説明

電子ビーム描画方法、電子ビーム描画装置、モールドの製造方法および磁気ディスク媒体の製造方法

【課題】サーボエリアおよびデータエリアの微細パターンの描画が基板全面で所定形状に高精度かつ短時間に実行でき、一定ドーズ量で高速かつ正確に描画可能とする。
【解決手段】レジストが塗布された基板上に、電子ビームEBの照射をブランキング手段24に対するオン・オフ信号によって制御し、ビーム偏向動作を偏向手段22に対する偏向信号の出力によって制御し、サーボエレメント13およびグルーブパターン16またはドットパターンを走査して描画する際に、パターン形状を描画するためのパターン形状偏向信号に加えて、ビームスポットの周方向の相対線速度を調整する相対線速度偏向信号を偏向手段に出力し、サーボエリアでの相対線速度>基板線速度>データエリアでの相対線速度に設定して描画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリートトラックメディアやビットパターンメディアなどの高密度磁気記録媒体用のインプリントモールドや磁気転写用マスター担体などを作製する際に、所望の凹凸パターンに応じた微細パターンを描画するための電子ビーム描画方法および電子ビーム描画装置に関するものである。
【0002】
また、本発明は、上記電子ビーム描画方法を用いて描画を行う工程を経て作製される、凹凸パターン表面を有するインプリントモールドあるいは磁気転写用マスター担体などを含むモールドの製造方法、さらには該インプリントモールドを用いて凹凸パターンが転写されてなる磁気ディスク媒体の製造方法および磁気転写用マスター担体を用いて磁化パターンが転写されてなる磁気ディスク媒体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現状の磁気ディスク媒体では、一般にサーボパターンなどの情報パターンが形成されている。また、記録密度のさらなる高密度化の要請から、隣接するデータトラックを溝(グルーブ)からなるグルーブパターンで分離し、隣接トラック間の記録されたデータ信号の磁気的干渉を低減し、記録密度を高めるようにしたディスクリートトラックメディア(DTM)が注目されている。さらに高密度化を図るために提案されているビットパターンメディア(BPM)は、データトラックが単磁区を構成する磁性体(単磁区微粒子)が物理的に孤立して規則的なドットパターン状に配列されてなり、微粒子1個に1ビットを記録するメディアである。
【0004】
従来、上記サーボパターン等の微細パターンは、磁気ディスク媒体に凹凸パターンまたは磁化パターンなどによって形成され、高密度の磁気ディスク媒体を製造するための磁気転写用マスター担体の原盤などに、所定の微細パターンをパターニングするための電子ビーム描画方法が提案されている。この電子ビーム描画方法は、レジストが塗布された基板を回転させながら、パターン形状に対応した電子ビームの照射によってパターン描画を行うものである(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1のビーム照射方法は、光ディスクのピット形状を照射する場合において、基板の1周回(1回転)においてビームの照射をオン・オフ制御するとともに、基板の移動方向(周方向)にビームを偏向させて、基板の回転速度に対するビーム照射位置の相対的移動速度を補正する技術であり、ビーム照射量(ドーズ量)の均一化または描画時間の短縮化を図る方法である。
【0006】
また、特許文献2の電子線描画方法は、ディスクリート型のパターン形状を描画する場合において、特許文献1と同様に、基板の1周回においてビームの照射をオン・オフ制御するとともに、基板の移動方向にビームを偏向させて、基板の回転速度に対するビーム照射位置を変更したり、基板の半径方向にビームを偏向させて、パターン形状を重ねて露光することで、ビームのブランキング時間を低減して描画精度の向上および描画時間の短縮化を図る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−288890号公報
【特許文献2】特開2009−15910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の特許文献1および特許文献2の電子ビーム描画方法は、基板の1周回(1回転)においてビームの照射をオン・オフ制御するとともに、基板の移動方向(周方向)および半径方向にビームを偏向させるものであり、この描画方法では上記メディアの微細パターンの描画精度の向上に限界がある。つまり、上記のディスクリートトラックメディアおよびビットパターンメディアのサーボパターンは1トラックの幅方向に延びる形状であり、そのグルーブパターンまたはドットパターンは1トラックの周方向に延びる形状であり、このように1トラックにおけるパターン形状が半径方向に異なる長さ、および周方向に異なる長さに形成されている場合には、両引用文献1,2では1トラック中のパターン形状を複数周回で描画露光する必要があり、微細化するパターン形状を精度よく効率よく短時間で描画することが困難である。
【0009】
具体的には、1トラック幅を複数に分割し、基板の1周回で1分割幅の描画をビームの照射をオン・オフ制御して行うもので、周回間のビームのオン・オフ制御の位置ずれにより、照射開始点および照射終了点が各周回でずれ、描画されたパターン形状のラフネスなどの精度低下を招く問題がある。また、描画時間の短縮を図るために基板の回転速度を高めるほど精度確保が困難となり、適正な露光量で正確なパターン形状の描画および露光が行えない問題を有している。さらにビーム強度(ビーム電流)を高めるほど電子ビームの描画精度が低下する特性があり、描画時間の短縮を図る際の障害となっている。
【0010】
また、上記の特許文献2の電子ビーム描画方法では、回転方向と逆方向の偏向が2ビット以下であり、ビット長の3倍以上のパターンが存在している場合、電子ビームを回転方向に偏向させた後、回転方向と逆方向へ偏向させ、2ビット以下の所望の位置に戻す前に、その後に続くパターンが通過しており、ドーズ量を一定に与えることができなくなる。
【0011】
ところで、電子ビーム描画装置の特性として、少なくとも基板の1周回中のビーム照射描画中には、ビーム照射線量(ビーム電流)および基板線速度を微小変動させることは装置機能上困難であり、このビーム電流および基板の回転速度を描画中に変更してドーズ量をパターン形状等に応じて調整制御することによって描画精度を確保することはできず、電子ビーム描画の前提条件としては上記のビーム電流および基板線速度を一定値に設定して行うものである。また、基板に塗設されているレジストの感度に対し、所定の露光状態となるドーズ量は一定に維持する必要がある。
【0012】
一方、前述のような特許文献1,2のように、1トラック幅を分割して1トラック分のパターン描画を複数回転で行う場合の描画精度が低下するのを改善する目的で、1トラック分のパターン描画を1周回で行い、各周回間の基板回転に伴う描画位置ずれを解消することが考えられている。しかし、この場合に、サーボエリアとデータエリアとでは描画するパターン形状の描画面積比が、サーボエリアで大きくデータエリアで小さくなるように異なり、それぞれの領域における電子ビーム描画のドーズ量を一定にするためには、ビームスポットの走査速度、つまり基板の移動速度とビーム偏向速度との相対線速度を一定に設定しなければならないが、その設定が困難となっている。
【0013】
例えば、トラックの周方向に狭い幅で延びるデータエリアのグルーブパターンまたはドットパターンを基板の回転速度に従った描画速度で所定のドーズ量となるように電子ビームの照射特性が設定された場合に、その電子ビームによってサーボエリアのサーボパターンをその形状を塗りつぶすように電子ビームを走査して描画しようとした場合には、データエリアの描画に適した基板の回転速度では走査に要する時間が不足しサーボパターンの描画が行えず、基板の回転速度をそれより低い速度に設定する必要がある。逆に、サーボエリアの描画特性に適合させると、データエリアの描画特性とは適合せず、電子ビームの照射線量が過大でドーズ量オーバーとなって露光滲みによって線幅が大きくなり、トラック幅に対する所定幅の描画が行えない問題がある。
