説明

電力供給システム

【課題】ナビゲーション装置を使用することにより車載バッテリの電力が消費されることを抑制し、車両の航続距離を延ばすことを可能とする電力供給システムを提供する。
【解決手段】車両用蓄電装置Bvとは別にナビゲーション装置Nvに対して電力供給を行うナビゲーション用蓄電装置Bnを備えるとともに、ナビゲーション装置Nvへの電力供給状態を制御する制御装置10を備え、ナビゲーション装置Nvは、回転電機MG1,MG2で発電した電力及び前記車両用蓄電装置Bvからの電力の一方又は双方が供給される車両側電力供給状態と、ナビゲーション用蓄電装置Bnからの電力が供給されるナビゲーション側電力供給状態とを切り替え可能とされ、制御装置10が、回転電機の駆動力による車両の走行中には所定の車両側電力供給条件を満たす場合に車両側電力供給状態を選択し、車両側電力供給条件を満たさない場合にナビゲーション側電力供給状態を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも回転電機を駆動力源として備えるとともに、前記回転電機への電力の供給及び前記回転電機で発電した電力の貯蔵を行う車両用蓄電装置を備えた車両に搭載され、当該車両に搭載されたナビゲーション装置への電力供給を行う電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや環境問題への配慮の観点から、駆動力源として回転電機を用いる電動車両や、駆動力源としてエンジン及び回転電機を併用するハイブリッド車両等が注目されている。これらの車両では、バッテリの性能やコスト等の制約により、バッテリの蓄電量に限界があり、そのために長い航続距離を確保することが困難であるという課題がある。そのため、バッテリの電力消費を抑え、バッテリに貯蔵される電力によって回転電機を駆動して走行する場合における航続距離を少しでも延ばすことが重要な課題となっている。この課題に対し、例えば、下記の特許文献1に記載されるような装置が提案されている。
【0003】
すなわち、この特許文献1に記載された装置は、バッテリに貯蔵される電力によって駆動される回転電機を駆動力源とし、ナビゲーション装置を備える電動車両となっている。この電動車両に搭載されるナビゲーション装置は、設定された目的地までのルート検索を行い、利用者にその時点でバッテリーに貯蔵されている電力量によってその目的地まで走行することが可能か否かを通知すると共に、その目的地に至るバッテリー消費量の最も少ないルートを案内する構成を備えている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−061247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、ナビゲーション装置自体が車載バッテリに貯蔵された電力を使用して動作するものであるため、ナビゲーション装置を利用することによっても車両の航続距離が減少するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ナビゲーション装置を使用することにより車載バッテリの電力が消費されることを抑制し、それによって車両の航続距離を延ばすことを可能とする電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る少なくとも回転電機を駆動力源として備えるとともに、前記回転電機への電力の供給及び前記回転電機で発電した電力の貯蔵を行う車両用蓄電装置を備えた車両に搭載され、当該車両に搭載されたナビゲーション装置への電力供給を行う電力供給システムの特徴構成は、車両用蓄電装置とは別に、前記ナビゲーション装置に対して電力供給を行うナビゲーション用蓄電装置を備えるとともに、前記ナビゲーション装置への電力供給状態を制御する制御装置を備え、前記ナビゲーション装置は、前記回転電機で発電した電力及び前記車両用蓄電装置からの電力の一方又は双方が供給される車両側電力供給状態と、前記ナビゲーション用蓄電装置からの電力が供給されるナビゲーション側電力供給状態とを切り替え可能とされ、前記制御装置が、前記回転電機の駆動力による車両の走行中には、前記車両用蓄電装置の状態に関する所定の車両側電力供給条件を満たす場合に前記車両側電力供給状態を選択し、前記車両側電力供給条件を満たさない場合に前記ナビゲーション側電力供給状態を選択する点にある。
【0008】
上記電力供給システムの特徴構成によれば、車両用蓄電装置の状態に関する所定の車両側電力供給条件を満たす場合以外の通常の走行状態では、車両用蓄電装置とは別に備えられたナビゲーション用蓄電装置からナビゲーション装置に対して電力供給を行う。これにより、車両用蓄電装置に貯蔵される電力がナビゲーション装置によって消費されることを抑制することができる。また、車両用蓄電装置に充電される電力に余裕がある状態を規定するように車両側電力供給条件を設定することにより、車両用蓄電装置に充電される電力に余裕がある場合には、当該余剰電力をナビゲーション装置に供給することができる。よって、車両用蓄電装置の電力を使用してナビゲーション装置を動作させるという状況が生じることを抑制することができる。従って、いずれの場合にもナビゲーション装置を動作せるために車両用蓄電装置の電力が消費されることが抑制され、車両の航続距離を延ばすことができる。
【0009】
ここで、前記車両用蓄電装置の蓄電量を検出する車両用蓄電量検出手段と、前記車両が減速中であることを検出する減速状態検出手段とを備え、前記車両側電力供給条件は、前記車両用蓄電量検出手段により前記車両用蓄電装置の蓄電量が所定の第一閾値以上であることが検出され、且つ、前記減速状態検出手段により前記車両が減速中であることが検出されたことであると好適である。
【0010】
ハイブリッド車両や電動車両等の駆動力源として回転電機を備える車両では、一般に車両が減速中には回転電機により回生制動が行なわれ、車両用蓄電装置を充電することができる状態となる。このとき、車両用蓄電装置の蓄電量が所定の第一閾値以上であり比較的高い蓄電状態にある場合には、車両用蓄電装置に充電される電力に余裕がある状態といえる。上記の構成によれば、車両用蓄電装置に充電される電力に余裕がある状態を規定する車両側電力供給条件を、適切に設定することができる。
【0011】
また、前記車両側電力供給条件を満たす場合に選択される前記車両側電力供給状態は、前記車両の減速の際の慣性力を利用して前記回転電機に発電させることにより得られた電力が、前記ナビゲーション装置へ供給される状態である構成とすると好適である。
【0012】
この構成によれば、車両の減速時における回生制動により回転電機で発電した電力がナビゲーション装置へ供給される。従って、ナビゲーション装置を動作させるために車両用蓄電装置の電力を消費することを抑制できる。
【0013】
