説明

電子写真捺染用トナー及びそれを用いる電子写真捺染方法

【課題】帯電性、分散性、色特性が優れ、画像濃度が高い電子写真捺染用トナー及び捺染の作業性を効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない電子写真捺染方法を提供する。
【解決手段】着色剤を樹脂に分散させたトナー粒子を用いて、電子写真方式により捺染布に捺染するためのトナーにおいて、着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による捺染に用いられる乾式捺染用トナー及び液体捺染用トナー、並びにそれらを用いる電子写真捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染法は、糸、編織物、二次製品等色々な形態の繊維品に適用され、版形式及び機械操作によって凹版を用いるローラ捺染、孔版によるスクリーン、型紙捺染が主流である。スクリーン捺染には手工捺染、半自動スクリーン捺染機、自動走行スクリーン捺染機による捺染、フラット型及びロータリー式自動スクリーン捺染機による捺染などがある。しかし、ローラ捺染は、金属ローラに図柄を彫刻する工程が煩雑でローラの取り扱い等も大変であり、スクリーン捺染は、スクリーンの製造に時間がかかり、捺染作業に手間がかかる等の問題があった。また、ロータリー式スクリーン捺染もスクリーンの製作、ローラの彫刻等に時間がかかる等の問題があった。このように従来からの捺染法はその製作工程が煩雑で、出来上がりまで長期間費やされるため、簡便な捺染法が望まれていた。
【0003】
近年、従来の彫刻製版工程を省略し、短期間で製作が可能なインクジェットを用いた捺染方法は特開平10−195776号公報、特許第2995135号公報、特開2003−96340号公報、特開平7−278482号公報、特開平8−226083号公報などが提案されている。しかし、インクジェットによる捺染方式は、濃度を上げることができない、捺染していくうちに色特性や濃度が変化してしまう等の欠点があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、電子写真方式を用いた捺染方法が最近開発され、特開2003−12958号公報、特開2002−029238号公報、特開平5−027474号公報、特開平5−033275号公報等に提案されている。この方法は、感光体上に静電潜像を形成し、トナーを付着させ、これを布類に転写し、熱によりトナーを定着させるものである。しかし、これらに記載の電子写真方式による捺染方法は乾式トナーを用いたものであり、樹脂により物理的に繊維に付着させているため、捺染本来の色特性が再現できない、肌触りが良くない等の問題があった。
【0005】
液体現像剤を用いた電子写真方式による捺染法は、特開平9−73198号公報、特開平10−239916号公報等に提案されている。これは、昇華染料を用いた液体捺染用トナーをイオン流により現像し、図柄を転写物に印刷し、これを布類に重ね合せ昇華熱転写するものである。この方法は、肌触り等も自然で、簡便な方法であるが、カラーの場合、2色目に重ねた濃度が出にくいため2次色の色特性が悪い、高濃度が得られにくい等の欠点があった。また、それらに加えて作業が煩雑で、布に転写後、不要になった紙(転写物)がムダになるなどの問題があった。
【0006】
また、特開200−110085号公報(特許文献1)には、アントラキノン系着色剤を用いたマゼンタ液体捺染用トナーが記載されている。
しかし色特性や濃度の点では改良されているものの、長期間使用後、帯電安定性が低下し、良好な分散性が保てないという問題があった。
さらに、特開平10−254180号公報(特許文献2)には、染料としてソルベトイエロー104とソルベントイエロー105で表わされる染料混合物を用いた捺染用湿式現像剤が提案されている。
しかし、これらの染料は昇華性染料であるため、絹や綿等のセルロース系布に捺染することはできなかった。
【0007】
【特許文献1】特開200−110085号公報
【特許文献2】特開平10−254180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、帯電特性、分散性が良好で、色特性が優れ、しかも画像濃度が高い電子写真捺染用トナー、及びそれを用いる電子写真捺染方法を提供することである。
特に本発明の目的は、捺染の作業性を大幅に効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない電子写真捺染方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、上記課題は本発明の下記(1)〜(14)によって解決される。
(1)「少なくとも着色剤を樹脂に分散させたトナー粒子を用いて、電子写真方式により捺染布に捺染するための電子写真乾式捺染用トナーにおいて、該着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴とする電子写真乾式捺染用トナー。
【0010】
【化1】


