説明

電動駆動車両の制御装置

【課題】電動駆動車両の空調用コンプレサを車輪に連動する回転部材と、空調用モータとを、それぞれ駆動源として選択制御することでコンプレッサを広い運転領域に渡って駆動し、且つ電力消費を少なくして駆動できる制御装置を提供すること。
【解決手段】車両の空調状態に応じてコンプレッサ14に対する駆動要求度合を判定する要求度合判定手段36と、車速と駆動要求度合とに応じてコンプレッサの駆動源を回転部材18とする領域と空調用モータ22とする領域とを設定した駆動源選定手段40と、車両減速における空調装置の作動時に駆動源選定手段40の設定に従うようにクラッチ16および空調用モータ22の作動を制御する空調制御手段46と、車両の減速時に走行用モータ12を回生作動させると共にクラッチ16が接合される領域では回生度合いを減少させるように制御する回生制御手段48と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動車両の制御装置に関し、特に、空調用(エアコン用)のコンプレッサの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータジェネレータによって駆動される電動駆動車両においては、空調用のコンプレッサは、機械的な駆動源がないため、主にバッテリからの電力供給で駆動されるようになっている。図5に、従来の電動駆動車両における空調用コンプレッサの駆動システムの概要を示す。
図5において、電動駆動車両01は、前輪02、02、および後輪03、03を備え、後輪側の後車軸05には差動装置07が設けられ、該差動装置07には走行用モータとしての機能と機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能とを兼ね備えているモータジェネレータ09が取り付けられている。
【0003】
また、制御系統としては各種の電子制御ユニット(ECU)が設けられ、各コントロールユニットは車両コンロールユニット(EVECU)011からの制御信号の送受信によって制御されている。各種ECUとしては、モータジェネレータ09の回転、発生トルク、吸収トルクを制御するモータコントロールユニット(MCU)013、バッテリ015の充放電状態を制御するバッテリコントロールユニット(BCU)017、さらに、空調装置019のコンプレッサ021を駆動する空調用モータ(A/C MOTOR)023を制御する空調コントロールユニット(A/C ECU)025を備えている。
【0004】
モータコントロールユニット013によって、インバータ027の作動が制御されて、インバータ027によってバッテリ015からの直流電力が変換されて交流電力となってモータジェネレータ09に供給されてモータジェネレータ09の回転が制御される。
また、バッテリ015からの電力は、空調装置019の空調用モータ023の回転を制御する空調用インバータ029に供給されて、コンプレッサ021の回転が制御されるようになっている。
【0005】
このように構成された電動駆動車両01のバッテリ015の電気エネルギは、元々充電された状態のものと、車両制動時の制動(減速)エネルギの回生電力によって蓄電されるものとがあり、電動駆動車両01の空調用のコンプレッサ021への回生エネルギの供給には、減速時の機械エネルギをモータジェネレータ09の回生電力として一端電気エネルギへ変換してバッテリ015へ蓄電してから、コンプレッサ021へ供給するようになっていた。この場合一度電気エネルギに変換するためエネルギ変換の損失があった。
【0006】
そこで、電動駆動車両における空調用のコンプレッサ(エアコンポンプ)を、デフ連結軸等に連結させて直接減速エネルギで駆動する技術が知られており、例えば、特許文献1(特開2007−15524公報)がある。
この特許文献1は、図6に示すように、車両050のフロント側には動力源としてのエンジン052が設けられ、リア側には動力源としての電動発電機054が設けられている。車両のリア側において、デフ連結軸056には、電動発電機054と空調用のコンプレッサ058とが動力分配装置060を介して機械的に連結されている。