【0014】
また、1トラックを複数に分割して1周回で1分割分をオン・オフ制御によって描画するようにした場合には、微細化によりトラック数が増大することに伴って1枚のディスクの全面描画に要する時間が多大となる問題があり、描画時間の短縮化が課題となる。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みて、サーボエリアおよびデータエリアの微細パターンの描画が基板の全面で所定通りのエレメント形状に高精度かつ短時間に実行できるようにして、基板全体で一定のドーズ量で高速かつ正確に描画できるようにした電子ビーム描画方法および電子ビーム描画を行うための電子ビーム描画装置を提供することを目的とするものである。
【0016】
また、本発明は、電子ビームにより精度よく描画された微細パターンを有する、インプリントモールドや磁気転写用マスター担体などのモールドの製造方法を提供すること、および、そのモールドを用いて凹凸パターンもしくは磁気パターンが転写されてなる磁気ディスク媒体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電子ビーム描画方法は、レジストが塗布され回転ステージに設置された基板上に、前記回転ステージを回転させつつ電子ビームを、ディスクリートトラックメディアまたはビットパターンメディアなどのサーボエリアにおけるトラックの幅方向に延びるサーボパターンおよびデータエリアにおけるトラックの周方向に延びるグルーブパターンまたはドットパターンなどの高密度磁気記録媒体用の微細パターンの描画形状に対応して照射するについて、
前記電子ビームの照射タイミングを、電子ビーム照射を遮断するブランキング手段に対するオン・オフ信号の出力によって制御しつつ、前記電子ビームの偏向動作を、ビーム偏向手段に対する偏向信号の出力によって制御することにより前記微細パターンの形状を描画する電子ビーム描画方法において、
前記基板の少なくとも1周回中におけるビーム照射量および基板線速度を一定に維持し、前記基板全面の微細パターンの1トラック相当分の前記サーボパターンおよび前記グルーブパターンまたはドットパターンを該基板の1周回中に連続して描画し、
前記サーボパターンは前記偏向信号によって電子ビームを該サーボパターンの形状を塗りつぶすように2方向に走査して描画する一方、前記グルーブパターンまたはドットパターンは1回の照射で連続線状または破線状に描画し、
前記微細パターンの形状を描画するためのパターン形状偏向信号に加えて、ビーム照射位置でのビームスポットと基板表面との周方向の相対線速度を、前記サーボエリアと前記データエリアの描画とで変化させる相対線速度偏向信号を前記ビーム偏向手段に出力し、
前記サーボエリアの描画における前記相対線速度が、前記回転ステージによる基板回転における基板線速度より遅く、該基板線速度より前記データエリアの描画における前記相対線速度が速くなるように設定したことを特徴とする。
【0018】
上記描画方法において、前記回転ステージの回転速度を、描画位置の半径に反比例して内周トラック描画で速く外周トラック描画で遅くなるように、線速度を一定とする回転制御を行うのが好ましい。
【0019】
また、上記描画方法において、前記サーボパターンの描画における前記パターン形状偏向信号は、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを該基板の半径方向または半径方向と直交する方向に微小往復振動させるとともに、その振動方向と直交する方向に偏向してパターン形状を塗りつぶすように走査させて描画するように設定するのが好適である。
【0020】
また、上記描画方法において、前記グルーブパターンの描画における前記パターン形状偏向信号は、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを連続照射して描画するように設定ことが可能である。
【0021】
また、上記描画方法において、前記グルーブパターンの描画における前記パターン形状偏向信号は、前記グルーブパターンを所定角度で分割した複数のグルーブエレメントの整列で構成し、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを該基板の半径方向と直交する方向へ偏向走査し、前記基板の回転に伴って前記グルーブエレメントを順に時間的間隔をもって描画するように設定することが可能である。
【0022】
また、上記描画方法において、前記ドットパターンの描画における前記パターン形状偏向信号は、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを断続照射して描画するように設定することが可能である。
【0023】
本発明の電子ビーム描画装置は、上記の電子ビーム描画方法を実現するために、レジストが塗布された基板を回転させる回転ステージと、該回転ステージの回転数を描画位置の半径に応じて基板線速度を一定に維持する駆動制御部と、電子銃から出射された電子ビームの照射を遮断するブランキング手段と、前記電子ビームを回転方向および半径方向に偏向走査させるビーム偏向手段と、描画データ信号に基づき前記ブランキング手段に対するオン・オフ信号および前記ビーム偏向手段に対する偏向信号を出力するフォーマッタとを備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明のモールドの製造方法は、レジストが塗布された基板に、上記の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て製造することを特徴とするものである。ここで、モールドとは、表面に所望の凹凸パターン形状を有する担体であり、その凹凸パターンの形状を磁気ディスク媒体に転写するためのインプリントモールド、凹凸パターンの形状に応じた磁化パターンを磁気ディスク媒体に転写するための磁気転写用マスター担体などである。
【0025】
本発明の磁気ディスク媒体の製造方法は、レジストが塗布された基板に、上記の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製されたインプリントモールドを用い、該モールドの表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた凹凸パターンを転写することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の他の磁気ディスク媒体の製造方法は、レジストが塗布された基板に、上記の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された磁気転写用マスター担体を用い、該マスター担体の表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた磁化パターンを磁気転写することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の電子ビーム描画方法によれば、レジストが塗布され回転ステージに設置された基板上に、前記回転ステージを回転させつつ電子ビームを、ディスクリートトラックメディアまたはビットパターンメディアなどのサーボエリアにおけるトラックの幅方向に延びるサーボパターンおよびデータエリアにおけるトラックの周方向に延びるグルーブパターンまたはドットパターンなどの高密度磁気記録媒体用の微細パターンの描画形状に対応して照射するについて、前記電子ビームの照射タイミングを、電子ビーム照射を遮断するブランキング手段に対するオン・オフ信号の出力によって制御しつつ、前記電子ビームの偏向動作を、ビーム偏向手段に対する偏向信号の出力によって制御することにより前記微細パターンの形状を描画する電子ビーム描画方法において、前記基板の少なくとも1周回中におけるビーム照射量および基板線速度を一定に維持し、前