(式中、R〜R10はそれぞれ独立して、H、C2n+1、F、Cl、OH、SOH、NHCOCH、NHCONH、OCH、NHC、NH、NOから選ばれる基である)」;
(2)「前記電子写真乾式捺染用トナーにおいて、該トナーの体積平均粒径が3〜20μmであることを特徴とする前記(1)に記載の電子写真乾式捺染用トナー」;
(3)「高抵抗低誘電率の担体液中に分散させてなる少なくとも着色剤を樹脂に分散させたトナー粒子を用いて、電子写真方式により捺染布に捺染するための電子写真液体捺染用トナーにおいて、該着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴とする電子写真液体捺染用トナー。
【0011】
【化2】


(式中、R〜R10はそれぞれ独立して、H、C2n+1、F、Cl、OH、SOH、NHCOCH、NHCONH、OCH、NHC、NH、NOから選ばれる基である)」;
(4)「前記担体液が、沸点100〜350℃の脂肪族飽和炭化水素であることを特徴とする前記(3)に記載の電子写真液体捺染用トナー」;
(5)「前記樹脂の少なくとも一部にアルカリ可溶性樹脂及び/又は水溶性樹脂を含有することを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の電子写真液体捺染用トナー」;
(6)「前記アルカリ可溶性又は水溶性樹脂が、その酸価が0〜2000mg/KOHであることを特徴とする前記(3)〜(5)のいずれかに記載の電子写真液体捺染用トナー」;
(7)「前記電子写真液体捺染用トナーにおいて、該トナーを担体液中に分散させた液体現像剤のζ電位の絶対値が10〜200mVであることを特徴とする前記(3)〜(6)のいずれかに記載の電子写真液体捺染トナー」;
(8)「前記電子写真液体捺染用トナーにおいて、該トナーの重量平均粒径が0.1〜5μmであることを特徴とする電子写真液体捺染用トナー」;
(9)「前記染料の純度が80〜100%であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電子写真乾式または液体捺染用トナー」;
(10)「電子写真捺染用トナーを用いて静電潜像を感光体上に現像後、転写ローラで圧力をかけ、画像を転写させる電子写真捺染方法において、該電子写真捺染用トナーとして前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電子写真乾式または液体捺染用トナーを用いることを特徴とする電子写真捺染方法」;
(11)「前記静電潜像を感光体上に現像後、中間転写体にトナー像を1次転写し、次いで画像を2次転写させることを特徴とする前記(10)に記載の電子写真捺染方法」;
(12)前記2次転写前に中間転写体に溶媒を吹きかける工程を含むことを特徴とする前記(11)に記載の電子写真捺染方法」;
(13)「前記現像において感光体の線速に対してトナーを現像するための現像ローラの線速が1.2〜6倍、過剰溶剤を除去するスクイズローラの線速が1.2〜4倍であることを特徴とする前記(10)〜(12)のいずれかに記載の電子写真捺染方法」;
(14)「前記現像においてタンデム型に感光体を配置し、ベルト上に貼りつけた布に画像を転写しフルカラー捺染することを特徴とする前記(10)〜(13)のいずれかに記載の電子写真捺染方法」。
【発明の効果】
【0012】
(1)請求項1に対応する作用効果
請求項1に記載の電子写真乾式捺染用トナーにおいては、電子写真方式で着色剤として前記一般式(1)で表わされる染料を含有するため、オンデマンド性に優れ帯電特性が良好で画像濃度の高い捺染が可能になる。