そして、エアコンECU062は、空調装置を構成するエバポレータの温度が、所定の上限値と下限値とからなる温度範囲内になるようにコンプレッサ058の駆動を制御する。また、車両減速時において、デフ連結軸056とコンプレッサ058との間に設けられたクラッチ064を接合して、エバポレータ温度が前記下限値よりも低い温度域に達するようにコンプレッサ058を駆動制御する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−15524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示される電動駆動車両のコンプレッサの駆動システムにおいては、コンプレッサ058の駆動源として走行モータが電動発電機054と共用であるため、減速時に電動発電機054によって回生させている場合には、その間、コンプレッサ058を作動できなくなる問題があり、コンプレッサ058を車両の広い運転領域で駆動できないことからコンプレッサ058が必要な時に駆動できず冷房要求が高いとき等には空調性能の悪化を招くおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、これら問題に鑑みてなされたもので、電動駆動車両の空調用のコンプレッサを駆動する駆動源を車輪に連動する回転部材と、空調用モータとを、それぞれ駆動源として選択制御することでコンプレッサを車両の広い運転領域に渡って駆動し、且つ電力消費を少なくして駆動して空調性能を向上できる電動駆動車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、走行用モータと、車両の空調装置に設けられるコンプレッサと、車輪に連動する回転部材の回転を前記コンプレッサに伝達可能に設けられたクラッチと、前記回転部材とは別に前記コンプレッサに回転駆動力を伝達可能に設けられた空調用モータと、車両が減速中であることを検出する減速状態検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、車両の空調状態に応じて前記コンプレッサに対する駆動要求度合を判定する要求度合判定手段と、前記車速と前記駆動要求度合とに応じて前記コンプレッサの駆動源を前記回転部材とする領域と前記空調用モータとする領域とを設定した駆動源選定手段と、車両減速における前記空調装置の作動時に前記駆動源選定手段の設定に従うように前記クラッチおよび前記空調用モータの作動を制御する空調制御手段と、車両の減速時に前記走行用モータを回生作動させると共に前記クラッチが接合される領域では回生度合いを減少させるように制御する回生制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、車両の空調状態に応じてコンプレッサに対する駆動要求度合を判定する要求度合判定手段と、車速と前記駆動要求度合とに応じてコンプレッサの駆動源を回転部材、つまり車輪に連動する駆動軸とする領域と、空調用モータとする領域とを設定した駆動源選定手段とを備えて、この駆動源選定手段の設定に従って、車両減速における空調装置の作動時に駆動源を選定して、コンプレッサを駆動するので、減速エネルギを効率よくコンプレッサ駆動に活用することができ、空調用モータの電力消費量を抑えて、コンプレッサを無理なく車両の広い運転領域で駆動できる。
【0012】
しかも、回生制御手段によって、クラッチが接合される領域では、走行用モータによる回生度合いを減少させるように制御するので、コンプレッサを駆動しない場合のトータル制動力と、コンプレッサを作動させた場合のトータル制動力に大きな変化が生じることが抑制されて、制動フィーリングの悪化が防止される。
【0013】
また、本発明において好ましくは、前記駆動源選定手段は、車速が高くなるほど前記回転部材による駆動領域が拡がるように設定されているとよい。
このように、減速エネルギが大きくなる高車速側で回転部材による駆動領域が拡がるように設定されるので、減速エネルギを効率良く利用してコンプレッサ駆動に活用できる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記駆動源選定手段は、前記駆動要求度合が高くなるほど前記空調用モータによる運転領域が拡がるように設定されているとよい。
このように、駆動要求度合すなわち室内温度の冷房能力の要求度合が高いほど、空調用モータによる運転領域を拡げるようにするので、車両の減速運転状態にかかわらず、コンプレッサを駆動できるため、大きい冷房要求に対して迅速な対応が可能になる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、前記バッテリの充電状態を判定する充電状態判定手段をさらに備え、前記駆動源選定手段は、前記充電状態が高くなると前記回転部材による駆動領域が拡がるように設定されているとよい。
