説明

電動機コイルの洗浄方法及び洗浄装置

【課題】 電動機の固定子コイル又は回転子コイルの表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを、簡易かつ低コストで、電動機の固定子コイル又は回転子コイルの絶縁物を傷めることなく効果的に除去し得る洗浄方法、並びに洗浄装置を提供する。
【解決手段】 洗浄液3が入った洗浄槽1内に電動機コイル2を浸漬し、洗浄槽1内に設けた噴出手段4から洗浄液3に蒸気7を吹き込んで、洗浄液3を沸騰させる、電動機コイルの洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の固定子コイル又は回転子コイルに付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを除去し得る洗浄方法、並びに洗浄装置に関し、特に、圧延機や搬送ローラー等における駆動用電動機の固定子コイル又は回転子コイルを好適に洗浄し得る洗浄方法、並びに洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工場における電動装置や設備等の駆動動力源として使用されている電動機は、経年とともに付着・固着化した油分や塵埃等の汚れによる吸湿が原因で絶縁抵抗値が著しく低下する。そのため、電動機の絶縁性能を回復し電動機の延命を図ることを目的として、電動機の固定子コイル及び回転子コイルを洗浄し絶縁再処理する絶縁更正作業が行われる。
【0003】
この絶縁更正作業は、通常、電動機の分解−洗浄−乾燥−ワニス処理−組立ての各工程を備えている。中でも、洗浄工程は、従来から、洗浄前に予備乾燥を行い、付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを浮き上がらせてエアーブローにより大まかな汚れの除去を行った後、スチームによる吹き飛ばし洗浄、有機溶剤による浸漬洗浄、あるいはブラシによる擦り落とし洗浄等を組み合わせて行われている。かかる洗浄工程における洗浄が不十分であると、その後のワニス処理を慎重に行っても良好な絶縁性能の回復が困難になり、電動機の短寿命化の一因となるため、電動機の固定子コイル及び回転子コイルに付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを効果的に除去し得る洗浄方法、及び洗浄装置の開発が望まれている。
【0004】
これまでに、電動機の固定子コイル及び回転子コイルの洗浄方法及び洗浄装置に関する技術は、いくつか提案されてきている。例えば、特許文献1には、電動機の形状追従機構を有する洗浄ノズルを用いて電動機の固定子、回転子、及び鉄心を自動洗浄する電動機自動洗浄装置に関する技術が開示されており、この電動機自動洗浄装置は、電動機への進退自在機構を有している。また、特許文献2には、電動機の固定子コイル及び回転子コイルを洗浄液中に浸漬し、洗浄液を電動機の固定子コイル又は回転子コイルに噴射する液中噴射洗浄と、超音波洗浄とを組み合わせ、無泡性洗剤を用いることを特徴とする電動機の固定子コイル及び回転子コイルの洗浄方法に関する技術が開示されている。
【0005】
一方、機械部品の洗浄に関する技術として、例えば、特許文献3には、フード内のターンテーブル上に大型機械部品を載置し、フード内側の床上に立設された縦長の洗浄液噴射ノズルヘッダから洗浄液を部品へ噴射することで、粉塵や潤滑油で汚れた圧延機のロールチョック等の大型機械部品を洗浄し得る装置に関する技術が開示されている。また、特許文献4には、台車、エンジン等の大型部品の洗浄において、可動部分に洗浄液噴射ノズルを取り付けたロボットを洗浄室内に設置し、大型部品に対してノズル位置を変化させて高圧水を噴射し、その後、エアジェットにより洗浄し得る装置に関する技術が開示されている。さらに、非特許文献1には、60℃の温水による水と油との表面張力、及び油の粘性の低下を利用し、ジェット水流・バブリング等で機械的に油分を剥ぎ取ることで部品を洗浄し得る装置に関する技術が開示されている。この装置は、洗浄槽の中にジェット水流を発生させるための回転籠とスプレーノズルとが配置され、浸漬ジェット水流洗浄、浸漬バブリング洗浄、あるいは気中ジェット洗浄の3パターンを選択し得る構成を備えている。
【特許文献1】特開平9−107662号公報
【特許文献2】特開平3−18250号公報
【特許文献3】特開昭54−146464号公報
【特許文献4】特開平11−76955号公報
【非特許文献1】横河技報、Vol.44、No.2(2000)、p.107−108
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、特許文献3、及び特許文献4に開示されているような、大型部品や電動機の固定子コイル又は回転子コイルに高圧洗浄液を吹き付ける洗浄方法では、被洗浄材である大型部品や電動機の固定子コイル又は回転子コイルの表面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを除去し得るのみである。そのため、特に、内部が中空である回転子コイルの裏面(中空の内面側)に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを完全には除去できないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示されている液中噴射洗浄と超音波洗浄とを組み合わせた洗浄方法は、超音波洗浄を用いることで上記特許文献1に開示されている洗浄方法よりも良好な洗浄効果を得ることが可能であると考えられるが、超音波洗浄の効果を得るためには被洗浄材の近くに超音波発生源を設ける必要がある。そのため、電動機の固定子コイル又は回転子コイルの裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを除去するための洗浄方法として適用することは困難であるという問題があった。
