説明

雨水貯留槽用のブロック部材

【課題】「容リ材」廃プラスチックを用いた場合であっても、強度を確保することができる雨水貯留槽用のブロック部材を提供する。
【解決手段】ブロック部材1は、ベース部2から上方に突出した筒状の周壁30を有する脚部32を有する。この脚部32の周壁30を部分的に肉厚に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水や土壌流出などを防ぐ雨水貯留槽に用いられるブロック部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1〜6に記載されているこの種のブロック部材は、ポリプロピレンなどの合成樹脂から成形され、縦横及び上下に連結されて地中に埋められて使用される。このような使用状態のために、ブロック部材には、水平方向及び鉛直方向に対する圧縮強度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−309658号公報
【特許文献2】特開2006−200356号公報
【特許文献3】特開2002−309658号公報
【特許文献4】特開平11−222886号公報
【特許文献5】特開2007−16533号公報
【特許文献6】特開2008−157026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、容器包装リサイクル法の施行を受け、家庭から排出されたプラスチック系の容器包装などが市町村にて分別収集され、業者にて、利用可能な廃プラスチックであるポリプロピレンとポリエチレンを選別し、破砕し、洗浄するなどしてペレットを製造し、このペレットから、プラスチック製品の代替製品を成形することが試みられている。
【0005】
しかし、廃プラスチックから不要なプラスチック樹脂、木くず、ガラス、鉄くず、紙くずといった不純物を取り除くには限界があり、ペレットの材料には複数の合成樹脂及びこれらの不純物が混在してしまうのが現状となっている。このようなペレットから上記のブロック部材を成形する場合、従来のように一つの合成樹脂(ポリプロピレン)からブロック部材を形成する場合に比べて、ブロック部材の強度が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ポリプロピレン及びポリエチレンを含む複数の合成樹脂からなる複層フィルム素材を用いた容器包装プラスチック素材、所謂「容リ材」と言われる廃プラスチックを用いた場合であっても、強度を確保することができるブロック部材を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明のブロック部材は、フィルム系のポリプロピレン及びポリエチレンを主成分として含む廃プラスチックから成形され、雨水貯留槽に用いられるものにおいて、ベース部と、ベース部から上方に突出した筒状の周壁を有する脚部と、を有し、脚部の周壁は、部分的に肉厚に形成されたものである。
【0008】
本発明によれば、脚部に肉厚の部分を形成しているので、構造上簡易に脚部の圧縮強度を向上することができる。また、その肉厚部分を部分的なものとすることで、脚部全体(あるいはベース部及び脚部の全体)の厚みを均一にする場合に比べて、材料コストの低減及び軽量化に配慮しながら、圧縮強度を確保することができる。したがって、フィルム系のポリプロピレン及びポリエチレンをベースとした複合素材を原料とした場合、すなわち一般に強度がでないと言われる「容リ材」を用いた場合であっても、強度を確保したブロック部材を提供することができる。
【0009】
好ましくは、脚部の周壁は、その高さ方向の途中から上端にかけて徐々に肉厚に形成されるとよい。より好ましくは、脚部は、周壁の上端に連なる頂壁を有しており、頂壁は、周壁の上端部と同程度の肉厚に形成されるとよい。このような構成とすることで、ベース部から遠い脚部の上側部分について圧縮破壊強度を向上することができる。
【0010】
また、本発明のブロック部材は、上記の廃プラスチック(「容リ材」)に相溶化剤を添加したものから成形されるとよい。こうすることで、当該廃プラスチック(「容リ材」)の強度等の物理特性が改善され、材質上もブロック部材の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るブロック部材の底面図である。
【図2】図1に示すA−A線で切断したブロック部材の断面図である。
【図3】図1に示すブロック部材の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るブロック部材を説明する。
図1〜3に示すように、ブロック部材1は、ベース部2と、ベース部2から上方に突出した4つの脚部3と、で一体に形成されている。脚部3の数及び位置は任意であり、例えば一つの場合にはベース部2の中央から脚部3を突設させてもよい。
【0013】
ベース部2は、平面視方形の平板部10と、平板部10の外周に沿って枠上に立ち上がる縁部11と、を有している。平板部10は、中央に比較的大きな四つの透孔12を有するほか、周縁部など他の部位にも透孔14を有している。平板部10の下面16は、平坦面で形成されている一方、平板部10の上面18には複数のリブ20が上方に突出形成されている。リブ20は、縁部11に連接され、ブロック部材1の強度を高めている。なお、ベース部2の形状は適宜設計変更することができ、例えば平板部10を円形などにすることもできる。
【0014】
脚部3は、筒状の周壁30と、周壁30の上端を閉塞する頂壁32と、で構成されている。周壁30は、平板部10の上面18から上方に突出しており、上方に向かって漸次小径となるようにテーパ状に形成されている。周壁30の横断面は、円形、楕円形、多角形など任意に形成することができるが、本実施形態の場合には、曲率中心が脚部3の内部と外部とで交互に位置するように複数の曲面を線対称に連ねて形成されている。なお、周壁30には、孔などの貫通部は形成されていない。一方、平坦な頂壁32には、4つの透孔34が形成されていると共に、透孔34の外側に一対の係合突起36、36と一対の係合孔38、38とが形成されている。
