装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10・・・バンパ(被取り付け部)
11・・・貫通孔
12・・・(バンパ10の)外面
13・・・(バンパ10の)内面
100・・・障害物検出装置
110・・・超音波センサ
111・・・筐体
112・・・送受信素子
113・・・(筐体111の)底面部
120,200・・・振動検出部(振動検出手段)
121・・・振動検出素子
130・・・振動抑制部
131・・・隙間
131a・・・空気層
132・・・振動吸収材
140・・・ECU(選択手段)
201・・・レーザ変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に取り付けられ、前記移動体周辺の障害物を検出する障害物検出装置であって、
電気信号を送信振動に変換し、受信振動を電気信号に変換する送受信素子と、前記送受信素子を収容するものであって、当該送受信素子を底面部の内面に接触させて固定するとともに、前記底面部の外面が、前記移動体の被取り付け部に形成された貫通孔を介して外部に露出する筐体と、を含む超音波センサと、
前記被取り付け部の内面側に配置され、前記被取り付け部の振動を検出する振動検出手段と、
前記貫通孔の内壁面と当該内壁面に対向する前記超音波センサの筐体との間に設けられ、前記筐体と前記被取り付け部との間の振動伝達を抑制する振動抑制部と、
前記送受信素子及び前記振動検出手段からの検出信号のうち、少なくとも前記送受信素子の送信振動を受けて前記底面部が振動している期間を含む所定期間においては、前記振動検出手段の検出信号を前記障害物による反射波を検出するための反射波検出信号とする選択手段と、を含むことを特徴とする障害物検出装置。
【請求項2】
前記選択手段は、前記所定期間を除く期間において、前記送受信素子からの検出信号を前記反射波検出信号とすることを特徴とする請求項1に記載の障害物検出装置。
【請求項3】
前記振動抑制部は、前記貫通孔の内壁面と当該内壁面に対向する前記超音波センサの筐体との間に設けられた隙間であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の障害物検出装置。
【請求項4】
前記貫通孔の内壁面と当該内壁面に対向する前記超音波センサの筐体との間に隙間が設けられ、
前記振動抑制部は、前記隙間の少なくとも一部に振動吸収材を配置してなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の障害物検出装置。
【請求項5】
前記振動吸収材は、前記隙間を全て埋めるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の障害物検出装置。
【請求項6】
前記振動吸収材は、前記貫通孔の外面側開口部位から深さ方向の途中の範囲までにおいて、対向する前記筐体との間の隙間を埋めるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の障害物検出装置。
【請求項7】
前記振動検出手段は、前記被取り付け部の内面に固定され、前記被取り付け部の振動を電気信号に変換する受信素子であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の障害物検出装置。
【請求項8】
前記振動検出手段は、前記超音波センサと同一構成であり、底面部の外面を接触面として前記被取り付け部の内面に固定されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の障害物検出装置。
【請求項9】
前記振動検出手段は、前記超音波センサと同一構成であり、音響インピーダンスが前記被取り付け部と前記筐体との間の材料からなるスペーサを介して、底面部の外面が前記被取り付け部の内面に固定されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の障害物検出装置。
【請求項10】
前記振動検出手段は、レーザ光を用いて前記被取り付け部の振動を検出することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の障害物検出装置。
【請求項11】
前記移動体は車両であり、前記被取り付け部はバンパ又はボディであることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−212349(P2007−212349A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34176(P2006−34176)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】