【0008】
さらに、非特許文献1に開示されている洗浄装置を用いて洗浄する方法は、優れた洗浄効果を有すると考えられるが、電動機の固定子コイル又は回転子コイルの洗浄に適用する場合には、被洗浄材である電動機の固定子コイル又は回転子コイルが大型であるため、洗浄液噴射ノズルやバブリング管を被洗浄材に近づけて多数設置する必要があり、設置コストがかさむという問題があった。このほか、コイルを浸漬した洗浄液を加温するためのヒータも設置する必要があり、電動機の固定子コイル又は回転子コイルを洗浄する大量の洗浄液を加温する必要があるため、ヒータの電力量が膨大になる等の問題があった。また、被洗浄材としての電動機の固定子コイル又は回転子コイルを収納した洗浄ドラムを回転させるためには大掛かりな装置が必要になるという問題もあった。
【0009】
加えて、一部上述したように、上記特許文献1〜4、及び非特許文献1に開示されている洗浄方法は、被洗浄材に高圧の洗浄液を直接吹き付けて、被洗浄材の表面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを機械的に剥ぎ取る方法である。ここに、被洗浄材である電動機の固定子コイル及び回転子コイルの表面に被覆されている、ガラステープにレジン等を含浸した絶縁物は、経年的に劣化が進行していることから、機械的な強度も低下している。そのため、被洗浄材に高圧の洗浄液を直接吹き付けると、被洗浄材の絶縁物を傷め、絶縁性を低下させる要因となる。したがって、電動機の固定子コイル及び回転子コイルの絶縁更正作業に用いる洗浄方法としては好ましくないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、電動機の固定子コイル又は回転子コイルの表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを、簡易かつ低コストで、電動機の固定子コイル又は回転子コイルの絶縁物を傷めることなく効果的に除去し得る洗浄方法、並びに洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、洗浄液を入れた洗浄槽に、被洗浄材である電動機の固定子コイル又は回転子コイルの少なくとも一部を浸漬させ、沸騰させた洗浄液により、被洗浄材の表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを効果的に除去することで電動機の固定子コイル又は回転子コイルを洗浄する方法、及び、このような洗浄を行い得る装置を提供している。本発明にかかる洗浄方法及び洗浄装置が適用される電動機の固定子コイル又は回転子コイルの種類は特に限定されるものではないが、例えば、圧延機や搬送ローラー等の駆動用の中型、あるいは大型の電動機の固定子コイル又は回転子コイルを洗浄する際に好適に使用することができる。なお、本発明を大型の電動機の固定子コイル又は回転子コイルの洗浄に適用する場合には、被洗浄材である電動機の固定子コイル又は回転子コイルの一部を洗浄液に浸漬し、洗浄液に浸漬させた電動機の固定子コイル又は回転子コイルを回転させて、当該被洗浄材を洗浄することが好ましい。このような形態とすることで、大掛かりな装置を設置せずに大型の電動機の固定子コイル又は回転子コイルを洗浄し得る、電動機の固定子コイル又は回転子コイルの洗浄方法及び洗浄装置を提供することができる。
【0012】
本発明では、洗浄層内の洗浄液を沸騰させるべき蒸気を供給する配管が、洗浄槽内側の底面及び/又は側面に設けられている。そのため、配管内に蒸気を供給することのみで、洗浄液を沸騰させることが可能になるため、簡易かつ低コストの設備で電動機の固定子コイル又は回転子コイルを洗浄することが可能になる。さらに、本発明では、蒸気により沸騰させた洗浄液を用いて電動機の固定子コイル又は回転子コイルを洗浄するため、電動機の固定子コイル又は回転子コイルをマイルドに洗浄することが可能になる。したがって、洗浄液を被洗浄材に直接噴射して洗浄していた従来の方法とは異なり、本発明によれば、絶縁物を傷めることなく電動機の固定子コイル又は回転子コイルを洗浄することが可能になる。加えて、本発明において、電動機の固定子コイル又は回転子コイルは洗浄液に浸漬しており、沸騰させた洗浄液は、電動機の固定子コイル又は回転子コイルの表面及び裏面にまんべんなく行き渡る。したがって、本発明によれば、電動機の固定子コイル又は回転子コイルの表面及び裏面の細部に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れをも効果的に除去することが可能になる。
【0013】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0014】
第1の本発明は、洗浄液(3)が入った洗浄槽(1)内に電動機コイル(2)を浸漬し、洗浄槽(1)内に設けた噴出手段(4)から洗浄液(3)に蒸気(7)を吹き込んで、洗浄液(3)を沸騰させることを特徴とする、電動機コイルの洗浄方法により、上記課題を解決する。
【0015】
ここに、本発明及び以下の発明において、電動機コイルとは、電動機の固定子コイル又は回転子コイルを意味している。また、本発明及び以下の発明における噴出手段(4)は、洗浄液(3)に蒸気を吹き込み得る手段であれば、特に限定されるものではなく、その具体例としては、蒸気噴出し用の穴を備える配管等を挙げることができる。
【0016】
第2の本発明は、洗浄液(3)が入った洗浄槽(1)内に電動機コイル(10)の一部を浸漬し、洗浄槽(1)内に設けた噴出手段(4)から洗浄液(3)に蒸気(7)を吹き込んで、洗浄液(3)を沸騰させつつ電動機コイル(10)を回転させて、浸漬洗浄する部位を順次移動することを特徴とする、電動機コイルの洗浄方法により、上記課題を解決する。
