説明

電子写真部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】シリコーンオイルを添加することにより得られる効果を、より長期間にわたって保持することができる電子写真部材、ならびに、該電子写真部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供する。
【解決手段】最外層に、SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット、SiO1.04(OR5)で示される第2のユニットおよびSiO1.56で示される第3のユニットを有するポリシロキサンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真部材、ならびに、該電子写真部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子写真感光体の表面を帯電する方式の1つとして、接触帯電方式が実用化されている。
【0003】
接触帯電方式は、電子写真感光体に接触配置された帯電部材に電圧を印加し、該帯電部材と該電子写真感光体との間の当接部近傍で微少な放電をさせることによって、該電子写真感光体の表面を帯電する方式である。
【0004】
電子写真感光体の表面を帯電するための帯電部材としては、電子写真感光体と帯電部材との当接ニップを十分に確保する観点から、支持体および該支持体上に設けられた弾性層(導電性弾性層)を有するものが一般的である。
【0005】
また、弾性層(導電性弾性層)は、低分子量成分を比較的多量に含むことが多いため、この低分子量成分がブリードアウトし、電子写真感光体の表面を汚染することがある。この汚染を抑制するために、導電性弾性層上には、これとは別の、導電性弾性層に比べて弾性率の小さい表面層を設けることもよく行われている。
【0006】
また、電子写真部材のひとつである帯電部材の形状としては、ローラー形状が一般的である。以下、ローラー形状の帯電部材を「帯電ローラー」ともいう。
【0007】
また、接触帯電方式の中でも広く普及している方式は、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を帯電部材に印加する方式(以下「AC+DC接触帯電方式」ともいう。)である。AC+DC接触帯電方式の場合、交流電圧には、帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を持つ電圧が用いられる。
【0008】
AC+DC接触帯電方式は、交流電圧を用いることにより、帯電均一性の高い安定した帯電を行える方式である。しかし、交流電圧源を使用する分、直流電圧のみの電圧を帯電部材に印加する方式(以下「DC接触帯電方式」ともいう。)に比べて、帯電装置、電子写真装置の大型化、コストアップを招いてしまう。
【0009】
すなわち、DC接触帯電方式は、AC+DC接触帯電方式に比べて、帯電装置、電子写真装置の小型化、コストダウンの点で優れた帯電方式である。
【0010】
特許文献1には、反応性の官能基を片末端に1個または2個有するシリコーンオイルを、フッ素樹脂100重量部に対して0.05〜30重量部添加したことを特徴とした塗装膜をもつ帯電部材が記載されている。該帯電部材を用いることで感光体との密着が低減し、かつ、摩擦が小さくなることで被帯電体表面の劣化を著しく減少させることができる。また、上記帯電部材を接触型の帯電装置に用いることにより、長期間に渡って良好な画像を得ることができると開示している。
【0011】
特許文献2には、ウレタン変性アクリル樹脂100重量部に対して反応性の官能基を方末端に1個または2個有するシリコーンオイルを0.05〜30重量部添加して形成した塗装膜をもつ帯電部材が記載されている。該帯電部材を用いることで感光体との密着が低減し、かつ、摩擦が小さくなることで被帯電体表面の劣化を著しく減少させることができる。また、上記帯電部材を接触型の帯電装置に用いることにより、長期間に渡って良好な画像を得ることができると開示している。
【0012】
特許文献3には、低硬度導電性ロールの最外層を形成する樹脂組成物として、シリコーングラフトアクリルポリマー(A成分)とともに反応性シリコーンオイル(B成分)を用いた低硬度導電性ロールが開示されている。この低硬度導電性ロールでは、該シリコーングラフトアクリルポリマー(A成分)間に反応性シリコーンオイル(B成分)を導入してゴム弾性を生じさせ、最外層を柔軟にすることができる。その結果、ロール回転トルクが低減してスティックスリップによるこすれ音が発生せず、細部画質が向上するとともに、耐久時のロール表面の傷の発生を抑えることができ、優れた耐トナーフィルミング性を備えた低硬度導電性ロールを得ることができる。
【特許文献1】特開2002−214879号公報
【特許文献2】特開2002−214881号公報
【特許文献3】特許3608396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、DC接触帯電方式は、交流電圧による帯電均一性向上効果がないため、電子写真部材の表面の汚れ(トナーやトナーに用いられる外添剤など)や、電子写真部材自体の電気抵抗の不均一性が、出力画像に現れやすい。
【0014】
また上記電子写真部材の表層バインダーとして、フッ素樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマーを用いると、添加するシリコーンオイルに対して非相溶な為、溶液中よりも乾燥工程でミクロ相分離構造(海−島構造)を形成し易い。そのため、表層形成時の乾燥中に、溶剤揮発とともに斑点状のムラになり易い。また、その後、使用中にトナーやトナーに用いられる外添剤等に対して、付着する部分、付着し難い部分が生じ、特に付着する部分が耐久中に成長していくことで画像不良が発生してしまうことがある。
【0015】
特に、DC接触帯電方式の場合、高温高湿(30℃/80%RH)環境下、ハーフトーン画像を出力した際に顕著に発生する場合がある。
【0016】
本発明は、シリコーンオイルを添加することにより得られる効果を、より長期間にわたって保持することができる電子写真部材、ならびに、該電子写真部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、最外層が、SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット、SiO1.04(OR5)で示される第2のユニットおよびSiO1.56で示される第3のユニットを有するポリシロキサンを含有することを特徴とする電子写真部材である。
(上記R1、R4およびR6は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基に結合した下記式(1)に示すシリコーンを示す。置換もしくは無置換のオキシアルキレン基に結合したシリコーンは、第1のユニット、第2のユニット、第3のユニットの少なくともひとつに存在する。R2、R3およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。)
【0018】
【化1】