【0015】
特に図2に示すように、脚部3の周壁30は、製品強度を増すために、部分的に肉厚に形成されている。具体的には、周壁30の上半部40は下半部42よりも肉厚に形成されており、しかも、周壁30の上半部40は、頂壁32にかけて徐々に肉厚となるように形成されている。また、頂壁32も周壁30の上端部と同程度の肉厚で形成されている。一例を挙げると、平板部10及び周壁30の下半部42の肉厚は5mmで同じであるのに対し、周壁30の上半部40の上端部及び頂壁30の肉厚は7〜8mmとなっている。なお、脚部3の上端側の圧縮破壊強度を高めるためには、周壁30と頂壁32とを連ねる円弧部分の曲率を大きくすることが好ましい。また、他の実施態様では、周壁30の下半部42を部分的に肉厚にしたり、あるいは、頂壁32を肉厚に形成しないことも可能であるが、上記のように構成した方が強度を向上できる。
【0016】
以上のように構成されたブロック部材1は、二つが互いに上下方向で反転された態様で、複数が上下に積み重ねられる。詳述するに、積層状態では、上下方向に連続する二つのブロック部材1,1は、脚部3、3同士が突き合わされて、一方のブロック部材1の係合突起36が他方のブロック部材1の係合孔38に係合することで結合される。また、別の連続する二つのブロック部材1,1では、ベース部10、10の下面16,16同士が突き合わされる。このとき、それぞれのベース部10、10に形成された係合突起と係合孔(いずれも図示省略)との係合により互いに結合される。最終的に、複数のブロック部材1は、縦方向及び横方向に機械的に連結される(又はベース部2の縁部11同士を突き当てられる)ことで、上下左右前後に連結されて組立てられる。
【0017】
ブロック部材1は、フィルム系のポリプロピレン及びポリエチレンを主成分として含む「容リ材」廃プラスチックを主原料として、低圧射出成形法により成形される。通常国内で成形されている手法は、高圧射出成形法であるが、流動性の低いフィルム系の容器包装素材は、適していない。そのため、低圧射出成形法を用いる。廃プラスチックとは、プラスチックを主成分とするリサイクルに供される廃棄物であり、使用後廃棄された各種のプラスチック製品とその製造過程で発生したくずなどの不純物を含むものである。本実施形態に係る「容リ材」廃プラスチックとは、家庭から排出されたものであり、フィルム系のポリプロピレン及びポリエチレンといったオレフィンプラスチック(所謂ミックスオレフィン)を主成分とし、副成分としてこのプラスチックとは異なる不要なプラスチック、木くず、ガラス、鉄くず及び紙くずといった不純物を含むものである。
【0018】
「容リ材」廃プラスチックが容器リサイクル法に基づき回収されてブロック部材1が製造されるまでの一連の工程を簡単に説明する。先ず、市町村などから提供される一般廃棄物である容器包装物である廃プラスチックから利用可能なポリエチレンとポリプロピレンを選別し、破砕、洗浄、比重分離を行い、加熱溶融し、0.1mm以下のステンレス製のフィルターにより、異物を除去した粒状のプラスチック原料を製造する。次に、このプラスチック原料に相溶化剤(添加剤)などを混練してペレットを製造し、このペレットを成形加工する。これにより、ブロック部材1が成形される。
【0019】
ここで、相溶化剤は、例えば、反応性エチレンコポリマーなどを用いることでプラスチック原料の強度等の物理特性を改善することができ、その中でも、マリコンを用いることが好ましい。また、相溶化剤とプラスチック原料との配合割合は、1:100〜5:100の範囲であることが好ましく、その中でも3:100であることが好ましい。
【0020】
以上説明した本実施形態によれば、強度を確保し難い「容リ材」廃プラスチックを用いてブロック部材1を成形しても、脚部3に肉厚の部分(上半部40及び頂壁32)を形成しているので、構造上簡易に脚部3の圧縮強度を向上することができる。また、肉厚の部分が脚部3の全体にわたって均一に形成されているのではなく、脚部3に部分的に形成されているので、圧縮強度を確保しつつも、材料コストを低減することができる。加えて、軽量化も図ることができるので、ブロック部材1の運搬効率なども向上するといったメリットがある。
【符号の説明】
【0021】
1:ブロック部材、 2:ベース部、 3:脚部、 30:周壁、 32:頂壁、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム系のポリプロピレン及びポリエチレンを主成分として含む廃プラスチックから成形され、雨水貯留槽に用いられるブロック部材において、
ベース部と、
当該ベース部から上方に突出した筒状の周壁を有する脚部と、を有し、
前記脚部の周壁は、部分的に肉厚に形成されている、ブロック部材。
【請求項2】
前記周壁は、その高さ方向の途中から上端にかけて徐々に肉厚となるように形成されている、請求項1に記載のブロック部材。
【請求項3】
前記脚部は、前記周壁の上端に連なる頂壁を有しており、
前記頂壁は、前記周壁の上端部と同程度の肉厚に形成されている、請求項2に記載のブロック部材。
【請求項4】
当該ブロック部材は、前記廃プラスチックに相溶化剤を添加したものから成形されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のブロック部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−226261(P2011−226261A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125189(P2011−125189)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【分割の表示】特願2009−57900(P2009−57900)の分割
【原出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(505209511)秋田エコプラッシュ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】