説明

電動アクチュエータ駆動装置及びこれを用いたアクチュエータ

【課題】機械的なブレーキ機構を採用することなく、故障等の異常が生じたアクチュエータ駆動モータをより短時間に停止拘束できるようにする。
【解決手段】本発明は、電源と、この電源から給電され、アクチュエータB1を駆動するためのアクチュエータ駆動モータ11A,11Bと、これらのアクチュエータ駆動モータ11A,11Bに対して回生ブレーキ動作を行なうためのモータ制動回路Cとを有する電動アクチェータ駆動装置であって、所要箇所に異常が発生したか否かを判定する異常発生判定手段D1と、上記モータ制動回路Cによって、アクチュエータ駆動モータ11A,11Bに対して回生ブレーキ動作を行なう回生ブレーキ手段D3とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロケットや人工衛星等の宇宙機若しくはジェット機に搭載して使用される電動アクチュエータ駆動装置及びこれを用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動アクチュエータ駆動装置として、電動アクチュエータとした名称において特許文献1に開示された構成のものがある。図7は、その特許文献1に記載された電動アクチュエータの構成を示す図である。
【0003】
特許文献1に開示された従来の電動アクチュエータは、第1モータ1と、第2モータ2を備え、その第1モータ1側(又は第2モータ2側)には、ボールスクリュ3のリード4をモータ回転軸1a(あるいはモータ回転軸2a)と同軸に設けるとともに、第2モータ2側(又は第1モータ1側)には、ボールスクリュ3のナット5をモータ回転軸2a(又はモータ回転軸1a)と同軸に設けて、ボールスクリュ3を介して第1モータ1及び第2モータ2を連結した構成のものである。
なお、図中6,7で示すものはハウジング、8で示すものはナットブレーキ、9で示すものはリードブレーキ、Rで示すものは機体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003‐42258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された電動アクチュエータは、故障した側の回転を拘束するためにブレーキ機構を採用していたので、ブレーキが有効に動作するのに時間を要するという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、機械的なブレーキ機構を採用することなく、故障等の異常が生じたアクチュエータ駆動モータをより短時間に停止拘束できる電動アクチュエータ駆動装置及びこれを用いたアクチュエータの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための電動アクチュエータ駆動装置は、電源と、この電源から給電され、アクチュエータを駆動するためのアクチュエータ駆動モータと、このアクチュエータ駆動モータに対して回生ブレーキ動作を行なうためのモータ制動回路とを有する電動アクチェータ駆動装置であって、所要箇所に異常が発生したか否かを判定する異常発生判定手段と、上記モータ制動回路によって、アクチュエータ駆動モータに対して回生ブレーキ動作を行なう回生ブレーキ手段とを有することを特徴としている。
上記構成によれば、所要箇所に異常が発生したと判定したときには、上記モータ制動回路によって、アクチュエータ駆動モータに対して回生ブレーキ動作を行なう。
同上の課題を解決するためのアクチュエータは、上記した電動アクチェータ駆動装置を用いたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機械的なブレーキ機構を採用することなく、異常が生じたアクチュエータ駆動モータをより短時間に停止拘束することができるとともに、小型軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置を用いた一例に係るアクチュエータの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同上の電動アクチュエータ駆動装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】同上の電動アクチュエータ駆動装置を用いたアクチュエータを、宇宙機に搭載されているロケットモータの可動ノズルを偏向させるように配設した構成を示す部分説明図である。
【図4】同上の電動アクチュエータ駆動装置による回生ブレーキ動作を示すフローチャートである。
