説明

電動式車両

【課題】不整地等においても有効にパワーユニットを保護する電動式車両を提供する。
【解決手段】車体フレームと、車体フレームに配置された駆動源としての電動モータを含む電動パワーユニット10とを備える。電動モータは、その回転軸が車両上下方向と略平行となるように車体フレームに配置される。電動パワーユニット10は、電動モータにより構成されるモータアセンブリ11の上側に、複数のギアが収容されたギアボックス12が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの動力により走行する電動式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように電動モータ(61)と動力伝達装置(63)とを備えたパワーユニット(33)及び(34)が、フロントサイドフレーム(31)及び(32)の下方に配置され、このパワーユニットと前輪とを接続した電動式車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−199894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように構成すると、フロントサイドフレームよりも下方にパワーユニットが配置され、パワーユニットの下端が地面と近接して配置されるため、そのままでは路面の凹凸や石等に衝突するおそれがある。とりわけ所謂、不整地にあっては地面の起伏が大きいばかりか、路面状態も極端に悪く、パワーユニットを保護するのが極めて難しくなる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、不整地等においても有効にパワーユニットを保護する電動式車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る電動式車両は、車体フレームと、前記車体フレームに配置された駆動源としての電動モータを含む電動パワーユニットとを備えた電動式車両であって、前記電動モータは、その回転軸が車両上下方向と略平行となるように前記車体フレームに配置されたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る電動式車両において、前記電動パワーユニットは、前記電動モータにより構成されるモータアセンブリの上側に、複数のギアが収容されたギアボックスが配置されたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電動式車両において、前記車体フレームの前部に回転自在に支持されたステアリングシャフトを備え、前輪用の前記電動パワーユニットが、前記ステアリングシャフトよりも下方に配置されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電動式車両において、側面視において、前記車体フレームを構成するダウンチューブが該車体フレームの前側に偏倚して配置され、前記ダウンチューブよりも前方に前記前輪用の電動パワーユニットが配置され、前記ダウンチューブよりも後方にバッテリが配置されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電動式車両において、左右の前記前輪用の電動パワーユニットを有し、一方の前記電動モータユニットの電動モータの回転軸が下方に向けて配置され、他方の前記電動モータユニットの電動モータの回転軸が上方に向けて配置されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電動式車両において、前記電動モータユニットそれぞれの前記電動モータの回転軸が、車両左右方向の中心軸線上に沿って並べて配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動モータが車体フレームより下方に突出することがないため、凹凸や石等が多い不整地等を走行する場合であっても、路面との接触等からパワーユニット等を確実且つ有効に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電動式車両の左側面図である。
【図2】本発明に係る電動式車両における主に車体フレームの構成例を示す左側面図である。
【図3】本発明に係る電動式車両の車体フレームにおけるボディフレームまわりの構成例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る電動式車両における前輪懸架装置まわりの構成例を示す斜視図である。
【図5】図2のA‐A線に沿う断面図である。
【図6】本発明に係る電動式車両における後輪懸架装置まわりの構成例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る電動式車両における電動パワーユニットの具体的構成例を示す断面図である。
【図8】本発明に係る電動式車両における電動パワーユニット及びドライブシャフト間のジョイント部の連結構造例を示す断面図である。
【図9】本発明に係る電動式車両の電動パワーユニットの配置関係についての変形例を示す側面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の電動式車両の好適な実施の形態を説明する。なお、以下の説明に使用される前方及び後方などの方向指示は、車両乗車時の運転者から見た方向をいう。具体的には車両の前方及び後方を矢印Fr及び矢印Rrによりそれぞれ示し、車両の側方右側及び左側を矢印R及び矢印Lによりそれぞれ示す。