また、前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量を検出するナビゲーション用蓄電量検出手段を備え、前記制御装置は、前記車両側電力供給条件を満たさない場合であっても、前記ナビゲーション用蓄電量検出手段により前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第二閾値未満であることが検出された場合には、前記車両側電力供給状態を選択する構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第二閾値未満であり、比較的低い蓄電状態にあることが検出された場合には、車両側電力供給条件を満たさない場合であっても、回転電機で発電した電力及び車両用蓄電装置からの電力の一方又は双方がナビゲーション用蓄電装置に供給されることとなり、ナビゲーション装置への電力の供給を継続して行うことができる。
【0015】
また、前記車両側電力供給条件を満たさない場合であって、前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が第二閾値未満であることが検出された場合に選択される前記車両側電力供給状態は、前記車両用蓄電装置に貯蔵された電力が前記ナビゲーション装置へ供給される状態である構成とすると好適である。
【0016】
この構成によれば、ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が第二閾値未満であることが検出された場合には、車両用蓄電装置に貯蔵された電力が前記ナビゲーション装置へ供給される。従って、車両の走行状態によらずに、ナビゲーション装置への電力の供給を安定して行うことができる。
【0017】
また、前記車両が駆動力源としてエンジンを更に備える場合であって、前記エンジンの動作状態を検出するエンジン動作状態検出手段を備え、前記制御装置は、前記エンジン動作状態検出手段によりエンジンが動作中であることが検出された場合には、前記車両側電力供給条件に関係なく、前記車両側電力供給状態を選択する構成とすると好適である。
【0018】
駆動力源としてのエンジンは常に大きなトルクを出力可能であるため、当該トルクによって回転電機が発電している状態では、車両用蓄電装置に充電される電力に余裕がある状態となっている場合が多い。そこで上記の構成を採用して、エンジンが動作中には車両の状況によらずに車両側電力供給状態を選択して、回転電機により発電された電力を利用してナビゲーション装置を動作させることで、発電した電力を有効に利用することができるとともに、ナビゲーション装置を動作させるために車両用蓄電装置の電力を消費することを抑制することができる。
【0019】
また、前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量を検出するナビゲーション用蓄電量検出手段を備え、前記制御装置は、前記ナビゲーション用蓄電量検出手段により前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第三閾値未満であることが検出された場合には、前記車両側電力供給状態を選択するとともに、前記ナビゲーション用蓄電装置へ前記回転電機で発電した電力及び前記車両用蓄電装置からの電力の一方又は双方を供給して充電を行う構成とすると好適である。
【0020】
この構成によれば、エンジンの回転により出力されるトルクによって回転電機が発電した電力を利用してナビゲーション装置を動作させると同時に、ナビゲーション装置用蓄電装置の蓄電量が所定の第三閾値以上である比較的高い蓄電状態にあることが検出された場合を除き、ナビゲーション用蓄電装置を充電してナビゲーション用蓄電装置の蓄電量を増加させることができる。
【0021】
なお、上記のとおり、前記エンジン動作状態検出手段によりエンジンが動作中であることが検出された場合に選択される、好適な前記車両側電力供給状態は、前記エンジンの駆動力を利用して前記回転電機に発電させることにより得られた電力が、前記ナビゲーション装置へ供給される状態となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.第一の実施形態
本発明の第一の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る電力供給システムのブロック図である。本実施形態では、本発明に係る電力供給システムを、図2に示すハイブリッド駆動装置Hを備えた車両に適用した場合を例として説明する。このハイブリッド駆動装置Hは、図2に示すように、駆動力源としてエンジンE及び2個の回転電機MG1、MG2を備えるとともに、エンジンEの出力を、第一回転電機MG1側と、車輪W及び第二回転電機MG2側とに分配する動力分配用の遊星歯車装置PGを備えた、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド駆動装置として構成されている。
【0023】
電力供給システムは、第一回転電機MG1に接続されて電流の直流交流変換を行う第一インバータI1と、第二回転電機MG2に接続されて電流の直流交流変換を行う第二インバータI2と、第一回転電機MG1又は第二回転電機MG2にて発電した電力の貯蔵を行う車両用バッテリBvとを備えるとともに、ナビゲーション装置Nvへの電力の供給を行うナビゲーション用バッテリBnを備えて構成されている。そして、車両用バッテリBvの蓄電量を検出する車両用バッテリ状態検出装置Dv、ナビゲーション用バッテリBnの蓄電量を検出するナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dn、エンジンEの動作状態を検出するエンジン動作状態検出装置De、車両が減速状態であることを検出する加速度検出装置Dd、及び、ナビゲーション装置Nvへの電力の供給状態を切換える電力供給状態切換装置30が備えられている。尚、本実施形態では、車両用バッテリBvが本発明における車両用蓄電装置に相当し、ナビゲーション用バッテリBnが本発明におけるナビゲーション用蓄電装置に相当する。
【0024】
制御装置10は、車両用蓄電量判別部11、ナビゲーション用蓄電量判別部12、エンジン動作状態判別部13、減速状態判別部14、及び、電力供給状態制御部15を備えている。そして、前記検出手段夫々から入力される検出情報に基づいて、第一インバータI1,第二インバータI2、及び電力供給状態切換装置30を制御し、回転電機で発電した電力及び車両用バッテリBvからの電力の一方又は双方が供給される車両側電力供給状態と、ナビゲーション用バッテリBnからの電力が供給されるナビゲーション側電力供給状態とを切り替えるように構成されている。この際、制御装置10は、回転電機の駆動力による車両の走行中においては、後述する所定の車両側電力供給条件を満たす場合には車両側電力供給状態を選択し、車両側電力供給条件を満たさない場合にはナビゲーション側電力供給状態を選択するように構成されている。尚、図1において、破線は電力の伝達経路を示し、実線矢印は各種情報の伝達経路を示している。
【0025】
1−1. ハイブリッド駆動装置の構成