【図5】同上の電動アクチュエータ駆動装置を用いたアクチュエータにより、ジェットエンジンの可動翼を駆動する構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置を用いた他例に係るアクチュエータの概略構成を示すブロック図である。
【図7】特許文献1に記載された電動アクチュエータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置を用いた一例に係るアクチュエータの概略構成を示すブロック図、図2は、その電動アクチュエータ駆動装置の回路構成を示すブロック図である。また、図3は、その電動アクチュエータ駆動装置を適用した一例に係るアクチュエータを、ロケットに搭載したロケットモータの可動ノズルを偏向させるように配設した構成を示す部分説明図である。
【0011】
図1に示すように、一例に係るアクチュエータB1は、これを本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置A1,A2により駆動する構成のものである。
【0012】
以下には、電動アクチュエータ駆動装置A1について説明するが、電動アクチュエータ駆動装置A2については、電動アクチュエータ駆動装置A1と同等の構成になっているので、その説明を省略する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置A1は、図2に示すように、第1モータ11Aをインバータ制御するためのインバータ回路B、その第1モータ11Aに対して回生ブレーキ動作を行なうための制動動作を行なうためのモータ制動回路C、これらの回路に電力を送給するための直流電源20及びコントローラDを有して構成されている。なお、直流電源20は、電動アクチュエータ駆動装置A1,A2に共通のものである。
【0014】
第1モータ11Aは三相交流サーボモータであり、これには、回転角度を検出するための回転角検出器12が配設されている。
この第1モータ11Aの出力ラインUVWのうちのU相とV相には、電流センサS1,S2が設けられており、それら電流センサS1,S2はコントローラDの入力ポートにそれぞれ接続されている。
【0015】
アクチュエータB1には、これのアーム13の位置を検出するための位置検出器21が配設されている。
位置検出器21は、上記アーム13の伸縮領域において、そのアーム13の伸縮位置を検出するためのものである。
なお、上記した位置検出器21と回転角検出器12は、それぞれ後述するコントローラDの入力ポートに接続されている。
【0016】
インバータ回路Bは、6つの電力用半導体スイッチ22と、これらに対応して設けられた制御回路23とを有しており、各制御回路23はコントローラDの出力ポートに接続されており、適宜スイッチングが行なわれるようになっている。
【0017】
モータ制動回路Cは、第1モータ11Aの端子間に並列接続された制動用抵抗器24と、この制動用抵抗器24に直列接続された半導体スイッチ25とを有しており、その半導体スイッチ25は、コントローラDの出力ポートに接続されて適宜スイッチングが行なわれるようになっている。なお、制動用抵抗器24は必ずしも配設する必要はない。
【0018】
上述したアクチュエータB1は、図3に示す飛翔体であるロケットの機体30に搭載されたロケットモータ31の可動ノズル32を偏向させるように、互いに直角にして2基配設している。
【0019】
すなわち、上記の機体30は、これにピボット部33を介して可動ノズル32が回動自在に取り付けられており、その可動ノズル32の噴射角調節機構として、機体30側と可動ノズル32にそれぞれ突設した取付け部34,35との間にアクチュエータB1,B1(一方は図示していない)を架設している。
【0020】
すなわち、アクチュエータB1は、これのロッド10とアーム13の長さを伸縮することで、機体30に対する可動ノズル32の噴射角を偏向調節し、機体30の飛翔方向を制御するように配設されている。
【0021】
第1,第2モータ11A,11Bは、互いに同軸に配置されており、それぞれ本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置A1,A2によってそれぞれ駆動制御されるようになっている。
【0022】
ボールスクリュ12は、ハウジング14と、このハウジング14のナット15に螺合するリード16とからなる。