(2)請求項2に対応する作用効果
請求項2に記載の電子写真乾式捺染用トナーにおいては、その体積平均粒径が3〜20μmであるため高品質の画像を提供できる。
(3)請求項3に対応する作用効果
請求項3に記載の電子写真液体捺染用トナーにおいては、液体現像剤で現像を行なうため、請求項1の効果に加えて更に濃度、解像性、転写性において優れる。
(4)請求項4に対応する作用効果
請求項4に記載の電子写真液体捺染用トナーにおいては、担体液が、沸点100〜350℃の脂肪族飽和炭化水素であるため、発色工程での問題がなく、高品質の画像を提供できる。
(5)請求項5に対応する作用効果
請求項5に記載の電子写真液体捺染用トナーにおいては、樹脂の少なくとも一部にアルカリ可溶性樹脂及び/又は水溶性樹脂が含有されているため、風合の良好な高品質の画像を提供できる。
(6)請求項6に対応する作用効果
請求項6に記載の電子写真液体捺染用トナーにおいては、アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂の酸価が0〜2000mgであるため、高品質な画像を提供できる。
(7)請求項7に対応する作用効果
請求項7に記載の電子写真液体捺染用トナーにおいては、該トナーを担体液中に分散させた液体現像剤のζ電位の絶対値が10〜200mVであるため、高品質の画像を提供できる。
(8)請求項8に対応する作用効果
請求項8に記載の電子写真液体捺染用トナーにおいては、その重量平均粒径が0.1〜5μmであるため、高品質の画像を提供できる。
(9)請求項9に対応する効果作用
請求項9に記載の電子写真捺染用トナーにおいては、前記一般式(1)で表わされる染料の純度が80%以上であるため、乾式または液体の電子写真捺染用トナーに用いた場合、高品質の画像を提供できる。
(10)請求項10に対応する作用効果
請求項10に記載の電子写真捺染方法においては、静電潜像を感光体に現像後、転写ローラで圧力をかけ、画像を形成させるため、平滑性の悪い紙や布への転写性が良好である。
(11)請求項11に対応する作用効果
請求項11に記載の電子写真捺染方法においては、静電潜像を感光体上に現像後、中間転写体にトナー像の転写を行なって、画像を形成させるため、平滑性の悪い紙や布への転写性が良好である。
(12)請求項12に対応する作用効果
請求項12に記載の電子写真捺染方法においては、2次転写前に中間転写体に溶媒を吹きかける工程を含むため、請求項11の効果に加えて更に転写性が良好である。
(13)請求項13に対応する作用効果
請求項13に記載の電子写真捺染方法においては、感光体の線速に対して現像ローラの線速が1.2〜6倍、スクイズローラの線速が1.2〜4倍であるため、高品質の画像が得られる。
(14)請求項14に対応する作用効果
請求項14に記載の捺染方法おいては、タンデム型に感光体を配置し、ベルト上に貼りつけた布に画像を転写するため、高速で高画品質のフルカラー捺染が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、少なくとも着色剤を樹脂に分散させたトナー粒子を用いて、電子写真方式により捺染布に捺染するための電子写真捺染用トナーにおいて、該着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴とする電子写真捺染用トナーに関するものである。
【0014】
【化3】