【0015】
先ず、車両全体構成について説明する。図1は、本発明に係る電動式車両100の実施形態を示す左側面図である。本発明に係る電動式車両100は、比較的大型の車輪が備えられた所謂、不整地走行車両である。電動式車両100の車体下部には前輪101と後輪102とがそれぞれ配置され、前輪101と後輪102の間には運転者が乗車時に足を置くためのフロアボード103を備える。なお、本実施形態では前二輪と後二輪からなる四輪車とする。また、車体上部には、運転者が着座する鞍乗型の着座シート104と、この着座シート104の前方に配置されたハンドル105を有する。
【0016】
また、電動式車両100は、車両全体が外装カバーによって覆われる。この外装カバーは、前輪101の上部に配置されたフロントフェンダ106と、後輪102の上部に配置されたリアフェンダ107と、フロントフェンダ106と着座シート104との間に配置されたアッパカバー108と、アッパカバー108の下方に配置され車両側面を覆うサイドカバー109とで構成される。また、左右の前輪101の間には、後述する車体フレームに取り付けられたバンパプレート110が配置される。このバンパプレート110は、車両幅方向に広く板形状に形成される。また、バンパプレート110は、略垂直な前壁部110aと、前壁部110aの下端から後方に向けて延された底壁部110bとを有し、車両前部から下部に至る領域を覆い、前方から飛来する飛び石や大型の障害物から車体及び後述するフロントモータを保護する。
【0017】
次に、図2及び図3を用いて本発明に係る電動式車両100の車体フレームについて説明する。本発明に係る電動式車両100の車体フレームは、車体中央部に配置され複数のフレームによって構成されたボディフレーム111と、このボディフレーム111の後部から後方に向けて延出されたシートレール112と、シートレール112の下方に配置されボディフレーム111の後部にて揺動可能に支持されたスイングアーム113とを含んで構成される。
【0018】
ボディフレーム111は、前後方向に沿って概略アーチ状に配置された左右一対のメインフレーム114と、メインフレーム114の前端下部に接続され側面視(図2)で略L字型に形成されたアンダフレーム115と、ボディフレーム111の前部側であってメインフレーム114とアンダフレーム115との間に上下方向に掛け渡されたダウンチューブ116と、ダウンチューブ116の略中間部分とメインフレーム114の前部との間に掛け渡された懸架フレーム117と、左右のメインフレーム114相互間及び左右のアンダフレーム115相互間をそれぞれ連結する複数のクロスフレーム118とを含んで構成される。
【0019】
また、車体フレームの前部側には、前方に向けて張り出すようにバンパフレーム119が接続される。また、バンパフレーム119及びシートレール112の上方には、それぞれフロントキャリア120とリアキャリア121が前述の外装カバーから上方に突出して設けられる。
【0020】
次に図3〜図6を用いて本発明に係る電動式車両の車軸懸架構造について説明する。前輪101及び後輪102は懸架装置を介して、上述の車体フレームによってそれぞれ支持される。本発明に係る電動式車両の車軸懸架構造は、前輪101と後輪102とで異なる構造が採用される。前輪101側は、左右の車輪が独立して揺動可能に構成された所謂、独立懸架構造である。一方、後輪102側は、左右の車輪が一体に揺動する固定車軸構造である。
【0021】
前輪懸架装置において図3に示すように先ず、メインフレーム114の上部にはサスペンションブラケット122が左右のメインフレーム114間に掛け渡され、このサスペンションブラケット122と後述する前輪懸架装置との間にフロントサスペンション123が掛け渡される。前輪懸架装置は図4にも詳しく示されるように、懸架フレーム117に揺動自在に接続された上側揺動部材であるアッパアーム124と、このアッパアーム124の下方であってアンダフレーム115に揺動自在に接続された下側揺動部材であるロアアーム125と、アッパアーム124及びロアアーム125の先端部に回転自在に掛け渡されたナックルプレート126とを含んで構成される。また、このナックルプレート126はその中央部に、ドライブシャフト127が回転自在に支持されるようにした軸受部128と、この軸受部128の後方に後述するリンクロッドの一端が連結されるリンクレバー129とが一体に形成される。
【0022】
本発明に係る電動パワーユニット10のうち特に前輪用モータアセンブリ11のギアボックス12とナックルプレート126の軸受部126との間は、ドライブシャフト127を介して連結される。ドライブシャフト127は、ギアボックス12側のジョイント部に自在継手が設けられており、懸架装置の揺動にドライブシャフト127が追従できるように構成されている。また、このドライブシャフト127の先端には、前輪101が接続される。
【0023】