【0017】
上記第1の本発明及び第2の本発明において、蒸気(7)吹き込みに加えて、さらに、洗浄液(3)に高圧空気を吹き込むことが好ましい。
【0018】
また、上記第1の本発明及び第2の本発明において、蒸気(7)及び/又は高圧空気の噴出は、洗浄槽(1)内の下部及び/又は側部側から行うことが好ましい。
【0019】
第3の本発明は、電動機コイル(2)を洗浄するための洗浄装置(100)であって、洗浄液(3)を入れる洗浄槽(1)と、洗浄槽(1)内面の底部及び/又は側面に設けられた、洗浄液(3)中に蒸気(7)を吹き込む手段(4a)と、を備えることを特徴とする、電動機コイルの洗浄装置(100)により、上記課題を解決する。
【0020】
第4の本発明は、電動機コイル(10)を洗浄するための洗浄装置(200)であって、洗浄液(3)を入れる洗浄槽(1)と、洗浄槽(1)内面の底部及び/又は側面に設けられた、洗浄液(3)中に蒸気(7)を吹き込む手段(4a)と、電動機コイル(10)を回転させる回転手段(12)と、を備えることを特徴とする、電動機コイルの洗浄装置(200)により、上記課題を解決する。
【0021】
上記第3の本発明及び第4の本発明において、蒸気を吹き込む手段(4a)に加えて、さらに、洗浄液(3)に高圧空気を吹き込む手段(4b)を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
第1の本発明によれば、洗浄槽(1)に設けられている噴出手段(4)内に供給される蒸気(7)を、洗浄液(3)の中へと吹き込み、洗浄液(3)を加熱し沸騰させる。ここに、洗浄液(3)を加熱し沸騰させる過程で、当該洗浄液(3)に浸漬されている電動機コイル(2)の表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れと、電動機コイル(2)の表面及び裏面との付着・固着力が低下する。したがって、第1の本発明によれば、電動機コイル(2)の表面及び裏面との付着・固着力が低下した上記汚れを、沸騰させた洗浄液(3)により効果的に除去することが可能になる。
加えて、第1の本発明では、洗浄液(3)は、加熱される過程で攪拌されて電動機コイル(2)の隅々にまで行き渡り、さらに、沸騰すると、噴出手段(4)から噴き出す蒸気(7)の気泡(9)により泡が発生する。そのため、洗浄液(3)に浸漬されている電動機コイル(2)の表面及び裏面の細部にまで洗浄液(3)の泡を行き渡らせることが可能になる結果、電動機コイル(2)に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを一層効果的に除去する(機械的に除去する)ことが可能になる。一方、第1の本発明では、沸騰させた洗浄液(3)を用いて電動機コイル(2)を洗浄することから、電動機コイル(2)に高圧の洗浄液を直接噴射することはない。そのため、電動機コイル(2)の絶縁物を傷めることなく、電動機コイル(2)を洗浄することが可能になる。また、第1の本発明では、洗浄槽(1)に設けた噴出手段(4)に蒸気(7)を供給するのみで、洗浄液(3)を沸騰させ、沸騰させた洗浄液(3)を用いて電動機コイル(2)を洗浄している。そのため、本発明は、簡易かつ低コストで実施することが可能である。したがって、第1の本発明によれば、電動機コイルの表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを、簡易かつ低コストで、電動機コイルの絶縁物を傷めることなく効果的に除去し得る、電動機コイルの洗浄方法を提供することが可能になる。
【0023】
第2の本発明によれば、電動機コイル(10)の一部が洗浄液(3)に浸漬されており、回転手段(12)を用いて電動機コイル(10)を回転させることができる。そのため、本発明によれば、大型の電動機コイル(10)を洗浄する場合であっても、一部を洗浄液(3)に浸漬させた当該電動機コイル(10)を回転させることで、洗浄液(3)に浸漬されている上記電動機コイル(10)の部位を移動させることが可能になる。したがって、第2の本発明によれば、大型の電動機コイル(10)を洗浄する場合であっても、当該大型の電動機コイル(10)の全体を浸漬させ得る大きさの洗浄槽を用意することなく、当該電動機コイル(10)の表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを除去し得る、電動機コイルの洗浄方法を提供することが可能になる。
【0024】
上記第1の本発明及び第2の本発明において、洗浄液(3)に蒸気(7)を吹き込むことに加えて、さらに、高圧空気を洗浄液(3)に吹き込むことで、沸騰した洗浄液(2)内に空気の気泡を存在させることができる。すなわち、蒸気(7)の気泡(9)が電動機コイル(2、10)の絶縁物に直接接触する頻度を低減することが可能になるため、高圧空気を吹き込むことで、耐熱性に劣る絶縁物を備える電動機コイル(2、10)であっても好適に洗浄することが可能な、電動機コイルの洗浄方法を提供することが可能になる。
なお、蒸気(7)に加えて、さらに高圧空気を洗浄液(3)に吹き込む場合、高圧空気を吹き込むタイミングは特に限定されるものではない。高圧空気は、蒸気(7)により洗浄液(3)を沸騰させた後に流しても良いが、洗浄液(3)が沸騰するまでの間に、高圧空気の気泡を用いて電動機コイル(2)の予備洗浄を可能にするという観点から、洗浄液(3)が沸騰する前に高圧空気を吹き込むことが好ましい。洗浄液(3)が沸騰する前のタイミングの具体例としては、蒸気(7)と同時に、蒸気を吹き込む噴出手段とは別の噴出手段から、高圧空気を吹き込む形態等を挙げることができる。
【0025】