【0019】
[式(1)中、R7は置換もしくは無置換のアルキル基を示す。R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基を示す。R11は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。R12は置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基を示す。式(1)で示されるシリコーンは、少なくともひとつのオキシアルキレン基をもつ。ポリシロキサンが有するオキシアルキレン基との結合部は、R8、R9、R10またはR12のオキシアルキレン基部分である。n1、n2およびn3は0以上の整数であり、(n1+n2+n3)は2以上である。]
また、本発明は、前記の電子写真部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、DC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電および画像出力が可能な電子写真部材、ならびに、該電子写真部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
電子写真部材の表層バインダーがポリシロキサンである場合にはシリコーンオイルを添加しても均一に相溶し、膜自身がムラになりにくく、また長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤が表面に固着しにくい。またシリコーンオイルを添加すると、感光体表面電位を−1.5V〜−4.0V押し上げる。この効果によって、DC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電および画像出力が可能な電子写真部材、ならびに、該電子写真部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【0022】
本発明の電子写真部材の中でも特に帯電部材について以下に示す。しかし本発明は帯電部材に限られたものではない。
【0023】
本発明の帯電部材は、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、および該導電性弾性層上に形成された表面層を有するものである。
【0024】
本発明の帯電部材の最も簡単な構成は、該支持体上に導電性弾性層および表面層の2層を設けた構成であるが、支持体と導電性弾性層との間や導電性弾性層と表面層との間に別の層を1つまたは2つ以上設けてもよい。
【0025】
図1に、本発明の帯電部材の構成の一例を示す。図1中、101は支持体であり、102は導電性弾性層であり、103は表面層である。
【0026】
帯電部材の支持体としては、導電性を有していればよく(導電性支持体)、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属性(合金製)の支持体を用いることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理などの表面処理を施してもよい。
【0027】
導電性弾性層には、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーの如き弾性体を1種または2種以上用いることができる。
【0028】
ゴムとしては以下のものが挙げられる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴムなど。
【0029】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーおよびオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「ラバロン」、クラレ(株)製の商品名「セプトンコンパウンド」などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「サーモラン」、三井石油化学工業(株)製の商品名「ミラストマー」、住友化学工業(株)製の商品名「住友TPE」、アドバンストエラストマーシステムズ社製の商品名「サントプレーン」などが挙げられる。
【0030】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗は、導電剤の種類および使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗の好適な範囲は102Ω以上108Ω以下であり、より好適な範囲は103Ω以上106Ω以下である。
【0031】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質が挙げられる。
【0032】
陽イオン性界面活性剤としては以下のものが挙げられる。ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよび変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの如き第四級アンモニウム塩。第四級アンモニウム塩としては、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩およびハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩など)が挙げられる。
【0033】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩および高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩が挙げられる。
【0034】
帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよび多価アルコール脂肪酸エステルの如き非イオン性帯電防止剤が挙げられる。
【0035】
電解質としては、例えば、周期律表第1族の金属(Li、Na、Kなど)の塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩としては、具体的には、LiCF3SO3、NaClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCNおよびNaClなどが挙げられる。
【0036】
また、導電性弾性層用の導電剤として、周期律表第2族の金属(Ca、Baなど)の塩(Ca(ClO42など)やこれから誘導される帯電防止剤を用いることもできる。また、これらと多価アルコールもしくはその誘導体との錯体や、これらとモノオールとの錯体の如きイオン導電性導電剤を用いることもできる。多価アルコールとしては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。モノオールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
また、導電性弾性層用の導電剤として、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンの如き導電性のカーボンを用いることもできる。ゴム用カーボンとして以下のものが上げられる。Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)、Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Rein Forcing Furnace(SRF:中補強性)、Fine Thermal(FT:微粒熱分解)およびMedium Thermal(MT:中粒熱分解)。
【0038】
また、導電性弾性層用の導電剤として、天然グラファイトおよび人造グラファイトの如きグラファイトを用いることもできる。
【0039】
また、導電性弾性層用の導電剤として、酸化スズ、酸化チタンおよび酸化亜鉛の如き金属酸化物や、ニッケル、銅、銀およびゲルマニウムの如き金属を用いることもできる。
【0040】
また、導電性弾性層用の導電剤として、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリアセチレンの如き導電性ポリマーを用いることもできる。
【0041】
また、導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウムおよび硫酸アルミニウムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤が挙げられる。
【0042】
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーCで70度以上であることが好ましく、特には73度以上92度以下であることがより好ましい。
【0043】
また、中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状とすることが好ましい。
【0044】
電子写真感光体との当接ニップを十分に確保するために設けた導電性弾性層の機能を十分に発揮させる観点から、帯電部材の表面層の弾性率は2000MPa以下であることが好ましい。一方、一般的に、層の弾性率を小さくするほど架橋密度が低下する傾向にあるため、帯電部材の表面にブリードアウトした低分子量成分による電子写真感光体の表面の汚染を抑制する観点から、帯電部材の表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
【0045】
また、表面層の層厚は、厚いほど上記の低分子量成分のブリードアウトの抑制効果が大きいが、逆に帯電部材の帯電能が低下してしまう。したがって、本発明では具体的に、表面層の層厚は0.005μm以上1.000μm以下であることが好ましく、特には0.010μm以上0.600μm以下であることがより好ましい。層厚が上記範囲では、使用する溶剤の揮発も早い為、膜成型後のムラにも非常に成り難い効果もある。さらには、通常の厚膜形成生じるような非相溶状態の混合物での乾燥中の相分離が生じにくい。
【0046】
表面層の層厚の確認には、帯電部材表面部位をカミソリで削ぎ、液体窒素につけ、破断させた後に、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製)で約20000倍の倍率で確認した。
【0047】
また、帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制する観点から、帯電部材の表面(=表面層の表面)の粗さ(Rz)はJIS94で10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、3μm以上5μm以下がより一層好ましい。
【0048】
次に、本発明の電子写真部材の最外層を構成する材料について説明する。
【0049】
最外層は、SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット、SiO1.04(OR5)で示される第2のユニットおよびSiO1.56で示される第3のユニットを有するポリシロキサンを含有する。
【0050】
1、R4およびR6は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基に結合した下記式(1)に示すシリコーンを示す。置換もしくは無置換のオキシアルキレン基に結合したシリコーンは、第1のユニット、第2のユニット、第3のユニットの少なくともひとつに存在する。R2、R3およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。
【0051】
【化2】