ここで、ドライブシャフト127のジョイント部は、一般的にモータの出力軸に対するドライブシャフトの角度に限界角度が存在する。独立懸架構造によってドライブシャフトが上下方向に揺動する場合において、出力軸に対しドライブシャフトが限界角度(例えば40°)以上下方に向けて屈曲しようとすると、ボール等に過度な摩擦が発生し、製品寿命を低下させることがある。即ち、前述した特許文献1に記載されるような従来構造では、電動モータが路面と接触しないように地上高を大きく設定する必要があった。つまり、通常走行状態であってもドライブシャフトが例えば10°程度屈曲されているため、ジョイント部の性能を減じていた。
【0024】
そのため本発明に係る電動式車両では、電動モータの回転軸を車両上下方向と略平行となるように配置することで、電動モータが路面と接触することを防止し、従来構造よりも地上高を低く抑えることで、出力軸とドライブシャフト127とを水平に近づけることができる。このため、ジョイント部の性能を最大限に活用することができる。
【0025】
図6は、本発明に係る電動式車両の後輪懸架装置を示す斜視図である。先ず、後輪懸架装置において図1に示したように、シートレール112とスイングアーム113との間にリアサスペンション130が掛け渡される。後輪懸架装置は図6に示されるように、電動パワーユニット10の後輪用モータアセンブリ11のギアボックス12から延出されたドライブシャフト131とこのドライブシャフト131を覆うハウジング132とを含んで構成される。ハウジング132は、モータアセンブリ11と後輪102との間に配置され、スイングアーム113に支持される。なお、左右のスイングアーム113の後端部相互間はボトムプレート133によって連結され、このボトムプレート133上に電動パワーユニット10が搭載される。
【0026】
更に、本実施形態における電動パワーユニット10の具体的構成について説明する。上述したように電動パワーユニット10は、モータアセンブリ11とギアボックス12とを含んでいる。図7に示すようにモータアセンブリ11は、半径方向寸法が軸方向寸法よりも大きい円筒形状のモータ本体13と、この円筒形状の中心で可能自在に支持された回転軸14がケーシング15内に収容されてなる。ケーシング15は薄型円筒もしくは円柱状を呈する。回転軸14には周囲に磁石16が配設されてなるロータ17が固定され、ロータ17の外周に沿ってステータコイル18が配置される。ギアボックス12はケーシング15の上部に結合し、両者は実質的に一体化している。
【0027】
モータ本体13の回転軸14はケーシング15の上面から突出し、ギアボックス12内に延出する。ギアボックス12内には複数の歯車列が収容され、即ちこの実施形態では回転軸14の端部に取り付けたギア19と回転軸20に取り付けたギア21とが相互に噛合する。なお、これらのギア19,21は平歯車等であってよい。また、回転軸20のギア21とは反対側端部に取り付けたギア22と電動パワーユニット10の出力軸23に取り付けたギア24とが相互に噛合する。なお、これらのギア22,24は傘歯車等であってよい。ギア19,21及びギア22,24でなる歯車列は一例を示すものであり、電動式車両100の仕様等に応じて歯車の種類や配列数等は変更可能である。
【0028】
電動パワーユニット10においてモータアセンブリ11は、回転軸14が車両上下方向と平行になるように配置され、前輪用モータアセンブリ11はボディフレーム111の前部下部に配置されて前輪101を駆動する。また、後輪用モータアセンブリ11にあっては、スイングアーム113の後部に配置されて後輪102を駆動する。
【0029】
より具体的には前輪用モータアセンブリ11は、後述のステアリングシャフトよりも下方であってアンダフレーム115の上方に配置される。詳述すれば、前輪用モータアセンブリ11は、側面視においてメインフレーム114とアンダフレーム115とダウンチューブ116と懸架フレーム117とで囲まれた剛性の高いスペース部位に配置される。この場合、図4に示されるようにアンダフレーム115上にそれぞれ支持ブラケット25が立設されると共に、モータアセンブリ11のケーシング15の後部周面にそれぞれ取付ブラケット26が突設される。これらの支持ブラケット25及び取付ブラケット26を互いに重ねるようにして締結ボルト27を貫通させ緊締することで、モータアセンブリ11を上述の配置スペースに固定することができる。なお、詳細な図示を省略するが、モータアセンブリ11のケーシング15の前部においても同様な締着構造とすることが可能である。
【0030】
また、後輪用リアモータアセンブリ11は、スイングアーム113の後部であってこれら左右一対のスイングアーム113の間に配置される。詳述すれば、後輪用モータアセンブリ11は、スイングアームの下面に取り付けられたボトムプレート133上に車幅方向に並べて配置される。この場合、図6に示されるようにボトムプレート133は、例えば樹脂又は金属材料によって形成された一様の板材でなり、モータアセンブリ11の前面、下面及び後面を覆うように取り付けられる。
【0031】
前述したように前輪用モータアセンブリ11においてはドライブシャフト127とのジョイント部に自在継手が設けられる。ここで、図8はこのジョイント部の連結構造の例を示している。図において、ギアボックス12から突出する出力軸23とドライブシャフト127は自在継手134を介して連結される。アウタカプラ135及びインナカプラ136にそれぞれ形成されたガイド溝135a及び136aによって挟持されるかたちでボール137が装着され、このボール137を介して等速ジョイントが構成される。かかる自在継手を設けることで、出力軸23及びドライブシャフト127間で回転方向に固定され、軸方向には所定ストローク移動可能である。なお、アウタカプラ135の開口部にはブーツ138が被着し、防塵作用を奏する。