また、上記第1の本発明及び第2の本発明において、蒸気(7)及び/又は高圧空気を、洗浄槽(1)内の下部及び又は側部側から吹き込むことで、電動機コイル(2)を効果的に洗浄する際に、蒸気(7)の泡及び/又は空気の気泡を有効に活用することが容易になる。
【0026】
第3の本発明にかかる電動機コイルの洗浄装置(100)によれば、洗浄槽(1)内面の底部及び/又は側面に、蒸気(7)を吹き込む手段(4a)が設けられている。そのため、第3の本発明にかかる洗浄装置(100)を用いれば、洗浄槽(1)内に洗浄液(3)を入れ、当該洗浄液(3)に電動機コイル(2)を浸漬させた後、上記吹き込み手段(4a)から噴き出す蒸気(7)により洗浄液(3)を沸騰させることが可能になる。このようにすることで、簡易かつ低コストの設備で洗浄液(3)を沸騰させることができる、洗浄装置(100)とすることが可能になる。したがって、第3の本発明によれば、電動機コイル(2)の表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを、簡易かつ低コストで、電動機コイル(2)の絶縁物を傷めることなく効果的に除去し得る、電動機コイルの洗浄装置(100)とすることが可能になる。なお、第3の本発明にかかる電動機コイルの洗浄装置(100)の使用方法は限定されるものではないが、特に、上記第1の本発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0027】
第4の本発明にかかる電動機コイルの洗浄装置(200)によれば、洗浄槽(1)内面の底部及び/又は側面に、蒸気(7)を吹き込む手段(4a)が設けられており、さらに、電動機コイル(10)を回転させる回転手段(12)が備えられている。そのため、第4の本発明にかかる洗浄装置(200)を用いれば、例えば、電動機コイル(10)が大型である場合には、洗浄槽(1)に入れた洗浄液(3)に当該電動機コイル(10)の一部を浸漬させた後に、洗浄液(3)を沸騰させ、沸騰した洗浄液(3)を用いて回転させながら浸漬部位を移動させつつコイル(10)を洗浄することが可能になる。このようにすることで、大型の電動機コイル(10)の表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを、簡易かつ低コストで、電動機コイル(10)の絶縁物を傷めることなく効果的に除去し得る、電動機コイルの洗浄装置(200)とすることが可能になる。なお、第4の本発明にかかる電動機コイルの洗浄装置(200)の使用方法は限定されるものではないが、特に、上記第2の本発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0028】
上記第3の本発明及び第4の本発明において、蒸気を吹き込む手段(4a)に加えて、さらに、高圧空気吹き込み手段(4b)を備える電動機コイルの洗浄装置(300)とすることで、洗浄槽(1)に入れた洗浄液(3)中に空気の気泡を存在させ得る洗浄装置(300)とすることが可能になる。したがって、蒸気(7)の気泡(9)が電動機コイル(2、10)の絶縁物に直接接触する頻度を低減することが可能になるため、耐熱性に劣る絶縁物を備える電動機コイル(2、10)であっても好適に洗浄することが可能な、電動機コイルの洗浄装置(300)を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる電動機コイルの洗浄方法を概略的に示す外観図である。図1において、上下方向が鉛直方向であり、左右方向が水平方向である。なお、図1における矢印は、蒸気の流れる方向を表している。
【0030】
図1において、中型の電動機コイル(以下において、「回転子コイル」と記述する。)2は、洗浄槽1内の洗浄液3に浸漬されている。中型の回転子コイル2は、受け台5、5の上に載置されており、回転子コイル2の下方には、蒸気7が供給される噴出手段としての配管4(以下において、単に「配管4」と記述する。)が配置されている。本発明にかかる電動機コイルの洗浄方法では、配管4内に供給される蒸気7を、配管4に設けられた穴8、8、…から洗浄液3の中に吹き込み、当該洗浄液3を加熱し沸騰させる。洗浄液3が蒸気7により加熱されると、回転子コイル2及び当該回転子コイル2の表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れが温められ、油分や塵埃等の汚れと回転子コイル2の表面及び裏面との付着・固着力が低下し、回転子コイル2の表面及び裏面から汚れが除去されやすくなる。一方、洗浄液3は、加熱されるにつれて、対流が盛んになり攪拌されるとともに、沸騰すると蒸気7の気泡9に起因して、泡が生じる。そのため、蒸気7により洗浄液3を沸騰させると、付着・固着力が低下した汚れを、沸騰した洗浄液3により容易に除去する(機械的に除去する)ことが可能になる。ここに、沸騰した洗浄液3内に生じた泡は、洗浄液3の対流に伴い、回転子コイル2の表面及び裏面の細部にまで到達する。一方、上述したように、沸騰した洗浄液3内に浸漬されている回転子コイル2に付着・固着化した汚れは、その付着・固着力が低下している。そのため、洗浄液3を蒸気7により沸騰させることで、回転子コイル2の表面及び裏面の細部に付着・固着化した汚れをも、効果的に除去することが可能になる。さらに、本発明では、洗浄槽1内に蒸気吹き出し用の穴8、8、…を備える配管4を噴出手段として設け、当該配管4内に蒸気を供給することのみで洗浄液3を沸騰させている。したがって、本発明にかかる電動機コイルの洗浄方法によれば、簡易かつ低コストで、電動機コイルの汚れを効果的に除去することが可能になる。
【0031】