まず、図1及び図2に基づいて、ハイブリッド駆動装置Hの構成について説明する。このハイブリッド駆動装置Hでは、エンジンEに接続された入力軸I、第一回転電機MG1、及び動力分配用の遊星歯車装置PGが同軸上に配置されている。また、第二回転電機MG2、カウンタギヤ機構C、及び出力用差動歯車装置Dが、夫々入力軸Iと平行な軸上に配置されている。遊星歯車装置PGは、入力軸Iと同軸上に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、遊星歯車装置PGは、複数のピニオンギヤを支持するキャリヤcaと、ピニオンギヤに夫々噛み合うサンギヤs、及びリングギヤrを有している。サンギヤsは、第一回転電機MG1のロータRo1と一体回転するように接続されている。キャリヤcaは、入力軸Iと一体回転するように接続されている。リングギヤrは、カウンタドライブギヤOと一体回転するように接続されている。このカウンタドライブギヤOは、カウンタギヤ機構Cの第二ギヤc2と噛み合っており、遊星歯車装置PGのリングギヤrの回転が、このカウンタギヤ機構Cに伝達される構成となっている。
【0026】
カウンタギヤ機構Cの回転軸(カウンタ軸)には、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2側から順に、第一ギヤc1、第二ギヤc2、及び第三ギヤc3が固定されている。ここで、第三ギヤc3は、出力用差動歯車装置Dの差動入力ギヤdrに噛み合っており、カウンタギヤ機構Cの回転が出力用差動歯車装置Dを介して車輪Wに伝達される構成となっている。出力用差動歯車装置Dは、一般的に用いられるものであり、例えば互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構を有して構成されている。第二回転電機MG2のロータRo2と一体回転するように接続された第二回転電機出力ギヤd2は、カウンタギヤ機構Cに固定された第一ギヤc1と噛み合っており、第二回転電機MG2の回転がカウンタギヤ機構Cに伝達される構成となっている。
【0027】
第二回転電機の駆動力のみによる電動走行(EV走行)時は、第二回転電機MG2は、車両側からの要求駆動力に応じたトルクを出力する。すなわち、第二回転電機MG2は、車両を加速又は巡航させる方向の駆動力が要求されている場合には、走行抵抗に相当する負方向の走行トルクに抗して車両を前進させるべく、正方向に回転しながら力行して正方向のトルクを出力する。一方、第二回転電機MG2は、車両を減速させる方向の駆動力が要求されている場合には、車両の慣性力に相当する正方向の走行トルクに抗して車両を減速させるべく、正方向に回転しながら回生(発電)して負方向のトルクを出力する。
【0028】
また、エンジンEの駆動力を用いたハイブリッド走行時は、遊星歯車装置PGは、エンジンEの駆動力をカウンタドライブギヤOと第一回転電機MG1とに分配する動作を行う。カウンタドライブギヤOに伝達された駆動力は、カウンタギヤ機構C及び出力用差動歯車装置Dを介して車輪Wへ伝達される。一方、第一回転電機MG1は、エンジンEにより回転させられる方向とは反対方向の駆動力を出力しながら発電することにより、エンジンEの駆動力に対する反力をサンギヤsに伝達する。すなわち、第一回転電機MG1は、エンジン駆動力の反力を支持する反力受けとして機能し、それによりエンジン駆動力がカウンタドライブギヤO側のリングギヤrに分配される。この際、エンジンEの回転速度に対して、第一回転電機MG1の回転速度を制御することにより、カウンタドライブギヤO及び第二回転電機MG2の回転速度が決定される。これにより、エンジンEの回転を無段階に変速して車輪Wへ伝達する電気的無段変速が実現される。
【0029】
また、このハイブリッド駆動装置Hでは、図1に示すように、第一回転電機MG1を駆動制御するための第一インバータI1が、第一回転電機MG1のステータSt1のコイルに電気的に接続されている。また、第二回転電機MG2を駆動制御するための第二インバータI2が、第二回転電機MG2のステータSt2のコイルに電気的に接続されている。第一インバータI1と第二インバータI2とは、互いに電気的に接続されるとともに、図1に示す車両用バッテリBv、ナビゲーション用バッテリBn及びナビゲーション装置Nvに電気的に接続されている。そして、第一インバータI1は、車両用バッテリBvから供給される直流電力、又は第二回転電機MG2で発電されて第二インバータI2で直流に変換されて供給される直流電力を、交流電力に変換して第一回転電機MG1に供給する。また、第一インバータI1は、第一回転電機MG1で発電された電力を交流から直流に変換して車両用バッテリBv、ナビゲーション用バッテリBn、ナビゲーション装置Nv、及び第二インバータI2の一又は二以上に供給する。同様に、第二インバータI2は、車両用バッテリBvから供給される直流電力、又は第一モータ・ジェネレータMG1で発電されて第一インバータI1で直流に変換されて供給される直流電力を、交流電力に変換して第二モータ・ジェネレータMG2に供給する。また、第二インバータI2は、第二モータ・ジェネレータMG2で発電された電力を交流から直流に変換して、車両用バッテリBv、ナビゲーション用バッテリBn、ナビゲーション装置Nv、及び第一インバータI1の一又は二以上に供給する。
【0030】
1−2.電源供給システムのシステム構成
次に、図1に基づいて電力供給システムのシステム構成について説明する。ナビゲーション装置Nvは、電力供給状態切換装置30を介して、車両用バッテリBv、ナビゲーション用バッテリBn、第一インバータI1、及び第二インバータI2に電気的に接続されている。車両用バッテリBv及びナビゲーション用バッテリBnは、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等で構成される。尚、車両用バッテリBv及びナビゲーション用バッテリBnは、キャパシタ等にて構成してもよい。そして、車両用バッテリBvは、直流電力を第一インバータI1及び第二インバータI2に供給するとともに、第一回転電機MG1又は第二回転電機MG2により発電され、第一インバータI1又は第二インバータI2を介して供給される直流電流により充電される。これによって、車両用バッテリBvは、第一回転電機MG1又は第二回転電機MG2により発電された電力の貯蔵を行う。また、ナビゲーション用バッテリBnは、直流電力をナビゲーション装置Nvに供給するとともに、第一回転電機MG1又は第二回転電機MG2により発電され、第一インバータI1又は第二インバータI2を介して供給される直流電流により充電される。
【0031】
この電源供給システムは、車両用バッテリBvの状態を検出する車両用バッテリ状態検出装置Dvと、ナビゲーション用バッテリBnの状態を検出するナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnと、を備えている。ここでは、車両用バッテリ状態検出装置Dv及びナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnは、車両用バッテリBv及びナビゲーション用バッテリBnの正負極間電圧を検出する電圧センサの他、電流センサや温度センサ等の各種センサを備え、蓄電量としてバッテリ充電量(SOC:state of charge)、使用可能電力等を検出する。そして、車両用バッテリ状態検出装置Dv及びナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnは、車両用バッテリBv及びナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量を検出し、その検出信号をそれぞれ車両用蓄電量判別部11及びナビゲーション用蓄電量判別部12へ出力する。