記基板全面の微細パターンの1トラック相当分の前記サーボパターンおよび前記グルーブパターンまたはドットパターンを該基板の1周回中に連続して描画し、前記サーボパターンは前記偏向信号によって電子ビームを該サーボパターンの形状を塗りつぶすように2方向に走査して描画する一方、前記グルーブパターンまたはドットパターンは1回の照射で連続線状または破線状に描画し、前記微細パターンの形状を描画するためのパターン形状偏向信号に加えて、ビーム照射位置でのビームスポットと基板表面との周方向の相対線速度を、前記サーボエリアと前記データエリアの描画とで変化させる相対線速度偏向信号を前記ビーム偏向手段に出力し、前記サーボエリアの描画における前記相対線速度が、前記回転ステージによる基板回転における基板線速度より遅く、該基板線速度より前記データエリアの描画における前記相対線速度が速くなるように設定したことにより、サーボエリアとデータエリアの露光描画に必要とされるドーズ量が異なり、サーボパターンは回転方向にビームが追従することで、ドーズ量が増加して基板の回転に応じて順次サーボパターンの描画が行え、このサーボパターンの描画に伴って回転方向に追従するように偏向した分を、データエリアのグルーブパターンまたはドットパターンなどを露光描画する間に、逆方向にビームを偏向させることで次のサーボパターンの描画に必要なビーム位置に偏向させることができ、基板の全面に設計通りの微細パターンを高速に高精度に描画でき、描画効率の向上による描画時間の短縮化が図れる。
【0028】
また、上記描画方法において、電子ビームによる微細パターンの描画を行うビーム偏向手段に出力する偏向制御信号を、微細パターンの形状を描画するためのパターン形状偏向信号に加えて、ビーム照射位置でのビームスポットと基板表面との周方向の相対線速度を、サーボエリアとデータエリアの描画とで変化させる相対線速度偏向信号との重畳によって設定することにより簡易な制御で実行できる。
【0029】
さらに、上記描画方法において、基板全面の微細パターンの1トラック相当分のサーボパターンおよびグルーブパターンまたはドットパターンを該基板の1周回中に連続して描画し、しかも、サーボパターンは電子ビームを該サーボパターンの形状を塗りつぶすように2方向に走査して描画することにより、1トラック内を分割して複数回転によって描画する方法に比べて、回転間のビームのオン・オフタイミングのズレによる描画精度の低下が改善でき、基本的なパターン描画精度が向上できる。
【0030】
一方、グルーブパターンまたはドットパターンは1回の照射で連続線状または破線状に描画することにより、このグルーブパターンまたはドットパターンは複数回の露光による多重露光描画によるものに比べて、その形状の凹凸が少なくラフネス特性が良好となり、データエリアへのデータ記録特性を良好とすることができる。
【0031】
その際、回転ステージの回転速度を、描画位置の半径に反比例して内周トラック描画で速く外周トラック描画で遅くなるように、線速度を一定とする回転制御を行うと、内周描画と外周描画とでドーズ量の均等化が図れ、半径位置に応じた制御が簡易に高精度に行うことができる。
【0032】
また、上記描画方法は、基板を一方向に回転させつつ、電子ビームを該基板の半径方向または半径方向と直交する方向に微小往復振動させるとともに、その振動方向と直交する方向に偏向信号に基づいて偏向してパターン形状を塗りつぶすように走査させて描画する場合に、最適に適用することができる。
【0033】
また、上記描画方法において、前記グルーブパターンの描画における前記パターン形状偏向信号を、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを連続照射して描画するように設定した際には、制御の簡素化が図れる。
【0034】
一方、本発明の電子ビーム描画装置は、電子ビーム描画方法を実現するために、レジストが塗布された基板を回転させる回転ステージと、該回転ステージの回転数を描画位置の半径に応じて基板線速度を一定に維持する駆動制御部と、電子銃から出射された電子ビームの照射を遮断するブランキング手段と、前記電子ビームを回転方向および半径方向に偏向走査させるビーム偏向手段と、描画データ信号に基づき前記ブランキング手段に対するオン・オフ信号および前記ビーム偏向手段に対する偏向信号を出力するフォーマッタとを備えたことにより、所望の微細パターンを高速に高精度に描画でき、描画効率の向上による描画時間の短縮化を図ることができる。
【0035】
さらに、本発明のモールドの製造方法によれば、レジストが塗布された基板に、上記の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て製造することにより、表面に高精度の凹凸パターン形状を有する担体が簡易に得られるものである。
【0036】
また、本発明の磁気ディスク媒体の製造方法によれば、レジストが塗布された基板に、上記の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て製造されたインプリントモールドを用い、該モールドの表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた凹凸パターンを転写して作製することにより、このインプリントモールドの場合には、インプリント技術を用いて形状パターニングを行う際に、このモールドを磁気ディスク媒体の形成過程でのマスクとなる樹脂層表面に圧接することにより、媒体表面に一括して形状転写し、特性の優れたディスクリートトラックメディアやビットパターンメディアなどの磁気ディスク媒体を簡易に作成することができる。
【0037】
また、本発明の他の磁気ディスク媒体の製造方法によれば、レジストが塗布された基板に、上記の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て製造された磁気転写用マスター担体を用い、該マスター担体の表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた磁化パターンを磁気転写して作製することにより、この磁気転写用マスター担体の場合には、磁性層による微細パターンを表面上に有するため、このマスター担体を磁気ディスク媒体と重ねて磁気転写技術を用いて磁界を印加することにより、磁気ディスク媒体に磁性層の微細パターンに対応した磁化パターンを転写形成し、特性の優れた磁気ディスク媒体を簡易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の電子ビーム描画方法により基板に描画する微細パターン例を示す平面図である。
【図2】ディスクリートトラックメディアの微細パターンの一部拡大図である。
【図3】描画半径位置と基板回転数との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の電子ビーム描画方法を実施する一実施形態の電子ビーム描画装置の概略構成図である。
【図5】本発明の電子ビーム描画方法における基板の回転に伴う描画過程(A)〜(D) のビーム偏向例を示す図である。
【図6】本発明の電子ビーム描画方法における微細パターンの描画速度の調整を説明するためのディスクリートトラックメディアのパターン形状の基本的形状例を示す拡大模式図(A)、そのパターン形状の描画における相対線速度偏向信号の回転方向偏向の基本特性を示す図(B)および相対線速度偏向信号の半径方向偏向の基本特性を示す図(C)、相対線速度偏向信号に基づき調整された基板線速度とビーム偏向との相対線速度の変化を示す図(D)である。
【図7】微細パターンを構成するエレメントの基本的描画方式の一例を示す拡大模式図(A)およびその描画方式におけるパターン形状偏向信号等の各種制御信号(B)〜(E)を示す図である。
【図8】微細パターンを構成するエレメントの基本的描画方式の他例を示す拡大模式図(A)およびその描画方式におけるパターン形状偏向信号等の各種制御信号(B)〜(E)を示す図である。