【0052】
式(1)中、R7は置換もしくは無置換のアルキル基を示す。R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基を示す。R11は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。R12は置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基を示す。式(1)で示されるシリコーンは、少なくともひとつのオキシアルキレン基をもつ。ポリシロキサンが有するオキシアルキレン基との結合部は、R8、R9、R10またはR12のオキシアルキレン基部分である。n1、n2およびn3は0以上の整数であり、(n1+n2+n3)は2以上である。
【0053】
ここでバインダーとしてポリシロキサン骨格を用いた方が、該シリコーンオイルとの親和性が良く、均一に溶解しやすい。
【0054】
なお、上記の「SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット」とは、下記式(2)に示すようなポリシロキサンのうちの四角で囲んだ範囲A1を意味する。範囲A1の中の、OR2およびOR3以外の酸素原子(Si−O−SiのO)は、2個のケイ素原子と結合しているため、ケイ素原子1個あたりが結合している酸素原子(Si−O−SiのO)の数は0.5個と考える。
【0055】
【化3】

【0056】
上記の「SiO1.04(OR5)で示される第2のユニット」も、「SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット」と同様であり、具体的には、下記式(3)に示すようなポリシロキサンのうちの四角で囲んだ範囲A2を意味する。
【0057】
【化4】

【0058】
上記の「SiO1.56で示される第3のユニット」も、「SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット」と同様であり、具体的には、下記式(4)に示すようなポリシロキサンのうちの四角で囲んだ範囲A3を意味する。
【0059】
【化5】

【0060】
また、ポリシロキサン中の第1のユニットのモル数をx[mol]とし、第2のユニットのモル数をy[mol]とし、第3のユニットのモル数をz[mol]としたとき、0.60≦{(x+y)/(x+y+z)}≦0.80であることが好ましい。{(x+y)/(x+y+z)}<0.60であると、連続通紙時における良好な画像形成に必要な表面層の電気特性が不十分となることがある。また、0.80<{(x+y)/(x+y+z)}であると、シラノール基やアルコキシド基の量が多くなりすぎるために、高湿度環境において、吸湿のために機械的強度の低下を起こす可能性が大きくなる。したがって、0.60≦{(x+y)/(x+y+z)}≦0.80の範囲であることが好ましく、さらに0.62≦{(x+y)/(x+y+z)}≦0.78の範囲であることがより好ましい。
【0061】
ここで、x、y、zの測定は、固体29Si−NMR(商品名:CMX−300、Chemagnetics社製)で行った。測定試料の作成は、A4サイズのアルミシート上にポリシロキサン縮合物を10ml塗布し、24時間乾燥させた後に、紫外線照射を適宜行なう事により得られるフィルム状の膜を粉砕することにより行なった。測定条件は以下の表1のとおりである。
【0062】
【表1】

【0063】
得られたデータに指数関数型ウインドウをかけてフーリエ変換を行い、スペクトルを得た。台形ウインドウはT1:0、T2:0、T3:10、T4:15とし、ブロードニングファクターは50Hzとした。データ処理は装置付属のアプリケーションであるSpinsight及びGalactic社製のGramsを用いた。観測されるスペクトルとして、−49ppm、−57ppm、−66ppm近傍に3つのピークがあり、それぞれRSi(OR’)2(OSi≡)、RSi(OR’)(OSi≡)2、RSi(OSi≡)3に帰属される。ここでRはアルキル、エポキシまたはフッ化アルキル鎖である。OR’はOHまたはアルコキシ基である。さらに、フェニル基含有のシラン化合物を用いた場合は、−63ppm、−71ppm、−78ppm近傍にピークがあり、それぞれPhSi(OR’)2(OSi≡)、PhSi(OR’)(OSi≡)2、PhSi(OSi≡)3に帰属される。得られたスペクトルの波形分離を行い、各ピークの面積比を算出し、存在比を見積もった。
【0064】
上記ポリシロキサンは次の手順で得ることができる。まずカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物を加水分解・脱水縮合反応を経て得た加水分解性縮合物に片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイル(反応性の官能基を片末端または側鎖に有するシリコーンオイル)を添加する。続いて該加水分解性縮合物、および、シリコーンオイル中のカチオン重合可能な基を開裂させる。これにより、該加水分解性縮合物同士、あるいは該加水分解性縮合物と片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイル、あるいは片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイル同士が架橋する。その結果、低表面張力・低摩擦の観点からトナーや外添剤などの付着を防ぐことができる。またシリコーンがポリシロキサンに固定化されているためシリコーンのブリードが起こりにくく、高耐久時において表層が削れた際にも最表面および最表面近傍にシリコーンが残留しやすい。
【0065】
上記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(5)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
【0066】
【化6】

【0067】
上記式(5)中、R21は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。R22は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z21は、2価の有機基を示す。Rc21は、カチオン重合可能な基を示す。dは0以上2以下の整数であり、eは1以上3以下の整数であり、d+e=3である。
【0068】
上記式(5)中のRc21のカチオン重合可能な基とは、開裂によってオキシアルキレン基を生成するカチオン重合可能な有機基を意味し、例えば、エポキシ基やオキセタン基の如き環状エーテル基、および、ビニルエーテル基が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性および反応制御の容易性の観点から、エポキシ基が好ましい。
【0069】
上記式(5)中のR21およびR22の飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。
【0070】
上記式(5)中のZ21の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基およびアリーレン基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
【0071】
上記式(5)中のeは3であることが好ましい。
【0072】
上記式(5)中のdが2の場合、2個のR21は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
上記式(5)中のeが2または3の場合、2個または3個のR22は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0074】
以下に、上記式(5)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(5−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(5−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
(5−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
(5−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン
エポキシ基の開環の確認は固体13C−NMR(商品名:JMN−EX400、JEOL社製)で行った。測定試料は前述した固体29Si−NMR測定の試料と同様に作成する。測定条件は以下の表2のとおりである。
【0075】
【表2】

【0076】
本発明の帯電部材に用いられるポリシロキサンは、上述のとおり製造される。すなわち、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物を加水分解によって縮合させて加水分解性縮合物を得て、次いで、該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、該加水分解性縮合物を架橋させることによって得ることができる。特に、帯電部材の表面物性の制御の観点から、加水分解性縮合物を得る際には、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物に加えて、さらに、下記式(6)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用することが好ましい。
【0077】
【化7】