(式中、R〜R10はそれぞれ独立して、H、C2n+1、F、Cl、OH、SOH、NHCOCH、NHCONH、OCH、NHC、NH、NOから選ばれる基である)
【0015】
本発明において用いる前記一般式(1)で表わされる染料はR〜R10の種類によっては新規化合物も含まれる。
染料骨格部分は、例えば芳香族ニトロ化合物類と芳香族アミン類等を用いて水酸化ナトリウムのような塩基の存在下で200℃程度に加熱し、通常のアゾカップリング反応を行うことにより合成できる。
トリアジン環の反応基部分は、例えば以下のような反応から合成できる。
【0016】
【化4】


またR〜R10の官能基は、例えばF、Cl、はHF、Cl等によるハロゲン化反応、SOHはHSO等によるスルホン化反応、NOは硝酸等によるニトロ化反応、NHはNOの還元等一般的な方法により得ることができる。
【0017】
本発明において用いる前記一般式(1)で表わされる染料は、乾式及び湿式のいずれの方式の電子写真捺染用トナーの染料として用いられる。
体積抵抗10Ω・cm以上高抵抗低誘電率の担体液中に、前記一般式(1)で表わされる染料を分散させた電子写真液体捺染用トナーにおいては、赤系捺染トナーとして特に高品質の捺染が得られる。
綿、麻などのセルロース系天然繊維は繊維中の官能基と化学反応して共有結合により染着する反応性染料が良好である。本発明においては、前記一般式(1)で表わされる染料を用いることにより、帯電特性、色特性、画像濃度、染着性において優れた性能が得られる。該一般式(1)で表わされる材料のトリアジン基と繊維との化学反応は以下の式で表わされる。
【0018】
【化5】