第1モータ11Aの回転軸11aにはリード16が同軸に連結されており、また、第2モータ11Bの回転軸11aにはハウジング14が同軸的に連結されているとともに、アーム13も回転軸11aと同軸配置にして突設されている。
【0023】
上記の構成においては、ボールスクリュ12を介して連結した第1モータ11Aと第2モータ11Bとを、上述した電動アクチュエータ駆動装置A1,A2によってそれぞれ互いに独立して回転駆動することにより、ハウジング14及び第2モータ11Bとともにアーム13を矢印X方向において移動させるようになっている。
【0024】
すなわち、第1モータ11Aと第2モータ11Bとを互いに独立して回動させることによって、アーム13を矢印X方向に伸縮移動させるようになっている。
これにより、ボールスクリュ12は、第1モータ11Aの回転角と第2モータ11Bの回転角との和の分だけ運動することとなって、速度和の冗長が構成され、例えば第1モータ11Aを固定しても、この第1モータ11Aの慣性負荷は第2モータ11Bの負荷にはならず、動力の伝達効率の低下を回避している。
【0025】
ところで、コントローラDは、本電動アクチュエータ駆動装置A1,A2の制御主体となるものであり、プロセッサ、信号変換器、メモリ、アンプ(いずれも図示しない)等から構成されており、また、本装置を搭載した飛翔体側から出力されるストローク指令が入力されるようになっている。
【0026】
本実施形態において示すコントローラDは、次の機能を有している。
(1)所要箇所に異常が発生したか否かを判定する機能。この機能を「異常発生判定手段D1」という。
「所要箇所」は、例えば制御回路23、電力用半導体スイッチ22、第1,第2モータ11A,11B等のことである。
【0027】
「異常」とは、故障等を含むものである。
すなわち、本実施形態においては、制御回路23、電力用半導体スイッチ22、第1,第2モータ11A,11Bに異常が発生したか否かを判定している。
【0028】
・第1モータ11Aについては、位置検出器21で取得した位置フィードバックと、指令ストロークとに基づいて、また、回転角検出器12で検出した回転角に基づいて異常の発生を判定していることに加えて、電流センサS1で取得した電流フィードバックと、算出した指令電流値とに基づいて異常の発生を判定している。
【0029】
・制御回路23、電力用半導体スイッチ22については、電流センサS1で検出した電流フィードバックと、算出した指令電流とに基づいて、それぞれ異常の発生を判定している。
【0030】
(2)所要箇所に異常が発生したと判定したときには、インバータ回路Bによる第1モータ11Aの制御を停止する機能。この機能を「モータ制御停止手段D2」という。
【0031】
(3)モータ制動回路Cによって、第1モータ11Aに対して回生ブレーキ動作を行なう機能。この機能を「回生ブレーキ手段D3」という。
本実施形態に示すモータ制御停止手段D2を有している場合、インバータ回路Bによる第1モータ11Aの制御を停止した後、モータ制動回路Cによって、第1モータ11Aに対して回生ブレーキ動作を行なう。
具体的には、半導体スイッチ25をオン動作させて、上記した制動用抵抗器24を直流電源20に短絡的に接続している。この図では省略したが、同時に電源20からの電源供給を停止する。
【0032】
(4)飛翔体側からのストローク指令に対するアクチュエータB1のアーム13の位置誤差を算出する機能。この機能を「位置誤差算出手段D4」という。
本実施形態においては、飛翔体側からのストローク指令に対するアクチュエータB1のアーム13の位置と、位置検出器21により取得した位置フィードバックに基づいて、当該位置誤差を算出している。
【0033】
(5)算出された位置誤差に基づいて、アクチュエータB1のアーム13の伸縮速度(指令速度)を算出する機能。この機能を「伸縮速度算出手段D5」という。
【0034】
(6)アクチュエータB1のアーム13の伸縮速度の誤差を算出する機能。この機能を「伸縮速度誤差算出手段D6」という。
本実施形態においては、回転角検出器12から出力される速度フィードバックと、算出された指令速度とに基づき、当該アーム13の伸縮速度の誤差を算出している。
【0035】
(7)アクチュエータB1のアーム13の速度誤差に基づいて、第1モータ11Aに供給する指令電流を算出する機能。この機能を「指令電流算出手段D7」という。
【0036】
(8)算出された指令電流と、電流センサS1により検出した電流値とに基づいて、電流誤差を算出する機能。この機能を「電流誤差算出手段D8」という。
【0037】