【0032】
また、この電源供給システムは、エンジンEの動作状態を検出するエンジン動作状態検出装置Deを備えている。エンジン動作状態検出装置Deは、例えば、エンジンEの回転数を検出する回転センサや、エンジンEのシリンダ内への燃料の供給状態(燃料室への噴射状態)を検出するセンサ等を備えて構成されている。そして、エンジン動作状態検出装置Deは、各センサによる検出信号をエンジン動作状態判別部13へ出力する。
【0033】
また、この電源供給システムは、車両の加減速の状態を検出する加速度検出装置Ddを備えている。加速度検出装置Ddは、車両又はナビゲーション装置Nvが備える加速度センサや、車速センサ等を備えて構成されている。そして、加速度検出装置Ddは、各センサによる検出信号を減速状態判別部14へ出力する。
【0034】
また、この電源供給システムは、ナビゲーション装置Nv、車両用バッテリBv、ナビゲーション用バッテリBn、第一インバータI1、及び第二インバータI2の間の電力供給状態を、複数の状態の間で切り換える電力供給状態切換装置30を備えている。電力供給状態切換装置30は、例えばIGBTやMOS−FET等を使用したスイッチング回路として構成され、電力供給状態切換装置30に接続される複数の電力供給経路間の接続を切り替え可能に構成されている。電力供給状態切換装置30における電力供給経路間の切り換えは、電力供給状態制御部15からの制御情報に基づいて行なわれる。詳細については、後述する。
【0035】
制御装置10は、車両用蓄電量判別部11、ナビゲーション用蓄電量判別部12、エンジン動作状態判別部13、減速状態判別部14、及び電力供給状態制御部15を備えて構成されている。そして、前記各判別部11〜14が、車両用バッテリ状態検出装置Dv、ナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dn、エンジン動作状態検出装置De、及び、加速度検出装置Ddの検出信号の入力に基づいて、後述する各種の判別を行う。また、電力供給状態制御部15が、その判別結果に基づいた制御情報を、第一インバータI1、第二インバータI2、及び、電力供給状態切換装置30へ出力する。
【0036】
車両用蓄電量判別部11には、車両用バッテリ状態検出装置Dvからの車両用バッテリBvのバッテリ充電量を表す検出信号が入力される。車両用蓄電量判別部11は、車両用バッテリBvの全容量におけるバッテリ性能維持のために使用が可能な充電量の上限値と下限値との間の領域を使用可能領域とし、当該使用可能領域内での充電量の状態を判別する。本実施形態では、一例として、前記使用可能領域を充電量の大きい方から「高」、「中」、「低」の3つの領域に3等分し、車両用バッテリ状態検出装置Dvによって検出されるバッテリ充電量がその「高」、「中」、「低」のうちのいずれの領域に属するかを判別する。尚、本実施形態では、車両用バッテリ状態検出装置Dvと車両用蓄電量判別部11とが協働して、本発明における車両用蓄電量検出手段を構成する。そして、車両用蓄電量判別部11は、その判別結果の情報を、電力供給状態制御部15へ出力する。尚、本実施形態では、前記車両用バッテリ状態検出装置Dvによって検出されるバッテリ充電量が「高」領域に属する状態が、本発明における車両用蓄電装置の蓄電量が所定の第一閾値以上である状態に相当する。
【0037】
ナビゲーション用蓄電量判別部12には、ナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnからのナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量を表す検出信号が入力される。ナビゲーション用蓄電量判別部12は、ナビゲーション用バッテリBnの全容量におけるバッテリ性能維持のために使用が可能な上限値と下限値との間の領域を使用可能領域とし、当該使用可能領域内での充電量の状態を判別する。本実施形態では、一例として、前記使用可能領域を10等分し、そのうち充電量が最も大きい領域を「最高」、最も小さい領域を「最低」として、ナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnによって検出されるナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量が「最高」、「最低」及びそれ以外のいずれの領域に属するかを判別する。尚、本実施形態では、ナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnとナビゲーション用蓄電量判別部12とが協働して、本発明におけるナビゲーション用蓄電量検出手段を構成する。そして、ナビゲーション用蓄電量判別部12は、その判別結果の情報を、電力供給状態制御部15へ出力する。尚、本実施形態では、ナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnによって検出されるバッテリ充電量が「最低」領域に属する状態が、本発明におけるナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第二閾値未満である状態に相当し、ナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnによって検出されるバッテリ充電量が「最高」以外の領域に属する状態が、本発明におけるナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第三閾値未満である状態に相当する。
【0038】
エンジン動作状態判別部13には、エンジン動作状態検出装置Deによって検出されるエンジンEの動作状態の検出信号が入力される。本実施形態においては、エンジン動作状態判別部13は、エンジン動作状態検出装置Deから入力される検出信号に基づいて、少なくともエンジンEが動作状態か否か、すなわち、エンジンEが動作中か停止中かを判別する。ここで、エンジンEが動作中とは、エンジンEへ燃料が供給されてクランク軸等のエンジン出力軸が回転している状態を表す。尚、本実施形態では、エンジン動作状態検出装置Deとエンジン動作状態判別部13とが協働して、本発明におけるエンジン動作状態検出手段を構成する。そして、エンジン動作状態判別部13は、その判別結果の情報を電力供給状態制御部15へ出力する。
【0039】
減速状態判別部14には、加速度検出装置Ddによって検出される車両の加減速状態の検出信号が入力される。本実施形態においては、減速状態判別部14は、加速度検出装置Ddから入力される検出信号に基づいて、少なくとも車両が減速中か否かを判別する。尚、本実施形態では、加速度検出装置Ddと減速状態判別部14とが協働して、本発明におけるエンジン動作状態検出手段を構成する。そして、減速状態判別部14は、その判別結果の情報を電力供給状態制御部15へ出力する。
【0040】