【0078】
上記式(6)中、R11は、フェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基、または、アルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基を示す。R12は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。aは0以上3以下の整数であり、bは1以上4以下の整数であり、a+b=4である。
【0079】
上記式(6)中のR11のフェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基のアルキル基としては、炭素数1以上21以下の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0080】
上記式(6)中のR11のアルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0081】
上記式(6)中のaは1以上3以下の整数であることが好ましく、特には1であることがより好ましい。
【0082】
上記式(6)中のbは1以上3以下の整数であることが好ましく、特には3であることがより好ましい。
【0083】
上記式(6)中のR12の飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましい。
【0084】
上記式(6)中のaが2または3の場合、2個または3個のR11は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
上記式(6)中のbが2、3または4の場合、2個、3個または4個のR12は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0086】
以下に、上記式(6)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(6−1):テトラメトキシシラン
(6−2):テトラエトキシシラン
(6−3):テトラプロポキシシラン
(6−4):メチルトリメトキシシラン
(6−5):メチルトリエトキシシラン
(6−6):メチルトリプロポキシシラン
(6−7):エチルトリメトキシシラン
(6−8):エチルトリエトキシシラン
(6−9):エチルトリプロポキシシラン
(6−10):プロピルトリメトキシシラン
(6−11):プロピルトリエトキシシラン
(6−12):プロピルトリプロポキシシラン
(6−13):ヘキシルトリメトキシシラン
(6−14):ヘキシルトリエトキシシラン
(6−15):ヘキシルトリプロポキシシラン
(6−16):デシルトリメトキシシラン
(6−17):デシルトリエトキシシラン
(6−18):デシルトリプロポキシシラン
(6−19):フェニルトリメトキシシラン
(6−20):フェニルトリエトキシシラン
(6−21):フェニルトリプロポキシシラン
(6−22):ジフェニルジメトキシシラン
(6−23):ジフェニルジエトキシシラン
上記式(6)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を使用する場合、上記式(6)中のaは1以上3以下の整数であることが好ましく、bは1以上3以下の整数であることが好ましい。また、a個のR11のうちの1個のR11は炭素数1以上21以下の直鎖状のアルキル基であることが好ましい。
【0087】
上記式(6)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合には、上記式(6)中のR11がアルキル基のものと上記式(6)中のR11がフェニル基のものとを併用することが好ましい。
【0088】
上記式(5)及び式(6)で示される構造以外の構造を有する加水分解性シラン化合物として、フッ化アルキル基を含有する加水分解性シラン化合物を用いることが、表面の離型性を向上させる上で好ましい。フッ化アルキル基を含有する加水分解性シラン化合物としては、出発原料としての容易さを考慮すると下記一般式(7)に示される構造を有するアルコキシシランが好適に用いられる。
【0089】
【化8】

【0090】
上記式(7)中、p=0、1又は2であり、q=1、2又は3であって、且つp+q=3であり、n=0以上30以下の整数である。Z31は二価の有機基(例えば、炭素数1〜6のアルキレン基等)であり、R32、R33は、各々独立に、飽和または不飽和の炭化水素基(例えば、炭素数1〜3の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基等)である。
【0091】
特に処理性の観点で前記一般式(7)中、nが5以上の化合物が好ましい。
【0092】
以下に、上記式(7)の範疇の具体的な化合物(7−1)〜(7−6)を例示するが、無論本発明は下記化合物に限定されるものではない。
(7−1):CF3−C24−Si−(OR)3
(7−2):CF3−CF2−C24−Si−(OR)3
(7−3):CF3−(CF23−C24−Si−(OR)3
(7−4):CF3−(CF25−C24−Si−(OR)3
(7−5):CF3−(CF27−C24−Si−(OR)3
(7−6):CF3−(CF29−C24−Si−(OR)3
ここでRは、メチル基もしくはエチル基を示す。
【0093】
特にシリコーンオイルの添加は、シリコーンオイルの種類、添加量により、帯電バイアス一定時に、例えば感光体電位を−400Vに設定(ハーフトーン画像に対応)した際に、未添加品よりも感光体表面電位を−1.5〜−4.0V上げる効果がある。この為、よりトナー及びトナーの外添剤が付着し、電位が下がる影響をカバーできる効果もある。
【0094】
シリコーンオイルは、下記式(8)に示す片末端または側鎖エポキシ変性エポキシ変性シリコーンオイルであることが好ましい。
【0095】
【化9】