このように、バッテリが高充電状態にある場合には、回生によりバッテリに充電しにくくなるため、回転部材による駆動領域、つまり車輪に連動する駆動軸による駆動領域を増やして、減速エネルギを効率的に利用してコンプレッサ駆動でき、空調用モータの電力消費量を少なくできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両の空調状態に応じてコンプレッサに対する駆動要求度合を判定する要求度合判定手段と、車速と前記駆動要求度合とに応じてコンプレッサの駆動源を回転部材、つまり車輪に連動する駆動軸とする領域と、空調用モータとする領域とを設定した駆動源選定手段とを備えて、この駆動源選定手段の設定に従って、車両減速における空調装置の作動時に駆動源を選定して、コンプレッサを駆動するので、減速エネルギを効率よくコンプレッサ駆動に活用することができ、空調用モータの電力消費量を抑えて、コンプレッサを無理なく車両の広い運転領域で駆動できる。
【0017】
しかも、回生制御手段によって、クラッチが接合される領域では、走行用モータによる回生度合いを減少させるように制御するので、コンプレッサを駆動しない場合のトータル制動力と、コンプレッサを作動させた場合のトータル制動力に大きな変化が生じることが抑制されて、制動フィーリングの悪化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ハイブリッド車の全体構成を示す説明図である。
【図2】制御装置における制御フローを示すフローチャートである。
【図3】コンプレッサの空調用モータと駆動軸駆動の選定領域を示す説明図であり、バッテリ充填状態が中の場合を示す。
【図4】コンプレッサの空調用モータと駆動軸駆動の選定領域を示す説明図であり、バッテリ充填状態が高、低の場合を示す。
【図5】従来技術の説明図である。
【図6】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0020】
図1を参照して、電動駆動車両2の全体構成について説明する。
電動駆動車両2は、前輪4、4、および後輪6、6を備え、後輪側の後車軸8には差動装置10が設けられ、該差動装置10には走行用モータとしての機能と機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能とを兼ね備えているモータジェネレータ12が取り付けられている。
また、差動装置10には空調装置(エアコン)13に設けられるコンプレッサ14に駆動力を伝達及び遮断可能にするクラッチ16が設けられている。なお、図1に示す空調装置13はコンプレッサ14の部分のみを示すものである。
【0021】
クラッチ16がON(接合)する場合には、差動装置10からの動力は、すなわち、減速時には後輪6、6の回転に連動する回転部材18の回転は、コンプレッサ14に伝達されてコンプレッサ14を駆動するようになっている。また同時に、差動装置10を介して、駆動源のモータジェネレータ12へも後輪6、6の回転に連動する回転部材18からの回転が伝達されるようになっている。従って、クラッチ16がONの際には減速時の回生エネルギによって、モータジェネレータ12が発電するとともに、コンプレッサ14が作動するようになっている。
【0022】
また、このコンプレッサ14は、車載の空調装置13に設けられたコンプレッサであり、空調装置13にはコンプレッサ14のほかに、図示しないコンデンサ、レシーバ、膨脹弁、エバポレータ等を有して構成されている。空調装置13は、室内の設定温度を要求温度としてエアコンSW(スイッチ)20によって設定でき、操作者によって任意の温度に設定して要求できる。この時、室内温度は図示しない室内温度センサによって検出され、そのエアコンSW20による要求温度と、室温温度とによってエアコン要求度合が判定される。
【0023】
また、コンプレッサ14には空調用モータ22が取り付けられてコンプレッサ14に回転駆動力を伝達可能に設けられている。そして、この空調用モータ22の回転は空調用インバータ24によって制御されるとともに、空調用インバータ24は空調コントロールユニット(A/CECU)26によって制御される。
【0024】