電力供給状態制御部15には、車両用蓄電量判別部11、ナビゲーション用蓄電量判別部12、エンジン動作状態判別部13、及び減速状態判別部14からの判別結果の情報が入力される。電力供給状態制御部15は、これらの情報に基づいて少なくとも車両用バッテリBvの状態に関する所定の車両側電力供給条件を満たすか否かを判別し、その判別結果に基づいて、ナビゲーション装置Nvへの電力供給状態を切り換えるための制御情報を電力供給状態切換装置30に出力する。電力供給状態制御部15は、それ以外にも、ナビゲーション用バッテリBnの状態やエンジンEの動作状態に関する所定の条件を満たすか否かをも判別し、その判別結果に基づいて、ナビゲーション装置Nvへの電力供給状態を切り換えるための制御情報を電力供給状態切換装置30に出力する。以下では、電力供給状態制御部15による各種の判別条件と、電力供給状態切換装置30により実現される各種の電力供給状態との関係について、詳細に説明する。なお、以下では、原則として車両は電動走行(EV走行)を行なうものとして説明する。
【0041】
図3は、電力供給状態切換装置30に接続されるナビゲーション装置Nv、車両用バッテリBv、ナビゲーション用バッテリBn、第一インバータI1、及び第二インバータI2の間の、複数の電力供給状態を表す模式図である。この図において、破線の接続経路は、それらの機器間では電力が供給されていない状態にあることを表し、実線の接続経路はそれらの機器間で、白抜き矢印の向きに電力が供給されている状態にあることを表している。
【0042】
電力供給状態制御部15は、少なくとも車両用バッテリBvの状態に関する所定の車両側電力供給条件を満たすか否かを判別する。ここで、車両側電力供給条件としては、車両用バッテリBvに充電される電力に余裕がある状態を規定するような条件が設定される。本実施形態においては、車両用バッテリBvのバッテリ充電量が「高」領域に属しており、且つ、車両が減速中であることが、車両側電力供給条件として設定されている。すなわち、車両用蓄電量判別部11により車両用バッテリBvのバッテリ充電量の検出情報が「高」領域に属することが判別され、且つ、減速状態判別部14により車両が減速中であることが判別された場合には、電力供給状態制御部15は車両側電力供給条件が満たされていると判別する。この場合、電力供給状態制御部15は、第二回転電機MG2で発電した電力をナビゲーション装置Nvに供給するように電力供給状態を切り換えるべく、そのような制御情報を電力供給状態切替装置30に出力する。電力供給状態切替装置30は、電力供給状態制御部15からの制御情報に基づいて、図3(a)に示すように、第二インバータI2とナビゲーション装置Nvとの間の電力供給経路を接続する。なお、この状態では、第二回転電機MG2で発電した電力がナビゲーション装置Nvに供給され、車両側電力供給状態が実現される。
【0043】
一方、電力供給状態制御部15は、車両用蓄電量判別部11により車両用バッテリBvのバッテリ充電量の検出情報が「高」領域に属さないことが判別された場合、又は、減速状態判別部14により車両が減速中でないことが判別された場合には、車両側電力供給条件が満たされていないと判別する。この場合、電力供給状態制御部15は、原則としてナビゲーション用バッテリBnの電力をナビゲーション装置Nvに供給するように電力供給状態を切り換えるべく、そのような制御情報を電力供給状態切替装置30に出力する。電力供給状態切替装置30は、電力供給状態制御部15からの制御情報に基づいて、図3(b)に示すように、ナビゲーション用バッテリBnとナビゲーション装置Nvとの間の電力供給経路を接続する。なお、この状態では、ナビゲーション用バッテリBnからの電力がナビゲーション装置Nvに供給され、ナビゲーション側電力供給状態が実現される。
【0044】
ここで、本実施形態においては、電力供給状態制御部15は、車両側電力供給条件が満たされていないと判別された場合には、ナビゲーション用バッテリBnの状態に関する所定の第一例外条件を満たすか否かをも判別するように構成されている。本実施形態においては、ナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量が「最低」領域に属していることが、第一例外条件として設定されている。すなわち、ナビゲーション用蓄電量判別部12によりナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量の検出情報が「最低」領域に属すると判別された場合には、電力供給状態制御部15は第一例外条件が満たされていると判別する。この場合、電力供給状態制御部15は、例外的に車両用バッテリBvの電力をナビゲーション装置Nvに供給するように電力供給状態を切り換えるべく、そのような制御情報を電力供給状態切替装置30に出力する。電力供給状態切替装置30は、電力供給状態制御部15からの制御情報に基づいて、図3(c)に示すように、車両用バッテリBvとナビゲーション装置Nvとの間の電力供給経路を接続する。なお、この状態では、車両用バッテリBvからの電力がナビゲーション装置Nvに供給され、車両側電力供給状態が実現される。
【0045】
また、本実施形態においては、電力供給状態制御部15は、エンジンEの動作状態に関する所定の第二例外条件を満たすか否かをも判別するように構成されている。本実施形態においては、エンジンEが動作中であることが、第二例外条件として設定されている。すなわち、エンジン動作状態判別部13によりエンジンが動作中であると判別された場合には、電力供給状態制御部15は第二例外条件が満たされていると判別する。この場合、上述したようにエンジンEの大きなトルクにより第一回転電機MG1が発電している状態となるので、電力供給状態制御部15は、原則として第一回転電機MG1で発電した電力をナビゲーション装置Nvに供給し、且つ、ナビゲーション装置Nvを動作させてなお余剰する電力をナビゲーション用バッテリBnに供給するように電力供給経路を切り換えるべく、そのような制御情報を電力供給状態切替装置30に出力する。電力供給状態切替装置30は、電力供給状態制御部15からの制御情報に基づいて、図3(d)に示すように、第一インバータI1とナビゲーション装置Nvとの間の電力供給経路、及び、第一インバータI1とナビゲーション用バッテリBnとの間の電力供給経路を接続する。なお、この状態では、第一回転電機MG1で発電した電力がナビゲーション装置Nvに供給され、車両側電力供給状態が実現される。
【0046】
ここで、電力供給状態制御部15は、エンジン動作状態判別部13によりエンジンが動作中であると判別された場合は、ナビゲーション用バッテリBnの状態に関する所定の第三例外条件を満たすか否かをも判別するように構成されている。本実施形態においては、ナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量が「最高」領域に属していることが、第三例外条件として設定されている。すなわち、ナビゲーション用蓄電量判別部12によりナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量の検出情報が「最高」領域に属すると判別された場合には、電力供給状態制御部15は第三例外条件が満たされていると判別する。この場合、電力供給状態制御部15は、例外的に第一回転電機MG1で発電した電力をナビゲーション装置Nvのみに供給するように電力供給経路を切り換えるべく、そのような制御情報を電力供給状態切替装置30に出力する。電力供給状態切替装置30は、電力供給状態制御部15からの制御情報に基づいて、図3(e)に示すように、第一インバータI1とナビゲーション装置Nvとの間の電力供給経路を接続する。なお、この状態では、第一回転電機MG1で発電した電力がナビゲーション装置Nvに供給され、車両側電力供給状態が実現される。