図4に示すフローチャートに沿い、回生ブレーキ動作について説明する。図4は、回生ブレーキ動作を示すフローチャートである。
ステップ1(図2においては、S1と略記する。以下同様。):インバータ回路Bの一部をなす制御回路21の異常診断を行ない、異常が発生していると診断(判定)としたときにはステップ2に進み、そうでなければステップ4に進む。
【0038】
ステップ2:制御回路23の制御を停止処理する。
ステップ3:上述した回生ブレーキ動作を行なう。
ステップ4:位置検出器21から出力されるアクチュエータB1のアーム13の伸縮位置と飛翔体側から出力されるストローク指令とに基づいて、そのアーム13の位置誤差を算出する。
【0039】
ステップ5:アーム13の位置誤差に基づいて、第1モータ11Aに異常が発生したか否かを判定し、異常が発生したと判定したときにはステップ6に進み、そうでなければステップ8に進む。
【0040】
ステップ6:制御回路23の制御を停止処理する。
ステップ7:上述した回生ブレーキ動作を行なう。
ステップ8:算出された位置誤差に基づいて、アクチュエータB1のアーム13の伸縮速度を算出する。
【0041】
ステップ9:回転角検出器12により検出した回転角に基づいて、第1モータ11Aに異常が発生したか否かを判定し、第1モータ11Aに異常が発生したと判定したときにはステップ10に進み、そうでなければステップ17に進む。
【0042】
ステップ10:制御回路23の制御を停止処理する。
ステップ11:上述した回生ブレーキ動作を行なう。
ステップ12:回転角検出器12から出力される回転角度に基づいて得られたアーム13の伸縮速度と、算出されたアーム13の指令速度とに基づいて、そのアーム13の伸縮速度の誤差を算出する。
【0043】
ステップ13:算出された速度誤差に基づいて異常の有無を判定し、異常が生じていると判定したときにはステップ14に進み、そうでなければステップ16に進む。
ステップ14:制御回路23の制御を停止処理する。
ステップ15:上述した回生ブレーキ動作を行なう。
【0044】
ステップ16:算出された速度誤差に基づいて、第1モータ11Aに給電すべき指令電流値を算出する。
ステップ17:上記した回転角検出器12から出力された回転角度と、算出された指令電流とに基づいて、三相正弦波変換を行なう。
【0045】
ステップ18:第1モータ11Aの電流センサS1、S2からのモータ電流のフィードバックと、ステップ17において変換された三相正弦波とに基づいて、電流の誤差を算出する。
ステップ19:算出された電流誤差に基づいて異常が発生したか否かを判定し、異常が発生したと判定したときにはステップ20に進み、そうでないときにはステップ22に進む。
【0046】
ステップ20:制御回路23の制御を停止処理する。
ステップ21:上述した回生ブレーキ動作を行なう。
ステップ22:ステップ18において算出された電流誤差に基づいてゲート回路に指令を出力する。
【0047】
以上の構成からなる電動アクチュエータ駆動装置A1,A2によれば、次の効果を得ることができる。
・所要箇所に異常が生じていないときには、インバータ回路Bには直流電源20から直流電力が給電されてアクチュエータ駆動モータ11A,11Bを駆動する。
【0048】
一方、制御回路23、アクチュエータB1、第1,第2モータ11A,11B等の所要箇所に異常が生じたときには、半導体スイッチ25をオン動作させて、上記した制動用抵抗器24を直流電源20に短絡的に接続する。
このときの発電電流は、インバータ回路Bのホイールダイオードで整流され、制動用抵抗器24に流れることで、第1,第2モータ11A,11Bにはその巻線に流れる電流で制動トルクを発生し、第1,第2モータ11A,11Bは制動トルクで緩やかに回転する。
【0049】
・以上のようにして、機械的なブレーキ機構を採用することなく、故障等の異常が生じたアクチュエータ駆動モータをより短時間に停止拘束することができる。すなわち、半導体スイッチとともに回生電流による制動を行なっているので、機械的なブレーキ機構に比べて極めて時間に制動を行なうことができる。
・機械的なブレーキ機構を不要とすることによって、小型軽量化を図ることもできる。
【0050】
上述した実施形態においては、本装置を用いたアクチュエータによりロケットノズルを偏向させる構成について説明したが、図5に示すジェットエンジンの可動翼を駆動させるために用いてもよい。図5は、本装置を用いたしたアクチュエータにより、ジェットエンジンの可動翼を駆動する構成を示す斜視図である。なお、上述した実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