【0032】
次に、本発明に係る電動式車両の操舵装置について説明する。本発明に係る操舵装置は図2等に示されるように着座シート104の前方に配置されたハンドル105と、ハンドル105の左右方向中央部から前方下方に向けて延出され車体フレームに回動自在に支持されたステアリングシャフト139と、図4等にステアリングシャフト139の下端と前述した懸架装置のリンクレバー129との間に掛け渡された左右一対のリンクロッド140とで構成される。
【0033】
詳述すると、ステアリングシャフト139は図4(及び図3)に示されるように、左右の懸架フレーム117の間に掛け渡されたエンドブリッジ141にその下端が回転自在に支持される。このエンドブリッジ141の直上にはリンクブラケット142がステアリングシャフト139と回転一体に具備される。このリンクブラケット142の後部とナックルプレート126のリンクレバー129との間にリンクロッド140が配置される。
【0034】
かかる構成の操舵装置によれば運転者が、ハンドル105を左右に操作するとステアリングシャフト139の軸を中心に、リンクブラケット142がその操作に応じた方向に回転する。リンクブラケット142には、リンクロッド140の一端が接続されるため、操作に応じてリンクロッド140が動作し、その他端側に接続されたリンクレバー129に操作力が伝達され、前輪101が操向動作する。
【0035】
上記の場合、図2のように側面視において、車体フレームを構成するダウンチューブ116が車体フレームの前側に偏倚して配置され、ダウンチューブ116よりも前方に前輪用モータアセンブリ11が配置される。また、ダウンチューブ116よりも後方にバッテリ143が配置される。
【0036】
上記構成でなる電動式車両100において、この車両に乗車した運転者は電動パワーユニット10を始動し、ハンドル105を適宜左右に操作することで電動式車両100を自由に走行させることができる。この場合、前輪101及び後輪102共に独立して駆動される所謂、四輪駆動方式であるため、不整地等において極めて良好且つ安定した走行を実現することができる。
【0037】
本発明において特に、先ず電動パワーユニット10の電動モータは、その回転軸14が車両上下方向と略平行となるように車体フレームに配置される。
この構成すれば、電動モータの上下寸法を短くすることができ、電動モータを車体フレームより下方に突出することなく配置することができる。従って、凹凸の激しい路面を走行したとしても、電動モータに路面が直接接触することを防止できる。これにより不整地走行等においても常に安全走行を保証することができる。
【0038】
また、電動パワーユニット10においてその電動モータのケーシング15の上方に複数のギアが収容されたギアボックス12が配置される。
このようにギアボックス12が電動モータの上方に配置されるため、路面から巻き上げられた粉塵が歯車箱内に進入することを防止できる。
【0039】
また、前輪用モータアセンブリ11において、ステアリングシャフト139よりも下方に配置される。そして、 このように電動モータの回転軸が上下方向と平行になるようにモータアセンブリ11を配置することにより、モータアセンブリ11を車体フレームの下方に突出させることなくステアリングシャフト139の下方に配置することができる。
【0040】
かかる構成すれば、ステアリングシャフト139の前方に空間を確保することができ、その空間を利用してステアリングシャフト139をより前方に配置することができる。従って、リンクロッド140の角度を自由に設定することができ、適度な操舵力に調整することができる。また、ステアリングシャフト139の下端を支持するエンドブリッジ141をモータアセンブリ11の上面付近まで下げることができるため、上下方向においてもリンクロッド140の角度を調整することが可能となる。
また、ステアリングシャフト139の下部に備えられたリンクブラケット142の形状を変更してもリンクロッドの140の角度を調整することができる。例えば、本実施形態において、リンクブラケット142はステアリングシャフト139よりも後方へ延されてリンクロッド140と連結されるが、前方の空間を確保できるため、リンクブラケット142をステアリングシャフト139の前方へ延してもよい。なお、リンクブラケット142を上下方向に延すこともできる。
【0041】
更に、側面視において、車体フレームを構成するダウンチューブ116が車体フレームの前側に偏倚して配置され、ダウンチューブ116よりも前方にモータアセンブリ11が配置される。また、ダウンチューブ116よりも後方に電動パワーユニット10の駆動用バッテリ143が配置される。
【0042】
このようにダウンチューブ116を車体フレームの前側に偏倚して配置することで、ダウンチューブ116の前方の車体フレームの剛性を向上させることができる。そして、この範囲内に前輪用モータアセンブリ11を配置することで、走行中に車体フレームに作用する負荷荷重に伴う前輪用モータアセンブリ11への応力を抑制し、該モータアセンブリ11を保護することができる。また、ダウンチューブ116を前方に偏倚させたため、ダウンチューブ116の後方には、大型のバッテリ143を配置することができる。
【0043】