【0047】
1−3.電源供給システムの制御方法
次に、本実施形態における電源供給システムの制御方法を図4のフローチャートに基づいて説明する。以下に説明する制御は、制御装置10の各機能部を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。制御装置10の各機能部がプログラムにより構成される場合には、制御装置10は、上記の各機能部を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0048】
まず、エンジン動作状態判別部13は、エンジンEが動作中であるか否かを判別する(ステップ#1)。エンジンEが動作中ではないと判別された場合には(ステップ#1:No)、次に、車両用蓄電量判別部11は、車両用バッテリBvの蓄電量が「高」領域に属するか否かを判別する(ステップ#2)。車両用バッテリBvの蓄電量が「高」領域に属すると判別された場合には(ステップ#2:Yes)、次に、減速状態判別部14は、車両が減速中か否かを判別する(ステップ#3)。車両が減速中であると判別された場合には(ステップ#3:Yes)、電力供給状態制御部15は、第二回転電機MG2で発電した電力をナビゲーション装置Nvに供給するように制御する制御情報を、電力供給状態切換装置30に出力する。これにより、第二回転電機MG2で発電した電力がナビゲーション装置Nvに供給される(ステップ#4)。尚、ステップ#2及び#3の条件、すなわち、エンジン動作状態判別部13によって車両用バッテリBvの蓄電量が「高」領域に属すると判別され(ステップ#2:Yes)、且つ、減速状態判別部14によって車両が減速中であると判別されたこと(ステップ#3:Yes)が、本発明における車両側電力供給条件に相当する。
【0049】
一方、車両用バッテリBvの蓄電量が「高」領域に属さないと判別された場合(ステップ#2:No)、又は、車両が減速中でないと判別された場合には(ステップ#3:No)、次に、ナビゲーション用蓄電量判別部12は、ナビゲーション用バッテリBnの蓄電量が「最低」領域に属するか否かを判別する(ステップ#5)。ナビゲーション用バッテリBnの蓄電量が「最低」領域に属さないと判別された場合には(ステップ#5:No)、電力供給状態制御部15は、ナビゲーション用バッテリBnの電力をナビゲーション装置Nvに供給するように制御する制御情報を、電力供給状態切換装置30に出力する。これにより、ナビゲーション用バッテリBnの電力がナビゲーション装置Nvに供給される(ステップ#6)。一方、ナビゲーション用バッテリBnの蓄電量が「最低」領域に属すると判別された場合には(ステップ#5:Yes)、電力供給状態制御部15は、車両用バッテリBvの電力をナビゲーション装置Nvに供給するように制御する制御情報を、電力供給状態切換装置30に出力する。これにより、車両用バッテリBvの電力がナビゲーション装置Nvに供給される(ステップ#7)。
【0050】
一方、ステップ#1において、エンジンEが動作中であると判別された場合には(ステップ#1:Yes)、次に、ナビゲーション用蓄電量判別部12は、ナビゲーション用バッテリBnの蓄電量が「最高」領域に属するか否かを判別する(ステップ#8)。ナビゲーション用バッテリBnの蓄電量が「最高」領域に属さないと判別された場合には(ステップ#8:No)、電力供給状態制御部15は、第一回転電機MG1で発電した電力をナビゲーション装置Nvに供給し、且つ、ナビゲーション装置Nvを動作させてなお余剰する電力をナビゲーション用バッテリBnに供給するように制御する制御情報を、電力供給状態切換装置30に出力する。これにより、第一回転電機MG1で発電した電力がナビゲーション装置Nvに供給されるとともに、余剰する電力がナビゲーション用バッテリBnに供給される(ステップ#9)。一方、ナビゲーション用バッテリBnの蓄電量が「最高」領域に属すると判別された場合には(ステップ#8:Yes)、電力供給状態制御部15は、第一回転電機MG1で発電した電力をナビゲーション装置Nvのみに供給するように制御する制御情報を、電力供給状態切換装置30に出力する。これにより、第一回転電機MG1で発電した電力がナビゲーション装置Nvのみに供給される(ステップ#10)。
【0051】
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態は、第一の実施形態における2モータスプリット方式のハイブリッド駆動装置Hに代えて、一つの回転電機MG3にて駆動と発電とを行ういわゆるパラレル方式のハイブリッド駆動装置H2を備える車両に適用したものである。尚、本実施形態については、特に説明しない部分については上記第一の実施形態と同様とする。
【0052】
図5に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置H2は、車両駆動用の駆動力源としてエンジンE及び回転電機MG3を備え、これらのエンジンEと回転電機MG3とが伝達クラッチTcを介して直列に連結されるパラレル方式のハイブリッド駆動装置となっている。エンジンEの出力軸は、伝達クラッチTcを介して回転電機MG3を備える中間軸に回転及び駆動力を伝達するように構成され、その中間軸が自動変速装置又はCVT等にて構成される変速装置20の入力軸となっている。そして、変速装置20は、中間軸の回転を変速して出力用差動歯車装置Dに伝達し、車輪Wを回転させる。
【0053】
このハイブリッド駆動装置H2では、車両の発進時や低速走行時には、伝達クラッチTcが開放されるとともに、エンジンEが停止状態とされ、回転電機MGの回転駆動力のみが車輪Wに伝達されて走行する。このとき、回転電機MG3は、車両用バッテリBvからの電力の供給を受けて駆動力を発生する。そして、回転電機MG3の回転速度が一定以上となった状態で、伝達クラッチTcが係合状態とされることにより、エンジンEがクランキングされて始動される。エンジンEの始動後は、エンジンE及び回転電機MG3の双方の回転駆動力が車輪Wに伝達されて走行する。この際、回転電機MG3は、車両用バッテリBvの充電状態により、エンジンEの回転駆動力により発電する状態と、車両用バッテリBvから供給される電力により駆動力を発生する状態のいずれともなり得る。また、車両の減速時には、伝達クラッチTcが開放されるとともに、エンジンEが停止状態とされ、回転電機MG3は、車両の減速の際の慣性力によって車輪Wから伝達されるトルクを受けて発電する状態となる。
【0054】