図5に示すジェットエンジンに配設された可動翼50は、円環形の可動リング51に、複数の可動靜翼52を等角度間隔にし、かつ、それぞれ軸線O1を中心として回動自在に軸支したものである。
【0052】
可動リング51の外周面には取付け部53が突設されているとともに、その可動リング51の回動軸線O2と平行に配置されたクランクシャフト54にも取付け部54a,54bが突設されており、それら取付け部53,54a間にリンク部材55が架設されている。
【0053】
クランクシャフト54には取付け部54bには、上述したアクチュエータB1のハウジング10が連結されているとともに、アーム13をジェットエンジンの固定部Tに連結されている。
この構成により、アクチュエータB1によって可動靜翼52を所要の角度範囲で回動させている。
【0054】
次に、他例に係るアクチュエータについて、図6を参照して説明する。図6は、他例に係るアクチュエータの概略構成を示すブロック図である。なお、上述した実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
他例に係るアクチュエータB2は、これを本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置A1,A2により駆動する点で同様のものであるが、その構成の一部がアクチュエータB1と相違している。
【0056】
他例に係るアクチュエータB2は、図3に示す飛翔体であるロケットの機体30に搭載されたロケットモータ31の可動ノズル32を偏向させるように、互いに直角にして2基配設している。
【0057】
上記の機体30は、これにピボット部33を介して可動ノズル32が回動自在に取り付けられており、その可動ノズル32の噴射角調節機構として、機体30側と可動ノズル32にそれぞれ突設した取付け部34,35との間にアクチュエータB2,B2(一方は図示していない)を架設している。
【0058】
アクチュエータB2は、これのロッド10とアーム13の長さを伸縮することにより、機体30に対する可動ノズル32の噴射角を偏向調節し、機体30の飛翔方向を制御するように配設されている。
【0059】
第1,第2モータ11A,11Bは、差動歯車装置40を介してリード16に連結されており、それぞれ電動アクチュエータ駆動装置A1,A2によってそれぞれ駆動制御されるようになっている。
【0060】
上記の構成においては、差動歯車装置40を介して連結した第1モータ11Aと第2モータ11Bとを、上述した電動アクチュエータ駆動装置A1,A2によってそれぞれ互いに独立して回転駆動することにより、ハウジング14及び第2モータ11Bとともにアーム13を矢印X方向において移動させるようになっている。
【0061】
すなわち、第1モータ11Aと第2モータ11Bとを互いに独立して回動させることによって、アーム13を矢印X方向に伸縮移動させるようになっている。
これにより、ボールスクリュ12は、第1モータ11Aの回転角と第2モータ11Bの回転角との和の分だけ運動することとなって、速度和の冗長が構成され、例えば第1モータ11Aを固定しても、この第1モータ11Aの慣性負荷は第2モータ11Bの負荷にはならず、動力の伝達効率の低下を回避している。
【0062】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
【0063】
・上記した実施形態においては、制動回路Cをインバータ回路Bの外部に設置する代わりに、インバータ回路Bの下側(若しくは上側)3つの半導体スイッチ25を制御回路23によりコントローラDからの指令によりオンとし、上側(若しくは下側)3つの半導体スイッチ25を制御回路23によりコントローラDからの指令によりオフとすることで代用した場合にも同等の作用効果を得ることができる。
また、制動用に半導体スイッチ25と制御回路23を追加で設けることでも同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
・上記した実施形態においては、三相交流モータを使用したアクチェータを例として説明したが、単相モータや直流モータを使用した場合にも同等の作用効果を得ることができる。
なお、単相モータ方式ではモータを駆動する電力変換器としてインバータ回路を単相とし、また、直流モータ方式の場合、インバータ回路に代えて直流チョッパとする。
【0065】