【0019】
一般の捺染インクでは版を用いて画像を作成するためインクの電気的な特性は意味を持たないが、電子写真方式の場合はプラスあるいはマイナスの電気的な特性により像を形成しているため帯電特性は非常に重要である。前記一般式(1)で表わされる染料を用いることにより帯電特性が良好になる。その明確な理由は不明であるが染料骨格と電子吸引基、電子供与基との微妙なバランスによるものと考えられる。
前記一般式(1)で表わされる染料の例として下記表1に示すのようなものが挙げられる。
なお、下記表1の染料AはRiactive Red 12、染料BはRiactive Red 2、染料GはRiactive Red 1である。
【0020】
【表1】

【0021】
また、前記一般式(1)で表わされる赤色染料と一緒に他の赤色染料を混合して使用することもできる。他の赤色染料を使用する場合は全染料分の30重量%以下が望ましい。
電子写真方式でフルカラー画像を形成する場合は、4原色の混合によるが各色が目標となる基準色に近い方が望ましい。印刷分野ではジャパンカラーがその目標基準の一つとして用いられるが、前記一般式(1)で表わされる赤色染料はトナー化した場合この目標値に近く色再現性が良好となる。また前記一般式(1)で表わされる赤色染料は着色力が高く、少ない着色剤量でも高画像濃度を出すことができる。
【0022】
市販の紛体染料は、染料純度50%程度で、食塩、芒硝が多量に入っている場合が多く、液の抵抗、帯電性に悪影響を与えるため、精製するか、初めから塩類含有量の少ない染料を用いたほうが、良好である。本発明においては、前記一般式(1)で表わされる染料は、純度80%以上が望ましい。
ここで染料の純度は以下の溶解、再沈殿法で求められる。
〈1〉食塩、芒硝などの無機塩類を溶解せずに染料のみを溶解する溶媒(N、N−ジメチルホルムアミドなど)を用いて抽出する。
〈2〉〈1〉の染料溶解液に染料を溶解しない溶媒(アセトンなど)を混合し染料を析出させる。
〈3〉純度(%)=(析出させた染料重量/初めの染料重量)×100
で純度を算出する。
【0023】
本発明の電子写真液体捺染用トナーを用いた液体現像剤に使用される担体液としては、高抵抗で低誘電率のものがよく、イソパラフィン系炭化水素、シリコーン系オイル等が良好である。イソパラフィン系炭化水素は、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、エクソール100/140、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130(以上エクソンモービル社製)(エクソン化学)などがあり、シリコーン系オイルとしては、KF96 1〜10000cst(信越シリコン)、SH200、SH344(東レシリコン)、TSF451(東芝シリコン)などがある。
該担体液としては、体積抵抗10Ω・cm以上の高抵抗低誘電率のものが好ましい。
【0024】
担体液の沸点は100〜350℃(常温常圧下・・・25℃、1気圧)が望ましい。100℃より低いと転写前に溶媒が揮発しやすく転写性向上の効果が低減したり、臭気、安全性の点や、揮発溶剤蒸気が作業者にとって好ましくない。350℃より高いと溶剤が揮発しにくく、発色工程で溶剤が除去できず発色特性に問題が生じる。350℃以下であれば、後工程の加熱、スチーミングの段階で蒸発させることができる。
【0025】
本発明の電子写真乾式捺染用トナーに用いられる樹脂(結着樹脂)としては、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
本発明の電子写真液体捺染用トナーに用いられる樹脂(分散用樹脂)としては、アクリル樹脂、ビニルトルエン・アクリル樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂等が挙げられる。
また本発明の電子写真液体捺染用トナーに使用することが好ましい樹脂(分散用樹脂)としては、
【0027】
【化6】