【図9】電子ビーム描画方法によって描画された微細パターンを備えたインプリントモールドを用いて磁気ディスク媒体に微細パターンを転写形成している過程を示す概略断面図である。
【図10】電子ビーム描画方法によって描画された微細パターンを備えた磁気転写用マスターを用いて磁気ディスク媒体に磁化パターンを転写形成している過程(A)、(B)を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。図1および図2に示す本発明の実施の形態としてのモールドは磁気転写用マスター担体の例である。
【0040】
図1および図2に示すように、微細凹凸形状による磁気ディスク媒体用の微細パターン9には、周方向に規則的にサーボエリア12とデータエリア15とが交互に配置されており、サーボエリア12にはサーボパターン14を有する。微細パターン9は、円盤状の基板10(円形基盤)に、外周部10aおよび内周部10bを除く円環状領域に形成される。サーボパターン14は、基板10の同心円状トラックに等間隔で、各セクターに中心部からほぼ放射方向に延びる細幅のサーボエリア12に形成されてなる。一般に、図1に示すように、サーボエリア12は半径方向に延びる円弧状に形成されている。
【0041】
図2は、ディスクリートトラックメディアの一例のハードディスクパターンの一部拡大図を示している。図示例のサーボパターン14は、同心円状のトラックT1〜T4に、例えば、プリアンブル、アドレス、バースト信号に対応する矩形状の微細なサーボエレメント13が配置される。1つのサーボエレメント13は、1トラック幅で電子ビームの照射径より大きいトラック方向長さを有し、バースト信号の一部のサーボエレメント13は隣接するトラックに跨るように半トラックずれて配置される。
【0042】
上記のようなサーボエリア12に形成されるサーボパターン14に加え、データエリア15における各データトラックの部分に、隣接する各トラックT1〜T4を溝状に分離するようトラック方向に延びるグルーブパターン16が回転方向(周方向)に延びて同心円状に形成される。
【0043】
なお、図示してないが、ビットマップメディアのハードディスクパターンの一例としては、上記データエリア15における各トラックには、破線状のドットパターン(ビットパターン)が回転方向(周方向)に延びて同心円状に形成される。
【0044】
上記基板10の1回転で、1トラック分のサーボエレメント13が描画されるものであり、隣接するトラックT1〜T4にまたがる半トラックずれたサーボエレメント13は、半分に分割することなく、いずれかのトラックの描画時に半径方向の描画基準(ビーム照射偏向基準)を半トラックずらせて一度に描画する。
【0045】
上記微細パターン9のサーボエリア12のサーボエレメント13およびデータエリア15のグルーブパターン16の描画は、表面にレジスト11が塗布された基板10を、後述の回転ステージ31(図4参照)に設置して回転させつつ、例えば、内周側のトラックより外周側トラックへ順に、またはその反対方向へ、1トラックずつ電子ビームEBでサーボエレメント13およびグルーブパターン16を順に走査描画し、レジスト11を照射露光するものである。
【0046】
図3は、基板10の微細パターン描画における内周トラックと外周トラックの描画での基板回転数Nと半径rとの関係を示し、鎖線で示す基本的特性は、最内周トラック(半径r1)の回転数N1に対し、最外周トラック(半径r2)の回転数N2が半径に反比例して遅くなるように回転制御される。実際には、各トラックごとに回転数Nが変更調整されるのではなく、実線で示すように、電子ビームEBの半径方向の偏向可能範囲等に対応して複数トラック(例えば8トラック)の描画後に、回転ステージ31を半径方向に機械的に移動する際に、これと連係して該回転ステージ31の回転数Nを段階的に変更する制御を行うものである。そして、少なくとも基板10の周回中においては、その回転数N(回転速度)は変更することなく一定値で定速回転駆動される。
【0047】
このように基板10の微細パターン9の描画領域における、描画部位の半径方向位置の移動つまりトラック移動に対し、基板10の外周側部位でも内周側部位でも全描画域で同一の線速度となるように、前記回転ステージ31の回転数Nを外周トラック描画時には遅く、内周トラック描画時には速くなるように調整する。これにより、電子ビームEBの描画における均等なドーズ量を得る点、および描画位置精度を確保する点で有利となる。
【0048】
<電子ビーム描画装置>
後述の本発明の電子ビーム描画方法を実施するための電子ビーム描画装置の一実施形態について説明する。図4は電子ビーム描画装置の構成概略図である。
【0049】
電子ビーム描画装置100は、基板10に対して電子ビームを照射する電子ビーム照射部20と、基板10を回転および直線移動させる駆動部30と、駆動部30における機械的な駆動制御を行う駆動制御部40と、描画クロックの生成を行うとともに、電子ビーム照射部20および駆動部30の動作タイミング信号を出力するフォーマッタ50と、電子ビーム照射部20における出射電子ビームの電子光学的制御を行う電子光学系制御部60と、描画すべき微細パターン9に関する設計データをフォーマッタ50に送出するデータ送出装置5とを備えている。データ送出装置5と上記駆動制御部40および電子光学系制御部60との間ではデータの送受信が行われる。
【0050】
電子ビーム照射部20は、鏡筒27内に電子ビームEBを出射する電子銃21、電子ビームEBを半径方向と直交する方向X(以下、回転方向または周方向)および半径方向Yへ偏向させるとともに回転方向Xに一定の振幅で微小往復振動させる偏向手段22,23、電子ビームEBの照射をオン・オフ制御するためのブランキング手段24としてアパーチャ24aおよびブランキング24b(偏向器)を備えている。また、偏向手段22,23の上部に電子ビームEBの絞り調整によりビーム照射線量の変更設定を行うコンデンサレンズ25(電磁レンズ)、偏向手段22,23の下部に電子ビームEBのビーム径を変更設定する対物レンズ26(電磁レンズ)を備えている。
【0051】
これにより、電子銃21から出射された電子ビームEBは偏向手段22、23、コンデンサレンズ25および対物レンズ26等を経てビーム照射線量およびビーム径が調整されて、レジスト11が塗布されたモールド原盤10上に照射・遮蔽され、XY方向に偏向走査される。
【0052】
上記電子ビーム照射部20および後述の駆動部30は、内部が減圧される真空チャンバーに構成され、この真空チャンバー内に設置されたモールド基板10に対して電子ビームEBを照射してパターン描画を行うように構成されている。
【0053】
ブランキング手段24における上記アパーチャ24aは、中心部に電子ビームEBが通過する透孔を備え、ブランキング24bはオン・オフ信号の入力に伴って、オフ信号時には電子ビームEBを偏向させることなくアパーチャ24aの透孔を通過させてビーム照射させ、一方、オン信号時には電子ビームEBを偏向させてアパーチャ24aの透孔を通過させることなくアパーチャ24aで遮断して、電子ビームEBの照射を行わないように作動する。
【0054】
駆動部30は、鏡筒27が上面に配置された筐体43内に基板10を支持する回転ステージ31および該ステージ31の中心軸と一致するように設けられたモータ軸を有するスピンドルモータ32を備えた回転ステージユニット33と、回転ステージユニット33を回転ステージ31の一半径方向に直線移動させるための直線移動手段34とを備えている。直線移動手段34は、回転ステージユニット33の一部に螺合された精密なネジきりが施されたロッド35と、このロッド35を正逆回転駆動させるパルスモータ36とを備えている。また、ステージユニット33には、回転ステージ31の回転角に応じたエンコーダ信号を出力するエンコーダ37が設置されている。エンコーダ37は、スピンドルモータ32のモータ軸に取り付けられる、多数の放射状のスリットが形成された回転板38と、そのスリットを光学的に読み取り、エンコーダ信号を出力する光学素子39とを備えている。
【0055】
