説明

電動車いす

【課題】体が不自由な乗員でも簡単に後ろ向きで装置に位置合わせをすることができる電動車いすを提供する。
【解決手段】レーザーによってシート台25の位置を検出し、超音波によってシート台25との距離を判定し、電動車いす1の左右両端とシート台25の左右両端の距離を均等にすることで、シート台25の真正面に電動車いす1が位置するようになっている。したがって、乗員はこの制御が終了した後、手動操作で後ろに電動車いす1を下げて行くのみでシート台25と連結することができ、電動車いす1はシート装置10として使用可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室外では車椅子として使用可能であり、車室内では乗員が着座する座席として使用可能な構成の電動車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関する従来の電動車いすが特許文献1に記載されている。
前記特許文献1に記載されている車両用シート(電動車いす)90は、車室外では車椅子として使用可能であり、車室内では乗員が着座する座席として使用可能な構成のシート装置92を備えている。シート装置92は、そのシート装置92に対応するシート移動装置70に連結できるように構成されている。そして、シート装置92がシート移動装置70に連結させられた状態で、シート移動装置70が動作することにより、シート装置92は車室内と車室外との間で移動可能となる。また、車室外まで移動させられたシート装置92は、シート移動装置70から切り離されることで、通常の車椅子と同様に使用できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−148093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような構成では、シート移動装置から切り離された電動車いすは、乗員の意思で自由に移動することができ、乗員の目的の場所へと移動することができる。そして目的を達した後は車両まで戻りシート移動装置に結合することで、車室内に引き入れられ再び車両用シートとして使用することができるが、当該電動車いすを使用しているということは、乗員は身体に障害があり(体が不自由で)健常者が操作するようにはなかなか移動できない。そのため、シート移動装置に後ろ向きで位置を合わせ、当該装置に結合させるまでにはかなりの労力を費やしてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、操縦(扱い)に不慣れな乗員でも簡単に後ろ向きで車両に取り付けられたシート移動装置に位置合わせをすることができる電動車いすを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、請求項1に記載の電動車いすにおいては、「車室外では車椅子として使用可能であり、車室内では乗員が着座する座席として使用できるシート装置となる電動車いすであって、
前記シート装置を車室内と車室外との間で移動させるシート移動装置を備え、
該シート移動装置には、前記車いすと連結され、シート装置となった後はシート装置と共に移動することとなるシート台が設けられており、
該シート台にはレーザー光を照射できるレーザーセンサ送信部が設けられ、
当該レーザー光を、前記電動車いすの後部に設けられた第1のレーザー受光部で検知し、その後前記第1のレーザー受光部を中心に前記電動車いすが回転し、前記電動車いすの前部に設けられた第2のレーザー受光部が前記レーザー光を感知した時点で前記電動車いすは回転を停止し、前記第1のレーザー受光部及び前記第2のレーザー受光部で前記レーザー光を常時検知しながら、前記電動車いすを前記シート台の正面まで誘導することができる」ことを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の電動車いすによれば、シート台のレーザーセンサ送信部から照射されるレーザー光によって電動車いすがシート装置として車室内に移動することができるシート台を検知することができ、電動車いすを後退させてシート台に連結する乗員のサポートをすることが可能となるのである。また、電動車いすの後部に設けられた第1のレーザー受光部と、電動車いすの前部に設けられた第2のレーザー受光部とで常時レーザー光を検知することで横ズレを防止しながら後退させることが可能となり、より正確にシート台を捉えることが可能となる。それゆえ体が不自由な乗員等の車いすの操作が不慣れな者であっても簡単に後ろ向きでシート台に位置合わせをすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に掛かる電動車いすを後部座席に備えた車両の平面図である。
【図2】本発明に掛かる電動車いすをシート装置として車室内に収納した状態を示した斜視図である。
【図3】本発明に掛かる電動車いすとシート移動装置を示した斜視図である。
【図4】本発明に掛かる電動車いすをシート台に連結させる制御動作を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に掛かる電動車いす1を備えた車両100を示している。本実施形態では、図示するように電動車いす1を当該車両の2列目の後部座席に適用した場合を説明する。
【0010】
この電動車いす1は、車輪を備えて車室外では車椅子として使用可能であり、車室内では乗員が着座するための座席として使用されるシート装置10となる。このシート装置10は、シート移動装置20によって車室内から車室外へあるいはその逆に車室外から車室内へ移動させられるようになっている。シート装置10は、シート移動装置20に連結された状態で車室内に設置される。本発明の電動車いす1は、車室外にいる場合つまり車椅子として使用している場合において、車両に戻ろうとする時に補助的に作動する装置に特徴を有している。シート装置10については後述し、先ずシート移動装置20について説明する。
【0011】