ここでまた、本発明に係る電動式車両100の変形例について説明する。図9に示したように左右の前輪101に対してそれぞれ電動パワーユニット10が配置されるが、この場合2つのモータアセンブリ11が前後に配置される。例えばこの例のように左側の前輪101に接続されるモータアセンブリ11を前側に、右側の前輪101に接続されるモータアセンブリ11を後側に配置する、即ち車両左右方向の中心軸線に沿って前後に並べて配置というものである。
【0044】
この場合更に、一方の例えば前側のモータアセンブリ11の回転軸14が下方に向けて配置され、他方の即ち後側のモータアセンブリ11の回転軸14が上方に向けて配置される。加えて、前後2つのモータアセンブリ11が平面視で部分的に重なるように配置される。なお、このように部分的に重ならないで、即ち図9(b)において前側のモータアセンブリ11を二点鎖線により示すように、前後のモータアセンブリ11が略外周にて接する程度の配置関係とすることも可能である。
【0045】
このように2つのモータアセンブリ11を前後に配列することで、特に車両左右方向の配置スペースを有効に減少することができ、コンパクト化を実現可能である。その場合更に、それらのモータアセンブリ11の回転軸14を互いに上下反対向きに配置することで、スペースの有効利用を図ることができる。
【0046】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態において電動パワーユニット10は、モータアセンブリ11の上側にギアボックス12が配置される例を説明したが、図9に示した変形例を含めて両者を上下反対に配置することも可能である。例えば図4等に示した左右に電動パワーユニット10を配置する場合、左右いずれか一方又は双方につきギアボックス12をモータアセンブリ11の下側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 電動パワーユニット、11 モータアセンブリ、12 ギアボックス、13 モータ本体、14 回転軸、15 ケーシング、16 磁石、17 ロータ、18 ステータコイル、19,21 ギア、23 出力軸、100 電動式車両、101 前輪、102 後輪、103 フロアボード、104 着座シート、105 ハンドル、106 フロントフェンダ、107 リアフェンダ、108 アッパカバー、109 サイドカバー、111 ボディフレーム、112 シートレール、113 スイングアーム、114 メインフレーム、115 アンダフレーム、116 ダウンチューブ、117 懸架フレーム、118 クロスフレーム、119 バンパフレーム、120 フロントキャリア、121 リアキャリア、123 フロントサスペンション、124 アッパアーム、125 ロアアーム、126 ナックルプレート、127 ドライブシャフト、128 軸受部、129 リンクレバー、130 リアサスペンション、131 ドライブシャフト、132 ハウジング、133 ボトムプレート、134 自在継手、135 アウタカプラ、136 インナカプラ、137 ボール、138 ブーツ、139 ステアリングシャフト、140 リンクロッド、141 エンドブリッジ、142 リンクブラケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、前記車体フレームに配置された駆動源としての電動モータを含む電動パワーユニットとを備えた電動式車両であって、
前記電動モータは、その回転軸が車両上下方向と略平行となるように前記車体フレームに配置されたことを特徴とする電動式車両。
【請求項2】
前記電動パワーユニットは、前記電動モータにより構成されるモータアセンブリの上側に、複数のギアが収容されたギアボックスが配置されたことを特徴とする請求項1記載の電動式車両。
【請求項3】
前記車体フレームの前部に回転自在に支持されたステアリングシャフトを備え、前輪用の前記電動パワーユニットが、前記ステアリングシャフトよりも下方に配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載の電動式車両。
【請求項4】
側面視において、前記車体フレームを構成するダウンチューブが該車体フレームの前側に偏倚して配置され、前記ダウンチューブよりも前方に前記前輪用の電動パワーユニットが配置され、前記ダウンチューブよりも後方にバッテリが配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電動式車両。
【請求項5】
左右の前記前輪用の電動パワーユニットを有し、一方の前記電動モータユニットの電動モータの回転軸が下方に向けて配置され、他方の前記電動モータユニットの電動モータの回転軸が上方に向けて配置されたことを特徴とする請求項3又は4記載の電動式車両。
【請求項6】
前記電動モータユニットそれぞれの前記電動モータの回転軸が、車両左右方向の中心軸線上に沿って並べて配置されたことを特徴とする請求項5記載の電動式車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−46077(P2012−46077A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189889(P2010−189889)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】