(式中、RはHまたはCHを、nは6〜20の整数を表わす。)
で表わされるビニルモノマーAと
【0028】
【化7】

(式中、RはHまたはCHを、R’は炭素数が1〜4のアルキル基又はHを表わす。)
で表わされるビニルモノマー、及びビニルピリジン、ビニルピロリドン、エチレングリコールジメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンより選ばれるモノマーBの各一種づつ、もしくは、数種の共重合体や、グラフト共重合体が挙げられる。
【0029】
また樹脂の一部にはアルカリ可溶性樹脂及び/又は水溶性樹脂を含有させると、発色、水洗工程でトナー中の樹脂が溶解し、布から脱離するため、風合の良好な捺染布が得られる。
発色水洗工程では、100℃前後でスチーミング後、0.1〜2%程度のアルカリで処理する場合があり、アルカリ可溶性樹脂や水溶性樹脂を含有させないと、樹脂分が残り、風合を劣化させる原因となるが、アルカリ可溶性樹脂や水溶性樹脂を含有させることにより、発色水洗工程で樹脂が離脱し、風合の良好な捺染が得られる。
【0030】
アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂としては、水溶性メラミン樹脂、水溶性ロジン変性樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、コラーゲン、ゼラチン、デンプン、キトサン等が挙げられる。
商品としては、クラレ社製ポバール(PVA)、イソバン(イソブチレン/マレイン酸樹脂)、ハリマ化成製ネオトール、ハリディプ(アルキッド樹脂、アクリル樹脂)、日本合成化学社製エコアティ(PVA)、ナガセケムテックス社製デコナール(エポキシ樹脂)、日本純薬社製ジュリアー(アクリル樹脂)、カブセン(ポリエステル樹脂)などが挙げられる。
【0031】
該アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂の酸価は0〜2000mg/KOHであることが望ましく、2000mg/KOHより高いと現像特性が低下する。
【0032】
本発明の電子写真乾式捺染用トナーの体積平均粒径は3〜20μmが望ましく、3μm未満ではチリが生じ、20μmを超えると色彩、解像性が悪くなる。
本発明の電子写真液体捺染用トナーの重量平均粒径は0.1〜5μmが望ましく、0.1μm未満では、充分な濃度が得られない場合やニジミが発生しやすくなる場合があり、5μmより大きいと、色彩、解像性が悪くなる場合がある。
本発明の電子写真液体捺染用トナーの場合、該トナーを担体液中に分散させた液体現像剤のζ電位の絶対値は10〜200mVが良好である。ζ電位の絶対値が10mVよりも低いとトナー粒子が凝集したり、電気泳動性が低下し地汚れしたり、濃度が低下する。またζ電位の絶対値が200mVよりも高いと感光体付着量が低下し濃度が低下する場合がある。
【0033】
本発明の電子写真捺染方法において、感光体に現像後、転写ローラで、好ましくは0.1〜3Kg/cmの圧力をかけ転写した場合、平滑性の悪い転写紙への捺染の場合は転写性が向上し、高濃度の画像を形成できる。
また、中間転写体を用いて転写する場合も、更に高い圧力がかけられるため転写性が向上する。しかし、中間転写体を用いない場合よりも転写時の溶媒量が少なくなるため、捺染の場合は、2次転写前に中間転写体上に脂肪族炭化水素やシリコーンオイル等の溶媒を吹き付け転写に必要な溶媒量を確保することが望ましい。
溶媒の吹き付け量は、0.20〜0.70mg/cm程度が良好である。
また、捺染の場合、濃度を向上のためには現像付着量を上げたり、あるいは、現像後リバースローラの溶剤スクイズ量を少なくすることにより、感光体上の現像液量を多くして布への溶剤染込み量を増やすと効果がある。
【0034】
図1は、本発明の電子写真液体捺染用トナーを用いた液体現像剤による電子写真捺染方法の一例である。帯電電圧付与部材により、感光体に電荷を与え、露光により非画像部の電荷を消去する。感光体としてはセレン感光体、有機感光体、アモルファスシリコン感光体等が使用できる。感光体の表面電位は、400〜1600vの範囲が良好である。感光体の電荷の残っている潜像に現像ローラから供給される液体現像剤により現像し、リバースローラで余剰の現像液を除去し、転写電圧付与部剤によりトナーの電荷と逆電荷の電圧をかけ捺染布に転写させる。
現像ローラは感光体と順方向に回転し、リバースローラは逆方向に回転させ、感光体に対する線速は現像ローラが1.2〜6倍、リバースローラの線速は1.2〜4倍が効果的である。
【0035】
ローラと感光体のギャップは50〜250μm、リバースローラのギャップは30〜150μmが良好である。転写電圧は500〜4000vの範囲が良好である。
布に転写されずに感光体に残ったトナーをクリーニングブレード、クリーニングローラで除去後、感光体を除電する。
また、画像部の電荷を消去し非画像部の電荷を残す現像方式でも同様に画像形成できる。
【0036】
図2は図1の転写電圧付与部材をチャージャー方式からローラ方式にした例である。チャージャー方式に比べ転写時の圧力を付与できるため、表面性の荒れた凹凸の大きい布の場合でも転写性が良好である。転写圧は0.1〜3Kg/cmが良好である。
【0037】
図3は図2の装置に中間転写部材を追加した例である。図2の装置よりもさらに高い転写圧力を付与できるため、表面性の荒れた凹凸の大きい布の場合でも転写性が良好である。一次転写圧は0.1〜3Kg/cm、二次転写圧は0.1〜5Kg/cmが良好である。ただ、中間転写部材への一次転写時にトナー中の溶媒成分が少なくなり、中間転写部材から布への二次転写に必要な溶媒量が少なくなる場合があるため、二次転写前に中間転写部材に溶媒を吹きかける工程を追加すると効果的である。
【0038】
図4は感光体をタンデムに配置し、布搬送ベルト上に布を貼りつけてフルカラー捺染を行なう装置の一例である。
【0039】
電子写真乾式捺染用トナーは、着色剤、樹脂、荷電制御剤等を混合し、ブスコニーダなどの混練機で混練後、粗粉砕、微粉砕し所定の粒径になるように粗紛、微紛をカットして得ることができる。