駆動制御部40は、駆動部30のスピンドルモータ32のドライバ41およびパルスモータ36のドライバ42に駆動制御信号を送出し、これらの駆動を制御するものである。
【0056】
フォーマッタ50は、不変の基準クロックを発生する基準クロック発生部51と、描画クロックを生成する描画クロック生成部52と、描画クロックに基づいて、電子ビーム照射部20の偏向手段22,23のための偏向アンプ28およびブランキング24bのためのブランキングアンプ29、およびスピンドルモータ32のドライバ41に接続されているPLL回路へデータ信号を送出するデータ振分け部54と、エンコーダ37からの信号を受けて、動作タイミング(データ振分けタイミング)を制御するタイミング制御部55を備えている。
【0057】
描画クロック生成部52は、基板10の半径位置に応じて描画クロックの周波数を変更するための変更部56を備えており、1つのサーボエレメント13およびグルーブパターン16を描画する描画クロック数は内外周で同じに設定する。
【0058】
データ送出装置5は、ハードディスクパターンなどの描画すべき前述の微細パターン9の描画設計データ(描画パターンや描画タイミングを示すデータ)を記憶し、駆動制御部40、フォーマッタ50、電子光学系制御部60に描画設計データ信号を送出するものである。
【0059】
電子光学系制御部60は、電子ビーム照射部20の電磁レンズによるコンデンサレンズ25および対物レンズ26に制御信号を送出し、これらの電磁レンズの電子光学的特性を制御する。
【0060】
電子ビーム描画装置100においては、データ送出装置5からフォーマッタ50に描画設計データ信号が入力され、フォーマッタ50は、描画設計データを、ブランキング手段24のオン・オフ制御、偏向手段22,23による電子ビームEBのX−Y偏向制御、回転ステージ31の回転速度制御等の制御信号として、各アンプ28,29およびドライバ41,42に振り分けるものであり、それぞれの制御信号はエンコーダ37から入力されたエンコーダ信号と同期させて所定のタイミングで送出される。そしてフォーマッタ50からの信号に基づいて、ブランキング手段24、偏向手段22,23、スピンドルモータ32,36等が駆動され、基板10の全面に所望の微細パターン9を描画する。なお、上記偏向手段22,23に対する偏向制御信号は、後述のように、微細パターン9の形状を描画するためのパターン形状偏向信号と、ビーム照射位置でのビームスポットと基板表面との周方向の相対線速度を、サーボエリア12とデータエリア15の描画とで変化させる相対線速度偏向信号とを重畳させて出力する。
【0061】
また、データ送出装置5から電子光学系制御部60に描画設計データ信号が入力され、描画する微細パターン9に応じてコンデンサレンズ25および対物レンズ26に対する制御信号(作動電流値)を設定して、電子ビームEBのビーム照射線量およびビーム径を初期設定し、パターン形態に適した描画精度と描画速度の両立を図り、同時にスピンドルモータ32による回転速度、偏向手段23、パルスモータ36による半径方向の描画送りを変更制御する。なお、上記ビーム照射線量およびビーム径は、少なくともその基板10の描画が完了するまでは初期設定値が保持され、描画途中で変更されることなくビーム照射が行われる。
【0062】
次に、図5(A)〜(D)は本発明の電子ビーム描画方法における基板10の回転に伴う相対線速度を変更するビーム偏向例を示す描画過程の図であり、図6(A)〜(D)はその描画過程におけるパターン位置、相対線速度偏向信号の回転方向偏向(X方向偏向信号)および半径方向偏向(Y方向偏向信号)および相対線速度の変化特性を示している。
【0063】
図5(A)は、特定のトラックにおける特定のセクターのサーボエリア12の最初のサーボエレメント13の描画を開始する状態を示し、この場合には、回転方向Aのビーム照射位置EB1は、X方向偏向量が無偏向(中央位置0)から回転後方(−X方向)に最も大きく操作されている。この状態より、図7で後述するように、サーボエレメント13の描画を開始する。
【0064】
図5(B)は、サーボエリア12の複数(図では3個)のサーボエレメント13の描画を終了した状態を示し、この場合には、初期のビーム照射位置EB1からX方向偏向量が回転前方(+X方向)に操作されたビーム照射位置EB2に移行している。このX方向偏向制御により、電子ビームEBの照射位置は基板10の回転方向Aと同方向に追いかけるように移動し、図6(D)に示すように、基板10と電子ビームEBの相対線速度Vsが基板線速度Vbより遅くなり、1つのサーボエレメント13を描画する時間が長くなる。この状態からさらにX方向偏向量を回転前方(+X方向)に移行させて、順次サーボエレメント13の描画を行う。
【0065】
図5(C)は、サーボエリア12のサーボエレメント13の描画が全部終了した状態であり、この場合には、回転方向Aに対するビーム照射位置EB3は、X方向偏向量が無偏向(中央位置0)から回転前方(+X方向)に最も大きく操作されたビーム照射位置EB3に移行している。この状態より、図7で後述するように、データエリア15のグルーブパターン16の描画を開始する。
【0066】
図5(D)は、データエリア15のグルーブパターン16の描画を途中まで行った状態を示し、この場合には、グルーブパターン16の描画初期のビーム照射位置EB3からX方向偏向量が回転後方(−X方向)に操作されたビーム照射位置EB4に移行している。このX方向偏向制御により、電子ビームEBの照射位置は基板10の回転方向Aと逆方向に移動し、図6(D)に示すように、基板10と電子ビームEBの相対線速度Vdが基板線速度Vbより速くなり(Vs<Vb<Vd)、グルーブパターン16を描画する時間が短くなる。この状態からさらにX方向偏向量を回転後方(−X方向)に移行させて、引き続きグルーブパターン16の描画を行う。
【0067】
上記のような相対線速度偏向制御により、図6(A)に示すようなサーボエリア12のサーボエレメント13およびデータエリア15のグルーブパターン16の描画を、基板10の回転方向Aの回転移動に応じて、図6(B)に示すような特性を有する、相対線速度調整用のベースとなるX方向偏向信号Def(Xa)に基づき、照射された電子ビームEBが、サーボエレメント13の描画では基板10の回転方向Aと同方向に、またグルーブパターン16の描画では基板10の回転方向Aと逆方向に移行制御する。図6(C)の半径方向Yの相対線速度調整用のベースとなるY方向偏向信号Def(Ya)は、電子ビームEBの偏向移動が回転方向Aつまり円弧状となるように補正するためのものである。なお、横軸は回転位相を示している。
【0068】
そして、図6(D)に示すように電子ビームEBの相対線速度を、サーボエレメント13の描画では遅くして、トラック幅に延び描画面積率が大きいサーボエレメント13を、十分な露光量を確保しつつその形状を塗りつぶすように走査する時間を得るようにしている。また、電子ビームEBの相対線速度を、グルーブパターン16の描画では速くして、周方向に延び描画面積率が小さいグルーブパターン16を、過大とならない必要かつ十分な露光量を確保しつつ高速で短時間にその形状を1回走査で描画するようにしている。
【0069】
なお、図6(A)のサーボエリア12のサーボエレメント13の形状は、実際のサーボトラック機能を有するパターン形態ではないが、エレメントの描画面積比率がほぼ同等となるように簡略化して示している。また、データエリア15のグルーブパターン16についても、その半径方向Yの幅はトラック幅等に応じて変化する。
【0070】
図7は本発明の電子ビーム描画方法による上記相対線速度調整用の偏向制御に加えて、サーボエレメント13およびグルーブパターン16のそれぞれの形状に対応した第1の描画方式を示す図であり、図示の場合2つのサーボエレメント13a,13bの描画は高速振動スキャン描画方法で行い、グルーブパターン16の描画はビームを遮断しない連続ビームによる1回描画方法である。なお、偏向手段に出力する周方向Xおよび半径方向Yの偏向信号は、この図7のパターン形状描画用のX方向およびY方向偏向信号と、前述の図6(B)および図6(C)の相対線速度調整用のX方向およびY方向偏向信号とを重畳して、最終的な偏向制御信号とするものである。