【0096】
式(8)中のR13、R14、R15、R16、R17は置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のエポキシ基を示し、式(8)1分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有する。
【0097】
式(8)式中、R13、R14、R15、R16、R17が置換もしくは非置換のアルキル基の場合、1価炭化水素基であり、具体的には、炭素原子数1〜30のアルキル基が挙げられる。これらの中でもメチルまたはブチル基が代表的である。n4、n5、n6は0以上の整数であり、(n4+n5+n6)は2以上であり、2未満だと十分な効果を発揮しない。
【0098】
シリコーンオイルの使用量は該ポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。0.1質量部未満では電位向上の効果が小さく、3.0質量部より大きいと表装用塗布液が白濁してしまい、塗布ムラができやすくなる。
【0099】
シリコーンオイルの重量平均分子量Mwは、100以上5000以下が好ましい。100より小さいと電位安定効果が小さく、5000より大きいと表装用塗布液との親和性が小さくなり白濁化の傾向があり、結局は塗工時のムラになり易くなる。より好ましくは、300以上である。
【0100】
なお、シリコーンオイルの重量平均分子量測定には、GPC装置としてHLC−8120GPC(商品名、東ソー(株)製)を用いた。カラムはガードカラム(TSK guardcolum SuperH−L)TSKgel SuperH4000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH1000を5本連結して用いた。溶離液として、高速液体クロマトグラフィー用トルエンを用い、温度INLET40℃、OVEN40℃、RI40℃とした。検出器はRIで行った。検量線はポリスチレン(EasiCal PS−2)を用いた。
【0101】
上記シリコーンオイルとして具体的には、信越化学工業(株)の片末端または側鎖エポキシ変性エポキシ変性シリコーンオイルが挙げられる。中でも片末端エポキシ変性タイプX−22−173DX(商品名、信越化学工業(株)製)や、側鎖エポキシ変性タイプFZ−3720、SF8421(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)は、バインダーとの相溶性が良く特に好ましい。
【0102】
以下、本発明の帯電部材の具体的な製造方法(上記ポリシロキサンを含有する表面層の具体的な形成方法)について説明する。
【0103】
まず、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と必要に応じて上記の他の加水分解性シラン化合物とを水の存在下で加水分解反応させることによって加水分解性縮合物を得る。
【0104】
加水分解反応の際、温度やpHなどを制御することで、所望の縮合度の加水分解性縮合物を得ることができる。
【0105】
また、加水分解反応の際、加水分解反応の触媒として金属アルコキシドなどを利用し、縮合度を制御してもよい。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシドおよびジルコニアアルコキシド、ならびに、これらの錯体(アセチルアセトン錯体)が挙げられる。
【0106】
また、加水分解性縮合物を得る際の、上記式(5)、(6)、(7)で表される加水分解性シラン化合物の配合割合は、所望とする組成のポリシロキサンが得られるように適宜調整することができる。得られるポリシロキサン中のアリール基の含有量が5.0質量%〜30.0質量%、アルキレンエーテル基の含有量が5.0質量%〜70.0質量%、フッ化アルキル基の含有量が5.0質量%〜50.0質量%であることが好ましい。シロキサン部分の含有量は20.0質量%〜85.0質量%であることが好ましい。
【0107】
また、上記式(6)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合には、次の条件を満たすことが好ましい。すなわち、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物(M5)と上記式(6)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物(M6)とのモル比(M5:M6)が10:1から1:10の範囲になるように配合することが好ましい。
【0108】
次に、得られた加水分解性縮合物にエポキシ基を有するシリコーンオイルを添加し、表面層用塗布液を調製し、支持体および該支持体上に形成された導電性弾性層を有する部材(以下「導電性弾性部材」ともいう。)上に、調製した表面層用塗布液を塗布する。
【0109】
シラン化合物を加水分解によって縮合する工程と別にシリコーンオイルを添加する工程を設けたのは、シリコーンオイル添加して合成を行うとシリコーンオイルの種類あるいは添加量にもよるが白濁化が生じ易く、合成の安定化に欠けるからである。また、紫外線硬化後の膜構造が0.60≦{(x+y)/(x+y+z)}≦0.80を満足しない場合があるためである。
【0110】
表面層用塗布液を調製する際には、塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、エタノールおよび2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトンなど、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。また、表面層用塗布液を導電性弾性部材上に塗布する際には、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などを採用することができる。
【0111】
次に、導電性弾性部材上に塗布された表面層用塗布液に活性エネルギー線を照射する。すると、表面層用塗布液に含まれる加水分解性縮合物、該反応性シリコーンオイル中のカチオン重合可能な基は開裂する。これによって、該加水分解性縮合物同士、該加水分解性縮合物と片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイル、あるいは片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイル同士を架橋することができる。加水分解性縮合物は架橋によって硬化する。
【0112】
活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0113】
表面層の硬化を紫外線で行うことで、余分な熱が発生しにくく、熱硬化のような溶剤の揮発中における相分離が生じにくく、非常に均一な膜状態が得られる。このため、感光体への均一で、かつ電位安定性が得られることになる。
【0114】
上記紫外線照射時に発生した熱により、導電性弾性部材の導電性弾性層が膨張し、その後冷却によって収縮した際、表面層がこの膨張・収縮に十分に追従しないと、シワやクラックが多い表面層になってしまう場合がある。しかしながら、架橋反応に紫外線を用いた場合、短時間(15分以内)に該加水分解性縮合物同士、該加水分解性縮合物と片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイル、あるいは片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイル同士を架橋することができる。しかも、熱の発生も少ないため、表面層のシワやクラックが発生しにくい。
【0115】
また、帯電部材の置かれる環境が温湿度の変化が急激な環境である場合、その温湿度の変化による導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従しないと、表面層にシワやクラックが発生することがある。しかしながら、架橋反応を熱の発生が少ない紫外線によって行えば、導電性弾性層と表面層との密着性が高まり、導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従できるようになるため、環境の温湿度の変化による表面層のシワやクラックも抑制することができる。
【0116】
また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0117】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が用いられる。
【0118】
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
【0119】
紫外線積算光量[mJ/cm2]=紫外線強度[mW/cm2]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0120】
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
【0121】
また、架橋反応の際、架橋効率向上の観点から、カチオン重合触媒(重合開始剤)を共存させておくことが好ましい。例えば、活性エネルギー線によって賦活化されるルイス酸のオニウム塩に対してエポキシ基は高い反応性を示す。したがって、上記のカチオン重合可能な基がエポキシ基である場合、カチオン重合触媒としては、ルイス酸あるいはブレンステッド酸のオニウム塩を用いることが好ましい。
【0122】
その他のカチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。
【0123】
各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性および反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(9)で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、旭電化工業(株)製)や、
【0124】
【化10】

【0125】
下記式(10)で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
【0126】
【化11】