また、図1に示すように、本発明にかかる電動機コイルの洗浄方法では、蒸気7を用いて洗浄液3を沸騰させ、沸騰した洗浄液3に生じる泡を用いて、回転子コイル2に付着・固着化した汚れを除去している。そのため、従来の洗浄方法とは異なり、高圧の洗浄液を回転子コイルに直接噴射することはない。したがって、本発明の電動機コイルの洗浄方法によれば、経年変化で劣化したコイル2に被覆された絶縁物を傷つけることなく、コイル2を洗浄することが可能になる。加えて、本発明の電動機コイルの洗浄方法によれば、回転子コイル2の表面及び裏面の細部に付着・固着化した汚れをも、効果的に除去することができることから、洗浄後の回転子コイル2は、長期間に亘って高い絶縁抵抗値を維持することが可能になる。そのため、回転子コイル2を長期間使用した場合であっても、電動機の焼損事故を防止することが可能になる。なお、本発明では、高圧の洗浄液を直接噴射することはないため、汚れを機械的に除去する能力自体は従来よりも劣る可能性がある。しかし、本発明では、沸騰させた洗浄液3を用いて汚れを除去することで、付着・固着力が従来よりも低下した汚れを除去している。そのため、本発明によれば、従来方法と同等程度以上の汚れ除去能力を確保することが可能になる。
【0032】
ここで、洗浄液に回転子コイルを浸漬させて洗浄する本発明にかかる洗浄方法と、洗浄液を直接噴射することにより回転子コイルを洗浄する従来の洗浄方法との違いを、図を用いて概説する。図2に、回転子コイルの断面を概略的に示す。図2(a)は、回転子コイル2の断面の一部を概略的に示す図であり、図2(b)は、図2(a)において実線で囲んだ部位のみを拡大して示す概略図である。また、図2(b)に示す回転子コイルを、従来の方法により洗浄する様子を図3(a)に、本発明の方法により洗浄する様子を図3(b)に、それぞれ概略的に示す。なお、図2(a)、(b)、及び図3(a)、(b)において、図の左右方向が、回転子コイルの軸の長手方向である。
【0033】
図2(b)に示すように、回転子コイル30は、整流子ライザ31、整流子32、バインド線33等を備え、表面及び裏面には、油分や塵埃等の汚れ35、35、…が付着・固着化している。図3(a)に示すように、従来の洗浄方法では、回転子コイル30に洗浄液36、36、…が直接噴射されていたため、コイル30の表面に付着・固着化している汚れ35は除去可能である一方、コイル30の裏面には洗浄液36、36、…が届き難いため、コイル30の裏面には汚れ35が残存しやすいという傾向があった。
【0034】
これに対し、図3(b)に示すように、本発明にかかる洗浄方法では、コイル30が洗浄液36に浸漬されているため、洗浄液36は、コイル30の表面及び裏面へと容易に行き渡る。したがって、図3(a)に示す従来の洗浄方法とは異なり、図3(b)に示す本発明の洗浄方法によれば、コイル30の表面に付着・固着化した汚れに加えて、コイル30の裏面に付着・固着化した汚れをも効果的に除去することが可能になる。
【0035】
図4は、本発明の第1実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置を概略的に示す外観図である。図4において、上下方向が鉛直方向であり、左右方向が水平方向である。
図4に示すように、本発明にかかる電動機コイルの洗浄装置100は、洗浄槽1と、当該洗浄槽1における内側の底面に設けられた配管4と、電動機コイルを載置すべき受け台5、5とを備えている。そのため、図4に示す洗浄装置100の洗浄槽1に洗浄液を入れ、受け台5、5の上に電動機コイルを載置し、さらに、不図示の蒸気供給源より配管4に蒸気を供給し、洗浄液の中に蒸気を吹き出す形態とすれば、本発明の第1実施形態にかかる電動機コイルの洗浄方法に好適に使用され得る、電動機コイルの洗浄装置100とすることができる。
【0036】
図5は、本発明の第2実施形態にかかる電動機コイルの洗浄方法を概略的に示す外観図である。図5において、上下方向が鉛直方向であり、左右方向が水平方向である。なお、図5における矢印は、蒸気の流れる方向を表している。
【0037】
図5に示すように、大型の回転子コイル10は、洗浄槽1の外部に配置された受け台11、11の上に載置されており、回転子コイル10の一部は洗浄槽1内の洗浄液3に浸漬されている。また、回転子コイル10は、回転手段12を用いて回転させることができる。図5において、図1と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
本発明の第2実施形態にかかる電動機コイルの洗浄方法を用いて大型の回転子コイルを洗浄する場合には、図5に示すように、回転手段12を用いて、洗浄液3に一部を浸漬させた回転子コイル10を回転させる。このようにすることで、沸騰した洗浄液3により洗浄される回転子コイル10の部位を順次移動させることが可能になる。すなわち、沸騰した洗浄液3により汚れが除去された回転子コイル10の部位を洗浄液3の外へ移動させるとともに、未だ汚れが除去されていない回転子コイル10の部位を洗浄液3の中へと移動させる等の形態で、回転子コイル10を回転させることが可能になる。したがって、本実施形態によれば、大型の回転子コイル10の表面及び裏面に付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを効果的に除去することが可能な、電動機コイルの洗浄方法とすることが可能になる。
【0039】
図6は、本発明の第2実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置を概略的に示す外観図である。図6において、上下方向が鉛直方向であり、左右方向が水平方向である。
図6に示すように、本発明にかかる電動機コイルの洗浄装置200は、洗浄槽1と、当該洗浄槽1に設けられた配管4と、上記洗浄槽1の外部に配置された受け台11、11と、電動機コイルを回転させる回転手段12とを備えている。そのため、図6に示す洗浄装置200の洗浄槽1に洗浄液を入れ、受け台11、11の上に電動機コイルを載置し、回転手段12により電動機コイルを回転させ、さらに、配管4に蒸気を流して当該蒸気を洗浄液の中に吹き出す形態とすれば、本発明の第2実施形態にかかる電動機コイルの洗浄方法に好適に使用され得る、電動機コイルの洗浄装置200とすることができる。