【0071】
基板10(回転ステージ31)を一方向の回転方向Aに回転させつつ、基板10の半径方向Yに対して直交する周方向Xに、微視的に見れば直線状に延びる同心円状のトラックT(トラック幅:W)の所定位相位置に、前記サーボエレメント13a,13bを連続して一度にその形状を塗りつぶすように微小径の電子ビームEBで走査して、1回転で1トラック内のサーボエレメント13を描画する。
【0072】
上記走査は、サーボエレメント13a,13bの最小トラック方向長さより小さいビーム径の電子ビームEBを、ブランキング手段24(アパーチャ24a,ブランキング24b)の描画部位に応じたオン・オフ動作により照射しつつ、半径方向Yおよび半径方向と直交する周方向Xに電子ビームEBをX−Y偏向させて、基板10の回転線速度に応じてトラック幅WのY方向送りを行うとともに、図7(A)のように、半径方向Yと直交する周方向Xへ一定の振幅で高速に往復振動させて振らせることで、露光描画する。
【0073】
次に、上記サーボエレメント13a,13bの描画に続いて同一周回時に、同じトラックのグルーブパターン16の描画を行う。グルーブパターン16の描画半径位置に、電子ビームEBを半径方向Yに偏向操作し、図7では回転方向Xには固定照射し(実際には、図6(B)の偏向信号により相対線速度が速くなるように制御される)、回転ステージ31の回転による基板10の回転にともなって、回転数に応じた相対的なビーム走査速度と照射時間とにより決まる所定長さのグルーブパターン16をトラック方向に沿って描画する。基板10の次の周回時には、電子ビームEBの照射位置を1トラック分だけ半径方向Yに偏向し、同様に次トラックのサーボエレメント13a,13bおよびグルーブパターン16の描画を行う。その際、サーボエレメント13の描画時における周方向Xへの高速往復振動は停止している。なお、上記往復振動は、基板10の半径方向に振動させる方式のものであってもよい。
【0074】
具体的に、図7に基づき順に説明する。図7(A)は電子ビームEBの半径方向Y(外周方向)および周方向X(回転方向)の電子ビームEBの描画動作を示し、図7(B)に半径方向Yの偏向信号Def(Yb)を、(C)に周方向Xの偏向信号Def(Xb)を、(D)に周方向Xの振動信号Mod(X)を、(E)にブランキング信号BLKのオン・オフ動作をそれぞれ示している。なお、横軸は回転位相を示している。
【0075】
まず、基板回転数Nを描画半径位置に対応して図3による所定の回転数に設定した基板10の回転において、a点で(E)のブランキング信号BLKのオフにより電子ビームEBを照射し、サーボエレメント13aの描画を開始するものであり、基準位置(描画開始位置)にある電子ビームEBを(D)の振動信号Mod(X)により周方向Xに往復振動させつつ、(B)の偏向信号Def(Yb)により半径方向(−Y)に偏向させて送るとともに、A方向への基板10の回転に伴う電子ビームEBの照射位置のずれを補償するために、(C)の偏向信号Def(Xb)によりA方向と同方向の周方向Xに偏向させて送ることにより、矩形状のサーボエレメント13aを塗りつぶすように走査し、b点でのブランキング信号BLKのオンにより電子ビームEBの照射を停止し、サーボエレメント13aの描画を終了する。b点後に、半径方向Yおよび周方向Xの偏向を、図7における基準位置に戻す。
【0076】
次に、基板10が回転してc点になると、同様にして次のサーボエレメント13bの描画を開始し、同様の偏向信号に基づいて同様に描画し、d点でサーボエレメント13bの描画を終了する。なお、上記サーボエレメント13a,13bの周方向Xの描画長さは、電子ビームEBの(D)の周方向往復振動の振幅で規定する。
【0077】
その後、(B)の半径方向Yの偏向信号Def(Yb)をグルーブパターン16の描画位置半径に相当する信号とし、e点でブランキング信号BLKのオフにより電子ビームEBを照射し、データエリア15のグルーブパターン16の描画を開始する。
【0078】
この場合には、(D)の振動信号Mod(X)の振動停止により周方向Xの往復振動は停止し、(C)のX方向偏向信号Def(Xb)は無偏向であり、トラックに沿った円弧状にグルーブパターン16を描画する。実際には、前述の図6(B)の相対線速度調整用のX方向偏向信号により相対線速度が速くなるように、サーボエレメント13a,13bの描画で回転方向を追いかけるように偏向して遅れたX方向偏向を、回転方向に向かうように偏向して元に戻すものである。所定長さのグルーブパターン16を描画した時点で、ブランキング信号BLKのオンにより電子ビームEBの照射を停止する。
【0079】
1つのトラックを1周描画した後、次のトラックに移動し同様に描画して、基板10の全領域に所望の微細パターン9のサーボエリア12およびデータエリア15を描画する。この電子ビームEBのトラック移動は、後述の回転ステージ31を半径方向Yに直線移動させて行う。その移動は1トラックの描画毎に行うか、電子ビームEBの半径方向Yの偏向可能範囲に応じて複数トラック(例えば8トラック)の描画毎に行うものである。
【0080】
なお、電子ビームEBによる描画幅(実質露光幅)は、照射時間に応じて照射ビーム径より広くなる特性があり、最終的なエレメント幅の描画を行うためには、その描画幅となる所定の照射線量で走査するために、サーボエレメント13およびグルーブエレメント16の描画時の相対線速度と走査速度を設定することによって照射線量を規定するものである。
【0081】
図8は、上記図7の第1の描画方式に代えて同様に適用する第2の実施形態を示す図であり、この実施形態の描画は、図示の2つのサーボエレメント13a,13bの描画は第1の描画方式と同様の高速振動スキャン描画方法で行い、グルーブパターン16は周方向に複数のグルーブエレメント16a,16bに分割し、ビームを断続させて基板10(回転ステージ31)の1周回で一度に、順に描き継ぐように描画するものである。なお、第1の描画方式と同様に、偏向手段に出力する周方向Xおよび半径方向Yの偏向信号は、この図8のパターン形状描画用のX方向およびY方向偏向信号と、前述の図6(B)および図6(C)の相対線速度調整用のX方向およびY方向偏向信号とを重畳して、最終的な偏向制御信号とするものである。
【0082】
つまり、基板10を回転させつつ、サーボエレメント13a,13bを1周回で連続して一度にその形状を塗りつぶすように微小径の電子ビームEBで走査して描画する。サーボエレメント13a,13bの描画に続いて、グルーブパターン16の描画を行うものであり、所定角度で分割された1つのグルーブエレメント16aを、その描画開始点より電子ビームEBを周方向Xへ大きく偏向させて描画し、次のグルーブエレメント16bは時間的間隔をもって同様に、その描画開始点より電子ビームEBを周方向Xへ大きく偏向させて描画して、順に連続したグルーブパターン16の描画を行う。その際、サーボエレメント13の描画時における周方向Xへの高速往復振動は停止している。
【0083】
具体的に図8に基づき順に説明する。図8(A)は電子ビームEBの半径方向Y(外周方向)および周方向X(回転方向)の電子ビームEBの描画動作を示し、図8(B)に半径方向Yの偏向信号Def(Yb)を、(C)に周方向Xの偏向信号Def(Xb)を、(D)に周方向Xの振動信号Mod(X)を、(E)にブランキング信号BLKのオン・オフ動作をそれぞれ示している。
【0084】
第1の描画方式と同様に、まず、a点で(E)のブランキング信号BLKのオフにより電子ビームEBを照射し、サーボエレメント13aの描画を開始し、電子ビームEBを(D)の振動信号Mod(X)により周方向Xに往復振動させつつ、(B)の偏向信号Def(Yb)により半径方向(−Y)に偏向させて送るとともに、A方向への基板10の回転に伴う電子ビームEBの照射位置のずれを補償するために、(C)の偏向信号Def(Xb)によりA方向と同方向の周方向Xに偏向させて送ることにより、矩形状のサーボエレメント13aを塗りつぶすように走査し、b点でのブランキング信号BLKのオフにより電子ビームEBの照射を停止し、サーボエレメント13aの描画を終了する。次に、基板10が回転してc点になると、同様にして次のサーボエレメント13bの描画を開始し、同様の偏向信号に基づいて同様に描画し、d点でサーボエレメント13bの描画を終了する。