制御系統の構成は、各種の電子制御ユニット(ECU)が設けられ、各コントロールユニットは車両ECU(制御装置)28との相互制御信号等の送受信によって制御されている。各種ECUとしては、モータジェネレータ12の回転、発生トルク、吸収トルクを制御するモータコントロールユニット(MCU)29、バッテリ32の充放電状態を制御するバッテリコントロールユニット(BCU)33、さらに、すでに説明した空調コントロールユニット(A/CECU)26を備えている。
【0025】
モータコントロールユニット29からの制御信号によって、インバータ35の作動が制御されて、インバータ35によってバッテリ32からの直流電力が交流電力に変換されてモータジェネレータ12に供給されてモータジェネレータ12の回転、発生トルク、吸収トルクが制御される。
また、バッテリ32からの電力は、空調用インバータ24に供給されて、空調用モータ22の回転が制御されるようになっている。なお、この空調用インバータ24は、すでに説明したように空調コントロールユニット26からの制御信号によって制御される。
【0026】
次に、車両ECU28について説明する、この車両ECU28には、車速検出手段である車速センサ30からの信号、アクセル開度センサ31からの信号を基に車両が減速状態であるかを判定する減速状態判定手段34と、車両の空調状態に応じて、すなわち、エアコンSW20による要求温度と、室温温度との状態に応じて、コンプレッサ14に対する駆動要求度合を判定するエアコン要求度合判定手段36とを備えている。
【0027】
さらに、車速と、コンプレッサ14に対する駆動要求度合とに応じて、コンプレッサ14の駆動源を、クラッチ16をON(接合)にして回転部材18の回転による駆動とする領域、すなわち車両の減速エネルギを用いる領域と、空調用モータ22による駆動とする領域とを、マップ状に設定した駆動源選定マップ38を有しており、この駆動源選定マップ38に従って、駆動源を選定する駆動源選定手段40を備えている。
【0028】
駆動源選定マップ38は、バッテリ32の充電状態(SOC:State of charge)に応じて、異なるマップを有している。図3が、SOCが40%〜60%の中程度の通常状態における第1駆動源選定マップ38aであり、図4が、SOCが低(40%未満)、高(60%を超え)の状態における第2駆動源選定マップ38bを示す。
【0029】
それぞれの駆動源選定マップ38a、38bは、横軸に車速をとり、縦軸にエアコン要求(A/C要求)、つまり、コンプレッサ14に対する駆動要求度合をとる。そして、ラインLが、回転部材18の回転駆動による領域(駆動軸駆動領域)、すなわち車両の減速時の回生エネルギを用いる領域と、空調用モータ22による駆動(電力駆動領域)との境界ラインである。
例えば、車速V1によって走行中で、エアコン要求度合いがA1の場合には、点Pに位置するため、電力駆動領域にあり、空調作動時の減速時には空調用モータ22による駆動を選択する。
【0030】
この駆動源選定マップ38は、車速が高くなるほど回転部材18による駆動軸駆動領域が拡がるように設定されている。すなわち、車速が上がるほど図3に示すYが拡がるように境界ラインLが設定されている。
このように、減速エネルギが大きくなる高車速側で回転部材18による駆動軸駆動領域が拡がるように設定されるので、減速エネルギを効率良く利用してコンプレッサ駆動に活用できるようになっている。
【0031】
また、駆動源選定マップ38は、エアコン要求度合(駆動要求度合)が大きくなるほど空調用モータ22による電動駆動領域が拡がるように設定されている。すなわち、エアコン要求度合が上がるほど図3に示すXが拡がるように境界ラインLが設定されている。
このように、エアコン要求度合が大きくなる、すなわち室内温度の冷房能力の要求度合が大きいほど、空調用モータ22による運転領域を拡げるようにするので、車両の減速運転状態にかかわらず、空調用モータ22によってコンプレッサ14を駆動できるため、冷房要求に対して迅速な対応が可能になる。
【0032】
また、バッテリ32の充電状態を検出するバッテリ充電センサ42からの信号を基に、充電状態判定手段44によってバッテリ32の充電状態を判定して、バッテリ32の充電状態(SOC)が40%〜60%の中程度の通常状態においては第1駆動源選定マップ38aを用い、SOCが低(40%未満)または高(60%を超え)の状態においては第2駆動源選定マップ38bを用いる。
【0033】
バッテリ32が高充電状態にある場合には、回生によりバッテリ32に充電しにくくなるため、駆動軸駆動領域を増やして、減速エネルギを効率的に利用してコンプレッサ14を駆動でき、空調用モータ22の電力消費量を少なくできるので、バッテリ32の充電状態を高い状態に維持できる。