本実施形態における電力供給システムの制御方法は、図4のフローチャートに示す上記第一実施形態の制御方法と基本的に同じである。但し、本実施形態では回転電機が1つしかないため、ステップ#4、#9、#10の夫々では、回転電機MG3により発電した電力がナビゲーション装置Nvへ供給される。従って、回転電機MG3の駆動力による車両の走行中には、車両用バッテリ状態検出装置Dvにより検出される車両用バッテリBvの蓄電量が「高」領域であることが検出され(ステップ#2:Yes)、且つ、加速度検出装置Ddにより車両が減速中であることが検出された場合(ステップ#3:Yes)、つまり、車両側電力供給条件を満たした場合には、回転電機MG3で発電された電力がナビゲーション装置Nvに供給される車両側電力供給状態となる。
【0055】
また、エンジン動作状態検出装置DeによりエンジンEが動作状態であることが検出された場合(ステップ#1:Yes)にも、回転電機MG3で発電された電力がナビゲーション装置Nvに供給される車両側電力供給状態となる(ステップ#9、#10)。つまり、ステップ#4とステップ#9及び#10とは同一の回転電機MG3にて発電した電力をナビゲーション装置Nvへ供給する。但し、本実施形態では、上記のとおりエンジンEの動作中に回転電機MG3が駆動力を発生する状態となる場合がある。この場合には、回転電機MG3では電力を発生しない状態となるので、図示は省略するが、ナビゲーション用バッテリBnが貯蔵する電力がナビゲーション装置Nvへ供給される。
【0056】
3.その他の実施形態
(1)上記第一及び第二の実施形態では、車両側電力供給条件を満たさない場合であって、さらに、ナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnによって検出されるナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量が「最低」領域に属する状態である場合に、車両用バッテリBvが貯蔵する電力をナビゲーション装置Nvに供給する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態は、このような構成に限定されるものではない。従って、例えば、車両側電力供給条件を満たさない場合であって、さらに、ナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量が「最低」領域に属する状態である場合に、ナビゲーション装置Nvを停止するように構成してもよい。
【0057】
(2)上記第一及び第二の実施形態では、車両は駆動力源としてエンジンを備える場合において、エンジン動作状態検出手段De、13によりエンジンが動作中であることが検出された場合には、車両側電力供給条件に関係なく車両側電力供給状態を選択するように構成する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態は、このような構成に限定されるものではない。例えばエンジン動作状態検出手段De、13によりエンジンが動作中であることが検出された場合であっても、ナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量が「最高」領域に属する場合には、ナビゲーション用バッテリBnの電力をナビゲーション装置Nvに供給するように構成してもよい。
【0058】
(3)上記第一及び第二の実施形態では、車両用蓄電量判別部11が、車両用バッテリBvの使用可能領域内での充電量の状態について、充電量の大きい方から「高」、「中」、「低」の3つの領域に3等分する場合を例として説明した。また、この場合において、バッテリ充電量が「高」領域に属する状態を、本発明における車両用蓄電装置の蓄電量が所定の第一閾値以上である状態と判別する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態は、これに限定されるものではない。従って、車両用バッテリBvの使用可能領域内での充電量の状態を、2つ或いは4つ以上の領域に区分し、車両用バッテリBvの充電量がいずれの領域に属するかを、車両用蓄電量判別部11が判定する構成としても好適である。また、このような充電量の状態を区分する複数の領域は、前記使用可能領域を等分して設定されるものに限定されず、各領域の広さが互いに異なるように設定しても好適である。いずれの場合においても、バッテリ充電量が、複数の領域の内の充電量が高い一又は二以上の領域に属する状態を、本発明における車両用蓄電装置の蓄電量が所定の第一閾値以上である状態と判別する構成とすると好適である。
また、このように車両用バッテリBvの使用可能領域内での充電量の状態を複数の領域に区分して判定する構成とせず、車両用バッテリBvの使用可能領域内の所定の値を第一閾値として設定することも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合において、例えば、前記使用可能領域の上限を100%とした場合における70%等の任意の値を第一閾値として設定しても好適である。なお、この場合においても、第一閾値は、前記使用可能領域における充電量が大きい側から1/3又は1/2の領域内に設定すると好適である。
【0059】
(4)上記第一及び第二の実施形態では、ナビゲーション用蓄電量判別部12が、ナビゲーション用バッテリBnの使用可能領域内での充電量の状態について、当該使用可能領域を10等分し、充電量が最も大きい領域を「最高」、最も小さい領域を「最低」とする場合を例として説明した。また、この場合において、バッテリ充電量が「最低」領域に属する状態を、本発明におけるナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第二閾値未満である状態と判別し、バッテリ充電量が「最高」領域に属する状態以外の状態を、本発明におけるナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第三閾値未満である状態と判別する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態は、これに限定されるものではない。従って、ナビゲーション用バッテリBnの使用可能領域内での充電量の状態を、10以外の複数の領域に区分した構成としても好適である。また、このような充電量の状態を区分する複数の領域は、前記使用可能領域を等分して設定されるものに限定されず、従って、「最高」領域と「最低」領域との広さが異なるように設定しても好適である。
また、このようにナビゲーション用バッテリBnの使用可能領域内での充電量の状態を複数の領域に区分して判定する構成とせず、ナビゲーション用バッテリBnの使用可能領域内の所定の値を第二閾値及び第三閾値として設定することも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合において、例えば、前記使用可能領域の上限を100%とした場合における5%を第二閾値として設定し、95%を第三閾値として設定しても好適である。なお、この場合においても、第二閾値は、前記使用可能領域における充電量が小さい側から1/10又は1/5の領域内に設定し、第三閾値は、前記使用可能領域における充電量が大きい側から1/10又は1/5の領域内に設定すると好適である。
【0060】