【0040】
図7は、図5における洗浄槽1のVII−VII線に沿った垂直断面図であり、洗浄槽1内の配管4と回転子コイル10との配置を概略的に示している。また、図8に、本発明の第3実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置の垂直断面図を概略的に示す。図8は、図7と同じ方向から、本発明の第3実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置を見た断面図である。ここに、本発明の第3実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置は、蒸気を流す配管以外に、高圧空気を流す配管を備える他は、第2実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置と同様の形態である。なお、図7及び図8では、理解を容易にするため、洗浄槽内に洗浄液を入れ、回転子コイルの一部を洗浄液に浸漬させるとともに、配管から蒸気及び/又は高圧空気が吹き出す様子を示している。なお、図7及び図8において、図5と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。以下、図7及び図8を適宜参照しつつ、本発明について説明する。
【0041】
図7に示す第2実施形態にかかる本発明の電動機コイルの洗浄装置おいて、洗浄槽1には2本の配管4、4が設けられており、当該配管4、4には、蒸気7が流れている。これに対し、図8に示す第3実施形態にかかる本発明の洗浄装置300では、洗浄槽1の内側に4本の配管4a、4a、4b、4bが設けられており、外側2本の配管4a、4aの内部には蒸気7が流れている一方、内側2本の配管4b、4bの内部には高圧空気が流れている。
【0042】
図7に示す第2実施形態にかかる本発明の洗浄装置を用いて電動機コイルを洗浄する場合には、蒸気7の気泡9に起因する泡が洗浄液3内に生じ、かかる泡が回転子コイル10の表面及び裏面の細部にまで行き渡ることで、当該表面及び裏面に付着・固着化した汚れを除去している。本実施形態にかかる洗浄装置において、配管4、4を設ける位置は特に限定されるものではないが、蒸気7の気泡がコイル10に直接当らないようにしてコイル絶縁物の熱劣化を防止するという観点から、コイル10から離れた位置に配管4、4を配置することが好ましい。また、配管4、4に設けられる穴の位置も特に限定されるものではないが、コイル絶縁物の熱劣化を防止するという観点から、蒸気の気泡がコイル2に直接向かわない位置に、穴を設けることが好ましい。
【0043】
これに対し、図8に示す第3実施形態にかかる本発明の洗浄装置300を用いて電動機コイルを洗浄する場合には、蒸気7及び高圧空気の気泡に起因する泡が洗浄液3内に生じ、かかる泡が回転子コイル10の表面及び裏面の細部にまで行き渡ることで、当該表面及び裏面に付着・固着化した汚れを除去する。すなわち、第3実施形態にかかる本発明の洗浄装置300を用いて電動機コイルを洗浄する場合には、洗浄液3内に高圧空気の気泡が存在するため、蒸気7の気泡9がコイル10に直接触れる頻度を低減させることが可能になる。したがって、本実施形態によれば、耐熱性に劣る絶縁物を備える電動機コイルであっても好適に洗浄することが可能な、電動機コイルの洗浄装置300及び洗浄方法を提供することが可能になる。
【0044】
本実施形態にかかる洗浄装置300において、配管4a、4a、4b、4bを設ける位置は特に限定されるものではないが、コイル絶縁物の熱劣化を防止しつつコイルに付着した汚れの効果的な除去を可能にするという観点から、高圧空気を流す配管4b、4bは、蒸気を流す配管4a、4aよりもコイル10の近くに配置することが好ましい。また、コイル絶縁物の熱劣化を防止するという観点から、蒸気7を通す配管4a、4aは、配管4b、4bよりもコイル2から離れた位置に配置することが好ましい。さらに、配管4a、4a、4b、4bに設けられる穴の位置も特に限定されるものではないが、コイル絶縁物の熱劣化を防止しつつコイルに付着した汚れの効果的な除去を可能にするという観点から、高圧空気を通す配管4b、4bには、コイル2に高圧空気の気泡が直接向かうような位置に穴が設けられることが好ましい。加えて、コイル絶縁物の熱劣化を防止するという観点から、蒸気7を通す配管4a、4aには、蒸気の気泡がコイル2に直接向かわない位置に、穴を設けることが好ましい。
【0045】
なお、本発明において、配管4に設けられる穴8、8、…の大きさ及び間隔は、特に限定されるものではないが、攪拌能力確保という観点から、穴8、8、…の大きさは1mm以上とすることが好ましい。また、蒸気を有効に使用するという観点から、当該穴8、8、…の大きさは50mm以下とすることが好ましい。更に、攪拌ムラを少なくするという観点から、穴8、8、…の間隔は300mm以下とすることが好ましい。
【0046】
本発明において、洗浄槽1内の配管4aに供給される蒸気7の温度は、特に限定されるものではない。ここに、本発明にかかる被洗浄材である電動機は、コイル、鉄心、及び絶縁物等、複数の部品、あるいは素材から形成されており、これらの各部材は、異なる比熱、あるいは熱膨張率を有している。そのため、このように様々な部材を備える電動機の汚れを効果的に除去するという観点から、洗浄液及びコイルの温度上昇は緩やかであることが好ましい。したがって、洗浄槽1内の配管4aに供給される蒸気7の温度は、洗浄液3及びコイル2の温度上昇を緩やかにするという観点から、150℃程度(配管4aに接続する元管内における温度)とすることが好ましい。
【0047】