【0085】
続いて、e点でブランキング信号BLKのオフにより電子ビームEBを照射し、グルーブパターン16の最初のグルーブエレメント16aの描画を開始する。この場合には、(D)の振動信号Mod(X)の振動停止により周方向Xの往復振動は停止している。そして、(C)の偏向信号Def(Xb)により、A方向と逆向きの周方向(−X)に大きく偏向させて送り、所定長さのグルーブエレメント16aを描画し、f点で描画を終了する。描画長さは、(−X)方向の偏向量に基板10のA方向の相対線速度による回転量を加算した長さである。なお、(B)の半径方向Yの偏向信号Def(Yb)は無偏向であることから、円弧状ではなく直線的に描画しているが、微小範囲では直線としても大きく円弧からずれることはない。f点後に、周方向Xの偏向を基準位置に戻す。
【0086】
そして、上記グルーブエレメント16aの描画が終了してから所定時間が経過し、基板10の回転により次のグルーブエレメント16bの描画開始位置が到達したg点において、同様に電子ビームEBの照射を開始するとともに、(−X)方向に大きく偏向させて、次のグルーブエレメント16bを描画するものである。
【0087】
上記グルーブエレメント16a,16bの長さは、サーボエレメント13の高速振動描画でレジスト11の露光が十分に行える程度に設定されている電子ビームEBのビーム強度に対応して設定される。
【0088】
1つのトラックを1周描画した後、次のトラックに移動し同様に描画して、基板10の全領域に所望の微細パターン9を描画する。この電子ビームEBのトラック移動は、後述の回転ステージ31を半径方向Yに直線移動させて行う。その移動は1トラックの描画毎に行うか、電子ビームEBの半径方向Yの偏向可能範囲に応じて複数トラック(例えば8トラック)の描画毎に行うものである。
【0089】
また、詳細は図示していないが、ビットパターンメディアの微細パターン、つまり、サーボエリアにおけるトラックの幅方向に延びるサーボパターンおよびデータエリアにおけるトラックの周方向に破線状に延びるドットパターンの描画は、サーボパターンは前記図7のサーボエレメント13a,13bと同様に描画するものである。また、ドットパターンの描画は、図7におけるグルーブパターン16の描画において、連続照射している電子ビームEBを、ブランキング信号BLKの短時間のオフ・オンの繰り返しにより電子ビームEBを断続的に照射し、点状に描画することによって実現可能である。その際の偏向制御信号は、前記と同様に、微細パターンの形状を描画するためのパターン形状偏向信号と、ビーム照射位置でのビームスポットと基板表面との周方向の相対線速度を、サーボエリアとデータエリアの描画とで変化させる相対線速度偏向信号とを重畳させて出力するものである。
【0090】
次に、図9は、上記のような電子ビーム描画装置100により、前述の電子ビーム描画方法によって描画された微細パターンを備えた、インプリントモールド70を用いて微細凹凸パターンを磁気ディスク媒体に転写形成している過程を示す概略断面図である。
【0091】
上記インプリントモールド70は、透光性材料による基板71の表面に、図9では不図示の前述のレジスト11が塗布され、前記サーボパターン14が描画される。その後、現像処理して、レジストによる凹凸パターンを基板71に形成する。このパターン状のレジストをマスクとして基板71をエッチングし、その後レジストを除去し、表面に形成された微細凹凸パターン72を備えるインプリントモールド70を得る。一例としては、上記微細凹凸パターン72は、ディスクリートトラックメディア用のサーボパターンとグルーブパターンとを備えたものである。
【0092】
このインプリントモールド70を用いて、インプリント法によって磁気ディスク媒体80を作製する。磁気ディスク媒体80は、基板81上に磁性層82を備え、その上にマスク層を形成するためのレジスト樹脂層83が被覆されている。そして、このレジスト樹脂層83に、前記インプリントモールド70の微細凹凸パターン72が押し当てられて、紫外線照射によって上記レジスト樹脂層83を硬化させ、微細パターン72の凹凸形状を転写形成してなる。その後、レジスト樹脂層83の凹凸形状に基づき磁性層82をエッチングし、磁性層82による微細凹凸パターンが形成されたディスクリートトラックメディア用の磁気ディスク媒体80を作製するものである。
【0093】
また、上記ではディスクリートトラックメディアの製造について説明したが、ビットパターンメディアも同様の工程で製造することができる。
【0094】
図10は、上記のような電子ビーム描画装置100により前述の電子ビーム描画方法によって描画された微細パターンを備えた磁気転写用マスター担体90(モールド)を作製し、このマスター担体90を用いて磁気ディスク媒体85を製造するために磁化パターンを磁気転写している過程を示す断面模式図である。
【0095】
磁気転写用マスター担体90の作製工程はインプリントモールド70の作製方法とほぼ同様である。回転ステージ31に設置する基板10は、例えばシリコン、ガラスあるいは石英からなる円板の表面にポジ型あるいはネガ型電子ビーム描画用レジスト11が塗設され、このレジスト11上に、電子ビームを走査させて所望の微細パターン9を描画する。その後、レジスト11を現像処理して、レジストによる微細凹凸パターンを有する基板10を得る。これが磁気転写用マスター担体90の原盤となる。
【0096】
次に、この原盤の表面の凹凸パターン表面に薄い導電層を成膜し、その上に、電鋳を施し、金属の型をとった凹凸パターンを有する基板91を得る。その後、原盤から所定厚みとなった基板91を剥離する。基板91の表面の凹凸パターンは、原盤の凹凸形状が反転されたものである。
【0097】
基板91の裏面を研磨した後、その凹凸パターン上に磁性層92(軟磁性層)を被覆して磁気転写用マスター担体90を得る。基板91の凹凸パターンの凸部あるいは凹部形状は、原盤のレジストの凹凸パターンに依存した形状となる。
【0098】
上記のようにして作製された磁気転写用マスター担体90を用いた磁気転写方法を説明する。情報が転写される被転写媒体である磁気ディスク媒体85は、例えば、基板86の両面または片面に磁気記録層87が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等であり、ここでは、磁気記録層87の磁化容易方向が記録面に対して垂直な方向に形成されている垂直磁気記録媒体とする。
【0099】
図10(A)に示すように、予め磁気ディスク媒体85に初期直流磁界Hinをトラック面に垂直な一方向に印加して磁気記録層87の磁化を初期直流磁化させておく。その後、図10(B)に示すように、この磁気ディスク媒体85の記録層87側の面とマスター担体90の磁性層92の面とを密着させ、磁気ディスク媒体85のトラック面に垂直な方向に初期直流磁界Hinとは逆方向の転写用磁界Hduを印加して磁気転写を行う。その結果、転写用磁界がマスター担体90の磁性層92に吸い込まれ、凸部に対応する部分の磁気ディスク媒体85の磁性層87の磁化が反転し、その他の部分の磁化は反転しない結果、磁気ディスク媒体85の磁気記録層87にはマスター担体90の凹凸パターンに応じた情報(例えばサーボ信号)が磁気的に転写記録される。なお、磁気ディスク媒体85の上側記録層についても磁気転写を行う場合には、上側記録層に上側用のマスター担体を密着させて下側記録層と同時に磁気転写を行う。
【0100】
また、垂直方向に転写用磁界Hduを印加するのに代えて、面内方向(磁気記録層87と平行)に転写用磁界を印加し、凸部磁性層92の両側部(エッジ)において凹凸パターンに応じて発生する垂直方向磁化を記録するようにしてもよい。
【0101】