上述した実施形態においては、本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置A1,A2を採用したアクチュエータについて説明したが、当該電動アクチュエータ駆動装置を2以上組み合わせて適用してもよいことは勿論である。
【0066】
上述した実施形態においては、電動アクチュエータ駆動装置A1,A2を単一のコントローラDにより制御するようにしているが、電動アクチュエータ駆動装置A1,A2をそれぞれ別のコントローラにより制御してもよい。
【符号の説明】
【0067】
11A,11B アクチュエータ駆動モータ(第1モータ,第2モータ)
12 回転角検出器
20 電源(直流電源)
21 位置検出器
B インバータ回路
B1,B2 アクチュエータ
C モータ制動回路
D1 異常発生判定手段
D2 モータ制御停止手段
D3 回生ブレーキ手段
D4 位置誤差算出手段
D6 伸縮速度誤差算出手段
D8 電流誤差算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、この電源から給電され、アクチュエータを駆動するためのアクチュエータ駆動モータと、このアクチュエータ駆動モータに対して回生ブレーキ動作を行なうためのモータ制動回路とを有する電動アクチェータ駆動装置であって、
所要箇所に異常が発生したか否かを判定する異常発生判定手段と、
上記モータ制動回路によって、アクチュエータ駆動モータに対して回生ブレーキ動作を行なう回生ブレーキ手段とを有していることを特徴とする電動アクチェータ駆動装置。
【請求項2】
アクチュエータ駆動モータのインバータ制御を行なうインバータ回路と、
異常発生判定手段は、インバータ回路に異常が生じたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の電動アクチェータ駆動装置。
【請求項3】
所要箇所は、アクチュエータ駆動モータ、インバータ回路又はアクチュエータであることを特徴とする請求項2に記載の電動アクチェータ駆動装置。
【請求項4】
インバータ回路によるアクチュエータ駆動モータの制御を停止するモータ制御停止手段が設けられており、
異常発生判定手段により異常が発生したと判定したときには、モータ制御停止手段によってインバータ回路によるアクチュエータ駆動モータの制御を停止した後、
回生ブレーキ手段により、半導体スイッチを介してアクチュエータ駆動モータに対して回生ブレーキ動作を行なうことを特徴とする請求項2又は3に記載の電動アクチェータ駆動装置。
【請求項5】
アクチュエータの駆動部の位置を検出する位置検出器が配設されており、
位置検出器により検出した位置フィードバックと、駆動部の位置誤差を算出する位置誤差算出手段と、
異常発生判定手段は、算出した位置誤差に基づいて異常の発生の有無を判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動アクチェータ駆動装置。
【請求項6】
複数のアクチュエータ駆動モータの各回転角を検出する回転角検出器が配設されており、
異常発生判定手段は、回転角検出器で検出した各アクチュエータ駆動モータの回転角に基づいて異常の発生の有無を判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動アクチェータ駆動装置。
【請求項7】
速度フィードバックに基づいて、速度誤差を算出する速度誤差算出手段を有し、
異常発生判定手段は、算出した速度誤差に基づいて異常の発生の有無を判定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動アクチェータ駆動装置。
【請求項8】
電流フィードバックに基づいて、電流誤差を算出する電流誤差算出手段と、
異常発生判定手段は、算出した電流誤差に基づいて異常の発生の有無を判定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電動アクチェータ駆動装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載した電動アクチェータ駆動装置を用いたことを特徴とするアクチェータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−253908(P2012−253908A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124735(P2011−124735)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】