電子写真液体捺染用トナーは、着色剤、樹脂、担体液等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミルなどの分散機に投入、分散、混練を行ない濃縮トナーを調製し、これを本発明の担持液中に分散させることにより現像液として得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお「%」、「部」はいずれも重量基準である。
【0041】
(実施例1)
表1の染料A(純度50%品) 70部
ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート
/メタクリル酸(80/10/10)
共重合体のアイソパーH20%溶液 100部
ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン) 60部
水溶性樹脂 ポバール(PVA)(クラレ) 55部
アイソパーH 180部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 3部
をピンミルに入れて10時間分散後、さらにアイソパーHを300部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により、図1の装置で電子写真捺染を行なった。
【0042】
(実施例2)
表1の染料B(純度90%品) 30部
スチレン/アクリル樹脂(St/アクリル=60/40)(三菱レーヨン) 40部
水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス) 75部
荷電制御剤(サリチル酸誘導体の金属錯体) 2部
をブスコニーダで混練、冷却後パルペライザーで粗粉砕し、ジェットミルで粉砕後分級し乾式トナーを得た。布を紙に張り付け、このトナーを用いリコー乾式プリンタImagioで電子写真捺染を行なった。
【0043】
(実施例3)
表1の染料E(純度80%) 50部
エポキシ変性樹脂エピコート802(ジャパンエポキシレジン) 20部
水溶性樹脂 ハリディブ(水溶性アルキド樹脂)(ハリマ化成) 75部
ステアリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/
メタクリル酸(80/10/10)
共重合体のアイソパーH20%溶液 100部
アイソパーH 250部
荷電制御剤(オクタン酸ジルコニウム) 5部
をボールミルに入れて24時間分散後、さらにアイソパーHを250部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により、図2の装置で電子写真捺染を行なった。
【0044】
(実施例4)
実施例1の染料A(純度50%品)を純度90%に精製して用いた以外は、実施例1と同一にして濃縮トナーを作成した。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により、図2の装置で電子写真捺染を行なった。
【0045】
(実施例5)
実施例3の分散媒をアイソパーHからシリコーンオイル(KF−96 2cst)に変えた以外は全て実施例3と同様にして濃縮トナーを作成した。
この濃縮トナー100gとシリコーンオイル(KF−96 2cst)を混合した現像剤により、図2の装置で電子写真捺染を行なった。
【0046】
(実施例6)
表1の染料F(純度90%) 40部
ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン) 5部
水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス) 95部
2−エチルヘキシルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/
メタクリル酸(80/10/10)
共重合体のアイソパーH20%溶液 120部
アイソパーH 200部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をバッチ式サンドミルに入れて12時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーMを混合した現像剤により、図2の装置で電子写真捺染を行なった。
【0047】
(実施例7)
表1の染料G(純度80%) 50部
ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン) 95部
水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス) 5部
2−エチルヘキシルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/
メタクリル酸(80/10/10)
共重合体のアイソパーH20%溶液 120部
アイソパーH 200部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をバッチ式サンドミルに入れて12時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとエクソールD30を混合した現像剤により、図2の装置で電子写真捺染を行なった。転写布は全て綿布を用いた。
【0048】
実施例1〜7の捺染布にケイ酸ソーダ(45〜48°ボーメ)を塗布後20時間放置後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/lにより80℃で5分処理を行ない捺染サンプルを作成した。それらの物性、及び諸特性の評価結果は表2のとおりであった。
【0049】
また、チャージ転写(転写圧0.1Kg/cm以下)の図1の装置、中間転写体を取り付けた図3の装置で実施例3のトナーを用いて捺染を行なった実施例8、9、更に2次転写前にアイソパーHを0.3mg/cm以上吹きかけた実施例10を実施例1〜7同様に評価した。これらの諸特性の評価結果を表2に示す。
【0050】
(比較例1)
実施例1の染料を下記構造式で表わされるリアクティブレッド4(純度50%)にした以外は実施例1と同様にして捺染を行なった。
【0051】
【化8】