また、バッテリ32が低充電状態にある場合においても、空調用モータ22の消費電力を少なくして、バッテリ32の低充電状態からさらに低下しないようにしている。
【0034】
さらに、車両ECU28の内部には、空調制御手段46、および回生制御手段48を備えている。
この空調制御手段46は、車両減速時における空調装置13の作動時に、前記駆動源選定手段40によって選定された駆動領域に従って、駆動軸駆動領域の場合にはクラッチ16をON(接合)し、空調用モータ22をOFFして後輪6、6の回転に連動する回転部材18の回転による駆動とする。電力領域の場合には、クラッチ16をOFF(断)し、空調用モータ22をONして空調用モータ22による駆動とする。
【0035】
回生制御手段48は、車両減速時に走行用のモータジェネレータ12を回生作動させると共に、クラッチ16がONされる場合に、モータジェネレータ12による減速エネルギを利用した回生による制動力と、コンプレッサ14による制動力とのトータル制動力が、クラッチ16をONしない場合のモータジェネレータ12による回生制動力と大きく変化しないように、モータジェネレータ12による回生度合いを減少させるように制御する。
【0036】
以上の構成を有する車両ECU(制御装置)28による制御フローについて、図2のフローチャートを参照して説明する。
まず、スタートすると、ステップS2で、アクセル開度センサ31からの信号、および車速センサ30からの信号を取得する。次に、ステップS3で、エアコン駆動要求があるか否かを判定する。このエアコン駆動要求の有無は、エアコンSW20が投入されたか否かによって判定する。スイッチが投入されればステップS4に進み、スイッチがOFFであればステップS13に進んでリターンする。
【0037】
ステップS4においては、ステップS2で取得したアクセル開度センサ31と車速センサ30からの信号を基に、減速状態判定手段34によって、減速中か否かを判定する。減速中であればステップS5に進み、減速中でなければステップS13に進んでリターンする。
【0038】
ステップS5においては、バッテリ充電センサ42からバッテリ32の状態を検出し、充電状態判定手段44によって、充電状態のレベルを判定する。そして、駆動源選定手段40によって、充電状態に応じて駆動源選定マップ38a、38bの一方を用いて、電力駆動領域か、駆動軸駆動領域かを判定する。この判定の際には、車速、およびエアコン要求度合が検出されて駆動源選定マップ38a、38bを用いて判定される。車速は車速センサ30からの信号により、エアコン要求度合は、エアコン要求度合判定手段36からの判定結果に基づいて求められる。
【0039】
ステップS6では、駆動軸駆動領域であるかを判定し、駆動軸駆動領域であると判定した場合には、ステップS10に進んで、空調制御手段46によってクラッチ16の作動を制御してクラッチ16をONにする。そして、ステップS11で後輪6、6の回転に連動する回転部材18からの回転によってコンプレッサ14を駆動して空調装置13を作動させる。このとき、空調用モータ22は停止しているため消費電力を節約できる。
【0040】
次に、ステップS12において、回生制御手段48がコンプレッサ14の駆動分、モータジェネレータ12の回生量を低減して、モータジェネレータ12による回生によって生じる制動力と、コンプレッサ14による制動力とのトータル制動力が、クラッチ16をONしない場合のモータジェネレータ12による回生制動力と大きく変化しないようにして、クラッチ16の作動時の車両への制動ショックを低減する。そして、ステップS13でリターンする。
【0041】
また、ステップS6で、駆動軸駆動領域でない、すなわち、電力駆動領域であると判定した場合には、ステップS7に進み、クラッチをOFF(断)して、ステップS8で、空調用モータ22によりコンプレッサ14を駆動する。このとき、車両の減速運転にかかわらずエアコン要求、例えば大きな冷房要求に対して迅速な対応が可能になる。
そして、ステップS9で、モータジェネレータ12による通常の回生量の制御を行い、ステップS13でリターンする。なお、前記した車両ECU(制御装置)28の制御フローは所定時間周期で実行されるようになっている。
【0042】