(5)上記第一及び第二の実施形態では、ナビゲーション用バッテリ状態検出装置Dnによって検出されるナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量が「最低」領域に属する状態であるときに車両側電力供給状態となるように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えばナビゲーション用蓄電装置Bnを使い切ったとき、すなわち、ナビゲーション用バッテリBnのバッテリ充電量が使用可能領域の下限になったときに車両側電力供給状態となるように構成してもよい。
【0061】
(6)上記第一及び第二の実施形態では、本発明の電力供給システムをハイブリッド車両に適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態は、このような構成に限定されるものではなく、本発明の電力供給システムを、例えば、駆動力としての回転電機が動力伝達系を介して車輪に接続された電気自動車に適用することも可能である。この場合は、制御装置10は、図4に示すフローチャートのうち、ステップ#2、#3、#4、#5、#6、及び#7の処理のみを行う。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第一実施形態に係る電源供給システムのブロック図
【図2】本発明の第一実施形態に係るハイブリッド駆動装置の機械的構成を示すスケルトン図
【図3】本発明の第一実施形態に係る電力供給状態切換装置の切換状態を示す模式図
【図4】本発明の第一実施形態に係る電源供給システムの制御のフローチャート
【図5】本発明の第二実施形態に係るハイブリッド駆動装置の機械的構成を示すスケルトン図
【符号の説明】
【0063】
Bv:車両用バッテリ(車両用蓄電装置)
Bn:ナビゲーション用バッテリ(ナビゲーション用蓄電装置)
Dv:車両用バッテリ状態検出装置(車両用蓄電量検出手段)
Dn:ナビゲーション用バッテリ状態検出装置(ナビゲーション用蓄電量検出手段)
De:エンジン動作状態検出装置(エンジン動作状態検出手段)
Dd:加速度検出装置(減速状態検出手段)
Nv:ナビゲーション装置
MG1:第一回転電機
MG2:第二回転電機
I1:第一インバータ
I2:第二インバータ
10:制御装置
11:車両用蓄電量判別部(車両用蓄電量検出手段)
12:ナビゲーション用蓄電量判別部(ナビゲーション用蓄電量検出手段)
13:エンジン動作状態判別部(エンジン動作状態検出手段)
14:減速状態判別部(減速状態検出手段)
15:電力供給状態制御部
30:電力供給状態切換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも回転電機を駆動力源として備えるとともに、前記回転電機への電力の供給及び前記回転電機で発電した電力の貯蔵を行う車両用蓄電装置を備えた車両に搭載され、当該車両に搭載されたナビゲーション装置への電力供給を行う電力供給システムであって、
車両用蓄電装置とは別に、前記ナビゲーション装置に対して電力供給を行うナビゲーション用蓄電装置を備えるとともに、
前記ナビゲーション装置への電力供給状態を制御する制御装置を備え、
前記ナビゲーション装置は、前記回転電機で発電した電力及び前記車両用蓄電装置からの電力の一方又は双方が供給される車両側電力供給状態と、前記ナビゲーション用蓄電装置からの電力が供給されるナビゲーション側電力供給状態とを切り替え可能とされ、
前記制御装置が、前記回転電機の駆動力による前記車両の走行中には、車両用蓄電装置の状態に関する所定の車両側電力供給条件を満たす場合に前記車両側電力供給状態を選択し、前記車両側電力供給条件を満たさない場合に前記ナビゲーション側電力供給状態を選択する電力供給システム。
【請求項2】
前記車両用蓄電装置の蓄電量を検出する車両用蓄電量検出手段と、前記車両が減速中であることを検出する減速状態検出手段とを備え、
前記車両側電力供給条件は、前記車両用蓄電量検出手段により前記車両用蓄電装置の蓄電量が所定の第一閾値以上であることが検出され、且つ、前記減速状態検出手段により前記車両が減速中であることが検出されたことである請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記車両側電力供給条件を満たす場合に選択される前記車両側電力供給状態は、前記車両の減速の際の慣性力を利用して前記回転電機に発電させることにより得られた電力が、前記ナビゲーション装置へ供給される状態である請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量を検出するナビゲーション用蓄電量検出手段を備え、
前記制御装置は、前記車両側電力供給条件を満たさない場合であっても、前記ナビゲーション用蓄電量検出手段により前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第二閾値未満であることが検出された場合には、前記車両側電力供給状態を選択する請求項1から3のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記車両側電力供給条件を満たさない場合であって、前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が前記第二閾値未満であることが検出された場合に選択される前記車両側電力供給状態は、前記車両用蓄電装置に貯蔵された電力が前記ナビゲーション装置へ供給される状態である請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記車両が駆動力源としてエンジンを更に備える場合であって、
前記エンジンの動作状態を検出するエンジン動作状態検出手段を備え、
前記制御装置は、前記エンジン動作状態検出手段によりエンジンが動作中であることが検出された場合には、前記車両側電力供給条件に関係なく、前記車両側電力供給状態を選択する請求項1から5のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量を検出するナビゲーション用蓄電量検出手段を備え、
前記制御装置は、前記ナビゲーション用蓄電量検出手段により前記ナビゲーション用蓄電装置の蓄電量が所定の第三閾値未満であることが検出された場合には、前記車両側電力供給状態を選択するとともに、前記ナビゲーション用蓄電装置へ前記回転電機で発電した電力及び前記車両用蓄電装置からの電力の一方又は双方を供給して充電を行う請求項6に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記エンジン動作状態検出手段によりエンジンが動作中であることが検出された場合に選択される前記車両側電力供給状態は、前記エンジンの駆動力を利用して前記回転電機に発電させることにより得られた電力が、前記ナビゲーション装置へ供給される状態である請求項6又は7に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−114950(P2010−114950A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282931(P2008−282931)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】