【0052】
(比較例2)
実施例3の染料を下記構造式で表わされるリアクティブレッド46(純度50%)にした以外は実施例3と同様にして捺染を行なった。
【0053】
【化9】

【0054】
比較例1、2も実施例1、3と同様の後処理を行ない、同様に評価した。これらの物性及び諸特性の評価結果を表2に示す。
【0055】
表2の結果より明らかなとおり、本発明の電子写真捺染用トナー、それを用いた電子写真捺染方法により、帯電制御率、転写率、布画像濃度が高く、高解像な捺染布が得られた。
実施例4は染料純度を上げているため更に画像濃度が高い。実施例5は分散媒に脂肪族炭化水素以外の溶媒を使用しているため、実施例4に比べて分散性がやや悪い。実施例6は水溶性樹脂量が多いため画像濃度がやや低い。実施例7は水溶性樹脂量が少ないため風合がやや低い。
実施例10は二次転写前に中間転写ローラ上の画像にアイソパーHを吹きつけているため転写率が上がり画像濃度が向上した。比較例の電子写真捺染用トナーは帯電制御性が悪くトナーとしての機能が出せなかった。
【0056】
【表2】

【0057】
*画像濃度はX−Riteにより測定
*地汚れは地汚れ段階見本布による5段階評価
5:最良、1:最悪
*風合は風合段階見本布による5段階評価
5:布のみと同程度の柔らかさ、4:柔らかい、3:中程度、2:やや硬い、1:硬い
*平均粒径は下記の方法により測定
乾式捺染用トナーの体積平均粒径はコールターカウンター法により求めた。
コールターカンウター法は乾式トナーの粒径測定で通常用いられる方法である。トナーを電解質溶液中に分散し小孔の開いた隔壁の両側から電圧をかける。小孔から粒子体積分の電解質溶液が排除されるため、左右の電極間の電気抵抗が瞬間的に増し、電圧パルスを生じる。このパルス数と大きさから粒度分布を求めた。
また液体捺染用トナーの重量平均粒径は島津製作所SA−CP3により測定した。
トナーを積分球式濁度計で透過率15%程度になるまでアイソパーで希釈し、SA−CP3用セルに充填する。測定条件はACCEL480、MODE:CENT、3〜16チャンネルで行った。
*ζ電位は大塚電子ELS−8000により測定
セル:低誘電率セル、電界:500V/cm、6回測定平均モードで測定した。
*解像性は、段階見本による5段階評価
5:最良、1:最悪
*転写率はテープ剥離法による濃度から下記式により算出
転写率(%)=
{(転写前感光体上濃度−転写後感光体残濃度)/(転写前感光体上濃度)}×100
*帯電制御率は電着法により算出
電極間距離:1cm、電極面積:2cm×2cm、電着時間:100秒で測定した。
*ΔEはX−Riteによりジャパンカラーとの色差を算出
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明における電子写真捺染方法の一例を示す図である。
【図2】図1の転写電圧付与部材をチャージャー方式からローラ方式にした例を示す図である。
【図3】図2の装置に中間転写部材を追加した例を示す図である。
【図4】感光体をタンデムに配置し、布搬送ベルト上に布を貼りつけてフルカラー捺染を行なう装置の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤を樹脂に分散させたトナー粒子を用いて、電子写真方式により捺染布に捺染するための電子写真乾式捺染用トナーにおいて、該着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴とする電子写真乾式捺染用トナー。
【化1】


(式中、R〜R10はそれぞれ独立して、H、C2n+1、F、Cl、OH、SOH、NHCOCH、NHCONH、OCH、NHC、NH、NOから選ばれる基である)
【請求項2】
前記電子写真乾式捺染用トナーにおいて、該トナーの体積平均粒径が3〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真乾式捺染用トナー。
【請求項3】
高抵抗低誘電率の担体液中に分散させてなる少なくとも着色剤を樹脂に分散させたトナー粒子を用いて、電子写真方式により捺染布に捺染するための電子写真液体捺染用トナーにおいて、該着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴とする電子写真液体捺染用トナー。
【化2】


(式中、R〜R10はそれぞれ独立して、H、C2n+1、F、Cl、OH、SOH、NHCOCH、NHCONH、OCH、NHC、NH、NOから選ばれる基である)
【請求項4】
前記担体液が、沸点100〜350℃の脂肪族飽和炭化水素であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真液体捺染用トナー。
【請求項5】
前記樹脂の少なくとも一部にアルカリ可溶性樹脂及び/又は水溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真液体捺染用トナー。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性又は水溶性樹脂が、その酸価が0〜2000mg/KOHであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の電子写真液体捺染用トナー。
【請求項7】
前記電子写真液体捺染用トナーにおいて、該トナーを担体液中に分散させた液体現像剤のζ電位の絶対値が10〜200mVであることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の電子写真液体捺染トナー。
【請求項8】
前記電子写真液体捺染用トナーにおいて、該トナーの重量平均粒径が0.1〜5μmであることを特徴とする電子写真液体捺染用トナー。
【請求項9】
前記染料の純度が80〜100%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真乾式または液体捺染用トナー。
【請求項10】
電子写真捺染用トナーを用いて静電潜像を感光体上に現像後、転写ローラで圧力をかけ、画像を転写させる電子写真捺染方法において、該電子写真捺染用トナーとして請求項1〜9のいずれかに記載の電子写真乾式または液体捺染用トナーを用いることを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項11】
前記静電潜像を感光体上に現像後、中間転写体にトナー像を1次転写し、次いで画像を2次転写させることを特徴とする請求項10に記載の電子写真捺染方法。
【請求項12】
前記2次転写前に中間転写体に溶媒を吹きかける工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の電子写真捺染方法。
【請求項13】
前記現像において感光体の線速に対してトナーを現像するための現像ローラの線速が1.2〜6倍、過剰溶剤を除去するスクイズローラの線速が1.2〜4倍であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の電子写真捺染方法。
【請求項14】
前記現像においてタンデム型に感光体を配置し、ベルト上に貼りつけた布に画像を転写しフルカラー捺染することを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の電子写真捺染方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−78915(P2007−78915A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264736(P2005−264736)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】