また、本発明において、配管4aに供給される蒸気7の圧力、及び配管4bに供給される高圧空気の圧力は特に限定されるものではないが、攪拌能力を確保するという観点から、圧力は0.3MPa以上であることが好ましい。加えて、様々な種類の電動機の効果的な洗浄を可能にするという観点から、洗浄槽1内の配管4aに供給される蒸気の圧力は、バルブ等により調製可能な形態とすることが好ましい。
【0048】
さらに、本発明において使用される洗浄液は、電動機コイルに付着・固着化した油分や塵埃等の汚れを効果的に除去し得る無泡性の洗浄液であれば、特に限定されるものではなく、例えば、水等を好適に使用することができる。また、洗浄液として水を使用する場合、かかる水には、洗剤を混入しても良い。本発明において使用可能な洗剤は、油脂洗浄剤等を挙げることができる。また、洗剤を使用する場合、その洗剤の使用量も特に限定されるものではないが、例えば、洗剤として株式会社ヤナギ研究所製のオイルクラッシャーを使用する場合には、その濃度を3〜5%程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0049】
<実施例1>
実施例1にかかる電動機コイルの洗浄装置及び洗浄方法を図1に概略的に示す。図1は、本発明にかかる電動機コイルの洗浄装置及び洗浄方法により、小中型電動機の回転子コイルを洗浄する様子を概略的に示す外観図である。
【0050】
本実施例では、縦1.2m×横2.0m×高さ1.5mの大きさの洗浄槽1に、洗浄液3として1mの水を満たし、当該洗浄液3には、濃度が3%となるように、洗剤(株式会社ヤナギ研究所製のオイルクラッシャー)を混合した。そして、受け台5、5に、回転子コイル(モータ容量58kW、コイル部分400mm径×300mm幅、全長1000mm)2を載置し、当該回転子コイル2を洗浄槽1の洗浄液3に浸漬させた。また、本実施例にかかる洗浄槽1の内側の底部には、内径20mm×長さ1.2mの配管4が2本設けられている。当該配管4、4には、蒸気7(配管4、4に接続する元管内における温度150℃、圧力0.392MPa)が流されており、配管4、4に設けられた蒸気噴出孔8、8、…から流量10m/minの蒸気7を洗浄液3の中へと吹き込むことで、洗浄液3を加熱した。なお、本実施例において、蒸気噴出孔8、8、…の孔径及び間隔はそれぞれ1mm及び100mmであり、かかる蒸気噴出孔8、8、…を、各配管4の上側に12個×2列ずつ設けた。
このような条件で洗浄液3を加熱したところ、蒸気7の吹き込み開始から10分後に洗浄液3が沸騰した。なお、本実施例では、洗浄液3の沸騰後にも上記と同一流量の蒸気7を6時間に亘って流し続け、回転子コイル2の洗浄を行った。
【0051】
上記洗浄の完了後に、回転子コイル2を洗浄槽1から取り出し、洗浄状況を目視にて確認した。その結果、回転子コイル2の表面及び裏面には、油分や塵埃等の汚れが残存していなかった。したがって、本発明によれば、電動機コイルの汚れを効果的に除去し得ることが確認された。
【0052】
<実施例2>
実施例2にかかる電動機コイルの洗浄装置及び洗浄方法を図5に概略的に示す。図5は、本発明にかかる電動機コイルの洗浄装置及び洗浄方法により、大型電動機の回転子コイルを洗浄する様子を概略的に示す外観図である。
【0053】
本実施例では、縦4m×横8m×高さ1.5mの大きさの洗浄槽1に、洗浄液3として15mの水を満たし、当該洗浄液3には、濃度が3%となるように、洗剤(株式会社ヤナギ研究所製のオイルクラッシャー)を混合した。そして、受け台11、11に、回転子コイル(モータ容量3360kW×2台、コイル部分2000mm径×1200mm幅、全長11000mm)10を載置し、当該回転子コイル10の一部を洗浄槽1の洗浄液3に浸漬させた。また、本実施例にかかる洗浄槽1の内側の底部には、内径40mm×長さ7mの配管4が2本設けられている。当該配管4、4には、蒸気7(配管4、4に接続する元管内における温度150℃、圧力0.392MPa)が流されており、配管4、4に設けられた蒸気噴出孔8、8、…から流量30m/minの蒸気7を洗浄液3の中へと吹き込むことで、洗浄液3を加熱した。なお、本実施例において、蒸気噴出孔8、8、…の孔径及び間隔はそれぞれ2mm及び200mmであり、かかる蒸気噴出孔8、8、…を、各配管4の上側に35個×2列ずつ設けた。
このような条件で洗浄液3を加熱したところ、蒸気7の吹き込み開始から120分後に洗浄液3が沸騰した。加えて、本実施例では、洗浄液3の沸騰後に、回転手段12を用いて回転子コイル10を1回転/分程度の速度となるように自動で回転させながら、回転子コイル10の洗浄を行った。なお、本実施例では、洗浄液3の沸騰後にも上記と同一流量の蒸気7を14時間に亘って流し続け、回転子コイル10の洗浄を行った。
【0054】
上記洗浄の完了後に、回転子コイル10を洗浄槽1から取り出し、洗浄状況を目視にて確認した。その結果、回転子コイル2の表面及び裏面には、油分や塵埃等の汚れが残存していなかった。したがって、本発明によれば、電動機コイルの汚れを効果的に除去し得ることが確認された。
【0055】
<実施例3>
実施例3にかかる回転子コイルの洗浄装置及び洗浄方法を図8に概略的に示す。図8は、回転子コイルの軸の長手方向から回転子コイルを見た断面図である。実施例3にかかる洗浄装置及び洗浄方法は、上記実施例2にかかる洗浄装置及び洗浄方法に加えて、さらに高圧空気用の配管を2本設け、高圧空気を用いて回転子コイルの洗浄を行う点が実施例2と異なっている。すなわち、本実施例にかかる洗浄装置及び洗浄方法は、実施例2と共通部分が多い。そのため、図8及び図5を適宜参照しつつ、本実施例にかかる洗浄装置及び洗浄方法について説明する。
【0056】