【0127】
が好ましい。
【0128】
また、本発明において、帯電部材の表面層の体積抵抗率は、109Ω・cm以上1016Ω・cm以下であることが好ましい。体積抵抗率が小さすぎると、繰り返し使用した際、良好な画像形成に必要な表面層の電気的特性が不十分となることがある。一方、体積抵抗率が大きすぎると、放電(電子写真感光体と帯電部材との当接部近傍での微少な放電)に時間がかかりすぎて、画像出力スピードが高速である場合に、電子写真感光体を十分に帯電することができなくなることがある。
【0129】
本発明において、表面層の体積抵抗率とは、次のようにして測定して得られる値を意味する。
【0130】
まず、測定対象の帯電部材の表面層を形成する際に用いた表面層用塗布液を、アルミニウムシート(厚さ100μm)上にスピンコーター(商品名:1H−D7型、ミカサ(株)製)を用いて、回転数300rpm、回転時間2secで塗布した。これを測定対象の帯電部材の表面層を形成する際と同様の条件(254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cm2になるように照射)で硬化・乾燥させることによって、アルミニウムシート上に層を形成した。なお、アルミニウムシート上に表面層用塗布液を塗布する際の塗布量は、アルミニウムシート上に形成される層(硬化・乾燥後の層)の層厚が10μmになるように調整した。
【0131】
このようにして上に層を形成したアルミニウムシートを4cm×4cmの正方形型に切断し、サンプル片の層側の表面に金蒸着を施した。
【0132】
この金蒸着を施したサンプル片を、図2に示す構成の抵抗測定システムに組み込み、印加直流電圧10Vの条件で抵抗を測定した。測定して得られた抵抗をサンプル面積、厚みから体積抵抗率に換算し、測定対象の帯電部材の表面層の体積抵抗率とした。なお、図2中、14は抵抗測定装置(商品名:4140B PA METER/DC VOLTAGE SOURCE、HEWLETT PACKARD社製)であり、15は接触電極端子であり、16は平板電極である。
【0133】
図3に、本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0134】
図3において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体としては、支持体および支持体上に形成された無機感光層もしくは有機感光層を有するものが一般的である。また、電子写真感光体は表面層として電荷注入層を有するものであってもよい。
【0135】
回転駆動される電子写真感光体1の表面は、本発明の帯電部材3(図3においてはローラー形状の帯電部材)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光の如き露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受けることで、電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成される。
【0136】
帯電部材3による電子写真感光体1の表面の帯電の際、帯電部材3には、電圧印加手段(不図示)から直流電圧のみの電圧あるいは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。後述の実施例においては、帯電部材には直流電圧のみの電圧(−1000V)を印加した。また、後述の実施例において、暗部電位は−500V、明部電位は−150Vとした。
【0137】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像(反転現像もしくは正規現像)されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
【0138】
現像手段としては、例えば、ジャンピング現像手段、接触現像手段および磁気ブラシ手段などが挙げられるが、トナーの飛散性改善の観点から、接触現像手段が好ましく、後述の実施例においては、接触現像手段を採用した。
【0139】
また、転写ローラーとしては、支持体上に中抵抗に調整された弾性樹脂層を被覆してなるものが例示される。
【0140】
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合、この画像形成物は、不図示の再循環搬送機構に導入されて転写部へ再導入される。
【0141】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段が接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0142】
上述の電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成することができる。そして、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターの如き電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図3では、電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5およびクリーニング手段7を一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールの如き案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
【実施例】
【0143】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0144】
(実施例1)
・中高ニトリルNBR 100部
[商品名:Nipol DN219、結合アクリロニトリル量中心値33.5%、ムーニー粘度中心値27、日本ゼオン(株)製]
・カラー用カーボンブラック(充填剤) 48部
[商品名:#7360SB、粒子径28nm、窒素吸着比表面積77m2/g、DBP吸収量87100cm3/100g、東海カーボン(株)製]
・炭酸カルシウム(充填剤) 20部
[商品名:ナノックス#30 丸尾カルシウム社製]
・酸化亜鉛 5部
・ステアリン酸 1部
以上の成分を、6L加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド[商品名:サンセラーTBZTD、三新化学工業(株)製]4.5部、加硫剤としてのイオウ1.2部を加えた。そして、ロール径12インチのオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性体層用の混練物Iを得た。
【0145】
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形の鋼製の支持体(表面をニッケルメッキ加工したもの)を準備した。そして、この支持体の、円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを30分間温度80℃で乾燥させた後、さらに1時間温度120℃で乾燥させた。
【0146】
混練物Iを、クロスヘッドを用いた押出成形によって、上記接着層付き芯金を中心として、同軸状に外径8.85mmの円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の導電性弾性層を積層した導電性弾性ローラー−1を作製した。押出機はシリンダー径70mm(Φ70)、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッドの温度を90℃とし、シリンダーの温度を90℃とし、スクリューの温度を90℃とした。
【0147】
次に、表面研磨前の導電性弾性ローラー−1の導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨(ワーク回転数333rpm、砥石回転数2080rpm、研磨時間12sec)した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さ(Rz)が4.3μmで、振れが15μmの導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)−1を得た。
【0148】
十点平均粗さ(Rz)はJISB6101に準拠して測定した。
【0149】
振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430v(商品名)を用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0150】
得られた導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)−1の硬度は73度(アスカーC)であった。なお、本発明において、アスカーC硬度の測定は、測定環境25℃×55%RHで、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0151】
次に表面層の処理剤として、以下の成分を300mlのナスフラスコ中で混合した後、室温で30分攪拌し、次いで120℃に設定したオイルバス上で、20時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物Iを得た。この縮合物Iの固形分(加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン重合物の溶液全重量に対する質量比率)は28.0質量%である。
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)(加水分解性シラン化合物)
[商品名:KBE−403、信越化学工業(株)製]
12.47g(0.045mol)
・フェニルトリエトキシシラン(PhTES)(加水分解性シラン化合物)
[商品名:KBE−103、信越化学工業(株)製]
43.08g(0.179mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)(加水分解性シラン化合物)
[商品名:KBM−3063、信越化学工業(株)製]
13.18g(0.064mol)
・トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS−5、n=5)(加水分解性シラン化合物)
[商品名:SIT8175.0、Gelest,Inc.製]
16.32g(0.032mol)
・水 25.93g
・エタノール 74.16g
次に、MEK28.50gに片末端エポキシ変性シリコーンオイル−1[商品名:X−22−173DX、信越化学工業(株)製、重量平均分子量Mw=4500、式(11)]1.50gを添加した5.0質量%希釈品−1を調製した。先の縮合物I(固形分28質量%)25.00gに、2−ブタノール10.00g/エタノール65.00gの混合溶剤を加え(固形分7.0質量%)、希釈品−1を0.98g添加した。配合比は、ポリシロキサン重合物100質量部に対して片末端エポキシ変性シリコーンオイル0.7質量部に相当する。さらに、光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩[商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製]をメチルイソブチルケトン(MIBK)で10質量%に希釈したものを2.00g添加した。この溶液を用いて先に示した測定試料を作製し、抵抗測定、固体29Si−NMRにより(x+y)/(x+y+z)を測定した。体積抵抗は1.7×1010Ω・cm、(x+y)/(x+y+z)=0.74であった。また、固体13C−NMRよりエポキシ基の開環が確認でき、式(1)の構造を有していることが推測できる。
【0152】
さらに、固形分を1.0質量%になるようにエタノールで希釈し、表面層用塗布液−1を調製した。
【0153】
【化12】