シート移動装置20は、図2及び図3に示されるように、電動車いす1を車室内から車室外へあるいはその逆に車室外から車室内へ移動できるもので、このシート移動装置20は、シート装置10を車両前後方向へ移動させる前後方向移動機構21と、シート装置10を着座者から見て車両正面向きの位置とドア開口部側へ向いた位置との間でほぼ90゜回転させる回転機構22と、この回転機構22によりドア開口部側に向いたシート装置10を車室外側へ移動させる車幅方向移動機構23を備えている。
【0012】
前後方向移動機構21は、車体のフロアに取り付けられる機構であって、前後方向移動機構21の上に回転機構22が取り付けられ、回転機構22上に車幅方向移動機構23が取り付けられるようになっている。前後方向移動機構21は、スライドレールを備えており、車室内での前後移動を可能としている。回転機構22は、円盤状のギヤを上下の階層に設け、当該円盤状のギヤが回転することによってシート装置10を回転させることができるようになっている。車幅方向移動機構23は、回転機構22によって回転させられる階層に設けられたリンク機構24によりシート装置10を車室外に移動させることができるようになっている。
【0013】
車幅方向移動機構23には、電動車いす1が連結されるシート台25が設けられており、電動車いす1が車室外から戻って来た場合に当該シート台25に連結されることで、電動車いす1は車輪1aが格納され、シート装置10として車室内で使用できることとなる。シート台25には、電動車いす1が車室外から戻りシート台25に連結される際に、電動車いす1をロックするロック装置25aが設けられている。
【0014】
また、シート台25には、その前方端部にレーザーセンサー送信部25bが設けられており、前方に向かってレーザー等を照射できるようになっている。当該レーザーセンサー送信部25bによって照射されたレーザー等を後述する電動車いす1の受光部で感知することによって、電動車いす1がシート台25の位置を検知し、シート台25までの移動をサポートできるようになっている。
【0015】
次に電動車いす1について説明する。電動車いす1は車輪1aを有し、乗員が手元の操縦桿を操作すれば自在に移動することのできるもので、その後部左右両側に上述したシート台25に設けられたレーザーセンサー送信部25bから照射されたレーザーを受光する第1のレーザー受光部13aが設けられており、当該第1のレーザー受光部13aでレーザーを受光することによって、シート台25の存在を検出することができる。
【0016】
さらに、電動車いす1の前部右側面には、第1のレーザー受光部13aと同時にレーザーセンサー送信部25bから照射されたレーザーを受光することで、電動車いす1の右側面がレーザー光に沿って移動できるようにする第2のレーザー受光部13bが設けられている。
【0017】
次に、図4を参照して動作を説明する。まず、車両100から離れた位置から車両100に戻る場合には、ある程度車両100に近づき、シート台25に連結するには電動車いす1は後ろ向きになって後退し連結する必要があるので、後ろ向きになる。
【0018】
図4は、電動車いす1の後部左右両側にそれぞれ1つずつ第1のレーザー受光部13aを配置した第1の実施形態を示した動作図である。この図4を参照して説明する。電動車いす1を後退させて行くと(図4の(a))、シート台25に設けられたレーザーセンサー送信部25bから照射されたレーザーと交錯し、電動車いす1に設けられた第1のレーザー受光部13aがレーザーを受光し、感知する(図4の(b))。
【0019】
この時点で、第1のレーザー受光部13aはレーザーを感知しているため、電動車いす1は第1のレーザー受光部13aを中心に回転する。その後、第2のレーザー受光部13bでレーザーを感知するまで電動車いす1は回転し、電動車いす1はその右側面がレーザー光に沿うようになる(図4の(c))。
【0020】
このようにして右側面をレーザー光に沿うように位置された電動車いす1は、あとは真っ直ぐ後退していけば自然にシート台25との連結可能部分に行き着くことが可能となり、電動車いす1の扱いに不慣れな者であっても楽に車両に電動車いす1を戻すことができるのである。さらに、第1のレーザー受光部13aと第2のレーザー受光部13bとで車両の横ズレを補正することができるので、シート台25まで電動車いす1が後退する時に真っ直ぐ後退することが可能となるのである。
【符号の説明】
【0021】
1 電動車いす
1a 車輪
10 シート装置
13a 第1のレーザー受光部
13b 第2のレーザー受光部
20 シート移動装置
21 前後方向移動機構
22 回転機構
23 車幅方向移動機構
24 リンク機構
25 シート台
25a ロック装置
25b レーザーセンサー送信部
100 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室外では車椅子として使用可能であり、車室内では乗員が着座する座席として使用できるシート装置となる電動車いすであって、
前記シート装置を車室内と車室外との間で移動させるシート移動装置を備え、
該シート移動装置には、前記車いすと連結され、シート装置となった後はシート装置と共に移動することとなるシート台が設けられており、
該シート台にはレーザー光を照射できるレーザーセンサ送信部が設けられ、
当該レーザー光を、前記電動車いすの後部に設けられた第1のレーザー受光部で検知し、その後前記第1のレーザー受光部を中心に前記電動車いすが回転し、前記電動車いすの前部に設けられた第2のレーザー受光部が前記レーザー光を感知した時点で前記電動車いすは回転を停止し、前記第1のレーザー受光部及び前記第2のレーザー受光部で前記レーザー光を常時検知しながら、前記電動車いすを前記シート台の正面まで誘導することができることを特徴とする電動車いす。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−156049(P2011−156049A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18574(P2010−18574)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000143639)株式会社今仙電機製作所 (258)
【Fターム(参考)】