本実施例では、縦4m×横8m×高さ1.5mの大きさの洗浄槽1に、洗浄液3として15mの水を満たし、当該洗浄液3には、濃度が3%となるように、洗剤(株式会社ヤナギ研究所製のオイルクラッシャー)を混合した。そして、受け台11、11に、回転子コイル(モータ容量3360kW×2台、コイル部分2000mm径×1200mm幅、全長11000mm)10を載置し、当該回転子コイル10の一部を洗浄槽1の洗浄液3に浸漬させた。また、本実施例にかかる洗浄槽1の内側の底部には、内径40mm×長さ7mの配管4が4本設けられている。コイル10から離れた位置に配置されている配管4a、4aには、蒸気7(配管4a、4aに接続する元管内における温度150℃、圧力0.392MPa)が流されており、配管4a、4aに設けられた蒸気噴出孔8、8、…から流量30m/minの当該蒸気7を洗浄液3の中へと吹き込み、洗浄液3を加熱した。なお、本実施例において、蒸気噴出孔8、8、…の孔径及び間隔はそれぞれ2mm及び200mmであり、かかる蒸気噴出孔8、8、…を、配管4a、4aの上側に35個×2列ずつ設けた。
このような条件で洗浄液3を加熱したところ、蒸気7の吹き込み開始から120分後に洗浄液3が沸騰した。加えて、本実施例でも、洗浄液3の沸騰後に、回転手段12を用いて回転子コイル10を1回転/分程度の速度となるように自動で回転させながら、回転子コイル10の洗浄を行った。なお、本実施例では、洗浄液3の沸騰後にも上記と同一流量の蒸気7を14時間に亘って流し続け、回転子コイル10の洗浄を行った。
【0057】
さらに、本実施例では、コイル10の近くに配置されている配管4b、4b内に、洗浄液3への蒸気7の注入と同時に、高圧空気(配管4b、4bに接続する元管内における圧力0.392MPa)を流した。配管4b、4bに設けられた高圧空気噴出孔から流量25m/minの高圧空気を洗浄液3の中へと吹き込み、高圧空気の気泡が回転子コイル10に当るようにした。なお、本実施例において、高圧空気噴出孔の孔径及び間隔はそれぞれ2mm及び200mmであり、かかる高圧空気噴出孔を、各配管4b、4bの上側に35個×2列ずつ設けた。
【0058】
上記洗浄の完了後に、回転子コイル10を洗浄槽1から取り出し、洗浄状況を目視にて確認した。本実施例において、洗浄液3の中に蒸気7及び高圧空気を同時に吹き込むことにより、洗浄液3が沸騰する前に高圧空気を用いて回転子コイル10の予備洗浄を行った結果、回転子コイル2の表面及び裏面には、油分や塵埃等の汚れが残存していなかった。したがって、本発明によれば、電動機コイルの汚れを効果的に除去し得ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる電動機コイルの洗浄方法を概略的に示す外観図である。
【図2】回転子コイルを概略的に示す断面図である。
【図3】回転子コイルを概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置を概略的に示す外観図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる電動機コイルの洗浄方法を概略的に示す外観図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置を概略的に示す外観図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる電動機コイルの洗浄装置を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 洗浄槽
2、10、30 電動機コイル(回転子コイル)
3、36 洗浄液
4、4a、4b 配管
5、11 受け台
7 蒸気
8 穴(蒸気噴出孔)
12 回転手段
100、200、300 電動機コイルの洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液が入った洗浄槽内に電動機コイルを浸漬し、該洗浄槽内に設けた噴出手段から該洗浄液に蒸気を吹き込んで、前記洗浄液を沸騰させることを特徴とする、電動機コイルの洗浄方法。
【請求項2】
洗浄液が入った洗浄槽内に電動機コイルの一部を浸漬し、該洗浄槽内に設けた噴出手段から該洗浄液に蒸気を吹き込んで、前記洗浄液を沸騰させつつ前記電動機コイルを回転させて、浸漬洗浄する部位を順次移動することを特徴とする、電動機コイルの洗浄方法。
【請求項3】
前記蒸気吹き込みに加えて、さらに、前記洗浄液に高圧空気を吹き込むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動機コイルの洗浄方法。
【請求項4】
前記蒸気及び/又は前記高圧空気の噴出は、前記洗浄槽内下部及び/又は側部側から行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動機コイルの洗浄方法。
【請求項5】
電動機コイルを洗浄するための洗浄装置であって、
洗浄液を入れる洗浄槽と、該洗浄槽内面の底部及び/又は側面に設けられた、前記洗浄液中に蒸気を吹き込む手段と、を備えることを特徴とする、電動機コイルの洗浄装置。
【請求項6】
電動機コイルを洗浄するための洗浄装置であって、
洗浄液を入れる洗浄槽と、該洗浄槽内面の底部及び/又は側面に設けられた、前記洗浄液中に蒸気を吹き込む手段と、前記電動機コイルを回転させる回転手段と、を備えることを特徴とする、電動機コイルの洗浄装置。
【請求項7】
前記蒸気を吹き込む手段に加えて、さらに、前記洗浄液に高圧空気を吹き込む手段を備えることを特徴とする、請求項5又は6に記載の電動機コイルの洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−109614(P2006−109614A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292892(P2004−292892)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】