【0154】
[式(11)中、R18はメチル基もしくはブチル基を示し、n8=66である。]
次に、導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)−1の導電性弾性層上に表面層用塗布液−1を、リング塗布(吐出量:0.020ml/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.065ml)した。これに、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cm2になるように照射し、表面層用塗布液−1を硬化(架橋反応による硬化)および乾燥させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0155】
紫外線の照射による表面層用塗布液−1のグリシドキシプロピルトリエトキシシランと片末端エポキシ変性シリコーンオイル−1のグリシドキシ基が開裂・重合による架橋を以下のように検討した。
【0156】
片末端エポキシ変性シリコーンオイル−1にカチオン重合触媒を添加したのみでは硬化は起こらず、ポリシロキサンに片末端エポキシ変性シリコーンオイル−1とカチオン重合触媒を添加した場合には硬化が起こった。この硬化膜を抽出し、その抽出液を分析すると未反応の片末端エポキシ変性シリコーンオイル−1が30質量%検出された。よって添加した片末端エポキシ変性シリコーンオイル−1の70質量%がグリシドキシプロピルトリエトキシシランと架橋したと考えられる。
【0157】
以上のようにして作製した帯電ローラーを、帯電ローラーIとする。
【0158】
・帯電ローラーの評価
・評価1
塗工後の帯電ローラーI表面の外観状態を目視にて以下のように判断した。
A:帯電ローラーの表面に全くムラがない場合。
B:帯電ローラーの端部表面に一部ムラやスジが生じた場合。
C:帯電ローラーの表面の全領域にムラやスジが生じた場合。
【0159】
・評価2
上記と同様にして作製した帯電ローラーIを用いて、以下に示す出力画像評価を行った。評価結果を、表3に示す。
【0160】
作製した帯電ローラーIと電子写真感光体とを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジに組み込み、このプロセスカートリッジをA4紙縦出力用のレーザービームプリンターに装着した。このレーザービームプリンター(商品名:HP Color LaserJet 3600)の現像方式は反転現像方式であり、転写材の出力スピードは94mm/sであり、画像解像度は600dpiである。
【0161】
なお、帯電ローラーIとともにプロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体は、支持体上に層厚13.0μmの有機感光層を形成してなる有機電子写真感光体である。また、この有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリカーボネート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となっている。
【0162】
また、上記レーザービームプリンターに使用したトナーは、いわゆる重合トナーであって、そのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は6μmである。この重合トナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレートおよびエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子に、シリカ微粒子および酸化チタン微粒子を外添してあるトナー粒子を含む。
【0163】
画像出力は、定温定湿下(温度25℃/湿度50%RH)及び高温高湿環境下(温度30℃/湿度80%RH)で行い、A4紙に印字率1%のE文字パターンを形成し、2枚毎に4秒間の空回転を入れる間欠出力モードで出力した。間欠出力モードでの画像出力は、連続通紙に比べて、同じ通紙枚数でも帯電部材と感光体との摺擦回数が多くなるため、帯電部材表面の汚れの評価に対しては、より厳しい評価である。各条件下にてこれを94mm/sのプロセススピードで8000枚出力した。
【0164】
出力画像の評価は、1000枚ごとに出力画像を目視することによって行った。評価結果を、表3に示す。
【0165】
評価基準は以下のとおりである。
AA:帯電ローラーの表面にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上確認できないもの。
A :帯電ローラーの表面に、塗工時のムラやスジ部分にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上ほとんど確認できないもの。
B :帯電ローラーの表面に、塗工時のムラやスジ部分にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上確認できるもの。
C :帯電ローラーの表面に、塗工時のムラやスジ部分にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上確認でき、その帯電ムラの程度が大きいもの。具体的には、白い縦スジ状の帯電ムラが確認できるもの。
【0166】
(実施例2)
導電性弾性ローラーについては、実施例1で使用したものを用いた。
【0167】
次に、実施例1で使用した加水分解性シラン化合物の縮合物I25.00gに、2−ブタノール10.00g/エタノール65.00gの混合溶剤を加え(固形分7.0質量%)、さらに希釈品−1を0.15g添加した。配合比は、ポリシロキサン重合物100質量部に対して片末端エポキシ変性シリコーンオイル0.1質量部に相当する。その後は実施例1と同様の方法で表面層塗布液−2を得た。
【0168】
その後、実施例1と同様な方法で表面層を形成し、帯電ローラーIIを作製した。帯電ローラーIIについて実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0169】
(実施例3)
導電性弾性ローラーについては、実施例1で使用したものを用いた。
【0170】
次に、実施例1で使用した加水分解性シラン化合物の縮合物I25.00gに、2−ブタノール10.00g/エタノール65.00gの混合溶剤を加え(固形分7.0質量%)、さらに希釈品−1を4.20g添加した。配合比は、ポリシロキサン重合物100質量部に対して片末端エポキシ変性シリコーンオイル3.0質量部に相当する。その後は実施例1と同様の方法で表面層塗布液−3を得た。
【0171】
その後、実施例1と同様な方法で表面層を形成し、帯電ローラーIIIを作製した。帯電ローラーIIIについて実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0172】
(実施例4)
導電性弾性ローラーについては、実施例1で使用したものを用いた。
【0173】
表面層の処理剤として、実施例1で使用した加水分解性シラン化合物の縮合物Iを用いた。一方、MEK28.50gに側鎖エポキシ変性シリコーンオイル−2[商品名:FZ−3720、東レ・ダウダウコーニングシリコーン(株)製、重量平均分子量Mw=1200、式(12)]1.50gを添加した5.0質量%希釈品−2を調製した。そして、縮合物I(固形分28質量%)25.00gに、2−ブタノール10.00g/エタノール65.00gの混合溶剤を加え(固形分7.0質量%)、希釈品−2を0.98g添加した。配合比は、ポリシロキサン重合物100質量部に対して側鎖エポキシ変性シリコーンオイル0.7質量部に相当する。その後は実施例1と同様の方法で表面層塗布液−4を得た。
【0174】
【化13】

【0175】
[式(12)中、(n9+n10)は2〜13の範囲内であり、R19はアルキル基もしくはアラルキル基を表す。]
その後、実施例1と同様な方法で表面層を形成し、帯電ローラーIVを作製した。帯電ローラーIVについて実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0176】
(実施例5)
導電性弾性ローラーについては、実施例1で使用したものを用いた。
【0177】
表面層の処理剤として、実施例1で使用した加水分解性シラン化合物の縮合物Iを用いた。一方、MEK28.50gに側鎖エポキシ変性シリコーンオイル−3[商品名:SF8421、東レ・ダウダウコーニングシリコーン(株)製、重量平均分子量Mw=11000、式(13)]1.50gを添加した5.0質量%希釈品−3を調製した。そして、縮合物I(固形分28質量%)25.00gに、2−ブタノール10.00g/エタノール65.00gの混合溶剤を加え(固形分7.0質量%)、希釈品−3を0.98g添加した。配合比は、ポリシロキサン重合物100質量部に対して側鎖エポキシ変性シリコーンオイル0.7質量部に相当する。その後は実施例1と同様の方法で表面層塗布液−5を得た。
【0178】
【化14】