以上のような実施形態によれば、エアコン要求度合判定手段36によって車両の空調状態に応じてコンプレッサ14に対する駆動要求度合を判定して、つまり、エアコンSW20による要求温度と、室温温度との状態に応じて、コンプレッサ14に対する駆動要求度合をエアコン要求度合判定手段36で判定して、その要求度合と、車速とから、コンプレッサ14の駆動源を回転部材18、つまり車輪に連動する駆動軸とする駆動軸駆動領域と、空調用モータ22とする電力駆動領域とを設定した駆動源選定手段40に従って選定して、コンプレッサ14を駆動するので、減速エネルギを効率よくコンプレッサ14の駆動に活用することができ、空調用モータ22の電力消費量を抑えて、コンプレッサ14を無理なく車両の広い運転領域で駆動できる。
【0043】
しかも、回生制御手段48によって、クラッチ16が接合される領域では、モータジェネレータ12による回生度合いを減少させるように制御するので、コンプレッサ14を駆動しない場合のトータルの回生制動力と、コンプレッサ14を駆動させた場合のトータル制動力に大きな変化を生じることが抑制され、クラッチ16のON時の車両に作用するショックを低減でき、制動フィーリングの悪化を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、電動駆動車両の空調用のコンプレサを駆動する駆動源を車輪に連動する回転部材と、空調用モータとを、それぞれ駆動源として選択制御することでコンプレッサを車両の広い運転領域に渡って駆動し、且つ電力消費を少なくして駆動して空調性能を向上できるので、電動駆動車両の空調用コンプレサの制御装置への利用に適している。
【符号の説明】
【0045】
1 電動駆動車両
4 前輪
6 後輪
10 差動装置
12 モータジェネレータ(走行用モータ)
13 空調装置
14 コンプレッサ
16 クラッチ
18 回転部材
20 エアコンSW
22 空調用モータ
28 車両ECU(制御装置)
30 車速センサ(車速検出手段)
31 アクセル開度センサ
32 バッテリ
34 減速状態判定手段
36 エアコン要求度合判定手段(要求度合判定手段)
38 駆動源選定マップ
40 駆動源選定手段
42 バッテリ充電センサ
44 充電状態判定手段
46 空調制御手段
48 回生制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータと、車両の空調装置に設けられるコンプレッサと、車輪に連動する回転部材の回転を前記コンプレッサに伝達可能に設けられたクラッチと、前記回転部材とは別に前記コンプレッサに回転駆動力を伝達可能に設けられた空調用モータと、車両が減速中であることを検出する減速状態検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、車両の空調状態に応じて前記コンプレッサに対する駆動要求度合を判定する要求度合判定手段と、前記車速と前記駆動要求度合とに応じて前記コンプレッサの駆動源を前記回転部材とする領域と前記空調用モータとする領域とを設定した駆動源選定手段と、車両減速における前記空調装置の作動時に前記駆動源選定手段の設定に従うように前記クラッチおよび前記空調用モータの作動を制御する空調制御手段と、車両の減速時に前記走行用モータを回生作動させると共に前記クラッチが接合される領域では回生度合いを減少させるように制御する回生制御手段と、を備えたことを特徴とする電動駆動車両の制御装置。
【請求項2】
前記駆動源選定手段は、車速が高くなるほど前記回転部材による駆動領域が拡がるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の電動駆動車両の制御装置。
【請求項3】
前記駆動源選定手段は、前記駆動要求度合が高くなるほど前記空調用モータによる運転領域が拡がるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の電動駆動車両の制御装置。
【請求項4】
前記バッテリの充電状態を判定する充電状態判定手段をさらに備え、前記駆動源選定手段は、前記充電状態が高くなると前記回転部材による駆動領域が拡がるように設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の電動駆動車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194996(P2011−194996A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63316(P2010−63316)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】