なお、面内磁気記録媒体への磁気転写の場合にも、上記垂直磁気記録媒体用とほぼ同様のマスター担体90が使用される。この面内記録の場合には、磁気ディスク媒体の磁化を、予めトラック方向に沿った一方向に初期直流磁化しておき、マスター担体と密着させてその初期直流磁化方向と略逆向きの転写用磁界を印加して磁気転写を行うものであり、この転写用磁界がマスター担体90の凸部磁性層に吸い込まれ、凸部に対応する部分の磁気ディスク媒体の磁性層の磁化は反転せず、その他の部分の磁化が反転する結果、凹凸パターンに対応した磁化パターンを磁気ディスク媒体に記録することができる。
【0102】
以上説明した、本発明の電子ビーム描画方法を用いた、インプリントモールド、磁気転写用マスター担体の上述の製造方法は一例であり、本発明の電子ビーム描画方法を用いて微細パターンの描画を行い、凹凸パターンを形成する工程を経るものであれば上述の作製方法に限るものではない。
【符号の説明】
【0103】
5 データ送出装置
9 微細パターン
10 基板
11 レジスト
12 サーボエリア
13 サーボエレメント
14 サーボパターン
15 データエリア
16 グルーブパターン
18 鏡筒
20 電子ビーム照射部
21 電子銃
22,23 偏向手段
24 ブランキング手段
24a アパーチャ
24b ブランキング
25 コンデンサレンズ
26 対物レンズ
28 偏向アンプ
29 ブランキングアンプ
30 駆動部
31 回転ステージ
32 スピンドルモータ
37 エンコーダ
40 駆動制御部
50 フォーマッタ
51 基準クロック発生部
52 描画クロック生成部
54 データ振分け部
55 タイミング制御部
56 変更部
60 電子光学系制御部
70 インプリントモールド
80,85 磁気ディスク媒体
90 マスター担体
100 電子ビーム描画装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストが塗布され回転ステージに設置された基板上に、前記回転ステージを回転させつつ電子ビームを、ディスクリートトラックメディアまたはビットパターンメディアなどのサーボエリアにおけるトラックの幅方向に延びるサーボパターンおよびデータエリアにおけるトラックの周方向に延びるグルーブパターンまたはドットパターンなどの高密度磁気記録媒体用の微細パターンの描画形状に対応して照射するについて、
前記電子ビームの照射タイミングを、電子ビーム照射を遮断するブランキング手段に対するオン・オフ信号の出力によって制御しつつ、前記電子ビームの偏向動作を、ビーム偏向手段に対する偏向信号の出力によって制御することにより前記微細パターンの形状を描画する電子ビーム描画方法において、
前記基板の少なくとも1周回中におけるビーム照射量および基板線速度を一定に維持し、前記基板全面の微細パターンの1トラック相当分の前記サーボパターンおよび前記グルーブパターンまたはドットパターンを該基板の1周回中に連続して描画し、
前記サーボパターンは前記偏向信号によって電子ビームを該サーボパターンの形状を塗りつぶすように2方向に走査して描画する一方、前記グルーブパターンまたはドットパターンは1回の照射で連続線状または破線状に描画し、
前記微細パターンの形状を描画するためのパターン形状偏向信号に加えて、ビーム照射位置でのビームスポットと基板表面との周方向の相対線速度を、前記サーボエリアと前記データエリアの描画とで変化させる相対線速度偏向信号を前記ビーム偏向手段に出力し、
前記サーボエリアの描画における前記相対線速度が、前記回転ステージによる基板回転における基板線速度より遅く、該基板線速度より前記データエリアの描画における前記相対線速度が速くなるように設定したことを特徴とする電子ビーム描画方法。
【請求項2】
前記回転ステージの回転速度を、描画位置の半径に反比例して内周トラック描画で速く外周トラック描画で遅くなるように、線速度を一定とする回転制御を行うことを特徴とする請求項1記載の電子ビーム描画方法。
【請求項3】
前記サーボパターンの描画における前記パターン形状偏向信号は、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを該基板の半径方向または半径方向と直交する方向に微小往復振動させるとともに、その振動方向と直交する方向に偏向してパターン形状を塗りつぶすように走査させて描画するように設定することを特徴とする請求項1または2記載の電子ビーム描画方法。
【請求項4】
前記グルーブパターンの描画における前記パターン形状偏向信号は、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを連続照射して描画するように設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電子ビーム描画方法。
【請求項5】
前記グルーブパターンの描画における前記パターン形状偏向信号は、前記グルーブパターンを所定角度で分割した複数のグルーブエレメントの整列で構成し、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを該基板の半径方向と直交する方向へ偏向走査し、前記基板の回転に伴って前記グルーブエレメントを順に時間的間隔をもって描画するように設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電子ビーム描画方法。
【請求項6】
前記ドットパターンの描画における前記パターン形状偏向信号は、一方向に回転している基板に、前記電子ビームを断続照射して描画するように設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電子ビーム描画方法。
【請求項7】
前記請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の電子ビーム描画方法を実現するために、
レジストが塗布された基板を回転させる回転ステージと、該回転ステージの回転数を描画位置の半径に応じて基板線速度を一定に維持する駆動制御部と、電子銃から出射された電子ビームの照射を遮断するブランキング手段と、前記電子ビームを回転方向および半径方向に偏向走査させるビーム偏向手段と、描画データ信号に基づき前記ブランキング手段に対するオン・オフ信号および前記ビーム偏向手段に対する偏向信号を出力するフォーマッタとを備えたことを特徴とする電子ビーム描画装置。
【請求項8】
レジストが塗布された基板に、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て製造することを特徴とするモールドの製造方法。
【請求項9】
レジストが塗布された基板に、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製されたインプリントモールドを用い、該モールドの表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた凹凸パターンを転写することを特徴とする磁気ディスク媒体の製造方法。
【請求項10】
レジストが塗布された基板に、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の電子ビーム描画方法により所望の微細パターンを描画し、該所望の微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された磁気転写用マスター担体を用い、該マスター担体の表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた磁化パターンを磁気転写することを特徴とする磁気ディスク媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−128241(P2011−128241A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284707(P2009−284707)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】