【0179】
[式(13)中、(n11+n12+n13)は3〜146の範囲内であり、R20はアルキル基もしくはアラルキル基を表す。POAは式(13)で表されるポリオアルキレンオキシドを示す。]
【0180】
【化15】

【0181】
[式中、R21は2価炭化水素基であり、R22は同種もしくは異種の炭素原子数1〜4の2価炭化水素基であり、R23は水素原子または1価炭化水素基またはアシル基である。また、aは0または1の整数であり、bは1〜100の整数である。]
その後、実施例1と同様な方法で表面層を形成し、帯電ローラーVを作製した。帯電ローラーVについて実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0182】
(比較例1)
導電性弾性ローラーについては、実施例1で使用したものを用いた。
【0183】
次に表面層の処理剤として、以下の成分を300mlのナスフラスコ中で混合した後、室温で30分攪拌し、次いで120℃に設定したオイルバス上で、20時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物IIを得た。この縮合物IIの固形分は28.0質量%である。
・フェニルトリエトキシシラン(PhTES)(加水分解性シラン化合物)
[商品名:KBE−103、信越化学工業(株)製]
7.69g(0.032mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)(加水分解性シラン化合物)
[商品名:KBM−3063、信越化学工業(株)製]
59.33g(0.288mol)
・水 25.93g
・エタノール 62.70g
次に、上記縮合物II25gに、2−ブタノール10g/エタノール65gの混合溶剤を加え固形分7.0質量%としたものを用いて、先に示した測定試料を作製し、抵抗測定、固体Si−NMRにより(x+y)/(x+y+z)を測定した。ただし、測定試料の作製にあたっては、紫外線硬化ではなく、160℃に温調した熱風循環炉に2時間放置して硬化させた。体積抵抗は1.1×1011Ω・cm、(x+y)/(x+y+z)=0.75であった。
【0184】
更に固形分を1.0質量%になるようにエタノールで希釈し、表面層用塗布液−6を調製した。
【0185】
その後、紫外線硬化ではなく、160℃に温調した熱風循環炉に2時間放置して、表面層用塗布液−6を硬化させた以外は、実施例1と同様な方法で表面層を形成し、帯電ローラーVIを作製した。帯電ローラーVIについて実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0186】
(比較例2)
導電性弾性ローラーについては、実施例1で使用したものを用いた。
【0187】
次に、フッ素樹脂[商品名:LF200、旭硝子(株)製](バインダー−1)をMEK/トルエン混合溶媒に溶かし、カーボン、イソシアネート硬化剤を加えた。その後、片末端エポキシ変性シリコーンオイル[商品名:X−22−173DX、信越化学工業(株)製]を、フッ素樹脂100質量部に対して1.0質量部添加したものを表面層用塗布液−7とした。
【0188】
このときのフッ素樹脂で作製した測定試料の体積抵抗は、5.5×107Ω・cmであった。
【0189】
その後、実施例1と同様な方法で表面層を形成し、帯電ローラーVIIを作製した。帯電ローラーVIIについて実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0190】
(比較例3)
導電性弾性ローラーについては、実施例1で使用したものを用いた。
【0191】
次に、ウレタン変性アクリル樹脂[商品名:EAU65B、アジア工業(株)製](バインダー−2)をMEK溶媒に溶かし、イソシアネート硬化剤を加えた。その後、片末端エポキシ変性シリコーンオイル[商品名:X−22−173DX、信越化学工業(株)製]を、ウレタン変性アクリル樹脂100質量部に対して1.0質量部添加したものを表面層用塗布液−8とした。
【0192】
このときのウレタン変性アクリル樹脂で作製した測定試料の体積抵抗は、5.6×107Ω・cmであった。
【0193】
その後、実施例1と同様な方法で表面層を形成し、帯電ローラーVIIIを作製した。帯電ローラーVIIIについて実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0194】
【表3】

【0195】
以上のように、シリコーンオイルをバインダーであるポリシロキサンに固定化することで、ムラになりにくく、また長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが表面に固着しにくくなる。この為、DC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電および画像出力が可能な帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】本発明の帯電部材の構成の一例を示す図である。
【図2】表面層の抵抗測定に用いる抵抗測定システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0197】
101 支持体
102 導電性弾性層
103 表面層
14 抵抗測定装置
15 接触電極端子
16 平板電極
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電部材
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層が、SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット、SiO1.04(OR5)で示される第2のユニットおよびSiO1.56で示される第3のユニットを有するポリシロキサンを含有することを特徴とする電子写真部材。
(上記R1、R4およびR6は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基に結合した下記式(1)に示すシリコーンを示す。置換もしくは無置換のオキシアルキレン基に結合したシリコーンは、第1のユニット、第2のユニット、第3のユニットの少なくともひとつに存在する。R2、R3およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。)
【化1】

[式(1)中、R7は置換もしくは無置換のアルキル基を示す。R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基を示す。R11は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。R12は置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のオキシアルキレン基を示す。式(1)で示されるシリコーンは、少なくともひとつのオキシアルキレン基をもつ。ポリシロキサンが有するオキシアルキレン基との結合部は、R8、R9、R10またはR12のオキシアルキレン基部分である。n1、n2およびn3は0以上の整数であり、(n1+n2+n3)は2以上である。]
【請求項2】
該ポリシロキサン中の、該第1のユニットのモル数をx[mol]とし、該第2のユニットのモル数をy[mol]とし、該第3のユニットのモル数をz[mol]としたとき、0.60≦((x+y)/(x+y+z))≦0.80であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真部材。
【請求項3】
該最外層が、
(I)カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物を加水分解で縮合させる縮合工程、
(II)工程(I)で得られた加水分解性縮合物に、片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイルを添加する工程、および
(III)該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(II)により得られた縮合物を有する化合物を架橋させる架橋工程、
により形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真部材。
【請求項4】
該片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイルの使用量が、該ポリシロキサン100質量部に対して0.1質量部以上3.0質量部以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真部材。
【請求項5】
該片末端または側鎖エポキシ変性シリコーンオイルの重量平均分子量Mwが、100以上5000以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の電子写真部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真部材を有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58634(P2009−58634A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224291(P2007−224291)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】